説明

水性ポリウレタン樹脂組成物

【課題】凝固性が良好であり、優れた風合いを実現することのできる、水性ポリウレタン樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】水性ポリウレタン樹脂組成物は、主鎖から枝分れする側鎖にポリオキシエチレン基を1〜15重量%含有し、前記主鎖の末端に2つ以上のイソシアネート基を有するイソシアネート基末端プレポリマーと、前記イソシアネート基と反応する2つ以上の活性水素基を含有する鎖伸長剤とを少なくとも反応させることにより得られる水性ポリウレタン樹脂(a)と、ラジカル重合開始剤(b)とを含有する。この水性ポリウレタン樹脂組成物は、人工皮革などの製造に好適に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ポリウレタン樹脂組成物、詳しくは、人工皮革などの製造に好適に用いられる水性ポリウレタン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリウレタン樹脂を不織布に含浸させた人工皮革が、風合いに優れることで知られている。このような人工皮革は、従来より、例えば、極細繊維からなる不織布に、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などの有機溶剤に溶解したポリウレタン樹脂を含浸させた後、水中で上記有機溶剤を抽出除去する湿式法により製造されている。
【0003】
しかるに、近年、環境負荷の観点より、有機溶剤の使用の低減が望まれており、上記した人工皮革の製造においても、ポリウレタン樹脂をDMFに溶解することに代替して、水性ポリウレタン樹脂を使用することが検討されている。
【0004】
水性ポリウレタン樹脂を使用する人工皮革の製造方法として、不織布に水性ポリウレタン樹脂を含浸させた後、乾燥することにより人工皮革を得る乾式法が知られている。この乾式法によれば、簡単な操作で人工皮革を得ることができる。そのため、乾式法に使用することができる水性ポリウレタン樹脂の開発が望まれている。
【0005】
そのような水性ポリウレタン樹脂として、例えば、主鎖から枝分れする側鎖にポリオキシエチレン基を1〜15重量%含有し、主鎖の末端に2つ以上のイソシアネート基を有するイソシアネート基末端プレポリマーと、イソシアネート基と反応する2つ以上の活性水素基とアルコキシシリル基とを含有する化合物を少なくとも含む鎖伸長剤とを少なくとも反応させることにより得られるポリウレタン樹脂中に、Si原子を0.05〜1.5重量%含有する、水性ポリウレタン樹脂が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】国際公開パンフレットWO2008/033585
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、乾式法では、不織布に水性ポリウレタン樹脂を含浸させた後、具体的には、スチーム凝固を経て、ドライ乾燥するが、スチーム凝固時に水性ポリウレタン樹脂の凝固が不十分であると、不織布から水性ポリウレタン樹脂が垂れて、不織布に対する水性ポリウレタン樹脂の付着ムラを生じ、最終製品の柔軟性や反発力が低下したり、風合いを損ねるという不具合を生じる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、凝固性が良好であり、優れた風合いを実現することのできる、水性ポリウレタン樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物は、主鎖から枝分れする側鎖にポリオキシエチレン基を1〜15重量%含有し、前記主鎖の末端に2つ以上のイソシアネート基を有するイソシアネート基末端プレポリマーと、前記イソシアネート基と反応する2つ以上の活性水素基を含有する鎖伸長剤とを少なくとも反応させることにより得られる水性ポリウレタン樹脂(a)と、ラジカル重合開始剤(b)とを含有することを特徴としている。
【0009】
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物では、前記ラジカル重合開始剤(b)が、水溶性および/または水分散性であり、前記水性ポリウレタン樹脂(a)100重量部に対して、0.01〜10重量部含有されることが好適である。
【0010】
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物では、前記ラジカル重合開始剤(b)が、過硫酸塩化合物であることが好適である。
【0011】
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物では、前記イソシアネート基末端プレポリマーが、ポリイソシアネートと、マクロポリオールと、下記一般式(1)で示される化合物とを少なくとも反応させることにより得られることが好適である。
一般式(1):
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、R1およびR2は、同一または相異なって炭素数1〜4のアルキレン基を示す。R3は、炭素数6〜13の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基または芳香脂肪族炭化水素基を示す。R4は、炭素数1〜4のアルキル基を示す。nは、8〜50の整数を示す。)
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物では、前記マクロポリオールが、ポリエステルポリオールおよび/またはポリカーボネートポリオールであることが好適である。
【0014】
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物では、前記ポリカーボネートポリオールが、非晶性ポリカーボネートジオールであることが好適である。
【0015】
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物では、前記ポリイソシアネートが、脂肪族ポリイソシアネートおよび/または脂環族ポリイソシアネートであることが好適である。
【0016】
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物では、前記ポリイソシアネートが、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物、および、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、2,5−または2,6−ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンもしくはその混合物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好適である。
