水晶薄板片光学素子の製造方法および水晶薄板片光学素子
【課題】水晶薄板片光学素子における板厚ばらつきを抑えて透過波面収差を小さくする水晶薄板片光学素子の製造方法および水晶薄板片光学素子を提供する。
【解決手段】板厚の薄い水晶薄板片10の両主面に光透過性樹脂20にて補強層が形成された水晶薄板片光学素子1の製造方法であって、水晶薄板片10を形成する工程と、凹部31が形成された上型30bおよび下型30aを有し、上型と下型を合わせることで上型30bの凹部底面32と下型30aの凹部底面32が略平行となるキャビティが形成される成形型30を用い、成形型30の下型30aの凹部31に水晶薄板片10を載置する工程と、成形型30に光透過性樹脂20を充填する工程と、光透過性樹脂20を硬化する工程と、を備える。
【解決手段】板厚の薄い水晶薄板片10の両主面に光透過性樹脂20にて補強層が形成された水晶薄板片光学素子1の製造方法であって、水晶薄板片10を形成する工程と、凹部31が形成された上型30bおよび下型30aを有し、上型と下型を合わせることで上型30bの凹部底面32と下型30aの凹部底面32が略平行となるキャビティが形成される成形型30を用い、成形型30の下型30aの凹部31に水晶薄板片10を載置する工程と、成形型30に光透過性樹脂20を充填する工程と、光透過性樹脂20を硬化する工程と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板厚を薄く加工された水晶基板を光学素子として用いる、水晶薄板片光学素子の製造方法および水晶薄板片光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶は、その結晶の切断角度に依存する複屈折性を利用して様々な光学素子として利用されている。例えば水晶基板の板厚を薄く形成したシングルモード波長板などの光学素子が知られている。水晶基板を薄く形成するには、板状の状態でエッチング加工をして薄板片を得る場合や、例えば、特許文献1に開示されているように、基板中央部をエッチング加工して薄板片部を取り囲む枠部を残して薄板片を得ることがある。
このように薄い板厚の水晶薄板片では、薄板片の厚さが薄く、取り扱いおよび使用状態での強度が保てないため、通常、ガラス基板などの光透過性基板に接着して補強した状態で光学素子として使用される。
【0003】
【特許文献1】特開2006−201302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水晶薄板片をガラス基板などに接着した光学素子は、図12に示すような形状となることがある。図12(a)は水晶薄板片の片面にガラス基板を接着した光学素子の模式断面図であり、図12(b)は水晶薄板片の両面にガラス基板を接着した場合を示す光学素子の模式断面図である。
図12(a)に示すように、水晶薄板片110の片面にガラス基板125を接着した場合、未硬化樹脂に粘度があり厚み分布に不均一が生じやすく、同時に水晶薄板片110に柔軟性があるため、水晶薄板片110が樹脂の厚み分布に沿って変形し、その結果水晶薄板片110の表面にうねりが生ずる。このため、樹脂120の層厚みがばらつき、光学素子としての総厚みがばらつくことになる。光学素子の最大厚みと最小厚みの差(厚みむら)であるPV寸法が大きくなると光の透過波面収差が大きくなり、光学素子の特性を劣化させる問題がある。
さらに、図12(b)に示すように、水晶薄板片110の両面にガラス基板126,127を樹脂120で接着した場合、光学素子の表面はガラス表面であるためにうねりが生じないが、樹脂層の厚みを制御することが難しく、ガラス基板126に対して、ガラス基板127が傾くことがある。この場合も、光学素子としての総厚みがばらつくことになる。そしてPV寸法が大きくなると光の透過波面収差が大きくなり、光学素子の特性を劣化させる問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる水晶薄板片光学素子の製造方法は、板厚の薄い水晶薄板片の両主面に光透過性樹脂にて補強層が形成された水晶薄板片光学素子の製造方法であって、前記水晶薄板片を形成する工程と、凹部が形成された上型および下型を有し、上型と下型を合わせることで上型の凹部底面と下型の凹部底面が略平行となるキャビティが形成される成形型を用い、前記成形型の前記下型の前記凹部に前記水晶薄板片を載置する工程と、前記成形型に前記光透過性樹脂を充填する工程と、前記光透過性樹脂を硬化する工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
この製造方法によれば、上型の凹部底面と下型の凹部底面が略平行となるキャビティが形成される成形型を用いることで、水晶薄板片の両主面に光透過性樹脂にて補強層が形成された水晶薄板片光学素子を製造することができる。
そして、水晶薄板片光学素子の主面は平坦に形成され、かつ水晶薄板片光学素子の板厚ばらつきが抑えられ、透過波面収差の少ない水晶薄板片光学素子を得ることができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる水晶薄板片光学素子の製造方法において、前記成形型が光透過性材料で形成され、前記光透過性樹脂が光硬化型樹脂であることを特徴とする。
【0009】
この製造方法によれば、成形型に光硬化型樹脂である光透過性樹脂を充填し、その後、光透過性材料で形成された成形型に光を照射することで、成形型を透過した光が光硬化型樹脂の光透過性樹脂にあたり、光透過性樹脂を硬化できる。このため、容易にかつ短時間に光透過性樹脂の硬化作業を行うことができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる水晶薄板片光学素子の製造方法において、硬化後の前記光透過性樹脂が、水晶の屈折率と実用上同等または近い屈折率であることを特徴とする。
【0011】
水晶薄板片をエッチングにより薄い厚さに形成した場合に、エッチングにより水晶結晶内の欠陥が大きくなる、いわゆるエッチパイプが発生する。このエッチパイプは水晶薄板片を貫通し、光線が通過する際に、光の回折、屈折、散乱などを発生させる。
この製造方法によれば、水晶の屈折率と同等または近い屈折率の光透過性樹脂が、水晶薄板片のエッチパイプに充填されるので、このエッチパイプに起因する光の回折、屈折、散乱などを解消することができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかる水晶薄板片光学素子の製造方法において、板厚の薄い水晶薄板片の両主面に光透過性樹脂にて補強層が形成され、さらに前記補強層の一方の面に光透過性基板が設けられた水晶薄板片光学素子の製造方法であって、前記水晶薄板片を形成する工程と、凹部が形成され、前記凹部底面と前記凹部上面とが略平行である成形型を用い、前記成形型の前記凹部内に前記水晶薄板片を載置する工程と、前記成形型に前記光透過性樹脂を充填する工程と、前記成形型の前記凹部を覆って前記凹部上面に、対向する主面が略平行な前記光透過性基板を載置する工程と、前記光透過性樹脂を硬化する工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
この製造方法によれば、凹部が形成され、凹部底面と凹部上面とが略平行である成形型を用いることで、板厚の薄い水晶薄板片の両主面に光透過性樹脂にて補強層が形成され、さらに補強層の一方の面に光透過性基板が設けられた水晶薄板片光学素子を得ることができる。
そして、水晶薄板片光学素子の主面は、一方の主面は平坦な光透過性基板で形成され、他方の主面は成形型により成形された光透過性樹脂の面で平坦に形成される。さらに、水晶薄板片光学素子の板厚ばらつきが抑えられ、透過波面収差の少ない水晶薄板片光学素子を得ることができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例にかかる水晶薄板片光学素子の製造方法において、前記成形型が光透過性材料で形成され、前記光透過性樹脂が光硬化型樹脂であることを特徴とする。
【0015】
この製造方法によれば、成形型に光硬化型樹脂である光透過性樹脂を充填し、その後、光透過性材料で形成された成形型に光を照射することで、成形型を透過した光が光硬化型樹脂の光透過性樹脂にあたり、光透過性樹脂を硬化できる。このため、容易にかつ短時間に光透過性樹脂の硬化作業を行うことができる。
【0016】
[適用例6]上記適用例にかかる水晶薄板片光学素子の製造方法において、硬化後の前記光透過性樹脂が、水晶の屈折率と実用上同等または近い屈折率であることを特徴とする。
【0017】
水晶薄板片をエッチングにより薄い厚さに形成した場合に、エッチングにより水晶結晶内の欠陥が大きくなる、いわゆるエッチパイプが発生する。このエッチパイプは水晶薄板片を貫通し、光線が通過する際に、光の回折、屈折、散乱などを発生させる。
この製造方法によれば、水晶の屈折率と同等または近い屈折率の光透過性樹脂が、エッチパイプに充填されるので、このエッチパイプに起因する光の回折、屈折、散乱などを解消することができる。
【0018】
[適用例7]上記適用例にかかる水晶薄板片光学素子の製造方法において、板厚の薄い水晶薄板片の両主面に光透過性樹脂にて補強層が形成され、さらに前記補強層の両面に光透過性基板が設けられた水晶薄板片光学素子の製造方法であって、両主面が略平行な水晶板において一方の主面をエッチングして凹部を形成し、該凹部の板厚が薄い水晶薄板片を形成する工程と、前記水晶薄板片の前記凹部を形成した面と反対の面と前記光透過性基板との間に前記光透過性樹脂を充填する工程と、前記水晶板の前記凹部に前記光透過性樹脂を充填する工程と、前記光透過性樹脂を充填した前記水晶板の前記凹部を覆って前記光透過性基板を載置する工程と、前記光透過性樹脂を硬化する工程と、を含むことを特徴とする。
