説明

水性弾性塗料及びその製造方法

【課題】従来の有機溶剤を排除し、特に布地、皮革製品、ゴム弾性製品など柔軟性および伸縮性を有する製品の印刷および皮膜形成に適した水性弾性塗料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】固形分が15〜60質量%の水溶性樹脂溶液と、固形分が40〜60質量%の天然ゴムラテックスと、水と、顔料を含む水性弾性塗料。前記天然ゴムラテックスは、水性弾性塗料全体の5〜70質量%含んでいることが望ましく、前記水溶性樹脂溶液は、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリウレタン系樹脂から選択される樹脂の水溶液又はエマルジョンである。そして水性弾性塗膜はpHは8以上に調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性弾性塗料及びその製造方法に関する。特に、皮革製品、ゴム弾性製品など柔軟性および伸縮性を有する製品の印刷に適した水性弾性塗料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
布地、天然皮革、合成皮革およびゴム製品などの柔軟な素材に、印字、印刷又は被覆膜をして用いる塗料は定着して硬化するが、硬化塗膜の柔軟性が、用いられる基材の変形に追随できない場合、硬化塗膜の割れや剥がれが発生し模様入れが困難である。
【0003】
従来の塗料の多くは、例えばエポキシ系層とカルボキシル系層の二層構造にすることで、塗膜に柔軟性を付与する技術、定着に架橋剤を用いる技術、有機溶剤系のビニル系樹脂を用いる技術があるが、いずれも割れ易く、剥がれ易く、耐久性に劣るものであった。また、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂などの粉体塗料は、熱により定着、硬化するため割れは避けられない。
【0004】
なお、従来から塗膜の物性面等から樹脂をトルエン、キシレン等の混合溶剤で希釈した有機溶剤系塗料が多く使用されている。しかし、有機溶剤による大気汚染に関する社会問題、有機溶剤系塗料のもたらす人体への悪影響の問題があり、さらに1990年の消防法改訂による輸送および貯蔵に関する規制処置への対応等から、水系で無公害の塗料の開発が望まれてきている。
【0005】
なお水性塗料としては、ポリウレタン樹脂系塗料(特許文献1)、アクリル樹脂系塗料(特許文献2)、ポリエステル樹脂系塗料(特許文献3)などが公知である。
【特許文献1】特開2003−055431号公報
【特許文献2】特開平11−080485号公報
【特許文献3】特開2004−067995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するもので、従来の有機溶剤を排除し、特に布地、皮革製品、ゴム弾性製品など柔軟性および伸縮性を有する製品の印刷および皮膜形成に適した水性弾性塗料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、固形分が15〜60質量%の水溶性樹脂溶液と、固形分が40〜60質量%の天然ゴムラテックスと、水と、顔料を含むことを特徴とする水性弾性塗料である。
【0008】
前記天然ゴムラテックスは、水性弾性塗料全体の5〜70質量%含んでいることが望ましい。また前記水溶性樹脂溶液は、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリウレタン系樹脂から選択される樹脂の水溶液又はエマルジョンである。そして、本発明の水性弾性塗膜は、好ましくは、pHは8以上に調整される。
【0009】
さらに本発明は、固形分が15〜60質量%の水溶性樹脂溶液と、水と、顔料混合液を混合してpHを8以上に調整した後に、固形分が40〜60質量%の天然ゴムラテックスを混合することを特徴とする水性弾性塗料の製造方法である。ここで、水性弾性塗料の中で水溶性樹脂溶液は10〜60質量%、天然ゴムラテックスは5〜50質量%、水および/または着色剤が残部であることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、有機溶剤を排除したため、有機溶剤の蒸発、飛散による公害問題が解消でき、さらには布地、皮革製品、ゴム弾性製品など柔軟性および伸縮性を有する製品の印刷、絵の具、インキ、塗膜形成をした場合に、屈曲剥離強度が改善されるとともに、引っ掻き強度、耐水性、ポットライフにも優れた水性弾性塗料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の水性弾性塗料は、固形分が15〜60質量%の水溶性樹脂溶液と、固形分が40〜60質量%の天然ゴムラテックスと、水と、顔料を含む。以下これらの成分について詳細に説明する。
【0012】
<水溶性樹脂溶液>
