説明

水性塗料組成物

【課題】耐水性等の塗膜性能及び塗面平滑性等の仕上り性に優れた水性塗料組成物を提供すること。
【解決手段】水分散性アクリル重合体粒子(A)、反応性基含有樹脂(B)及び必要に応じて硬化剤(C)を含有する水性塗料組成物であって、該重合体粒子(A)が、重量平均分子量が110万以上であり、かつ、質量濃度1.35%の1,4−ジオキサンを溶媒とする液とした分光光度計による波長330nmにおける吸光度の値が0.2以下であることを特徴とする水性塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐水性等の塗膜性能及び塗面平滑性に優れた塗膜を形成することができる水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球規模で環境問題に大きな関心が寄せられており、塗装業界においても環境改善の取り組みが積極的に進められている。特にVOC(揮発性有機化合物)は、そのほとんどが塗装工程から発生するものであり、この対策が急務となってきている。
VOC排出削減の観点から、塗料全般にわたり水性化が進められている。
【0003】
しかしながら、従来の水系塗料は、一般的に溶剤型塗料に比べ、塗膜の機械的性質、耐水性等の塗膜性能に劣っていた。
【0004】
一般に、塗膜性能向上のためには、高分子量の樹脂(特にアクリル樹脂)を使用するのが有効であるが、例えば、粒子内架橋型の高分子量のアクリル樹脂エマルション等を使用すると塗面平滑性等の仕上り性、塗装作業性が低下するという問題があった。
【0005】
例えば、高分子量ポリマー水溶液として、特定濃度及び特定粘度範囲の重量平均分子量が50万〜1000万であるアクリルアミド系ポリマー水溶液が開示されている(特許文献1)。しかしながら、該ポリマーは主として紙力補強剤等用途のものであり、塗料用途の高分子量アクリル樹脂として使用するには、仕上り性、塗装作業性が不十分であり、また、塗膜の耐水性も不十分となることから、塗料用途に適するものではなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2004−137504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、耐水性等の塗膜性能及び塗面平滑性等の仕上り性に優れた水性塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特に塗膜性能及び塗面平滑性等に及ぼす高分子量の樹脂の影響に着目し、鋭意検討を重ねた結果、水性塗料用途の高分子量樹脂として、ジオキサンを溶媒とする特定低濃度の液とした時に、分光光度計測定による吸光度の値が特定値以下となる特性を有する重量平均分子量が110万以上の水分散性アクリル重合体粒子が、上記課題の解決に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、水分散性アクリル重合体粒子(A)、反応性基含有樹脂(B)及び必要に応じて硬化剤(C)を含有する水性塗料組成物であって、該重合体粒子(A)が、重量平均分子量が110万以上であり、かつ、質量濃度1.35%の1,4−ジオキサンを溶媒とする液とした分光光度計による波長330nmにおける吸光度の値が0.2以下であることを特徴とする水性塗料組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水性塗料組成物は、重量平均分子量が110万以上であり、かつ、質量濃度1.35%の1,4−ジオキサンを溶媒とする液とした分光光度計による波長330nmにおける吸光度の値が0.2以下である水分散性アクリル重合体粒子を含有することを主な特徴とするものである。
【0011】
本発明の水性塗料組成物に使用される水分散性アクリル重合体粒子は、上記特性を有し、換言すれば、重量平均分子量が110万以上の範囲の高分子量でありながら、1,4−ジオキサンを溶媒とする液としたときの透明性が極めて高いものである。
【0012】
高分子量の重合体粒子を含有する水性塗料においては、通常、架橋している重合体粒子が使用される場合が多く、該重合体粒子は1,4−ジオキサンを溶媒とする液としたときの透明性が低いものである。このような重合体粒子を使用した水性塗料では、塗膜とした時に、塗膜中において、重合体粒子は不均一に海島構造における島状に分布しやすくなる。
【0013】
これに対し、本発明の水性塗料組成物においては、水分散性アクリル重合体粒子が上記特性を有するものであるので、1,4−ジオキサンを溶媒とする液としたときの透明性が低い重合体粒子を使用した水性塗料に比べ、高分子量の重合体粒子が塗膜中に均一に連続相的に分布する形態をとることができる。
【0014】
したがって、本発明の水性塗料組成物は、高分子量の重合体粒子を構成成分として含有しながらも、フロー性が良好であるため、塗面平滑性等の仕上り性に優れている。
【0015】
また、塗膜物性が向上することにより、耐水性等の塗膜性能にも優れた塗膜を得ることができる。
【0016】
以上、本発明の水性塗料組成物によれば、耐水性等の塗膜性能及び塗面平滑性等の仕上り性のいずれにも優れた水性塗料組成物を得ることができるという効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の水性塗料組成物について詳細に説明する。
【0018】
本発明の水性塗料組成物(以下、「本塗料」ということがある。)は、水分散性アクリル重合体粒子(A)及び反応性基含有樹脂(B)を必須成分とし、必要に応じて、硬化剤(C)を含有してなるものである。
【0019】
水分散性アクリル重合体粒子(A)
本塗料における水分散性アクリル重合体粒子(A)は、重量平均分子量が110万以上であり、かつ、質量濃度1.35%の1,4−ジオキサンを溶媒とする液とした分光光度計による波長330nmにおける吸光度の値が0.2以下である水分散性アクリル重合体粒子である。
【0020】
上記吸光度の値が低いほど1,4−ジオキサンを溶媒とする液としたときの透明性が高く、重合体粒子は架橋度が極めて低いことになる。本塗料における水分散性アクリル重合体粒子(A)は、上記吸光度測定試料として調整すると、該吸光度の値が0.2以下であり、極めて透明度が高いという特徴を有するものである。
【0021】
なお、本明細書においては、1,4−ジオキサンを溶媒とする液とは、1,4−ジオキサンを溶媒とする溶液及び分散液の両方を包含する。
【0022】
水分散性アクリル重合体粒子(A)は、例えば、ビニルモノマーに代表される重合性不飽和モノマーを界面活性剤のような分散安定剤の存在下で、ラジカル重合開始剤を用いて乳化重合せしめることによって得ることができる。
【0023】
乳化重合せしめる重合性不飽和モノマーとしては、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(M−2)及びその他の重合性不飽和モノマー(M−3)、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する多ビニル化合物(M−4)等を例示することができる。
【0024】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)は、1分子中に1個以上のカルボキシル基と1個の重合性不飽和基とを有する化合物で、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等を挙げることができる。さらに、これらの化合物の酸無水物や該酸無水物を半エステル化したモノカルボン酸なども本明細書において、該モノマー(M−1)に包含されるものとする。
【0025】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーは、水分散性アクリル重合体粒子(A)にカルボキシル基を導入するためのモノマーである。カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、アクリル酸又はメタクリル酸が、一般によく用いられるが、耐水性等の塗膜性能の観点から、メタクリル酸を好適に使用することができる。
【0026】
アクリル酸を使用した場合は、アクリル酸はメタクリル酸に比べ水中での解離度が高いので、生成した重合体粒子におけるカルボキシル基が粒子表面に局在化しやすくなる。これに対し、メタクリル酸を使用した場合は、アクリル酸を使用した場合に比べ、カルボキシル基が粒子内部に均一に分布しやすくなる。このような理由により、メタクリル酸を使用すると、アクリル酸を使用した場合に比べ、塗膜としたときに、親水基であるカルボキシル基が粒子内部に均一に分布することととなるため、塗膜の耐水性(耐白化)が良好になるものと推定している。
【0027】
これらのカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0028】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(M−2)は、1分子中に水酸基と重合性不飽和基とをそれぞれ1個有する化合物であり、この水酸基は硬化剤と反応する官能基として作用することができる。該モノマーとしては、具体的には、アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数2〜10個の2価アルコールとのモノエステル化物が好適であり、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等の水酸基含有アクリレートモノマー、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等の水酸基含有メタクリレートモノマー、また、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどを挙げることができる。
【0029】
これらのうち、耐水性等の観点から、水酸基含有メタクリレートモノマーを好適に使用することができる。また、水酸基含有メタクリレートモノマーのうち、特に2−ヒドロキシエチルメタクリレートを好適に使用することができる。
【0030】
これらの水酸基含有重合性不飽和モノマー(M−2)は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0031】