【0019】
この製造方法によれば、両主面が略平行な水晶板において一方の主面をエッチングして凹部を形成し、該凹部の板厚が薄い水晶薄板片を用いることで、水晶薄板片の両主面に光透過性樹脂にて補強層が形成され、補強層の両面に光透過性基板が設けられてさらに水晶薄板片が補強されている水晶薄板片光学素子を得ることができる。
そして、水晶薄板片光学素子の両主面は、光透過性基板で形成され、平坦に形成される。さらに、水晶薄板片の凹部上面に光透過性基板を載置することで水晶薄板片光学素子の板厚ばらつきが抑えられ、透過波面収差の少ない水晶薄板片光学素子を容易に得ることができる。
【0020】
[適用例8]上記適用例にかかる水晶薄板片光学素子の製造方法において、硬化後の前記光透過性樹脂が、水晶の屈折率と実用上同等または近い屈折率であることを特徴とする。
【0021】
水晶薄板片をエッチングにより薄い厚さに形成した場合に、エッチングにより水晶結晶内の欠陥が大きくなる、いわゆるエッチパイプが発生する。このエッチパイプは水晶薄板片を貫通し、光線が通過する際に、光の回折、屈折、散乱などを発生させる。
この製造方法によれば、水晶の屈折率と同等または近い屈折率の光透過性樹脂が、エッチパイプに充填されるので、このエッチパイプに起因する光の回折、屈折、散乱などを解消することができる。
【0022】
[適用例9]本適用例にかかる水晶薄板片光学素子において、両主面が略平行な水晶板において一方の主面がエッチングされて凹部が形成され、該凹部の厚みが薄く形成された水晶薄板片と、前記水晶薄板片を両側から挟む光透過性基板と、を有し、前記凹部を含む前記水晶薄板片と前記光透過性基板の間に光透過性樹脂を備えたことを特徴とする。
【0023】
水晶薄板片は、両主面が略平行な水晶板において一方の主面がエッチングされて凹部を形成することで該凹部の厚みが薄く形成されている。つまり、凹部の外周が枠状に形成され、厚みが薄く形成された部分を補強する形状となっている。このため、水晶薄板片の取り扱いが容易である。そして、水晶薄板片を両側から光透過性樹脂を介して光透過性基板にて挟み込む際、枠状の凹部外周と光透過性基板とが接触するため、凹部の厚みが薄く形成された部分との間隔を一定に保ち水晶薄板片光学素子の板厚ばらつきを抑える構造となっている。このことから、水晶薄板片光学素子の板厚ばらつきを抑え、透過波面収差の少ない水晶薄板片光学素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
(第1の実施形態)
【0025】
図1は第1の実施形態における水晶薄板片光学素子の構成を示す概略斜視図である。
水晶薄板片光学素子1は、板厚が薄く形成された水晶薄板片10と、その両主面に所定の厚みで形成されたアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂などの光透過性樹脂20とを備え、光透過性樹脂20が水晶薄板片10を挟み込んで接着されている構造である。つまり、光透過性樹脂20が水晶薄板片10を補強する補強層として機能している。
水晶薄板片10の一方の主面側に形成された光透過性樹脂20の面20aと、他方の主面側に形成された光透過性樹脂20の面20bとは、略平行で、それぞれの面が平坦に形成されている。また、水晶の屈折率1.54に対して、光透過性樹脂20の屈折率は水晶の屈折率に近い、1.51程度の材料が選択されている。
なお、水晶薄板片10の板厚は10μm以下に形成され、光透過性樹脂20の厚みは5μm以上に形成されている。
【0026】
次に、本実施形態の水晶薄板片光学素子に用いられる水晶薄板片について説明する。
図2は本実施形態に用いられる水晶薄板片を示す斜視図である。
水晶薄板片10は、対向する主面17a,17bを有し、この主面17a,17bは略平行となるように形成されている。水晶薄板片10の板厚tは10μm以下であり、本実施形態では7μmに形成されている。水晶薄板片10は、対向する主面が略平行でかつ鏡面加工された水晶基板をエッチングして得られる。例えば50μmの水晶基板をフッ酸またはフッ酸とフッ化アンモニウムの混合液などのエッチング液に浸漬し、7μmになるまでエッチングして加工されている。
【0027】
製造工程の説明に先立ち、水晶薄板片光学素子の製造において用いられる成形型について説明する。
図3は水晶薄板片光学素子の製造において用いられる成形型(下型)の構成を示す説明図であり、図3(a)は平面図、図3(b)は同図(a)のA−A断線に沿う断面図である。
成形型は上型と下型とから構成され、両者の型は同じ形状のため、下型について説明する。
成形型の下型30aはガラス、透明樹脂などの光透過性材料で形成されている。下型30aには平面形状が矩形の凹部31が形成され、この凹部31の開放側近傍に凹部31より一回り大きい段差部となる外周面33が形成されている。この外周面33は水晶薄板片が載置可能な面を有している。そして、下型30aの凹部底面32と外周面33、上面34はそれぞれ略平行に形成されている。上型はこの下型30aと同様な形状であり、上型と下型を合わせることで、上型の凹部底面と下型の凹部底面が略平行となるキャビティが形成される成形型を構成している。
【0028】
続いて、上記の水晶薄板片光学素子の製造工程について説明する。
図4は水晶薄板片光学素子の製造工程を説明する工程図である。
まず、下型30aの凹部31に、光透過性樹脂20を充填する(図4(a)参照)。この光透過性樹脂20として、本実施形態では紫外線硬化型樹脂を採用している。光透過性樹脂20の充填では、凹部31の外周面33まで充填する。
その後、下型30aの外周面33に水晶薄板片10を載置する(図4(b)参照)。そして、下型30aの上に上型30bをのせ、上型30bの凹部31に光透過性樹脂20を充填する(図4(c)参照)。このようにして、下型30aと上型30bから構成される成形型30に水晶薄板片10が載置され、下型30aと上型30bから構成される成形型30のキャビティに光透過性樹脂20が充填された状態となる。
続いて、成形型30の周りから紫外線(UV)を照射する(図4(d)参照)。成形型30の下型30aと上型30bは光透過性材料で形成されているため、紫外線は成形型30を透過し、光透過性樹脂20に照射され光透過性樹脂20が硬化する。そして、成形型30から取り出して、水晶薄板片10の両主面に補強層として光透過性樹脂20が形成された水晶薄板片光学素子1が得られる(図4(e)参照)。
【0029】
なお、本実施形態の光透過性樹脂20は、株式会社テスク製の紫外線硬化型樹脂A−1754Bを用い、硬化条件として、仮硬化は100mjで30秒、本硬化は3000mjで30秒とし、均一に紫外線が照射されるようにして行った。この紫外線硬化型樹脂の硬化後の特性として、屈折率は1.51、アッベ数は54.6である。
なお、本実施形態では光透過性樹脂に紫外線硬化型の樹脂を用いたが、紫外線硬化型の樹脂に可視光、嫌気、加熱などの硬化付与した樹脂、または熱硬化型の樹脂を用いても良い。また、光透過性樹脂20の硬化において、2工程に分けて硬化作業を行うことも可能である。つまり、図4(b)の状態で下型30a側の光透過性樹脂20を硬化して、その後上型30b側の光透過性樹脂20を硬化してもよい。
【0030】
このように、本実施形態の水晶薄板片光学素子1の製造方法では、上型30bと下型30aを合わせることで、上型30bの凹部底面32と下型30aの凹部底面32が略平行となるキャビティが形成される成形型30を利用している。このことから、水晶薄板片10の一方の主面側に形成された光透過性樹脂20の面20aと、他方の主面側に形成された光透過性樹脂20の面20bとは、略平行となるように形成される。その結果、本実施形態の水晶薄板片光学素子1において、その最大厚みと最小厚みの差(厚みむら)であるPV寸法については、5μm〜1μmの値を得た。
【0031】
図5は、水晶薄板片光学素子におけるPV寸法と透過波面収差との関係を示すグラフである。
図12で説明した従来の構造の水晶薄板片光学素子においては、PV寸法が約30μmであり、透過波面収差はおよそ9λであった。これに対して、本実施形態の水晶薄板片光学素子1では、PV寸法を5μmとすれば透過波面収差はおよそ1.5λとなり、透過波面収差を小さくすることができる。
【0032】
以上のように、本実施形態における水晶薄板片光学素子1の製造方法によれば、上型30bと下型30aを合わせることで上型30bの凹部底面32と下型30aの凹部底面32が略平行となるキャビティが形成される成形型30を用いることで、水晶薄板片10の主面17a,17bに光透過性樹脂20にて補強層が形成された水晶薄板片光学素子1を製造することができる。
そして、水晶薄板片光学素子1の面20a,20bは平坦に形成され、かつ水晶薄板片光学素子1の板厚ばらつきが抑えられ、透過波面収差の少ない水晶薄板片光学素子1を得ることができる。
また、この製造方法によれば、成形型30に紫外線硬化型樹脂である光透過性樹脂20を充填し、その後、光透過性材料で形成された成形型30に紫外線を照射することで、成形型30を透過した紫外線が紫外線硬化型樹脂の光透過性樹脂20にあたり、光透過性樹脂20を硬化できる。このため、容易にかつ短時間に、光透過性樹脂20の硬化作業を行うことができる。
さらに水晶薄板片10をエッチングにより薄い厚さに形成した場合に、エッチングにより水晶結晶内の欠陥が大きくなる、いわゆるエッチパイプが発生する。このエッチパイプは水晶薄板片10を貫通し、光線が通過する際に、光の回折、屈折、散乱などを発生させる。この製造方法によれば、水晶の屈折率と同等または近い屈折率の光透過性樹脂20が、エッチパイプに充填されるので、このエッチパイプに起因する光の回折、屈折、散乱などを解消することができる。