【0017】
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物では、前記鎖伸長剤が、下記一般式(2)で示される化合物を含むことが好適である。
一般式(2):
【0018】
【化2】

【0019】
(式中、R5およびR6は、同一または相異なって炭素数1〜4のアルキル基を示す。R7およびR8は、同一または相異なって炭素数1〜4のアルキレン基を示す。mは、1〜3の整数を示す。)
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物では、感熱凝固温度が、40〜90℃であることが好適である。
【0020】
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物では、人工皮革の製造に用いられることが好適である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物は、良好な凝固性を発現することができる。そのため、本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物を不織布に含浸させた後、凝固させれば、不織布に水性ポリウレタン樹脂を均一に付着させることができる。その結果、最終製品の柔軟性や反発力を十分に確保することができ、さらには、優れた風合いを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物は、水性ポリウレタン樹脂(a)と、ラジカル重合開始剤(b)とを含有している。
【0023】
水性ポリウレタン樹脂(a)を得るには、まず、ポリイソシアネートと、マクロポリオールと、側鎖にポリオキシエチレン基を有するジオール(以下、ポリオキシエチレン側鎖含有ジオールとする。)とを、反応させることにより、イソシアネート基末端プレポリマーを得る。
【0024】
本発明において、ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0025】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−、2,3−または1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
【0026】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(H12MDI)、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物(HXDI)、2,5−または2,6−ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンもしくはその混合物(NBDI)、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0027】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(XDI)、1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TMXDI)、ω,ω′−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
【0028】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(MDI)、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TDI)、4,4′−トルイジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、m−またはp−フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4′−ジフェニルジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0029】
また、ポリイソシアネートとしては、上記したポリイソシアネートの多量体(例えば、二量体、三量体など)や、例えば、上記したポリイソシアネートあるいは多量体と、水との反応により生成するビウレット変性体、アルコールまたは下記の低分子量ポリオールとの反応により生成するアロファネート変性体、炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオン変性体、さらには、下記の低分子量ポリオールとの反応により生成するポリオール変性体などが挙げられる。
【0030】
上記ポリオール変性体に用いられる低分子量ポリオールとしては、例えば、ヒドロキシル基を2つ以上有する分子量60〜400の低分子量ポリオールであって、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール(1,4−ブタンジオール)、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、アルカン(炭素数7〜22)ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、アルカン−1,2−ジオール(炭素数17〜20)、水素化ビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、キシレングリコール、ビスヒドロキシエチレンテレフタレートなどの低分子量ジオール、例えば、グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノールおよびその他の脂肪族トリオール(炭素数8〜24)などの低分子量トリオール、例えば、テトラメチロールメタン、D−ソルビトール、キシリトール、D−マンニトール、D−マンニットなどのヒドロキシル基を4つ以上有する低分子量ポリオールなどが挙げられる。
【0031】
そして、上記したポリイソシアネートは、単独または2種以上併用してもよく、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネートから選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネートが挙げられる。ポリイソシアネートが、脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネートから選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネートであると、後述する水性ポリウレタン樹脂(a)の黄変性を低減することができる。
【0032】
