説明

水栓装置

【課題】吐水と止水を切り換える電磁弁を駆動する電力を発生させる発電部の異常を正確に判断することができる水栓装置を提供する。
【解決手段】水栓装置1は、通水路14を開閉する電磁弁16と、水の流れにより回転する水車により電磁弁16を駆動する電力を発生させる発電ユニット8と、通水路14を流れる水を浄水する浄水ユニット10と、電磁弁16及び発電ユニット8の作動を制御するコントローラ6とを有し、このコントローラは、浄水ユニット10を通過した通水に関する第1の流量情報を発電ユニット8で発電された電力値に基づいて算出し、第1の流量情報が所定以下である場合には、浄水ユニット10を通過した通水に関する第2の流量情報を発電ユニット8で発電された出力値に基づいて算出する流量情報算出部6dと、流量情報算出部が算出した第2の流量情報が所定以下である場合には、発電ユニットが異常であると判定する異常判定部6eを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓装置に係わり、特に、発電機の電力により電磁弁を駆動して吐水と止水を切り換える水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、吐水と止水を切り換える水栓装置として、例えば、特許文献1に記載されているように、電磁弁の開閉に必要な電力を発電する発電機を備えた浄水器付き水栓が知られている。
このような発電機を備えた浄水器付き水栓においては、給水源からの水を給水する給水部と水栓本体とを通水させる通水路に電磁弁、発電機及び浄水器が設けられており、通水路内を流れる水流により回転する羽根車等の水車を備えた発電機により発電した電力の一部が電磁弁の開閉動作に利用されるようになっている。
【0003】
また、特許文献2では、塩素除去用の浄水カートリッジに通水して得られた浄水を電解槽で電気分解させてイオン水を生成する浄水器付き水栓が開示されており、吐水中に電解槽内でアルカリ水や酸性水等のイオン水を生成している状態で電解槽の電極板に過電流や過小電流などの電流異常が発生した際には、電極板に電圧を印加することなくイオン水を生成しないリトライ動作を行うようになっている。さらに、この浄水器付き水栓は、流水により回転する羽根車等の水車の回転数により流水量を検出する流量センサーを備え、吐水状態であっても流量センサーが流水量を検出しなくなった場合には、所定時間経過後に吐水を停止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−260460号公報
【特許文献2】特開2008−43900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されている浄水器付き水栓の発電機に用いられる水車は、通水路内の通水が駆動源であるため、比較的通水の瞬間流量が小さい回転起動時の初期段階では、回転がしにくく、比較的大きな回転トルクを要する。したがって、たとえ水車が回転したとしても、回転が不安定になりやすく、発電機としての出力も不安定になりやすいという問題がある。
また、従来の浄水器付き水栓について、浄水器に用いられている浄水カートリッジの交換やクリーニング等のメンテナンスを行うことなく長期的に使用した場合には、浄水カートリッジのろ過材に目詰まりが生じ、浄水カートリッジを通過する通水の瞬間流量も低下するため、さらに水車も回転しにくくなり、発電機としての出力もさらに不安定になるという問題がある。
したがって、特に、発電機の電力により電磁弁を駆動して吐水と止水を切り換える水栓装置においては、発電機の水車の回転の不具合等の発電機の異常が発生している場合に、このような発電機の異常をいかに正確に判断して対処するかが従来から要請された課題となっている。