(第2の実施形態)
【0033】
図6は第2の実施形態における水晶薄板片光学素子の構成を説明する説明図であり、図6(a)は斜視図、図6(b)は同図(a)のB−B断線に沿う断面図である。
水晶薄板片光学素子2は、板厚が薄く形成された水晶薄板片10と、その両主面に所定の厚みで形成されたアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂などの光透過性樹脂21とを備え、光透過性樹脂21が水晶薄板片10を挟み込んで接着されている構造である。つまり、光透過性樹脂21が水晶薄板片10を補強する補強層として機能している。
そして、一方の光透過性樹脂21の面にガラスまたは樹脂などから形成された光透過性基板25が設けられて接着されている。光透過性基板25は対向する面がお互いに略平行であり、平面度の良好な基板が用いられる。
水晶薄板片光学素子2の一方の面に形成された光透過性樹脂21の面21aと、他方の面に形成された光透過性基板25の面25aとは、略平行でそれぞれの面が平坦に形成されている。また、水晶の屈折率1.54に対して、光透過性樹脂21の屈折率は水晶の屈折率に近い、1.51程度の材料が選択されている。
なお、水晶薄板片10の板厚は10μm以下に形成され、光透過性樹脂21の厚みは10μm以下に形成されている。
なお、本実施形態の水晶薄板片光学素子に用いられる水晶薄板片10については、図2で説明した水晶薄板片10と同一であり、説明を省略する。
【0034】
製造工程の説明に先立ち、水晶薄板片光学素子の製造において用いられる成形型について説明する。
図7は水晶薄板片光学素子の製造において用いられる成形型の構成を示す説明図であり、図7(a)は平面図、図7(b)は同図(a)のC−C断線に沿う断面図である。
成形型40はガラス、透明樹脂などの光透過性材料で形成されている。成形型40には平面形状が矩形の凹部41が形成され、この凹部41の深さのほぼ中央に凹部41より一回り大きい段差部となる外周面43が形成されている。この外周面43は水晶薄板片が載置可能な面を有している。そして、成形型40の凹部底面42と外周面43および上面44はそれぞれ略平行に形成されている。この成形型40は、上面44に平板を載置することで、凹部底面42と上面44に接して凹部41を覆う平板の面とが略平行となるキャビティが形成される。
【0035】
続いて、上記の水晶薄板片光学素子の製造工程について説明する。
図8は水晶薄板片光学素子の製造工程を説明する工程図である。
まず、成形型40の凹部41に、光透過性樹脂21を充填する(図8(a)参照)。この光透過性樹脂21として、本実施形態では紫外線硬化型樹脂を採用している。光透過性樹脂21の充填では、凹部41の外周面43まで充填する。
その後、成形型40の外周面43に水晶薄板片10を載置する(図8(b)参照)。そして、成形型40の凹部41に光透過性樹脂21を充填し、成形型40の上面44に光透過性基板25を載せる(図8(c)参照)。このようにして、成形型40内に水晶薄板片10が載置され、成形型40と光透過性基板25から構成されるキャビティに光透過性樹脂21が充填された状態となる。
続いて、成形型40および光透過性基板25の周りから紫外線(UV)を照射する(図8(d)参照)。成形型40および光透過性基板25は光透過性材料で形成されているため、紫外線は成形型40および光透過性基板25を透過し、光透過性樹脂21に照射され光透過性樹脂21が硬化する。そして、成形型40から取り出して、水晶薄板片10の両主面に補強層として光透過性樹脂21が形成され、この補強層の一方の面に光透過性基板25が設けられた水晶薄板片光学素子2が得られる(図8(e)参照)。
【0036】
なお、本実施形態の光透過性樹脂21は、株式会社テスク製の紫外線硬化型樹脂A−1754Bを用い、硬化条件として、仮硬化は100mjで30秒、本硬化は3000mjで30秒とし、均一に紫外線が照射されるようにして行った。この紫外線硬化型樹脂の硬化後の特性として、屈折率は1.51、アッベ数は54.6である。
なお、本実施形態では光透過性樹脂に紫外線硬化型の樹脂を用いたが、紫外線硬化型の樹脂に可視光、嫌気、加熱などの硬化付与した樹脂、または熱硬化型の樹脂を用いても良い。また、光透過性樹脂21の硬化において、2工程に分けて硬化作業を行うことも可能である。つまり、図8(b)の状態での光透過性樹脂21を硬化して、その後、光透過性基板25側の光透過性樹脂21を硬化してもよい。
【0037】
このように、本実施形態の水晶薄板片光学素子2の製造方法では、成形型40の上面44に光透過性基板25を載置することで、凹部底面42と上面44に接して凹部41を覆う光透過性基板25の面とが略平行となるキャビティが形成される成形型40を利用している。このことから、水晶薄板片光学素子2の一方の主面側に形成された光透過性樹脂21の面21aと、他方の主面側に形成された光透過性基板25の面25aとは、略平行となるように形成される。
【0038】
その結果、本実施形態の水晶薄板片光学素子2において、その最大厚みと最小厚みの差(厚みむら)であるPV寸法については、5μm〜1μmの値を得た。
このように、第1の実施形態にて図5で説明したのと同様に、PV寸法を5μmとすれば透過波面収差はおよそ1.5λとなり、透過波面収差を小さくすることができる。
【0039】
以上のように、本実施形態における水晶薄板片光学素子2の製造方法によれば、凹部41が形成され、凹部底面42と凹部上面44とが略平行である成形型40を用いることで、板厚の薄い水晶薄板片10の両主面に光透過性樹脂21にて補強層が形成され、さらに補強層の一方の面に光透過性基板25が設けられた水晶薄板片光学素子2を得ることができる。
そして、水晶薄板片光学素子2の一方の面25aは平坦な光透過性基板25で形成され、他方の面21aは成形型40により成形された光透過性樹脂21の面で平坦に形成される。さらに、水晶薄板片光学素子2の板厚ばらつきが抑えられ、透過波面収差の少ない水晶薄板片光学素子2を得ることができる。
また、この製造方法によれば、成形型40に紫外線硬化型樹脂である光透過性樹脂21を充填し、その後、光透過性材料で形成された成形型40および光透過性基板25に紫外線を照射することで、成形型40および光透過性基板25を透過した紫外線が紫外線硬化型樹脂の光透過性樹脂21にあたり、光透過性樹脂21を硬化できる。このため、容易にかつ短時間に光透過性樹脂21の硬化作業を行うことができる。
さらに水晶薄板片10をエッチングにより薄い厚さに形成した場合に、エッチングにより水晶結晶内の欠陥が大きくなる、いわゆるエッチパイプが発生する。このエッチパイプは水晶薄板片10を貫通し、光線が通過する際に、光の回折、屈折、散乱などを発生させる。この製造方法によれば、水晶の屈折率と同等または近い屈折率の光透過性樹脂21が、エッチパイプに充填されるので、このエッチパイプに起因する光の回折、屈折、散乱などを解消することができる。
(第3の実施形態)
【0040】
図9は第3の実施形態における水晶薄板片光学素子の構成を説明する説明図であり、図9(a)は斜視図、図9(b)は同図(a)のD−D断線に沿う断面図である。
水晶薄板片光学素子3は、両主面が略平行な水晶板において一方の主面をエッチングして凹部13を形成し、凹部13の板厚が薄い水晶薄板片11と、水晶薄板片11を両側から挟み込む光透過性基板26,27と、水晶薄板片11の凹部13および光透過性基板26,27の間に設けられた光透過性樹脂22と、を有している。
水晶薄板片11の凹部13の底面部14における厚みは10μm以下の厚みで形成されている。
光透過性樹脂22はアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂などの樹脂で構成され、接する構成要素を接着している。また、光透過性基板26,27はガラスまたは樹脂などから形成され、それぞれの対向する面がお互いに略平行であり、平面度の良好な基板が用いられる。
そして、水晶薄板片光学素子3において、対向する光透過性基板26,27の面26a,27aは略平行である。
また、光透過性樹脂22は、水晶の屈折率1.54に対して、光透過性樹脂21の屈折率は水晶の屈折率に近い、1.51程度の材料が選択されている。
なお、水晶薄板片11の凹部13を形成した反対側の主面と光透過性基板26の間に形成される光透過性樹脂22の厚みは10μm以下に形成されている。
【0041】
次に、本実施形態の水晶薄板片光学素子に用いられる水晶薄板片について説明する。
図10は本実施形態に用いられる水晶薄板片を示す説明図であり、図10(a)は平面図、図10(b)は同図(a)のE−E断線に沿う断面図である。
水晶薄板片11は、両主面が略平行でかつ主面が鏡面加工された水晶板において一方の主面の中央部にエッチングが施されて、凹部13が形成されている。このように、水晶薄板片11は凹部13の薄い底面部14を枠状部15で取り囲む形状となっている。
例えば、枠状の部分の厚みtaは30μm以上で、凹部13の底面部14の厚みtは7μmに設定されている。水晶薄板片11のエッチング加工はフッ酸またはフッ酸とフッ化アンモニウムの混合液などのエッチング液に浸漬して行われている。
また、水晶薄板片11は、両主面が略平行である水晶板をエッチングして形成されているため、枠状部15の表面と、凹部13の底面部14とが略平行に形成されている。
【0042】
続いて、上記の水晶薄板片光学素子の製造工程について説明する。
