説明

水性着色材料及び粉末状着色材料

【課題】 平均粒径が小さく且つ粒径分布が狭く、保存安定性に優れる、ポリマーと染料とを組み合わせたポリイオンコンプレックスの微粒子からなる水性着色材料、及びこれを乾固して得られる粉末状着色材料を提供すること。
【解決手段】 エポキシ樹脂残基(A)とカチオン性の親水性ポリマーセグメント(B)とノニオン性の親水性ポリマーセグメント(C)とを有する高分子化合物(I)と、アニオン性基を有する着色性化合物(II)とを含有することを特徴とする水性着色材料、及び高分子化合物(I)中のエポキシ樹脂残基(A)部分が水性媒体中で疎水会合したコロイド状の水性着色材料を乾固して得られることを特徴とする粉末状着色材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性着色材料及び粉末状着色材料に関し、より詳しくは、インクジェット用インク等の水性インク、カラーフィルターなどの表示用部材、自動車用塗料等の各種塗料に好適に用いる事ができる水性着色材料、及びそれを乾固して得られる粉末状着色材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、染料の有する色の多様さ・色彩の鮮明・彩度の高さを損なわずに、顔料の有する耐水性・耐光性を具備させる手法として、相互に逆の電荷を持つポリマーと染料とを組み合わせ、これらを静電気的な力で引き合あせると同時に、染料分子の持つ大きく広がったπ電子平面同士の相互作用でスタッキングを起こさせ、ポリイオンコンプレックス(PIC)とする手法が知られてきた。このようにして得られるPICは結晶性を有し、染料の弱点である滲みを防止し、耐光性、耐水性、耐ガス性などを向上させ得る手段である。例えば、カチオン性のポリマーとアニオン性の染料との、両方の水溶液を混合すると、カチオン部分とアニオン部分とが電荷を打ち消しあって疎水性となり、非水溶性のPICの固体を得ることが出来る(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、前記非特許文献1で提案されている非水溶性のPIC固体は、水中で容易に沈殿するため、これを水性着色材料として使用する場合には、顔料分散と同様に、別途合成した分散樹脂を添加して、強いせん断力をかけて粉砕しながら樹脂を吸着させる必要があり、大幅な設備投資・無用な動力を必要とし、解決策が求められている。
【0004】
前記課題を解決する手段として、例えば、イオン性の親水性ポリマー単位と非イオン性の親水性ポリマー単位とを有するブロック共重合体又はグラフト共重合体と、イオン性基を有する着色性化合物とからなる水性着色材料が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
前記特許文献1で提案された手法により、平均粒径が小さい分散体が得られ、上述の装置を用いなくても水性着色材料が得られるものの、PIC同士の融着によると考えられる粗大粒子が発生することから、その粒径分布幅が広く、色材として使用するときに適正な粒径を有する部分が少ないために歩留まりが悪く、また、塗膜としたときのブツの発生要因や、塗装装置のヘッド部のつまりを引き起こす可能性があり、更に保存中にも該融着を起こすため、保存安定性も悪く、実用化するにはいまだに問題を残している。
【0006】
【非特許文献1】C.F.J.Faul,M.Antonietti,Chem.Eur.J.,2002年、12巻、2764〜2768頁
【特許文献1】特開2005−036039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記実状に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、その平均粒径が小さく且つ粒径分布が狭く、保存安定性に優れる、ポリマーと染料とを組み合わせたPICの微粒子からなる水性着色材料、及びこれを乾固して得られる粉末状着色材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明者らは、鋭意検討を行ったところ、水性媒体中で、特定の疎水性コア部と、カチオン性の親水性ポリマーセグメントとノニオン性の親水性ポリマーセグメントを有するシェル部とを有する微粒子を形成することが可能な高分子化合物と、アニオン性基を有する着色性化合物とを組み合わせると、粒径分布幅の狭いポリイオンコンプレックスからなる微粒子が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、エポキシ樹脂残基(A)とカチオン性の親水性ポリマーセグメント(B)とノニオン性の親水性ポリマーセグメント(C)とを有する高分子化合物(I)と、アニオン性基を有する着色性化合物(II)とを含有することを特徴とする水性着色材料、及び該水性着色材料を乾固してなる粉末状着色材料を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、耐水性、耐光性、着色性、分散安定性、保存安定性に優れ、かつ粒径分布幅が狭い、PICからなる水性着色材料を与えることができる。該水性着色材料は、染料と顔料とのそれぞれの問題点を解決するものであって、取り扱いやすく、インクジェット用インクをはじめ、水性塗料、印刷用水性インク、ペンキ等に好適に使用することが出来る。また光デバイス関連の素材として、光配向膜、カラーフィルター等にも好適に使用することができる。更に、本発明の水性着色材料は、水性媒体中では高分子化合物の疎水性の部分が相互に会合してコア部を形成し、親水性部分がシェル部となったコロイド状で安定化しており、これを乾固することによって、容易に粉末状の着色材料を得ることが出来る。この着色材料は、水性媒体への再分散性に優れ、水性塗料等への応用に好適に用いる事が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の水性着色材料は、エポキシ樹脂残基(A)とカチオン性の親水性ポリマーセグメント(B)とノニオン性の親水性ポリマーセグメント(C)とを有する高分子化合物(I)と、アニオン性基を有する着色性化合物(II)とを含有することを特徴とする。