より具体的には、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(H12MDI)、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物(HXDI)、および、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、2,5−または2,6−ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンもしくはその混合物(NBDI)から選択される。
【0033】
本発明において、マクロポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオール、天然油ポリオール、シリコーンポリオール、フッ素ポリオール、ポリオレフィンポリオールなどが挙げられる。
【0034】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリアルキレンオキサイド、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加反応させることによって得られる、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール(ランダムまたはブロック共重合体)が挙げられる。また、例えば、テトラヒドロフランの開環重合などによって得られるポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0035】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールの1種または2種以上と、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1−ジメチル−1,3−ジカルボキシプロパン、3−メチル−3−エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバチン酸、その他の脂肪族ジカルボン酸(炭素数11〜13)、水添ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ダイマー酸、ヘット酸などのカルボン酸、および、これらのカルボン酸などから誘導される酸無水物、例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2−アルキル(炭素数12〜18)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、さらには、これらのカルボン酸などから誘導される酸ハライド、例えば、シュウ酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、セバチン酸ジクロライドなどとの反応によって得られるポリエステルポリオールが挙げられる。また、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、例えば、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類を開環重合して得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオールなどのラクトン系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0036】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールなどと、ホスゲン、ジアルキルカーボネート、ジアリルカーボネート、アルキレンカーボネートなどからなる群から選択される少なくとも1種類とを反応させて得られる、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
【0037】
アクリルポリオールとしては、例えば、分子内に1つ以上のヒドロキシル基を有する重合性単量体と、これに共重合可能な別の単量体とを共重合させることによって得られる共重合体が挙げられる。ヒドロキシル基を有する重合性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2−ジヒドロキシメチルブチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシアルキルマレエート、ポリヒドロキシアルキルフマレートなどが挙げられる。また、これらと共重合可能な別の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜12)、マレイン酸、マレイン酸アルキル、フマル酸、フマル酸アルキル、イタコン酸、イタコン酸アルキル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、3−(2−イソシアネート−2−プロピル)−α−メチルスチレン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。そして、アクリルポリオールは、これら単量体を適当な溶剤および重合開始剤の存在下において共重合させることによって得ることができる。
【0038】
エポキシポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールと、例えば、エピクロルヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリンなどの多官能ハロヒドリンとを反応させることよって得られるエポキシポリオールが挙げられる。
【0039】
天然油ポリオールとしては、例えば、ひまし油、やし油などのヒドロキシル基含有天然油などが挙げられる。
【0040】
シリコーンポリオールとしては、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合可能な別の単量体として、ビニル基含有のシリコーン化合物、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが用いられる共重合体、および、末端アルコール変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0041】
フッ素ポリオールとしては、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合可能な別の単量体としてビニル基含有のフッ素化合物、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンなどが用いられる共重合体などが挙げられる。
【0042】
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ボリブタジエンポリオール、部分ケン価エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0043】
