説明

水性ボールペン用インキ組成物

【課題】本発明の課題は、ドライアップ性能、擦過性能、手脂性能に優れた水性ボールペン用インキ組成物を提供することである。
【解決手段】本発明は、少なくとも、水、着色剤、デキストリン、界面活性剤を含有し、前記デキストリンの重量平均分子量が、5000以上であり、かつ、前記界面活性剤が、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸塩の中から1種以上を選択することを特徴とする水性ボールペン用インキ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ボールペン用インキ組成物に関し、さらに詳細としては、ドライアップ性能、擦過性能、手脂性能に優れた水性ボールペン用インキ組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ボールペン先を大気中に放置すると、インキ中の溶剤などが蒸発して、着色剤や樹脂などが乾燥固化して詰まり、筆跡カスレや、筆記不良になってしまうことがあった。
【0003】
そのため、水性ボールペン用インキ組成物のペン先の乾燥防止剤として、エチレングリコールやプロピレングリコール等の多価アルコール溶剤や尿素及び/又は尿素誘導体などにより、ドライアップ性能を向上した水性ボールペン用インキ組成物が知られている。
【0004】
しかしながら、前者のエチレングリコールやプロピレングリコール等の多価アルコール溶剤は十分なドライアップ性能を得るためには多量の添加が必要となり、その結果、インキ粘度の上昇によるインキ追従不良や、筆跡の滲み等が発生する、さらに擦過性能が劣ってしまう。また、後者の尿素及び/又は尿素誘導体は、ある程度のドライアップ性能の向上は認められるものの、高温環境下では分解してアンモニアを発生させ、インキ経時が不安定になる問題が発生してしまう。
【0005】
こうした問題を鑑みて、WO98/31755号公報「筆記具用水性インキ組成物」には、デキストリン又はマルトデキストリンを含有したもの、WO99/02617号公報「筆記具用水性インキ組成物」には、還元デキストリン又は還元マルトデキストリンを含有したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】「WO98/31755号公報」
【特許文献2】「WO99/02617号公報」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1〜2では、ある程度チップ先端に皮膜を形成しても、ドライアップ性能の向上を十分に満足はできないものもあり、また、ドライアップ性能の向上があるものでも、筆記後、すぐに筆跡表面に膜を形成してしまうため、インキが紙面に広がり浸透しづらいため、擦過性能が劣ってしまう問題を抱えていた。また、手帳などを使用する場合、手めくりを繰り返すことによって紙面に手脂が付着することで、筆記時に線とび、カスレが発生してしまうため、新たに手脂性能の向上を一層求められるようになった。
【0008】
本発明の目的は、ドライアップ性能、擦過性能、手脂性能に優れた水性ボールペン用インキ組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、
「1.少なくとも、水、着色剤、デキストリン、界面活性剤を含有し、前記デキストリンの重量平均分子量が、5000以上であり、かつ、前記界面活性剤が、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸塩の中から1種以上を選択することを特徴とする水性ボールペン用インキ組成物。
2.前記デキストリンの重量平均分子量が、20000〜100000であることを特徴とする第1項に記載の水性ボールペン用インキ組成物。
3.前記界面活性剤が、フッ素系界面活性剤を有すること特徴とする第1項または第2項に記載の水性ボールペン用インキ組成物。
4.前記フッ素系界面活性剤が、パーフルオロアルキルエチレンオシド付加物を有すること特徴とする第3項に記載の水性ボールペン用インキ組成物。
5.前記水性ボールペン用インキ組成物に、単糖類の還元物を含有することを特徴とする第1項ないし第4項に記載の水性ボールペン用インキ組成物。」
とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、水性ボールペン用インキ組成物において、チップ先端に皮膜を形成することでドライアップ性能を向上し、紙面への浸透性を高めることで擦過性能を向上し、手脂が付着した筆記面においても手脂性能が優れた水性ボールペン用インキ組成物を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の特徴は、重量平均分子量が5000以上であるデキストリンと、界面活性剤としてフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸塩の中から1種以上を選択して用いることである。
【0012】
デキストリンは、数個のα-グルコースが、グリコシド結合によって重合した物質の総称で、食物繊維の一種であり、デンプンの加水分解により得られるものである。前記デキストリンを水性ボールペン用インキ組成物に含有することで、チップ先端に皮膜を形成する。
【0013】
本発明で用いるデキストリンは、重量平均分子量が5000以上を必須とする。これは、重量平均分子量が、5000以上のデキストリンを含有することで、ドライアップ性能を向上するのに十分な皮膜を形成することが可能になるためであり、一方、重量平均分子量が5000未満だと、チップ先端に皮膜を形成しづらく、溶媒の蒸発を十分に抑制できずに、着色剤や樹脂などが乾燥固化して筆記不能の原因になってしまうためである。