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来から要請された課題を解決するためになされたものであり、吐水と止水を切り換える電磁弁を駆動するための電力を発生させる発電部の異常を正確に判断することができる水栓装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、発電機の電力により電磁弁を駆動して吐水と止水を切り換える水栓装置であって、水を給水する給水部からの水が通水する通水路に設けられ、この通水路を開閉する電磁弁と、上記通水路に設けられ、上記電磁弁を通過する水の流れにより回転する水車を備え、この水車を回転させることにより上記電磁弁を駆動するための電力を発生させる発電部と、上記通水路に設けられ、上記通水路を流れる水を浄水する浄水手段と、上記電磁弁及び上記発電部の作動を制御する制御部と、を有し、上記制御部は、上記給水部から上記通水路に給水されて上記浄水手段を通過した通水に関する第1の流量情報を上記発電部で発電された出力値に基づいて算出し、上記第1の流量情報が所定以下である場合には、上記浄水手段を通過した通水に関する第2の流量情報を上記発電部で発電された出力値に基づいて算出する流量情報算出部を備え、上記制御部は、更に、上記流量情報算出部が算出した上記第2の流量情報が所定以下である場合には、上記発電部が異常であると判定する異常判定部を備えていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、制御部の流量情報算出部が、給水部から通水路に給水されて浄水手段を通過した通水に関する第1の流量情報を発電部で発電された出力値に基づいて算出し、この第1の流量情報が所定以下である場合には、流量情報算出部が、浄水手段を通過した通水に関する第2の流量情報を発電部で発電された出力値に基づいて算出する。そして、この流量情報算出部が算出した第2の流量情報が所定以下である場合には、制御部の異常判定部により発電部が異常であると判定することができる。この結果、浄水手段(例えば、ろ過材等の浄水カートリッジ)の目詰まりや不具合ではなく、発電部が異常であることを正確に判断することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記制御部の流量情報算出部は、上記浄水手段を通過した通水の瞬間流量を上記第1の流量情報として算出し、この第1の流量情報である瞬間流量が所定値以下である場合には、更に、上記流量情報算出部が前回算出した瞬間流量から今回算出した瞬間流量に減少しているときの両瞬間流量の差を第2の流量情報として算出し、上記両瞬間流量の差の大きさが所定以上である場合には、上記制御部の異常判定部が、上記発電部が異常であると判定する。
このように構成された本発明においては、制御部の流量情報算出部が算出した第1の流量情報である瞬間流量が所定値以下である場合には、更に、流量情報算出部が前回算出した瞬間流量から今回算出した瞬間流量に減少しているときの両瞬間流量の差を第2の流量情報として算出し、この両瞬間流量の差の大きさが所定以上である場合には、制御部の異常判定部が、発電部が異常であると判定することができるため、流量情報算出部や異常判定部以外に流量センサー等の流量検出手段を別途設ける必要がなく、発電部が異常であることをより正確に判断することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記制御部の流量情報算出部は、上記浄水手段を通過した通水の瞬間流量を上記第1の流量情報として算出し、この第1の流量情報である瞬間流量が所定値以下である場合には、更に、上記流量情報算出部が上記浄水手段を通過した通水の積算流量を上記第2の流量情報として算出し、上記積算流量が所定値以下である場合には、上記制御部の異常判定部が、上記発電部が異常であると判定する。
このように構成された本発明においては、制御部の流量情報算出部が算出した第1の流量情報である瞬間流量が所定値以下である場合には、更に、流量情報算出部が浄水手段を通過した通水の積算流量を上記第2の流量情報として算出し、この積算流量が所定値以下である場合には、制御部の異常判定部が、発電部が異常であると判定することができるため、流量情報算出部や異常判定部以外に流量センサー等の流量検出手段を別途設ける必要がなく、発電部が異常であることをより正確に判断することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記制御部は、上記異常判定部によって上記発電部が異常であると判定された場合には、上記発電部の水車の回転を停止させた後、上記水車を再び回転させるリトライ動作を実行する。