図11は水晶薄板片光学素子の製造工程を説明する工程図である。
まず、水晶薄板片11の凹部13を形成した反対側の主面と光透過性基板26の間に光透過性樹脂22を充填する(図11(a)参照)。この光透過性樹脂22として、本実施形態では紫外線硬化型樹脂を採用している。
続いて、水晶薄板片11の凹部13に光透過性樹脂22を充填する(図11(b)参照)。
次に、水晶薄板片11の枠状部15に光透過性基板27を載置して、その後、光透過性基板26,27の周りから紫外線(UV)を照射する(図11(c)参照)。光透過性基板26,27は光透過性材料で形成されているため、紫外線は光透過性基板26,27を透過し、光透過性樹脂22に照射され光透過性樹脂22が硬化する。
そして、水晶薄板片11の両主面に補強層として光透過性樹脂22が形成され、この補強層の両面に光透過性基板26,27が設けられた水晶薄板片光学素子3が得られる(図11(d)参照)。
【0043】
なお、本実施形態の光透過性樹脂22は、株式会社アーデル製の紫外線硬化型樹脂UT20を用い、硬化条件として、仮硬化は100mjで30秒、本硬化は3000mjで30秒とし、均一に紫外線が照射されるようにして行った。
なお、本実施形態では光透過性樹脂に紫外線硬化型の樹脂を用いたが、紫外線硬化型の樹脂に可視光、嫌気、加熱などの硬化付与した樹脂、または熱硬化型の樹脂を用いても良い。また、光透過性樹脂22の硬化において、2工程に分けて硬化作業を行うことも可能である。つまり、図11(a)の状態での光透過性樹脂22を硬化して、その後、光透過性基板27側の光透過性樹脂22を硬化してもよい。
【0044】
このように、本実施形態の水晶薄板片光学素子3では、水晶薄板片11の枠状部15の上方に光透過性基板27を配置し、凹部13を形成した反対側の主面に光透過性基板26を配置している。そして、凹部13を含む水晶薄板片11と光透過性基板26,27の間に光透過性樹脂22を設けることで、対向する光透過性基板26,27の面26a,27aが略平行となるように形成される。
【0045】
その結果、本実施形態の水晶薄板片光学素子3において、その最大厚みと最小厚みの差(厚みむら)であるPV寸法については、5μm〜1μmの値を得た。
このように、第1の実施形態にて図5で説明したのと同様に、PV寸法を5μmとすれば透過波面収差はおよそ1.5λとなり、透過波面収差を小さくすることができる。
【0046】
以上、本実施形態の水晶薄板片光学素子3において、水晶薄板片11は、両主面が略平行な水晶板において一方の主面がエッチングされて凹部13を形成することで凹部13の厚みが薄く形成されている。つまり、凹部13の外周が枠状に形成され、厚みが薄く形成された部分を補強する形状となっている。このため、水晶薄板片11として強度が向上して取り扱いが容易である。そして、水晶薄板片11を両側から光透過性樹脂22を介して光透過性基板26,27にて挟み込む際、枠状部15の外周と光透過性基板27とが接触することで、凹部13の厚みが薄く形成された部分との間隔を一定に保ち水晶薄板片光学素子3の板厚ばらつきを抑える構造となっている。このことから、水晶薄板片光学素子3の板厚ばらつきを抑え、透過波面収差の少ない水晶薄板片光学素子3を提供することができる。
また、本実施形態の製造方法によれば、両主面が略平行な水晶板において一方の主面をエッチングして凹部を形成し、該凹部の板厚が薄い水晶薄板片を用いることで、水晶薄板片11の両主面に光透過性樹脂22にて補強層が形成され、さらに補強層の両面に光透過性基板26,27が設けられた水晶薄板片光学素子3を得ることができる。
また、水晶薄板片11をエッチングにより薄い厚さに形成した場合に、エッチングにより水晶結晶内の欠陥が大きくなる、いわゆるエッチパイプが発生する。このエッチパイプは水晶薄板片を貫通し、光線が通過する際に、光の回折、屈折、散乱などを発生させる。
この製造方法によれば、水晶の屈折率と同等または近い屈折率の光透過性樹脂22が、エッチパイプに充填されるので、このエッチパイプでの光の回折、屈折、散乱などを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1の実施形態における水晶薄板片光学素子の構成を示す斜視図。
【図2】第1および第2の実施形態に用いられる水晶薄板片を示す斜視図。
【図3】第1の実施形態における水晶薄板片光学素子の製造において用いられる成形型の構成を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は同図(a)のA−A断線に沿う断面図。
【図4】第1の実施形態における水晶薄板片光学素子の製造工程を説明する工程図。
【図5】水晶薄板片光学素子におけるPV寸法と透過波面収差との関係を示すグラフ。
【図6】第2の実施形態における水晶薄板片光学素子の構成を示す説明図であり、(a)は斜視図、(b)は同図(a)のB−B断線に沿う断面図。
【図7】第2の実施形態における水晶薄板片光学素子の製造において用いられる成形型の構成を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は同図(a)のC−C断線に沿う断面図。
【図8】第2の実施形態における水晶薄板片光学素子の製造工程を説明する工程図。
【図9】第3の実施形態における水晶薄板片光学素子の構成を示す説明図であり、(a)は斜視図、(b)は同図(a)のD−D断線に沿う断面図。
【図10】第3の実施形態における水晶薄板片の構成を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は同図(a)のE−E断線に沿う断面図。
【図11】第3の実施形態における水晶薄板片光学素子の製造工程を説明する工程図。
【図12】従来の水晶薄板片をガラス基板に接着した光学素子を示す断面図であり、(a)は水晶薄板片の片面にガラス基板を接着した光学素子の模式断面図、(b)は水晶薄板片の両面にガラス基板を接着した場合を示す光学素子の模式断面図。
【符号の説明】
【0048】
1,2,3…水晶薄板片光学素子、10,11…水晶薄板片、13…凹部、20,21,22…光透過性樹脂、25,26,27…光透過性基板、30…成形型、30a…下型、30b…上型、31…凹部、40…成形型、41…凹部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、板厚を薄く加工された水晶基板を光学素子として用いる、水晶薄板片光学素子の製造方法および水晶薄板片光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶は、その結晶の切断角度に依存する複屈折性を利用して様々な光学素子として利用されている。例えば水晶基板の板厚を薄く形成したシングルモード波長板などの光学素子が知られている。水晶基板を薄く形成するには、板状の状態でエッチング加工をして薄板片を得る場合や、例えば、特許文献1に開示されているように、基板中央部をエッチング加工して薄板片部を取り囲む枠部を残して薄板片を得ることがある。
このように薄い板厚の水晶薄板片では、薄板片の厚さが薄く、取り扱いおよび使用状態での強度が保てないため、通常、ガラス基板などの光透過性基板に接着して補強した状態で光学素子として使用される。
【0003】
【特許文献1】特開2006−201302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水晶薄板片をガラス基板などに接着した光学素子は、図12に示すような形状となることがある。図12(a)は水晶薄板片の片面にガラス基板を接着した光学素子の模式断面図であり、図12(b)は水晶薄板片の両面にガラス基板を接着した場合を示す光学素子の模式断面図である。
図12(a)に示すように、水晶薄板片110の片面にガラス基板125を接着した場合、未硬化樹脂に粘度があり厚み分布に不均一が生じやすく、同時に水晶薄板片110に柔軟性があるため、水晶薄板片110が樹脂の厚み分布に沿って変形し、その結果水晶薄板片110の表面にうねりが生ずる。このため、樹脂120の層厚みがばらつき、光学素子としての総厚みがばらつくことになる。光学素子の最大厚みと最小厚みの差(厚みむら)であるPV寸法が大きくなると光の透過波面収差が大きくなり、光学素子の特性を劣化させる問題がある。
さらに、図12(b)に示すように、水晶薄板片110の両面にガラス基板126,127を樹脂120で接着した場合、光学素子の表面はガラス表面であるためにうねりが生じないが、樹脂層の厚みを制御することが難しく、ガラス基板126に対して、ガラス基板127が傾くことがある。この場合も、光学素子としての総厚みがばらつくことになる。そしてPV寸法が大きくなると光の透過波面収差が大きくなり、光学素子の特性を劣化させる問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる水晶薄板片光学素子の製造方法は、板厚の薄い水晶薄板片の両主面に光透過性樹脂にて補強層が形成された水晶薄板片光学素子の製造方法であって、前記水晶薄板片を形成する工程と、凹部が形成された上型および下型を有し、上型と下型を合わせることで上型の凹部底面と下型の凹部底面が略平行となるキャビティが形成される成形型を用い、前記成形型の前記下型の前記凹部に前記水晶薄板片を載置する工程と、前記成形型に前記光透過性樹脂を充填する工程と、前記光透過性樹脂を硬化する工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
この製造方法によれば、上型の凹部底面と下型の凹部底面が略平行となるキャビティが形成される成形型を用いることで、水晶薄板片の両主面に光透過性樹脂にて補強層が形成された水晶薄板片光学素子を製造することができる。