【0012】
[エポキシ樹脂残基(A)]
本発明で用いる高分子化合物(I)中のエポキシ樹脂残基(A)は、疎水性を有し、水性媒体中で高分子化合物(I)の分子間及び/又は分子内で相互に疎水結合させることによって、疎水性のコア部を形成させるために必要な構造であり、種々のエポキシ樹脂由来の骨格を有する。該残基(A)は、後述するカチオン性の親水性ポリマーセグメント(B)及び/又はノニオン性の親水性ポリマーセグメント(C)と、原料として用いるエポキシ樹脂のエポキシ基又はヒドロキシル基を介して結合している。原料として用いる事ができるエポキシ樹脂としては、特に限定されるものではないが、より安定な水性着色材料(水分散体)が得られ、且つ工業的入手が容易である点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂を用いる事が好ましく、特にビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂を用いる事が好ましい。高分子化合物(I)中における、前記エポキシ樹脂残基(A)の数平均分子量としては300〜10,000の範囲であることが望ましく、特に500〜3,000の範囲であると、より安定で、且つ粒子径の小さい水性着色材料が得られる点から好ましいものである。
【0013】
前述のエポキシ樹脂は、1分子あたり複数個のエポキシ基を有するものであるが、カチオン性の親水性ポリマーセグメント(B)、ノニオン性の親水性ポリマーセグメント(C)と結合させる前に、予め部分的に該エポキシ基中のオキシラン環を開環させて用いても良い。
【0014】
そのようなオキシラン環を開環させる物質としては、種々のアルコール、フェノール、2級アミンなどを挙げることができるが、例えば、炭素数1〜20の脂肪族アルコール、芳香環上に置換基を有していてもよいフェノール類、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルフェノール類、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジへキシルアミン等の各種ジアルキルアミン等を挙げることができ、後述するカチオン性の親水性ポリマーセグメント(B)、ノニオン性の親水性ポリマーセグメント(C)の高分子化合物(I)への導入方法・導入割合等に応じて、適宜その種類や使用量を調整することが好ましい。
【0015】
[カチオン性の親水性ポリマーセグメント(B)]
本発明で用いる高分子化合物(I)中のカチオン性の親水性ポリマーセグメント(B)は、カチオン性の基を有するポリマー鎖であって、後述するアニオン性基を有する着色性化合物(II)とイオン結合させるために必要なセグメントであり、これにより、高分子化合物(I)、又は高分子化合物(I)の会合体中に着色性化合物(II)を固定化させることが出来る。カチオン性の基としては、1級アミン、2級アミン、3級アミン、ピリジン環等に含まれる窒素原子をプロトン化又は四級塩化した物が挙げられる。
【0016】
前記カチオン性の親水性ポリマーセグメント(B)としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリジン等からなるポリマーからなるセグメントをカチオン化したものを挙げることができ、これらの中でも、より安定な水性着色材料(水分散体)が得られることから、ポリエチレンイミンからなるセグメントをカチオン化したものであることが好ましい。尚、カチオン化の手法としては、塩酸等によるプロトン化やヨウ化メタン等による四級塩化等が挙げられる。
【0017】
該セグメント(B)の分子量としては、得られる水性着色材料の粒径が小さく、且つ、結晶性の高い粒子が得られる点から、100〜10,000の範囲であることが好ましく、特に1,000〜8,000の範囲にあることが好ましい。
【0018】
また、該カチオン性の親水性ポリマーセグメント(B)を形成するモノマーユニットは全てがカチオン化されていなくても良く、全ユニットの50モル%以下、好ましくは30モル%以下の範囲内で、ノニオン性のユニットがランダムに含まれていても良い。
【0019】
例えば、該セグメントを形成するポリマーの原料として用いる親水性モノマーとして、カチオン化できるモノマーとノニオン性のモノマーとを併用し、これらを共重合させた後、カチオン化する方法で、ノニオン性のユニットを導入することが出来る。
【0020】
前記ノニオン性のユニットとしては、例えば、N−アセチルエチレンイミン、N−ホルミルエチレンイミン、N−プロピオニルエチレンイミン、N−アセチルビニルアミン、N−ホルミルビニルアミン、N−アセチルアリルアミン、N−ホルミルアリルアミンなどの各種アミド類、アリルアミン類、ビニルアミン類、エチレンイミン類とベンゾイルクロライドなどの酸ハロゲン化物との反応生成物、β−ブチロラクトン、ラクチドなどのラクトン類との反応生成物、フェニルイソシアネート、へキシルイソシアネートなどのイソシアネート類との反応生成物等からなるユニットを挙げることができる。
【0021】
又、カチオン性の親水性ポリマーセグメント(B)として、ポリエチレンイミンからなるセグメントとする場合には、例えば、オキサゾリン類をリビング重合してポリオキサゾリンを得た後、その50モル%以上を塩酸又は水酸化ナトリウム水溶液等を用いて加水分解することによって、カチオン化(塩酸塩化)されたエチレンイミンユニットと、ノニオン性のオキサゾリンユニットとが含まれるセグメントを得ることが出来る。
【0022】
[ノニオン性の親水性ポリマーセグメント(C)]
