説明

水性分散体

接着剤接合を形成するための方法および組成物が記載される。その方法は、水性分散体を基体上に被着させて選択的に活性化可能なコーティングを形成し、該水性分散体は(A)接着剤を形成することができるポリマー、(B)少なくとも1種類の分散剤;および(C)粘着性樹脂、ワックスもしくは油のうちの少なくとも1つを含み、該分散体は約0.1〜約100ミクロンの平均粒子径および5未満の多分散性のうちの少なくとも一方を有し;並びにコートされた基体の少なくとも一部を選択的に活性化して接着剤接合を形成することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、35U.S.C.§119(e)に準じる、米国仮出願第60/697,087号に対する優先権を主張し、この仮出願は参照によりその全体が組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
接着剤は様々な商業用途、例えば、製品組立および包装に広く用いられる。接着剤の特定の2つのタイプが感圧型接着剤(PSA)および熱溶融型接着剤(HMA)として公知である。PSAは接着剤の明確に区別された範疇であり、乾燥(溶媒非含有)形態において、室温で活動的かつ恒久的に粘性であり、より多くの圧力を必要とすることなく様々な表面に接着する。それらは水、溶媒もしくは熱による活性化を必要としない。対照的に、HMAは、典型的には、それが溶融状態にある間に基体に塗布し、冷却して接着剤層を硬化させる。
【0003】
最も商業的に入手可能なHMAは、全ての成分の完全な溶融を確実なものとし、その上、満足のいく塗布粘度を達成するのに175℃以上の温度を必要とする。150℃未満の温度で塗布することができる接着剤配合物を低分子量成分もしくは高ワックス含量を用いて調製することもできるが、塗布粘度および接着特性に難点がある。接着を改善するため、より柔軟な、もしくはより非晶質の成分を添加することもできるが、これらの成分は有効耐熱性を低下させる。
【0004】
高い耐熱性および、それに加えて、良好な耐冷性を有するHMAの使用は、熱充填包装用途、例えば、次に冷蔵もしくは凍結が施される溶融チーズ、ヨーグルトもしくは焼きたて商品に用いられるカートン(cartons)、ケース(cases)もしくはトレー(trays)に対する封着もしくは密閉操作において重要である。
【0005】
PSAは様々な用途において用いられているが、これはそれらが多くの望ましい特性、例えば、除去性および塗布の容易性をもたらすためである。より恒久的で非常に円滑な結合のため、従来のPSAの幾つかは特定の基体上でそれらの接着を保持および維持するのに十分な強度を必ずしも有し得るものではない。さらに、従来のPSAは、特定の物質に塗布されたとき、高温もしくは高湿度への露出に耐えることができないことがある。例えば、「気体放出性物質」として公知であり、かつ接着が困難であるアクリルシートおよびポリカーボネートシート上へのPSAの塗布は、泡立ちおよび剥離を生じ得る。
【0006】
硬化性接着剤(例えば、熱もしくは光硬化)は基体が実質的な恒久性および高強度の接着を必要とする用途において用いられている。光学製品用途(例えば、ガラスはめ)には硬化性接着剤が望ましいものであるが、これはそれらが光学的に透明で強力に接着された積層体(例えば、層状基体)をもたらし得るためである。加えて、例えば、製紙業者および印刷業者はPSAを製本用途において用いる。
【0007】
強度および塗布の容易さの両者を達成するため、光学用途において用いることができるハイブリッド組成物が開発されている。例えば、光硬化性ポリエステル系接着剤がプラスチック板はめ用途に用いられている。デジタルビデオディスク(DVDもしくは光学ディスク)接着およびCRT用途においては、液体接着剤配合物が用いられている。逆反射物品の製造におけるビーズ接着には、硬化性ポリマーネットワークが示唆されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、強度および塗布が、多くの光学基体/積層体が要求とする唯一の基準というわけではない。特定の光学製品は苛酷な環境条件、例えば、熱、UV(太陽)光、水等に晒される。例えば、車両用の風よけは一般に野外条件に置かれ、これはそれらをあらゆるタイプの天候に晒す。これらの風よけは、典型的には、基体、例えば、アクリルもしくはポリカーボネートを含み、これらは多層光学フィルム(MLOF)(3M Co;St.Paul、Minn.)から製造される太陽もしくは赤外(IR)反射フィルムに接着されている。これらの材料は、層間の接着が損なわれたり弱まったりした場合、光学的に視界が遮られることがある。
【0009】
従来技術法のフィルム形成性ポリマーの1つ並びに熱可塑性ポリマー、熱可塑性樹脂、熱溶融型接着性組成物およびそれらの混合物からなる群より選択される粒状熱可塑性成分が米国特許第6,548,579号に開示されている。この熱可塑性成分は約10ミクロン〜約1,500ミクロンの平均粒子径を有する。低温で、様々な基体に、様々な環境条件の下で塗布することができる、改善された接着剤に対する必要性が当分野において継続している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様において、本発明は、接着剤接合の形成方法であって、水性分散体を基体上に被着させて選択的に活性化可能なコーティングを形成し、該水性分散体は(A)接着剤を形成することができるポリマー;(B)少なくとも1種類の分散剤;および(C)粘着性樹脂、ワックスもしくは油のうちの少なくとも1つを含み、該分散体は約0.1〜約100ミクロンの平均粒子径および5未満の多分散性のうちの少なくとも1つを有し;並びにコートされた基体の少なくとも一部を選択的に活性化して接着剤接合を形成することを含む方法に関する。
【0011】
別の態様において、本発明は、(A)接着剤を形成することができるポリマー;(B)粘着性樹脂、ワックスもしくは油のうちの少なくとも1つ;(C)分散剤;および(D)水を含む水性熱溶融型接着性分散体であって、約0.1〜約100ミクロンの平均粒子径および5未満の多分散性のうちの少なくとも一方を有する水性熱溶融型接着性分散体に関する。
【0012】
別の態様において、本発明は、(A)プロピレン系コポリマーおよびホモポリマー並びにスチレン系コポリマーおよびブロックコポリマーからなる群より選択される少なくとも1つのものである、接着剤を形成することができるポリマー;(B)少なくとも1種類の分散剤;(C)粘着性樹脂、ワックスもしくは油のうちの少なくとも1つ;並びに(D)水を含む水性感圧型接着剤であって、分散体が約0.1〜約100ミクロンの平均粒子径および5未満の多分散性のうちの少なくとも一方を有する水性感圧型接着剤に関する。
【0013】
本発明の他の態様および利点は以下の説明および添付の請求の範囲から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の態様は、他の比較的接合が容易な基体はもちろんのこと、幾つかの異なる「接合が困難な」基体、例えば、木材、クレーコート厚紙(clay-coated cardboarbs)、ポリオレフィンフィルムに塗布することができる接着性組成物に関する。特には、本発明の実施形態は、接着剤接合を選択的に形成し、かつ基体をコーティングする方法であって、接着性化合物を形成することができるポリマー、粘着性樹脂、ワックスもしくは油のうちの少なくとも1つ、および分散剤を含む水性分散体を用いる方法に関する。用いられるポリマー、粘着性樹脂、ワックスもしくは油および/または分散剤の具体的なタイプは、それらが接着性組成物を形成することができる限り、限定されるものではない。
【0015】
ここで用いられる場合、「接着剤」という用語は、2つの基体を各々の表面への接着もしくは接合によって一緒に接合するのに用いることができる物質もしくは組成物を指す。
【0016】
換言すると、本発明の実施形態による組成物および方法を用いることにより、接着性組成物を形成するための前駆体を含む分散体が創出される。重要なことには、活性化可能なコーティングは(HMAの場合には熱の適用により、PSAの場合には圧力の適用により)後に活性化することができる。これは、前駆分散体を(例えば、水溶液として)保存することができ、もしくは、その代わりに、分散体を基体に被着させて基体上の非活性化(しかしながら、潜在的に乾燥した)コーティングとして輸送できることを意味する。重要なことには、活性化可能なコーティングは(HMAの場合には熱の適用により、PSAの場合には圧力の適用により)後に、および/もしくは接合が望ましい特定の基体位置で活性化できる。選択的に活性化可能は、後に、並びに/または接合を達成するのに十分な熱および/もしくは圧力が適用される位置でのみ接合を形成できることを意味する。
【0017】
配合された接着剤は以下の代表的な用途において用いることができる。製本、ケースおよび/もしくはカートン封着、一般的な包装、家電製品、ドアおよび木工品、衛生用品、おむつ、靴および家具。接着剤のさらなる用途には、これらに限定されるものではないが、カーペットの縫い目のシールテープ、積層体、製品組立、不織構築体並びにポッティングおよび封入化合物が含まれる。
【0018】
ここで説明される水性分散体の実施形態は、以下に説明される成分に加えて、水を含む。ここで用いられる「分散体」という用語は、連続液体媒体中の微細固体もしくは液体を指す。水性分散体は連続液体媒体が水である分散体である。上述のように、本発明の実施形態は、接着性組成物を形成することができるポリマー、少なくとも1種類の粘着性樹脂、ワックスもしくは油、および分散剤を含む分散体から製造される水性分散体および接着性組成物に関する。当業者は、これらの群の各々からの複数の成分が使用可能であることを理解するであろう。
ポリマー:
幾つかの異なるポリマーを本発明の実施形態による分散体および接着剤の基本成分として用いることができる。例えば、エチレン酢酸ビニル(EVA)系ポリマーを用いることができる。EVAコポリマーと共に用いられるワックスおよび樹脂のタイプおよび量は接着剤の硬化時間および残留粘着を制御し得る。幾つかの場合においては、特殊用途のEVA接着剤に充填剤を添加することができる。本発明の他の実施形態では、エチレン系ポリマー、プロピレン系ポリマー、例えば、VERSIFY(商標)(The Dow Chemical Company、Midland、MIから入手可能)もしくはVISTAMAXX(商標)(Exxon−Mobil、Inc.、Houston、TXから入手可能)、プロピレン−エチレンコポリマー、非晶質ポリアルファ−オレフィン、ポリアミド、ブロックコポリマーおよび/または当分野において公知の他のポリマーを用いることができる。
【0019】
他のポリマーには、例えば、エチレンエチルアクリレート(EEA)、エチレンアクリル酸(EAA)(その一例は、PRIMACOR(商標)(The Dow Chemical Company、Midland、Michiganから入手可能)として市販される)もしくはエチレン−メタクリル酸コポリマー、例えば、NUCREL(商標)(E.I.DuPont de Nemoursの商標)およびESCOR(商標)(ExxonMobilの商標)の名称で入手可能なもの並びに米国特許第4,599,392号、第4,988,781号および第5,938,437号(これらの各々は参照によりその全体がここに組み込まれる)に記載されるものが含まれる。EAAおよびEMAのイオノマーも明白に組み込まれ、その一例はSURLYN(商標)(E.I.DuPont de Nemoursの商標)である。他のポリマーには、エチレンエチルアクリレート(EEA)コポリマー、エチレンメチルメタクリレート(EMMA)、エチレンブチルアクリレート(EBA)、スチレン−イソプレン−スチレンコポリマー、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマーに加えて、幾つかの他のスチレンコポリマー(SEBS、SEPS等)、ポリウレタン塩化ポリビニル、ラテックスニトリル、アクリロニトリルコポリマー、アクリル類(純粋なアクリル類に加えてスチレンアクリル類およびビニルアクリル類)およびポリイソブチレンが含まれる。加えて、エチレンブチルアクリレート(EnBA)およびエポキシ化ポリブタジエン(PBE)のようなポリマーを用いることができる。合成ポリマーは、本発明の幾つかの実施形態で用いられる。
【0020】
さらに、改質ポリマーを用いることができ、例えば、グラフト化、架橋もしくは他の修飾を本発明の実施形態における上記および下記に開示されるポリマーに対してなし得ることは理解されるであろう。例えば、ビス(スルホニル)アジドを、米国特許第6,593,005号(これは参照によりその全体が組み込まれる)に記載される技術に従い、架橋剤として用いることができる。他の例には、無水マレイン酸(HAH)がグラフト化された低密度ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレンもしくはそれらの組み合わせが含まれる。その上、本発明の特定の実施形態では加水分解性基を含まないポリマー(「非加水分解性ポリマー」)を用いることができる。
【0021】
適切なポリマーの非包括的なリストには、アルファ−オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンおよび1−ドデセンの、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ペンテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−1−ブテンコポリマーおよびプロピレン−1−ブテンコポリマーによって典型的に表される、ホモポリマーおよびコポリマー(エラストマーを含む);エチレン−ブタジエンコポリマーおよびエチレン−エチリデンノルボルネンコポリマーによって典型的に表される、共役もしくは非共役ジエンを含むアルファ−オレフィンのコポリマー(エラストマーを含む);並びにポリオレフィン(エラストマーを含む)、例えば、エチレン−プロピレン−ブタジエンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエンコポリマー、エチレン−プロピレン−1,5−ヘキサジエンコポリマーおよびエチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンコポリマーによって典型的に表される、共役もしくは非共役ジエンを含む、2種類以上のアルファ−オレフィンのコポリマー;エチレン−ビニル化合物コポリマー、例えば、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、エチレン−塩化ビニルコポリマー、エチレンアクリル酸もしくはエチレン−(メタ)アクリル酸コポリマーおよびエチレン−(メタ)アクリレートコポリマー;スチレンコポリマー(エラストマーを含む)、例えば、ポリスチレン、ABS、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、α−メチルスチレン−スチレンコポリマー、スチレンビニルアルコール、スチレンアクリレート、例えば、スチレンメチルアクリレート、スチレンブチルアクリレート、スチレンブチルメタクリレート、並びにスチレンブタジエンおよび架橋スチレンポリマー;並びにスチレンブロックコポリマー(エラストマーを含む)、例えば、スチレン−ブタジエンコポリマーおよびそれらの水和物並びにスチレン−イソプレン−スチレントリブロックコポリマー;ポリビニル化合物、例えば、塩化ポリビニル、塩化ポリビニリデン、塩化ビニル−塩化ビニリデンコポリマー、ポリメチルアクリレートおよびポリメチルメタクリレート;ポリアミド、例えば、ナイロン6、ナイロン6,6およびナイロン12;熱可塑性ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレート;ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド等;並びにポリ−ジシクロペンタジエンポリマーおよび関連ポリマー(コポリマー、ターポリマー)を含むガラス質炭化水素系樹脂;飽和モノ−オレフィン、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルおよび酪酸ビニル等;ビニルエステル、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ドデシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、フェニルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートおよびブチルメタクリレート等を含む、モノカルボン酸のエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドおよびそれらの混合物;並びに開環メタセシスおよび交差メタセシス重合等によって生じる樹脂が含まれる。これらの樹脂は単独で、もしくは2種類以上の組み合わせで用いることができる。