これらマクロポリオールは、数平均分子量が、例えば、300〜10000、好ましくは500〜5000であり、ヒドロキシル基当量が、例えば、100〜5000、好ましくは、160〜2500である。
【0044】
これらマクロポリオールは、単独または2種以上併用してもよく、好ましくは、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールが挙げられ、さらに好ましくは、ポリカーボネートポリオール、とりわけ、ポリカーボネートジオールが挙げられ、とりわけ好ましくは、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとの共重合体からなる非晶性ポリカーボネートジオール、1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとの共重合体からなる非晶性ポリカーボネートジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなる非晶性ポリカーボネートジオールが挙げられる。マクロポリオールが非晶性ポリカーボネートジオールであると、例えば、後述する水性ポリウレタン樹脂組成物を用いて、風合いに優れる人工皮革を作製することができる。
【0045】
本発明において、ポリオキシエチレン側鎖含有ジオールは、例えば、まず、ジイソシアネート(上記したジイソシアネート)と片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール(炭素数1〜4のアルキル基で末端封止したアルコキシエチレングリコール)とを、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールのヒドロキシル基(OH)に対するジイソシアネートのイソシアネート基(NCO)の当量比(NCO/OH)が、例えば、2〜50、好ましくは5〜20となる割合、つまり、NCOが過剰となる割合でウレタン反応させた後、必要により未反応のジイソシアネートを蒸留などにより除去することにより、ポリオキシエチレン基含有モノイソシアネートを得て、次いで、得られたポリオキシエチレン基含有モノイソシアネートと、ジアルカノールアミン(炭素数1〜4のジアルカノールアミン)とを、ジアルカノールアミンのアミノ基(NH)に対するポリオキシエチレン基含有モノイソシアネートのイソシアネート基(NCO)の当量比(NCO/NH)が、例えば、0.9〜1.1、好ましくは0.95〜1.05となる割合、つまり、NCOとNHがほぼ等量となる割合でウレア反応させることにより、得ることができる。
【0046】
このようなポリオキシエチレン側鎖含有ジオールの製造において、ジイソシアネートとしては、例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートが挙げられ、好ましくは、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(H12MDI)、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物(HXDI)、および、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、2,5−または2,6−ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンもしくはその混合物(NBDI)が挙げられる。
【0047】
また、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールは、メトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコールが挙げられ、その数平均分子量は、300〜3000であり、好ましくは、400〜2000である。
【0048】
また、ジアルカノールアミンは、炭素数1〜4のジアルカノールアミンであり、例えば、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミンなどの対称性ジアルカノールアミン、例えば、メタノールエタノールアミン、エタノールプロパノールアミンなどの非対称性ジアルカノールアミンが挙げられる。好ましくは、対称性ジアルカノールアミンが挙げられ、さらに好ましくは、ジエタノールアミンが挙げられる。
【0049】
このようにして得られたポリオキシエチレン側鎖含有ジオールは、ウレタン結合およびウレア結合を有し、例えば、下記一般式(1)で示される。
一般式(1):
【0050】
【化3】

【0051】
(式中、R1およびR2は、同一または相異なって炭素数1〜4のアルキレン基を示す。R3は、炭素数6〜13の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基または芳香脂肪族炭化水素基を示す。R4は、炭素数1〜4のアルキル基を示す。nは、8〜50の整数を示す。)
上記一般式(1)において、R1およびR2は、ジアルカノールアミン残基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などの炭素数1〜4のアルキレン基が挙げられる。また、R3は、ジイソシアネート残基であり、例えば、炭素数6〜13の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基または芳香脂肪族炭化水素基などが挙げられる。さらに、R4は、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール残基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
【0052】
そして、イソシアネート基末端プレポリマーを得るには、例えば、ポリイソシアネートと、マクロポリオールと、ポリオキシエチレン側鎖含有ジオールとを、マクロポリオールおよびポリオキシエチレン側鎖含有ジオールのヒドロキシル基(OH)(後述する低分子量ポリオールを配合する場合には、その低分子量ポリオールのヒドロキシル基を含む。)に対するポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)の当量比(NCO/OH)が、例えば、1.1〜2.5、好ましくは、1.2〜2.0の割合となるように処方(混合)し、バルク重合や溶液重合などの公知の重合方法によって反応させる。
【0053】
バルク重合では、例えば、窒素気流下において、ポリイソシアネートを撹拌しつつ、これに、マクロポリオールおよびポリオキシエチレン側鎖含有ジオールを加えて、反応温度80〜160℃で、2〜8時間程度反応させる。
【0054】
溶液重合では、例えば、有機溶媒に、ポリイソシアネート、マクロポリオールおよびポリオキシエチレン側鎖含有ジオールを加えて、反応温度50〜100℃で、2〜15時間程度反応させる。
