説明

水性溶媒を使用するベンゾオキサジンの製造方法

【課題】
水性溶媒を使用してベンゾオキサジンを製造する。
【解決手段】
反応溶媒として水、および任意で有機溶媒を使用して、フェノール化合物、アルデヒド化合物、およびジアミノアルキレン化合物(例えば、メチレンジアミン)などの第一ジアミン化合物、またはジアミノアリーレン化合物(例えば、フェニレンジアミン)のいずれかから、ベンゾオキサジンモノマーおよびベンゾオキサジンオリゴマーなどのベンゾオキサジン化合物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール化合物、アルデヒド化合物、およびジアミノアルキレン化合物(例えば、メチレンジアミン)などの第一ジアミン化合物、またはジアミノアリーレン化合物(例えば、フェニレンジアミン)のいずれかから、ベンゾオキサジンモノマーおよびベンゾオキサジンオリゴマーなどのベンゾオキサジン化合物を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般式:
【0003】
【化1】

(式中、pは2であり、Yは、ビフェニル、ジフェニルメタン、ジフェニルイソプロパン、ジフェニルスルフィド、ジフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホン、およびジフェニルケトンから選択され、Rは、水素、ハロゲン、アルキルおよびアルケニルから選択される。)
で表されるベンゾオキサジンは、通常、フェノール化合物、アルデヒド化合物およびアルキルアミンを反応させることによって製造される。この反応は、溶媒のない条件下、またはトルエン、ジオキサン、アルコール、ジエチルエーテルなどの溶媒中で実施することが知られている。
【0004】
米国特許第5,543,516号明細書(Ishida;特許文献1)には、ベンゾオキサジン化合物を製造するための方法が開示されており、この方法では、フェノール化合物、第一アミン、およびアルデヒドを含有する反応混合物を別の溶媒を使用せずに調製し、この反応物が化学的に結合(化合)する温度にまで加熱し、その温度に維持して、ベンゾオキサジン化合物を生成すると報告されている。Ishidaは、ベンゾオキサジンを生成する先行技術の方法は反応物を溶解するのにかなりの量の溶媒を必要とし、反応時間が長くなることを指摘している。Ishidaの第3欄、43−52行。無溶媒系は、反応混合物を溶媒和するために、少なくとも1つの反応物が液体であることを必要とする。すべての反応混合物が液体の反応物を含むとは限らないので、無溶媒系は普遍的に適当であるとは言えない。
【0005】
中国特許出願公開第1451679号明細書(Gu;特許文献2)は、RTM用途のための変性ベンゾオキサジン樹脂に関するものであり、過去において、ベンゾオキサジン樹脂は、有機溶媒、例えば、トルエン、ジオキサンおよびジメチルベンゼンを使用して合成されてきたことを開示している(中国特許出願第94111852.5号を引用して)。しかしながら、中国特許出願公開第1451679号明細書では、トルエンが実施例で使用された唯一の溶媒である。
【0006】
ベンゾオキサジンは現在、Huntsman Specialty Chemicals(Brewster、New York)、Georgia−Pacific Resins Inc.、および四国化成工業株式会社(千葉、日本)など、いくつかの商業的供給源から入手でき、そのうち、四国化成工業株式会社は、中でも、B−a、B−m、F−a、C−aおよびF−aベンゾオキサジン樹脂を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,543,516号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第1451679号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの公知の合成方法、およびいくつかの市販のベンゾオキサジンには不十分な点がある。例えば、合成で使用される有機溶媒のいくつかは毒性があるか、または環境上有害であり、従って、商業的方法で使用するには一般に望ましくない。実際、特定の溶媒の使用に規制が加えられたり、さらには特定の溶媒の使用が完全に禁止されていたりすることがある。他の溶媒、一般に安全であると考えられているものは、一部のベンゾオキサジン化合物の劣化および/または早期の重合が起こるような高い温度で除去しなければならず、そのようなベンゾオキサジンを使用した硬化性組成物の性能を損なうことになる。
【0009】
公知の合成方法は、通常、所望の反応を実施し、反応生成物を分離、精製するために比較的長い処理時間、すなわち少なくとも数時間を要する。最終生成物の精製は、多くの場、さらに時間を要し、通常、煩雑である。特に、ベンゾオキサジンを製造するための公知の商業的方法で使用される多くの一般的な溶媒は毒性の危険性があり、高コストの溶媒回収システムの設置や、廃棄物処理など、溶媒を除去するための費用のかかる手段を必要とすることがある。