【0022】
幾つかの実施形態においては、分散体中の基本ポリマーの1以上が、本発明の譲受人によって発明されたエチレン/α−オレフィンブロックインターポリマー(以下、「ブロックインターポリマー」、「エチレン/α−オレフィンインターポリマー」もしくはそれらの変形)を含み得る。これらのポリマーは、少なくとも2004年3月17日出願の米国仮出願第60/553,906号;2005年3月17日出願の米国仮出願第60/662,937号;2005年3月17日出願の米国仮出願第60/662,939号;2005年3月17日出願の米国仮出願第60/5662938号;2005年3月17日出願のPCT出願PCT/US2005/008916;2005年3月17日出願のPCT出願PCT/US2005/008915;および2005年3月17日出願のPCT出願PCT/US2005/008917に開示され、これらの全ては参照によりそれらの全体がここに組み込まれる。
【0023】
エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、エチレンおよび1種類以上の共重合性α−オレフィンコモノマーを、化学的もしくは物理的特性が異なる2種類以上の重合モノマー単位の複数(すなわち、2以上)のブロックもしくはセグメント(ブロックインターポリマー)、好ましくは、マルチブロックコポリマーを特徴とする重合形態で含む。幾つかの実施形態において、このマルチブロックコポリマーは以下の式で表すことができ、
(AB)n
式中、nは少なくとも1、好ましくは、1を上回る整数、例えば、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100もしくはそれを上回り;「A」は硬質ブロックもしくはセグメントを表し;および「B」は軟質ブロックもしくはセグメントを表す。好ましくは、AおよびBは、分岐もしくは星状ではなく、直線状に連結される。「硬質」セグメントは、エチレンが、ある実施形態においては95重量パーセントを上回り、他の実施形態においては98重量パーセントを上回る量で存在する重合単位のブロックを指す。換言すると、硬質セグメント中のコモノマー含有率は、ある実施形態においてはその硬質セグメントの総重量の5重量パーセント未満、他の実施形態においては2重量パーセント未満である。幾つかの実施形態において、硬質セグメントは全てが、もしくは実質的に全てがエチレンを含む。他方、「軟質」セグメントは、コモノマー含有率が、ある実施形態においてはその軟質セグメントの総重量の5重量パーセントを上回り、様々な他の実施形態において8重量パーセントを上回り、10重量パーセントを上回り、もしくは15重量パーセントを上回る重合単位のブロックを指す。幾つかの実施形態においては、軟質セグメント中のコモノマー含有率が、様々な他の実施形態において20重量パーセントを上回り、25重量パーセント上回り、30重量パーセントを上回り、35重量パーセントを上回り、40重量パーセントを上回り、45重量パーセントを上回り、50重量パーセントを上回り、もしくは60重量パーセントを上回り得る。
【0024】
幾つかの実施形態においては、AブロックおよびBブロックはポリマー鎖に沿って無作為に分布する。換言すると、そのブロックコポリマーは下記のような構造を持たない。
【0025】
AAA−AA−BBB−BB
他の実施形態においては、ブロックコポリマーは第3のブロックを含まない。さらに別の実施形態においては、ブロックAもブロックBも2種類以上のセグメント(もしくは下位ブロック)、例えば、チップセグメント(tip segment)を含まない。
【0026】
エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、ゼロを上回って約1.0までの範囲の平均ブロック指数(average block index)、ABI、および約1.3を上回る分子量分布、Mw/Mn、を特徴とする。平均ブロック指数ABIは、5℃の増分で20℃〜110℃の分取昇温溶離分別(preparative temperature rising elution fractionation)(TREF)において得られる、ポリマー画分の各々のブロック指数(「BI」)の重量平均であり、
ABI=Σ(wiBIi
式中、BIiは分取TREFにおいて得られるブロックエチレン/α−オレフィンインターポリマーの第i画分のブロック指数であり、wiは第i画分の重量パーセンテージである。
【0027】
同様に、平均に関する第2モーメントの平方根(以下、第2モーメント重量平均ブロック指数と呼ぶ)は以下のように定義することができる。
【0028】
【数1】

【0029】
各々のポリマー画分に対して、BIは以下の2つの式のうちの一方によって定義され(それらの両者は同じBI値をもたらす)。
【0030】
BI=(1/TX−1/TXO)/(1/TA−1/TAB) 又は、
BI=−(LnPX−LnPXO)/(LnPA−LnPAB)
式中、Txは第i画分の解析昇温溶離分別(ATREF)溶離温度(好ましくは、ケルビンで表される)であり、Pxは、以下に説明されるようにNMRもしくはIRによって測定することができる、第i画分のエチレンモル分率である。PABは(分別前の)エチレン/α−オレフィンインターポリマー全体のエチレンモル分率であり、これもNMRもしくはIRによって測定することができる。TAおよびPAは純粋な「硬質セグメント」(これは、インターポリマーの結晶性セグメントと呼ばれる)のATREF溶離温度およびエチレンモル分率である。近似として、もしくは「硬質セグメント」組成が未知であるポリマーに対しては、TAおよびPA値を高密度ポリエチレンホモポリマーのものに設定する。
【0031】
ABはそのブロックコポリマーと同じ組成(PABのエチレンモル分率を有する)および分子量のランダムコポリマーのATREF溶離温度である。TABは(NMRによって測定される)エチレンのモル分率から以下の式を用いて算出することができ、
LnPAB=α/TAB+β
式中、αおよびβは、広範な組成のランダムコポリマーおよび/もしくは十分に特徴付けられた狭い組成を有するランダムエチレンコポリマーの、幾つかの十分に特徴付けられた分取TREF画分を用いる較正によって決定することができる2つの定数である。αおよびβは機器から機器で変化し得ることに注意するべきである。さらに、関心のあるポリマー組成に関する適切な較正曲線の創出を、その較正の創出に用いられる分取TREF画分および/もしくはランダムコポリマーに適する分子量範囲およびコモノマーのタイプを用いて行う必要がある。僅かな分子量効果が存在する。較正曲線を類似の分子量範囲から得る場合、そのような効果は本質的に無視し得る。幾つかの実施形態において、ランダムエチレンコポリマーおよび/もしくはランダムコポリマーの分取TREF画分は以下の関係を満たす。
【0032】
LnP=−237.83/TATREF+0.639。
【0033】
上記較正式は、エチレンのモル分率Pを、狭い組成のランダムコポリマーの解析TREF溶離温度TATREFおよび/もしくは広範な組成のランダムコポリマーの分取TREF画分に関連付ける。Txoは同じ組成でPxのエチレンモル分率を有するランダムコポリマーのATREF温度である。TxoはLnPx=α/Txo+βから算出することができる。反対に、Pxoは同じ組成でTxのATREF温度を有するランダムコポリマーのエチレンモル分率であり、LnPxo=α/Tx+βから算出することができる。
【0034】
各分取TREF画分のブロック指数(BI)がひとたび得られると、ポリマー全体の重量平均ブロック指数ABIを算出することができる。幾つかの実施形態において、ABIはゼロを上回るが約0.4未満であるか、もしくは約0.1〜約0.3である。他の実施形態においては、ABIは約0.4を上回り、約1.0までである。他の実施形態においては、ABIは約0.4〜約0.7、約0.5〜約0.7、もしくは約0.6〜約0.9の範囲内であり得る。幾つかの実施形態において、ABIは約0.3〜約0.9、約0.3〜約0.8、もしくは約0.3〜約0.7、約0.3〜約0.6、約0.3〜約0.5、もしくは約0.3〜約0.4の範囲内にある。他の実施形態においては、ABIは約0.4〜約1.0、約0.5〜約1.0、もしくは約0.6〜約1.0、約0.7〜約1.0、約0.8〜約1.0、もしくは約0.9〜約1.0の範囲内にある。
【0035】
エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーの別の特徴は、エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーが、約0.1を上回って約1.0までのブロック指数を有する、分取TREFによって得ることができる少なくとも1つのポリマー画分および約1.3を上回る分子量分布Mw/Mnを有するポリマーを含むことである。幾つかの実施形態において、このポリマー画分は、約0.6を上回って約1.0まで、約0.7を上回って約1.0まで、約0.8を上回って約1.0まで、もしくは約0.9を上回って約1.0までのブロック指数を有する。他の実施形態においては、このポリマー画分は、約0.1を上回って約1.0まで、約0.2を上回って約1.0まで、約0.3を上回って約1.0まで、約0.4を上回って約1.0まで、もしくは約0.4を上回って約1.0のブロック指数を有する。さらに他の実施形態においては、このポリマー画分は、約0.1を上回って約0.5まで、約0.2を上回って約0.5まで、約0.3を上回って約0.5まで、もしくは約0.4を上回って約0.5までのブロック指数を有する。さらに他の実施形態においては、このポリマー画分は、約0.2を上回って約0.9まで、約0.3を上回って約0.8まで、約0.4を上回って約0.7まで、もしくは約0.5を上回って約0.6までのブロック指数を有する。
【0036】
平均ブロック指数および個々の画分のブロック指数に加えて、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは以下の通りに説明される特性の1つ以上を特徴とする。
【0037】
一態様において、本発明の実施形態において用いられるエチレン/α−オレフィンインターポリマーは、約1.7〜約3.5のMw/Mn並びに少なくとも1つの℃で表される融点、Tm、およびグラム/立方センチメートルで表される密度、d、を有し、これらの変数の数値は以下の関係に対応する。
【0038】
幾つかの実施形態においては、Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2
他の実施形態においては、Tm>−6288.1+13141(d)−6720.3(d)2;および
さらに他の実施形態においては、Tm>858.91−1825.3(d)+1112.8(d)2
【0039】
密度の減少と共に融点が低下するエチレン/α−オレフィンの伝統的なランダムコポリマーとは異なり、これらのブロックインターポリマーは、特には密度が約0.87g/cc〜約0.95g/ccであるとき、密度とは実質的に無関係に融点を示す。例えば、そのようなポリマーの融点は、密度が0.875g/cc〜約0.945g/ccの範囲をとるとき、約110℃〜約130℃の範囲内にあり得る。幾つかの実施形態において、そのようなポリマーの融点は、密度が0.875g/cc〜約0.945g/ccの範囲をとるとき、約115℃〜約125℃の範囲内であり得る。
【0040】
別の態様において、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、重合形態で、エチレンおよび1種類以上のα−オレフィンを含み、かつ最高示差走査熱量(「DSC」)ピークの温度マイナス最高結晶化解析分別(Crystallization Analysis Fractionation)(「CRYSTAF」)ピークの温度として定義される℃で表される△TおよびJ/gで表される融解熱△Hによって特徴付けられ、△Tおよび△Hは、130J/gまでの△Hについて、以下の関係を満たす。
【0041】
幾つかの実施形態においては、△T>−0.1299(△H)+62.81;
他の実施形態においては、△T>−0.1299(△H)+64.38;および
さらに他の実施形態においては、△T>−0.1299(△H)+65.95。
さらに、△Tは、130J/gを上回る△Hについては、48℃以上である。CRYSTAFピークは累積ポリマーの少なくとも5パーセントを用いて決定し(すなわち、そのピークは累積ポリマーの少なくとも5パーセントを表さなければならず)、5パーセント未満のポリマーが識別可能なCRYSTAFピークを有する場合、CRYSTAF温度は30℃であり、かつ△HはJ/gで表される融解熱の数値である。より好ましくは、最高CRYSTAFピークは累積ポリマーの少なくとも10パーセントを含む。
【0042】
さらに別の態様において、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは昇温溶離分別(「TREF」)を用いて分画するときに40℃〜130℃で溶離する分離画分を有し、その画分は同じ温度間で溶離する匹敵するランダムエチレンインターポリマーよりも、ある実施形態においては少なくとも5パーセント高く、他の実施形態においては少なくとも10パーセント高いコモノマーモル含有率を有することを特徴とし、その匹敵するランダムエチレンインターポリマーは同じコモノマーを有し、かつそのブロックインターポリマーの10パーセント以内のメルトインデックス、密度および(ポリマー全体を基準とする)コモノマーモル含有率を有する。幾つかの実施形態においては、匹敵するインターポリマーのMw/Mnもそのブロックインターポリマーの10パーセント以内にあり、および/もしくは匹敵するインターポリマーはそのブロックインターポリマーの10重量パーセント以内の全コモノマー含有率を有する。
【0043】
さらに別の態様において、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、エチレン/α−オレフィンインターポリマーの圧縮成型フィルムで測定される300パーセントひずみおよび1サイクルでのパーセントで表される弾性回復率、Re、によって特徴付けられ、かつグラム/立方センチメートルで表される密度、d、を有し、そのReおよびdの数値は、エチレン/α−オレフィンインターポリマーが架橋相を実質的に含まないとき、以下の関係を満たす。
【0044】
幾つかの実施形態においては、Re>1481−1629(d);
他の実施形態においては、Re>1491−1629(d);
他の実施形態においては、Re>1501−1629(d);および
さらに他の実施形態においては、Re>151l−1629(d)。
【0045】
幾つかの実施形態において、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは10MPaを上回る引張強度;他の実施形態においては≧11MPaの引張強度;および、さらに他の実施形態においては、≧13MPaの引張強度を有する。幾つかの実施形態において、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、11cm/分のクロスヘッド分離で、少なくとも600パーセント;他の実施形態においては少なくとも700パーセント;他の実施形態においては少なくとも800パーセント;およびさらに他の実施形態においては11cm/分のクロスヘッド分離速度で少なくとも900パーセントの破断点伸びを有し得る。
【0046】
他の実施形態において、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは(1)1〜50、他の実施形態においては1〜20;および、さらに他の実施形態においては、1〜10の貯蔵弾性比、G’(25℃)/G’(100℃)を有する。幾つか他の実施形態において、エチレン/α−オレフィンインターポリマーの70℃圧縮ひずみは80パーセント未満であり得;他の実施形態においては70パーセント未満であり得;他の実施形態においては60パーセント未満であり得;および、さらに他の実施形態においては、50パーセント未満もしくは40パーセント未満であり得、0パーセントの圧縮ひずみに低下することもある。
【0047】