【0055】
有機溶媒としては、イソシアネート基に対して不活性で、かつ、親水性に富み、除去が容易な低沸点溶媒である、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、例えば、テトラヒドロフランなどのエーテル類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類などが挙げられる。
【0056】
また、上記重合反応においては、その目的および用途に応じて、上記した低分子量ポリオールを適宜配合することもできる。このような低分子量ポリオールとしては、例えば、
ヒドロキシル基を2つ以上有する分子量60〜400の低分子量ポリオールであって、例えば、上記した低分子ポリオールなどが挙げられ、好ましくは、ネオペンチルグリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0057】
さらに、上記重合反応においては、必要に応じて、例えば、アミン系、スズ系、鉛系などの公知のウレタン化触媒を添加してもよく、また、得られるイソシアネート基末端プレポリマーから遊離の(未反応の)ポリイソシアネートを、例えば、蒸留や抽出などの公知の除去手段により除去してもよい。
【0058】
また、この反応において、ポリオキシエチレン側鎖含有ジオールは、例えば、イソシアネート基末端プレポリマー全重量に対して、ポリオキシエチレン基の含有量が、1〜15重量%、好ましくは、3〜10重量%となるように配合される。ポリオキシエチレン基の含有量が、この範囲にあれば、後述する水性ポリウレタン樹脂組成物を用いて、風合いに優れる人工皮革を作製することができる。
【0059】
このようにして得られるイソシアネート基末端プレポリマーは、その分子末端に、2つ以上の遊離のイソシアネート基を有し、その側鎖にポリオキシエチレン基を有する、自己乳化タイプのポリウレタンプレポリマーであって、そのイソシアネート基の含有量が、例えば、0.3〜10重量%、好ましくは、0.5〜5重量%である。また、イソシアネート基の平均官能基数は、例えば、1.5〜3.0、好ましくは、1.9〜2.2であり、その数平均分子量は、例えば、1000〜30000、好ましくは、1500〜15000である。
【0060】
水性ポリウレタン樹脂(a)を得るには、次いで、得られたイソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを反応させる。
【0061】
本発明において、鎖伸長剤は、1分子中に少なくとも2つ以上の活性水素基を含有している。
【0062】
活性水素基としては、イソシアネート基と反応する活性水素基であって、例えば、アミノ基、ヒドロキシル基などが挙げられ、好ましくは、アミノ基が挙げられる。また、鎖伸長剤に含有される活性水素基の当量は、好ましくは、224〜1900mgKOH/gであり、さらに好ましくは、350〜1500mgKOH/gである。活性水素基の当量がこの範囲にあれば、耐久性に優れる水性ポリウレタン樹脂(a)を得ることができる。
【0063】
このような鎖伸長剤としては、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジアミン)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどのジアミン類、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどのポリアミン類、例えば、N−(2−アミノエチル)エタノールアミンなどのアミノアルコール類などが挙げられる。これら鎖伸長剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0064】
また、本発明において、鎖伸長剤は、好ましくは、1分子中に少なくとも2つ以上の活性水素基と、アルコキシシリル基とを含有する化合物を含んでいる。
【0065】
アルコキシシリル基において、Si原子に結合するアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基などの炭素数1〜4のアルコキシ基などが挙げられ、好ましくは、メトキシ基、エトキシ基が挙げられる。また、上記アルコキシ基のSi原子への結合数は、通常1〜3つ、好ましくは、1〜2つである。
【0066】
このような1分子中に少なくとも2つ以上の活性水素基とアルコキシシリル基とを含有する化合物としては、例えば、下記一般式(2)で示される。
一般式(2):
【0067】
【化4】

【0068】
(式中、R5およびR6は、同一または相異なって炭素数1〜4のアルキル基を示す。R7およびR8は、同一または相異なって炭素数1〜4のアルキレン基を示す。mは、1〜3の整数を示す。)
上記一般式(2)において、R5およびR6としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。また、R7およびR8としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などの炭素数1〜4のアルキレン基が挙げられる。
【0069】
より具体的には、例えば、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルジエトキシシラン、N,N´-ビス〔a-(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミンなどが挙げられる。
【0070】
これらは、単独または2種以上を併用してもよく、好ましくは、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。
【0071】
そして、水性ポリウレタン樹脂(a)を得るには、得られたイソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを水中で反応させて、分散する。これによって、イソシアネート基末端プレポリマーが鎖伸長剤によって鎖伸長されたポリウレタン樹脂が、水中に分散した水性ポリウレタン樹脂(a)の水分散液を得ることができる。
【0072】
イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを水中で反応させるには、例えば、まず、イソシアネート基末端プレポリマーに水を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、これに鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長する。
【0073】
イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させるには、攪拌下、イソシアネート基末端プレポリマーに水を徐々に添加する。水は、イソシアネート基末端プレポリマー100重量部に対して、好ましくは65〜1000重量部の割合となるように添加される。