【0010】
最近、Henkel Corporationは、親会社のHenkel AG&Co.KGaA(Dusseldorf、Germany)と共に、改良されたベンゾオキサジンの合成方法を発明した(例えば、国際特許出願PCT/US2007/024519号を参照されたし。)。その合成方法は、アルキルアセテート溶媒中に、反応物としてフェノール成分、第一アミン成分、およびアルデヒド成分を含有する反応混合物を製造し、この反応物および溶媒を、反応物が化学的に結合(化合)する温度にまで加熱し、ベンゾオキサジンを生成するのに充分な時間、その温度に維持するものである。この合成方法ではトルエンやジオキサンのような有害な溶媒を使用する必要がなくなるが、さらに揮発性の低い有機溶媒を使用してベンゾオキサジンを製造できれば望ましいことである。
【0011】
適当な反応溶媒は、下記の特性の少なくともいくつかを有するものである。反応溶媒は、反応条件および反応物に対して不活性であり、適当な沸点を有し、反応の終了時に容易に除去できることが好ましい。
【0012】
溶媒は通常、3つの一般的なカテゴリー:
水などの「極性プロトン性」溶媒、
エチルアセテートなどの「双極性非プロトン性」溶媒、および
トルエンなどの「非極性」溶媒
に分類される。
【0013】
さらに、ベンゾオキサジン生成反応において使用する溶媒には特別な考慮が必要である。例えば、ジアミン出発原料と共に有機溶媒を使用すると、溶解性が低いために、固体が生成することが知られている。実際、Ishidaは、芳香族ジアミン系ベンゾオキサジンの合成は一般に、多くの芳香族ジアミンが、ベンゾオキサジンの製造に好適に使用される溶媒への溶解性が低いことにより妨げられていることを認めている(Polymer,vol.50,pp.5940−5944(2009))。また、ジアミンとホルムアルデヒドの縮合反応による安定なトリアザ網目構造の形成も、ベンゾオキサジンを生成するために続く反応を抑制する。さらに、それ以外の副反応の縮合反応もかなり起こりうる。これらの要因のすべてが、芳香族ジアミン系ベンゾオキサジンの製造を困難にしていた。
【0014】
例えば、非極性溶媒であるトルエンを使用するベンゾオキサジンの合成は、トルエンは減圧下でも沸点が高いために、トルエン溶媒をベンゾオキサジン生成物から除去するためには高温が必要とされる。しかしながら、このような高温条件下ではベンゾオキサジン生成物がいくらか揮発するので、ベンゾオキサジン生成物も除去することなく、トルエン溶媒をベンゾオキサジン生成物から完全に分離することはできない。さらに、トルエンを除去するために必要な高い温度は、早期の重合、開環、および粘度の上昇とともに、ベンゾオキサジンの劣化をもたらすことがある。
【0015】
双極性非プロトン性溶媒であるエチルアセテートを使用するベンゾオキサジンの合成は、トルエンに比べて改善されているが、多くの場合、望ましくない固体が生成し、その固体は濾過によって除去できるが、それは望ましくないことがある。濾過は、時間、労力、コストがかかり、また全体の収率を低下させることがある。
【0016】
このように、ベンゾオキサジンの製造のための代替となる溶媒が望まれており、その特性としては生成物の分離が容易であること、毒性が低いことが挙げられる。上記の溶媒類は、記載した理由でベンゾオキサジンの商業的合成には適さないと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、(a)フェノール化合物、ジアミン化合物、アルデヒド化合物、水、および任意で有機溶媒を混合して反応混合物を形成するステップ、および(b)ベンゾオキサジンを生成するのに充分な時間、前記反応混合物を加熱するステップ、を含むベンゾオキサジンを製造する方法に関する。また、この方法によって合成したベンゾオキサジンも本発明の範囲内である。
【発明の効果】
【0018】
驚くべきことに、ベンゾオキサジンは、モノマーおよびオリゴマーの両方とも、反応溶媒として水を使用して製造できることが見いだされた。本発明の方法は、任意で、有機溶媒を使用してもよい。水は、その無害性のために、最も望ましい反応溶媒であると当業者には考えられている。それにもかかわらず、今まで、主たる溶媒として水を使用するベンゾオキサジンの合成方法は知られていなかった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ベンゾオキサジンは、それ自体は、当該技術分野で公知であり、あらゆる公知のベンゾオキサジンを本発明の方法に従って製造することができる。例えば、本発明のベンゾオキサジンとしては、下記のモノマー構造:
【0020】
【化2】