幾つかの実施形態において、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは85J/g未満の融解熱を有する。他の実施形態において、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは100ポンド/フィート2(4800Pa)以下;他の実施形態においては50 lb/ft2(2400Pa)以下;さらに他の実施形態においては5 lb/ft2(240Pa)以下および0 lb/ft2(0Pa)という低さのペレットブロッキング強度を有し得る。
【0048】
他の実施形態において、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、重合形態で、少なくとも50モルパーセントのエチレンを含み、かつその70℃圧縮ひずみは80パーセント未満;他の実施形態においては70パーセント未満;他の実施形態においては60パーセント未満;並びに、さらに他の実施形態においては、40〜50パーセント未満であり、およびゼロパーセントに近い圧縮ひずみまで低下する。
【0049】
幾つかの実施形態において、マルチブロックコポリマーはPoisson分布よりもむしろSchultz−Flory分布に一致するPDIを有する。これらのコポリマーは、さらに、多分散ブロック分布およびブロックサイズの多分散分布の両者を有し、かつブロック長の最もあり得る分布を有するものとして特徴付けられる。好ましいマルチブロックコポリマーは、末端ブロックを含めて、4以上のブロックもしくはセグメントを含むものである。より好ましくは、これらのコポリマーは、末端ブロックを含めて、少なくとも5、10もしくは20のブロックもしくはセグメントを含む。
【0050】
加えて、ブロックインターポリマーはさらなる特徴もしくは特性を有する。一態様において、好ましくはエチレンおよび1種類以上の共重合性コモノマーを重合形態で含むインターポリマーは、化学的もしくは物理的特性が異なる2以上の重合性モノマーの複数のブロックもしくはセグメント(ブロック化インターポリマー)、最も好ましくは、マルチブロックコポリマーを特徴とする。これらのブロックインターポリマーは、TREFを用いて分別するときに40℃〜130℃で溶離する分子画分を有し、その画分が同じ温度間で溶離する匹敵するランダムエチレンインターポリマー画分よりも高い、好ましくは少なくとも5パーセント高い、より好ましくは少なくとも10パーセント高いコモノマーモル含有率を有することを特徴とし、その匹敵するランダムエチレンインターポリマーは同じコモノマーを含み、かつブロック化インターポリマーのものの10パーセント以内のメルトインデックス、密度および(ポリマー全体を基準とする)コモノマーモル含有率を有する。好ましくは、匹敵するインターポリマーのMw/Mnもブロック化インターポリマーの10パーセント以内であり、および/もしくは匹敵するインターポリマーがブロック化インターポリマーのものの10重量パーセント以内の総コモノマー含有率を有する。
【0051】
コモノマー含有率はあらゆる適切な技術を用いて測定することができるが、核磁気共鳴(「NMR」)分析に基づく技術が好ましい。さらに、比較的広範なTREF曲線を有するポリマーもしくはポリマーの配合物については、まず、ポリマーをTREFを用いて各々が10℃以下の溶離温度範囲を有する画分に分画する。すなわち、各々の溶離画分は10℃以下の収集温度窓を有する。この技術を用いることで、そのブロックインターポリマーは少なくとも1つの、匹敵するインターポリマーの対応する画分よりも高いコモノマーモル含有率を有するような画分を有する。
【0052】
別の実施形態において、ブロックインターポリマーは、好ましくはエチレンおよび1種類以上の共重合性コモノマーを、化学的もしくは物理的特性が異なる2以上の重合モノマー単位の複数のブロック(すなわち、少なくとも2つのブロック)もしくはセグメント(ブロック化インターポリマー)、最も好ましくは、マルチブロックコポリマーを特徴とする重合形態で含む、オレフィンインターポリマーであり、そのブロックインターポリマーは40℃〜130℃で溶離する(しかしながら、個々の画分の収集および/もしくは単離はしない)ピークを有し(しかしながら、分子画分そのものではなく)、そのピークは、赤外分光測定によって見積もられる、半値全幅(full width / half maximum)(FWHM)面積計算を用いて拡張されるときのコモノマー含有率を有するが、同じ溶離温度での半値全幅(FWHM)面積計算で拡張された匹敵するランダムエチレンインターポリマーのピークのよりも高く、幾つかの実施形態においては、好ましくは、少なくとも5パーセント高く、他の実施形態においては少なくとも10パーセント高い平均コモノマーモル含有率を有し、その匹敵するランダムエチレンインターポリマーは同じコモノマーを有し、かつそのブロック化インターポリマーの10パーセント以内のメルトインデックス、密度および(ポリマー全体を基準にする)コモノマーモル含有率を有する。匹敵するインターポリマーのMw/Mnもそのブロック化インターポリマーの10パーセント以内にあり得、および/もしくは匹敵するインターポリマーはそのブロック化インターポリマーの10重量パーセント以内の総コモノマー含有率を有する。半値全幅(FWHM)計算はATREF赤外検出器からのメチルのメチレン応答面積に対する比[CH3/CH2]に基づくものであり、そこでは基線から最も高い(最高)ピークを識別した後、FWHM面積を決定する。ATREFピークを用いて測定される分布については、FWHM面積はT1およびT2の間の曲線下の面積と定義され、T1およびT2は、そのピーク高さを2で割った後、基線に水平な線をATREFピークの左右まで引くことによって決定される、ATREF曲線の左右部分で交差する点である。コモノマー含有率の較正曲線は、ランダムエチレン/α−オレフィンコポリマーを用い、NMRからのコモノマー含有率をTREFピークのFWHM面積に対してプロットして作成する。この赤外法については、較正曲線は関心のある同じコモノマーのタイプについて作成する。ブロックインターポリマーのTREFピークのコモノマー含有率は、そのTREFピークのFWHMメチル:メチレン比[CH3/CH2]を用いてこの較正曲線を参照することによって決定することができる。
【0053】
コモノマー含有率はあらゆる適切な技術を用いて測定することができ、核磁気共鳴(NMR)測定に基づく技術が好ましい。この技術を用いると、前記ブロック化インターポリマーは対応する匹敵インターポリマーよりも高いコモノマーモル含有率を有する。
【0054】
幾つかの実施形態において、エチレンおよび1−オクテンのインターポリマーについては、ブロックインターポリマーは(−0.2013)T+20.07の量以上の、40〜130℃で溶離するTREF画分のコモノマー含有率を有することがあり、Tは、℃で測定される、比較するTREF画分のピーク溶離温度の数値である。40〜130℃で溶離するTREF画分のコモノマー含有率は、他の実施形態においては、(−0.2013)*T+21.07の量以上であり得る。
【0055】
上記態様およびここで説明される特性に加えて、ブロックインターポリマーを1以上のさらなる特徴によって特徴付けることができる。一態様において、ブロックインターポリマーは、好ましくはエチレンおよび1種類以上の共重合性コモノマーを、化学的もしくは物理的特性が異なる2つ以上の重合モノマー単位の複数のブロックもしくはセグメント(ブロック化インターポリマー)、最も好ましくは、マルチブロックコポリマーを特徴とする重合形態で含む、オレフィンインターポリマーであり、そのブロックインターポリマーはTREF増分を用いて分別するときに40℃〜130℃で溶離する分子画分を有し、その画分は同じ温度範囲で溶離する匹敵するランダムエチレンインターポリマーの画分よりも高く、好ましくは少なくとも5パーセント高く、より好ましくは少なくとも10、15、20もしくは25パーセント高いコモノマーモル含有率を有し、その匹敵するランダムエチレンインターポリマーは同じコモノマーを含み、好ましくは、同じコモノマーであり、かつそのブロック化インターポリマーの10パーセント以内のメルトインデックス、密度および(ポリマー全体を基準とする)コモノマーモル含有率を有する。好ましくは、匹敵するインターポリマーのMw/Mnもそのブロックインターポリマーの10パーセント以内にあり、および/もしくは匹敵するインターポリマーはそのブロック化インターポリマーの10重量パーセント以内の総コモノマー含有率を有する。
【0056】
幾つかの実施形態において、上記インターポリマーはエチレンおよび少なくとも1種類のα−オレフィンのインターポリマー、特には、約0.855〜約0.935g/cm3の全ポリマー密度を有するインターポリマーであり得る。他の実施形態においては、約1モルパーセントを上回るコモノマーを有するポリマーについて、ブロック化インターポリマーは(−0.1356)*T+13.89の量以上の、40〜130℃で溶離するTREF画分のコモノマー含有量を有することがあり、Tは、℃で測定される、比較するTREF画分のピークATREF溶離温度の数値である。他の実施形態においては、40〜130℃で溶離するTREF画分のコモノマー含有量は(−0.1356)*T+14.93の量以上であり得;さらに他の実施形態においては、(−0.2013)*T+21.07の量以上であり得る。
【0057】
さらに別の態様において、ブロックインターポリマーは、好ましくはエチレンおよび1種類以上の共重合性コモノマーを、化学的もしくは物理的特性が異なる2つ以上の重合モノマー単位の複数のブロックもしくはセグメント(ブロック化インターポリマー)、最も好ましくは、マルチブロックコポリマーを特徴とする重合形態で含む、オレフィンインターポリマーであり、そのブロックインターポリマーはTREF増分を用いて分別するときに40℃〜130℃で溶離する分子画分を有し、少なくとも約6モルパーセントのコモノマー含有率を有する全ての画分が約100℃を上回る融点を有することを特徴とする。約3モルパーセント〜約6モルパーセントのコモノマー含有率を有する画分については、全ての画分が約110℃以上のDSC融点を有する。他の実施形態においては、少なくとも1モルパーセントのコモノマーを有するポリマー画分が下記式に対応するDSC融点を有する。
【0058】
Tm≧(−5.5926)(画分中のコモノマーのモルパーセント)+135.90。
【0059】
さらに別の態様において、ブロックインターポリマーは、エチレンおよび1種類以上の共重合性コモノマーを、化学的もしくは物理的特性が異なる2つ以上の重合モノマー単位の複数のブロックもしくはセグメント(ブロック化インターポリマー)、最も好ましくは、マルチブロックコポリマーを特徴とする重合単位で含む、オレフィンインターポリマーであり、そのブロックインターポリマーはTREF増分を用いて分別するときに40℃〜130℃で溶離する分子画分を有し、約76℃以上のATREF溶離温度を有する全ての画分が、DSCによる測定で、以下の式に対応する溶融エンタルピー(融解熱)を有することを特徴とする。
【0060】
融解熱(J/gm)≦(3.1718)(ATREF溶離温度℃)−136.58。
【0061】
ブロックインターポリマーは、TREF増分を用いて分別するときに40℃〜130℃で溶離する分子画分であって、40℃〜約76℃未満のATREF溶離温度を有する全ての画分が、DSCによる測定で、以下の式に対応する溶融エンタルピー(融解熱)を有することを特徴とする分子画分を有することができる。
【0062】
融解熱(J/gm)≦(1.1312)(℃でのATREF溶離温度)+22.97。
赤外検出器によるATREFピークのコモノマー組成測定
TREFピークのコモノマー組成はスペイン国ValenciaのPolymer Char(http://www.polymerchar.com/)から入手可能なIR4赤外検出器を用いて測定することができる。
【0063】
この検出器の「組成モード」は測定センサ(CH2)および組成センサ(CH3)を備え、これらは2800−3000cm-1の領域の固定ナローバンド赤外フィルタである。測定センサはポリマーのメチレン(CH2)炭素(これは溶液中のポリマー濃度に直接関連する)を検出し、それに対して組成センサはポリマーのメチル(CH3)基を検出する。組成シグナル(CH3)を測定シグナル(CH2)で割った数値比は溶液中の測定したポリマーのコモノマー含有率に感応性であり、その応答は公知のエチレン・アルファ−オレフィンコポリマー標準で較正する。
【0064】
この検出器は、ATREF増分と共に用いるとき、TREFプロセスの最中に溶離したポリマーの濃度(CH2)および組成(CH3)の両者のシグナル応答をもたらす。ポリマーに特異的な較正は、(好ましくはNMRで測定された)公知のコモノマー濃度を有するポリマーのCH3のCH2に対する面積比を測定することによって作成することができる。ポリマーのATREFピークのコモノマー含有率は、個々のCH3およびCH2応答の面積の比の参照較正(すなわち、面積比CH3/CH2対コモノマー含有率)を適用することによって見積もることができる。
【0065】
ピークの面積は、適切な基線を適用してTREFクロマトグラムからの個々のシグナル応答を統合した後、半値全幅(FWHM)計算を用いて算出することができる。半値全幅計算はATREF赤外検出器からのメチルのメチレン応答面積に対する比[CH3/CH2]に基づくものであり、そこでは基線から最も高い(最高)ピークを識別した後、FWHM面積を決定する。ATREFピークを用いて測定した分布について、FWHM面積はT1およびT2の間の曲線下の面積と定義され、T1およびT2は、ピーク高さを2で割った後、基線に水平の線をそのATREFピークの左右まで引くことによって決定される、そのATREF曲線の左右の部分で交差する点である。
【0066】
このATREF−赤外法におけるポリマーのコモノマー含有率の測定への赤外分光法の適用は、原理的には、以下の参考文献に記載されるGPC/FTIRシステムに類似する。Markovich, Ronald P.; Hazlitt, Lonnie G.; Smith, Linley; 「Development of gel-permeation chromatography-Fourier transform infrared spectroscopy for characterization of ethylene-based polyolefin copolymers」.Polymeric Materials Science and Engineering (1991), 65, 98-100.;およびDeslauriers, P.J.; Rohlfing, D.C.; Shieh, E.T.; 「Quantifying short chain branching microstructures in ethylene-1-olefin copolymers using size exclusion chromatography and Fourier transform infrared spectroscopy (SEC-FTIR)」, Polymer (2002), 43, 59-170(これら両者とも参照によりそれらの全体がここに組み込まれる)。
【0067】
上記説明におけるTREF画分は5℃増分で得られているが、他の温度増分が不可能であることに注意するべきである。例えば、4℃増分、3℃増分、2℃増分もしくは1℃増分にTREF画分が存在する。
【0068】
エチレンおよびα−オレフィンのコポリマーについて、ブロックインターポリマーは、好ましくは、(1)少なくとも1.3、より好ましくは、少なくとも1.5、少なくとも1.7もしくは少なくとも2.0、最も好ましくは、少なくとも2.6で、5.0の最大値まで、より好ましくは、最大3.5まで、特には、最大2.7までのPDI;(2)80J/g以下の融解熱;(3)少なくとも50重量パーセントのエチレン含有率;(4)−25℃未満、より好ましくは、−30℃未満のガラス転移温度、Tg、および/もしくは(5)1つ、かつ唯一のTmを有する。
【0069】
さらに、ブロックインターポリマーは、単独で、もしくはここに開示される他のあらゆる特性との組み合わせで、貯蔵弾性率G’をlog(G’)が100℃の温度で400kPa以上;他の実施形態においては、1.0MPa以上となるように有することができる。さらに、ブロックインターポリマーは0〜100℃の範囲の温度の関数として比較的平坦な貯蔵弾性率を有することができ、これはブロックコポリマーの特徴であって、オレフィンコポリマー、特には、エチレンおよび1種類以上のC3-8脂肪族α−オレフィンにはこれまで知られていない。(この文脈において「比較的平坦」という用語が意味するところは、logG’(パスカル表示)の減少が50〜100℃、好ましくは、0〜100℃で一桁未満であることである)。