【0074】
そして、水分散されたイソシアネート基末端プレポリマーに鎖伸長剤を、攪拌下、鎖伸長剤の活性水素基(NHおよびOHなど)に対するイソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基(NCO)の当量比(NCO/NHおよびOHなど)が、例えば、0.2〜1.1、好ましくは、0.3〜1.0の割合となるように、添加する。鎖伸長剤は、好ましくは、40℃以下の温度で添加し、添加終了後は、さらに撹拌しつつ、例えば、常温にて反応を完結させる。
【0075】
なお、イソシアネート基末端プレポリマーが溶液重合により得られている場合には、イソシアネート基末端プレポリマーの反応終了後に、有機溶媒を、例えば、減圧下において、適宜の温度で加熱することにより除去する。
【0076】
このようにして得られる水性ポリウレタン樹脂(a)の水分散液は、その固形分(つまり、水性ポリウレタン樹脂(a))が、例えば、10〜60重量%、好ましくは、20〜50重量%となるように調製される。また、この水性ポリウレタン樹脂(a)(固形分)は、そのウレア基((NH)CO)とウレタン基(NHCOO)の仕込比((NH)CO/NHCOO)が、例えば、0.05〜1.2、好ましくは、0.1〜0.8、その数平均分子量が、例えば、3000〜1000000、好ましくは、5000〜500000、そのポリオキシエチレン基の含有量が、例えば、1〜15重量%、好ましくは、3〜10重量%、そのSi原子の含有量が、例えば、0.05〜1.5重量%、好ましくは、0.075〜1.0重量%である。
【0077】
本発明において、ラジカル重合開始剤(b)は、水溶性および/または水分散性(水性)のラジカル重合開始剤(水性ラジカル重合開始剤)であって、例えば、過硫酸塩化合物、有機過酸化物、アゾ系化合物などが挙げられる。
【0078】
過硫酸塩化合物としては、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0079】
有機過酸化物としては、例えば、ラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイドなどが挙げられる。
【0080】
アゾ系化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン、メチルプロパンイソ酪酸ジメチル、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレート、高分子アゾ重合開始剤などが挙げられる。
【0081】
高分子アゾ重合開始剤としては、一般に市販されている製品を用いることができ、そのような製品としては、例えば、ポリジメチルシロキサンユニット含有高分子アゾ重合開始剤(例えば、VPSシリーズ、和光純薬工業株式会社製)、ポリエチレングリコールユニット含有高分子アゾ重合開始剤(VPEシリーズ、和光純薬工業株式会社製)などが挙げられる。
【0082】
これらラジカル重合開始剤(b)は、単独または2種以上併用してもよく、好ましくは、過硫酸塩化合物が挙げられる。
【0083】
ラジカル重合開始剤(b)は、例えば、ラジカル重合開始剤(b)を、水性ポリウレタン樹脂(a)の水分散液に直接添加して配合する。
【0084】
ラジカル重合開始剤(b)の配合割合は、上記した水性ポリウレタン樹脂(a)の水分散液の固形分(つまり、水性ポリウレタン樹脂(a))100重量部に対して、ラジカル重合開始剤(b)が、例えば、0.01〜10重量部、好ましくは、0.05〜5重量部である。
【0085】
そして、このようにして得られる本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物は、感熱凝固温度が、40〜90℃、好ましくは、45〜85℃、さらに好ましくは、45〜80℃であり、感熱ゲル化性に優れる。
【0086】
なお、感熱ゲル化性を促進する添加剤として、例えば、曇点を有する非イオン性の界面活性剤や、硫酸ナトリウム、塩化カルシウムなどの無機塩を添加して、感熱凝固温度を調整することもできる。
【0087】
このようにして得られる本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物は、良好な凝固性を発現することができる。そのため、本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物を不織布に含浸させた後、凝固させれば、不織布に水性ポリウレタン樹脂を均一に付着させることができる。その結果、最終製品の柔軟性や反発力を十分に確保することができ、さらには、優れた風合いを実現することができる。
【0088】
すなわち、本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物は、上記した通り、凝固性に優れるため、例えば、乾式法におけるスチーム凝固時には、水性ポリウレタン樹脂組成物を良好に凝固させることができる。さらに、本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物は、感熱ゲル化性に優れるため、ドライ乾燥時には、水の移行による水性ポリウレタン樹脂組成物の局在化を抑制することができる。そのため、不織布に含浸したポリウレタン樹脂組成物が、不織布の表面に均一に分散し、その結果、最終製品の柔軟性や反発力、風合いなどを良好に確保することができる。
【0089】
なお、本発明の水性ポリウレタン樹脂組成物は、上記したような人工皮革に限らず、例えば、自動車、電子機器、建材、塗料、接着剤などの各種用途にも用いることができる。
【実施例】
【0090】
次に、本発明を合成例、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。
【0091】
合成例1
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、数平均分子量1000のメトキシポリエチレングリコール1000g(東邦化学工業株式会社製)と、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(三井化学ポリウレタン株式会社製)1682gを仕込み、窒素雰囲気下90℃で9時間反応させた。得られた反応液を薄膜蒸留して、未反応の1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを取り除き、ポリオキシエチレン基含有モノイソシアネート(I)を得た。
【0092】