その他の重合性不飽和モノマー(M−3)は、上記モノマー(M−1)及び(M−2)以外の、1分子中に1個の重合性不飽和基を有する化合物であり、その具体例を以下の(1)〜(8)に列挙する。
【0032】
(1)アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数1〜20の1価アルコールとのモノエステル化物:例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート。
【0033】
尚、本明細書において「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートまたはメタクリレート」を意味する。
【0034】
(2)芳香族系ビニルモノマー:例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等。
【0035】
(3)グリシジル基含有ビニルモノマー:1分子中に1個以上のグリシジル基と1個の重合性不飽和結合とを有する化合物で、具体的には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等。
【0036】
(4)含窒素アルキル(炭素数1〜20)(メタ)アクリレート:例えばジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等。
【0037】
(5)重合性不飽和基含有アミド系化合物:1分子中に1個以上のアミド基と1個の重合性不飽和結合とを有する化合物で、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルプロピルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等。
【0038】
(6)重合性不飽和基含有ニトリル系化合物:例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
【0039】
(7)ジエン系化合物:例えばブタジエン、イソプレン等。
(8)ビニル化合物:例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル等。
【0040】
これらのその他のビニルモノマー(M−3)は、1種又は2種以上使用することができる。
【0041】
多ビニル化合物(M−4)は、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する化合物であり、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。なお、多ビニル化合物(M−4)には前記ジエン系化合物は含まれない。
【0042】
これらの多ビニル化合物(M−4)は、1種で又は2種以上を使用することができる。
【0043】
水分散性アクリル重合体粒子(A)における重合性不飽和モノマーの配合割合は、重合性不飽和モノマーの総量を基準にして、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)が、該重合体粒子の水分散性及び耐水性等の観点から、好ましくは0.1〜25質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%、さらに特に好ましくは0.5〜5質量%、水酸基含有重合性不飽和モノマー(M−2)は、使用する硬化剤の種類及び量により異なるが、硬化性及び塗膜の耐水性等の観点から、好ましくは0〜40質量%、さらに好ましくは0〜25質量%、さらに特に好ましくは0〜10質量%、その他の重合性不飽和モノマー(M−3)が、好ましくは35〜99.9質量%、さらに好ましくは65〜99.9質量%である。
【0044】
また、高分子量化及び残存モノマー低減等の観点から、アクリレートモノマー及びスチレンの合計量は、好ましくは20〜80質量%、さらに好ましくは30〜60質量%である。
【0045】
多ビニル化合物(M−4)は、必要に応じて使用されるが、前記吸光度の値が0.2以下である、透明度の高い水分散性アクリル重合体粒子とする観点からは、極めて架橋度が低いことが必要であり、使用する場合においても極少量とするのが好ましい。したがって、多ビニル化合物(M−4)の配合割合は、重合性不飽和モノマーの総量を基準にして、0〜1質量%、好ましくは0〜0.3質量%、さらに好ましくは0〜0.05質量%である。
【0046】
上記分散安定剤としては、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤、両性イオン乳化剤、カチオン系乳化剤などをあげることができる。具体的にはアニオン系乳化剤としては、例えば、脂肪酸、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルリン酸塩などが挙げられる。ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミドなどをあげることができる。両性イオン乳化剤としては、アルキルベダインなどをあげることができる。
【0047】
なお、分散安定剤としては、水分散性アクリル重合体粒子を形成するビニルモノマーの乳化重合反応における共重合性、本塗料中における水分散性アクリル重合体粒子の分散安定性、本塗料により得られる塗膜の耐水性等の塗膜性能及び環境対策のための残存モノマー削減等の観点から、特に反応性乳化剤を好適に使用することができる。反応性乳化剤とは、ビニルモノマーとラジカル反応性を有する乳化剤であり、換言すれば、1分子中に重合性不飽和基を有する界面活性剤である。
【0048】
反応性乳化剤の具体例としては、エレミノールJS−1、エレミノールJS−2(三洋化成社製)、S−120、S−180A、S−180、ラテムルPD−104、ラテムルPD−420、ラテムルPD−430S、ラテムルPD−450(花王社製)、アクアロンHS−10、アクアロンKH−10(第一工業製薬社製)、アデカリアソープSE−10N、アデカリアソープSE−20N、アデカリアソープSR−1025、アデカリアソープER−10、アデカリアソープER−20、アデカリアソープER−30、アデカリアソープER−40(旭電化社製)、ANTOX MS−60(日本乳化剤社製)などを挙げることができる。
【0049】
上記反応性乳化剤の中でも、特に好ましいものとして、1分子中に−(CHCHO)n−(nは5〜60の整数、nは好ましくは10〜55の整数、さらに好ましくは20〜45の整数)で表わされるポリオキシエチレン基及び重合性不飽和基を有する反応性乳化剤をあげることができる。
【0050】
上記反応性乳化剤の具体例としては、アデカリアソープER−30、アデカリアソープER−40、ラテムルPD−450等をあげることができる。
【0051】
上記ポリオキシエチレン基及び重合性不飽和基を有する反応性乳化剤を用いて合成される水分散性アクリル重合体粒子は、水分散性アクリル重合体粒子の主鎖に該反応性乳化剤が有するポリオキシエチレン基が側鎖としてグラフトした構造となるので、塗料組成物としての塗液状態では、塗料組成物中の顔料、硬化剤等の疎水性成分の分散安定剤的な作用をし、未硬化の塗膜状態においては他の成分との相溶化剤的な作用をするので、本発明の塗料組成物の水分散性アクリル重合体粒子として特に好ましい。
【0052】
上記乳化剤等の分散安定剤は、乳化重合反応において、1種又は2種以上を用いることができる。
【0053】
分散安定剤の使用量は、生成する水分散性アクリル重合体粒子に対して、0.1〜10質量%、特に1〜7.5質量%、さらに特に、1.5〜6質量%の範囲であるのが好ましい。
【0054】
また、分散安定剤として、反応性乳化剤を使用する場合、反応性乳化剤の使用量は、生成する水分散性アクリル重合体粒子に対して、0.1〜10質量%、特に1.5〜7.5質量%、さらに特に、2〜6質量%の範囲であるのが好ましい。
【0055】
また、ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化アンモニウム等に代表される過酸化物、これら過酸化物と、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸などの還元剤とが組み合わされたいわゆるレドックス系開始剤、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕などのアゾ化合物等を挙げることができる。これらのうち、アゾ化合物が好ましい。
【0056】
また、アゾ化合物の中でも25℃の水に対する溶解度が3質量%以下の水難溶性のアゾ化合物が好ましい。このようなアゾ化合物の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等をあげることができ、特に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートが高分子量化の観点から好ましい。
【0057】
ラジカル重合開始剤の量は水分散性アクリル重合体粒子を形成する重合性不飽和モノマーの固形分総重量に対して、通常、0.01〜5.0質量%、好ましくは0.01〜1.0質量%の範囲内であるのが適している。
【0058】
乳化重合反応中における全ラジカル重合性不飽和単量体の濃度は、通常、0.1〜60質量%、好ましくは0.5〜50質量%の範囲内であるのが適している。
【0059】
乳化重合の際の反応温度は、使用するラジカル重合開始剤により異なるが、通常40〜100℃、好ましくは50〜90℃、さらに好ましくは、60〜80℃とすることができる。
【0060】
反応時間は通常3〜24時間、好ましくは5〜20時間、さらに好ましくは7〜16時間とすることができる。
【0061】
水分散性アクリル重合体粒子は、通常の均一構造又はコア/シェル構造などの多層構造のいずれであってもよい。
【0062】
コア/シェル構造の水分散性アクリル重合体粒子は、具体的には、例えば、最初にカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)を全く又は殆んど含有しない重合性不飽和モノマー成分を乳化重合し、その後、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)を多量に含んだ重合性不飽和モノマー成分を加えて乳化重合することによって得ることができる。
【0063】