このように構成された本発明においては、異常判定部によって発電部が異常であると判定された場合に、制御部が敢えて発電部の水車の回転を停止させた後、水車を再び回転させるリトライ動作を実行し、このリトライ動作後に水車が正常に回転すれば、次のリトライ動作が不要となり、発電部の異常が解消されていることを確認することができる。一方、リトライ動作後においても発電部の水車が回転しない等の発電部の異常があれば、異常判定部によって発電部が異常であると判定され、再びリトライ動作が実行されるため、依然として発電部の異常が解消されていないことを再確認することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、更に、上記制御部の異常判定部によって上記発電部が異常であると判定された場合には、上記発電部が異常であることを報知する報知部を有する。
このように構成された本発明においては、制御部の異常判定部によって発電部が異常であると判定された場合に、報知部が発電部の異常状態を報知することにより、使用者が発電部の異常事態に対して把握しやすくなり、的確に対応することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、更に、上記制御部の異常判定部によって上記発電部が異常であると判定された場合には、上記発電部が異常であることを報知する報知部を有し、この報知部は、更に、上記リトライ動作後、上記制御部の異常判定部によって上記発電部が異常であると判定された場合に上記発電部が異常であることを報知する。
このように構成された本発明においては、リトライ動作後においても制御部の異常判定部によって発電部が異常であると判定された場合に、報知部がリトライ動作後の発電部の異常状態を報知することにより、使用者がリトライ動作後の発電部の異常事態に対して把握しやすくなり、的確に対応することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、上記制御部は、上記異常判定部によって上記発電部が異常であると判定された場合には、上記電磁弁を閉鎖して上記給水部から上記通水路への給水を停止する。
このように構成された本発明においては、制御部の異常判定部によって発電部が異常であると判定された場合には、制御部が電磁弁を閉鎖し、給水部から通水路への給水を停止して通水路に水を流さないようにすることにより、使用者が発電部の異常事態に対して把握しやすくなり、的確に対応することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水栓装置によれば、吐水と止水を切り換える電磁弁を駆動するための電力を発生させる発電部の異常を正確に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態による水栓装置の全体構造を概略的に示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による水栓装置において実行される通水制御の一連の流れを概略的に示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態による水栓装置において実行されるリトライ動作モードに関する制御内容を概略的に示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態による水栓装置において実行されるリトライ動作モードに関する制御内容の変形例を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面により、本発明の一実施形態による水栓装置を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による水栓装置の内部構造を概略的に示すブロック図である。
図1に示すように、符号1は、本発明の一実施形態による水栓装置を示し、この水栓装置1は、内部に通水路2aを形成すると共に、この通水路2aの下流側端部に吐水口2bを形成するスパウト2cを備えた水栓装置本体2を有する。
【0017】