(構造中、pは2であり、Yは、ビフェニル、ジフェニルメタン、ジフェニルイソプロパン、ジフェニルスルフィド、ジフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホン、およびジフェニルケトンから選択され、Rは、水素、ハロゲン、アルキルおよびアルケニルから選択される。)
によって表されるものが挙げられる。
【0021】
ベンゾオキサジン成分は、多官能ベンゾオキサジンと単官能ベンゾオキサジンの組み合わせを含むことができ、また、1種以上の多官能ベンゾオキサジンの組み合わせ、または1種以上の単官能ベンゾオキサジンの組み合わせであってもよい。
【0022】
本発明に従って製造できる単官能ベンゾオキサジンの例としては、下記の構造:
【0023】
【化3】

(構造中、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどのアルキル、または、置換可能なサイトの1つで、いくつかで、またはすべてで置換されているか、または置換されていないアリールであり、Rは、水素、ハロゲン、アルキルおよびアルケニルから選択される。)
によって表されるものが挙げられる。
【0024】
例えば、単官能ベンゾオキサジンとしては、構造:
【0025】
【化4】

(構造中、Rは、アルキル、アルケニル(それらは置換されていてもよく、または1つ以上のO、N、S、C=O、COO、およびNHC=Oを含んでいてもよい。)、およびアリールから選択され、mは、0−4であり、R−Rは、それぞれ独立に、水素、アルキル、アルケニル(それらは置換されていてもよく、または1つ以上のO、N、S、C=O、COOH、およびNHC=Oを含んでいてもよい。)、およびアリールから選択される。)
によって表されるものが挙げられる。
【0026】
そのような単官能ベンゾオキサジンの具体例は:
【0027】
【化5】

(ここで、Rは、上記で定義される通りである。)、または
【0028】
【化6】

である。
【0029】
本明細書で用いる場合、「ベンゾオキサジンモノマー」は、1つまたは2つのベンゾオキサジン構成単位を含むベンゾオキサジンの単一分子を意味する。本明細書に記載された方法に従って製造できる1つの好ましいベンゾオキサジンモノマーは:
【0030】
【化7】