本発明で用いる高分子化合物(I)中のノニオン性の親水性ポリマーセグメント(C)は、水性媒体中で高分子化合物(I)若しくは高分子化合物(I)の会合体、又は後述するアニオン性基を有する着色性化合物(II)とイオン結合したPICからなる微粒子を安定に存在させるために必要なセグメントである。前記セグメント(C)としては、例えば、エチレングリコール、酢酸ビニル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸エステル等のモノマーを重合して得られるポリマーからなるセグメントが挙げられ、得られる水性着色材料(水分散体)の保存安定性に優れる点からエチレングリコールを重合して得られるポリマー(ポリエチレングリコール)からなるセグメントであることが好ましい。
【0023】
該セグメント(C)の分子量としては、得られる水性着色材料の粒径が小さく、且つ、結晶性の高い粒子が得られる点から、100〜10,000の範囲であることが好ましく、特に1,000〜8,000の範囲であることがより好ましい。
【0024】
[高分子化合物(I)の形状]
本発明で用いる高分子化合物(I)の形状としては、特に限定されるものではなく、線状、星状、ハイパーブランチ状等の任意のものを使うことができ、単独でも、2種以上を混合して用いても良い。更に、形状の異なる2種以上の高分子化合物(I)を併用して用いることも可能である。また、例えばエポキシ樹脂残基(A)が線状、カチオン性の親水性ポリマーセグメント(B)が星状、ノニオン性の親水性ポリマーセグメント(C)が線状のような異なる形状のポリマーが化学結合したものも使用することができる。
【0025】
これらの中でも、疎水性であるエポキシ樹脂残基(A)とカチオン性の親水性ポリマーセグメント(B)とが直接化学結合している場合には、カチオン性の親水性ポリマーセグメント(B)と後記するアニオン性基を有する着色性化合物(II)とのイオン結合により、エポキシ樹脂残基(A)近傍に疎水性のPIC部分が生成し、水性媒体中ではその周りを取り囲むようにノニオン性の親水性ポリマーセグメント(C)が存在することになり、より安定で平均粒径が小さく、粒径分布の幅が狭いPICからなる微粒子が得られることになり、好ましい形状である。
【0026】
即ち、高分子化合物(I)の好ましい形態としては、下記一般式(1)
A−[(B−C) (1)
〔式(1)中、Aはエポキシ樹脂残基であり、Bはカチオン性の親水性ポリマーセグメントであり、Cはノニオン性の親水性ポリマーセグメントであり、nは1以上であり、mは1〜10である。ただし、nはBとCの2つのセグメントが結合したマルチブロックセグメント(B−C)の繰り返し数であり、mは該マルチブロックセグメントの繰り返しからなる鎖が1つのAに化学結合している個数である。〕
又は、下記一般式(2)
A−[B−(C) (2)
〔式(2)中、A、B、Cは前記と同じであり、pは1より大きく、qは1〜10である。ただし、pはBに結合しているCの個数を示し、qはB−(C)が1つのAに化学結合している個数である。〕
等が挙げられる。
【0027】
本発明で用いる高分子化合物(I)は、前述のようにエポキシ樹脂残基(A)、カチオン性の親水性ポリマーセグメント(B)、ノニオン性の親水性ポリマーセグメント(C)を含有するものであるが、得られる水性着色材料の平均粒径が小さく、その分布幅が狭いものが得られる点から、該高分子化合物の数平均分子量としては500〜50,000の範囲であることが好ましく、特に3,000〜40,000であることが好ましい。また、重量平均分子量としても、同様の理由により、500〜100,000の範囲であることが好ましく、特に3,000〜80,000の範囲にあることが好ましい。
【0028】
また、前記高分子化合物(I)中のエポキシ樹脂残基(A)の質量をWa、カチオン性の親水性ポリマーセグメント(B)の質量をWb、ノニオン性の親水性ポリマーセグメント(C)の質量をWcとしたとき、Wa/(Wa+Wb+Wc)=0.03〜0.8で且つ、Wb/(Wb+Wc)=0.1〜0.9(質量比)である場合には、良好な粒径分布を有する水性着色材料及びそれを乾固した粉末状着色材料を得ることができ、特に、Wa/(Wa+Wb+Wc)=0.05〜0.3で且つ、Wb/(Wb+Wc)=0.5〜0.8(質量比)の範囲であると、平均粒径が小さく、且つ保存安定性に優れる点から好ましいものである。
【0029】
[高分子化合物(I)の製造方法]
本発明で用いる高分子化合物(I)は、前述の各構成成分を有するものであれば良く、その製造方法には特に限定されるものではない。設計どおりの高分子化合物を簡便に合成する方法としては、例えば、(i)エポキシ樹脂をヒドロキシル基含有化合物と反応させてオキシラン環を開環し、このときに生成するヒドロキシル基をトシル化し、重合開始能を付与する。得られた化合物を重合開始剤として用い、カチオン性の親水性ポリマーセグメントの前駆体となるオキサゾリン等のモノマーを重合し、更にその末端にポリエチレングリコール等のノニオン性の親水性ポリマーを反応させて高分子化合物とする。しかる後、塩酸や水酸化ナトリウム水溶液等を用いてポリオキサゾリン部分の加水分解と、得られるポリアルキレンイミン鎖中の窒素原子のプロトン化を行い、目的とする高分子化合物を得る方法。(ii)エポキシ樹脂と、予めポリエチレングリコール等のノニオン性の親水性ポリマーで変性したアミンまたはその重合体とを反応させ、得られた高分子化合物のアミノ基の部分をカチオン化する方法等が挙げられる。特に後者の方法を採る場合で、かつ多官能性アミンを使用する場合には、予め用いるエポキシ樹脂中のオキシラン環の一部をヒドロキシ化合物等の各種反応性化合物で開環させてオキシラン環の官能基濃度を下げ、水に不溶なゲル状生成物の発生防止策を講じておくことが好ましい。
【0030】
[高分子化合物(I)の分散体]