つぎに、水栓装置1は、水栓装置本体2に設けられ、水栓装置1の吐水と止水を切り替え操作する操作部である操作ユニット4を有する。この操作ユニット4は、水栓装置1の吐水と止水を手動で切り替え可能であるか、或いは、センサー(図示せず)等の検知情報により自動で切り替え可能である操作スイッチ4aを備え、この操作スイッチ4aが使用者による手動又は自動操作によって操作されると、その操作信号が後述するコントローラ6に送信されるようになっている。
また、操作スイッチ4a自体とその周辺部には、LED等の発光ランプからなる表示ランプ4bが設けられ、この表示ランプ4bは、吐水動作及びこれに関連する準備動作や、後述する発電ユニット8の不具合等の異常に基づくリトライ動作(再起動動作)等の動作状況を表示したり、後述する浄水ユニット10の浄水カートリッジ10aの交換やメンテナンスを要求するための指示を表示することができるようになっている。
さらに、操作スイッチ4aの周辺部には、ブザー4cが設けられ、このブザー4cは、吐水動作及びこれに関連する準備動作や、後述する発電ユニット8の不具合等の異常に基づくリトライ動作(再起動動作)等に基づいて発音するようになっている。
【0018】
つぎに、水栓装置1は、水道等の給水源(図示せず)からの水を水栓装置本体2へ給水する給水部12を有し、この給水部12は、給水源(図示せず)に接続されて水栓装置1の給水の元栓である止水栓12aと、この止水栓12aの下流側の通水路14に設けられて通水路14内の流量を所定流量に調整する定流量弁12bを備えている。
なお、これらの止水栓12a及び定流量弁12bは一般的なものであるため、詳細な説明は省略する。
【0019】
つぎに、水栓装置1は、給水部12の定流量弁12bの下流側の通水路14に設けられ、この通水路14を開閉する電磁弁16を有する。
また、水栓装置1は、電磁弁16の下流側の通水路14に設けられ、電磁弁16を通過した通水路14の水の流れにより回転する羽根車等の水車(図示せず)を備えた発電ユニット8を有する。この発電ユニット8は、発電ユニット8に内蔵されている水車(図示せず)を回転させることにより電磁弁16を駆動するための電力を発生させる発電部として機能するようになっている。
なお、これらの電磁弁16及び発電ユニット8は一般的なものであるため、詳細な説明は省略する。
【0020】
つぎに、水栓装置1は、発電ユニット8の下流側の通水路14に設けられ、発電ユニット8を通過した通水を浄水する浄水手段である浄水ユニット10を有し、この浄水ユニット10内には、活性炭素繊維や浸透膜等からなるろ材(フィルター)を備えた浄水カートリッジ10aが着脱可能に内蔵されている。
なお、このような浄水カートリッジ10aは一般的なものであるため、詳細な説明は省略する。
また、浄水ユニット10の浄水カートリッジ10aを通過した浄水は、浄水ユニット10の下流側の通水路14を経て水栓装置本体2のスパウト2c内の通水路2aを通過し、吐水口2bから吐水されるようになっている。
【0021】
さらに、水栓装置1は、電磁弁16及び発電ユニット8の作動を制御する制御部であるコントローラ6を有し、このコントローラ6は、制御基板6a、蓄電装置6b及び電池6cを備えている。
コントローラ6の制御基板6aは、操作ユニット4の操作スイッチ4aの操作による操作ユニット4からの操作信号を受信し、この受信した操作信号に基づいて電磁弁16を開弁又は閉弁させる制御信号を電磁弁16に送信するようになっており、電磁弁16は、このコントローラ6の制御基板6aからの制御信号により開閉動作を行うようになっている。
【0022】
コントローラ6の蓄電装置6bは、電磁弁16が開弁中に、通水路14の水流により発電ユニット8の水車(図示せず)が回転して発電ユニット8で発生した電力を蓄電できるようになっている。
また、コントローラ6の電池6cは、コントローラ6の内部の所定の取付位置に取り付けられ、コントローラ6の蓄電装置6bと電気的に接続されている。この電池6cは、水栓装置1の使用開始時や、発電ユニット8による発電がほとんど行われておらず、コントローラ6の蓄電装置6bに電力がほとんど蓄電されていない水栓装置1の使用初期状態において、電池6cから蓄電装置6bに電力を供給し、電磁弁16等の水栓装置1の関連機器を作動させるための電力をバックアップするために使用されるようになっている。
