説明

水栓用バルブ

【課題】スピンドルの移動を規制する止め部材を簡単に取外すことができず、いたずら防止に役立たせる。腐食、美観等の問題を解決する。
【解決手段】水栓用バルブは、水栓本体11の保持孔26に挿入可能でありかつ貫通状軸孔31を有しているバルブ本体32と、軸孔31に回転自在に通されているスピンドル33と、スピンドル33の内端部にネジ機構によって連結されているケレップ34とを備えている。スピンドル33は、内向きの移動は自由であるが、外向きの移動は拘束されるようにバルブ本体32に支持されている。ケレップ34は、内外往復移動は自由であるが、スピンドル軸線周りの回転は拘束されるようにバルブ本体32に支持されている。軸孔31の周面に環状止め溝45が形成されている。止め溝45に止め部材48がスピンドル33を取り囲んで挿入されている。スピンドル33の外面に、止め部材48に外側から係合させられた内向き係合部58が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水栓用バルブ、とくに、「ノンリフト・バルブ」とも称されるバルブ、詳しくは、水栓を開閉させる際に回転させられるスピンドルが軸方向には移動させられることのない水栓用バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のバルブとしては、図3に示すように、シート面102の外方にこれと同軸状に設けられた垂直状保持孔103を有する水栓本体101に用いられるバルブであって、保持孔103に挿入可能でありかつ上下貫通状軸孔104を有しているバルブ本体105と、軸孔104に回転自在に通されているスピンドル106と、スピンドル106の下端部にネジ機構によって連結されているケレップ107とを備えており、スピンドル107は、下向きの移動は自由であるが、上向きの移動は拘束されるようにバルブ本体105に支持されており、ケレップ107は、上下往復移動は自由であるが、垂直軸線周りの回転は拘束されるようにバルブ本体105に支持されており、スピンドル106外面の、軸孔104外に露出させられた部分に環状止め溝108が形成されており、止め溝108に、C型止め輪109がスピンドル106を取り囲んで挿入されており、軸孔104周面上端に、止め輪109に下側から係合させられた内向きフランジ110が設けられているものが知られている。
【0003】
上記従来のバルブでは、止め輪109がバルブ本体外101に露出しているため、止め輪109を止め溝108から抜き取ることによって、バルブ本体外101から止め輪109を簡単に取外しすることが可能である。そのため、いたずら等によって、止め輪109が取外しされると、スピンドル106がケレップ107とともにバルブ本体外101内に落とし込まれることになる。そうすると、シート面102をケレップ107によって開閉することができず、バルブそのものの機能が果たせなくなる。
【0004】
また、止め輪109が外部環境に曝されることによる腐食等の問題がある。さらには、止め輪109が外部から見えるため、美観を損ない意匠的に好ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の目的は、上記課題を解決するために、スピンドルをバルブ本体内に簡単に落とし込めないようにし、しかも、耐候性および美観に優れた水栓用バルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による水栓用バルブは、シート面の外方にこれと同軸状に設けられた保持孔を有する水栓本体に用いられるバルブであって、保持孔に挿入可能でありかつ貫通状軸孔を有しているバルブ本体と、軸孔に回転自在に通されているスピンドルと、スピンドルの内端部にネジ機構によって連結されているケレップとを備えており、スピンドルは、内向きの移動は自由であるが、外向きの移動は拘束されるようにバルブ本体に支持されており、ケレップは、内外往復移動は自由であるが、スピンドル軸線周りの回転は拘束されるようにバルブ本体に支持されており、軸孔周面に環状止め溝が形成されており、止め溝に止め部材がスピンドルを取り囲んで挿入されており、スピンドルの外面に、止め部材に外側から係合させられた内向き係合部が設けられているものである。
【0007】
この発明による水栓用バルブでは、止め部材がバルブ本体によって外部から遮蔽されている。そのため、バルブを分解しない限り、止め部材を取外すことができず、いたずら防止に役立つ。さらには、腐食、意匠上の問題点を解消することができる。
【0008】
さらに、止め部材が、コイル状に巻回された線状弾性材よりなると、止め部材のバルブ本体への組立作業を、例えば、手作業よって容易に行うことができる。例えば、止め部材がC形止め輪のようなものであると、組立作業に特殊工具のようなものを必要とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、止め部材を簡単に取外すことができず、いたずら防止に役立つし、しかも、腐食、意匠等の問題を解決することができる水栓用バルブが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明による水栓用バルブの垂直縦断面図である。
【図2】同バルブの止め部材を詳細に示す斜視図である。
【図3】従来例による水栓用バルブの垂直縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照すると、水栓本体11と、これに装備されたバルブ12とが示されている。
【0012】