である。他のモノマーは、ベンゾオキサジン合成反応で使用するアミン化合物、フェノール化合物、またはアルデヒド化合物を変えて、本明細書に記載された方法に従って製造することができる。
【0031】
本明細書で用いる場合、「ベンゾオキサジンオリゴマー」は、ベンゾオキサジン繰り返し単位を含むベンゾオキサジン分子を意味する。本発明の典型的な実施形態では、ベンゾオキサジン繰り返し単位の数は、3から約20、好ましくは3から10である。
【0032】
本発明では、反応物を水中で混合して、反応混合物を形成する。有機溶媒は、任意で、反応混合物に添加してもよい。有機溶媒を添加すると、反応混合物の粘度が劇的に低下し、それにより、反応の進行およびベンゾオキサジン生成物の精製が容易になることがある。有機溶媒は、ベンゾオキサジンの合成に使用される前記の有機溶媒のいずれであってもよい。有機溶媒は、アルキルアセテート(CHC(O)OC1−10アルキル)であることが好ましい。最も好ましい実施形態では、この溶媒はエチルアセテートである。
【0033】
有機溶媒が使用される場合、それは反応混合物の少量を占める。有機溶媒が使用される場合、例えば、有機溶媒は反応混合物の約1重量%から約10重量%を占める。有機溶媒は、好ましくは反応混合物の約1重量%から約5重量%を占めることができる。有機溶媒が、反応混合物の約1重量%から約3重量%を占めることがさらに好ましい。本明細書で用いる場合、「約」は、記載された値の±10%の範囲を意味する。
【0034】
ベンゾオキサジンを生成するために採用される反応温度は、使用する成分の種類によって変化するが、適当な温度は当業者であれば決めることができる。一般に、反応は室温より高く、約150℃より低い温度で実施される。反応温度は約100℃以下が好ましく、約50℃から約100℃の間の温度がより好ましい。特に好ましい反応温度は、約90℃±5℃である。
【0035】
本発明の方法は、一般に、大気圧下で実施される。しかしながら、高圧下で実施することもできる。そのような圧力は当業者であれば決めることができる。例えば、約100psiまでの圧力を本発明の方法において採用することができる。
【0036】
反応時間は、反応物の種類および反応条件に依存する。当業者は反応の進行をモニターし、反応が充分に進行して所望量のベンゾオキサジンが製造した時点を決定することができる。通常、約15分から約30分の反応時間が採用されるが、ある実施形態では、反応は約10時間要することがある。他の実施形態では、反応は約4時間、または約5時間要することがある。
【0037】
必要な反応物の量(相対量)は、それらの化学的性質、例えば、反応に関与する反応性基の数に依存する。化学量論は当業者には明らかであり、必要な反応物の相対量は、反応させる化合物の官能価に応じて、容易に選択される。
【0038】
ある実施形態では、反応混合物に触媒を添加することが望ましいことがある。ベンゾオキサジンの合成に使用される触媒は、一般に、塩基性であり、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。
【0039】
ベンゾオキサジンを生成するのに充分な時間が経過した後、反応混合物を冷水に注入することができる。一般に、これによって、ベンゾオキサジン生成物が沈澱する。固体を水で洗浄し、次いで乾燥して最終生成物を製造することができる。この方法は、従来のベンゾオキサジンの合成方法よりも著しく煩雑でなく、時間がかからない。
【0040】
あるいは、ベンゾオキサジンを生成するのに充分な時間が経過した後、反応混合物を水および/または塩基水溶液、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液などで洗浄することもできる。
【0041】
本発明の方法は、当該技術分野で従来公知のすべてのベンゾオキサジンの合成に使用することができる。したがって、本発明の方法で使用されるアルデヒド化合物は、ベンゾオキサジンの合成に使用する、従来公知のすべてのアルデヒド化合物であることができる。好ましいアルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、例えば、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレン、および、一般式:R(CHO)x(ここで、Rは、C−C10アルキルまたはシクロアルキルであり、xは、例えば、1、2、または3である。)で表されるアルデヒド、ならびに、そのようなアルデヒドの混合物が挙げられる。
【0042】
さらに、ベンゾオキサジンの合成に使用する、従来公知のすべてのフェノール化合物を本発明の方法で使用することができる。例えば、フェノール、クレゾール、2−ブロモ−4−メチルフェノール、2−アリルフェノール、1,4−アミノフェノールなどの1官能性フェノールを使用することができる。適当な2官能性フェノールとしては、フェノールフタレイン、ビフェノール、4−4’−メチレン−ジ−フェノール、4−4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビスフェノール−A、1,8−ジヒドロキシアントラキノン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−ジヒドロキシアゾベンゼン、レゾルシノール、フルオレンビスフェノールなどが挙げられる。適当な3官能性フェノールとしては、1,3,5−トリヒドロキシベンゼンなどが挙げられる。
【0043】
ベンゾオキサジンの合成に使用する、従来公知のすべてのジアミン化合物を本発明の方法で使用することができる。例えば、適当な化合物としては、メチレンジアミンなどのジアミノアルキレン化合物、およびフェニレンジアミンなどのジアミノアリーレン化合物が挙げられる。例えば、米国特許第5,503,936号明細書(Blyakhman)には、エポキシ樹脂、硬化剤または加硫剤、および下記の式:
【0044】
【化8】

