説明

水栓固定用ナット回動工具

【課題】 流し等の天板の裏面側の狭小スペースにおいて水栓固定用ナットの締付作業を行うに当たり、より簡単に効率良く作業を行うことが可能な水栓固定用ナット回動工具を提供する。
【解決手段】 水栓固定用ナット回動工具1は、水栓固定用ナットNに嵌め合わせられる嵌合口21を内周部に有するリング状のヘッド2と、ヘッド2の周囲に配されてヘッド2を垂直軸周りに回転可能に保持するヘッドホルダー3と、ヘッドホルダー3の一側部に水平軸周りに回転可能に取り付けられかつヘッド2と連動するように一端部が歯車機構22,41を介してヘッド2に連結された伝動軸4と、上端部がラチェット機構50を介して伝動軸4の他端部に連結され、垂直面内での揺動操作により伝動軸4を介してヘッド2を回転させ得る操作ハンドル5と、ヘッドホルダー3の他側部に垂下状に取り付けられたサポートグリップ6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流し(シンク)等の天板への水栓の取り付けまたは取り外しに際して用いられる工具に関し、より詳細には、天板の貫通孔を通して天板の裏面側に配された水栓の下端雄ねじ部に水栓固定用ナットを締め付ける作業または締め付けられた同ナットを緩める作業を行うための回動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばキッチンの流し台用の水栓は、通常、流し台の水槽の奥に位置する天板部分に貫通状に取り付けられる。ここで、流し台用水栓の取り付けは、一般に、水栓の下端雄ねじ部を天板の貫通孔に上方から差し込んだ後、天板の裏面側において水栓の下端雄ねじ部に水栓固定用ナットをねじ嵌めてレンチ等の回動工具で締め付けるという手順で行われる。しかしながら、水栓が取り付けられる天板部分の裏面側は、下方に大きく突き出た水槽とその奥の壁面とで囲まれた狭小スペースに位置しており、通常のレンチ等を使用しても回動角度が大きくとれないので、少しずつナットを回さざるを得ず、極めて作業効率が悪いという問題があった。このような問題は、水栓の交換等に際して水栓固定用ナットを緩める作業を行う時にも同様に生じうる。
そこで、このような水栓固定用ナットの締付等に用いる工具として、ねじ嵌合用の凹部を有する略C形のアダプターと、アダプターに着脱自在に設けられたL形のハンドルとからなるねじ回動具が考案された。上記アダプターには、その外周部から側方に張り出した突出部に六角孔があけられ、この六角孔にハンドル上端の六角柱部が嵌め入れられるようになっている。このねじ回動具によれば、アダプターの凹部を水栓固定用ナットに嵌め合わせておいてから、ハンドルを所要方向に回すことにより、ナットの締付が行われるため、水栓が取り付けられる天板部分の裏面側の狭小スペースでの作業を比較的楽に行うことができる(例えば、下記の特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記のねじ回動具にあっては、アダプターの突出部が側方に張り出しているため、ナットの締付に伴ってアダプターがナットの周囲を回転すると突出部が水槽の側面や奥の壁面と接触することがあり、結局、通常のレンチ等と同様に突出部が接触しない小さい角度の範囲内で繰り返し回動操作を行うことを要する場合があった。また、上記のねじ回動具の場合、水栓の下端雄ねじ部から下方にのびる配管の周囲でハンドルを回す必要がある上、ハンドルがアダプターの回転中心からずれた位置にあるため、回動操作がスムーズに行われないこともあった。以上の通り、従来のねじ回動具においても、ナットの回動作業の容易さや効率の面で問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3026292号公報
【発明の概要】
【0005】
この発明の目的は、流し等の天板の裏面側の狭小スペースにおいて水栓固定用ナットの締付等の作業を行うに当たり、その作業をより簡単にかつ効率良く行うことが可能な水栓固定用ナット回動工具を提供することにある。