コア部とシェル部との結合は、例えば、コア部の表面に残存するアリルアクリレート、アリルメタクリレート等による重合性不飽和結合に、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(M−1)を含む重合性不飽和モノマー成分を共重合して行なうことができる。
【0064】
水分散性アクリル重合体粒子は、貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性等の観点から、0.1〜100mgKOH/g、好ましくは0.5〜50mgKOH/g、さらに好ましくは1〜35mgKOH/gの範囲内の酸価を有することができる。
【0065】
また、水分散性アクリル重合体粒子は、得られる塗膜の耐水性や硬化性等の観点から、0〜150mgKOH/g、好ましくは5〜100mgKOH/g、さらに好ましくは10〜50mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することができる。
【0066】
さらに、水分散性アクリル重合体粒子は、粒子の分散安定性及び塗膜とした時の平滑性の観点から、10〜500nm、好ましくは20〜300nm、さらに好ましくは40〜200nmの範囲内の平均粒子径を有することができる。
【0067】
本明細書において、水分散性アクリル重合体粒子の平均粒子径は、サブミクロン粒度分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから20℃で測定した値である。サブミクロン粒度分布測定装置としては、例えば、「COULTER N4型」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いることができる。
【0068】
水分散性アクリル重合体粒子の重量平均分子量は、貯蔵安定性や得られる塗膜の耐チッピング性、耐水性等の塗膜性能の観点から、110万以上であり、好ましくは110万〜1000万、さらに好ましくは120万〜500万、さらに特に好ましくは130万〜400万である。
【0069】
水分散性アクリル重合体粒子の重量平均分子量は、静的光散乱法により求めることができる。具体的には、多角度の光散乱検出装置を使用し、ジムプロット等を作成することにより値を得ることができる。あるいは、サイズ排除クロマトグラフに多角度光散乱検出器を接続したSEC−MALLS法により、デバイプロット等を作成することにより得ることができる。
【0070】
本明細書においては、上記のSEC−MALLS法により重量平均分子量の測定を行なうものとする。
【0071】
一般に光散乱法による分子量測定には、以下の光散乱の基礎式
Kc/R(θ)=1/MwP(θ)+2Ac+・・・ (1)
R(θ)=角度θにおける散乱光(レイリー係数)の還元強度
c=サンプル濃度
Mw=重量平均分子量
=第2ビリアル係数
K=光学パラメーター
P(θ)=角度散乱関数
が用いられるが、本発明の重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフに多角度光散乱検出器を接続したSEC−MALLS法と同様、上記式(1)において、第2ビリアル係数とサンプル濃度との積である第2項以降を無視した式から求めた値をいうものとする。
後記製造例等における測定を含め、本明細書においては、検出器として、DAWN DSP Laser Photometer(Wyatt Technology Co.製)を用い、カラムとして、「KF−806L」を2本、「KF−802」を1本(いずれもShodex社製、商品名)の計3本を用い、溶媒;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、サンプル濃度;0.1wt%の条件で行うものとする。
試料の調製は、水分散性アクリル重合体粒子のエマルションを常温にて乾燥した後、2.5wt%テトラヒドロフラン溶液に調製し、2時間室温にて溶解させることにより行なった。測定時はテトラヒドロフランにてさらに0.1wt%に希釈し、1μmメンブランフィルターにてろ過したものを測定試料として用いた。
【0072】
水分散性アクリル重合体粒子の1,4−ジオキサンを溶媒とする液の吸光度の測定は、水分散性アクリル重合体粒子のエマルションを常温にて乾燥した後、1.35wt%の1,4−ジオキサンを溶媒とする液に調製したものを試料とし、分光光度計を用いて、波長330nmの条件で、上記調整した試料の吸光度を測定することにより行なった。分光光度計としては、U−4100(HITACHI社製)を用いた。
【0073】
水分散性アクリル重合体粒子は、1.35wt%の1,4−ジオキサンを溶媒とする液とした分光光度計による波長330nmにおける吸光度の値が、得られる塗膜の塗面平滑性等の仕上り性の観点から、0.20以下であり、好ましくは0.15以下、さらに好ましくは0.10以下である。
【0074】
水分散性アクリル重合体粒子(A)は塩基性化合物で中和することが好ましい。
【0075】
水分散性アクリル重合体粒子(A)の中和剤としては、アンモニア又は水溶性アミノ化合物、例えば、モノエタノールアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、ジエタノールアミン、モルホリン等を好適に使用することができる。
【0076】
反応性基含有樹脂(B)
反応性基含有樹脂の種類については、反応性基を含有する樹脂であれば、特に制限されるものではなく、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0077】
反応性基とは、架橋反応をすることができる反応性を有する官能基をいう。具体的には、酸基、カルボニル基、N−メチロールアルキルエーテル基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基、カルボジイミド基、ヒドラジド基等の反応性を有する官能基をあげることができる。
【0078】
本発明においては、アクリル樹脂及びポリエステル樹脂を好適に使用することができる。以下、これらの樹脂についてさらに詳述する。
【0079】
アクリル樹脂
上記水分散性アクリル重合体粒子(A)以外の、ビニルモノマーに代表される重合性不飽和モノマーを共重合することによって既知の方法で、合成することができるアクリル樹脂である。乳化重合により合成されるもの或いは溶液重合により合成されるもののいずれであってもよく、両者を併用することもできる。溶液重合により合成する場合、反応に使用する有機溶剤としては、例えば、プロピレングリコールエーテル系、ジプロピレングリコールエーテル系等の親水性有機溶剤を使用するのが好ましい。また、水分散性の観点から、該アクリル樹脂はカルボキシル基等の酸基を有しているものが好ましい。
【0080】
乳化重合により合成する場合、例えば乳化剤の存在下で、上記モノマー成分を乳化重合させることによって容易に得ることができる。乳化剤としては非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、及び共重合性不飽和基を有する反応性界面活性剤などが挙げられ、これらの乳化剤の1種、または2種以上の存在下で重合開始剤を使用して乳化重合することによって得られる。乳化重合以外にも公知の懸濁重合によっても得ることができる。
【0081】
重合性不飽和モノマーとしては、従来から公知のものが使用でき、例えば、反応性基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを使用することができる。
【0082】
反応性基含有重合性不飽和モノマーの反応性基としては、例えば、酸基、カルボニル基、N−メチロールアルキルエーテル基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基、カルボジイミド基、ヒドラジド基等の反応性を有する官能基をあげることができる。
【0083】
酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、カルボキシル基又は酸無水基含有重合性不飽和モノマー等をあげることができる。
【0084】
カルボキシル基又は酸無水基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、β−カルボキシエチルアクリレートなどの不飽和カルボン酸又はこれらの酸無水物を挙げることができる。
カルボキシル基又は酸無水基以外の酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム塩、スルホエチルメタクリレートおよびそのナトリウム塩もしくはアンモニウム塩などをあげることができる。
【0085】
カルボニル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、ホルミルスチロールおよびビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトンなどの炭素原子数4〜7個のビニルアルキルケトンなどを挙げることができる。これらのうち特に好ましいものは、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミドである。
【0086】
N−メチロールアルキルエーテル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、N−メチロールアクリルアミドブチルエーテルなどをあげることができる。
【0087】
イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に、未ブロックイソシアネート基とラジカル重合性二重結合とをそれぞれ少なくとも1個ずつ有する化合物であって、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2−イソシアネートエチルメタクリレート、m−又はp−イソプロペニル−α,α’−ジメチルベンジルイソシアネート、又は、水酸基含有重合性不飽和モノマーとジイソシアネート化合物との1:1(モル比)付加物(例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレートとイソホロンジイソシアネートとの等モル付加物)などをあげることができる。
【0088】