(式中、EおよびTは、1つまたは2つのC1−4基によって置換されている、または置換されていないC5−12アルキル、C5−8シクロアルキル、C7−15フェニルアルキル、またはC6−10アリールである。)
で表される化合物を2.5〜12.5重量%含む硬化性変性エポキシ樹脂組成物が開示されている。さらに、Flexsys America(Akron、Ohio)、住友化学(大阪、日本)、およびChemtura Corporation(Waterbury、Connecticut)などの多くの供給会社がフェニレンジアミン型の抗酸化剤を販売しており、それらは酸化、劣化、または早期の重合を抑制することがある。米国特許第6,723,763号明細書(Zhu)には、下記の構造I:
【0045】
【化9】

(式中、RおよびRは同じであっても、異なっていてもよく、C1−12アルキル、C1−12アルケニル、C5−12シクロまたはビシクロアルキル、C6−18アリール、およびそれらの誘導体から選択され、RおよびRは同じであっても、異なっていてもよく、水素、C1−12アルキル、C1−12アルケニル、C5−12シクロまたはビシクロアルキル、C6−18アリール、およびそれらの誘導体から選択され、
【0046】
【化10】

は、C6−18アリーレン、およびそれらの誘導体、およびそれらの酸化型である。)
で表される化合物が開示されている。
【0047】
この構造Iには、本発明において使用することができる様々な材料が包含され、例えば、下記の構造II:
【0048】
【化11】

(式中、XはNH、OまたはSであり、R、R、R、およびRは、構造Iに関して上記で定義される通りである。)
で表される芳香族ジアミンがある。
【0049】
また、構造III:
【0050】
【化12】

(式中、Rは、構造Iに関して上記で定義される通りである。)
で表される化合物も本発明の範囲内である。
【0051】
さらに、構造IIIの酸化型(構造IIIaとして下記に示す。)で表される化合物も本発明の範囲内である。
【0052】
【化13】

【0053】
下記の構造IIIbのN−2−ペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンは構造IIIの範囲内であり、これを使用することもできる。
【0054】
【化14】

【0055】
このフェニレンジアミンは、FLEXZONE 7Lの商品名でUniroyal Chemical Co.から市販されている。
【0056】
構造IIIの範囲内の他の化合物の具体例としては、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−シクロへキシル−p−フェニレンジアミン、ジアリール−p−フェニレンジアミン混合物、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−p−トルエンスルホニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−アルキル−p−フェニレンジアミン、ジアルキル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−シクロへキシル−1−エチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ(sec−ヘキシル)−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N−(sec−ヘキシル)−N’−(sec−アルキル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、2,4,6−トリス(N−アルキル−p−フェニレンジアミノ)−1,3,5−トリアジン、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。米国特許第5,252,737号明細書(Stern)、同4,297,269号明細書(Merten)、同5,126,385号明細書(Wheeler)、および同5,068,271号明細書(Wheeler)を参照されたし。
【0057】
構造Iの範囲内のより具体的な材料としては、さらに、構造IV:
【0058】
【化15】

(式中、RおよびRは、1つまたは2つのC1−4基で置換されているか、または置換されていないC5−12アルキル、C5−8シクロアルキル、C7−15フェニルアルキル、またはC6−10アリールである。)
で表される化合物が挙げられる。
【0059】
さらに、下記の化合物を使用することができる。
【0060】
【化16】