【0006】
この発明は、流し等の天板の貫通孔を通して天板の裏面側に配された水栓の下端雄ねじ部に水栓固定用ナットを締め付ける際または締め付けられた水栓固定用ナットを緩める際に用いられる回動工具である。当該工具は、水栓固定用ナットに嵌め合わせられる嵌合口を内周部に有するリング状のヘッドと、ヘッドの周囲に配されてヘッドを垂直軸周りに回転可能に保持するヘッドホルダーと、ヘッドホルダーの一側部に水平軸周りに回転可能に取り付けられ、かつヘッドと連動するように一端部が歯車機構を介してヘッドに連結された伝動軸と、上端部がラチェット機構を介して伝動軸の他端部に連結され、垂直面内での揺動操作により伝動軸を介してヘッドを回転させる操作ハンドルと、ヘッドホルダーの他側部に垂下状に取り付けられたサポートグリップとを備えている。
この発明の水栓固定用ナット回動工具にあっては、ヘッドの嵌合口を水栓固定用ナットに嵌め合わせておいてから、サポートグリップを片方の手で持って工具全体を支えながら、他方の手で操作ハンドルを垂直面内で揺動させることにより、伝動軸を介してヘッドが回転し、それによって水栓固定用ナットが回動させられる。従って、この発明の水栓固定用ナット回動工具によれば、水栓が取り付けられる天板部分の裏面側の狭小スペースにおいても、きわめて簡単にかつ効率よく水栓固定用ナットを締め付ける作業または緩める作業を行うことができる。
【0007】
この発明による水栓固定用ナット回動工具の好ましい態様においては、ヘッドホルダーが、一端部どうしがヒンジ結合された略半円弧形の2つのヘッドホルダー部材よりなる開閉式のものであって、2つのヘッドホルダー部材をヘッドの保持が可能な閉じた状態で固定するロック手段を有している。
水栓固定用ナットは、メーカーの仕様や水栓の大きさ等の相違によって、様々なサイズのものが使用されているのが実情である。従って、この発明の水栓固定用ナット回動工具においても、各ナットに適合する嵌合口を有するヘッドが必要とされる。そこで、上記態様のようにヘッドホルダーを開閉式のものとすれば、嵌合口のサイズが異なる複数のヘッド(即ち、アダプター)を予め用意しておいて、これらの中から締め付けるべき水栓固定用ナットのサイズに応じた嵌合口を有するヘッドを適宜選択してこれをヘッドホルダーに保持させるようにすることで、様々な水栓の取付等への適用が可能となる。
【0008】
この発明による上記態様の、即ち、ヘッドホルダーが開閉式である水栓固定用ナット回動工具において、ヘッドが、その内周部の一面側と他面側に、それぞれ異なるサイズの水栓固定用ナットに嵌め合わせられる嵌合口を有している場合がある。
上記構成を有するヘッドの場合、これを所要の嵌合口が上面側に位置するようにヘッドホルダーに装着すれば、1つのヘッドで2種類の水栓固定用ナットに適合可能であるため、予め用意すべきヘッドの個数が減ってコストが抑えられ、部品管理の負担も軽減される。
【0009】
また、上記態様に係るこの発明の水栓固定用ナット回動工具において、ヘッドが、略半円弧形の2つのヘッド分割体よりなる場合もある。
通常、水栓の下端雄ねじ部からは水栓に接続された給水用配管や給湯用配管が下方に向かって伸びている。従って、ヘッドをリング状の一体のものとした場合、水栓固定用ナットの締付等を行うためには、先にヘッドの内側開口に配管を通さなければならず、特に配管が長い場合、その作業が面倒であった。これに対して、上記構成のヘッドの場合、略半円弧状の2つの分割体で構成されているため、水栓の下端雄ねじ部に近い位置において配管を両側から挟むようにヘッド分割体どうしを組み合わせた後、これらをヘッドホルダーで保持させればよく、工具のセッティング作業の効率が向上する。
【0010】
この発明による水栓固定用ナット回動工具において、ヘッドが、ヘッドホルダーに回転可能に保持されるリング状の外枠部材と、外枠部材の内側に着脱自在に取り付けられる嵌合口構成部材とで構成されている場合もある。
