説明

水性接着剤組成物およびその発泡方法

ポリマー水溶液または分散体である発泡性水性接着剤の塗布方法であって、(a)1.01bar(1atm)の圧力下で、5未満のpH値の酸性溶液と混合した場合にガスを放出する、6以上のpH値を有し、溶解塩または分散塩を含有する第1ポリマー水溶液または分散体を第1容器に準備し、(b)酸を含有し、5未満のpH値を有する第2ポリマー水溶液または分散体を第2容器に準備し、(c)第1ポリマー水溶液または分散体と第2ポリマー水溶液または分散体を、吹き出し弁を有する圧密容器内で混合し、(d)水性接着剤を形成する混合したポリマー水溶液または分散体を、圧密容器から吹き出し弁を介して基材上へ第1容器内の圧力より低い圧力により放出し、それにより工程(c)の間および工程(c)の後に溶解塩または分散塩から放出されたガスが、弁を抜け出たポリマー水溶液または分散体中に気泡を形成し、ポリマー水溶液または分散体を発泡させる方法。この方法で使用し得る2成分発泡性水性接着剤も本発明の一部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性接着剤組成物、好ましくは水性エマルション状の水性接着剤組成物、およびこの水性接着剤組成物の発泡方法に関する。
【背景技術】
【0002】
適切な接着を実現するためには、固定すべき表面上にある種の薄層で接着剤を塗布すべきことが知られている。接着剤の使用をより少量とすると、より経済的であり、接着剤がより速く乾燥し、固着物の重量が小さくなるため、接着剤の使用を最小限の量とすることはあらゆる観点から有利であり、また環境の観点からも有利である。しかしながら、このプロセスに使用する機械装置は、連続的で信頼性のある形での適切な接着量に十分であるべき薄層には一般的には適用できず、必要とされる量を超える接着剤が使われる。例えば、積層時には、約30〜60ミクロンの層厚があれば十分であるのに、装置の不正確さは通常1〜2桁は高い。接着剤の使用量を減らすために、機械製造業者は一層正確な機械(したがって高価な機械となる)を作り出し、一方、接着剤の製造業者は接着剤の抽出分を増加させる。さらに、紙などの多孔質基材における接着剤エマルションの吸収は、発泡度により有利に調整し得る。
【0003】
接着剤の主要ユーザーは、上記課題を解決するために発泡装置を利用するが、その場合、特殊技術によって圧縮ガス、通常は空気を接着剤中へ導入する。塗布する発泡材料の大部分はガスであるため、この方法を用いることによって接着剤の有効量を低減することができる。そのような一方法がGB887078の明細書に記載されており、例えば窒素または空気またはフレオンなどのガスと接着剤を10〜30分間激しく混合する、すなわち「泡立て」法によって発泡を実現しているが、これは一方では複雑な機械を必要とし、また他方では例えば粘度を調節するだけでなく発泡安定剤を用いることによる発泡条件を与えるべき必要が生じ、その上、装置は正確な流量制御を備えていなければならない必要が生じる。こういった解決法は複雑であって、また高価な機械装置を必要とするため、年間数百トンの接着剤を使用する場合にのみ採算が取れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】GB887078号明細書
【特許文献2】WO86/06328号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、より少量の接着剤を使用する場合であっても採算を取り得る接着剤を発泡するための解決法、即ち、高価な機械を必要とせず、簡単な方法で実施可能であって、それによって同時に良好な結果が得られる一方で、接着剤の必要量を減少させ得る解決法を提供することである。
【0006】
WO86/06328は、ポリマー水溶液または分散体の発泡方法を開示する。この方法では、塩、好ましくは炭酸塩を、酸を添加した場合にガス、とりわけ二酸化炭素を発生させるポリマー溶液またはエマルションに添加する。この方法では、酸を混合物に添加すると瞬時に発泡が起こる。そのため、この発泡方法を十分に制御することはできない。
【0007】