【0061】
構造Vの化合物(UNILINK 7100)は、N,N’−ビス−4−(5−メチル−2−ブチル)−p−フェニレンジアミンであり、構造VIの化合物(UNILINK 4100)は、N,N’−ビス−4−(2−ブチル)−p−フェニレンジアミンであり、構造VIIの化合物(UNILINK 4102)は、N,N’−ビス−4−(2−メチルプロピル)−o−フェニレンジアミンである。
【0062】
他の市販されているフェニレンジアミン硬化促進剤としては、SANTOFLEXの商品名でPlexysysから市販されているもの、例えば、SANTOFLEX 77PDおよびSANTOFLEX 715PDが挙げられ、後者は、
【0063】
【化17】

N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(CAS番号793−24−8)(SANTOFLEX 6PPDおよびFLEXZONE 7とも呼ばれる)、
【0064】
【化18】

N−フェニル−N’−(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン(CAS番号3081−01−4)、および
【0065】
【化19】

N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン(CAS番号3081−14−9)(FLEXZONE 4LおよびSANTOFLEX 77PDとも呼ばれる)の混合物である。
【0066】
市販されているフェニレンジアミンは、下記の商品名のもの:
住友化学から市販されているSUMILIZER、例えば、BPA、BPA−M1、4Aおよび4Mや、
Cromptonから市販されているUOP、例えば、UOP12、UOP5、UOP788、UOP288、UOP88、UOP26、UOP388、UOP588、UOP36およびUOP688を挙げることができる。
【0067】
さらに、下記の構造VIII:
【0068】
【化20】

(構造中、R、RおよびRは、それぞれ独立に、アルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、およびそれらの置換型から選択され、あるいは一緒になって飽和または不飽和環を形成し、前記環はヘテロ原子を含んでいても、含まなくてもよく、置換されていても、置換されていなくてもよく、ここでRおよびRの少なくとも1つはHであり;RおよびRは、それぞれ独立に、−C(=X)−RまたはArから選択され、ここでRは、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリールおよびそれらの置換型から選択され、Arは芳香族環であり、XはO、S、NR、CR、またはCRNRであり、ここでR、RまたはRは、それぞれ独立に、アルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリールおよびそれらの置換型から選択され、RおよびRの少なくとも1つは、XがNRまたはCRNRである−C(=X)−Rであり、RおよびRは、それぞれ独立に、上記で定義される通りである。)
で表される化合物として定義され、少なくとも5つの環原子を有する炭素環から形成されるエナミン単位を有する化合物。例えば、
【0069】
【化21】

【0070】
他の化合物としては、Huntsman Corporation(Houston、TX)からJEFFAMINEの商品名で市販されているもの、例えば、JEFFAMINE D−230、JEFFAMINE D−400、JEFFAMINE D−2000、JEFFAMINE T−403、JEFFAMINE ED−600、JEFFAMINE ED−900、JEFFAMINE ED−2001、JEFFAMINE EDR−148、JEFFAMINE XTJ−509、JEFFAMINE T−3000、JEFFAMINE T−5000、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0071】
本明細書で数値の範囲が記載されている場合、特に明記しない限り、その範囲はそれらの端点、範囲内のすべての整数および分数を含むものである。範囲を定義している場合、記載された特定の値に本発明の範囲が限定されるということではない。さらに、本明細書で記載されたすべての範囲は、具体的に記載された特定の範囲のみならず、記載された下限値および上限値を含めて、その範囲内の値のあらゆる組み合わせも含むものである。同様に、数値が先行詞「約」を使用して近似で表現されている場合、その特定の値は他の実施形態も形成するものである。
【0072】
特に定義されていない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で記載されたものと類似または均等の方法および材料は、本出願の実施形態を実施または試験するのに使用することができるが、適当な方法および材料が本明細書に記載されている。本明細書に記載されたすべての公報、特許出願、特許、および他の文献は、特定の一節が記載されていなければ、その全部を参照により本明細書に組み込む。さらに、材料、方法、および例は単なる例示であって、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0073】
(例1)
6g(0.2モル)のパラホルムアルデヒド、20mlのエタノール、0.1gのNaOHを溶液が透明になるまで40℃で1時間反応させた。この混合物を14℃に冷却した。20mlのトルエンおよび9.98g(0.05モル)のMDAを添加し、15℃で1時間反応させた。次いで、20mlのトルエンおよび9.4g(0.1モル)のフェノールを添加し、混合物を80℃に加熱し、5時間還流した。冷却後、相分離させた。上の水層を除去した。淡黄色のベンゾオキサジン−トルエン溶液を得た。閉環の割合は、>70%である。(CN94111852.5を参照されたし)
(例2)
52gのフェノール、55gのMDA、39gのパラホルムアルデヒド、234gの水、および10gのエチルアセテートを室温で反応容器に加えた。少量の触媒である塩基(NaOH)を添加し、反応混合物を90−95℃の温度で4時間維持した。約60重量%の水および3重量%のエチルアセテートが使用されている。粗生成物を冷水中に注ぎ込み、粉末の形態で沈澱させた。得られた粉末を数回温水で洗浄し、真空オーブン中で乾燥した。分析:モノマー33.2%、フェノール1.1%、閉環77%、揮発物0.57%、DSC開始202℃、DSCピーク223℃。
モノマーの構造:
【0074】
【化22】