【0070】
ブロックインターポリマーは、さらに、少なくとも90℃の温度で1mmの熱機械的分析貫入深さに加えて、3kpsi(20MPa)〜13kpsi(90MPa)の曲げ弾性率によって特徴付けることができる。その代わりに、ブロックインターポリマーは、少なくとも104℃の温度で1mmの熱機械的分析貫入深さに加えて、少なくとも3kpsi(20MPa)の曲げ弾性率を有することもできる。それらは90mm3未満の耐摩耗性(もしくは体積損失)を有するものと特徴付けることができる。
【0071】
加えて、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、幾つかの実施形態において0.01〜2000g/10分;他の実施形態においては0.01〜1000g/10分;他の実施形態においては0.01〜500g/10分;さらに他の実施形態においては0.01〜100g/10分のメルトインデックス、I2、を有することができる。特定の実施形態において、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは0.01〜10g/10分、0.5〜50g/10分、1〜30g/10分、1〜6g/10分もしくは0.3〜10g/10分のメルトインデックス、I2、を有することができる。特定の実施形態において、エチレン/α−オレフィンポリマーのメルトインデックスは1g/10分、3g/10分もしくは5g/10分である。
【0072】
これらのインターポリマーは、幾つかの実施形態において1,000g/モル〜5,000,000g/モル;他の実施形態においては1000g/モル〜1,000,000;他の実施形態においては10,000g/モル〜500,000g/モル;さらに他の実施形態においては10,000g/モル〜300,000g/モルの分子量、Mw、を有することができる。ブロックインターポリマーの密度は、幾つかの実施形態において0.80〜0.99g/cm3;エチレン含有ポリマーについては0.85g/cm3〜0.97g/cm3であり得る。特定の実施形態において、エチレン/α−オレフィンポリマーの密度は0.860〜0.925g/cm3もしくは0.867〜0.910g/cm3の範囲をとり得る。
【0073】
これらのポリマーの製造方法は以下の特許出願に開示されている。2004年3月17日出願の米国仮出願第60/553,906号;2005年3月17日出願の米国仮出願第60/662,937号;2005年3月17日出願の米国仮出願第60/662,939号;2005年3月17日出願の米国仮出願第60/5662938号;2005年3月17日出願のPCT出願PCT/US2005/008916;2005年3月17日出願のPCT出願PCT/US2005/008915;および2005年3月17日出願のPCT出願PCT/US2005/008917(これらの全ては参照によりそれらの全体がここに組み込まれる)。例えば、そのような方法の1つは、エチレンおよび、任意に、エチレン以外の1種類以上の重合性モノマーを、付加重合条件下で、
(A)高コモノマー取り込み指数(comonomer incorporation index)を有する第1オレフィン重合触媒、
(B)触媒(A)のコモノマー取り込み指数の90パーセント未満、好ましくは50パーセント未満、最も好ましくは5パーセント未満のコモノマー取り込み指数を有する第2オレフィン重合触媒、および
(C)可逆的連鎖移動剤(chain shuttling agent)
を組み合わせることから生じる混合物もしくは反応生成物、
を含有する触媒組成物と接触させることを含む。
【0074】
代表的な触媒および可逆的連鎖移動剤は以下のようなものである。
【0075】
触媒(A1)は、WO 03/40195、米国特許第6,953,764号および第6,960,635号並びにWO 04/24740の教示に従って調製される[N−(2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(2−イソプロピルフェニル)(α−ナフタレン−2−ジイル(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジメチルである。
【0076】
【化1】

【0077】
触媒(A2)は、WO 03/40195、米国特許第6,953,764号および第6,960,635号並びにWO 04/24740の教示に従って調製される[N−(2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(2−メチルフェニル)(1,2−フェニレン−(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジメチルである。
【0078】
【化2】

【0079】
触媒(A3)は、ビス[N,N’’’−(2,4,6−トリ(メチルフェニル)アミド)エチレンジアミン]ハフニウムジベンジルである。
【0080】
【化3】

【0081】
触媒(A4)は、実質的に米国特許第6,897,276号の教示に従って調製されるビス((2−オキソイル−3−(ジベンゾ−1H−ピロール−1−イル)−5−(メチル)フェニル)−2−フェノキシメチル)シクロヘキサン−1,2−ジイルジルコニウム(IV)ジベンジルである。
【0082】
【化4】

【0083】
触媒(B1)は、1,2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(1−メチルエチル)イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジルである。
【0084】
【化5】

【0085】
触媒(B2)は、1,2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(2−メチルシクロヘキシル)−イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジルである。
【0086】
【化6】

【0087】
触媒(C1)は、実質的に米国特許第6,268,444号の教示に従って調製される(t−ブチルアミド)ジメチル(3−N−ピロリル−1,2,3,3a,7a−η−インデン−1−イル)シランチタンジメチルである。
【0088】
【化7】

【0089】
触媒(C2)は、実質的に米国特許第6,825,295号の教示に従って調製される(t−ブチルアミド)ジ(4−メチルフェニル)(2−メチル−1,2,3,3a,7a−η−インデン−1−イル)シランチタンジメチルである。
【0090】
【化8】

【0091】
触媒(C3)は、実質的に米国特許第6,825,295号の教示に従って調製される(t−ブチルアミド)ジ(4−メチルフェニル)(2−メチル−1,2,3,3a,8a−η−s−インダセン−1−イル)シランチタンジメチルである。
【0092】
【化9】

【0093】
触媒(D1)は、Sigma−Aldrichから入手可能な二塩化ビス(ジメチルジシロキサン)(インデン−1−イル)ジルコニウムである。
【0094】
【化10】

【0095】
可逆的移動剤(Shuttling Agents)
用いられる可逆的移動剤には、ジエチル亜鉛、ジ(i−ブチル)亜鉛、ジ(n−ヘキシル)亜鉛、トリエチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリエチルガリウム、i−ブチルアルミニウムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキサン)、i−ブチルアルミニウムビス(ジ(トリメチルシリル)アミド)、n−オクチルアルミニウムジ(ピリジン−2−メトキシド)、ビス(n−オクタデシル)i−ブチルアルミニウム、i−ブチルアルミニウムビス(ジ(n−ペンチル)アミド)、n−オクチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシド)、n−オクチルアルミニウムジ(エチル(1−ナフチル)アミド)、エチルアルミニウムビス(t−ブチルジメチルシロキシド)、エチルアルミニウムジ(ビス(トリメチルシリル)アミド)、エチルアルミニウムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)、n−オクチルアルミニウムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)、n−オクチルアルミニウムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキシド、エチル亜鉛(2,6−ジフェニルフェノキシド)およびエチル亜鉛(t−ブトキシド)が含まれる。
【0096】
前記方法は、相互交換が不可能である複数の触媒を用いる、ブロックコポリマー、特には、マルチブロックコポリマー、好ましくは、2種類以上のモノマー、特にはエチレンおよびC3-20オレフィンもしくはシクロオレフィン、とりわけ、エチレンおよびC4-20α−オレフィンの直鎖マルチブロックコポリマーを形成するための連続溶液法の形態をとり得る。すなわち、これらの触媒は化学的に別物である。連続溶液重合条件の下で、この方法はモノマーの混合物の高モノマー変換での重合に理想的に適合する。これらの重合条件の下で、可逆的連鎖移動剤から触媒への可逆的移動は鎖生長と比較して有利になり、マルチブロックコポリマー、特には、直鎖マルチブロックコポリマーが高い効率で形成される。
【0097】
これらのブロックインターポリマーは、従来のランダムコポリマー、ポリマーの物理的配合物および連続モノマー添加、流動触媒、アニオンもしくはカチオンリビング重合技術によって調製されるブロックコポリマーと区別することができる。特には、同等の結晶化度もしくは弾性率の同じモノマーおよびモノマー含有率のランダムコポリマーと比較して、これらのブロックインターポリマーは、より良好な(より高い)、融点によって測定される、耐熱性、より高いTMA貫入温度、より強い高温引張強度、および/もしくはより高い、動的機械分析によって決定される、高温ねじれ貯蔵弾性率を有する。同じモノマーおよびモノマー含有率を有するランダムコポリマーと比較して、これらのブロックインターポリマーは、特には高温で、より少ない圧縮ひずみ、より少ない応力緩和、より高いクリープ耐性、より高い引裂き強度、より高いブロッキング耐性、より高い結晶化(凝固)温度によるより速いセットアップ、(特には高温での)より高い回復率、より良好な耐摩耗性、より強い収縮力並びに得より良好な油および充填剤受容性を有する。
【0098】
これらのブロックインターポリマーは独自の結晶化および分岐分布の関係をも示す。すなわち、これらのブロックインターポリマーは、特には同じモノマーおよびモノマーレベルを有するランダムコポリマーもしくはポリマーの物理的配合物、例えば、高密度ポリマーおよび低密度コポリマーの配合物と同等の全体密度で比較したとき、CRYSTAFおよびDSCを用いて測定される融解熱の関数としての最高ピーク温度に比較的大きな差がある。ブロックインターポリマーのこの独自の特徴は、ポリマー主鎖内のブロックにおけるコモノマーの独自分布によるものと信じられる。特には、ブロックインターポリマーは、異なるコモノマー含有率の交互ブロック(ホモポリマーブロックを含む)を含むことができる。これらのブロックインターポリマーは、密度もしくはコモノマー含有率が異なるポリマーブロックの数および/もしくはブロックサイズに、Schultz−Flory型の分布である、分布を有していてもよく、加えて、これらのブロックインターポリマーは、ポリマーの密度、弾性率および形態とは実質的に無関係である、独自のピーク融点および結晶化温度プロフィールを有することもできる。好ましい実施形態において、これらのポリマーの微結晶階層では、1.7未満もしくは1.5未満、さらに1.3未満までも低下するPDI値でさえ、ランダムもしくはブロックコポリマーと区別し得る特徴的な小球体および薄層体を示される。
【0099】
さらに、これらのブロックインターポリマーは、ブロック化(blockiness)の程度もしくはレベルに影響を及ぼす技術を用いて調製することができる。すなわち、触媒および可逆的移動剤の比およびタイプに加えて重合の温度および他の重合変数を制御することにより、コモノマーの量および各ポリマーブロックもしくはセグメントの長さを変化させることができる。この現象の驚くべき利点は、ブロック化の程度が増加するに従って生じるポリマーの光学特性、引裂き強度および高温回復特性が改善されるという発見である。特には、ポリマー中のブロックの平均数が増加するに従い、透明度、引裂き強度および高温回復特性が増加しつつ曇りが減少する。望ましい連鎖移動能力(低レベルの鎖生長停止で高速の可逆的移動)を有する可逆的移動剤および触媒の組み合わせを選択することにより、他の形態のポリマー生長停止が効率的に抑制される。したがって、本発明の実施形態によるエチレン/α−オレフィンコモノマー混合物の重合において観察されるβ−ヒドリド除去は、存在するとしても、僅かであり、生じる結晶性ブロックは高度に、もしくは実質的に完全で、長鎖分岐はほとんど、もしくは全く存在しない。
【0100】
高度に結晶性の鎖末端を有するポリマーを本発明の実施形態に従って選択的に調製することができる。エラストマー用途において、非晶質ブロックで停止するポリマーの相対量を減少させることは結晶領域に対する分子間希薄効果(intermolecular dilutive effect)を弱める。この結果は、水素もしくは他の連鎖停止剤に対して適切に応答する可逆的連鎖移動剤および触媒を選択することによって得ることができる。具体的には、高度に結晶性のポリマーを生成する触媒が(例えば、より多くのコモノマー取り込み、レギオエラーもしくはアタクチックポリマーの形成によって)より結晶性の少ないポリマーセグメントの生成の原因である触媒よりも(例えば、水素の使用により)鎖生長停止の影響を受けやすい場合、高度に結晶性のポリマーセグメントがそのポリマーの末端部分を優先的に占める。生じる末端基が結晶性であるだけではなく、停止時に、高度に結晶性のポリマーを形成する触媒部位はポリマー形成の再開に再度利用可能である。したがって、最初に形成されたポリマーは別の高度に結晶性のポリマーセグメントである。したがって、生じるマルチブロックコポリマーの両端は優先的に高度に結晶性である。
【0101】
本発明の実施形態において用いられるエチレン・α−オレフィンインターポリマーは、好ましくは、エチレンと少なくとも1種類のC3−C20α−オレフィンとのインターポリマーである。これらのインターポリマーは、C4−C18ジオレフィンおよび/もしくはアルケニルベンゼンをさらに含むことができる。エチレンとの重合に有用な、適切な不飽和コモノマーには、例えば、エチレン性不飽和モノマー、共役もしくは非共役ジエン、ポリエン、アルケニルベンゼン等が含まれる。そのようなコモノマーの例には、C3−C20α−オレフィン、例えば、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等が含まれる。1−ブテンおよび1−オクテンが特に好ましい。他の適切なモノマーには、スチレン、ハロもしくはアルキル置換スチレン、ビニルベンゾシクロブタン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンおよびナフテン系物質(例えば、シクロペンテン、シクロヘキセンおよびシクロオクテン)が含まれる。
【0102】
他のエチレン/オレフィンポリマーを用いることもできる。ここで用いられるオレフィンは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む不飽和炭化水素系化合物の系統群を指す。触媒の選択に依存して、あらゆるオレフィンを本発明の実施形態において用いることができる。適切なオレフィンは、ビニル性不飽和を含むC3−C20脂肪族および芳香族化合物に加えて、環状化合物、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、ジシクロペンタジエン並びに、5および6位がC1−C20ヒドロカルビルもしくはシクロヒドロカルビル基で置換されたノルボルネンを含むがこれに限定されるものではない、ノルボルネンである。そのようなオレフィンの混合物に加えてそのようなオレフィンとC4−C40ジオレフィン化合物との混合物も含まれる。
【0103】