次いで、攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、ジエタノールアミン82.5gを仕込み、窒素雰囲気下、空冷しながら上記ポリオキシエチレン基含有モノイソシアネート(I)917.5gを、反応温度が70℃を超えないように徐々に滴下した。滴下終了後、約1時間、窒素雰囲気下において70℃で攪拌し、イソシアネート基が消失したことを確認し、ポリオキシエチレン側鎖含有ジオール(II)を得た。
【0093】
調製例1
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、合成例1で合成したポリオキシエチレン側鎖含有ジオール(II)45.4g、数平均分子量1000の非晶性ポリカーボネートジオール(T−5651 旭化成ケミカルズ株式会社製)232.2g、および、アセトン228.4gを仕込んだ。次いで、1,3−(ビスイソシアナトメチル)シクロヘキサン(三井化学ポリウレタン株式会社製)65.0g、オクチル酸第一錫0.07gを添加し、55℃で8時間反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。得られたイソシアネート基末端プレポリマー中のポリオキシエチレン基の含有量は、10.1重量%であった。
【0094】
次いで、この反応液を30℃まで冷却し、イオン交換水583.4gを徐々に添加してイソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、ヘキサメチレンジアミン7.4gと水66.6gを混合したアミン水溶液を加えて鎖伸長し、さらに、アセトンを留去することにより、固形分35重量%の水性ポリウレタン樹脂1の水分散液を得た。この水性ポリウレタン樹脂1の水分散液の固形分中のポリオキシエチレン基の含有量は、9.9重量%で、平均粒子径は140nmであった。
【0095】
調製例2
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、合成例1で合成したポリオキシエチレン側鎖含有ジオール(II)33.5g、数平均分子量2000のポリカーボネートジオール(T−5652 旭化成ケミカルズ株式会社製)253.1g、および、アセトン227.2gを混合した。次いで、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(デグサ社製)54.2g、オクチル酸第一錫0.07gを添加し、55℃で12時間反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。得られたイソシアネート基末端プレポリマー中のポリオキシエチレン基の含有量は、7.5重量%であった。
【0096】
次いで、この反応液を30℃まで冷却し、イオン交換水613.2gを徐々に添加してイソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(KBM602 信越化学工業株式会社製 Si原子含有量13.6重量%)6.1gとヘキサメチレンジアミン3.1g、水36.8gを加えたアミン水溶液により鎖伸長し、さらに、アセトンを留去することにより、固形分35重量%の水性ポリウレタン樹脂2の水分散液を得た。この水性ポリウレタン樹脂2の水分散液の固形分中のポリオキシエチレン基の含有量は、7.3重量%であり、Si原子の含有量は、0.24重量%、平均粒子径は240nmであった。
【0097】
調製例3
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、合成例1で合成したポリオキシエチレン側鎖含有ジオール(II)28.4g、数平均分子量2000のポリカーボネートジオール(C−2090 クラレ株式会社製)267.7g、および、アセトン229.7gを混合した。次いで、イソホロンジイソシアネート(デグサ社製)48.6g、オクチル酸第一錫0.07gを添加し、55℃で10時間反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。得られたイソシアネート基末端プレポリマー中のポリオキシエチレン基の含有量は、6.3重量%であった。
【0098】
次いで、この反応液を30℃まで冷却し、イオン交換水628.4gを徐々に添加してイソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(KBM602 信越化学工業株式会社製 Si原子含有量13.6重量%)2.6gとエチレンジアミン2.8g、水21.6gを加えたアミン水溶液により鎖伸長し、さらに、アセトンを留去することにより、固形分35重量%の水性ポリウレタン樹脂3の水分散液を得た。この水性ポリウレタン樹脂3の水分散液の固形分中のポリオキシエチレン基の含有量は、6.2重量%であり、Si原子の含有量は、0.10重量%、平均粒子径は350nmであった。
【0099】
調製例4
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、合成例1で合成したポリオキシエチレン側鎖含有ジオール(II)33.5g、数平均分子量2500のポリエステルジオール(イソフタル酸/セバチン酸/ネオペンチルグリコール/エチレングリコール=1/1/1/1(モル比))263.0g、および、アセトン228.7gを混合した。次いで、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(デグサ社製)46.6g、オクチル酸第一錫0.07gを添加し、55℃で12時間反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。得られたイソシアネート基末端プレポリマー中のポリオキシエチレン基の含有量は、7.4重量%であった。
【0100】
次いで、この反応液を30℃まで冷却し、イオン交換水622.0gを徐々に添加してイソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(KBM602 信越化学工業株式会社製 Si原子含有量13.6重量%)4.3gとヘキサメチレンジアミン2.7g、水28.0gを加えたアミン水溶液により鎖伸長し、さらに、アセトンを留去することにより、固形分35重量%の水性ポリウレタン樹脂4の水分散液を得た。この水性ポリウレタン樹脂4の水分散液の固形分中のポリオキシエチレン基の含有量は、7.3重量%であり、Si原子の含有量は、0.17重量%、平均粒子径は200nmであった。
【0101】
実施例1
調製例1で得られた水性ポリウレタン樹脂1の水分散液と、過硫酸アンモニウムとを、水性ポリウレタン樹脂1の水分散液の固形分100重量部に対して、過硫酸アンモニウムが2重量部となるように配合し、その後、水によって全体を固形分20%に調製し、水性ポリウレタン樹脂組成物を得た。
【0102】
実施例2〜7、および、比較例1〜3
表1に示す配合処方で、調製例2〜4で得られた水性ポリウレタン樹脂の水分散液と、ラジカル重合開始剤および添加剤とを配合した以外は、実施例1と同様の方法により、実施例2〜7、および、比較例1〜3の水性ポリウレタン樹脂組成物を得た。