本発明において水溶性樹脂溶液は、樹脂の全部または一部が溶解した水溶液の形態、又はエマルジョンの状態で水中に分散している形態のいずれも採用できる。そして樹脂は水溶性のものであれば、いずれも使用できるが、好ましくはアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリウレタン系樹脂から選択される。またこれらの樹脂の混合物を使用することもできる。アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリウレタン系樹脂以外の樹脂を用いる場合は、樹脂成分の50質量%未満の範囲で混合されることが好ましい。
【0013】
そして水溶性樹脂溶液中の樹脂成分の固形分は15〜60質量%の範囲であることが望ましい。固形分が15質量%未満の場合は、塗料の粘度が低くなり、印刷、印字の際に鮮明な輪郭が得られず、また塗膜厚さを調整することが困難となる。一方、固形分が60質量部を超えると、塗料の粘度が高くなり、屈曲剥離強度が低下する傾向がある。
【0014】
《アクリル系樹脂》
本発明の水性弾性塗料に使用されるアクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体から選ばれる少なくとも1種の単量体をホモ重合又は共重合したものである。例えば、単量体としてはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。
【0015】
また、水溶性を損なわない範囲でエチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン、塩化ビニル、フッ化ビニル、ビニリデンクロリドなどのビニルエステル系単量体、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレートなどの多官能性単量体、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体、またブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系単量体、アクリル酸、メタクリル酸などと共重合することもできる。これらの単量体の使用量は全単量体に対し30重量%以下が好ましい。
【0016】
《ポリエステル系樹脂》
本発明で使用するポリエステル樹脂は、多塩基酸と多価アルコールを主成分として用いてエステル化反応させて得られ、一般に酸価が10〜50、水酸基価が20〜150を有する。さらに、ポリエステル樹脂は,多塩基酸として芳香族酸及び脂環族酸由来の構成単位を有し、且つ前記芳香族酸及び前記脂環族酸に由来する構成単位の合計が、多塩基酸に由来する構成単位の70モル%以上であり、100モル%がより好ましく、かかる範囲にすることで、屈曲剥離強度および貯蔵安定性に優れた水性塗料が得られる。なおポリエステル樹脂は、ウレタン変性或いはビニル変性されたものが使用できる。
【0017】
次に、ポリエステル樹脂と共に硬化剤が使用できるが、この場合、ポリエステル樹脂やビニル変性ポリエステル樹脂等が有する水酸基と反応性を有する化合物であれば特に制限はなく、例えば、アミノ樹脂、ブロックイソシアネート等を使用することができる。
【0018】
《ポリウレタン系樹脂》
本発明のポリウレタン系樹脂は、ポリウレタンポリイソシアネート成分、ポリオール成分のほか、鎖延長剤、カルボキシル基導入成分及び中和剤とを含むことができる。例えば、前記ポリイソシアネート成分を10〜40質量%、ポリオール成分を20〜95質量%、鎖延長剤を5〜10質量%、カルボキシル基導入成分を2〜10質量%及び中和剤を2〜5質量%含む。
【0019】
ポリイソシアネート成分としては、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネートなどを挙げることができる。また、これら有機ジイソシアネートのアダクト変性体、ビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、カルボジイミド変性体等の変性ポリイソシアネートも使用できる。
【0020】
次に、ポリオール成分としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール等を挙げることができる。
【0021】
ポリエステルポリオールとしては、低分子ポリオールを1種類以上と、芳香族ポリカルボン酸、脂肪族ポリカルボン酸、及び1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、α−ハイドロムコン酸、β−ハイドロムコン酸、α−ブチル−α−エチルグルタル酸、α,β−ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸、ヘミメリチン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等のようなその他のポリカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリカルボン酸とを用いる。
【0022】