上記構成によれば、サイズが異なる複数の嵌合口構成部材(即ち、アダプター)を予め用意しておき、これらの中から締め付けるべき水栓固定用ナットのサイズに適合するものを適宜選択して外枠部材に取り付けることにより、水栓固定用ナットのサイズが異なる様々な水栓の取付作業等に使用することができるので、利便性が高い。しかも、上記構成のヘッドの場合、嵌合口構成部材の着脱に際して、外枠部材はヘッドホルダーに保持された状態のままでよい、即ち、外枠部材をヘッドホルダーから取り外す必要がないので、ヘッドホルダーの構造を簡素化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の第1の実施形態を示すものであって、水栓固定用ナット回動工具の使用状態を示す垂直断面図である。
【図2】第1の実施形態において、ヘッドホルダーを開いてヘッドを取り外した状態の水栓固定用ナット回動工具を示す斜視図である。
【図3】第1の実施形態において、ヘッドホルダーを閉じてヘッドを装着した状態の水栓固定用ナット回動工具を示す斜視図である。
【図4】図3に示す状態における水栓固定用ナット回動工具の部分拡大垂直断面図である。
【図5】この発明の第2の実施形態を示すものであって、ヘッドを構成する2つのヘッド分割体を分離して示す斜視図である。
【図6】この発明の第3の実施形態に係るヘッドを示す斜視図である。
【図7】第3の実施形態において、ヘッドをヘッドホルダーに装着した状態の水栓固定用ナット回動工具を示す斜視図である。
【図8】この発明の第4の実施形態を示すものであって、ヘッドの嵌合口構成部材を外枠部材から取り外した状態の水栓固定用ナット回動工具を示す斜視図である。
【図9】第4の実施形態において、ヘッドの嵌合口構成部材を外枠部材に取り付けた状態の水栓固定用ナット回動工具を示す部分拡大垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、図1〜図4を参照して、この発明の第1の実施形態を説明する。
第1の実施形態に係る水栓固定用ナット回動工具(1)は、流し等の天板(B)の貫通孔(B1)を通して天板(B)の裏面側に配された湯水混合水栓(F)の下端雄ねじ部(F1)に水栓固定用ナット(N)を締め付ける際または締め付けられた水栓固定用ナット(N)を緩める際に用いられるものである。
この工具(1)は、水栓固定用ナット(N)に嵌め合わせられる嵌合口(21)を内周部に有するヘッド(2)と、ヘッド(2)の周囲に配されてヘッド(2)を垂直軸周りに回転可能に保持するヘッドホルダー(3)と、ヘッドホルダー(3)の一側部に水平軸周りに回転可能に取り付けられ、かつヘッド(2)と連動するように一端部が歯車機構(22,41)を介してヘッド(2)に連結された伝動軸(4)と、上端部がラチェット機構(50)を介して伝動軸(4)の他端部に連結された操作ハンドル(5)と、ヘッドホルダー(3)の他側部に垂下状に取り付けられたサポートグリップ(6)とよりなる。
【0013】
ヘッド(2)は、内側に大きな開口を有するリング状のものであって、この開口に、水栓(F)の下端雄ねじ部(F1)から下方に伸びている給湯用および給水用の配管(P)が通される。
ヘッド(2)の嵌合口(21)は、内周部の上面側に形成されており、ナット(N)の外周面に合致する断面六角形の内周壁部(211)と、内周壁部(211)の下端縁に連なって設けられかつナット(N)の端面部分を受ける水平環状段差部(212)とで構成されている。ヘッド(2)の下面には、フェースギア(22)が形成されている。ヘッド(2)の外周面の高さ中間位置に、周方向にのびる環状溝(23)が形成されている。
ヘッド(2)は、サイズの異なる複数種類の水栓固定用ナット(N)に対応しうるアダプターとして機能するように、これらのナット(N)それぞれに適合する嵌合口(21)を有する所要数のものが用意される。
【0014】
ヘッドホルダー(3)は、一端部どうしがヒンジ結合された略半円弧形の2つのヘッドホルダー部材(31a)(31b)よりなる開閉式のものである。また、ヘッドホルダー(3)は、2つのヘッドホルダー部材(31a)(31b)をヘッド(2)の保持が可能な閉じた状態で固定するロック手段(36)(37)を有している。