オレフィンモノマーの例には、これらに限定されるものではないが、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンおよび1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン、4−ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、シクロオクテン、C4−C40ジエン(これには1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、ジエンが含まれるがこれらに限定されるものではない)、他のC4−C40α−オレフィン等が含まれる。特定の実施形態においては、α−オレフィンはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンもしくはそれらの組み合わせである。潜在的に、ビニル基を含むあらゆる炭化水素を本発明の実施形態において用いることができるが、実務上の問題、例えば、モノマーの有効性、経費および未反応モノマーを生じるポリマーから簡単に除去する能力が、モノマーの分子量が過度に大きくなるに従い、より問題となり得る。
【0104】
他のオレフィンインターポリマーには、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン等を含むモノビニリデン芳香族モノマーを含有するオレフィンポリマーが含まれる。特には、エチレンおよびスチレンを含むインターポリマーを用いることができる。他の実施形態においては、エチレン、スチレンおよびC3−C20α−オレフィンを含み、任意に、C4−C20ジエンを含む、改善された特性を有するコポリマーを用いることができる。
【0105】
適切な非共役ジエンモノマーには、6〜15個の炭素原子を有する、直鎖、分岐鎖もしくは環状炭化水素ジエンが含まれ得る。適切な非共役ジエンの例には、これらに限定されるものではないが、直鎖アクリルジエン、例えば、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、分岐鎖非環式ジエン、例えば、5−メチル−1,4−ヘキサジエン;3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン;3,7−ジメチル−1,7−オクタジエン並びにジヒドロミリセンおよびジヒドロオシネンの混合異性体、単環脂環式ジエン、例えば、1,3−シクロペンタジエン;1,4−シクロヘキサジエン;1,5−シクロオクタジエンおよび1,5−シクロドデカジエン、並びに多環脂環式融合および架橋環ジエン、例えば、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ−(2,2,1)−ヘプタ−2,5−ジエン;アルケニル、アルキリデン、シクロアルケニルおよびシクロアルキリデンノルボルネン、例えば、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB);5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−(4−シクロペンテニル)−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネンおよびノルボルナジエンが含まれる。EPDMの調製に典型的に用いられるジエンのうち、特に好ましいジエンは、1,4−ヘキサジエン(HD)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−ビニリデン−2−ノルボルネン(VNB)、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)およびジシクロペンタジエン(DCPD)である。特に好ましいジエンは、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)および1,4−ヘキサジエン(HD)である。
【0106】
本発明の実施形態に従って製造することができる望ましいポリマーの1つの分類(class)には、エチレン、C3−C20α−オレフィン、特にはプロピレン、および、任意に、1種類以上のジエンモノマーのエラストマーインターポリマーが含まれる。本発明のこの実施形態において用いるのに好ましいα−オレフィンは式CH2=CHR*で表され、式中、R*は1〜12個の炭素原子の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基である。適切なα−オレフィンの例には、これらに限定されるものではないが、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテンが含まれる。特に好ましいα−オレフィンはプロピレンである。プロピレン系ポリマーは、当分野において、一般にEPもしくはEPDMポリマーと呼ばれる。そのようなポリマー、特には、マルチブロックEPDM型ポリマーの調製において用いるのに適するジエンには、4〜20個の炭素を含む、共役もしくは非共役、直鎖もしくは分岐鎖、環状もしくは多環式ジエンが含まれる。好ましいジエンには、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエンおよび5−ブチリデン−2−ノルボルネンが含まれる。特に好ましいジエンは5−エチリデン−2−ノルボルネンである。
【0107】
ジエン含有ポリマーはより多量もしくはより少量のジエン(もしくは含まない)およびα−オレフィン(無しを含む)を含有する交互セグメントもしくはブロックを含むため、それに続くポリマー特性を失うことなしに、ジエンおよびα−オレフィンの総量を減少させることができる。すなわち、ジエンおよびα−オレフィンモノマーは、ポリマー全体を通して均一もしくは無作為にではなく、むしろポリマーのあるタイプのブロックに優先的に取り込まれるため、それらはより有効に利用され、それに続いてポリマーの架橋密度をより良好に制御することができる。そのような架橋性エラストマーおよび硬化生成物は、より強い引張強度およびより良好な弾性回復率を含む、有利な特性を有する。
【0108】
幾つかの実施形態において、異なる量のコモノマーを取り込む、2種類の触媒で製造されたブロックインターポリマーは、95:5〜5:95の範囲の、それにより形成されるブロックの重量比を有する。これらのエラストマーポリマーは、望ましくは、そのポリマーの総重量を基準にして、20〜90パーセントのエチレン含有率、0.1〜10パーセントのジエン含有率および10〜80パーセントのα−オレフィン含有率を有する。さらに好ましくは、それらのマルチブロックエラストマーポリマーは、そのポリマーの総重量を基準にして、60〜90パーセントのエチレン含有率、0.1〜10パーセントのジエン含有率および10〜40パーセントのα−オレフィン含有率を有する。幾つかの実施形態において、これらのインターポリマーは、10,000〜約2,500,000;他の実施形態においては、20,000〜500,000;さらに他の実施形態においては、20,000〜350,000の重量平均分子量(Mw)を有する高分子量ポリマーである。幾つかの実施形態において、これらのインターポリマーは3.5未満;他の実施形態においては、3.0未満の多分散性を有し得る。他の実施形態において、これらのインターポリマーは1〜250の範囲のMooney粘度(ML(1+4)125℃)を有し得る。他の実施形態において、そのようなポリマーは65〜75パーセントのエチレン含有率、0〜6パーセントのジエン含有率および20〜35パーセントのα−オレフィン含有率を有し得る。
【0109】
これらのエチレン/α−オレフィンインターポリマーは、少なくとも1つの官能基をそのポリマー構造に組み込むことにより、官能化することができる。例示的な官能基には、例えば、エチレンの性不飽和の−(mono-)もしくは二(di-)官能性カルボン酸、エチレン性の不飽和の−(mono-)もしくは二(di-)官能性カルボン酸無水物、それらの塩およびそれらのエステルが含まれ得る。そのような官能基はエチレン/α−オレフィンインターポリマーにグラフト化することができ、もしくはエチレンおよび任意のさらなるコモノマーと共重合させてエチレン、官能性コモノマーおよび、任意に、他のコモノマーのインターポリマーを形成することができる。ポリエチレンに官能基をグラフト化するための手段は、例えば、米国特許第4,762,890号、第4,927,888号および第4,950,541号に記載され、これらの特許の開示は参照によりそれらの全体がここに組み込まれる。特に有用な官能基の1つは無水マレイン酸である。
【0110】
官能性インターポリマー中に存在する官能基の量は変化し得る。官能基はコポリマー型官能化インターポリマー中に、ある実施形態においては少なくとも約1.0重量パーセント;他の実施形態においては約5重量パーセント;さらに他の実施形態においては少なくとも約7重量パーセントの量で存在することができる。官能基はコポリマー型官能化インターポリマー中に、ある実施形態においては約40重量パーセント未満;他の実施形態においては約30重量パーセント未満;さらに他の実施形態においては約25重量パーセント未満の量で存在することができる。
【0111】
また、この非包括的リストは本発明の実施形態による分散体および接着性組成物の形成において用いることができるポリマーのタイプの代表にすぎない。当業者は多数の他の適切なポリマーが存在することを認識するであろう。さらに、当業者は、上記ポリマーの組み合わせを用いることができることを理解するであろう。選択実施形態において、異なるMWを有する同じポリマーの組み合わせを用いることもできる。したがって、組み合わせには異なるポリマー、もしくは異なる特徴を有する類似のポリマー、もしくはそれらの組み合わせが含まれ得ることが理解されるであろう。
【0112】
選択された実施形態において、本発明の実施形態において用いられるポリマーは(以下で説明されるGPCシステムを用いる測定で)300,000以下のMw値を有する。他の実施形態においては、ポリマーは200,000以下のMwを有する。さらに他の実施形態においては、ポリマーは150,000以下のMwを有し、約5,000という少なさでもあり得る。
GPCシステムの説明
クロマトグラフィーシステムはPolymer LaboratoriesモデルPL−210もしくはPolymer LaboratoriesモデルPL−220のいずれかからなる。カラムおよびカルーセル区画は、再現性のあるクロマトグラフィーが促進され、溶解が促進され、かつ溶媒粘度が低下されるように温度制御する。3本のカラムはPolymer Laboratories10ミクロンMixed−Bカラムである。試料は50ミリリットルの溶媒中に0.1グラムのポリマーの濃度で調製する。試料を調製するための溶媒は、必要であれば、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)もしくは他の適切な安定化剤を含む。試料は、完全に溶解するまで軽く攪拌し、必要であれば、加熱することによって調製する。注入容積は100マイクロリットルであり、流速は1.0ミリリットル/分である。
【0113】
GPCカラムセットの較正は、580〜8,400,000の範囲の分子量を有し、個々の分子量間に少なくとも10の隔たりを有する6つの「カクテル」混合物として用意された、21のナロー分子量分布ポリスチレン標準で行う。これらの標準はPolymer Laboratories(Shropshire、UK)から購入する。ポリスチレン標準は、1,000,000以上の分子量については50ミリリットルの溶媒中に0.025グラムで、1,000,000未満の分子量については50ミリリットルの溶媒中に0.05グラムで調製する。ポリスチレン標準は40℃で、30分間穏やかに攪拌しながら溶解する。最初に、劣化が最小限に留まるように分子量成分が減少する順で、ナロー標準混合物を流す。ポリスチレン相当分子量の計算はViscotek TriSECソフトウェア・バージョン3.0を用いて行った。
【0114】
カラムの分解能が妥当であることを保証するため、プレートカウント(plate count)を測定しなければならない。プレートカウントはピーク保持容積(RV)を算出し、それを1/2高さ(クロマトグラフィーピークの50%)での保持容積(RV)幅に関連付けて、以下の式に示されるように、カラムにおける理論的プレートの数の有効尺度をもたらす。
【0115】
プレートカウント=5.54*[RVピーク最大/(RV後方50%ピーク高さ−RV前方50%ピーク高さ)2]。
【0116】
典型的には、分析で許容可能な最小プレートカウントは28,000である。
【0117】
フローマーカーピークの保持容積測定の最高精度を促進するため、最小二乗法ルーチンを用いて流動マーカー濃度クロマトグラムの局所ピーク頂点を二次方程式に当てはめる。次に、二次方程式の一次導関数を用いて真のピーク位置を解く。フローマーカーピークに基づいてシステムを較正した後、(較正勾配の測定値としての)有効流速を下記式に示されるように算出する。
【0118】
有効流速=公称流速*フローマーカー較正値/フローマーカー観測値
このGPCシステムにおいては、酸化防止剤不一致ピーク(antioxidant mismatch peak)もしくは空気ピーク(移動相が十分に脱気されている場合)を有効フローマーカーとして用いることができる。有効流速マーカーの主な特徴は以下の通りである。フローマーカーは単分散でなければならず;フローマーカーは総カラム浸透容積に近い容積が溶出しなければならず;フローマーカーは試料のクロマトグラフィー統合窓(chromatographic integration window)を妨害してはならず;およびフローマーカーはカラムセットといかなる非サイズ排除相互作用をもしてはならない。
ワックス:
本発明の実施形態において有用なワックスには、Fischer−Tropschワックス、石油誘導ワックスおよび合成ワックスが含まれる。これらのワックスは、例えばSasolから、商業的に入手可能である。巨大石油会社、例えば、Shell Oil、ExxonMobilおよび他の石油精製業者がこれらの用途における使用に適するワックスを供給する。モンタンワックスが他のタイプの適切なワックスである。これらのワックスのほとんどは潤滑油の精製プロセスにおいて得られ、そこではワックスは潤滑油原料から分離されて、パラフィンおよび微結晶ワックスを含む、ワックスの様々な画分に精製される。Astor Wax、IGIおよびMoore & Mungerのような配合業者もこれらの用途に適するワックスを供給する。これらのワックスは石油会社からそのまま転売され、並びに/または消費者に特有の要求を満たすように配合および再包装される。
【0119】
合成および/もしくは石油誘導ワックスに加えて、幾つかの他の「天然」ワックス、例えば、カルナウバワックス並びに、天然油含有産物、例えば、ダイズ、ヤシおよびオイルを得ることができる他の作物の処理から誘導される、商業的に入手可能な高トリグリセリドワックスを用いることができる。
【0120】
適切なワックスは、Archer Daniels Midland(Decatur、III.)からそれらの製品番号86−197−0で表されて;Cargill Incorporated(Wayzata、Mn)からそれらの製品番号800mrcs0000uで表されて;および他の供給源から「水素添加ダイズ油」の一般名称で入手することができる。ヤシ油ワックスはCustom Shortenings & Oils(Richmond、Va)によって入手することができ、Master Chef Stable Flake−Pと呼ばれる。ダイズワックスは、Marcus Oil and Chemical Corp.(Houston、Tex.)によって「Marcus Nat 155」の名称でも配給されている。これらのワックスは食品添加物としても用いることができる。PSAを含む実施形態においては、上に列挙されるワックスを(同様に構成され得る)油で置き換えることができる。
粘着剤:
本発明において有用な粘着性樹脂には、脂肪族、脂環式および芳香族炭化水素および修飾炭化水素および水素化物;テルペンおよび修飾テルペンおよび水素化物;並びにロジンおよびロジン誘導体および水素化物;並びにそれらの混合物が含まれる。これらの粘着性樹脂は70℃〜150℃の環球式軟化点を有し、典型的には、ブルックフィールド粘度計を用いる測定で、2000センチポアズ以下の350°F(177℃)粘度を有する。それらは水素化、すなわち、別の一般に用いられる用語では、飽和の異なるレベルで入手することもできる。
【0121】