【0075】
(例3)
95gのパラホルムアルデヒド、150gのMDAおよび211gの水を室温で反応容器に加えた。少量の触媒である塩基(NaOH)を触媒として使用して、反応を室温で3時間維持して行った。次いで、30gのエチルアセテートを添加し、混合物を55℃にゆっくりと加熱した。138gのフェノールを加え、反応を85−90℃で4時間保持して行った。約34重量%の水および5重量%のエチルアセテートを使用している。粗生成物を冷水中に注ぎ込み、粉末の形態で沈澱させた。得られた粉末を数回温水で洗浄し、真空オーブン中で乾燥した。分析:モノマー40.5%、フェノール1.45%、閉環80%、揮発物0.92%、DSC開始211℃、DSCピーク226℃。
モノマーの構造:
【0076】
【化23】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フェノール化合物、ジアミン化合物、アルデヒド化合物、水、および任意で有機溶媒を混合して反応混合物を形成するステップ、および
(b)ベンゾオキサジンを生成するのに充分な時間、前記反応混合物を加熱するステップ、
を含むベンゾオキサジンを製造する方法。
【請求項2】
前記反応混合物が、有機溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機溶媒の量が、前記反応混合物の約1重量%から約10重量%である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
有機溶媒の量が、前記反応混合物の約1重量%から約5重量%である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
有機溶媒の量が、前記反応混合物の約1重量%から約3重量%である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記有機溶媒が、アルキルアセテートである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記有機溶媒が、エチルアセテートである、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記反応混合物が、さらに触媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒が、塩基である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、またはそれらの混合物である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
さらに、ステップ(b)の後、前記反応混合物を水に注入するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
さらに、前記ステップ(b)の反応混合物を塩基水溶液で洗浄するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
さらに、前記ステップ(b)の反応混合物を水で洗浄するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記反応混合物を100℃以下の温度で加熱する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記反応混合物を90℃±5℃の温度で加熱する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ベンゾオキサジンを生成するのに充分な時間が、5時間以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記フェノール化合物が、フェノール、クレゾール、2−ブロモ−4−メチルフェノール、2−アリルフェノール、1,4−アミノフェノール、フェノールフタレイン、ビフェノール、4−4’−メチレン−ジ−フェノール、4−4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビスフェノール−A、1,8−ジヒドロキシアントラキノン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−ジヒドロキシアゾベンゼン、レゾルシノール、フルオレンビスフェノール、または1,3,5−トリヒドロキシベンゼンである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記アルデヒド化合物が、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、またはポリオキシメチレンである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法で製造された、ベンゾオキサジン。

【公開番号】特開2012−67101(P2012−67101A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207488(P2011−207488)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(500538520)ヘンケル コーポレイション (99)
【氏名又は名称原語表記】HENKEL CORPORATION
【Fターム(参考)】