ここで低分子ポリオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール等がある。また芳香族ポリカルボン酸としては、フタル酸(無水フタル酸)、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等があり、脂肪族ポリカルボン酸としては、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、クルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸等がある。
【0023】
<エマルジョン分散剤>
本発明において、水溶性樹脂溶液はエマルジョンの形態を採用できる。エマルジョンを採用する場合、分散剤は、公知のエマルジョンを形成する各種の界面活性剤、例えばアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤またはカチオン系界面活性剤などが使用できる。なおエマルジョンは、前記樹脂単量体を分散剤中で重合反応して製造するほか、重合体樹脂を分散剤と混合して、エマルジョンを製造することもできる。
【0024】
ここで、ビニルアルコール系重合体(PVA系重合体)を分散剤に用いる場合、塗料の接着剤、つまり基材と塗料を密着結合させる結着剤としての機能も有する。
【0025】
PVA系重合体の製造方法は、公知の方法によりビニルエステルを重合し、けん化することにより得ることができる。ここで、ビニルエステルとしては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどが挙げられるが、酢酸ビニルが用いられる。PVA系重合体として、分子内に炭素数4以下のα−オレフィン単位を例えば、1〜20モル%含有するビニルアルコール系重合体を用いることが好ましい。該PVAを用いることで水性塗料の耐アルカリ性が向上する。ここで炭素数4以下のα−オレフィン単位としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン単位が挙げられるが、エチレン単位が好ましい。
【0026】
本発明において分散剤或いは接着剤として用いられるPVA系重合体の重合度(粘度平均重合度)は特に制限されないが、通常100〜3000、好ましくは200〜2500、より好ましくは250〜2000である。重合度が上記範囲にある場合、重合安定性がより向上する。PVA系重合体のけん化度は、水溶性を維持するため70モル%以上であることが好ましい。
【0027】
<天然ゴムラテックス>
本発明において天然ゴムラテックスは、塗膜に弾力性を付与し、屈曲剥離強度を付与するものであり、未変性または変性ラテックスが使用される。
【0028】
また、天然ゴムラテックスは、分散しているゴム粒子の粒子径が合成ゴムラテックスに比較して大きく、引張り強さ、伸び、反発弾性、耐摩耗性、耐屈曲亀裂性等の物性が総合的に優れており、合成ゴムラテックスに比して弾性製品の塗膜形成に優れている。
【0029】
天然ゴムは固形分が40〜60質量%のものが使用される。40質量%未満の場合、安定性が損なわれ、凝固しやすく、60質量%を超えると塗料の劣化が生じ易くなる。そして、天然ゴムラテックスの配合量は水性弾性塗料全体の5〜50質量%の範囲である。5質量%未満の場合、塗膜に弾性が得られにくく屈曲剥離強度を改善することはできず、一方、50質量%を超えると塗膜形成性が低下する傾向にある。
【0030】
天然ゴムラテックスは、ヘベア樹の樹皮で生成する乳液を樹皮から採取し、濃縮し、保存剤としてアンモニアを添加して調整され、微量の蛋白質、脂肪酸および糖分等を含む。未処理の天然ゴムラテックス粒子はシス−1,4−ポリイソプレンを主成分として含有し、数千から数百万の範囲の分子量分布を有し、工業的にはゴム粒子分を約55〜約60質量%、アンモニアを約0.5〜1.0質量%含む状態で入手できる。そして、天然ゴムラテックス中の平均粒子径は、約300〜約2,000nmである。
【0031】
本発明において天然ゴムラテックスを公知の方法で変性した、いわゆる変性天然ゴムラテックスが使用できる。変性天然ゴムラテックスは、未変性天然ゴムラテックス粒子にビニル系モノマーをグラフト共重合したものである。なお、塗料の貯蔵安定性を向上させ、塗膜性能の調節のためには、ビニル系モノマーをグラフト共重合させた変性天然ゴムラテックスを使用することが好ましい。なお、天然ゴムラテックスは硫黄やパーオキサイドを用いた公知の方法で架橋構造を形成することで、天然ゴムの機械的強度が増大し、低温でのゴムの結晶化が抑制され、屈曲剥離強度は向上する。
【0032】
本発明において脱蛋白及び変性した天然ゴムラテックスも使用できる。天然ゴムラテックスはゴム粒子表面に少量の蛋白質を有しており、脱蛋白処理した天然ゴムラテックスが使用できる。さらに脱蛋白処理した天然ゴムラテックス粒子にさらにビニル系モノマーを、重合開始剤を用いてグラフト重合した、脱蛋白及び変性した天然ゴムラテックスを用いることもできる。
【0033】
脱蛋白処理した天然ゴムラテックスを使用することで、蛋白質に由来する加熱時の塗膜の黄変などを低減することが可能である。なお、脱蛋白処理するには、例えば天然ゴムラテックスに蛋白質分解性の酵素やバクテリアを添加して蛋白質を分解する方法、界面活性剤を添加して繰返し洗浄する方法あるいは天然ゴムラテックスに尿素と界面活性剤を添加して繰り返し洗浄するなどの公知の方法を採用できる。そして脱蛋白処理の際に用いる界面活性剤はカチオン系やアニオン系、ノニオン系や両性イオン系などを用いることができる。