有用な例にはEastman Chemical Co.(Kingsport、TN)製のEASTOTAC(商標)H−100、H−115およびH−130が含まれ、これらは、それぞれ、100℃、115℃および130℃の軟化点を有する部分的に水素化された脂環式石油炭化水素樹脂である。これらはEグレード、Rグレード、LグレードおよびWグレードで入手することができるが、これは水素化の異なるレベルを示し、Eが最も水素化が少なく、Wが最も水素化されている。Eグレードは15の臭素価を、Rグレードは5の臭素価を、Lグレードは3の臭素価を、およびWグレードは1の臭素価を有する。Eastman Chemical Co.製のEASTOTAC(商標)H−142Rは約140℃の軟化点を有する。他の有用な粘着性樹脂には、Exxon Chemical Co.(Houston、Tex)から入手可能である、ESCOREZ(商標)5300、5400および5637、部分的に水素化された脂環式石油炭化水素樹脂;およびESCOREZ(商標)5600、部分的に水素化された芳香族修飾石油炭化水素樹脂;並びに、Goodyear Chemical Co.(Akron、Ohio)から入手可能な脂肪族、芳香族石油炭化水素樹脂である、WINGTACK(商標)Extraが含まれる。
【0122】
ゴムロジン(gum rosins)、ウッドロジン(wood rosins)、トール油ロジン(tall-oil rosins)、蒸留ロジン(distilled rosins)、二量体化ロジン(dimerized rosins)および重合ロジン(polymerized rosins)を含めて、異なる水素化のレベルで入手可能な多くのタイプのロジンおよび修飾ロジンが存在する。幾つかの具体的な修飾ロジンには、ウッドロジンおよびトール油ロジンのグリセロールおよびペンタエリスリトールエステルが含まれる。商業的に入手可能なグレードには、これらに限定されるものではないが、SYLVATAC(商標)1103、Arizona Chemical Co.(Jacksonville、FL)から入手可能なペンタエリスリトールロジンエステル;UNITAC(商標)R−100 Lite、Union Camp(Wayne、NJ)から入手可能なペンタエリスリトールロジンエステル;PERMALYN(商標)305、Hercules, Inc.(Brunswick、GA)から入手可能なエリスリトール修飾ウッドロジンおよび、同じくHercules, Inc.(Brunswick、GA)から入手可能な高度に水素化されたペンタエリスリトールロジンエステルである、FORAL 105が含まれる。SYLVATAC(商標)R−85および295はArizona Chemical Co.から入手可能な85℃および95℃融点ロジン酸であり、FORAL AXはHercules, Inc.から入手可能な70℃融点水素化ロジン酸である。NIREZ V−2040はArizona Chemical Co.から入手可能なフェノール修飾テルペン樹脂である。
【0123】
別の例示的粘着剤、Eastman Chemical Co.から入手可能なPICCOTAC(商標)115は約1600センチポアズの350°F(177℃)粘度を有する。他の典型的な粘着剤は1600センチポアズより大幅に少ない、例えば、50〜300センチポアズの350°F(177℃)粘度を有する。
【0124】
例示的な脂肪族樹脂には、ESCOREZ(商標)、PICCOTAC(商標)、MERCURES(商標)、WINGTACK(商標)、HI−REZ(商標)、QUINTONE(商標)、TACKIROL(商標)等の商品名で入手可能なものが含まれる。例示的なポリテルペン樹脂には、NIREZ(商標)、PICCOLYTE(商標)、WINGTACK(商標)、ZONAREZ(商標)等の商品名で入手可能なものが含まれる。例示的な水素化樹脂には、ESCOREZ(商標)、ARKON(商標)、CLEARON(商標)等の商品名で入手可能なものが含まれる。これらの粘着剤は、それらを適合レベルで用いるという条件で、本発明のポリマーと共に用いることができる。
【0125】
本発明の特定の用途においては、粘着剤を用いることなしに、もしくは最少量の粘着剤を用いて、接着剤を調製できることが予期される。接着剤はワックスなしで調製することもでき、例えば、ポリマーおよび粘着性樹脂の配合物がそうである。
【0126】
接着剤に添加される粘着剤は、それらの軟化点、比重のようなパラメータもしくは酸価によって特徴付けることができる。粘着剤は、それらに限定されるものではないが、上で説明される様々な粘着剤のうちから、および酸価の範囲、例えば、0〜100の酸価、より好ましくは、0〜25.8の酸価によって特徴付けられる粘着剤、最も好ましくは、3〜10の酸価を有する粘着剤から選択することができる。
【0127】
本発明の実施形態において、ポリマーおよび/もしくはワックス、粘着性樹脂、油および分散剤は、典型的には、全分散体の約1〜約74体積パーセントを構成する。したがって、水は、典型的には、約26〜99体積パーセントを構成する。しかしながら、数パーセントの以下で説明される分散剤、添加物、殺生剤および他の化合物も存在し得る。全ての中間範囲、例えば、5〜50体積パーセントのポリマー/ワックス/粘着性樹脂/油が本開示の範囲内に含まれる。具体的な範囲には、全分散体の50〜60パーセントのポリマーおよび/もしくはワックス、粘着性樹脂、油および分散剤が含まれる。
分散剤
ここで説明される分散体は分散剤を含む。あらゆる分散剤を本発明の実施形態において用いることができる。ここで用いられる場合、「分散剤」という用語は、分散体の形成および/もしくは安定化を補助する薬剤を意味する。幾つかの分散剤はエマルジョンの形成にも用いることでき、Paul Becherによって詳細に説明されている(Emulsions: Theory and Practice, 3rd edition, Oxford University Press, New York, 2001(これは参照によりその全体がここに組み込まれる))。分散剤は、一般には、3つの分類、1)界面活性物質、2)天然物質、および3)微粉砕固体に入る。表面活性剤(surfactant)とも呼ばれる表面活性剤(surface-active agent)は、2つの非混和性液相間の界面張力を低下させる物質である。それらは分子中の親水性基に従って分類される。アニオン性、カチオン性、非イオン性もしくは両性電解性(両性)。商業的に入手可能な分散剤の例はMcCutcheon(McCutcheon's Emulsifiers and Detergents, Glen Rock, NJ, 毎年発行)に見出すことができる。天然物質の例には、リン脂質、ステロール、ラノリン、水溶性ゴム、アルギン酸塩、カラギーナンおよびセルロース誘導体が含まれる。微粉砕固体の例には、金属の塩基性塩、カーボンブラック、粉末化シリカおよび様々な粘土(主としてベントナイト)が含まれる。
【0128】
幾つかの実施形態においては、脂肪酸もしくは脂肪酸塩を分散剤として用いることができる。典型的な塩には脂肪酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩が含まれる。他の塩には脂肪酸のアンモニウムもしくはアルキルアンモニウム塩が含まれる。幾つかの実施形態において、脂肪酸もしくはその塩は12〜25未満の炭素原子を有する。分散剤が塩である場合、炭素の数は脂肪酸断片と会合する炭素原子を指し、他の実施形態においては、塩は15〜25個の炭素原子を有する脂肪酸断片で形成される。特定の実施形態ではエルカ酸(erucic acid)のアルカリ金属塩が用いられる。エルカ酸は22個の炭素原子を有する脂肪酸である。幾つかの実施形態ではナタネ油の形態にあるエルカ酸が用いられ、この油は約40〜約50%のエルカ酸を含み、残部が主として18個の炭素原子有する鎖からなる天然油である。エルカ酸のアルカリ土類金属塩も幾つかの実施形態において用いられる。幾つかの好ましい実施形態においては、16〜26炭素原子を含む脂肪酸を用いることができる。
【0129】
特定の実施形態において、25個未満の炭素原子を含む脂肪酸の塩は25個未満の炭素原子を含む脂肪酸を中和するか、もしくは25個未満の炭素原子を含む脂肪酸のエステルをけん化することによって生成される。
【0130】
本発明の幾つかの実施形態では脂肪酸のエステルから誘導される脂肪酸もしくはその塩が用いられる。そのようなエステルを構成するアルコール残基は、好ましくは、2〜30個の炭素原子、最も好ましくは、6〜20個の炭素原子を含み得る。そのような残基は直鎖残基であっても分岐鎖残基であってもよく、各々が異なる数の炭素原子を含む2つ以上の残基の混合物であってもよい。例示的なアルコール残基には、10〜20個の炭素原子を含む高級アルコール、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコールおよびオレイルアルコールの残基が含まれる。幾つかの実施形態ではエルカ酸のエステルが用いられる。
【0131】
他の実施形態において、分散剤はエチレンアクリル酸コポリマーであり得る。より広範に述べると、分散剤は単純に酸コポリマーであり得る。例えば、エチレンメタクリル酸が別の適切な薬剤である。さらに他の実施形態ではアルキルエーテルカルボキシレートが分散剤として用いられる。幾つかの実施形態においては、石油スルホネートが有用である。他の実施形態においては、分散剤はスルホン化もしくはポリオキシエチレン化アルコールである。さらに他の実施形態においては、硫酸化もしくはリン酸化ポリオキシエチレン化アルコールが適切である。ポロキサマーとして知られるポリマー性エチレンオキシド/プロピレンオキシド/エチレンオキシド分散剤を分散剤として用いることもできる。一級および二球アルコールエトキシレートも幾つかの分散体において適切である。アルキルグリコシドおよびアルキルグリセリドが幾つかの分散体において用いられる。もちろん、これらの分散剤の組み合わせも適切である。
【0132】
本発明の実施形態は、典型的には、用いられるポリマーおよび/もしくはワックス、粘着性樹脂および油の総量を基準にして、約1〜30pph(parts per hundred)(百分率)の分散剤を含む。しかしながら、より多量もしくはより少量を選択された用途において用いることもできる。他の実施形態においては、5〜20pphの分散剤を用いることができる。
殺生剤
加えて、生物学的安定性を強化する殺生剤を用いることができる。当業者は幾つかの適切な化合物が存在することを認識するであろう。例えば、塩素、四級アンモニウム化合物およびナトリウムペンタクロロフェナートが全て適切な例である。特に有用な殺生剤の1つは、The Dow Chemical Company(Midland、MI)によってDOWICIL 200の商標で販売されている。殺生剤は総重量の約0〜約1重量パーセントの範囲で存在し得る。
添加物
本発明の接着剤は幾つかのさらなる成分、例えば、安定化剤、可塑剤、顔料、充填剤もしくは酸化防止剤を含むこともできる。本発明の接着性組成物中に含めることができる適用可能な安定化剤もしくは酸化防止剤のうちにあるものは、高分子量ヒンダードフェノールおよび多官能性フェノール、例えば、イオウ含有およびリン含有フェノールである。ヒンダードフェノールは、当業者には公知であるが、フェノールのヒドロキシル基に密接して立体的に嵩高い残基をも含むフェノール化合物と説明することができる。具体的には、一般に、三級ブチル基がベンゼン環に、フェノールヒドロキシル基に対してオルト位の少なくとも一方に置換される。ヒドロキシル基近傍でのこれらの立体的に嵩高い置換残基の存在はその伸長頻度を抑制し、それに対応してその反応性を抑制するのに役立つ。これらのフェノール化合物の安定化特性をもたらすのはこの障害である。
【0133】
代表的なヒンダードフェノールには;これらに限定されるものではないが、2,4,6−トリアルキル化モノヒドロキシフェノール;1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−ベンゼン;IRGANOX(登録商標)1010の商標で商業的に入手可能なペンタエリスリトールテトラキス−3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート;n−オクタデシル−3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート;4,4−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチル−フェノール);4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−o−クレゾール);2,6−ジ−tertブチルフェノール;6−(4−ヒドロキシフェノキシ)−2,4−ビス(n−オクチル−チオ)−1,3,5トリアジン;2−(n−オクチルチオ)エチル 3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート;ジ−n−オクタデシル 3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート;およびソルビトール ヘキサ(3,3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)−プロピオネートが含まれる。
【0134】
酸化防止剤には、これらに限定されるものではないが、ブチル化ヒドロキシアニソール(「BHA」)もしくはブチル化ヒドロキシトルエン(「BHT」)が含まれ、これらは配合物を熱的により安定にするのにも用いることができる。これらの安定化剤および酸化防止剤は、配合物の重量を基準にして、約0.01%〜約5%の範囲の量で添加することができる。
【0135】
公知の共力剤を酸化防止剤と共に用いることで、これらの酸化防止剤の性能をさらに強化することができる。これらの公知共力剤の幾つかは、例えば、チオジプロピオネートエステルおよびホスフェートである。キレート剤および金属非活性化剤を用いることもできる。これらの化合物の例には、エチレンジアミン四酢酸(「EDTA」)および、より好ましくは、その塩並びにジサリチラルプロピレンアミンが含まれる。ジステアリルチオジプロピオネートが特に有用である。接着性組成物に添加する場合、これらの安定化剤は、一般には、約0.1〜約1.5重量パーセント、より好ましくは、約0.25〜約1.0重量パーセントの範囲の量で存在する。
【0136】
接着剤業界に公知の他の添加物を本発明の実施形態と共に用いることもできる。本発明の範囲は上記もしくは下記に記載されるいかなる特定の配合物にも限定されることは意図されておらず、その代わりに請求の範囲によって規定される。他の典型的な添加物には、これらに限定されるものではないが、成核剤、結晶化を遅延させるのに用いられる化学物質、濃厚剤、レオロジー改質剤、粘着防止剤、油および他の添加物が含まれる。
【0137】
上述のように、本発明の実施形態は選択的に活性化可能な接着性分散体に関する。本発明の第1実施形態に従って選択的に活性化可能な分散体を形成するには、ポリマーを、そのポリマーを実質的に溶融するのに十分な温度に設定されたホットメルト・フィーダ・タンクにおいて溶融する。次に、その液体ポリマーを、望ましい処理時間に依存して選択することができる速度で、ミキサに通じる加熱された導管に供給する。ミキサへの途中で、液体ポリマーを上に記載される1種類以上のワックス、粘着性樹脂、油もしくは他の添加物と組み合わせることができる。ミキサに到達した後、液体ポリマー(および、存在するのであれば、他の成分)を、典型的にはミキサに注入される前に予備加熱されている、水/分散剤溶液と合わせる。十分な時間混合した後、選択的に活性化可能な接着性分散体が創出される。ミキサから排出された後、熱水を添加してその混合物を望ましい程度まで希釈することができる。その代わりに、ミキサを離れた後に、分散体に添加物を添加することもできる。
【0138】
あらゆる方法を用いることができるが、ここで説明される分散体を調製する便利な方法の1つは溶融混練である。当分野において公知のあらゆる溶融混練手段を用いることができる。幾つかの実施形態においては、混練機、Banburyミキサ、一軸スクリュー押出機もしくは多軸スクリュー押出機が用いられる。本発明による分散体の製造方法は特に限定されるものではない。好ましい方法の1つは、例えば、上記成分を米国特許第5,756,659号および米国特許公開第20010011118号に従って溶融混練することを含む方法である。
【0139】