なお、これらの蓄電装置6b及び電池6cは一般的なものであるため、詳細な説明は省略する。
【0023】
さらに、コントローラ6の制御基板6aは、流量情報算出部6d及び異常判定部6eを備えている。
流量情報算出部6dは、通水の瞬間流量Q、積算流量V、及び使用回数前後の瞬間流量差ΔQ等の流量情報を算出することができるようになっている。
より具体的には、流量情報算出部6dは、給水部12から通水路14に給水されて電磁弁16、発電ユニット8を経て浄水ユニット10を通過した通水に関する第1の流量情報である通水の瞬間流量Q1[L/min]を発電ユニット8で発電された出力値に基づいて算出し、この算出した瞬間流量Q1[L/min]が所定値以下である場合には、更に、流量情報算出部6dが前回算出した瞬間流量Q0から今回算出した瞬間流量Q1に減少しているときの両瞬間流量の差ΔQ(=Q1−Q0)[L/min]を第2の流量情報として算出し、両瞬間流量の差ΔQの大きさが所定値以上である場合には、コントローラ6の制御基板6aの異常判定部6eが、発電ユニット8に異常や不具合が発生していると判定するようになっている。
【0024】
また、コントローラ6の制御基板6aの異常判定部6eによって発電ユニット8が異常であると判定された場合には、操作ユニット4の表示ランプ4bが点滅すると共にブザー4cが発音し、これらのブザー4cと操作ユニット4の表示ランプ4bが発電ユニット8の異常を報知する手段として機能するようにもなっている。
【0025】
さらに、コントローラ6の制御基板6aは、水栓装置1の使用回毎に電磁弁16を開弁して通水路14に通水させる時間や前回通水を終了してから今回通水を開始するまでの時間を計測したり、通水制御の実行を時間管理したりするタイマー6fを備えている。
また、コントローラ6の制御基板6aは、流量情報算出部6dが算出した通水の瞬間流量Q、積算流量V、及び使用回数前後の瞬間流量差ΔQを記憶するメモリ6gを備えている。
【0026】
つぎに、図2及び図3を参照して、本発明の一実施形態による水栓装置において、電磁弁が開弁して通常の通水が行われる前に実行される通常通水準備工程から、通常の通水が行われ、電磁弁が閉弁して通水が停止されるまでの通水制御の内容について説明する。
図2は本発明の一実施形態による水栓装置において実行される通水制御の一連の流れを概略的に示すフローチャートであり、図3は本発明の一実施形態による水栓装置において実行されるリトライ動作モードに関する制御内容を概略的に示すフローチャートである。なお、図2及び図3において、Sは各ステップを示している。
【0027】
まず、図2に示すように、ステップS1で使用者により操作ユニット4の操作スイッチ4aが入力(オン)されると、この入力された信号がコントローラ6に送信され、ステップS2に進む。
そして、ステップS2において、電磁弁16を開弁させる制御信号がコントローラ6から電磁弁16に送信され、電磁弁16が開弁し、ステップS3に進む。
【0028】
つぎに、ステップS3において、コントローラ6が、初回の通水であるのか、又は通水制御をリセットした後の初めての通水であるか否かを判断し、初回の通水又はリセット後の初めての通水である場合には、ステップS4において準備モードをタイマー6fの計測によって所定時間T1(例えば、30秒間)実行する。
また、ステップS4で実行される準備モードでは、通常の通水を行う前に、所定時間(例えば、30秒間)吐水を行う。浄水ユニット10では微粒子やトリハロメタン等有機物とともに水道水中に殺菌目的で含まれる残留塩素も除去するので、浄水ユニットの下流側で止水した際塩素の除去された水が残留し雑菌が繁殖する可能性がある。そのため、浄水ユニット10の下流側の通水路に残っていた残水を捨てる、いわゆる、「捨て水」と呼ばれる吐水作業を実行する。
このような吐水作業中、操作ユニット4の表示ランプ4bが、例えば、オレンジ色で点滅しながら、操作ユニット4のブザー4cが発音し続けているが、タイマー6fの計測によって所定時間T1(例えば、30秒間)吐水を行って作業が終了すると、表示ランプ4bは消灯し、ブザー4cは停止する。そして、タイマー6fがリセットされ、ステップS5へ進む。