各ヘッドホルダー部材(31a)(31b)は、側壁部(32)と、側壁部(32)の上下縁からそれぞれ径方向内方に伸びる上壁部(33)および下壁部(34)とを備えた、横断面略コ字形のものである。上壁部(33)は、下壁部(34)よりもやや幅狭となされていて、ヘッド(2)の環状溝(23)内に緩く挿入されるようになっており、それによってヘッド(2)が垂直軸周りに回転自在に保持される。また、下壁部(34)によって、ヘッド(2)のフェースギア(22)が摺動可能に受けられる。
【0015】
両ヘッドホルダー部材(31a)(31b)の側壁部(32)の一端側には、短筒状の軸受部(39)が径方向外方に突出するように設けられている。これらの軸受部(39)は、互いに上下に重ね合わせられ、両者の内側に通される連結軸(61)によって相対的に回転可能に連結されている。
連結軸(61)は、サポートグリップ(6)の上端部によって構成されている。より具体的には、サポートグリップ(6)の上端部に、上位の軸受部(39)に形成されたねじ孔(391)にねじ込まれる雄ねじ部(611)と、下位の軸受部(39)に緩く通される回転軸部(612)と、下位の軸受部(39)の下面を受ける外向き環状フランジ部(613)とが上から順に形成されており、これらが連結軸(61)を構成している(図4参照)。
【0016】
各ヘッドホルダー部材(31a)(31b)の他端部において、側壁部(32)および下壁部(34)は切り欠かれており、また、切り欠かれずに残った上壁部(33)に連なって径方向外方に張り出すように台状突出部(35)が設けられている。そして、一方のヘッドホルダー部材(31a)の台状突出部(35)の上面に、フック(36)が水平面内で揺動可能に取り付けられ、他方のヘッドホルダー部材(31b)の台状突出部(35)の上面に、フック(36)が係り止められる係止部(37)が形成されている。これらのフック(36)と係止部(37)とによって、両ヘッドホルダー部材(31a)(31b)のロック手段が構成されている。フック(36)は、その基端部がビス等によって台状突出部(35)の上面に回転可能に取り付けられている。係止部(37)は、台状突出部(35)の上面から短く立ち上がった柱状突起によって構成されている。フック(36)の先端部には、所定のフック揺動位置において係止部(37)が嵌まり込む略U形の切欠部(361)が形成されている。
【0017】
一方のヘッドホルダー部材(31a)の他端部には、伝動軸(4)が取り付けられる取付基部(38)が設けられている。この取付基部(38)は、台状突出部(35)およびこれに連なる上壁部(33)の他端部分の下面に、略舌状の取付基部構成部材の上端面のほぼ半分を接合することにより形成されている。取付基部(38)の中心部分には水平貫通孔(381)があけられており、この水平貫通孔(381)に伝動軸(4)が回転可能に挿通されている。
伝動軸(4)の一端部には、ヘッド(2)のフェースギア(22)と噛み合う平歯車(41)が設けられている。なお、ヘッド(2)と伝動軸(4)との連動のための歯車機構は、上記の組合せに限定されるものではなく、例えば、はすば歯車どうしの組合せとしてもよい。
伝動軸(4)の外周面には、その長さ中間に環状溝(42)が形成されており、この環状溝(42)にEリング等の止め輪(43)が嵌め込まれている。
【0018】
操作ハンドル(5)は、ラチェットハンドルよりなる。そして、ラチェットハンドル(5)のソケット接続用凸部(即ち、いわゆる差込角)(51)を差し込むための差込口(44)が、伝動軸(4)の他端部に形成されている。以上の組合せにより、操作ハンドルを構成するラチェットハンドル(5)が、同ハンドル(5)の頭部に組み込まれたラチェット機構(50)を介して、伝動軸(4)の他端部に連結されるようになっている。なお、図示は省略したが、通常、ソケット接続用凸部(51)の側面には、ラチェットハンドル(5)の脱落を防止するためのボールがスプリングで付勢されて部分的に突出するように内蔵されており、このボールが嵌まり込む凹部が差込口(44)の対応箇所に形成されている。また、ラチェット機構(50)の詳しい図示は省略したが、ラチェット歯車、ラチェット爪および正逆切替用カム等を備えた一般的な構造のものが用いられる。以上の構成によれば、市販のラチェットハンドル(5)を、操作ハンドルとしてそのまま工具(1)に取り付けて使用することが可能である。