本発明で用いる高分子化合物(I)は、実質的に水性媒体中でO/W型の分散体を作る。この粒径が、多くの場合、水性着色材料の分散体の粒径に反映されるため、高分子化合物(I)の粒径を小さくすることは微小粒径の水性着色材料、ひいては粉末状着色材料を製造する点から重要である。従って、高分子化合物(I)の分散体を調整するに際し、超音波分散処理、高圧分散処理などの粒径を小さくする操作を施すことが好ましい。
【0031】
[アニオン性の官能基を有する着色性化合物(II)]
本発明で用いるアニオン性の官能基を有する着色性化合物(II)としては、特に限定されるものではなく、スルホン酸塩構造やカルボン酸塩構造などの酸性官能基の塩構造を有する一般的な化合物であれば、どのようなものでも使用することが出来る。分類的にはこれは主に、酸性染料、酸性媒染染料、直接染料、反応染料などが含まれることになる。これらの中でも、本発明で用いる着色性化合物(II)として好ましいものは、スルホン酸アルカリ金属塩またはカルボン酸アルカリ金属塩部分を含む化合物である。
【0032】
アニオン性の官能基を有する着色性化合物(II)としては、一般に染料と呼ばれるものであって、カラーインデックス番号で例示すると、黒色染料としては例えば、C.I.アシッドブラック1、2、3、7、24、26、29、31、48、50、51、52、58、60、62、63、64、67、72、76、77、94、107、108、109、110、112、115、118、119、121、122、132、139、140、155、156、157、158、159、182、191、194、C.I.フードブラック2、C.I.ダイレクトブラック17、19、22、32、35、38、51、56、62、71、74、75、77、94、105、106、107、108、112、113、117、118、132、133、146、154、168、171、195、200、C.I.リアクティブブラック1、3、4、5、6、8、9、10、12、13、14、18、31、およびそれらの加水分解物などを挙げることができる。
【0033】
また青色染料としては、例えば、C.I.アシッドブルー1、7、9、15、22、23、25、27、29、40、41、43、45、54、59、60、62、72、74、78、80、82、83、90、92、93、100、102、103、104、112、113、117、120、126、127、129、130、131、138、140、142、143、151、154、158、161、166、167、168、170、171、182、183、184、187、192、199、202、203、204、205、229、234、236、249、C.I.ダイレクトブルー1、2、6、15、22、25、41、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、120、123、158、160、163、165、168、192、193、194、195、196、199、200、201、202、203、207、225、226、236、237、246、248、249、C.I.リアクティブブルー1、2、3、4、5、7、8、9、13、14、15、17、18、19、20、21、25、26、27、28、29、31、32、33、34、37、38、39、40、41、43、44、46、およびそれらの加水分解物などを挙げることができる。
【0034】
また赤色染料としては、例えば、C.I.アシッドレッド1、6、8、9、13、14、18、26、27、32、33、35、37、42、49、50、51、52、57、75、77、80、82、83、85、87、88、89、92、93、94、95、97、98、106、111、114、115、117、118、119、129、130、131、133、134、138、143、145、154、155,158、168,180、183、184、186、194、198、209、211、215、249、252、254、262、265、274、282、287、289、303、306、317、320、321、322、337、356、C.I.ダイレクトレッド1、2、4、9、11、13、17、20、23、24、28、31、33、37、39、44、46、62、63、75、79、80、81、83、84、89、95、99、113、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230、231、C.I.リアクティブレッド1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13、15、16、17、19、20、21、22、23、24、28、29、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、45、46、49、50、58、59、63、64、180およびそれらの加水分解物、フードレッド1、6、11、13、17などを挙げることができる。
【0035】
また黄色染料としては、例えば、C.I.アシッドイェロー1、2、3、7、11、17、19、23、25、29、36、38、40、42、44、49、59、61、65、70、72、73、75、76、78、98、99、104、110、111、127、131、135、142、155、162、165、183、184、194、C.I.ダイレクトイェロー1、8、11、12、24、26、27、33、39、44、50、85、86、87、88、89、98、106、110、132、142、144、173、194、C.I.リアクティブイェロー1、2、3、4、6、7、11、12、13、14、15、16、17、18、22、23、24、25、26、27、37、42およびそれらの加水分解物、C.I.フードイェロー3、4、6、7、8、9などを挙げることができる。
【0036】