【0029】
一方、ステップS3において、初回の通水又はリセット後の初めての通水でない場合には、ステップS6に進み、前回の通水から所定時間(例えば、48時間)以上経過しているか否かを判断する。そして、前回の通水から所定時間(例えば、48時間)以上経過している場合には、ステップS4に進む。
【0030】
また、ステップS6において、前回の通水から所定時間(例えば、48時間)以上経過していない場合には、ステップS7に進み、前回の通水から所定時間(例えば、5時間)以上経過しているか否かを判断する。そして、前回の通水から所定時間(例えば、5時間)以上経過している場合には、ステップS8に進み、ステップS4と同様な準備モードをタイマー6fの計測によって所定時間T2(例えば、10秒間)実行する。
【0031】
一方、ステップS7において、前回の通水から所定時間(例えば、5時間)以上経過していない場合には、ステップS5に進む。
【0032】
つぎに、ステップS5においては、通常通水モードを実行する。具体的には、タイマー6fの時間計測が開始し、操作ユニット4の表示ランプ4bが、ステップS4,S8で実行される準備モードにおける点滅色と異なる色(例えば、青色)で点滅する。そして、操作ユニット4のブザー4cが所定時間(例えば、0.1秒間)1回のみ発音した後に停止し、表示ランプ4bは点滅を継続し、通常通水モードを実行していることを報知する。このとき、電磁弁16は閉弁することなく、吐水は継続して行われる。
【0033】
つぎに、S9において、ステップS1で使用者により操作ユニット4の操作スイッチ4aが再び入力(オフ)された場合には、この入力された信号がコントローラ6に送信され、ステップS10に進む。そして、コントローラ6から電磁弁16に送信された制御信号により、電磁弁16が閉弁し、通常通水モードによる通水が停止される。
【0034】
一方、ステップS9において、ステップS1で使用者により操作ユニット4の操作スイッチ4aが再び入力(オフ)されていない場合には、ステップS11において、図3に示す後述するリトライ動作(再起動動作)を行った回数(リトライ回数N)が2回か否かを確認する。そして、ステップS11において、リトライ動作が2回行われていた場合には、ステップS10に進み、通常通水モードによる通水が停止される。
【0035】
また、ステップS11において、リトライ動作が2回行われていない場合には、ステップS12に進む。ステップS12においては、コントローラ6の流量情報算出部6dが、給水部12から通水路14に給水されて電磁弁16、発電ユニット8を経て浄水ユニット10を通過した通水に関する第1の流量情報である通水の瞬間流量Q1[L/min]を発電ユニット8で発電された出力値に基づいて算出した後、ステップS13に進み、詳細は後述する図3に示すリトライ動作が実行される。
【0036】
つぎに、ステップS13のリトライ動作モードが終了すると、ステップS14において、タイマー6fの計測時間T3が所定時間(例えば、10秒)に達すると、ステップS15に進み、コントローラ6の流量情報算出部6dが算出した流量情報(使用回毎の瞬間流量Q)をコントローラ6の制御基板6aのメモリ6gに記憶する。
【0037】
つぎに、図3を参照して、ステップS13において実行されるリトライ動作モードに関する制御内容について具体的に説明する。
まず、図2に示すステップS13においてリトライ動作モードが開始されると、図3に示すステップS13aにおいて、流量情報算出部6dが、給水部12から通水路14に給水されて電磁弁16、発電ユニット8を経て浄水ユニット10を通過した通水に関する第1の流量情報である通水の瞬間流量Q1[L/min]を発電ユニット8で発電された出力値である電力値に基づいて算出する。そして、この算出した瞬間流量Q1[L/min]が所定値以下である場合、すなわち、例えば、通常の通水の瞬間流量が3.0[L/min]〜3.5[L/min]に対し、流量情報算出部6dが算出した瞬間流量Q1が1.2[L/min]以下である場合には、図3に示すステップS13bに進む。
【0038】