なお、操作ハンドル(5)と伝動軸(4)との連結構造は、上記形態に限定されるものではない。例えば、伝動軸の他端部に、ラチェットハンドルとの組合せによってソケットレンチを構成するソケット、或いはラチェットハンドルとソケットとが一体化されたラチェットレンチのソケットに合致する六角柱部を設けた構造とすることもできる。また、伝動軸の他端部にラチェット機構を組み込んだ上で、伝動軸の他端部と操作ハンドルの上端端部とを適宜手段によって連結する構造としてもよい。
【0019】
サポートグリップ(6)は、棒状体よりなり、その上端部は、前述した通り、2つのヘッドホルダー部材(31a)(31b)の軸受部(39)どうしを連結するための連結軸(61)を構成している。なお、図示は省略したが、サポートグリップ(6)の下部表面には、滑り止め用のローレット加工が施されているのが好ましい。また、ローレット加工に代えて、ゴム製等の滑り止め部材でサポートグリップ(6)の下部表面を覆うようにしてもよい。
【0020】
上記の水栓固定用ナット回動工具(1)は、例えば次のようにして使用される。
まず、天板(B)の裏面側に配された水栓の下端雄ねじ部(F1)に水栓固定用ナット(N)を手で軽くねじ嵌めておく。
また、ナット(N)のサイズに適合する嵌合口(21)を有するヘッド(2)を開いた状態の両ヘッドホルダー部材(31a)(31b)に近づけて、ヘッド(2)の環状溝(23)に両ヘッドホルダー部材(31a)(31b)の上壁(31)が挿入されるように両ヘッドホルダー部材(31a)(31b)を閉じていき、完全に閉じたところで、フック(36)を揺動させて、その先端の切欠部(361)に係止部(37)が嵌まり込むようにする。これによって、ヘッド(2)がヘッドホルダー(3)に回転可能に保持される。
次に、ヘッド(2)の内側開口に、水栓(F)の下端雄ねじ部(F1)から下方にのびる給湯用および給水用の配管(P)を通しながら、工具(1)を下端雄ねじ部(F1)に近づけていく。
そして、ヘッド(2)の嵌合口(21)を水栓固定用ナット(N)に嵌め合わせた後、サポートグリップ(6)を片方の手で持って工具(1)全体を支えながら、他方の手でラチェットハンドル(5)を垂直面内で揺動させる。すると、ラチェットハンドル(5)内のラチェット機構(50)を介して伝動軸(4)が所定方向に回転させられ、さらに平歯車(41)およびフェースギア(22)よりなる歯車機構を介してヘッド(2)が所定方向に回転させられ、これによってナット(N)が締め付けられる。
締め付けられたナット(N)を緩める際は、ラチェット機構(50)の作用方向を切り替えて、同様の操作を行えばよい。
【0021】
以上の通り、この実施形態の水栓固定用ナット回動工具(1)によれば、ラチェットハンドル(5)を水槽の側面や奥の壁面と接触しない小さな角度範囲内で揺動させるだけでナット(N)が確実に締め付けられる上、その作業もサポートグリップ(6)を持って工具(1)全体を支えながら行うことができるため、きわめて簡単にかつ効率よく行うことが可能である。
【0022】
図5には、この発明の第2の実施形態が示されている。
この実施形態では、ヘッド(2X)が、略半円弧形の2つのヘッド分割体(20)よりなる。つまり、両ヘッド分割体(20)がこれらの端面どうしを突き合わせた状態でヘッドホルダー(3)に保持されることにより、嵌合口(21)、フェースギア(22)および環状溝(23)を有するヘッド(2X)が構成される。