【0014】
しかし、重量平均分子量が、5000以上のデキストリンを単独で用いただけでは、十分な擦過性能が得られなかった。これは、筆記後、すぐに筆跡表面に膜を形成してしまい、インキが紙面に浸透しづらいためである。
【0015】
そのため、上記問題を鑑み、鋭意検討した結果、本願発明は、界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸塩の中から1種以上を選択して含有することで、重量平均分子量が5000以上のデキストリンを、用いた場合でも、紙面への浸透性を高めることで、擦過性能を良好とすることが分かった。
【0016】
これは、前記界面活性剤は、表面張力を低減しやすく、紙面への浸透性を高めることで、擦過性能に効果があるためである。さらに、ガラスや金属などの非浸透面へも良好に筆記することも可能であるため、好適に用いることが可能である。
【0017】
また、デキストリンの重量平均分子量については、100000以上であると、チップ先端に形成される皮膜が硬く、ドライアップ時の書き出しにおいて、筆跡がカスレやすくなる傾向があるため、5000〜100000がより好ましい。また、重量平均分子量が20000より小さいと、皮膜が薄くなりやすい傾向があるため、重量平均分子量が、20000〜100000が最も好ましい。
【0018】
デキストリンの含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1〜5.0質量%が好ましい。これは、0.1質量%より少ないと、ドライアップ性能の効果が十分得られない傾向があり、5.0質量%を越えると、インキ中で溶解しづらい傾向があるためである。よりインキ中の溶解性について考慮すれば、0.1〜3.0質量%が好ましく、よりドライアップ性能について考慮すれば、1.0〜3.0質量%が、最も好ましい。
【0019】
前記界面活性剤中でも、フッ素系界面活性剤は、最も表面張力を低減することが可能であり、最も擦過性能に効果的であるため、好ましい。また、一般的に、界面活性剤を用いると、筆跡の滲み、裏抜けの発生や、インキ経時が不安定になる傾向があるが、フッ素系界面活性剤は、少量添加することで効果があるため、上記問題が発生しづらいため、好ましい。
【0020】
また、フッ素系界面活性剤は、パーフルオロ基ブチルスルホン酸塩、パーフルオロ基含有カルボン酸塩、パーフルオロ基含有リン酸エステル、パーフルオロ基含有リン酸エステル型配合物、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロ基・親水性基・親油性基含有オリゴマー、パーフルオロ基・親水性基含有オリゴマー、パーフルオロ基・親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物等が挙げられる。その中でも、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物を用いる方が好ましい。これは、エチレンオキシドがあると、親水性が強いため、水に対して溶解しやすく、経時安定性が安定する傾向にあるためである。さらに、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物のフッ素系界面活性剤は、手脂が付着した筆記面においても、筆跡の線とび、カスレなどを抑制することが可能なため、好ましく用いることができる。
【0021】
また、前記界面活性剤として、フッ素系界面活性剤の具体例としては、メガファックF−447、F−410、F−444、F−445、F−552、F−553、F−554(
DIC(株))、DSN−403N(ダイキン工業(株))、FC−170C、FC−430、ノベックFC−4430、FC−4432(住友スリーエム(株))等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤の具体例としては、KF351、KF-352、KF -353、KF-354、KF-355、KF -615、KF-618、KF−642、KF643、KF945、KF−6004(信越化学工業(株))、FZ−2104、FZ−2110、FZ2163、FZ−2191、FZ−7002、FZ−720、SILWETL−7001、L−7002、Y−7006、L−7604東レ・ダウコーニング(株))、TSF4445(東芝シリコーン(株))が挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤の具体例としては、ダイノール604、サーフィノール104H、同104A、同104BC、同104DPM、同104PA、同104S、同420、同440、同SE、同SE−F、同61等(エアープロダクツ ジャパン(株)社製)が挙げられる。ジアルキルスルホコハク酸塩具体例としては、ネオコールSW−C、ネオコールYSW−CE、ネオコールYSK(第一工業製薬(株))、ペレックスOT−P、ペレックスTR、ペレックスCS、ペレックスTA(花王(株))、エアロールOB−70(東邦化学工業(株))、エアロゾ−ルMA−80、エアロゾ−ルAY−100(三井サイアナミド(株))、アデカコールEC((株)アデカ)等が挙げられる。これらは、単独または2種以上混合して使用してもよい。
【0022】
前記界面活性剤の含有量は、インキ組成物全量に対し、0.01質量%より少ないと、表面張力を十分に下げる効果が得られず、5.0質量%を越えると、筆跡に滲みが発生したり、インキ経時が不安定となるため、0.01〜5.0質量%が好ましい。より好ましい筆跡滲みを考慮すれば、0.1〜3.0質量%であり、最も好ましくは0.1〜1.5質量%である。