エポキシ基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、CYCLOMER A−200(脂環式エポキシ基含有モノマー)、CYCLOMER M−100(脂環式エポキシ基含有モノマー)等をあげることができる。
【0089】
アミノ基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えばジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドおよびジメチルアミノプロピルメタクリルアミド等をあげることができる。
【0090】
アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリブトキシシラン、ビニルトリス−β−メトキシエトキシシラン、ジビニルメトキシシラン、ジビニルジ−β−メトキシエトキシシランなどをあげることができる。
【0091】
尚、本明細書において「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイルまたはメタクリロイル」を意味する。
【0092】
その他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸のC〜C24のアルキル又はシクロアルキルエステル;アクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸メトキシブチル、アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシブチル、メタクリル酸エトキシブチル等の(メタ)アクリル酸のC〜C16アルコキシアルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン等の芳香族不飽和単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン等のオレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン化合物;ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、N−ブトキシ(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ビニルピバレート、ベオバモノマー(シェル化学社製品)などを挙げることができる。
【0093】
アクリル樹脂の重量平均分子量は耐侯性及び仕上り性等の観点から、溶液重合により合成されるものである場合、1,000〜200,000、特に、2,000〜100,000の範囲内であるのが好ましい。
【0094】
なお、本明細書において、水分散性アクリル重合体粒子(A)以外の樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフは、「HLC8120GPC」(東ソー社製)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000HXL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行った。
【0095】
アクリル樹脂が酸基を有するものであり、水分散する場合、水への混合及び分散を容易にするため、中和剤により中和を行なうのが、水分散性を向上させる観点から好ましい。
【0096】
中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチルプロパノール、などの第1級モノアミン化合物;ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−メチルイソプロパノールアミンなどの第2級モノアミン化合物;トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミンなどの第3級モノアミン化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミンなどのポリアミン化合物等をあげることができる。これらのうち、第1級モノアミン化合物、第2級モノアミン化合物、第3級モノアミン化合物、ポリアミン化合物を使用するのが好ましい。
【0097】
ポリエステル樹脂
既知の方法で、常法に従い、多塩基酸と多価アルコ−ルとをエステル化反応させることによって合成することができるポリエステル樹脂である。また、水分散性の観点から、該ポリエステル樹脂としては、カルボキシル基等の酸基を有しているものが好ましい。
【0098】
多塩基酸は1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4−ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4'−ジカルボン酸、ヘット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、及びこれらの無水物などをあげることができる。
【0099】
また、多価アルコ−ルは1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であり、例えば、
エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルなどのグリコール類、これらのグリコール類にε−カプロラクトンなどのラクトン類を付加したポリラクトンジオール、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートなどのポリエステルジオール類、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、スピログリコール、ジヒドロキシメチルトリシクロデカン、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、並びに、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸等のヒドロキシカルボン酸を挙げることができる。
【0100】
また、ポリエステル樹脂として、あまに油脂肪酸、やし油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸などの(半)乾性油脂肪酸などで変性した脂肪酸変性ポリエステル樹脂も使用することができる。これらの脂肪酸の変性量は一般に油長で30重量%以下であることが適している。また、ポリエステル樹脂は安息香酸などの一塩基酸を一部反応させたものであってもよい。
【0101】
また、ポリエステル樹脂としては、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドなどのα−オレフィンエポキシド、カージュラE10(ジャパンエポキシレジン社製、商品名、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)などのモノエポキシ化合物などをポリエステル樹脂の酸基と反応させたものであってもよい。
【0102】
ポリエステル樹脂へカルボキシル基を導入する場合、例えば、水酸基含有ポリエステルに無水酸を付加し、ハーフエステル化することで導入することもできる。
【0103】
ポリエステル樹脂の酸価は、塗膜の耐水性及び付着性の観点から、5〜100mgKOH/g、特に10〜60mgKOH/gであるのが好ましい。
【0104】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、塗膜の耐水性及び硬化性の観点から、1000〜200000、特に2000〜100000であるのが好ましい。
【0105】
ポリエステル樹脂が、酸基を有するものであり、水分散する場合、水への混合及び分散を容易にするため、中和剤により中和を行なうのが、水分散性を向上させる観点から好ましい。
【0106】
中和剤としては、前記アクリル樹脂で例示したものを同様に使用することができる。
【0107】
硬化剤(C)
硬化剤(C)は、必要に応じて含有させることができ、特に制限されるものではないが、反応性基含有樹脂(B)が有する反応性基に応じて、該反応性基と反応性を有する硬化剤を使用することができる。
【0108】
硬化剤(C)としては、具体的には、例えば、ポリイソシアネート化合物、ポリヒドラジド化合物、ポリセミカルバジド化合物、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物、エポキシ化合物、ポリカルボン酸などをあげることができる。硬化剤は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0109】
ポリイソシアネート化合物は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。
【0110】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、具体的には、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの誘導体などをあげることができる。
【0111】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなどの脂肪族ジイソシアネート、例えば、リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0112】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネートなどをあげることができる。
【0113】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネートまたはその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−または1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネートなどをあげることができる。
【0114】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4’−または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、例えば、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート、例えば、ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネートなどをあげることができる。