本発明は、インサイチュで生じたガスを圧力下でポリマー溶液またはエマルション中にまず溶解させ、この工程中には全くあるいはごく限られた発泡しか起こらないことにより、上記方法と区別される。発泡は、第2段階で制御した方法で圧力を解放した場合にのみ起こる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一般的な態様において、本発明の方法は以下のように記述できる。
ポリマー水溶液または分散体である発泡性水性接着剤の塗布方法であって、
(a)1.01bar(1atm)の圧力下で、5未満のpH値の酸性溶液と混合した場合にガスを放出する、6以上のpH値を有し、溶解塩または分散塩を含有する第1ポリマー水溶液または分散体を第1容器に準備すること、
(b)酸を含有し、5未満のpH値を有する第2ポリマー水溶液または分散体を第2容器に準備すること、
(c)第1ポリマー水溶液または分散体と第2ポリマー水溶液または分散体を、吹き出し弁を有する圧密容器内で混合すること、
(d)水性接着剤を形成する混合したポリマー水溶液または分散体を、圧密容器から吹き出し弁を介して基材上へ第1容器内の圧力より低い圧力により放出し、それにより工程(c)の間および工程(c)の後に溶解塩または分散塩から放出されたガスが、弁を抜け出たポリマー水溶液または分散体中に気泡を形成し、ポリマー水溶液または分散体を発泡させること
を特徴とする方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この方法の第1実施態様は以下の通りである。
(a)1.01bar(1atm)の圧力下で、5未満のpH値の酸性溶液と混合した場合にガスを放出する、6以上のpH値を有し、溶解塩または分散塩を含有する第1ポリマー水溶液または分散体を、吸入弁および吹き出し弁を備えた第1容器に準備すること、
(b)酸を含有し、5未満のpH値を有する第2ポリマー水溶液または分散体を、吸入弁および吹き出し弁を備えた第2容器に準備すること、
(c)第2容器の吹き出し弁を介して、第1容器の吸入弁と第2容器とを連結し、第2容器の吸入弁に第1容器内の圧力と同等かそれ以上の圧力をかけ、少なくとも一部の第2ポリマー水溶液または分散体を、第1ポリマー水溶液または分散体を含む第1容器内に、上記の圧密容器の機能を備えた第1容器の吸入弁を介して移すこと、
(d)水性接着剤を形成する、第1容器内の混合したポリマー水溶液または分散体を、圧密容器から吹き出し弁を介して基材上へ第1容器内の圧力より低い圧力により放出し、それにより工程(d)の間および工程(d)の後に溶解塩または分散塩から放出されたガスが、弁を抜け出たポリマー水溶液または分散体中に気泡を形成し、ポリマー水溶液または分散体を発泡させること。
【0010】
この実施態様において、「第1」容器と「第2」容器を入れ替えることができることは明らかである。第1ポリマー水溶液または分散体を第2容器で保管し、これを第1圧密容器に入れられた第2ポリマー水溶液または分散体に加えても、本発明は変わらない。
【0011】
また、第2の実施態様において行う本発明の方法は以下の通りである。
工程(c)において、第1および第2ポリマー水溶液または分散体をそれぞれの容器から取り出し、静的ミキサーにより混合し、吹き出し弁を有する第3圧密容器に供給する。これは、例えば、重力により、圧力を加えることにより(例えば圧縮空気または他の圧縮ガス)行うことができるが、好ましくは、第1および第2容器の中身を静的ミキサーにより第3の圧密容器中へ押し込むポンプの働きにより行うことができる。圧密容器内の圧力は、このような働きをすることができる圧力でなければならない。
(d)水性接着剤を形成する混合されたポリマー水溶液または分散体を、圧密容器から吹き出し弁を介して基材上へ第1容器内の圧力より低い圧力により放出し、それにより工程(c)の間および工程(c)の後に溶解塩または分散塩から放出されたガスが、弁を抜け出たポリマー水溶液または分散体中に気泡を形成し、ポリマー水溶液または分散体を発泡させる。
【0012】