図1は本発明の実施形態において用いることができる押出装置を模式的に図示する。押出機20は、特定の実施形態においては二軸スクリュー押出機であるが、背圧レギュレータ、溶融ポンプもしくはギアポンプ30と連結されている。複数の実施形態では基剤リザーバ40および初期水リザーバ50も提供され、それらは各々ポンプ(図示せず)を含む。望ましい量の基剤および初期水が、それぞれ、基剤リザーバ40および初期水リザーバ50からもたらされる。あらゆる適切なポンプを用いることができるが、幾つかの実施形態においては、240バールの圧力で約150cc/分の流れをもたらすポンプが基剤および初期水を押出機20にもたらすのに用いられる。他の実施形態において、液体注入ポンプは200バールで300cc/分もしくは133バールで600cc/分の流れをもたらす。幾つかの実施形態において、基剤および初期水は予備加熱器内で予備加熱される。
【0140】
幾つかの実施形態においては、塩基性物質またはそれらの水溶液、分散液もしくはスラリーが分散体に、そのプロセスのあらゆる点で、好ましくは、押出機に添加される。典型的には、塩基性物質は水溶液として添加する。しかしながら、幾つかの実施形態においては、他の都合のよい形態、例えば、ペレットもしくは顆粒として添加する。幾つかの実施形態においては、塩基性物質および水を押出機の別々の導入口を介して添加する。溶融混練プロセスにおける中和もしくはけん化に用いることができる塩基性物質の例には、アルカリ金属およびアルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム;無機アミン、例えば、ヒドロキシルアミンもしくはヒドラジン;有機アミン、例えば、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、シクロヘキシルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム;アルカリ金属およびアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物および水素化物、例えば、酸化ナトリウム、過酸化ナトリウム、酸化カリウム、過酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水素化ストロンチウム、水酸化バリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム;並びにアルカリ金属およびアルカリ土類金属の弱酸塩、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム;または水酸化アンモニウムが含まれる。特定の実施形態において、塩基性物質はアルカリ金属の水酸化物もしくはアルカリ土類金属の水酸化物である。幾つかの実施形態においては、塩基性物質は水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよびそれらの組み合わせから選択される。
【0141】
配合物例を以下で説明する。一般には、下で説明される例を形成する方法の1つは、HMAもしくはPSAのいずれかをホットメルト・フィーダ・タンク内で溶融することによって溶融HMAもしくはPSAを創出する。次に、その液体HMAもしくはPSAを分散剤と混合する。次いで、この組成物をミキサ内に供給し、そこで水(および、典型的には、塩基)と合わせて水性分散体を創出する。その後、その水性分散体を基体に被着させ、もしくは後に使用するために貯蔵することができる。
【0142】
前駆分散体の形成に本発明の実施形態による方法を用いる有利な特徴の1つは、得られる分散体が小さな粒径を有することである。「平均粒径」によって本発明が意味するところは、体積平均粒径である。
【0143】
典型的には、平均粒径は直径が0.1μm〜100μmの範囲であり得る。幾つかの好ましい分散体は約0.1μm〜約10μmの平均粒径を有する。幾つかの実施形態においては、平均粒径は約0.1μm〜約5μmである。他の実施形態においては、分散体は約0.5μm〜約1.5μmの平均粒径を有する。球状ではない粒子については、粒子の直径はその粒子の長軸および短軸の平均である。粒径はBeckman−Coulter LS230レーザ回折粒径アナライザもしくは他の適切な装置で測定することができる。
【0144】
ここで用いられる水性分散体の平均粒径を参照するとき、当業者は、開示される粒径がポリマー、分散剤および粘着性樹脂、ワックスおよび/もしくは油のみを含むことを認める。他の成分、例えば、充填剤、顔料等はこの測定には含まれないが、存在し得る。
【0145】
他の実施形態においては、体積平均粒径を数平均粒径で割ったものとして定義される多分散性を粒径の特徴付けに用いる。本発明の実施形態は、典型的には、約5未満の多分散性を有することを特徴とする。特定の実施形態においては、多分散性は3未満であり得る。さらに他の実施形態においては、多分散性は2未満であり得る。
【0146】
HMAおよびPSA前駆分散体配合物例
実施例1:
ポリマー、ワックスおよび分散剤を含む(およびカリフォルニア州BerkeleyのNational Starch & Chemical Companyから入手可能である)National Starch Cool−Lok 34−2116熱溶融型接着剤(HMA)の水性分散体を以下の方法で製造する。
【0147】
HMAを135℃の温度に設定されたホットメルト・フィーダ・タンク内で溶融する。その液体HMAをホットメルタ・ギアポンプ(hot melter gear pump)を用いて85g/分の速度でミキサに通じる加熱導管に供給する。ミキサへの導管内にある間に、液体HMAに2.8g/分のIndustrene 106(主としてオレイン酸)を注入する。ミキサ(800RPMで作動するOakes M−4 4’’回転子−固定子)で、HMAを12.35g/分の水および1.26g/分の45%(w/w)KOH水溶液(これらは両者ともミキサへの注入に先だって約120℃に予備加熱される)と合わせる。ミキサ内で、水中HMA分散体が生成される。
【0148】
ミキサから排出された後、52g/分の水を100℃に予備加熱して分散体に添加する。150PSIGバネ作動逆止弁をこのプロセスの排出口で用いてシステムの圧力を維持する。希釈された分散体生成物はバネ逆止弁を通過してそのプロセスを抜け、収集容器に入る。得られる生成物は、Beckman Coulter LS 230による測定で約0.6ミクロンの体積平均粒径および1.5未満の(体積平均粒径を数平均粒径で割ったものとして定義される)多分散性を有する水中HMA分散体である。
実施例2:
ポリマー(この場合、ポリスチレン)およびワックスを含むH.B.Fuller HM−2055PI HMA(ミネソタ州St.PaulのH.B.Fuller Companyから入手可能)の水性分散体を以下の方法で製造する。
【0149】
HMAを135℃の温度に設定されたホットメルト・フィーダ・タンク内で溶融する。その液体HMAをホットメルタ・ギアポンプを用いて50g/分の速度でミキサに通じる加熱導管に供給する。ミキサへの導管内にある間に、液体HMAに1.8g/分のIndustrene 106(主としてオレイン酸)を注入する。ミキサ(500RPMで作動するOakes M−4 4’’回転子−固定子)で、HMAを4g/分の水および0.7g/分の45%(w/w)KOH水溶液(これらは両者ともミキサへの注入に先だって約120℃に予備加熱される)と合わせる。ミキサ内で、水中HMA分散体が生成される。
【0150】
ミキサから排出された後、45g/分の水を100℃に予備加熱して分散体に添加する。150PSIGバネ作動逆止弁をこのプロセスの排出口で用いてシステムの圧力を維持する。希釈された分散体生成物はバネ逆止弁を通過してそのプロセスを抜け、収集容器に入る。得られる生成物は、Beckman Coulter LS 230による測定で約0.8ミクロンの体積平均粒径および1.5未満の(体積平均粒径を数平均粒径で割ったものとして定義される)多分散性を有する水中HMA分散体である。
実施例3:
H.B.Fuller HL−72687PI HMA(ミネソタ州St.PaulのH.B.Fuller Companyから入手可能)の水性分散体を以下の方法で製造する。
【0151】
HMAを135℃の温度に設定されたホットメルト・フィーダ・タンク内で溶融する。その液体HMAをホットメルタ・ギアポンプを用いて50g/分の速度でミキサに通じる加熱導管に供給する。ミキサへの導管内にある間に、液体HMAに1.8g/分のIndustrene 106(主としてオレイン酸)を注入する。ミキサ(500RPMで作動するOakes M−4 4’’回転子−固定子)で、HMAを4g/分の水および0.8g/分の45%(w/w)KOH水溶液(これらは両者ともミキサへの注入に先だって約120℃に予備加熱される)と合わせる。ミキサ内で、水中HMA分散体が生成される。
【0152】
ミキサから排出された後、50g/分の水を100℃に予備加熱して分散体に添加する。150PSIGバネ作動逆止弁をこのプロセスの排出口で用いてシステムの圧力を維持する。希釈された分散体生成物はバネ逆止弁を通過してそのプロセスを抜け、収集容器に入る。得られる生成物は、Beckman Coulter LS 230による測定で約0.8ミクロンの体積平均粒径および1.5未満の(体積平均粒径を数平均粒径で割ったものとして定義される)多分散性を有する水中HMA分散体である。
実施例4:
ポリマー、ワックス、油および粘着剤を含むH.B.Fuller PHL−4164 HMA(ミネソタ州St.PaulのH.B.Fuller Companyから入手可能)の水性分散体を以下の方法で製造する。
【0153】
HMAを135℃の温度に設定されたホットメルト・フィーダ・タンク内で溶融する。その液体HMAをホットメルタ・ギアポンプを用いて50g/分の速度でミキサに通じる加熱導管に供給する。ミキサへの導管内にある間に、液体HMAに1.8g/分のIndustrene 106(主としてオレイン酸)を注入する。ミキサ(500RPMで作動するOakes M−4 4’’回転子−固定子)で、HMAを3.5g/分の水および0.8g/分の45%(w/w)KOH水溶液(これらは両者ともミキサへの注入に先だって約120℃に予備加熱される)と合わせる。ミキサ内で、水中HMA分散体が生成される。
【0154】
ミキサから排出された後、50g/分の水を100℃に予備加熱して分散体に添加する。150PSIGバネ作動逆止弁をこのプロセスの排出口で用いてシステムの圧力を維持する。希釈された分散体生成物はバネ逆止弁を通過してそのプロセスを抜け、収集容器に入る。得られる生成物は、Beckman Coulter LS 230による測定で約0.5ミクロンの体積平均粒径および1.5未満の(体積平均粒径を数平均粒径で割ったものとして定義される)多分散性を有する水中HMA分散体である。
実施例5:
ポリマーおよび油(鉱物油)を含むH.B.Fuller HL8141XZP PSA(ミネソタ州St.PaulのH.B.Fuller Companyから入手可能)の水性分散体を以下の方法で製造する。
【0155】
接着剤を150℃の温度に設定されたホットメルト・フィーダ・タンク内で溶融する。その液体接着剤をホットメルタ・ギアポンプを用いて50g/分の速度でミキサに通じる加熱導管に供給する。ミキサへの導管内にある間に、液体接着剤に1.6g/分のIndustrene 106(主としてオレイン酸)を注入する。ミキサ(500RPMで作動するOakes M−4 4’’回転子−固定子)で、そのPSAを3.5g/分の水および0.6g/分の45%(w/w)KOH水溶液(これらは両者ともミキサへの注入に先だって約120℃に予備加熱される)と合わせる。ミキサ内で、水中接着性分散体が生成される。
【0156】
ミキサから排出された後、50g/分の水を100℃に予備加熱して分散体に添加する。150PSIGバネ作動逆止弁をこのプロセスの排出口で用いてシステムの圧力を維持する。希釈された分散体生成物はバネ逆止弁を通過してそのプロセスを抜け、収集容器に入る。得られる生成物は、Beckman Coulter LS 230による測定で約1.15ミクロンの体積平均粒径および1.5未満の(体積平均粒径を数平均粒径で割ったものとして定義される)多分散性を有する水中PSA分散体である。
実施例6:
ポリマー、ワックスおよび分散剤を含むHB Fuller PHC9256PE熱溶融型接着剤(HMA)(HB Fullerから入手可能)の水性分散体を以下の方法で製造する。
【0157】
HMAおよび分散剤(30質量%のDow Primacor 5990iエチレンアクリル酸コポリマー)を25mm二軸スクリュー押出機に約150g/分で同時供給する。それらのポリマーを溶融して乳化区画に搬送するが、そこでは55g/分の水および15.2g/分の45%(w/w)KOH溶液が合わせられて約100℃に予備加熱され、そのポリマー混合物に注入される。この乳化区画において、水中HMA分散体が生成される。
【0158】
初期分散体が生成した後、120g/分の水を100℃に予備加熱して希釈区域内のバレルに注入し、そこでその希釈水が剪断下で初期分散体に取り込まれる。完成した分散体は約200PSIGに設定された背圧レギュレータを介して押出機から排出され、生成物収集容器内に集められる。得られる生成物は、Beckman Coulter LS 230による測定で約0.6ミクロンの体積平均粒径および約4の(体積平均粒径を数平均粒径で割ったものとして定義される)多分散性を有する水中HMA分散体である。
【0159】
本発明による方法は、この開示において説明される接着性前駆分散体を基体に被着させて選択的に活性化可能なコーティングを形成し、かつそのコートされた基体の少なくとも一部を選択的に活性化して接着剤接合を形成することを含む。図2はそのような実施形態による流れ図を示す。
【0160】
図2においては、選択的に活性化可能な接着剤前駆分散体を基体に被着させる(ST100)。前駆体用液を乾燥させた後、もしくは依然として水性状態にある間のいずれかに、少なくとも1つの選択された領域において、HMAの場合には接着剤前駆分散体を加熱し、もしくはPSAの場合には圧力を印加する。この活性化工程(ST102)の結果として、接着剤が形成される(ST104)。基体には、例えば、紙、厚紙、フィルム、ガラス、セラミック、織物、複合材料、繊維、木材、金属、クレーコート厚紙、不織衛生用品、製本、プラスチック成型物品、コンクリートおよびアスファルトが含まれ得る。
【0161】
本発明の別の実施形態においては、工程102および104を省略することができ、すなわち、選択的に活性化可能な接着剤前駆体用液を単純に基体の少なくとも一部に塗布することができる。得られたコートされた基体は、次に、活性化のために別の場所に搬送するか、もしくは後に使用するために貯蔵することができる。したがって、従来技術のHMAもしくはPSAと比較したときに有利なことには、本発明の接着性分散体は、大量のコートされた基体を形成し、かつ後の使用のために貯蔵することができる、「応需型」接着剤の源を提供する。
【0162】
別の実施形態においては、ここに記載される分散体を製造プラントにおいて「オンライン」で製造することができる。例えば、HMAの場合、ワックス、粘着性樹脂およびポリマーをHMAの伝統的な調製方法に従って配合することができる。しかしながら、典型的に行われることではあるが、HMAをピロー(pillow)、チクレット(chicklet)もしくはドラジェー形態で仕上げる代わりに、溶融混合物を表面活性剤と一緒に汲み上げて機械式分散機器に計り入れ、そこで水と混合し、最終生成物に加工することができる。有利なことに、この調製方法は、ピローを形成し、それらを分散体処理部位に輸送し、かつ再溶融する中間工程を省略して経費を節約することを可能にする。
【0163】
別の実施形態においては、接着剤を形成することができるポリオレフィン、分散剤および水から接着剤を製造することができ、この分散体は約0.1〜約100ミクロンの平均粒径および5未満の多分散性のうちの少なくとも一方を有する。
【0164】
本発明の実施形態による方法および配合物は多くの物品の配合において用いることができる。この水性分散体は基体上に様々な手順により、例えば、噴霧コーティング、カーテンフローコーティング、ロールコーターもしくはグラビアコーターでのコーティング、ブラシコーティングまたは浸漬によってコートすることができる。乾燥はあらゆる適切な手段によって達成することができるが、コーティングは、好ましくは、コートされた基体を50〜150℃に1〜300秒間加熱することによって乾燥させる。例えば、本発明の水性分散体を基体、例えば、紙、厚紙、フィルム、ガラス、セラミック、織物、複合材料、繊維、木材、金属、クレーコート厚紙、不織衛生用品、製本、プラスチック成型物品、コンクリートおよびアスファルトの表面にコートし、乾燥させることができる。特には、本発明の実施形態はセルロイド基体で特に有用である。
【0165】