その他にも、C.I.アシッドバイオレット9、15、31、34、41、43、48、49、51、66、126、C.I.ダイレクトバイオレット107、C.I.アシッドオレンジ7、10、20、24、C.I.ダイレクトオレンジ22、C.I.アシッドブラウン13、27、103、126、237、289、362、C.I.アシッドグリーン1、3、5、9、16、25、27、36、40、41、44、81なども使用することができる。
【0037】
また銅フタロシアニンテトラスルホン酸4ナトリウム塩、キナクリドンスルホン酸ナトリウム等のように顔料分子にスルホン酸等の容易に電離してマイナスイオンを発生できる官能基をつけたもの、一部のレーキ顔料の原料などのように親水性の低いもの、各種有機染料を使った遷移金属錯体なども好ましく使用することが出来る。
【0038】
[水性着色材料]
前記高分子化合物(I)と前記着色性化合物(II)の使用割合としては、該高分子化合物(I)中のカチオン性の親水性ポリマーセグメント(B)におけるカチオンのモル数に対する着色性化合物(II)中のアニオンのモル数の比率(アニオン/カチオン)で示される値として、通常0.05/1〜0.95/1であり、より安定なPICが得られる点から、0.05/1〜0.5/1であることが好ましく、特に0.05/1〜0.3/1であることが好ましい。また、着色性化合物(II)が錯体を形成するなどして分子量の計算が困難な場合には、高分子化合物(I)と着色性化合物(II)の使用割合をその質量比で調整することも可能であり、このときは、着色性化合物(II)/高分子化合物(I)=0.05/1〜6/1(質量比)の範囲であることが好ましく、特に該比率が0.5/1〜4/1の範囲であることが好ましい。
【0039】
また、高分子化合物(I)中のカチオン化された塩基性基とカチオン化されていない塩基性基の個数の和をx(当量)、アニオン性基を有する着色性化合物(II)の個数をy(当量)とした時に、x/yの値が0.2〜5の範囲であることが望ましく、0.5〜1.5の範囲であることがさらに望ましい。これよりも値が大きい時は、高分子化合物(I)に対して含まれるアニオン性基を有する着色性化合物(II)の個数が非常に小さくなる結果、着色がうすくなったり、得られる水性着色材料の結晶性が低くなったりするため、着色材料として使用した際の色の堅牢性や耐光性などが下がる場合がある。またこれよりも値が小さい時は、アニオン性基を有する着色性化合物(II)の量が多くなりすぎて、PIC中に十分固定されず、着色材料として使用した際の色の堅牢性や耐光性が低くなる場合がある。
【0040】
得られる水性着色材料中の高分子化合物(I)と着色性化合物(II)との比率に関する定量方法としては、例えば、元素分析で官能基の存在比を決定する方法、原料に用いたそれぞれの使用量と、150℃で乾固させた後の不揮発分の量とを比較し、別途、可視光吸収スペクトル等で着色性化合物(II)の濃度を求め、これらの値から算出する方法、アルカリなどで分散体を分解し、H−NMRで測定し、それぞれの典型的なピーク強度から比率を算出する方法、などの手法で行なうことができる。
【0041】
[水性着色材料の製造方法]
本発明の水性着色材料の製造方法としては、特に限定されるものではなく、高分子化合物(I)の水溶液と、アニオン性基を有する着色性化合物(II)の水溶液とを併せる操作と、攪拌または振動させる操作の2つを順次、または交替に、または同時進行的に行なうことにより製造することができるが、好ましくは攪拌操作を行ないながら併せていくことが好ましい。攪拌をしながら併せることで、高分子化合物(I)中のカチオン性部分と着色性化合物(II)中のアニオン性部分とによって出来る疎水性のポリイオンコンプレックスが大きな固まりにならず、微細な分散体を作りやすくなる。
【0042】
上記2種の水溶液を併せる操作としては、高分子化合物(I)の水溶液を、着色性化合物(II)の水溶液に添加する、着色性化合物(II)の水溶液を高分子化合物(I)の水溶液に添加する、第3の容器に両者を添加する、のいずれであってもよく、また、本発明の効果を損なわない範囲において、水以外の他の有機溶剤やポリマー類を添加することも出来る。
【0043】
前記その他の有機溶剤やポリマー類を添加する目的としては、例えば、粘度調節、レオロジー諸物性の調整、紙や各種表面への浸透性、溶解性の調整等、さらには、粗大粒子の形成を阻害して粒径分布幅を狭くしたり、分散安定性を向上させたりすることもある。
【0044】
用いる事ができる有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチルなどのエステル類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの炭酸エステル類、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン、ポリビニルアルコールなどのアルコール類、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体などの環状または非環状エーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの環状または非環状アミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン、ジメチルイミダゾリジノン、メチレンクロライドなどを挙げることが出来る。
【0045】
上記操作によって得られる分散体は、混合後、そのまましばらく攪拌を続行することが好ましい。このような「熟成操作」を行うことで、得られる分散体(微粒子)の粒径が小さくなったり、分散安定性が向上して、長期保存した時に融合して大きくなることを防止したりする効果が得られる。
【0046】
また得られる分散体を、さらに粒径が小さなものにするために、超音波分散処理、高圧ホモジナイザー処理などを行なうことも好ましい。
【0047】