後者の工程は、バッチ式で行うことができる:圧密容器は、少なくとも一部分が混合ポリマー水溶液または分散体により満たされており、接着剤を必要に応じて取り出す。あるいは、この工程を連続式に行うこともできる:圧密容器から接着剤を取り出す際、新しい第1および第2ポリマー水溶液または分散体を、静的ミキサーを介して圧密容器内に供給する。
【0013】
任意の実施態様において、圧密容器の吹き出し弁は「使い捨て」タイプであり、好ましくは空気弁である。
【0014】
調製「1.01bar(1atm)の圧力下で混合した場合にガスを放出する・・・」とは、塩が酸と反応し、大気圧(1.01bar)および室温(22℃)でガスである物質を放出することを意味する。このガスを、この圧力またはそれ以上の値の圧力下で水に少なくとも一部溶解させ得る。これはまさに本発明の工程のケースである。ガスの発生は圧密容器内の圧力を上昇させ、容器内に生じたこの圧力下で水に一部溶解する。本発明の工程(d)において、エマルションが容器外の基材に塗布される際に圧力が解放され、溶解したガスがエマルション中に気泡を形成して、エマルションを発泡させる。通常、基材は、第1容器内の圧力よりも低い周囲圧力にある。「周囲圧力」は、水性接着剤を塗布する場所および時の大気圧である。この圧力は、適用場所の高度により、また気候条件により変化する。
【0015】
したがって、本発明の原理は、加圧下で水性接着剤中にガスを溶解させることにある。圧力を維持することで、接着剤が弁を介して圧力容器から出されるまで、接着剤中のガス溶液を安定に保つ。弁を出ると、ガスを溶解した水性接着剤は周囲圧力下に入る。ガス溶液は減圧下では不安定になり、水性接着剤中に気泡を形成し、水性接着剤を発泡体へと変換する。処方の組成(より多いまたはより少ない塩および/酸、発泡調整剤の添加)により、容器内の圧力と大気圧との圧力差を調節することにより、また、弁の開口部の大きさを調節することにより、容易に発泡の程度を制御することができる。したがって、発泡接着剤を極めて制御された状態で基材上に塗布することができ、また安全上の理由で必要以上に接着剤を塗布する必要性はかなり低減される。
【0016】
工程(c)の間および工程(c)の後、塩と酸の反応により、容器内の気相と水相内に溶解したガス量が平衡圧に達するまで、圧密容器内の圧力は上昇する。平衡圧は温度(通常、周囲温度、即ち、15〜30℃)にも依存する。圧密容器内のポリマー水溶液または分散体にかかる気圧は、工程(c)の後22℃で、好ましくは周囲圧力よりも少なくとも20,265kPa(0.2atm)高く、より好ましくは周囲圧力よりも少なくとも60kPa(0.59atm)高い。
【0017】
第1実施態様の第2ポリマー水溶液または分散体の少なくとも一部を、第1ポリマー水溶液または分散体の入った第1容器内へ移すために、第2容器の圧力は第1容器の圧力より低くないことが好ましく、第2容器の圧力が第1容器の圧力より高いことがより好ましい。したがって、第2容器の吸入弁を介して第2容器に圧力をかけるべきである。これは、第2容器の吸入弁と圧縮ガス(例えば、空気、窒素、二酸化炭素)の供給源を接続することにより行い得る。
【0018】
任意の実施態様において、その予定時前に多量のガスが放出することを防止するため、即ち、発生したガス(とりわけ二酸化炭素ガス)を、できるだけ完全に液相中に吸収された状態で保持するために、圧密容器内のポリマー水溶液または分散体に接するガスの(全)圧力を室温(22℃)の推定で、第2容器からの第2ポリマー水溶液または分散体の添加前に、少なくとも60kPa(約0.59atm)の超過圧(周囲気圧との圧力差)に設定することが好ましい。その後、この圧力を維持する。このように、化学反応の結果発生したガス、好ましくは二酸化炭素ガスは、本質的にまたは完全にいかなる相変態することなく、即ち、本質的にまたは完全にいかなる気泡も形成することなく、気相と溶解状態の液相の間で完全に分配される。
【0019】
本発明によれば、混合および適用温度の調節により、発生する気泡の大きさを理想的な大きさ、200〜250ミクロン以下の平均粒子径にでき、本発明によれば、約20〜40%の節約を達成し得る。
【0020】