第2の実施形態の水栓固定用ナット回動工具によれば、ヘッド(2X)が2つの略半円弧状の分割体(20)よりなるので、第1の実施形態のヘッド(2)のように内側開口に配管(P)を通さなくても、水栓(F)の下端雄ねじ部(F1)に近い位置において配管(P)を両側から挟むようにヘッド分割体(20)どうしを組み合わせた後、これらをヘッドホルダー(3)で保持させればよく、工具のセッティング作業の効率が向上する
【0023】
図6および図7には、この発明の第3の実施形態が示されている。
この実施形態では、ヘッド(2Y)が、その内周部の一面側と他面側に、それぞれ異なるサイズの水栓固定用ナット(N)に嵌め合わせられる嵌合口(21a)(21b)を有するものとなされている。各嵌合口(21a)(21b)は、ナット(N)の外周面に合致する断面六角形の内周壁部(213)と、ヘッド(2Y)の高さ中間位置において内周壁部(213)の下端縁または上端縁に連なって設けられかつナット(N)の端面部分を受ける環状内方凸部(214)とで構成されている。また、伝動軸(4)と連動するための歯車機構を構成するフェースギア(22)が、ヘッド(2Y)の両面に形成されている。このヘッド(2Y)は、回動させるべき水栓固定用ナット(N)のサイズに適合する嵌合口(21a)が上面側となるようにヘッドホルダー(3)に装着されて使用される。従って、この実施形態の場合、1つのヘッド(2Y)で2種類の水栓固定用ナット(N)の締付等に対応可能であって、用意すべきヘッド(2Y)の個数を減らすことができるので、その分だけコストが抑えられ、部品管理の負担も軽減する。
【0024】
図8および図9には、この発明の第4の実施形態が示されている。
この実施形態の水栓固定用ナット回動工具(1)において、ヘッド(2Z)は、ヘッドホルダー(3)に回転可能に保持されるリング状の外枠部材(25)と、外枠部材(25)の内側に着脱自在に取り付けられる嵌合口構成部材(26)とで構成されている。
【0025】
外枠部材(25)は、図1〜図5に示す第1の実施形態のヘッド(2)と実質的に同一の構成よりなるものであって、内周部の上面側に形成された嵌合口(251)と、下面に形成されたフェースギア(252)と、外周面の高さ中間位置に形成された環状溝(253)とを備えている。嵌合口(251)は、対応すべき複数種類の水栓固定用ナット(N)のうち最大サイズのナット(N)に適合するものとなされている。つまり、この実施形態の外枠部材(25)は、単体でもヘッドとして機能しうる。
【0026】
嵌合口構成部材(26)は、外枠部材(25)の嵌合口(251)に嵌め合わせられるように外周部が断面六角形となされたリング状のものである。嵌合口構成部材(26)の内周部の一面側と他面側に、それぞれ異なるサイズの水栓固定用ナット(N)に嵌め合わせられる嵌合口(261a)(261b)が形成されている。各嵌合口(261a)(261b)は、ナット(N)の外周面に合致する断面六角形の内周壁部(262)と、ヘッド(2Z)の高さ中間位置において内周壁部(262)の下端縁または上端縁に連なって設けられかつナット(N)の端面部分を受ける環状内方凸部(263)とで構成されている。なお、嵌合口は、内周部の上面側のみに形成されていてもよい。この嵌合口構成部材(26)は、サイズの異なる複数種類の水栓固定用ナット(N)に対応できるアダプターとして機能するように、各ナット(N)に適合する嵌合口(261a)(261b)を有する所要数のものが用意される。
【0027】
また、第4の実施形態では、両ヘッドホルダー部材(31a)(31b)どうしのロック手段が、第1の実施形態のフック(36)および係止部(37)に代わり、以下の構成よりなる。即ち、一方のヘッドホルダー部材(31a)の台状突出部(35)の上面にネジ孔(図示略)があけられるとともに、他方のヘッドホルダー部材(31b)の台状突出部(35)に、一方のヘッドホルダー部材(31a)の台状突出部(35)の上面と重ね合わせられかつ前記ネジ孔に合致するネジ挿通孔(図示略)を有する重合部(351)が延長状に形成されており、ネジ挿通孔を通してネジ孔に止めネジ(352)をねじ込むことによって、両ヘッドホルダー部材(31a)(31b)が外枠部材(25)を保持するための閉じた状態で固定される。なお、ロック手段は、第1の実施形態と同じものであってもよく、それ以外のものであってもよい。特に、この実施形態の場合、嵌合口構成部材(26)の交換に伴って、外枠部材(25)をヘッドホルダー(3)から取り外す必要がないため、種々のロック手段が適用可能である。