ステップS13bでは、流量情報算出部6dが前回算出した瞬間流量Q0から今回算出した瞬間流量Q1に減少しているときの両瞬間流量の差ΔQ(=Q1−Q0)[L/min]を第2の流量情報として算出する。
そして、この両瞬間流量差ΔQが、例えば、−1.0[L/min]以下となる場合、言い換えると、両瞬間流量差ΔQの大きさ(絶対値|ΔQ|)が所定値(例えば、1.0[L/min])以上となり、今回算出した瞬間流量Q1が前回算出した瞬間流量Q0に対して、例えば、1.0[L/min]以上減少している場合には、コントローラ6の制御基板6aの異常判定部6eが、発電ユニット8の水車(図示せず)が回転不足である等、発電ユニット8の異常や不具合が発生していると判定し、ステップS13cに進む。
【0039】
つぎに、ステップS13cでは、実質的なリトライ動作が開始される。そして、操作ユニット4の表示ランプ4bが点滅すると共に、操作ユニット4のブザー4cが発音し、発電ユニット8が異常状態であることを報知し、ステップS13dに進む。
ステップS13dでは、操作ユニット4から送信された発電ユニット8の異常を報知する信号を受信したコントローラ6が、電磁弁16を閉弁させる信号を送信し、電磁弁16が閉弁する。このとき、発電ユニット8の水車(図示せず)の回転も停止する。
【0040】
つぎに、ステップS13eでは、操作ユニット4の表示ランプ4bの点滅が消滅すると共に、操作ユニット4のブザー4cの音が消滅し、ステップS13fにおいて、タイマー6fで時間管理されている通水時間がリセットされる。
そして、ステップS13gにおいて、電磁弁16を開弁させる信号がコントローラ6から電磁弁16に送信され、電磁弁16が開弁し、発電ユニット8の水車(図示せず)が再び回転し、リターンとなる。
【0041】
なお、図3に示すステップS13a〜S13gまでのリトライ動作モードにおけるリトライ動作を何度も繰り返してしまう場合や、リトライ動作を行っても電磁弁16の開閉動作を行っても発電ユニット8による発電出力がコントローラ6において全く確認されない場合には、コントローラ6の制御基板6aの異常判定部6eが、発電ユニット8の異常状態を判定し、リトライ動作モードとは別途のエラーモード(図示せず)が実行される。
【0042】
上述した本発明の一実施形態による水栓装置1によれば、コントローラ6の制御基板6aの流量情報算出部6dが、給水部12から通水路14に給水されて電磁弁16、発電ユニット8を経て浄水ユニット10を通過した通水に関する瞬間流量Q1を第1の流量情報として、発電ユニット8で発電された出力値に基づいて算出する。そして、この算出した瞬間流量Q1が、例えば、通常の通水の瞬間流量が3.0[L/min]〜3.5[L/min]に対し、流量情報算出部6dが算出した瞬間流量Q1が1.2[L/min]以下である場合には、流量情報算出部6dが、前回算出した瞬間流量Q0から今回算出した瞬間流量Q1に減少しているときの両瞬間流量の差ΔQを第2の流量情報として算出し、この両瞬間流量の差ΔQの大きさ(絶対値|ΔQ|)が所定値(例えば、1.0[L/min])以上となり、今回算出した瞬間流量Q1が前回算出した瞬間流量Q0に対して、例えば、1.0[L/min]以上減少している場合には、コントローラ6の制御基板6aの異常判定部6eが、発電ユニット8の水車(図示せず)が回転不足である等、発電ユニット8の異常や不具合が発生していると判定するため、水栓装置1の不具合の要因が浄水ユニット10の浄水カートリッジ10aの目詰まり等の不具合ではなく、発電ユニット8が異常であることを正確に判断することができる。また、コントローラ6の制御基板6aの流量情報算出部6dや異常判定部6e以外に流量センサー等の流量検出手段を別途設ける必要がなく、発電ユニット8が異常であることをより正確に判断することができる。
【0043】
また、本実施形態による水栓装置1によれば、コントローラ6の制御基板6aの異常判定部6eによって発電ユニット8が異常であると判定された場合に、コントローラ6の制御によりリトライ動作を実行し、図3のステップS13dにおいて敢えて電磁弁16を閉弁して発電ユニット8の水車(図示せず)の回転を一旦停止させた後、図3のステップS13gにおいて発電ユニット8の水車(図示せず)を再び回転させる。したがって、このリトライ動作後に水車(図示せず)が正常に回転すれば、次のリトライ動作が不要となり、発電ユニット8の異常が解消されていることを確認することができる。