そして、水晶薄板片光学素子の主面は平坦に形成され、かつ水晶薄板片光学素子の板厚ばらつきが抑えられ、透過波面収差の少ない水晶薄板片光学素子を得ることができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる水晶薄板片光学素子の製造方法において、前記成形型が光透過性材料で形成され、前記光透過性樹脂が光硬化型樹脂であることを特徴とする。
【0009】
この製造方法によれば、成形型に光硬化型樹脂である光透過性樹脂を充填し、その後、光透過性材料で形成された成形型に光を照射することで、成形型を透過した光が光硬化型樹脂の光透過性樹脂にあたり、光透過性樹脂を硬化できる。このため、容易にかつ短時間に光透過性樹脂の硬化作業を行うことができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる水晶薄板片光学素子の製造方法において、硬化後の前記光透過性樹脂が、水晶の屈折率と実用上同等または近い屈折率であることを特徴とする。
【0011】
水晶薄板片をエッチングにより薄い厚さに形成した場合に、エッチングにより水晶結晶内の欠陥が大きくなる、いわゆるエッチパイプが発生する。このエッチパイプは水晶薄板片を貫通し、光線が通過する際に、光の回折、屈折、散乱などを発生させる。
この製造方法によれば、水晶の屈折率と同等または近い屈折率の光透過性樹脂が、水晶薄板片のエッチパイプに充填されるので、このエッチパイプに起因する光の回折、屈折、散乱などを解消することができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかる水晶薄板片光学素子の製造方法において、板厚の薄い水晶薄板片の両主面に光透過性樹脂にて補強層が形成され、さらに前記補強層の一方の面に光透過性基板が設けられた水晶薄板片光学素子の製造方法であって、前記水晶薄板片を形成する工程と、凹部が形成され、前記凹部底面と前記凹部上面とが略平行である成形型を用い、前記成形型の前記凹部内に前記水晶薄板片を載置する工程と、前記成形型に前記光透過性樹脂を充填する工程と、前記成形型の前記凹部を覆って前記凹部上面に、対向する主面が略平行な前記光透過性基板を載置する工程と、前記光透過性樹脂を硬化する工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
この製造方法によれば、凹部が形成され、凹部底面と凹部上面とが略平行である成形型を用いることで、板厚の薄い水晶薄板片の両主面に光透過性樹脂にて補強層が形成され、さらに補強層の一方の面に光透過性基板が設けられた水晶薄板片光学素子を得ることができる。
そして、水晶薄板片光学素子の主面は、一方の主面は平坦な光透過性基板で形成され、他方の主面は成形型により成形された光透過性樹脂の面で平坦に形成される。さらに、水晶薄板片光学素子の板厚ばらつきが抑えられ、透過波面収差の少ない水晶薄板片光学素子を得ることができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例にかかる水晶薄板片光学素子の製造方法において、前記成形型が光透過性材料で形成され、前記光透過性樹脂が光硬化型樹脂であることを特徴とする。
【0015】
この製造方法によれば、成形型に光硬化型樹脂である光透過性樹脂を充填し、その後、光透過性材料で形成された成形型に光を照射することで、成形型を透過した光が光硬化型樹脂の光透過性樹脂にあたり、光透過性樹脂を硬化できる。このため、容易にかつ短時間に光透過性樹脂の硬化作業を行うことができる。
【0016】
[適用例6]上記適用例にかかる水晶薄板片光学素子の製造方法において、硬化後の前記光透過性樹脂が、水晶の屈折率と実用上同等または近い屈折率であることを特徴とする。
【0017】
水晶薄板片をエッチングにより薄い厚さに形成した場合に、エッチングにより水晶結晶内の欠陥が大きくなる、いわゆるエッチパイプが発生する。このエッチパイプは水晶薄板片を貫通し、光線が通過する際に、光の回折、屈折、散乱などを発生させる。
この製造方法によれば、水晶の屈折率と同等または近い屈折率の光透過性樹脂が、エッチパイプに充填されるので、このエッチパイプに起因する光の回折、屈折、散乱などを解消することができる。
【0018】
[適用例7]上記適用例にかかる水晶薄板片光学素子の製造方法において、板厚の薄い水晶薄板片の両主面に光透過性樹脂にて補強層が形成され、さらに前記補強層の両面に光透過性基板が設けられた水晶薄板片光学素子の製造方法であって、両主面が略平行な水晶板において一方の主面をエッチングして凹部を形成し、該凹部の板厚が薄い水晶薄板片を形成する工程と、前記水晶薄板片の前記凹部を形成した面と反対の面と前記光透過性基板との間に前記光透過性樹脂を充填する工程と、前記水晶板の前記凹部に前記光透過性樹脂を充填する工程と、前記光透過性樹脂を充填した前記水晶板の前記凹部を覆って前記光透過性基板を載置する工程と、前記光透過性樹脂を硬化する工程と、を含むことを特徴とする。
【0019】
この製造方法によれば、両主面が略平行な水晶板において一方の主面をエッチングして凹部を形成し、該凹部の板厚が薄い水晶薄板片を用いることで、水晶薄板片の両主面に光透過性樹脂にて補強層が形成され、補強層の両面に光透過性基板が設けられてさらに水晶薄板片が補強されている水晶薄板片光学素子を得ることができる。
そして、水晶薄板片光学素子の両主面は、光透過性基板で形成され、平坦に形成される。さらに、水晶薄板片の凹部上面に光透過性基板を載置することで水晶薄板片光学素子の板厚ばらつきが抑えられ、透過波面収差の少ない水晶薄板片光学素子を容易に得ることができる。
【0020】
[適用例8]上記適用例にかかる水晶薄板片光学素子の製造方法において、硬化後の前記光透過性樹脂が、水晶の屈折率と実用上同等または近い屈折率であることを特徴とする。
【0021】
水晶薄板片をエッチングにより薄い厚さに形成した場合に、エッチングにより水晶結晶内の欠陥が大きくなる、いわゆるエッチパイプが発生する。このエッチパイプは水晶薄板片を貫通し、光線が通過する際に、光の回折、屈折、散乱などを発生させる。
この製造方法によれば、水晶の屈折率と同等または近い屈折率の光透過性樹脂が、エッチパイプに充填されるので、このエッチパイプに起因する光の回折、屈折、散乱などを解消することができる。
【0022】
[適用例9]本適用例にかかる水晶薄板片光学素子において、両主面が略平行な水晶板において一方の主面がエッチングされて凹部が形成され、該凹部の厚みが薄く形成された水晶薄板片と、前記水晶薄板片を両側から挟む光透過性基板と、を有し、前記凹部を含む前記水晶薄板片と前記光透過性基板の間に光透過性樹脂を備えたことを特徴とする。
【0023】
水晶薄板片は、両主面が略平行な水晶板において一方の主面がエッチングされて凹部を形成することで該凹部の厚みが薄く形成されている。つまり、凹部の外周が枠状に形成され、厚みが薄く形成された部分を補強する形状となっている。このため、水晶薄板片の取り扱いが容易である。そして、水晶薄板片を両側から光透過性樹脂を介して光透過性基板にて挟み込む際、枠状の凹部外周と光透過性基板とが接触するため、凹部の厚みが薄く形成された部分との間隔を一定に保ち水晶薄板片光学素子の板厚ばらつきを抑える構造となっている。このことから、水晶薄板片光学素子の板厚ばらつきを抑え、透過波面収差の少ない水晶薄板片光学素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
(第1の実施形態)
【0025】
図1は第1の実施形態における水晶薄板片光学素子の構成を示す概略斜視図である。
水晶薄板片光学素子1は、板厚が薄く形成された水晶薄板片10と、その両主面に所定の厚みで形成されたアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂などの光透過性樹脂20とを備え、光透過性樹脂20が水晶薄板片10を挟み込んで接着されている構造である。つまり、光透過性樹脂20が水晶薄板片10を補強する補強層として機能している。
水晶薄板片10の一方の主面側に形成された光透過性樹脂20の面20aと、他方の主面側に形成された光透過性樹脂20の面20bとは、略平行で、それぞれの面が平坦に形成されている。また、水晶の屈折率1.54に対して、光透過性樹脂20の屈折率は水晶の屈折率に近い、1.51程度の材料が選択されている。
なお、水晶薄板片10の板厚は10μm以下に形成され、光透過性樹脂20の厚みは5μm以上に形成されている。
【0026】
次に、本実施形態の水晶薄板片光学素子に用いられる水晶薄板片について説明する。
図2は本実施形態に用いられる水晶薄板片を示す斜視図である。
水晶薄板片10は、対向する主面17a,17bを有し、この主面17a,17bは略平行となるように形成されている。水晶薄板片10の板厚tは10μm以下であり、本実施形態では7μmに形成されている。水晶薄板片10は、対向する主面が略平行でかつ鏡面加工された水晶基板をエッチングして得られる。例えば50μmの水晶基板をフッ酸またはフッ酸とフッ化アンモニウムの混合液などのエッチング液に浸漬し、7μmになるまでエッチングして加工されている。
【0027】
製造工程の説明に先立ち、水晶薄板片光学素子の製造において用いられる成形型について説明する。
図3は水晶薄板片光学素子の製造において用いられる成形型(下型)の構成を示す説明図であり、図3(a)は平面図、図3(b)は同図(a)のA−A断線に沿う断面図である。
成形型は上型と下型とから構成され、両者の型は同じ形状のため、下型について説明する。