【0028】
第4の実施形態の水栓固定用ナット回動工具(1)によれば、サイズが異なる複数の嵌合口構成部材(26)、即ち、アダプターを予め用意しておき、これらの中から締め付けるべき水栓固定用ナット(N)のサイズに適合するものを選択して外枠部材(25)に取り付けることにより、水栓固定用ナット(N)のサイズが異なる様々な水栓(F)の取付作業等に使用することができるので、便利である。
【0029】
上記第1ないし第4の実施形態はあくまでも例示にすぎず、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内で適宜に変更を加えた上で、この発明を実施することも勿論可能である。
【符号の説明】
【0030】
(B):流し等の天板
(B1):貫通孔
(F):水栓
(F1):下端雄ねじ部
(N):水栓固定用ナット
(1):水栓固定用ナット回動工具
(2)(2X)(2Y)(2Z):ヘッド
(20):ヘッド分割体
(21)(21a)(21b)(261a)(261b):嵌合口
(22)(252):フェースギア(歯車機構)
(25):外枠部材
(26):嵌合口構成部材
(3):ヘッドホルダー
(31):ヘッドホルダー部材
(36):フック(ロック手段)
(37):係止部(ロック手段)
(4):伝動軸
(41):平歯車(歯車機構)
(5):ラチェットハンドル(操作ハンドル)
(50):ラチェット機構
(6):サポートグリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流し等の天板の貫通孔を通して天板の裏面側に配された水栓の下端雄ねじ部に水栓固定用ナットを締め付ける際または締め付けられた水栓固定用ナットを緩める際に用いられる回動工具であって、
水栓固定用ナットに嵌め合わせられる嵌合口を内周部に有するリング状のヘッドと、
ヘッドの周囲に配されてヘッドを垂直軸周りに回転可能に保持するヘッドホルダーと、
ヘッドホルダーの一側部に水平軸周りに回転可能に取り付けられ、かつヘッドと連動するように一端部が歯車機構を介してヘッドに連結された伝動軸と、
上端部がラチェット機構を介して伝動軸の他端部に連結され、垂直面内での揺動操作により伝動軸を介してヘッドを回転させる操作ハンドルと、
ヘッドホルダーの他側部に垂下状に取り付けられたサポートグリップとを備えていることを特徴とする、水栓固定用ナット回動工具。
【請求項2】
ヘッドホルダーが、一端部どうしがヒンジ結合された略半円弧形の2つのヘッドホルダー部材よりなる開閉式のものであって、2つのヘッドホルダー部材をヘッドの保持が可能な閉じた状態で固定するロック手段を有していることを特徴とする、請求項1記載の水栓固定用ナット回動工具。
【請求項3】
ヘッドが、その内周部の一面側と他面側に、それぞれ異なるサイズの水栓固定用ナットに嵌め合わせられる嵌合口を有していることを特徴とする、請求項2記載の水栓固定用ナット回動工具。
【請求項4】
ヘッドが、略半円弧形の2つのヘッド分割体よりなることを特徴とする、請求項2または3記載の水栓固定用ナット回動工具。
【請求項5】
ヘッドが、ヘッドホルダーに回転可能に保持されるリング状の外枠部材と、外枠部材の内側に着脱自在に取り付けられる嵌合口構成部材とで構成されていることを特徴とする、請求項1記載の水栓固定用ナット回動工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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