塩は、好ましくは、発生したガスが以下の特性を有するように選択される:気圧が101,325kPa(1atm)から202,65kPa(2atm)に上昇した場合、20℃での水へのガスの溶解性を少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%増加させる。以下の記載において、用語「ガス」を「ガス状物質」と称する場合がある。その意味は同じである。
【0021】
本発明を実行するためのガス状物質として、二酸化炭素を使用することが明らかに好ましい。二酸化炭素は本発明の溶解性基準を満たし、工程(c)において容易に水性接着剤の水相中に直接生成し得る。発泡接着剤を塗布する際、十分な喚起に気をつけることを要するのみである。
【0022】
第1ポリマー水溶液または分散体中の溶解塩または分散塩は、好ましくは金属炭酸塩またはアンモニウム炭酸塩、または相当する炭酸水素塩、または異なる炭酸塩および/または炭酸水素塩の混合物である。アルカリ土類金属炭酸塩が好ましく、とりわけ炭酸カルシウムが好ましい。塩は、同時に、水性接着剤中で「フィラー」の役割も果たし得る。あるいは、別の観点において、接着剤中のフィラーを本発明の塩の機能を同時に有するようなものから選択してもよい。水に溶解しにくい炭酸カルシウムのような塩を使用する場合、100μm以下、好ましくは5μm以下の平均粒子径(光散乱法による測定)を有する微粉砕として加えることが好ましい。
【0023】
酸は、酸または酸塩が十分に水溶性であって、第1ポリマー水溶液または分散体の塩と反応できる限り、酸性無機酸、例えば硫酸水素ナトリウム、または無機酸、例えば塩酸、硫酸、硝酸などであってよい。
【0024】
あるいは、1種以上の有機酸を使用してもよく、酸がポリマーでない場合1〜6個のカルボン酸基を有する酸が好ましい。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、および/または他の不飽和酸などを含むポリマーまたはコポリマーのようなポリマー酸は、1つのポリマー分子中により多くのカルボン酸基を含む。好ましくは、有機酸は22℃で純粋な固体である。好ましい有機酸は、シュウ酸、クエン酸、乳酸または酒石酸などの二塩基酸または多塩基酸である。
【0025】
第2ポリマー水溶液またはエマルション中の酸の種類およびその量は、好ましくは、このポリマー水溶液またはエマルションのpH値が1〜4の範囲になるよう選択される。
【0026】
好ましい実施態様において、第1および第2ポリマー水溶液または分散体を構成する少なくとも1種のポリマーは、下記のポリマー種からなる群から選択される:
(a)酢酸ビニルのホモポリマーまたはコポリマー、とりわけポリ酢酸ビニル、または酢酸ビニルと、エチレンおよびマレイン酸エステル、好ましくはマレイン酸のブチルエステルから選択される1種または2種のコモノマーとのコポリマー、
(b)例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸から選択される1種以上の不飽和有機酸またはその塩あるいはそのエステルのポリマーまたはコポリマー、
(c)ポリビニルアルコール、
(d)デンプンまたはデキストリン系天然ポリマー
〔上記分類(a)〜(d)のそれぞれを1つの「ポリマー種」と称する〕。
【0027】
1種以上のポリマー種が第1および/または第2ポリマー水溶液または分散体中に存在し得る。例えば、これらのポリマー水溶液または分散体の一方または両方が、酢酸ビニルのホモポリマーまたはコポリマーをポリビニルアルコールとともに、または上述した他のポリマー種とともに含有していてよい。不飽和有機酸のポリマーまたはコポリマー(b)は、同時に第2ポリマー水溶液または分散体中で「酸」としてはたらく。
【0028】
好ましくは、第1および第2ポリマー水溶液または分散体は、少なくとも1種の同じ種のポリマーを有する。例えば、両方のポリマー水溶液または分散体は、酢酸ビニルのホモポリマーまたはコポリマーを、またはポリ酢酸ビニルあるいは上述した他のポリマー種を、単独でまたは上述した他のポリマー種とともに含有し得る。好ましくは、両者がポリ酢酸ビニルを含有する。同じポリマー種を有することは、ポリマーが全く同じであることを必ずしも意味するものではないが、それらは上記で定義した同じ種に属する。