【0023】
また、本発明の水性インキ組成物の表面張力は、20℃の環境下において、表面張力は、10〜35mN/mである方が好ましい。10mN /mより低いと、筆跡に滲み、紙への裏抜けが発生しやすくなりやすく、35mN/mを超えると、紙面への浸透性を劣りやすく、擦過性能に影響が出やすいためである。より筆跡に滲みや擦過性能を考慮すれば、12〜25mN/mである。
【0024】
着色剤は、染料、顔料等、特に限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。染料については、直接染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料、及び各種造塩タイプ染料等が採用可能である。顔料については、無機、有機、加工顔料などが挙げられるが、具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ギオキサジン系、アルミ顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料、補色顔料等が挙げられる。その他、着色樹脂粒子体として顔料を媒体中に分散させてなる着色体を公知のマイクロカプセル化法などにより樹脂壁膜形成物質からなる殻体に内包又は固溶化させたマイクロカプセル顔料を用いても良い。更に、顔料を透明、半透明の樹脂等で覆った着色樹脂粒子などや、また着色樹脂粒子や無色樹脂粒子を、顔料もしくは染料で着色したもの等も用いることもできる。これらの染料および顔料は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。含有量は、インキ組成物全量に対し、1質量%〜20質量%が好ましい。また、本発明の筆記具用インキに関しては、顔料系インキは、染料系インキと違い再分散しづらく、ドライアップ性能が劣りやすいため、よりドライアップ性能の向上がより望まれる。
【0025】
また、インキ粘度調整剤や顔料分散剤として樹脂を用いても良く、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、多糖類、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等ある。また、筆跡にボテがあると、筆跡乾燥性が遅くなる要因となるため、本発明においては、多糖類を用いることで、ボテが発生しづらく、擦過性の向上に用いることができるため、好ましい。
【0026】
多糖類としては、具体的に、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、グアーガム、ローカストビーンガム、λ−カラギーナン、セルロース誘導体、ダイユータンガムが挙げられる。その中でも、インキ経時安定性を考慮すれば、キサンタンガム、サクシノグリカン、セルロース誘導体、λ−カラギーナンを用いる方が好ましい。これらは、単独または2種以上混合して使用してもよい。また、樹脂の含有量は、インキ組成物全量に対して、0.1質量%未満だと、所望のインキ粘度が得られにくく、3.0質量%を越えるとインキ追従性能が劣ってしまう傾向があるため、0.1質量〜3.0質量%が好ましい。
【0027】
その他として、水溶性有機溶剤として、エチレングリコール、グリセリンなどのグリコール類、トリエタノールアミン等のpH調整剤、1,2ベンゾイソチアゾリン−3−オン等の防菌剤、尿素、単糖類の還元物などの保湿剤、ベンゾトリアゾール等の防錆剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤を添加することができる。
【0028】
本発明においては、前記デキストリンを含有することにより、チップ先端に形成される皮膜によって、ドライアップ時の書き出しにおいて、筆跡カスレの影響を受けやすいので、吸湿効果の高い、単糖類の還元物を用いる方が好ましい。これは、前記デキストリンと単糖類の還元物を、併用することにより、チップ先端で皮膜を形成時に、吸湿作用が働くことで、柔らかい皮膜を形成しやすいため、ドライアップ時の書き出しが向上しやすいためである。
【0029】
次に実施例を示して本発明を説明する。
実施例1
水 63.0質量部
水溶性有機溶剤(エチレングリコール) 20.0質量部
デキストリン(重量平均分子量:30000) 2.0質量部
潤滑剤(リン酸エステル系界面活性剤) 1.0質量部
界面活性剤(フッ素系界面活性剤) 0.5質量部
pH調整剤(トリエタノールアミン) 1.5質量部
単糖類の還元物 5.0質量部
防菌剤(1、2ベンゾイソチアゾリン−3−オン) 0.5質量部
防錆剤(ベンゾトリアゾール) 0.5質量部
着色剤(ダイレクトブラック154) 6.0質量部
剪断減粘性付与剤(キサンタンガム) 0.40質量部
【0030】
まず、水、水溶性有機溶剤、デキストリン、潤滑剤、界面活性剤、pH調整剤、単糖類の還元物、防菌剤、防錆剤、着色剤をマグネットホットスターラーで加温撹拌してベースインキを作成した。
【0031】
その後、上記作製したベースインキを加温しながら、剪断減粘性付与剤を投入してホモジナイザー攪拌機を用いて均一な状態となるまで充分に混合攪拌した後、濾紙を用い濾過を行って、実施例1の水性ボールペン用インキ組成物を得た。また、表面張力を、20℃の環境下において、協和界面科学株式会社製の表面張力計測器を用い、ガラスプレートを用いて、垂直平板法によって測定したところ、約18mN /mであった。
【0032】