水栓本体11は、入口チャンバ21および出口チャンバ22を区画している隔壁23を有している。隔壁23の水平部には給水口24が形成されている。給水口24の周縁部上面にはシート面25が形成されている。シート面25の上側には、シート面25と同軸状に垂直上向き保持孔26が形成されている。保持孔26の周面上端には、Oリング27を挿入させた環状リング溝28が切欠状に形成されている。リング溝28の下方には外雌ネジ29が形成されている。
【0013】
バルブ12は、保持孔26に挿入されかつ上下貫通状軸孔31を有しているバルブ本体32と、上部を軸孔31から上方に突出させるように軸孔31に回転自在に通されているスピンドル33と、スピンドル33の下端部に連結されているケレップ34とを備えている。
【0014】
バルブ本体32は、底面を保持孔26周縁上端に当接させている六角外面付大径ヘッド部41と、保持孔26に挿入されかつ外雌ネジ29にネジ入れられた外雄ねじ42を外面に形成している小径胴部43とよりなる。
【0015】
軸孔31周面の上端部には内向きのフランジ44が設けられている。軸孔31周面の高さの中程には環状止め溝45が形成されている。環状止め溝45を挟んでその上側には横断面円形状シール面46が、その下側には横断面六角形状ガイド面47がそれぞれ形成されている。止め溝45には止め部材48がスピンドル33を取り囲んで挿入されている。
【0016】
スピンドル33には、中径上部51、大径中間部52および小径下部53が順次設けられている。中径上部51の上端面にはハンドル取付ねじ54が形成されている。中径上部51および大径中間部52の境界には、フランジ44に下側から当接させられた上向き係合部55が設けられている。大径中間部52外面には、Oリング56をそれぞれはめ入れた2つの環状リング溝57が上下に間隔をおいて形成されている。大径中間部52および小径下部53の境界には、止め部材48に上側から係合させられた下向き係合部58が設けられている。小径下部53の外面には内雄ねじ59が形成されている。
【0017】
ケレップ34は、垂直円筒状胴体61と、胴体61の下端に連なる水平円板状底板62と、底板62の底面中央から下方に突出させられた垂直状ねじ棒63とよりなる。胴体61の内面には、内雄ねじ59にねじはめられた内雌ねじ64が形成されている。胴体61の外面には、ガイド面47に摺動自在にはめ合わされた横断面輪郭六角形状のスライダ面65が形成されている。ねじ棒63にはリング状ゴムパッキン66がはめ被せられ、その下方から締付ナット67がねじはめられている。
【0018】
図2に、止め部材48が詳細に示されている。止め部材48は、コイル状に巻回された線状ばね部材71よりなる。ばね部材71の巻回されたコイル外径は、止め溝45の幅よりも若干小である。ばね部材71は、自由状態ではストレートにのびているが、止め溝45に挿入されると、これにそって、略リング状に変形させられる。
【0019】
バルブ12の組立方は、以下の通りである。まず、軸孔31にスピンドル33を下側から挿入する。この状態で、ガイド面47および内雄ねじ59間には隙間があり、この隙間を通じて、止め部材48を押し込んで、止め溝45に挿入する。この後に、ガイド面47およびスライダ面65をはめ合わせ、同時に、内雄ねじ59および内雌ねじ64をねじ合わせる。 スピンドル33の上向きに移動は、フランジ44によって規制され、その下向きの移動は止め部材48によって規制されている。ガイド面47およびスライダ面65の嵌め合わせによって、ケレップ34の上下動は自由であるが、その垂直軸線周りの回転は拘束されるようになっている。
【0020】
スピンドル33の正逆回転によって、ねじ機構によってケレップ34が上下動させられる。ケレップ34を下降させてパッキン66をシート面25に押圧させることによって、バルブ12が閉鎖され、ケレップ34を上昇させてパッキン66をシート面25から離隔させると、バルブ12が開放される。
【0021】
上記水栓本体は、鋳造品であるが、これに代わり、角棒等の無垢の材料または肉厚パイプに切削加工を施すことによって、水栓本体を成形しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0022】
この発明による水栓用バルブは、とくに、「ノンリフト・バルブ」とも称されるバルブ、詳しくは、水栓を開閉させる際に回転させられるスピンドルが軸方向には移動させられることを達成するのに適している。
【符号の説明】
【0023】
11 水栓本体
25 シート面
26 保持孔
31 軸孔
32 バルブ本体
33 スピンドル
34 ケレップ
45 止め溝
48 止め部材
58 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート面の外方にこれと同軸状に設けられた保持孔を有する水栓本体に用いられるバルブであって、保持孔に挿入可能でありかつ貫通状軸孔を有しているバルブ本体と、軸孔に回転自在に通されているスピンドルと、スピンドルの内端部にネジ機構によって連結されているケレップとを備えており、スピンドルは、内向きの移動は自由であるが、外向きの移動は拘束されるようにバルブ本体に支持されており、ケレップは、内外往復移動は自由であるが、スピンドル軸線周りの回転は拘束されるようにバルブ本体に支持されており、軸孔周面に環状止め溝が形成されており、止め溝に止め部材がスピンドルを取り囲んで挿入されており、スピンドルの外面に、止め部材に外側から係合させられた内向き係合部が設けられている水栓用バルブ。
【請求項2】
止め部材が、コイル状に巻回された線状弾性材よりなる請求項1に記載の水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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