【0115】
また、ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)及びクルードTDI等を挙げることができる。
【0116】
また、ポリイソシアネート化合物として、ブロック剤により、遊離のイソシアネート基を封鎖したブロック化ポリイソシアネート化合物を使用することもできる。ブロック化ポリイソシアネート化合物は、例えば、100℃以上、好ましくは130℃以上に加熱することにより、イソシアネート基が再生し、反応性基と容易に反応することができる。かかるブロック剤としては、例えば、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチルなどのフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどのラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコールなどの脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノールなどのエーテル系;ベンジルアルコール;グリコール酸;グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチルなどのグリコール酸エステル;乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどの乳酸エステル;メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノールなどのメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミドなどの酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどのイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミンなどアミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系;3,5−ジメチルピラゾールなどのピラゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素などの尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニルなどのカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどの亜硫酸塩系などのブロック剤を挙げることができる。
【0117】
硬化剤としてポリイソシアネート化合物を使用する場合、硬化触媒として、有機錫化合物を用いることができる。
【0118】
ポリイソシアネート化合物は、アミノ基を含有する樹脂の架橋剤として使用することができる。
【0119】
ポリヒドラジド化合物は、1分子中に2個以上のヒドラジド基を有する化合物である。
【0120】
ポリヒドラジド化合物としては、例えば、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどの2〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪族カルボン酸ジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸のジヒドラジド;炭酸ジヒドラジドなどの炭酸のポリヒドラジド;;フタル酸、テレフタル酸又はイソフタル酸ジヒドラジド、ならびにピロメリット酸のジヒドラジド、トリヒドラジド又はテトラヒドラジドなどの芳香族ポリカルボン酸のポリヒドラジド;ニトリロトリ酢酸トリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジドなどの脂肪族トリヒドラジド;エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジドなどのテトラヒドラジド;カルボン酸低級アルキルエステル基を有する低重合体をヒドラジン又はヒドラジン水化物(ヒドラジンヒドラ−ド)と反応させてなるポリヒドラジド(特公昭52−22878号参照)などをあげることができる。
【0121】
上記ポリヒドラジド化合物は、疎水性が強すぎると水分散化が困難となり、均一な架橋塗膜が得られないことから、適度な親水性を有する比較的低分子量(300以下程度)の化合物を使用することが好ましい。このようなポリヒドラジド化合物としては、例えば、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド等の如くC〜C12のジカルボン酸のジヒドラジド化合物が挙げられる。
ポリヒドラジド化合物は、カルボニル基を含有する樹脂の架橋剤として使用することができる。
【0122】
ポリセミカルバジド化合物は、1分子中に2個以上のセミカルバジド基を有する化合物である。
【0123】
ポリセミカルバジド化合物としては、例えば、脂肪族、脂環族又は芳香族のビスセミカルバジド;ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート又はそれから誘導されるポリイソシアネート化合物にN,N−ジメチルヒドラジン等のN,N−置換ヒドラジンや上記例示のヒドラジドを過剰に反応させて得られる多官能セミカルバジド、該ポリイソシアネート化合物とポリエーテルとポリオール類やポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類等の親水性基を含む活性水素化合物との反応物中のイソシアネート基に上記例示のジヒドラジドを過剰に反応させて得られる水系多官能セミカルバジド(例えば、特開平8−151358号参照);該多官能セミカルバジドと水系多官能セミカルバジドとの混合物等のセミカルバジド基を有する化合物;ビスアセチルジヒドラゾン等のヒドラゾン基を有する化合物等をあげることができる。
【0124】
ポリセミカルバジド化合物は、カルボニル基を含有する樹脂の架橋剤として使用することができる。
【0125】
カルボジイミド基含有化合物は、例えば、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基同士を脱二酸化炭素反応せしめることにより得られる化合物である。
【0126】
該当する市販品としては、例えば、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」、「カルボジライトV−04」、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」(いずれも日清紡社製、商品名)などをあげることができる。
【0127】
カルボジイミド基化合物は、カルボキシル基を含有する樹脂の架橋剤として使用することができる。
【0128】
オキサゾリン基含有化合物としては、オキサゾリン基を有する重合体、例えばオキサゾリン基を有する重合性不飽和モノマーを、必要に応じその他の重合性不飽和モノマーと従来公知の方法(例えば溶液重合、乳化重合等)によって共重合させることにより得られる(共)重合体を挙げることができる。
【0129】
オキサゾリン基を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ビニル−2−オ
キサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2
−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メ
チル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどを挙げることができる。
【0130】
上記のその他の重合性不飽和モノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、
エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレ
ート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート
、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アク
リル酸の炭素数1〜24個のアルキルまたはシクロアルキルエステル;2−ヒドロキシエ
チル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アク
リル酸の炭素数2〜8個のヒドロキシアルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン等の
ビニル芳香族化合物;(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリ
ルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレー
トとアミン類との付加物;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;N−ビニルピ
ロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、(
メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上適宜選択される。
【0131】
オキサゾリン基化合物は、カルボキシル基を含有する樹脂の架橋剤として使用することができる。
【0132】
エポキシ化合物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物である。具体的には、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート等のジエポキシ化合物、エポキシ基含有アクリル樹脂等をあげることができる。
【0133】
エポキシ化合物は、酸基又はアミノ基を含有する樹脂の架橋剤として使用することができる。
【0134】
ポリカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多塩基酸類:フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の芳香族多塩基酸類:ポリオールと1,2−酸無水物との付加反応により生成するハーフエステル;ポリエポキシドとポリエポキシドのエポキシ基に対して2当量以上の1,2−酸無水物との付加反応生成物;カルボキシル基含有アクリル系重合体;酸無水基をハーフエステル化してなる基を有するアクリル系重合体;カルボキシル基含有ポリエステル系重合体等が挙げることができる。
【0135】
ポリカルボン酸は、エポキシ基又はカルボジイミド基含有樹脂の架橋剤として使用することができる。
【0136】
本発明の水性塗料組成物中の水分散性アクリル重合体粒子(A)、反応性基含有樹脂(B)及び硬化剤(C)の量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の総量の樹脂固形分100質量部を基準として、不揮発分として、水分散性アクリル重合体粒子(A)が1〜80質量%、好ましくは5〜60質量%、反応性基含有樹脂(B)が1〜90質量%、好ましくは5〜70質量%、硬化剤(C)が、0〜60質量%、好ましくは0〜40質量%の範囲内であるのが適している。
【0137】
本発明の水性塗料組成物には、必要に応じて、顔料を使用することができる。顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料などの着色顔料;タルク、クレー、カオリン、バリタ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナホワイトなどの体質顔料;アルミニウム粉末、雲母粉末、酸化チタンで被覆した雲母粉末などの光輝性顔料等を好適に用いることができる。
【0138】
顔料の配合量は、(A)成分、(B)成分及び必要に応じて含有する(C)成分の総量の樹脂固形分100質量部に対し、一般に0〜250重量部、特に3〜150重量部の範囲内が適している。
【0139】
本発明の水性塗料組成物には、さらに必要に応じて、硬化触媒、分散剤、沈降防止剤、有機溶剤、消泡剤、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤などを適宜使用することができる。
【0140】
本発明の水性塗料組成物は、耐水性等の塗膜性能及び塗面平滑性等の仕上り性に優れた
塗膜を得ることができるので、例えば、建材用、建築用、自動車用(特に樹脂素材用、保護膜用)などの塗料として用いるのが適している。
【0141】
本発明の水性塗料組成物の塗装は、従来から知られている方法、例えば、ローラー塗装、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装などにより行なうことができる。これらの塗装方法においては、必要に応じて、静電印加を行なってもよい。また、かかる塗装方法は、所望の膜厚が得られるまで、1回ないし数回に分けて行うことができる。その膜厚は硬化塗膜に基いて、3〜100μm、特に5〜60μmの範囲内が好ましく、その塗膜は、例えば、室温〜170℃で、加熱することにより硬化させることができる。加熱硬化は、それ自体既知の加熱手段、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を用いて行うことができる。必要に応じて加熱硬化を行なう前に溶媒等の揮発成分の揮散を促進するために、50〜80℃程度の温度で3〜10分間程度のプレヒートを行なってもよい。
【0142】
被塗物としては、特に制限はないが、例えば、冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板、錫メッキ鋼板等の鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板等の金属基材;各種プラスチック素材;コンクリート面、モルタル面、スレート板、瓦、PC板、ALC板、セメントケイ酸カルシウム板、陶磁器、タイル、ガラス、木材、石材、塗膜面等が好ましい。また、これらにより形成される自動車、二輪車、コンテナ等の各種車両の車体、建材等であってもよい。
【0143】
また、該被塗物は、金属基材や上記車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよい。
【0144】
また、これらの被塗物はあらかじめ、下塗塗装(例えばカチオン電着塗装など)及び場合によりさらに中塗塗装などを行なったものであってもよい。
【0145】
また、被塗物はさらに、中塗塗面上に、着色塗料等による塗膜が形成されてなるものであってもよい。
【0146】
本発明の水性塗料組成物は、その使用に際して、必要に応じて水及び/又は有機溶剤等を添加して希釈し、適正粘度に調整することにより塗装することができる。
【0147】
適正粘度は、塗料組成により異なるが、例えば、フォードカップ粘度計No.4を用いて調整した場合、20℃において、通常、20〜60秒程度、好ましくは25〜50秒程度の粘度である。また、上記において、本塗料の塗装固形分濃度は、通常、5〜65質量%程度、好ましくは10〜45質量%程度である。
【実施例】
【0148】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものとし、また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基くものである。
【0149】
水分散性アクリル重合体粒子(A)の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水85部、アデカリアソープSR−1025(注1)1.0部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、75℃に昇温した。次いで下記のモノマーと開始剤の乳化物(注2)全量のうちの3%量及び0.5%過硫酸アンモニウム水溶液10部とを反応容器内に導入し75℃で2時間保持した。その後、残りのモノマーと開始剤の乳化物を5時間かけて反応容器内に滴下し、滴下終了後6時間熟成を行なった。その後、30℃まで冷却し、5.0%ジメチルエタノールアミン水溶液と脱イオン水を用いて固形分40%、pHが6.8となるように調整した。ついで、200メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径135nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定した。)、酸価13mgKOH/gの水分散性アクリル重合体粒子1の分散液(固形分40%)を得た。
(注1)アデカリアソープSR−1025:α−スルホ−ω−(1−(アルコキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)のアンモニウム塩、アデカ社製、有効成分25%。
(注2)モノマーと開始剤の乳化物:脱イオン水55部、ラテムルE−118B(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、花王社製、有効成分26%。)2部、アデカリアソープER−40(注3)8部、スチレン10部、メチルメタクリレート30部、n−ブチルアクリレート30部、エチルアクリレート28部及びメタクリル酸2部、並びに、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕0.2部を混合攪拌して、モノマーと開始剤の乳化物を得た。
【0150】
製造例2〜3
モノマーと開始剤の乳化物を下記表1に示す配合とする以外、製造例1と同様にして合成し、水分散性アクリル重合体粒子2〜3を得た。
【0151】
製造例1と併せて、得られた水分散性アクリル重合体粒子2〜3の固形分濃度、酸価及び水酸基価を併せて下記表1に示す。
(注3)アデカリアソープER−40:α−ヒドロ−ω−(1−(アルコキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)、アデカ社製、有効成分60%。
【0152】
【表1】

【0153】
反応性基含有樹脂(B)の製造
製造例4
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水36部、Newcol707SF(日本乳化剤(株)製、アニオン性界面活性剤、不揮発分30%)0.36部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、82℃に昇温した。次いで過硫酸アンモニウム0.1部を添加し、添加15分後から下記組成のプレエマルションを3時間かけて滴下した。
【0154】
<プレエマルション組成>
脱イオン水52部、ダイアセトンアクリルアミド5部、アクリル酸0.5部、スチレン10部、メチルメタクリレート32.8部、エチルアクリレート27部、n−ブチルアクリレート24.7部、Newcol−707SF 9.7部、過硫酸アンモニウム0.2部
滴下終了時から30分経過後、0.1部の過硫酸アンモニウムを1.2部の脱イオン水に溶解させた水溶液を30分かけて滴下した。ついで、さらに2時間熟成させた後40℃まで冷却し、pHが8.5となるようにアンモニア水で調整して、反応性基含有樹脂(B−1)の分散液(固形分51.5%)を得た。
【0155】
製造例5
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水30部、Newcol707SF 0.1部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、85℃に昇温した。この中に下記組成のプレエマルション1の3質量%分及び下記過硫酸アンモニウム水溶液のうちの25質量%分を添加して攪拌した。
【0156】
添加20分後から残りのプレエマルション1と下記過硫酸アンモニウム水溶液の35質量%分を3時間かけて滴下した。
【0157】
<プレエマルション1組成>
脱イオン水27部、スチレン9.8部、メチルメタクリレート19.5部、n−ブチルアクリレート30.8部、2−エチルヘキシルアクリレート9.8部、アクリル酸0.14部、Newcol707SF 4.62部
<過硫酸アンモニウム水溶液>
過硫酸アンモニウム0.5部、脱イオン水10部
滴下終了後、これをさらに1時間、85℃に保持した後、この中に下記プレエマルション2と上記過硫酸アンモニウム水溶液の15%分を1時間かけて滴下した。
【0158】