【0029】
好ましい実施態様によれば、第1および第2ポリマー水溶液または分散体の不揮発分(固形分)は、ポリマー水溶液または分散体の総重量に対して30〜70重量%であり、好ましくは40〜60重量%である。ここで「不揮発分」とは、継続的に乾燥して更に重量減少がなくなるまで周囲圧力下に110℃でポリマー水溶液または分散体を乾燥させた後に残存する固形物を意味する。当然、「揮発性物質」は主に水である。
【0030】
第1および第2ポリマー水溶液または分散体の好ましい混合比率は個々の組成に依存し、逆もまた同じである。実用上の理由から、各ポリマー水溶液または分散体の組成を、工程(d)で混合される第1および第2ポリマー水溶液または分散体の重量比が10:1〜1:10の範囲になるように調整することが好ましい。4:1〜1:4、とりわけ2:1〜1:2の比率が好ましい。
【0031】
各ポリマー水溶液または分散体のポリマー含量、とりわけ酢酸ビニルのホモポリマーまたはコポリマーの含量、あるいはアクリル酸塩またはアクリル酸あるいはそれらのエステルのポリマーまたはコポリマーの含量は、水性接着剤の硬化挙動または乾燥挙動に重要である。好ましくは、ポリマー含量は、ポリマー水溶液または分散体の15〜70重量%の範囲である。
【0032】
第1ポリマー水溶液または分散体中の好ましい塩含量、および第2ポリマー水溶液または分散体中の好ましい酸含量は、水性接着剤を塗布する際の所望する発泡挙動に依存する。2つのポリマー水溶液または分散体中の塩および酸のモル比は、例えば塩が炭酸塩の場合、塩中の炭酸イオン1モルにつき酸中の酸基が2モルとなるように選択し得る。他の塩の場合、化学量論比を適宜算出すればよい。塩がガスを発生させる目的のために使用されるだけではなく、最終水性接着剤においてフィラーの目的で使用される場合には、酸に対するその化学量論比を越える相当量の塩を使用する。これにより酸が完全に消費された後に、残りの量の塩が存在する。
【0033】
第1ポリマー水溶液または分散体において、塩として炭酸カルシウムを使用する場合、その量は、第1ポリマー水溶液または分散体の総重量に対して、好ましくは5〜40重量%であり、より好ましくは10〜30重量%である。
【0034】
第2ポリマー水溶液または分散体中の酸の量は、第1ポリマー水溶液または分散体との意図する混合比率、および第1ポリマー水溶液または分散体中の塩の量に依存する。塩および酸の含量が高いほど、水性接着剤の塗布時に形成される気泡は多くなる。実用的指針として、2:1〜1:1の範囲の第1および第2ポリマー水溶液または分散体の混合比率を意図する場合、第1ポリマー水溶液または分散体中の炭酸カルシウム含量が前段落の範囲にある場合、および第2ポリマー水溶液または分散体中の酸がクエン酸である場合、酸含量は、好ましくは第2ポリマー水溶液または分散体の総重量に対して0.5〜4重量%の範囲である。6:1〜5:1の範囲の意図する混合比率に対しては、第2ポリマー水溶液または分散体中の酢酸含量は、第2ポリマー水溶液または分散体の総重量に対して、好ましくは4〜15重量%の範囲、より好ましくは5〜10重量%の範囲である。他の塩および酸に対しては、塩および酸の対応する好ましい濃度を、化学量論により算出することができる。
【0035】
第1および第2ポリマー水溶液または分散体が他の成分を、ポリマー水溶液または分散体の状態の水性接着剤に対して典型的な種類および量含有し得ることは明らかである。例えば、他の錯化剤、例えば、ヘキサメタリン酸塩などのオリゴリン酸塩またはポリリン酸塩、防腐剤、泡安定化剤、(さらなる)フィラー、トリアセチン、着色材、シリカなどのレオロジー調整剤等がある。
【0036】
本発明の方法により発泡される接着剤は、好ましくは表面の固定(すなわち、表面同士の接着)に利用できる。好ましくは表面の少なくとも1つは、吸水性であるか水により湿潤しており、例えば、紙と紙、木材と木材、紙と合成フィルム、木材と金属などに利用できる。しかしながら、水性接着剤に対する乾燥条件が十分に制御される場合、本発明を疎水性表面を接合するためにも使用することができる。