【0034】
天然ゴムラテックス粒子に、グラフト共重合させるビニル系モノマーとして、カルボキシル基含有または無水物基含有モノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、5−カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸無水物、マレイン酸無水物等、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸等が使用できる。
【0035】
また、グラフト共重合させるビニル系モノマーとして、アルキル(メタ)アクリレート、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が使用できる。
【0036】
<水>
本発明の水性弾性塗料は、所定量の水を含むが、水溶性樹脂溶液の水の濃度との関係で適宜調整される。前記水溶性樹脂溶液中の水の含有量が多い場合は、必ずしも配合する必要はないが、最終調整される水性弾性塗料中の含有量は、5〜30質量%の範囲に調整されることが好ましい。
【0037】
<着色剤>
本発明の水性弾性塗料に用いられる着色剤は、顔料及び染料を含む広い概念である。例えば、顔料として有機顔料および無機顔料を含み、また染料には天然色素等を含む。そして着色剤は従来から塗料、インキ、絵の具、染色などに汎用されている。
【0038】
ここで、有機顔料の一部を、カラーインデックス番号で示すと、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー20、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー100、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ73、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド97、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド265、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36;C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25;C.I.ピグメントブラック1等が挙げられる。
【0039】
また、前記無機着色剤としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。
【0040】
<接着剤>
本発明において、塗膜と基材との密着結合性を向上するため、接着剤を混合することができる。ここで接着剤は水溶性のものが好ましいが、例えば、PVA系接着剤、澱粉系の接着剤、酢酸ビニル樹脂系接着剤、アクリル樹脂系水溶性接着剤などを使用することができる。そして接着剤の配合量は塗料溶液全体の3〜20質量%の範囲が望ましい。3質量%未満の場合は、結着性が低下し、20質量%を超えると耐水性が低下し、また塗膜に亀裂が発生するなどの問題が生じる。
【0041】
<その他の配合剤>
本発明において、塗料に一般に使用される配合剤、例えば可塑剤、成膜助剤、表面調整剤、防腐剤、消泡剤などを添加することができる。
【0042】
<水性塗料のpH調整>
水性塗料のpHの調整は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液を調整し、塗料に適当量混合することで、pHを8以上の所定の値に調整することができる。
【0043】
<水性弾性塗料の調整方法>
水性弾性塗料は、水溶性樹脂、水、着色剤及び添加剤を混合し、pHを8以上の所定の値に調整し、その後に天然ゴムラテックスを配合することが好ましい。天然ゴムラテックスを最初に配合した場合、或いはpHの低い水溶液に天然ゴムラテックスを混合した場合には、天然ゴムのラテックスが不安定になり凝固が生じることがあり、好ましくない。
【実施例】
【0044】
本発明の水性弾性塗料を実施例に基づいて詳細に説明する。実施例及び比較例に用いた組成成分は以下の通りである。
(1)アクリル樹脂系エマルジョン
大日本インク化学工業社製ウオータゾルWSA−910で、樹脂成分のポリマーは水溶性アクリル樹脂であり、固形分は35質量%である。
(2)ポリエステル樹脂系エマルジョン
ユニチカ社製KAシリーズで、樹脂成分のポリマーはポリエステル樹脂エマルジョンであり、固形分は30質量%である。
(3)ポリウレタン樹脂系エマルジョン
三洋化成社製、パーマリンUA−200で樹脂成分のポリマーは、ポリエーテル系ポリウレタンエマルジョンであり、固形分は30質量%である。
(4)ポリビニールアセタール樹脂
積水化学社製エスレックK KW−10を用いた。ポリビニールアセタール樹脂は、顔料の分散性に優れ、水溶性バインダとして適しており可とう性に富む。
(5)エマルジョン分散剤/接着剤