成形型の下型30aはガラス、透明樹脂などの光透過性材料で形成されている。下型30aには平面形状が矩形の凹部31が形成され、この凹部31の開放側近傍に凹部31より一回り大きい段差部となる外周面33が形成されている。この外周面33は水晶薄板片が載置可能な面を有している。そして、下型30aの凹部底面32と外周面33、上面34はそれぞれ略平行に形成されている。上型はこの下型30aと同様な形状であり、上型と下型を合わせることで、上型の凹部底面と下型の凹部底面が略平行となるキャビティが形成される成形型を構成している。
【0028】
続いて、上記の水晶薄板片光学素子の製造工程について説明する。
図4は水晶薄板片光学素子の製造工程を説明する工程図である。
まず、下型30aの凹部31に、光透過性樹脂20を充填する(図4(a)参照)。この光透過性樹脂20として、本実施形態では紫外線硬化型樹脂を採用している。光透過性樹脂20の充填では、凹部31の外周面33まで充填する。
その後、下型30aの外周面33に水晶薄板片10を載置する(図4(b)参照)。そして、下型30aの上に上型30bをのせ、上型30bの凹部31に光透過性樹脂20を充填する(図4(c)参照)。このようにして、下型30aと上型30bから構成される成形型30に水晶薄板片10が載置され、下型30aと上型30bから構成される成形型30のキャビティに光透過性樹脂20が充填された状態となる。
続いて、成形型30の周りから紫外線(UV)を照射する(図4(d)参照)。成形型30の下型30aと上型30bは光透過性材料で形成されているため、紫外線は成形型30を透過し、光透過性樹脂20に照射され光透過性樹脂20が硬化する。そして、成形型30から取り出して、水晶薄板片10の両主面に補強層として光透過性樹脂20が形成された水晶薄板片光学素子1が得られる(図4(e)参照)。
【0029】
なお、本実施形態の光透過性樹脂20は、株式会社テスク製の紫外線硬化型樹脂A−1754Bを用い、硬化条件として、仮硬化は100mjで30秒、本硬化は3000mjで30秒とし、均一に紫外線が照射されるようにして行った。この紫外線硬化型樹脂の硬化後の特性として、屈折率は1.51、アッベ数は54.6である。
なお、本実施形態では光透過性樹脂に紫外線硬化型の樹脂を用いたが、紫外線硬化型の樹脂に可視光、嫌気、加熱などの硬化付与した樹脂、または熱硬化型の樹脂を用いても良い。また、光透過性樹脂20の硬化において、2工程に分けて硬化作業を行うことも可能である。つまり、図4(b)の状態で下型30a側の光透過性樹脂20を硬化して、その後上型30b側の光透過性樹脂20を硬化してもよい。
【0030】
このように、本実施形態の水晶薄板片光学素子1の製造方法では、上型30bと下型30aを合わせることで、上型30bの凹部底面32と下型30aの凹部底面32が略平行となるキャビティが形成される成形型30を利用している。このことから、水晶薄板片10の一方の主面側に形成された光透過性樹脂20の面20aと、他方の主面側に形成された光透過性樹脂20の面20bとは、略平行となるように形成される。その結果、本実施形態の水晶薄板片光学素子1において、その最大厚みと最小厚みの差(厚みむら)であるPV寸法については、5μm〜1μmの値を得た。
【0031】
図5は、水晶薄板片光学素子におけるPV寸法と透過波面収差との関係を示すグラフである。
図12で説明した従来の構造の水晶薄板片光学素子においては、PV寸法が約30μmであり、透過波面収差はおよそ9λであった。これに対して、本実施形態の水晶薄板片光学素子1では、PV寸法を5μmとすれば透過波面収差はおよそ1.5λとなり、透過波面収差を小さくすることができる。
【0032】
以上のように、本実施形態における水晶薄板片光学素子1の製造方法によれば、上型30bと下型30aを合わせることで上型30bの凹部底面32と下型30aの凹部底面32が略平行となるキャビティが形成される成形型30を用いることで、水晶薄板片10の主面17a,17bに光透過性樹脂20にて補強層が形成された水晶薄板片光学素子1を製造することができる。
そして、水晶薄板片光学素子1の面20a,20bは平坦に形成され、かつ水晶薄板片光学素子1の板厚ばらつきが抑えられ、透過波面収差の少ない水晶薄板片光学素子1を得ることができる。
また、この製造方法によれば、成形型30に紫外線硬化型樹脂である光透過性樹脂20を充填し、その後、光透過性材料で形成された成形型30に紫外線を照射することで、成形型30を透過した紫外線が紫外線硬化型樹脂の光透過性樹脂20にあたり、光透過性樹脂20を硬化できる。このため、容易にかつ短時間に、光透過性樹脂20の硬化作業を行うことができる。
さらに水晶薄板片10をエッチングにより薄い厚さに形成した場合に、エッチングにより水晶結晶内の欠陥が大きくなる、いわゆるエッチパイプが発生する。このエッチパイプは水晶薄板片10を貫通し、光線が通過する際に、光の回折、屈折、散乱などを発生させる。この製造方法によれば、水晶の屈折率と同等または近い屈折率の光透過性樹脂20が、エッチパイプに充填されるので、このエッチパイプに起因する光の回折、屈折、散乱などを解消することができる。
(第2の実施形態)
【0033】
図6は第2の実施形態における水晶薄板片光学素子の構成を説明する説明図であり、図6(a)は斜視図、図6(b)は同図(a)のB−B断線に沿う断面図である。
水晶薄板片光学素子2は、板厚が薄く形成された水晶薄板片10と、その両主面に所定の厚みで形成されたアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂などの光透過性樹脂21とを備え、光透過性樹脂21が水晶薄板片10を挟み込んで接着されている構造である。つまり、光透過性樹脂21が水晶薄板片10を補強する補強層として機能している。
そして、一方の光透過性樹脂21の面にガラスまたは樹脂などから形成された光透過性基板25が設けられて接着されている。光透過性基板25は対向する面がお互いに略平行であり、平面度の良好な基板が用いられる。
水晶薄板片光学素子2の一方の面に形成された光透過性樹脂21の面21aと、他方の面に形成された光透過性基板25の面25aとは、略平行でそれぞれの面が平坦に形成されている。また、水晶の屈折率1.54に対して、光透過性樹脂21の屈折率は水晶の屈折率に近い、1.51程度の材料が選択されている。
なお、水晶薄板片10の板厚は10μm以下に形成され、光透過性樹脂21の厚みは10μm以下に形成されている。
なお、本実施形態の水晶薄板片光学素子に用いられる水晶薄板片10については、図2で説明した水晶薄板片10と同一であり、説明を省略する。
【0034】
製造工程の説明に先立ち、水晶薄板片光学素子の製造において用いられる成形型について説明する。
図7は水晶薄板片光学素子の製造において用いられる成形型の構成を示す説明図であり、図7(a)は平面図、図7(b)は同図(a)のC−C断線に沿う断面図である。
成形型40はガラス、透明樹脂などの光透過性材料で形成されている。成形型40には平面形状が矩形の凹部41が形成され、この凹部41の深さのほぼ中央に凹部41より一回り大きい段差部となる外周面43が形成されている。この外周面43は水晶薄板片が載置可能な面を有している。そして、成形型40の凹部底面42と外周面43および上面44はそれぞれ略平行に形成されている。この成形型40は、上面44に平板を載置することで、凹部底面42と上面44に接して凹部41を覆う平板の面とが略平行となるキャビティが形成される。
【0035】
続いて、上記の水晶薄板片光学素子の製造工程について説明する。
図8は水晶薄板片光学素子の製造工程を説明する工程図である。
まず、成形型40の凹部41に、光透過性樹脂21を充填する(図8(a)参照)。この光透過性樹脂21として、本実施形態では紫外線硬化型樹脂を採用している。光透過性樹脂21の充填では、凹部41の外周面43まで充填する。
その後、成形型40の外周面43に水晶薄板片10を載置する(図8(b)参照)。そして、成形型40の凹部41に光透過性樹脂21を充填し、成形型40の上面44に光透過性基板25を載せる(図8(c)参照)。このようにして、成形型40内に水晶薄板片10が載置され、成形型40と光透過性基板25から構成されるキャビティに光透過性樹脂21が充填された状態となる。
続いて、成形型40および光透過性基板25の周りから紫外線(UV)を照射する(図8(d)参照)。成形型40および光透過性基板25は光透過性材料で形成されているため、紫外線は成形型40および光透過性基板25を透過し、光透過性樹脂21に照射され光透過性樹脂21が硬化する。そして、成形型40から取り出して、水晶薄板片10の両主面に補強層として光透過性樹脂21が形成され、この補強層の一方の面に光透過性基板25が設けられた水晶薄板片光学素子2が得られる(図8(e)参照)。
【0036】
なお、本実施形態の光透過性樹脂21は、株式会社テスク製の紫外線硬化型樹脂A−1754Bを用い、硬化条件として、仮硬化は100mjで30秒、本硬化は3000mjで30秒とし、均一に紫外線が照射されるようにして行った。この紫外線硬化型樹脂の硬化後の特性として、屈折率は1.51、アッベ数は54.6である。
なお、本実施形態では光透過性樹脂に紫外線硬化型の樹脂を用いたが、紫外線硬化型の樹脂に可視光、嫌気、加熱などの硬化付与した樹脂、または熱硬化型の樹脂を用いても良い。また、光透過性樹脂21の硬化において、2工程に分けて硬化作業を行うことも可能である。つまり、図8(b)の状態での光透過性樹脂21を硬化して、その後、光透過性基板25側の光透過性樹脂21を硬化してもよい。
【0037】