【0037】
別の態様において、本発明は、上記の方法において使用することのできる2成分水性接着剤を包含する。したがって、本発明は、ポリマー水溶液または分散体である2成分発泡性水性接着剤であって、
(a)第1成分が、1.01bar(1atm)の圧力下で、5未満のpH値の酸性溶液と混合した場合にガスを放出する、6以上のpH値を有し、溶解塩または分散塩を含有するポリマー水溶液または分散体であり、
(b)第2成分が、酸を含み、5未満のpH値を有するポリマー水溶液または分散体である
ことを特徴とする接着剤を包含する。
【0038】
本発明の方法において使用し得る2つのポリマー水溶液または分散体の好ましい組成は、本発明の方法に関する先の記載において詳細に記載している。同様の詳細説明が本発明の2成分発泡性水性接着剤自体にも当てはまることから、2成分水性接着剤に関してこれらの詳細をここで繰り返す必要はない。
【実施例】
【0039】
以下の処方を本発明において使用し得る。組成は、全組成に対する重量%で示す。
【0040】
第1ポリマー水溶液または分散体の例:
炭酸カルシウム 22%
ポリ酢酸ビニルエマルション(50%固形分) 47%
ポリビニルアルコール溶液(60%固形分) 8%
防腐剤 0.2%
水: 残り100%まで
pH 7
【0041】
第2ポリマー水溶液またはエマルションの第1例:
ポリ酢酸ビニルエマルション(60%固形分) 80%
トリアセチン 1%
クエン酸 1.6%
防腐剤 0.2%
水: 残り100%まで
pH 2.5〜3.0
【0042】
この第2ポリマー水溶液またはエマルションを第1ポリマー水溶液または分散体と、重量比(第1:第2)1:1〜2:1で混合する。
【0043】
第2ポリマー水溶液またはエマルションの第2例:
ポリ酢酸ビニルエマルション(60%固形分) 72%
トリアセチン 5%
クエン酸 7%
防腐剤 0.2%
水: 残り100%まで
pH 1.5〜2.5
【0044】
この第2ポリマー水溶液またはエマルションを第1ポリマー水溶液または分散体と、重量比(第1:第2)5:1〜6:1で混合する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー水溶液または分散体である発泡性水性接着剤の塗布方法であって、
(a)1.01bar(1atm)の圧力下で、5未満のpH値の酸性溶液と混合した場合にガスを放出する、6以上のpH値を有し、溶解塩または分散塩を含有する第1ポリマー水溶液または分散体を第1容器に準備すること、
(b)酸を含有し、5未満のpH値を有する第2ポリマー水溶液または分散体を第2容器に準備すること、
(c)第1ポリマー水溶液または分散体と第2ポリマー水溶液または分散体を、吹き出し弁を有する圧密容器内で混合すること、
(d)水性接着剤を形成する混合したポリマー水溶液または分散体を、圧密容器から吹き出し弁を介して基材上へ第1容器内の圧力より低い圧力により放出し、それにより工程(c)の間および工程(c)の後に溶解塩または分散塩から放出されたガスが、弁を抜け出たポリマー水溶液または分散体中に気泡を形成し、ポリマー水溶液または分散体を発泡させること
を特徴とする方法。
【請求項2】
(a)1.01bar(1atm)の圧力下で、5未満のpH値の酸性溶液と混合した場合にガスを放出する、6以上のpH値を有し、溶解塩または分散塩を含有する第1ポリマー水溶液または分散体を、吸入弁および吹き出し弁を備えた第1容器に準備すること、
(b)酸を含有し、5未満のpH値を有する第2ポリマー水溶液または分散体を、吸入弁および吹き出し弁を備えた第2容器に準備すること、
(c)第2容器の吹き出し弁を介して、第1容器の吸入弁と第2容器とを連結し、第2容器の吸入弁に第1容器内の圧力と同等かそれ以上の圧力をかけ、少なくとも一部の第2ポリマー水溶液または分散体を、第1ポリマー水溶液または分散体を含む第1容器内に第1容器の吸入弁を介して移すこと、