PVA系接着剤で、ヤマト株式会社製アラビックヤマトを使用した。
(6)顔料混合液
顔料混合液として顔料としてフタロシアニンを用い、これをスチレン−アクリル酸共重合体水溶液に20質量%の濃度で溶解(または分散)させたものを使用した(御国色素社製の商品名SAシリーズ)。
(7)天然ゴムラテックス
株式会社レジテックス製のレジテックSS−58を用いた。
実施例1
アクリル樹脂系エマルジョン(ウオータゾルWSA−910)7質量%、ポリビニールアセタール樹脂(エスレックK KW−10)10質量%、天然ゴムラテックス40質量%、PVA系接着剤(アラビックヤマト)15質量%、水8質量%、顔料混合液20質量%を混合し、さらに水酸化ナトリウム/水酸化カリウム混合水溶液で塗料溶液のpHを6.5の値に調整した。
【0045】
得られた塗料溶液を、天然皮革および木綿の晒しに描画し、一昼夜乾燥した後、以下に記載する性能評価を行った。
実施例2〜5
実施例1と同様な方法で、組成成分およびpHを変更して、実施例2〜5の塗料溶液を調整した。
比較例1〜7
比較例1はアクリル系樹脂お溶液、比較例2はポリウレタン系樹脂溶液で、いずれも樹脂溶液の配合量が20質量%のもの、比較例3〜6は樹脂溶液の配合量が60質量%のもの、比較例7は樹脂溶液の配合量が50質量%のものである。これらの比較例はいずれも天然ゴムラテックスを配合していない。実施例1〜5および比較例1〜7の評価結果を表1にまとめて記載する。
【0046】
【表1】

【0047】
<性能評価試験>
(イ)屈曲剥離強度
被塗装物を180度の屈曲を10回繰り返し、目視で観察し5段階評価を行った。数字が大きい方が優れていることを示す。
(ロ)引っ掻き強度
被塗装物の塗膜の端を3Hの鉛筆で引っ掻きを10回繰り返し、塗膜の剥がれ状態を目視で観察し5段階評価を行った。数字が大きい方が優れていることを示す。
(ハ)耐水性
流水中に被塗装物を10分間維持し、色のにじみ、色落ちを目視で観察し5段階評価を行った。数字が大きい方が優れていることを示す。
(ニ)ポットライフ
製造した塗料を室温(20℃)に静置した状態で、薄め液を用いないで絵筆で描画できなくなるまでの時間を測定し、5段階評価をした。数字が大きい方が優れていることを示す。
<性能評価の結果>
表1の性能評価の結果から、比較例1〜7は、いずれも屈曲剥離強度が著しく低い。アクリル系樹脂エマルジョンを主体とする比較例1、3、ポリエステル系樹脂エマルジョンを主体とする比較例4、ポリウレタン系樹脂エマルジョンを主体とする比較例2、5、さらにポリビニールアセタール樹脂を主体とする比較例6は、いずれも天然ゴムラテックスを含んでいないため、いずれも屈曲剥離強度に劣ることが判る。
【0048】
一方、実施例1〜5は、屈曲剥離強度、引っ掻き強度、耐水性、ポットライフが総合的にバランスがとれた性能を有している。なお、塗料溶液のpHが8より小さい場合、天然ゴムラテックスの安定性が低下し、ポットライフも悪くなる傾向にある。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の水溶性塗料を採用しているので、従来の塗料のように有機溶剤の蒸発に起因した公害問題が解消できる。そして本発明の塗料は柔軟性を有するため、布地、皮革製品、ゴム弾性製品など柔軟性および伸縮性を有する製品の印刷用塗料、皮膜形成用の塗料、絵の具、インキに適用することができる。なお本発明の塗料は、金属、木材、ガラス、プラスチックなど硬質基材の塗料、絵の具、インキなどにも採用しうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分が15〜60質量%の水溶性樹脂溶液と、固形分が40〜60質量%の天然ゴムラテックスと、着色剤を含むことを特徴とする水性弾性塗料。
【請求項2】
天然ゴムラテックスを、水性弾性塗料全体の5〜70質量%含んでいることを特徴とする請求項1記載の水性弾性塗料。
【請求項3】
水溶性樹脂溶液は、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリウレタン系樹脂から選択される樹脂の水溶液又はエマルジョンであることを特徴とする請求項1記載の水性弾性塗料。
【請求項4】
pHは8以上であることを特徴とする請求項1記載の水性弾性塗料。
【請求項5】
固形分が15〜60質量%の水溶性樹脂溶液と、水と、着色剤混合液を混合してpHを8以上に調整した後に、固形分が40〜60質量%の天然ゴムラテックスを混合することを特徴とする水性弾性塗料の製造方法。
【請求項6】
水性弾性塗料に、水溶性樹脂溶液が10〜60質量%、天然ゴムラテックスが5〜50質量%、水及び/または着色剤が残部混合されることを特徴とする請求項5記載の製造方法。

【公開番号】特開2007−138036(P2007−138036A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−334355(P2005−334355)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(305054865)株式会社エトワス (3)
【Fターム(参考)】