<プレエマルション2組成>
脱イオン水11.5部、スチレン4.2部、メチルメタクリレート6.8部、n−ブチルアクリレート13.2部、2−エチルヘキシルアクリレート4.2部、アクリル酸0.06部、ダイアセトンアクリルアミド1.5部、Newcol707SF 2.0部
滴下終了後、これをさらに2時間、85℃に保持した後、40℃に冷却した。次いでアンモニア水でpH8.5に調整することにより、反応性基含有樹脂(B−2)の分散液(固形分濃度55%)を得た。
【0159】
製造例6
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水55部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.15部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、82℃に昇温した。この中に下記組成のプレエマルション1を3時間かけて滴下した。
【0160】
<プレエマルション1組成>
脱イオン水40部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ3部、過硫酸アンモニウム0.15部、シクロヘキシルメタクリレート20部、メチルメタクリレート10部、n−ブチルアクリレート29.6部、n−ブチルメタクリレート9部、ビニルトリメトキシシラン 0.7部及びメタクリル酸 0.7部
プレエマルション1の滴下終了後、その中に、下記組成のプレエマルション2を1時間かけて滴下し、その後82℃で2時間熟成した後、40℃まで冷却した。次いでアンモニア水でpH7.5に調整することにより、反応性基含有樹脂(B−3)の分散液(固形分濃度47.7%、平均粒子径130nm)を得た。
【0161】
<プレエマルション2>
脱イオン水18部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ 1.5部、過硫酸アンモニウム0.05部、シクロヘキシルメタクリレート15部、メチルメタクリレート10部、n−ブチルアクリレート2部、n−ブチルメタクリレート2.4部、ビニルトリメトキシシラン0.3部及びメタクリル酸0.3部
製造例7
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水33.5部、Newcol707SF 0.12部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。この中に過硫酸アンモニウム0.05部を添加し、添加15分後から下記組成のプレエマルション1を140分間かけて滴下した。
【0162】
<プレエマルション1組成>
脱イオン水27.9部、メチルメタクリレート15.8部、n−ブチルアクリレート41.5部、アクリル酸0.2部、Newcol707SF 6.5部及び過硫酸アンモニウム0.06部
滴下終了後、これをさらに1時間、80℃に保持した後、この中に下記プレエマルション2を60分間かけて滴下した。
【0163】
<プレエマルション2組成>
脱イオン水18.6部、メチルメタクリレート27.5部、n−ブチルアクリレート12.8部、アクリル酸0.13部、ダイアセトンアクリルアミド2.1部、Newcol707SF 2.8部及び過硫酸アンモニウム0.04部
滴下終了時から30分経過後、0.1部の過硫酸アンモニウムを1部の脱イオン水に溶解させた水溶液を30分間かけて滴下した。ついで、さらに2時間熟成させた後、40℃まで冷却し、pHが7.5となるようにアンモニア水で調整して、反応性基含有樹脂(B−4)の分散液(固形分53.6%)を得た。
【0164】
実施例1〜2(剥離性水性塗料組成物)及び比較例1
製造例4で得た反応性基含有樹脂(B−1)の分散液(固形分濃度51.5%)1286部を撹拌器に投入し、45℃に昇温した。この中に、アジピン酸ジヒドラジド4.9部を脱イオン水25部に溶解させてなる溶液29.9部を添加し、アンモニア水でpH8.5に調整することにより、樹脂分散液(固形分50.7%)の架橋性樹脂分散液(X)を得た。
【0165】
架橋性樹脂分散液(X)、製造例1、3で得た水分散性アクリル重合体粒子及び下記剥離助剤(Y)を表2に示す配合量(固形分)で混合撹拌することにより、各剥離性水性塗料組成物1−1〜1−3を得た。
【0166】
剥離助剤(Y):変性シリコーンTSF4445(東芝シリコーン製、ポリエーテル変性シリコーンオイル)30部をポリオキシエチレンソルビタンモノオレート2部、水68部を加えてよく撹拌し、固形分30%の剥離助剤(Y)を得た。
【0167】
これらの組成物に、必要に応じてポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル及びパーフルオロアルキルアミンオキサイドなどを添加して表3に示す粘度及び表面張力に調整した後、これらを、パルボンド3050(商品名、リン酸亜鉛系表面処理剤、日本パーカライジング社製)で表面処理した軟鋼板(厚さ0.7mm)にアミノアルキド樹脂塗料(関西ペイント(株)製、商品名アミラック)を140℃、30分間焼付け塗装した塗板(硬化塗膜ガラス転移温度82℃)上にスプレー塗装し、70℃で10分間乾燥させることにより膜厚50〜70μmの剥離性被膜を形成させた。これらの性能試験結果も併せて表2にまとめて示す。試験及び評価方法は以下のとおりである。
【0168】
【表2】

【0169】
粘度:東京計器製(株)のB型粘度計を用いて測定した。測定条件は塗液温度20℃、ローター回転数60rpmとした。
【0170】
表面張力:協和化学(株)製の協和CBVP式表面張力計を用いて測定した。
剥離性:被膜形成後、20℃で1日放置した後、試験板に塗布した剥離性水性塗料組成物被膜を端部から1m/30秒の速度ではがした場合の剥離し易さを試験した。
【0171】
○:容易に剥離できる。 △:重いが剥離できる。 ×:剥離不能である。
促進耐侯性:Qパネル社製促進耐候性試験機を用いたQUV促進バクロ試験により、紫外線照射16H/70℃、水凝結8H/50℃を1サイクルとして960時間(40サイクル)試験をし、上記剥離性と同様な方法で被膜を剥離した後に、被塗物である、アミノアルキド塗膜の膨潤その他の塗面異常の有無を観察した。
【0172】
○:異常なし △:軽い膨潤が認められる。 ×:著しい膨潤が認められる。
保護性(耐酸性):40%硫酸を0.4ml被膜上にスポットし、70℃で15分間加熱した後、水洗いしてから被膜を剥離して下のアミノアルキド塗膜の膨潤、ツヤビケ、エッチング跡の有無を観察した。
【0173】
◎:異常が認められない。 ○:わずかにツヤビケしているが、膨潤、エッチングは認められない。 △:膨潤が認められる。 ×:ツヤビケ、エッチングが認められる。
【0174】
被膜の強度及び伸び:インストロン式引張り試験機(島津製作所製オートグラフ)を用いて、20℃の条件で測定した。引張りスピードは50mm/分、加重は5kg重であった。
【0175】
実施例3〜5(弾性ベース水性塗料組成物)及び比較例2
製造例5で得た反応性基含有樹脂(B−2)の分散液(固形分濃度55%)、製造例1、3で得た水分散性アクリル重合体粒子及び下記表3に示す成分を配合(固形分)し、混合撹拌することにより、各弾性ベース水性塗料組成物2−1〜2−4を得た。
【0176】
上記で得た各弾性ベース水性塗料組成物を水で塗装適性粘度に調整した後、モルタル板上に砂骨ローラーで塗布量が約1.0kg/mとなるように塗装し、20℃、65%RHで1日乾燥させた。次に各ベース塗膜上に、上塗り塗料(「アレスレタン」(関西ペイント社製、水酸基含有アクリル系イソシアネート硬化型溶剤型上塗り塗料)の樹脂固形分100部に対し、20部の「ES−48」(コルコート社製、エチルシリケートの低縮合物)及び5部のホウ酸トリエチルを混合、撹拌して塗料としたもの)を、エアスプレーにより塗布量が約0.2kg/mとなるように塗装し、20℃、65%RHで7日乾燥させ塗装仕上げ板を得た。
【0177】
各弾性ベース水性塗料組成物の配合と併せて塗装仕上げ板について行なった性能試験結果も併せて表3にまとめて示す。表3中の(*1)〜(*5)、試験及び評価方法は以下のとおりである。
【0178】
【表3】

【0179】
(*1)ヒドロキシエチルセルロース:有効成分2.5%、増粘剤
(*2)SNデフォーマーA63:サンノプコ社製、消泡剤
(*3)ノプコサントK:サンノプコ社製、分散剤
(*4)造膜助剤:2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート
(*5)スワゾール310:コスモ石油社製、炭化水素系溶剤
弾性ベース単独膜の伸び率:JIS A 6909に準じて試験片を作成した。該乾燥塗膜の単独膜の伸び率を引張試験機オートグラフAG2000B型(島津製作所)を用い、20℃雰囲気で引張速度200mm/分にて測定した。
【0180】
仕上り外観:上記で得られた各試験塗装板の塗膜表面の仕上り外観を目視で評価した。
◎:均一にムラなく平滑に仕上がっており、塗膜外観が極めて良好。
○:平滑性は若干劣るが、塗膜外観は良好。
×:上塗り塗料の吸い込みムラが発生している。
【0181】
温冷繰り返し試験:仕上り性試験に用いた塗装仕上げ板を、JIS A 6909に準じて、20℃の水中に18時間漬浸した後、直ちに−20℃の恒温槽中で3時間冷却し、次いで50℃の恒温槽中で3時間加温する。この24時間を1サイクルとして20サイクル試験に供し、その後の塗面状態を目視にて評価した。
○:ハガレ、フクレ、ワレが全くなく、且つ変色や光沢低下もない。
△:ハガレ、フクレ、ワレは認められないが、若干の変色や光沢低下が認められる。
×:ハガレ、フクレ、ワレのうちのいずれかが認められる。
【0182】
実施例6〜8(水性塗料組成物)及び比較例4
製造例6で得た反応性基含有樹脂(B−3)の分散液(固形分濃度47.7%)、製造例1〜3で得た水分散性アクリル重合体粒子、シリコーン化合物(メチルトリメトキシシラン縮合物(重量平均分子量約4000))及び顔料ペースト(BYK−190(ビックケミー社製、商品名、分散樹脂)2部、脱イオン水50部、及びチタン白100部を混合し、これをペイントシェーカーにて分散処理したもの(固形分67%))など、下記表4に示す配合にて撹拌混合した後、アンモニア0.1部を加えてpHを約8〜9に調整し、固形分54%の各水性塗料組成物3−1〜3−4を得た。尚、表4の配合は固形分表示である。得られた各水性塗料組成物を下記性能試験に供した。