本発明において用いることができるプラスチック成型物品の例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ペンテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−1−ブテンコポリマーおよびプロピレン−1−ブテンコポリマーによって典型的に表される、アルファ−オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンおよび1−ドデセンのホモポリマーおよびコポリマー(エラストマーを含む);エチレン−ブタジエンコポリマーおよびエチレン−エチリデンノルボルネンコポリマーによって典型的に表される、アルファ−オレフィンと共役もしくは非共役ジエンとのコポリマー(エラストマーを含む);並びにポリオレフィン(エラストマーを含む)、例えば、エチレン−プロピレン−ブタジエンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエンコポリマー、エチレン−プロピレン−1,5−ヘキサジエンコポリマーおよびエチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネンコポリマーによって典型的に表される、2種類以上のアルファ−オレフィンと共役もしくは非共役ジエンとのコポリマー;エチレン−ビニル化合物コポリマー、例えば、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、エチレン−塩化ビニルコポリマー、エチレンアクリル酸もしくはエチレン−(メタ)アクリル酸コポリマーおよびエチレン−(メタ)アクリレートコポリマー;スチレンコポリマー(エラストマーを含む)、例えば、ポリスチレン、ABS、アクリロニトリル−スチレンコポリマーおよびα−メチルスチレン−スチレンコポリマー;並びにスチレンブロックコポリマー(エラストマーを含む)、例えば、スチレン−ブタジエンコポリマーおよびそれらの水和物並びにスチレン−イソプレン−スチレントリブロックコポリマー;ポリビニル化合物、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−塩化ビニリデンコポリマー、ポリメチルアクリレートおよびポリメチルメタクリレート;ポリアミド、例えば、ナイロン6、ナイロン6,6およびナイロン12;熱可塑性ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレート;並びにポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド等から形成されるものが含まれる。これらの樹脂は単独で、もしくは2種類以上の組み合わせで用いることができる。
【0166】
特定の実施形態においては、水性分散体を、ポリオレフィン、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびそれらのコポリマーおよびそれらの配合物に加えて、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマーに塗布することができる。幾つかの実施形態において、好ましいオレフィンポリマーには、米国特許第3,645,992号においてElstonによって記載される均質ポリマー;Andersonへの米国特許第4,076,698号に記載される高密度ポリエチレン(HDPE);不均一に分岐した直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE);不均一に分岐した直鎖超低密度ポリエチレン(ULDPE);均一に分岐した直鎖エチレン/アルファ−オレフィンコポリマー;例えば、米国特許第5,272,236号および第5,278,272号(これらの開示は参照によりここに組み込まれる)に開示される方法によって調製することができる、均一に分岐した実質的に直鎖のエチレン/アルファ−オレフィンポリマー;並びに高圧フリーラジカル重合エチレンポリマーおよびコポリマー、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン−アクリル酸(EAA)およびエチレン−メタクリル酸コポリマー、例えば、PRIMACOR(商標)、NUCREL(商標)およびESCOR(商標)の商品名で入手可能であり、かつ米国特許第4,599,392号、第4,988,781号および第5,938,437号(これらの各々は参照によりその全体がここに組み込まれる)に記載されるもの、並びにエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーが含まれる。
【0167】
米国特許第6,538,070号、第6,566,446号、第5,869,575号、第6,448,341号、第5,677,383号、第6,316,549号、第6,111,023号もしくは第5,844,045号(これらの各々は参照によりその全体がここに組み込まれる)に記載されるポリマー組成物も幾つかの実施形態における基体として適切である。もちろん、ポリマーの配合物も用いることができる。幾つかの実施形態においては、配合物に2種類の異なるチーグラー・ナッタポリマーが含まれる。他の実施形態においては、配合物にチーグラー・ナッタおよびメタロセンポリマーの配合物が含まれ得る。さらに他の実施形態においては、ここで用いられる熱可塑性樹脂が2種類の異なるメタロセンポリマーの配合物である。
【0168】
有利なことに、本発明による実施形態の1つ以上が、基体にコートされたとき、冷蔵もしくは凍結に晒された後でさえ有効のままである接着剤接合を提供し得る。さらに、複数の実施形態が、乾燥もしくは湿潤条件下で、従来技術の配合物よりも低温で形成することができる接着剤を提供し得る。
【0169】
本発明を限られた数の実施形態に関して説明してきたが、この開示の恩恵を受ける当業者は、ここに開示される発明の範囲から逸脱しない他の実施形態を考案できることを理解するであろう。したがって、本発明の範囲は添付される特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】本発明の実施形態に従って分散体を形成するのに適する例示的装置を示す。
【図2】本発明の実施形態による一方法を図示するフローチャートを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤接合の形成方法であって、
水性分散体を基体上に被着させて選択的に活性化可能なコーティングを形成し、前記水性分散体は、
(A)接着剤を形成することができる少なくとも1種類のポリマー;
(B)少なくとも1種類の分散剤;および
(C)粘着性樹脂、ワックスもしくは油のうちの少なくとも1つ
を含み、前記分散体は約0.1〜約100ミクロンの平均粒子径および5未満の多分散性のうちの少なくとも一方を有し;並びに
コートされた基体の少なくとも一部を選択的に活性化して接着剤接合を形成する、
ことを含む、方法。
【請求項2】
選択的に活性化する前にコートされた基体を乾燥させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水性分散体をポリマーの溶融温度未満の温度で基体に被着させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
選択的な活性化が加熱もしくは圧力の印加のうちの少なくとも一方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第2の基体をコートされた基体に接合することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
基体が紙、繊維、木材、金属、クレーコート厚紙、不織衛生用品、製本もしくはプラスチック成型物品のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
分散体が約0.1〜約10ミクロンの平均粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
成分(A)、(B)および(C)が合計で分散体の約1〜約74体積パーセントである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
分散剤が成分(A)および(B)の約1〜約30pphの量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
分散体が約26〜約99体積パーセントの水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
選択的な活性化が約150℃未満の温度までの加熱を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
(A)接着剤を形成することができる少なくとも1種類のポリマー;
(B)粘着性樹脂、ワックスもしくは油のうちの少なくとも1つ;
(C)分散剤;および
(D)水
を含む水性熱溶融型接着性分散体であって、約0.1〜約100ミクロンの平均粒子径および5未満の多分散性のうちの少なくとも一方を有する、水性熱溶融型接着性分散体。
【請求項13】
成分(A)、(B)および(C)が合計で分散体の総体積の約1〜約74体積パーセントである、請求項12に記載の分散体。
【請求項14】
分散剤が成分(A)および(B)の約1〜約30pphの量で存在する、請求項12に記載の分散体。
【請求項15】
水が全分散体の約26〜約99体積パーセントの量で存在する、請求項12に記載の分散体。
【請求項16】
総量の約0〜約1重量パーセントの範囲で存在する殺生剤をさらに含む、請求項12に記載の分散体。
【請求項17】
ポリマーが約0.1〜約10ミクロンの平均粒径を有する、請求項12に記載の分散体。
【請求項18】
ポリマーが、エチレン系ポリマー、プロピレン系ポリマー、プロピレン−エチレンコポリマーおよび非晶質ポリアルファ−オレフィンからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項12に記載の分散体。
【請求項19】
ポリマーが非加水分解性ポリマーを含む、請求項12に記載の分散体。
【請求項20】
ポリマーがエチレン酢酸ビニルを含む、請求項19に記載の分散体。
【請求項21】
ポリマーがエチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーを含む、請求項12に記載の分散体。
【請求項22】
接着剤要素を含む物品であって、前記接着剤要素の少なくとも一部は選択的に活性化可能なコーティングから形成され、前記選択的に活性化可能なコーティングは、
(A)接着剤を形成することができる少なくとも1種類のポリマー;
(B)粘着性樹脂、ワックスもしくは油のうちの少なくとも1つ;
(C)分散剤;および
(D)水
を含む分散体から構成され、前記分散体は約0.1〜約100ミクロンの平均粒径および5未満の多分散性のうちの少なくとも一方を有する、物品。
【請求項23】
成分(A)、(B)および(C)が合計で全分散体の約1〜約74体積パーセントである、請求項22に記載の物品。
【請求項24】
分散剤が成分(A)および(B)の約1〜約30pphの量で存在する、請求項22に記載の物品。
【請求項25】
水が全体積の約26〜約99パーセントの量で存在する、請求項22に記載の物品。
【請求項26】
分散体が約0.1ミクロン〜約10ミクロンの平均粒径を有する、請求項22に記載の物品。
【請求項27】
コートされた基体の形成方法であって、
水性分散体を基体に被着させて選択的に活性化可能なコーティングを形成することを含み、前記分散体は、
(A)接着剤を形成することができる少なくとも1種類のポリマー;
(B)少なくとも1種類の分散剤;
(C)粘着性樹脂、ワックスもしくは油のうちの少なくとも1つ;および
(D)水
を含み、前記分散体は約0.1〜約100ミクロンの平均粒径および5未満の多分散性のうちの少なくとも一方を有する、方法。
【請求項28】
基体が、紙、厚紙、フィルム、ガラス、セラミック、織物、複合材料、繊維、木材、金属、クレーコート厚紙、不織衛生用品、製本、プラスチック成型物品、コンクリートおよびアスファルトのうちの少なくとも1つを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
分散体が約0.1ミクロン〜約10ミクロンの平均粒径を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
(A)接着剤を形成することができるポリマーであって、エチレン系ブロックインターポリマー、プロピレン系コポリマーおよびホモポリマー並びにスチレン系コポリマーおよびブロックコポリマーからなる群より選択される少なくとも1つであるポリマー;
(B)少なくとも1種類の分散剤;
(C)粘着性樹脂、ワックスもしくは油のうちの少なくとも1つ;並びに
(D)水
を含む水性感圧型接着性分散体であって、約0.1〜約100ミクロンの平均粒子径および5未満の多分散性のうちの少なくとも一方を有する、水性感圧型接着性分散体。
【請求項31】
成分(A)、(B)および(C)が合計で総体積の約1〜約74体積パーセントである、請求項30に記載の接着剤。
【請求項32】
分散剤が成分(A)および(B)の約1〜約30pphの量で存在する、請求項30に記載の接着剤。
【請求項33】
水が全体の約26〜約99体積パーセントの量で存在する、請求項30に記載の接着剤。
【請求項34】
総量の約0〜約1重量パーセントの範囲で存在する殺生剤をさらに含む、請求項30に記載の接着剤。
【請求項35】
ポリマーが約0.1〜約10ミクロンの平均粒径を有する、請求項30に記載の接着剤。
【請求項36】
ポリマーが300,000以下のMwを有する、請求項30に記載の接着剤。
【請求項37】
ポリマーが、200,000以下のMw、約0.1〜約10ミクロンの平均粒径、成分(A)および(B)の約1〜約30pphの量の分散剤を有し、かつ水が全体の約26〜約99体積パーセントの量で存在する、請求項30に記載の接着剤。
【請求項38】
ポリマーが150,000以下のMwを有する、請求項30に記載の接着剤。
【請求項39】
(A)エチレンおよびα−オレフィンの重合単位を含むエチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーであって、ゼロを上回って約1.0までの平均ブロック指数および約1.3を上回る分子量分布、Mw/Mnを特徴とするエチレン/α−オレフィンブロックインターポリマー;
(B)分散剤;並びに
(C)水
を含む、水性接着性分散体。
【請求項40】
平均ブロック指数が0を上回るが約0.4未満である、請求項39に記載の分散体。
【請求項41】
平均ブロック指数が約0.1〜約0.3の範囲内にある、請求項39に記載の分散体。
【請求項42】
平均ブロック指数が約0.4〜約1.0の範囲内にある、請求項39に記載の分散体。
【請求項43】
インターポリマーが約0.91g/cc未満の密度を有する、請求項39に記載の分散体。
【請求項44】
インターポリマーが約0.86g/cc〜約0.91g/ccの範囲の密度を有する、請求項39に記載の分散体。
【請求項45】
α−オレフィンがスチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、ノルボルネン、1−デセン、1,5−ヘキサジエンもしくはそれらの組み合わせである、請求項39に記載の分散体。
【請求項46】
(A)エチレンおよびα−オレフィンの重合単位を含むエチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーであって、昇温溶離分別(「TREF」)によって得られる少なくとも1つの画分を有することを特徴とし、前記画分は約0.3を上回って約1.0までのブロック指数を有し、かつ前記エチレン/α−オレフィンインターポリマーは約1.3を上回る分子量分布、Mw/Mn、を有するエチレン/α−オレフィンブロックインターポリマー;
(B)分散剤;および
(C)水
を含む、水性接着性分散体。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−500497(P2009−500497A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520377(P2008−520377)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/026285
【国際公開番号】WO2007/008558
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】