このように、本実施形態の水晶薄板片光学素子2の製造方法では、成形型40の上面44に光透過性基板25を載置することで、凹部底面42と上面44に接して凹部41を覆う光透過性基板25の面とが略平行となるキャビティが形成される成形型40を利用している。このことから、水晶薄板片光学素子2の一方の主面側に形成された光透過性樹脂21の面21aと、他方の主面側に形成された光透過性基板25の面25aとは、略平行となるように形成される。
【0038】
その結果、本実施形態の水晶薄板片光学素子2において、その最大厚みと最小厚みの差(厚みむら)であるPV寸法については、5μm〜1μmの値を得た。
このように、第1の実施形態にて図5で説明したのと同様に、PV寸法を5μmとすれば透過波面収差はおよそ1.5λとなり、透過波面収差を小さくすることができる。
【0039】
以上のように、本実施形態における水晶薄板片光学素子2の製造方法によれば、凹部41が形成され、凹部底面42と凹部上面44とが略平行である成形型40を用いることで、板厚の薄い水晶薄板片10の両主面に光透過性樹脂21にて補強層が形成され、さらに補強層の一方の面に光透過性基板25が設けられた水晶薄板片光学素子2を得ることができる。
そして、水晶薄板片光学素子2の一方の面25aは平坦な光透過性基板25で形成され、他方の面21aは成形型40により成形された光透過性樹脂21の面で平坦に形成される。さらに、水晶薄板片光学素子2の板厚ばらつきが抑えられ、透過波面収差の少ない水晶薄板片光学素子2を得ることができる。
また、この製造方法によれば、成形型40に紫外線硬化型樹脂である光透過性樹脂21を充填し、その後、光透過性材料で形成された成形型40および光透過性基板25に紫外線を照射することで、成形型40および光透過性基板25を透過した紫外線が紫外線硬化型樹脂の光透過性樹脂21にあたり、光透過性樹脂21を硬化できる。このため、容易にかつ短時間に光透過性樹脂21の硬化作業を行うことができる。
さらに水晶薄板片10をエッチングにより薄い厚さに形成した場合に、エッチングにより水晶結晶内の欠陥が大きくなる、いわゆるエッチパイプが発生する。このエッチパイプは水晶薄板片10を貫通し、光線が通過する際に、光の回折、屈折、散乱などを発生させる。この製造方法によれば、水晶の屈折率と同等または近い屈折率の光透過性樹脂21が、エッチパイプに充填されるので、このエッチパイプに起因する光の回折、屈折、散乱などを解消することができる。
(第3の実施形態)
【0040】
図9は第3の実施形態における水晶薄板片光学素子の構成を説明する説明図であり、図9(a)は斜視図、図9(b)は同図(a)のD−D断線に沿う断面図である。
水晶薄板片光学素子3は、両主面が略平行な水晶板において一方の主面をエッチングして凹部13を形成し、凹部13の板厚が薄い水晶薄板片11と、水晶薄板片11を両側から挟み込む光透過性基板26,27と、水晶薄板片11の凹部13および光透過性基板26,27の間に設けられた光透過性樹脂22と、を有している。
水晶薄板片11の凹部13の底面部14における厚みは10μm以下の厚みで形成されている。
光透過性樹脂22はアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂などの樹脂で構成され、接する構成要素を接着している。また、光透過性基板26,27はガラスまたは樹脂などから形成され、それぞれの対向する面がお互いに略平行であり、平面度の良好な基板が用いられる。
そして、水晶薄板片光学素子3において、対向する光透過性基板26,27の面26a,27aは略平行である。
また、光透過性樹脂22は、水晶の屈折率1.54に対して、光透過性樹脂21の屈折率は水晶の屈折率に近い、1.51程度の材料が選択されている。
なお、水晶薄板片11の凹部13を形成した反対側の主面と光透過性基板26の間に形成される光透過性樹脂22の厚みは10μm以下に形成されている。
【0041】
次に、本実施形態の水晶薄板片光学素子に用いられる水晶薄板片について説明する。
図10は本実施形態に用いられる水晶薄板片を示す説明図であり、図10(a)は平面図、図10(b)は同図(a)のE−E断線に沿う断面図である。
水晶薄板片11は、両主面が略平行でかつ主面が鏡面加工された水晶板において一方の主面の中央部にエッチングが施されて、凹部13が形成されている。このように、水晶薄板片11は凹部13の薄い底面部14を枠状部15で取り囲む形状となっている。
例えば、枠状の部分の厚みtaは30μm以上で、凹部13の底面部14の厚みtは7μmに設定されている。水晶薄板片11のエッチング加工はフッ酸またはフッ酸とフッ化アンモニウムの混合液などのエッチング液に浸漬して行われている。
また、水晶薄板片11は、両主面が略平行である水晶板をエッチングして形成されているため、枠状部15の表面と、凹部13の底面部14とが略平行に形成されている。
【0042】
続いて、上記の水晶薄板片光学素子の製造工程について説明する。
図11は水晶薄板片光学素子の製造工程を説明する工程図である。
まず、水晶薄板片11の凹部13を形成した反対側の主面と光透過性基板26の間に光透過性樹脂22を充填する(図11(a)参照)。この光透過性樹脂22として、本実施形態では紫外線硬化型樹脂を採用している。
続いて、水晶薄板片11の凹部13に光透過性樹脂22を充填する(図11(b)参照)。
次に、水晶薄板片11の枠状部15に光透過性基板27を載置して、その後、光透過性基板26,27の周りから紫外線(UV)を照射する(図11(c)参照)。光透過性基板26,27は光透過性材料で形成されているため、紫外線は光透過性基板26,27を透過し、光透過性樹脂22に照射され光透過性樹脂22が硬化する。
そして、水晶薄板片11の両主面に補強層として光透過性樹脂22が形成され、この補強層の両面に光透過性基板26,27が設けられた水晶薄板片光学素子3が得られる(図11(d)参照)。
【0043】
なお、本実施形態の光透過性樹脂22は、株式会社アーデル製の紫外線硬化型樹脂UT20を用い、硬化条件として、仮硬化は100mjで30秒、本硬化は3000mjで30秒とし、均一に紫外線が照射されるようにして行った。
なお、本実施形態では光透過性樹脂に紫外線硬化型の樹脂を用いたが、紫外線硬化型の樹脂に可視光、嫌気、加熱などの硬化付与した樹脂、または熱硬化型の樹脂を用いても良い。また、光透過性樹脂22の硬化において、2工程に分けて硬化作業を行うことも可能である。つまり、図11(a)の状態での光透過性樹脂22を硬化して、その後、光透過性基板27側の光透過性樹脂22を硬化してもよい。
【0044】
このように、本実施形態の水晶薄板片光学素子3では、水晶薄板片11の枠状部15の上方に光透過性基板27を配置し、凹部13を形成した反対側の主面に光透過性基板26を配置している。そして、凹部13を含む水晶薄板片11と光透過性基板26,27の間に光透過性樹脂22を設けることで、対向する光透過性基板26,27の面26a,27aが略平行となるように形成される。
【0045】
その結果、本実施形態の水晶薄板片光学素子3において、その最大厚みと最小厚みの差(厚みむら)であるPV寸法については、5μm〜1μmの値を得た。
このように、第1の実施形態にて図5で説明したのと同様に、PV寸法を5μmとすれば透過波面収差はおよそ1.5λとなり、透過波面収差を小さくすることができる。
【0046】
以上、本実施形態の水晶薄板片光学素子3において、水晶薄板片11は、両主面が略平行な水晶板において一方の主面がエッチングされて凹部13を形成することで凹部13の厚みが薄く形成されている。つまり、凹部13の外周が枠状に形成され、厚みが薄く形成された部分を補強する形状となっている。このため、水晶薄板片11として強度が向上して取り扱いが容易である。そして、水晶薄板片11を両側から光透過性樹脂22を介して光透過性基板26,27にて挟み込む際、枠状部15の外周と光透過性基板27とが接触することで、凹部13の厚みが薄く形成された部分との間隔を一定に保ち水晶薄板片光学素子3の板厚ばらつきを抑える構造となっている。このことから、水晶薄板片光学素子3の板厚ばらつきを抑え、透過波面収差の少ない水晶薄板片光学素子3を提供することができる。
また、本実施形態の製造方法によれば、両主面が略平行な水晶板において一方の主面をエッチングして凹部を形成し、該凹部の板厚が薄い水晶薄板片を用いることで、水晶薄板片11の両主面に光透過性樹脂22にて補強層が形成され、さらに補強層の両面に光透過性基板26,27が設けられた水晶薄板片光学素子3を得ることができる。
また、水晶薄板片11をエッチングにより薄い厚さに形成した場合に、エッチングにより水晶結晶内の欠陥が大きくなる、いわゆるエッチパイプが発生する。このエッチパイプは水晶薄板片を貫通し、光線が通過する際に、光の回折、屈折、散乱などを発生させる。
この製造方法によれば、水晶の屈折率と同等または近い屈折率の光透過性樹脂22が、エッチパイプに充填されるので、このエッチパイプでの光の回折、屈折、散乱などを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1の実施形態における水晶薄板片光学素子の構成を示す斜視図。
【図2】第1および第2の実施形態に用いられる水晶薄板片を示す斜視図。
【図3】第1の実施形態における水晶薄板片光学素子の製造において用いられる成形型の構成を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は同図(a)のA−A断線に沿う断面図。
【図4】第1の実施形態における水晶薄板片光学素子の製造工程を説明する工程図。
【図5】水晶薄板片光学素子におけるPV寸法と透過波面収差との関係を示すグラフ。