(d)水性接着剤を形成する、第1容器内の混合したポリマー水溶液または分散体を、圧密容器から吹き出し弁を介して基材上へ第1容器内の圧力より低い圧力により放出し、それにより工程(d)の間および工程(d)の後に溶解塩または分散塩から放出されたガスが、弁を抜け出たポリマー水溶液または分散体中に気泡を形成し、ポリマー水溶液または分散体を発泡させること
を特徴とし、
第1容器と第2容器の中身を入れ替えることができる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(c)において、第1および第2ポリマー水溶液または分散体をそれぞれの容器から取り出し、静的ミキサーにより混合し、吹き出し弁を有する第3圧密容器に供給し、
(d)水性接着剤を形成する混合したポリマー水溶液または分散体を、圧密容器から吹き出し弁を介して基材上へ第1容器内の圧力より低い圧力により放出し、それにより工程(c)の間および工程(c)の後に溶解塩または分散塩から放出されたガスが、弁を抜け出たポリマー水溶液または分散体中に気泡を形成し、ポリマー水溶液または分散体を発泡させること
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(c)の間および工程(c)の後に溶解塩または分散塩から放出されるガスが二酸化炭素であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
第1ポリマー水溶液または分散体の溶解塩または分散塩が、金属炭酸塩またはアンモニウム炭酸塩、好ましくはアルカリ土類金属炭酸塩であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第2ポリマー水溶液または分散体のpH値が、工程(c)の実行前に、1〜4の範囲であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
第1ポリマー水溶液または分散体および第2ポリマー水溶液または分散体の少なくとも1つに含まれるポリマーが、以下の型のポリマー:
(a)酢酸ビニルのホモポリマーまたはコポリマー、
(b)1種以上の不飽和有機酸またはその塩あるいはそのエステルのポリマーまたはコポリマー、
(c)ポリビニルアルコール
(d)デンプンまたはデキストリン系天然ポリマー
からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
第1ポリマー水溶液または分散体と第2ポリマー水溶液または分散体が、少なくとも1種の同じ種のポリマーを含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第1ポリマー水溶液または分散体と第2ポリマー水溶液または分散体の固形分が、30〜70重量%であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
工程(c)で混合される第1ポリマー水溶液または分散体と第2ポリマー水溶液または分散体の重量比が、10:1〜1:10の範囲にあることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
表面を接合するための、請求項1〜10のいずれかに記載の方法により作られた接着剤の使用。
【請求項12】
ポリマー水溶液または分散体である2成分発泡性水性接着剤であって、
(a)第1成分が、1.01bar(1atm)の圧力下で、5未満のpH値の酸性溶液と混合した場合にガスを放出する、6以上のpH値を有し、溶解塩または分散塩を含有するポリマー水溶液または分散体であり、
(b)第2成分が、酸を含み、5未満のpH値を有するポリマー水溶液または分散体である
ことを特徴とする接着剤。

【公表番号】特表2012−528740(P2012−528740A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513478(P2012−513478)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056826
【国際公開番号】WO2010/139362
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】