【0103】
なお、表1中における、VPE−0601(商品名)は、ポリオキシエチレンセグメント含有アゾ系ラジカル重合開始剤(ポリエチレングリコールユニット含有高分子アゾ重合開始剤、和光純薬工業株式会社製)である。
【0104】
評価
各実施例および各比較例によって得られた水性ポリウレタン樹脂組成物について、以下の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0105】
1)感熱凝固温度
各実施例および各比較例によって得られた水性ポリウレタン樹脂組成物20gを、内径12mmの試験管に投入して、温度計を差し込んだ後、試験管を封止した。その後、試験管を95℃の温水浴に浸漬して、温度を上昇させ、水性ポリウレタン樹脂が流動性を失った温度を、感熱凝固温度として測定した。
【0106】
2)凝固性
各実施例および各比較例によって得られた水性ポリウレタン樹脂組成物20gを、内径12mmの試験管に投入して、温度計を差し込んだ後、試験管を封止した。その後、試験管を95℃の温水浴に3分間浸漬し、水性ポリウレタン樹脂組成物を凝固させた。次いで、水性ポリウレタン樹脂組成物を室温に戻した後、10分後、30分後、1日後における水性ポリウレタン樹脂組成物の流動を、目視により確認して、凝固性を評価した。
【0107】
○:流動が確認されなかった。
【0108】
△:やや流動が確認された。
【0109】
×:流動が確認された(液状であった)。
【0110】
【表1】

【0111】
3)ポリオキシエチレン鎖の切断度合
実施例2の調製液(水性ポリウレタン樹脂2の水分散液と過硫酸アンモニウムとの混合物)、および、比較例1の調製液(水性ポリウレタン樹脂2の水分散液のみ)を、それぞれ内径12mmの試験管に20g投入し、封止して、95℃の温水に3分浸漬して凝固させた後、遠心分離により凝固物と水層を分離した。この水層部分をLC−MSにより分析した結果、実施例2の調製液からは水性ポリウレタン樹脂分に対して、1.0重量%のポリオキシエチレン鎖由来のフラグメント成分を検出し、比較例1の調製液からは水性ポリウレタン樹脂分に対して、0.3重量%のポリオキシエチレン鎖由来のフラグメントを検出した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖から枝分れする側鎖にポリオキシエチレン基を1〜15重量%含有し、前記主鎖の末端に2つ以上のイソシアネート基を有するイソシアネート基末端プレポリマーと、
前記イソシアネート基と反応する2つ以上の活性水素基を含有する鎖伸長剤とを少なくとも反応させることにより得られる水性ポリウレタン樹脂(a)と、
ラジカル重合開始剤(b)とを含有することを特徴とする、水性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記ラジカル重合開始剤(b)が、水溶性および/または水分散性であり、
前記水性ポリウレタン樹脂(a)100重量部に対して、0.01〜10重量部含有されることを特徴とする、請求項1に記載の水性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記ラジカル重合開始剤(b)が、過硫酸塩化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の水性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記イソシアネート基末端プレポリマーが、ポリイソシアネートと、マクロポリオールと、下記一般式(1)で示される化合物とを少なくとも反応させることにより得られることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂組成物。
一般式(1):
【化1】

(式中、R1およびR2は、同一または相異なって炭素数1〜4のアルキレン基を示す。R3は、炭素数6〜13の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基または芳香脂肪族炭化水素基を示す。R4は、炭素数1〜4のアルキル基を示す。nは、8〜50の整数を示す。)
【請求項5】
前記マクロポリオールが、ポリエステルポリオールおよび/またはポリカーボネートポリオールであることを特徴とする、請求項4に記載の水性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリカーボネートポリオールが、非晶性ポリカーボネートジオールであることを特徴とする、請求項5に記載の水性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリイソシアネートが、脂肪族ポリイソシアネートおよび/または脂環族ポリイソシアネートであることを特徴とする、請求項4〜6のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリイソシアネートが、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物、および、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、2,5−または2,6−ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンもしくはその混合物からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項4〜7のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項9】
前記鎖伸長剤が、下記一般式(2)で示される化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂組成物。
一般式(2):
【化2】

(式中、R5およびR6は、同一または相異なって炭素数1〜4のアルキル基を示す。R7およびR8は、同一または相異なって炭素数1〜4のアルキレン基を示す。mは、1〜3の整数を示す。)
【請求項10】
感熱凝固温度が、40〜90℃であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項11】
人工皮革の製造に用いられることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−150398(P2010−150398A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330205(P2008−330205)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(501140544)三井化学ポリウレタン株式会社 (115)
【Fターム(参考)】