上記で得られた混合物の中で、分散体に取り込まれなかった着色性化合物(II)は、透析、限外ろ過などの手法で取り除くことができる。
【0048】
本発明の水性着色材料は、水性媒体中で、中心部がエポキシ樹脂残基部分の疎水会合により形成されたコア部となっており、その周りに着色された疎水会合部分が存在し、更にその周囲が親水性部分に被われていることにより、その他の分散剤等を使用しなくても良好な水分散性を有し、さらに疎水会合部分が良好な着色性を示す、コロイド粒子状の水性着色材料である。該疎水会合部分では、アニオン性基を有する着色性化合物(II)とカチオン性の親水性ポリマーセグメント(B)とがイオン結合されることで、多くのアニオン性基を有する着色性化合物(II)の分子が高分子化合物(I)の鎖に沿って濃縮された状態になる。その濃縮状態において、アニオン性基を有する着色性化合物(II)分子同士では強いπ−πスタッキングが発生し、該着色性化合物(II)は分子分散ではなく、一定の規則的な会合構造体を形成しやすくなる。そのため、得られる着色材料は優れた耐水性や耐光性を有する。
【0049】
上記コロイド状の水性着色材料の粒径としては、使用する高分子化合物(I)の重合度、および該高分子化合物(I)中のカチオン性の親水性ポリマーセグメント(B)の組成を調整することにより容易に制御することができ、重合度が大きいほど、あるいはカチオン性の親水性ポリマーセグメント(B)の含有率が大きいほど、その粒径は大きくなる傾向がある。これら重合度やセグメント(B)の組成は、使用する高分子化合物(I)のその他の構成要素(エポキシ樹脂残基及びノニオン性の親水性ポリマーセグメント)の種類や構造等により適宜調整する必要があるが、安定なコロイド粒子状水性着色材料とするためには、平均粒径が20nm〜5μm程度の範囲に制御することが好ましく、特に保存安定性に優れる点からは100nm〜1μmの範囲に制御することが好ましく、本発明の水性着色材料は、この範囲に制御することが容易である。
【0050】
このようなコロイド粒子状水性着色材料は、分散媒である水性媒体を除去し、乾固させることにより、取り扱いの容易な粉末状着色材料とすることもできる。水性媒体の除去方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、50〜120℃に加温することにより、容易に蒸発させることが出来る。得られる粉末状着色材料は、再び水性媒体中に戻すと、その他の分散剤なしに、容易に分散体とすることが出来る。
【0051】
このように本発明の水性着色材料は、ポリイオンコンプレックス分散体の形態をとることにより、分子が孤立した状態にある着色性化合物(染料)と比較した際、同様な着色力を持つばかりではなく、著しく長い耐久時間と、水や有機溶剤に対する着色の堅牢性とを持たせることが出来る。また、粒径制御が容易で、分散剤を使用しなくても良好な分散性を有し、かつ耐水性や耐光性に優れる。そのため、本発明の水性着色材料は、インクジェット用インクをはじめ、水性塗料、印刷用水性インク、ペンキ等に好適に使用することが出来る。また、光デバイス関連の素材として、光配向膜、カラーフィルター等にも好適に使用できる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。なお、特に断わりがない限り「%」は「質量%」を表わす。
【0053】
合成例1 [ポリエチレングリコールとポリエチレンイミンとからなるブロックポリマーの合成]
窒素雰囲気下、メトキシポリエチレングリコール[Mn=2,000]20.0g(10.0mmol)、ピリジン8.0g(100.0mmol)、クロロホルム20mlの混合溶液に、p−トルエンスルホン酸クロライド9.6g(50.0mmol)を含むクロロホルム(30ml)溶液を、氷冷撹拌しながら30分かけて滴下した。滴下終了後、浴槽温度40℃でさらに4時間攪拌した。反応終了後、クロロホルム50mlを加えて反応液を希釈した。引き続き、5%塩酸水溶液100ml、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100ml、そして飽和食塩水溶液100mlで順次に洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過、減圧濃縮した。得られた固形物をヘキサンで数回洗浄した後、濾過、80℃で減圧乾燥して、トシル化された生成物22.0gを得た。
【0054】
H−NMR(日本電子株式会社製、AL300、300MHz)測定結果を以下に示す。
H−NMR(CDCl)測定結果:
δ(ppm):7.82(d),7.28(d),3.74〜3.54(bs),3.41(s),2.40(s)
【0055】
上記で合成した末端にp−トルエンスルホニルオキシ基を有するメトキシポリエチレングリコール化合物5.39g(2.5mmol)、ポリエチレンイミン(エポミンSP−200、日本触媒株式会社製)8.0g(0.8mmol)、炭酸カリウム0.07g及びN,N−ジメチルアセトアミド50mlをフラスコに入れ、窒素雰囲気下、100℃で6時間攪拌した。得られた反応混合物を酢酸エチルとヘキサンの混合溶液(V/V=1/2)200mlを加え、室温(25℃)で強力攪拌した後、生成物の固形物を濾過した。その固形物を酢酸エチルとヘキサンの混合溶液(V/V=1/2)100mlを用いて2回洗浄した後、減圧乾燥してポリエチレングリコールとポリエチレンイミンとからなるポリマーの固体を12.7g得た。
【0056】
H−NMR(日本電子株式会社製、AL300、300MHz)測定結果を以下に示す。
H−NMR(CDCl)測定結果:
δ(ppm):3.50(s),3.05〜2.20(m)
【0057】