【0183】
各水性塗料組成物の配合と併せて性能試験結果も併せて表4にまとめて示す。試験及び評価方法は以下のとおりである。
【0184】
【表4】

【0185】
耐候性:シーラーを塗装したスレート板上に、実施例及び比較例の各水性塗料組成物を乾燥膜厚30μmになるように塗装し、120℃で20分間乾燥して各試験塗板を作成した。試験板の初期60°鏡面光沢値を測定しておく。
【0186】
引き続きサンシャインウェザオメーター(スガ試験機(株)製)を使用して促進耐候性試験(降雨サイクル;12分/時間、ブラックパネル温度60〜66℃)を行った。試験時間5000時間後の60度鏡面光沢値を最終的な光沢値として測定し、これを初期光沢値で割り、この値を光沢保持率(%)として算出した。光沢保持率が高いほど塗膜の耐侯性は良好である。
【0187】
耐酸性:40%硫酸を各試験板の塗膜上に0.4cc滴下し、60℃に加熱したホットプレート上で15分間加熱した後、試験板を水洗した。硫酸滴下箇所のエッチング深さ(μm)を表面粗度計(東京精密社製、表面粗さ形状測定機 『サーフコム570A』)を用いて、カットオフ0.8mm(走査速度0.3mm/sec、倍率5000倍)の条件で測定することにより耐酸性の評価を行なった。エッチング深さが小さいほど耐酸性が良好であることを表わす。
【0188】
耐水性:試験板を20℃の恒温室に24時間放置後、80℃の温水中に5時間浸漬し、その後浸漬させたままの状態で80℃から室温まで徐々に冷却した。その後水中より引き上げた試験板の表面状態を以下の基準で評価した。
◎:ツヤビケ、白濁が認められず極めて良好、○:若干ツヤビケが認められるが良好、×:ツヤビケが認められ、塗膜が白濁している
実施例9
水性ポリプロピレン/エチレン共重合体1(メタロセン系触媒を用いて得られたエチレン−プロピレン共重合体(エチレン含有率5%)に対しマレイン酸付加量8重量%で変性したもので、融点80℃、Mwが約10万、Mw/Mnが約2.1、酸価35であるものを、ジメチルエタノールアミンで当量中和し、さらにポリプロピレン/エチレン共重合体100部に対して乳化剤10部使用で水分散したもの)を固形分重量で55部、「UX5210」(三洋化成工業社製、ウレタンディスパージョン)を固形分重量で20部、「エポクロスWS−100」(日本触媒社製、オキサゾリン基含有アクリル樹脂、固形分40%、オキサゾリン当量220)を固形分重量で10部、製造例1で作成した水分散性アクリル重合体粒子1の分散液を固形分重量で15部、「JR−806」(テイカ社製、チタン白)120部を、常法に従って配合し、固形分40%となるように脱イオン水で希釈して水性塗料4−1を得た。
【0189】
比較例4
実施例9で、水性ポリプロピレン/エチレン共重合体1を67部、「エポクロスWS−100」を13部とし、水分散性アクリル重合体粒子1の分散液を配合しない以外は実施例9と同様にして水性塗料4−2を得た。
【0190】
実施例10
水性ポリプロピレン/エチレン共重合体1(実施例9と同じ)を固形分重量で55部、「UX5210」を固形分重量で20部、製造例1で作成した水分散性アクリル重合体粒子1の分散液を固形分重量で15部、「カルボジライトV−02」(日清紡社製、カルボジイミド基含有化合物、固形分40%、カルボジイミド当量590)を固形分重量で10部、「JR−806」120部を、常法に従って配合し、固形分40%となるように脱イオン水で希釈して水性塗料4−3を得た。
【0191】
比較例5
実施例10で、水性ポリプロピレン/エチレン共重合体を67部、「カルボジライトV−02」を13部とし、水分散性アクリル重合体粒子1の分散液を配合しない以外は実施例10と同様にして水性塗料4−4を得た。
【0192】
実施例11
変性ポリプロピレンの水分散体(注1)を固形分重量で30部、製造例7で製造した反応性基含有樹脂(B−4)の分散液を固形分重量で45部、製造例1で作成した水分散性アクリル重合体粒子1の分散液を固形分重量で15部、セミカルバジド硬化剤(注2)10部、「JR−806」120部を、常法に従って配合し、固形分40%となるように脱イオン水で希釈して水性塗料4−5を得た。
【0193】
(注1)変性ポリプロピレンの水分散体:攪拌器、冷却管、温度計及び滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコ中で、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン(メタロセン系触媒を用いて得られたポリプロピレンに対しマレイン酸付加量4重量%で変性したもので、融点80℃、Mw約15万、Mw/Mn約2.5)100gを140℃で加熱溶融し、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(「ニューコール1820」、片末端水酸基含有ポリオキシエチレン化合物、日本乳化剤社製)15gを添加し、攪拌しながら140℃で4時間反応を行った。反応後、90℃に冷却し、脱イオン水を加えてろ過を行い、固形分30%の変性ポリプロピレンの水性分散体を得た。
【0194】
(注2)セミカルバジド硬化剤:80%ヒドラジン水和物250g、メタノール250gを還流冷却器、温度計、攪拌装置を有する反応容器にいれた。その後、メタノール2250g、イソホロンジイソシアネート500gをスタティックミキサーで混合しながら、1時間かけて室温下で滴下した。その後、さらに室温で1時間攪拌した後、ジオキサン400gを加え、30℃以下の温度で減圧下、メタノールを除去した。しばらく静置すると白色粉末が析出し、これを濾別し室温下で真空乾燥してセミカルバジド硬化剤を得た。
【0195】
比較例6
実施例11で、反応性基含有樹脂(B−4)の分散液を固形分重量で57部、セミカルバジド硬化剤を13部とし、水分散性アクリル重合体粒子1の分散液を配合しない以外は実施例11と同様にして水性塗料4−6を得た。
【0196】
実施例9〜11及び比較例4〜6で得られた各水性塗料4−1〜4−6を下記性能試験に供した。性能試験結果を表5に示す。試験塗装物の作成方法、試験方法及び評価方法は以下のとおりである。
【0197】
試験塗装物の作成:バンパーに成型加工したポリプロピレン(脱脂処理済)に、各水性塗料をプライマーとして乾燥膜厚で約40μmになるようにスプレー塗装し、80℃で3分間プレヒート後、その上に着色ベースコート塗料として「WBC#713T」(関西ペイント社製、水性白色マイカベースコート塗料)を乾燥膜厚で約15μmとなるように塗装し、80℃で3分間プレヒート後、クリヤ塗料として「ソフレックス#450クリヤ」(関西ペイント社製、アクリルウレタン系溶剤型クリヤ塗料)を乾燥膜厚で約30μmとなるように静電塗装して、90℃で30分間加熱乾燥させることにより、各試験塗装物を作成した。
【0198】
耐水性:各試験塗装物の塗装したバンパーを一部切り取り、40℃の温水に20日間浸漬し、引き上げて乾燥してから、塗膜の外観及び付着性を以下のようにして評価した。
(外観)○:塗膜外観に異常が認められない △:ツヤビケが生じている ×:ブリスターが発生している
(付着)塗膜面に素地に達するようにカッターで切り込み線を入れ、大きさ2mm×2mmの碁盤目を100個作り、塗膜面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃で、急激に剥離した後の碁盤目の残存塗膜数を調べた。
○:100個(剥離が認められない) △:95〜99個 ×:95個未満
【0199】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分散性アクリル重合体粒子(A)、反応性基含有樹脂(B)及び必要に応じて硬化剤(C)を含有する水性塗料組成物であって、該重合体粒子(A)が、重量平均分子量が110万以上であり、かつ、質量濃度1.35%の1,4−ジオキサンを溶媒とする液とした分光光度計による波長330nmにおける吸光度の値が0.2以下であることを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項2】
水分散性アクリル重合体粒子(A)の重量平均分子量が110万〜1000万である請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項3】
(B)の反応性基が、カルボキシル基、カルボニル基及びアルコキシシリル基から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の水性塗料組成物。
【請求項4】
(A)成分、(B)成分及び(C)成分の総量の樹脂固形分100質量部を基準にして、固形分として、(A)成分が1〜80質量%、(B)成分が1〜90質量%、(C)成分が0〜60質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の水性塗料組成物。
【請求項5】
水分散性アクリル重合体粒子(A)が、重合性不飽和モノマーの総量を基準にして、メタクリル酸0.1〜25質量%を共重合モノマー成分とするものである請求項1〜4のいずれかに記載の水性塗料組成物。
【請求項6】
水分散性アクリル重合体粒子(A)が、重合性不飽和モノマーの総量を基準にして、水酸基含有メタクリレートモノマー0.1〜40質量%を共重合モノマー成分とするものである請求項1〜5のいずれかに記載の水性塗料組成物。
【請求項7】
水分散性アクリル重合体粒子(A)が、重合性不飽和モノマーの総量を基準にして、アクリレートモノマー及びスチレンの合計が20〜80質量%となる割合で共重合モノマー成分とするものである請求項1〜6のいずれかに記載の水性塗料組成物。
【請求項8】
水分散性アクリル重合体粒子(A)が1分子中に、−(CHCHO)n−(nは5〜60の整数)で表わされるポリオキシエチレン基及び重合性不飽和基を有する反応性乳化剤を共重合成分とするものである請求項1〜7のいずれかに記載の水性塗料組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の水性塗料組成物が塗装された物品。

【公開番号】特開2009−91514(P2009−91514A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265620(P2007−265620)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】