【図6】第2の実施形態における水晶薄板片光学素子の構成を示す説明図であり、(a)は斜視図、(b)は同図(a)のB−B断線に沿う断面図。
【図7】第2の実施形態における水晶薄板片光学素子の製造において用いられる成形型の構成を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は同図(a)のC−C断線に沿う断面図。
【図8】第2の実施形態における水晶薄板片光学素子の製造工程を説明する工程図。
【図9】第3の実施形態における水晶薄板片光学素子の構成を示す説明図であり、(a)は斜視図、(b)は同図(a)のD−D断線に沿う断面図。
【図10】第3の実施形態における水晶薄板片の構成を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は同図(a)のE−E断線に沿う断面図。
【図11】第3の実施形態における水晶薄板片光学素子の製造工程を説明する工程図。
【図12】従来の水晶薄板片をガラス基板に接着した光学素子を示す断面図であり、(a)は水晶薄板片の片面にガラス基板を接着した光学素子の模式断面図、(b)は水晶薄板片の両面にガラス基板を接着した場合を示す光学素子の模式断面図。
【符号の説明】
【0048】
1,2,3…水晶薄板片光学素子、10,11…水晶薄板片、13…凹部、20,21,22…光透過性樹脂、25,26,27…光透過性基板、30…成形型、30a…下型、30b…上型、31…凹部、40…成形型、41…凹部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板厚の薄い水晶薄板片の両主面に光透過性樹脂にて補強層が形成された水晶薄板片光学素子の製造方法であって、
前記水晶薄板片を形成する工程と、
凹部が形成された上型および下型を有し、上型と下型を合わせることで上型の凹部底面と下型の凹部底面が略平行となるキャビティが形成される成形型を用い、
前記成形型の前記下型の前記凹部に前記水晶薄板片を載置する工程と、
前記成形型に前記光透過性樹脂を充填する工程と、
前記光透過性樹脂を硬化する工程と、
を含むことを特徴とする水晶薄板片光学素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の水晶薄板片光学素子の製造方法において、
前記成形型が光透過性材料で形成され、前記光透過性樹脂が光硬化型樹脂であることを特徴とする水晶薄板片光学素子の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水晶薄板片光学素子の製造方法において、
硬化後の前記光透過性樹脂が、水晶の屈折率と実用上同等または近い屈折率であることを特徴とする水晶薄板片光学素子の製造方法。
【請求項4】
板厚の薄い水晶薄板片の両主面に光透過性樹脂にて補強層が形成され、さらに前記補強層の一方の面に光透過性基板が設けられた水晶薄板片光学素子の製造方法であって、
前記水晶薄板片を形成する工程と、
凹部が形成され、前記凹部底面と前記凹部上面とが略平行である成形型を用い、
前記成形型の前記凹部内に前記水晶薄板片を載置する工程と、
前記成形型に前記光透過性樹脂を充填する工程と、
前記成形型の前記凹部を覆って前記凹部上面に、対向する主面が略平行な前記光透過性基板を載置する工程と、
前記光透過性樹脂を硬化する工程と、
を含むことを特徴とする水晶薄板片光学素子の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の水晶薄板片光学素子の製造方法において、
前記成形型が光透過性材料で形成され、前記光透過性樹脂が光硬化型樹脂であることを特徴とする水晶薄板片光学素子の製造方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の水晶薄板片光学素子の製造方法において、
硬化後の前記光透過性樹脂が、水晶の屈折率と実用上同等または近い屈折率であることを特徴とする水晶薄板片光学素子の製造方法。
【請求項7】
板厚の薄い水晶薄板片の両主面に光透過性樹脂にて補強層が形成され、さらに前記補強層の両面に光透過性基板が設けられた水晶薄板片光学素子の製造方法であって、
両主面が略平行な水晶板において一方の主面をエッチングして凹部を形成し、該凹部の板厚が薄い水晶薄板片を形成する工程と、
前記水晶薄板片の前記凹部を形成した面と反対の面と前記光透過性基板との間に前記光透過性樹脂を充填する工程と、
前記水晶板の前記凹部に前記光透過性樹脂を充填する工程と、
前記光透過性樹脂を充填した前記水晶板の前記凹部を覆って前記光透過性基板を載置する工程と、
前記光透過性樹脂を硬化する工程と、
を含むことを特徴とする水晶薄板片光学素子の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の水晶薄板片光学素子の製造方法において、
硬化後の前記光透過性樹脂が、水晶の屈折率と実用上同等または近い屈折率であることを特徴とする水晶薄板片光学素子の製造方法。
【請求項9】
両主面が略平行な水晶板において一方の主面がエッチングされて凹部が形成され、該凹部の厚みが薄く形成された水晶薄板片と、
前記水晶薄板片を両側から挟む光透過性基板と、を有し、
前記凹部を含む前記水晶薄板片と前記光透過性基板の間に光透過性樹脂を備えたことを特徴とする水晶薄板片光学素子。
【請求項1】
板厚の薄い水晶薄板片の両主面に光透過性樹脂にて補強層が形成された水晶薄板片光学素子の製造方法であって、
前記水晶薄板片を形成する工程と、
凹部が形成された上型および下型を有し、上型と下型を合わせることで上型の凹部底面と下型の凹部底面が略平行となるキャビティが形成される成形型を用い、
前記成形型の前記下型の前記凹部に前記水晶薄板片を載置する工程と、
前記成形型に前記光透過性樹脂を充填する工程と、
前記光透過性樹脂を硬化する工程と、
を含むことを特徴とする水晶薄板片光学素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の水晶薄板片光学素子の製造方法において、
前記成形型が光透過性材料で形成され、前記光透過性樹脂が光硬化型樹脂であることを特徴とする水晶薄板片光学素子の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水晶薄板片光学素子の製造方法において、
硬化後の前記光透過性樹脂が、水晶の屈折率と実用上同等または近い屈折率であることを特徴とする水晶薄板片光学素子の製造方法。
【請求項4】
板厚の薄い水晶薄板片の両主面に光透過性樹脂にて補強層が形成され、さらに前記補強層の一方の面に光透過性基板が設けられた水晶薄板片光学素子の製造方法であって、
前記水晶薄板片を形成する工程と、
凹部が形成され、前記凹部底面と前記凹部上面とが略平行である成形型を用い、
前記成形型の前記凹部内に前記水晶薄板片を載置する工程と、
前記成形型に前記光透過性樹脂を充填する工程と、
前記成形型の前記凹部を覆って前記凹部上面に、対向する主面が略平行な前記光透過性基板を載置する工程と、
前記光透過性樹脂を硬化する工程と、
を含むことを特徴とする水晶薄板片光学素子の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の水晶薄板片光学素子の製造方法において、
前記成形型が光透過性材料で形成され、前記光透過性樹脂が光硬化型樹脂であることを特徴とする水晶薄板片光学素子の製造方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の水晶薄板片光学素子の製造方法において、
硬化後の前記光透過性樹脂が、水晶の屈折率と実用上同等または近い屈折率であることを特徴とする水晶薄板片光学素子の製造方法。
【請求項7】
板厚の薄い水晶薄板片の両主面に光透過性樹脂にて補強層が形成され、さらに前記補強層の両面に光透過性基板が設けられた水晶薄板片光学素子の製造方法であって、
両主面が略平行な水晶板において一方の主面をエッチングして凹部を形成し、該凹部の板厚が薄い水晶薄板片を形成する工程と、
前記水晶薄板片の前記凹部を形成した面と反対の面と前記光透過性基板との間に前記光透過性樹脂を充填する工程と、
前記水晶板の前記凹部に前記光透過性樹脂を充填する工程と、
前記光透過性樹脂を充填した前記水晶板の前記凹部を覆って前記光透過性基板を載置する工程と、
前記光透過性樹脂を硬化する工程と、
を含むことを特徴とする水晶薄板片光学素子の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の水晶薄板片光学素子の製造方法において、
硬化後の前記光透過性樹脂が、水晶の屈折率と実用上同等または近い屈折率であることを特徴とする水晶薄板片光学素子の製造方法。
【請求項9】
両主面が略平行な水晶板において一方の主面がエッチングされて凹部が形成され、該凹部の厚みが薄く形成された水晶薄板片と、
前記水晶薄板片を両側から挟む光透過性基板と、を有し、
前記凹部を含む前記水晶薄板片と前記光透過性基板の間に光透過性樹脂を備えたことを特徴とする水晶薄板片光学素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−92904(P2009−92904A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262993(P2007−262993)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】
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