合成例2[ビスフェノールA型エポキシ樹脂とポリエチレングリコールとポリエチレンイミンとからなる高分子化合物(I−1)の合成]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としてEPICLON AM−040−P(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名、エポキシ当量933)18.7g(20m当量)、4−フェニルフェノール1.28g(7.5mmol)、65%酢酸エチルトリフェニルホスホニウムエタノール溶液0.26ml(0.12mol%)及びN,N−ジメチルアセトアミド50mlを混合し、窒素雰囲気下、120℃で6時間反応させた。放冷後、水150ml中に滴下し、得られた沈殿物をメタノールで2回洗浄した後、60℃で減圧乾燥して、単官能性のエポキシ樹脂を得た。得られた生成物の収量は19.9gであった。
【0058】
H−NMR(日本電子株式会社製、AL300、300MHz)測定を行いエポキシ基の積分比の考察結果、1分子にオキシラン環は0.95個残っており、単官能性のエポキシ樹脂であることを確認した。
【0059】
得られた単官能性のエポキシ樹脂1.0gに合成例1で得られたポリエチレングリコールとポリエチレンイミンとからなるポリマー4.0g、アセトン15ml及びメタノール40mlを加えて窒素雰囲気下、50℃で2時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、40℃の減圧下、アセトン及びメタノールを除去して高分子化合物(I−1)の水溶液を得た。
【0060】
得られた高分子化合物(I−1)のエポキシ樹脂残基(A)の数平均分子量は1930、カチオン性の親水性ポリマーセグメントの平均重合度は約233、ノニオン性親水性セグメントの平均重合度は約45、該高分子化合物(I)中のエポキシ樹脂残基の質量をWa、カチオン性の親水性ポリマーセグメントの質量をWb、ノニオン性の親水性ポリマーセグメントの質量をWcとした時、Wa/(Wa+Wb+Wc)=0.11、且つ、Wb/(Wb+Wc)=0.62であった。
【0061】
合成例3[ナフタレン型4官能エポキシ樹脂とポリエチレングリコールとポリエチレンイミンとからなる高分子化合物(I−2)の合成]
ナフタレン型4官能エポキシ樹脂として、EPICLON HP−4700(大日本インキ化学工業株式会社製 商品名、エポキシ当量158)7.9g(50m当量)、4−フェニルフェノール5.82g(31.3mmol)、65%酢酸エチルトリフェニルホスホニウムエタノール溶液0.21ml(0.1mol%)及びN,N−ジメチルアセトアミド40mlをフラスコに入れて混合し、窒素雰囲気下、120℃で6時間反応させた。放冷後、水150ml中に滴下し、得られた沈殿物をメタノールで2回洗浄した後、60℃で減圧乾燥して、単官能性のエポキシ樹脂15.5gを得た。
【0062】
H−NMR(日本電子株式会社製、AL300、300MHz)測定を行いエポキシ基の積分比の考察結果、1分子にオキシラン環は0.98個残っており、単官能性のエポキシ樹脂であることを確認した。
【0063】
得られた単官能性のエポキシ樹脂1.5gに、上記合成例1で得られたポリエチレングリコールとポリエチレンイミンとからなるポリマー4.5g、アセトン15ml及びメタノール40mlを加えて窒素雰囲気下、50℃で2時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、40℃の減圧下、アセトン及びメタノールを除去してナフタレン型4官能エポキシ樹脂骨格を有する高分子化合物(I−2)の水溶液を得た。
【0064】
得られた高分子化合物(I−2)のエポキシ樹脂残基(A)の数平均分子量は1070、カチオン性の親水性ポリマーセグメントの平均重合度は約233、ノニオン性親水性セグメントの平均重合度は約45、該高分子化合物(I)中のエポキシ樹脂残基の質量をWa、カチオン性の親水性ポリマーセグメントの質量をWb、ノニオン性の親水性ポリマーセグメントの質量をWcとした時、Wa/(Wa+Wb+Wc)=0.062、且つ、Wb/(Wb+Wc)=0.62であった。
【0065】
実施例1
合成例2で得られた高分子化合物(I−1)100mgをイオン交換水2.0gに溶解し、この溶液を5規定塩酸でpHを3に調整することにより、カチオン化した。この溶液に、予めC.I.アシッドレッド18(東京化成工業株式会社製)50.0mgを、70℃のイオン交換水4.77gに溶解させておいた溶液を加えた。ここで、着色性化合物であるC.I.アシッドレッド18中のアニオン性基の、高分子化合物(I−1)中のエチレンイミンユニット(カチオン部分)に対するモル比は7.4%であった。これを室温で12時間攪拌後、円心分離装置を用いて処理した。得られた粒子の粒径を、FPAR1000(大塚電子株式会社)を使用して測定したところ、平均粒径は163nmであり、90%粒径と10%粒径の比は1.89であったことから粒径分布の狭いPIC分散体微粒子であることを確認した。
【0066】
実施例2
実施例1において、アシッドレッド18中のアニオン性基の、高分子化合物(I−1)中のエチレンイミンユニット(カチオン部分)に対するモル比7.4%の変わりに、該比を7.9%にする以外は、実施例1と同様にして、平均粒径180nm、90%粒径と10%粒径の比は2.39の粒径分布の狭いPIC分散体微粒子であることを確認した。
【0067】
実施例3
合成例3で得られた高分子化合物(I−2)100mgをイオン交換水2.0gに溶解し、この溶液を5規定塩酸でpHを1に調整することにより、カチオン化した。この溶液に、予めC.I.アシッドイエロー17(関東化学株式会社製)50.0mgを、70℃のイオン交換水4.77gに溶解させておいた溶液を加えた。ここで、着色性化合物であるC.I.アシッドイエロー17中のアニオン性基の、高分子化合物(I−2)中のエチレンイミンユニット(カチオン部分)に対するモル比は8.7%であった。これを室温で12時間攪拌後、円心分離装置を用いて処理した。得られた粒子の粒径を、FPAR1000(大塚電子株式会社)を使用して測定したところ、平均粒径174nmであり、90%粒径と10%粒径の比は2.52であったことから粒径分布の狭いPIC分散体微粒子であることを確認した。