実施例2〜11
インキ配合を表1、2に示すように変更した以外は、実施例1と同様な手順で実施例2〜11の水性ボールペン用インキ組成物を得た。表1に、インキ配合および測定、評価結果を示す。
【表1】

【表2】

【0033】
比較例1〜5
インキ配合を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様な手順で比較例2〜5の水性ボールペン用インキ組成物を得た。表3に、インキ配合および測定、評価結果を示す。
【表3】

【0034】
試験および評価
実施例1〜11及び比較例1〜5で作製した水性インキ組成物を、インキ収容筒の先端にボール径が0.5mmのボールを回転自在に抱持したボールペンチップをチップホルダーに介して具備したインキ収容筒内(ポリプロピレン製)に充填したノック式ボールペンを作製し、以下の試験および評価を行った。尚、ドライアップ性能試験、擦過性能試験、手脂性能試験の評価は、筆記試験用紙としてJIS P3201 筆記用紙Aを用い、以下のような試験方法で評価を行った。また、手脂性能試験に用いる人工皮脂は、スクワラン3.0重量部、イソプロピルミリステート6.0重量部、オリーブ油12.0重量部、コレステロール0.6重量部、パルミチン酸0.6重量部、オレイン酸3.9重量部、イソステアリン酸3.9重量部、アセトン70.0重量を撹拌混合して人工皮脂を作製したものを用いた。
【0035】
ドライアップ性能試験:ペン先を出したまま、50℃で2週間放置した後、手書き筆記した際の筆跡の状態を評価した。
筆跡にカスレがなく、筆跡が良好のもの ・・・◎
筆跡に若干カスレが出るが、実用上問題ないもの ・・・○
筆跡にカスレがひどく、実用性に乏しいもの ・・・×
【0036】
擦過性能試験:紙面上に筆記後、指で擦過し、筆跡乾燥性を観察した。
筆記10秒未満で、筆跡が乾燥したもの ・・・◎
筆記10〜30秒で、筆跡が乾燥したもの ・・・○
筆記30秒越えても、筆跡が乾燥しなかったもの ・・・×
【0037】
手脂性能試験:
人工皮脂を付着させた紙面に筆記した筆跡を観察した。
筆跡に線とび、カスレがないもの ・・・◎
筆跡に若干線とび、カスレがあるが実用上問題ないもの ・・・○
筆跡に線とび、カスレがあるがひどく、実用性に乏しいもの ・・・×
【0038】
表1、2の結果より、実施例1〜11では、ドライアップ性能試験、擦過性能試験、手脂性能試験ともに良好もしくは、問題のないレベルの性能が得られた。
【0039】
表3の結果より、比較例1では、デキストリンを用いず、比較例2では、重量平均分子量が、5000以上のデキストリンを用いなかったため、ドライアップ性能試験において、筆跡にカスレがあり、実用性に乏しいレベルであった。また、比較例1、2で、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸塩の中の界面活性剤を用いなかったため、筆跡乾燥に時間が掛かり、擦過性能が悪く、手脂性能試験においても、筆跡に線とび、カスレがひどく、実用性に乏しいレベルであった。
【0040】
比較例3では、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸塩の中の界面活性剤を用いなかったため、筆跡乾燥に時間が掛かり、擦過性能が悪く、手脂性能試験においても、筆跡に線とび、カスレがひどく、実用性に乏しいレベルであった。
【0041】
比較例4〜6では、重量平均分子量が、5000以上のデキストリンを用いなかったため、ドライアップ性能試験において、筆跡にカスレがあり、実用性に乏しいレベルであった。
【0042】
特に、ノック式ボールペンにおいては、キャップ式ボールペンとは異なり、チップ先端での乾燥固化によるドライアップ性能が重要になるため、本発明の効果が顕著となる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は水性ボールペンとして利用でき、さらに詳細としては、該水性ボールペン用インキ組成物を充填した、キャップ式、ノック式等の水性ボールペンとして広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、水、着色剤、デキストリン、界面活性剤を含有し、前記デキストリンの重量平均分子量が、5000以上であり、かつ、前記界面活性剤が、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸塩の中から1種以上を選択することを特徴とする水性ボールペン用インキ組成物。
【請求項2】
前記デキストリンの重量平均分子量が、20000〜100000であることを特徴とする請求項1に記載の水性ボールペン用インキ組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤が、フッ素系界面活性剤を有すること特徴とする請求項1または2に記載の水性ボールペン用インキ組成物。
【請求項4】
前記フッ素系界面活性剤が、パーフルオロアルキルエチレンオシド付加物を有すること特徴とする請求項3に記載の水性ボールペン用インキ組成物。
【請求項5】
前記水性ボールペン用インキ組成物に、単糖類の還元物を含有することを特徴とする請求項1ないし4に記載の水性ボールペン用インキ組成物。

【公開番号】特開2012−131952(P2012−131952A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287306(P2010−287306)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Fターム(参考)】