【0068】
比較例1
分岐型ポリエチレンイミン(エポミンSP−200、日本触媒株式会社製)100mgをイオン交換水2.0gに溶解し、この溶液を5規定塩酸でpHを3に調整することによりカチオン化した。この溶液に、予めC.I.アシッドレッド18 50.0mgを、70℃のイオン交換水5.00gに溶解させておいた溶液を加えた。ここで、着色性化合物であるC.I.アシッドレッド18中のアニオン性基の、エチレンイミンユニット(カチオン部分)に対するモル比は3.6%であった。混合直後に、混合液から粘度の高い沈殿が発生し、上澄み液は殆ど透明となったことから、着色性化合物と高分子化合物とはイオン的な相互作用で結合し、沈殿してしまったものと判断した。
【0069】
比較例2
合成例1で製造したポリエチレングリコール−ポリエチレンイミン共重合体100mgをイオン交換水2.0gに溶解し、この溶液を5規定塩酸でpHを3に調整することによりカチオン化した。この溶液に、予めC.I.アシッドレッド18 50.0mgを、70℃のイオン交換水5.00gに溶解させておいた溶液を加えた。ここで、着色性化合物であるC.I.アシッドレッド18中のアニオン性基の、エチレンイミンユニット(カチオン部分)に対するモル比は6.0%であった。得られた粒子の粒径をFPAR1000(大塚電子株式会社)を使用して測定したところ、平均粒径190nmであり、90%粒径と10%粒径の比が8.51であったことから、粒径分布の広い粒子となっていることがわかった。
【0070】
比較例3
比較例2において、用いる着色性化合物をC.I.アシッドイエロー17に、また使用量は6.5%(モル比)にする以外は、比較例2と同様にした。得られた粒子の粒径をFPAR1000(大塚電子株式会社)を使用して測定したところ、平均粒径200nmであり、90%粒径と10%粒径の比が7.10であったことから、粒径分布の広い粒子となっていることがわかった。
【0071】
試験例
実施例1〜3で、微粒子分散体を取り出し、80℃、20mmHgで減圧乾固することにより粉末状の着色材料を得た。この状態で1週間ほど放置し、再び水中に戻し、超音波処理を行なったところ、実施例1〜3で得られた分散体と同様の分散体が得られ、再分散性と保存安定性に優れることを確認した。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂残基(A)とカチオン性の親水性ポリマーセグメント(B)とノニオン性の親水性ポリマーセグメント(C)とを有する高分子化合物(I)と、アニオン性基を有する着色性化合物(II)とを含有することを特徴とする水性着色材料。
【請求項2】
エポキシ樹脂残基(A)が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、又はナフタレン型4官能エポキシ樹脂の残基である請求項1記載の水性着色材料。
【請求項3】
カチオン性の親水性ポリマーセグメント(B)が、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン及びポリビニルピリジンからなる群から選ばれる一種以上のポリマーをカチオン化したセグメントである請求項1記載の水性着色材料。
【請求項4】
カチオン性の親水性ポリマーセグメント(B)がポリエチレンイミンをカチオン化したセグメントである請求項3記載の水性着色材料。
【請求項5】
ノニオン性の親水性ポリマーセグメント(C)が、エチレングリコール、酢酸ビニル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる一種以上のモノマーを重合して得られるポリマーからなるセグメントである請求項1記載の水性着色材料。
【請求項6】
ノニオン性の親水性ポリマーセグメント(C)がエチレングリコールを重合して得られるポリマーからなるセグメントである請求項5記載の水性着色材料。
【請求項7】
前記高分子化合物(I)のエポキシ樹脂残基の数平均分子量が300〜10,000の範囲にあり、かつカチオン性の親水性ポリマーセグメント(B)及びノニオン性の親水性ポリマーセグメント(C)を構成するポリマーの重合度がそれぞれ独立に3〜1,000の範囲にあり、かつ該高分子化合物(I)中のエポキシ樹脂残基(A)の質量をWa、カチオン性の親水性ポリマーセグメント(B)の質量をWb、ノニオン性の親水性ポリマーセグメント(C)の質量をWcとした時、Wa/(Wa+Wb+Wc)=0.03〜0.8、且つ、Wb/(Wb+Wc)=0.1〜0.9である請求項1記載の水性着色材料。
【請求項8】
前記カチオン性の親水性ポリマーセグメント(B)中のカチオンに対する、アニオン性基を有する着色性化合物(II)中のアニオンのモル比(アニオン/カチオン)が0.05〜0.95である請求項1記載の水性着色材料。
【請求項9】
アニオン性基を有する着色性化合物(II)が、スルホン酸アルカリ金属塩またはカルボン酸アルカリ金属塩部分を含む化合物である請求項1〜8の何れか1項記載の水性着色材料。
【請求項10】
高分子化合物(I)中のエポキシ樹脂残基(A)部分が水性媒体中で疎水会合したコロイド状である請求項1〜9の何れか1項記載の水性着色材料。
【請求項11】
請求項10記載のコロイド状水性着色材料を乾固して得られることを特徴とする粉末状着色材料。


【公開番号】特開2008−7629(P2008−7629A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179424(P2006−179424)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【出願人】(000173751)財団法人川村理化学研究所 (206)
【Fターム(参考)】