一方、リトライ動作後において電磁弁16が開弁しているにもかかわらず、発電ユニット8の水車(図示せず)が回転しない等の発電ユニット8の異常があれば、コントローラ6の制御基板6aの異常判定部6eによって発電ユニット8が異常であると判定され、再びリトライ動作が実行されるため、依然として発電ユニット8の異常が解消されていないことを再確認することができる。
【0044】
また、本実施形態による水栓装置1によれば、コントローラ6の制御基板6aの異常判定部6eによって発電ユニット8が異常であると判定された場合には、操作ユニット4の表示ランプ4bが点滅すると共に、操作ユニット4のブザー4cが発音して発電ユニット8の異常状態を報知することにより、使用者が発電ユニット8の異常事態に対して把握しやすくなり、的確に対応することができる。
【0045】
さらに、本実施形態による水栓装置1によれば、リトライ動作後においてもコントローラ6の制御基板6aの異常判定部6eによって発電ユニット8が異常であると判定された場合には、操作ユニット4の表示ランプ4bが点滅すると共に、操作ユニット4のブザー4cが発音して発電ユニット8の異常状態を報知することにより、使用者が発電ユニット8の異常事態に対して把握しやすくなり、的確に対応することができる。
【0046】
さらに、本実施形態による水栓装置1によれば、コントローラ6の制御基板6aの異常判定部6eによって発電ユニット8が異常であると判定された場合には、コントローラ6の制御によりリトライ動作を実行し、コントローラ6が電磁弁16を閉弁し(図3のステップS13d参照)、給水部12から通水路14への給水を停止して通水路14に水を流さないようにすることにより、使用者が発電ユニット8の異常事態に対して把握しやすくなり、的確に対応することができる。また、リトライ動作によって、コントローラ6が電磁弁16を敢えて一旦閉弁させた後に(図3のステップS13d参照)、再び電磁弁16を開弁させることにより(図3のステップS13g参照)、電磁弁16の閉止直後の発電ユニット8の水車(図示せず)が揺れているような不安定な状態時に、再度電磁弁16を開いて通水による圧力が印加されるため、比較的大きな回転トルクを要してリトライ動作前には回転しにくかった発電ユニット8の水車でも回転することができるため、発電ユニット8の異常を解消することもできる。
【0047】
つぎに、図4を参照して、本発明の一実施形態による水栓装置において実行されるリトライ動作モードに関する制御内容の変形例について説明する。
図4は、本発明の一実施形態による水栓装置において実行されるリトライ動作モードに関する制御内容の変形例を概略的に示すフローチャートである。なお、図4において、Sは各ステップを示している。
【0048】
図4に示すように、本実施形態による水栓装置において実行されるリトライ動作モードに関する制御内容の変形例においては、図3に示すリトライ動作モードのステップS13bに対応する図4のステップS113bの制御内容のみが異なっており、他のステップの制御内容については、図3と図4は互いに共通している。
したがって、図4のステップS113bの制御内容のみについて説明し、他のステップについては、説明を省略する。
【0049】
まず、リトライ動作モードが開始されると、図4に示すステップS113aにおいて、図3に示すステップS13aと同様に、流量情報算出部6dが、給水部12から通水路14に給水されて電磁弁16、発電ユニット8を経て浄水ユニット10を通過した通水に関する第1の流量情報である通水の瞬間流量Q1[L/min]を発電ユニット8で発電された出力値である電力値に基づいて算出するようになっている。そして、この算出した瞬間流量Q1[L/min]が所定値以下である場合、すなわち、例えば、通常の通水の瞬間流量が3.0[L/min]〜3.5[L/min]に対し、流量情報算出部6dが算出した瞬間流量Q1が1.2[L/min]以下である場合には、図4に示すステップS113bに進むようになっている。
【0050】
つぎに、ステップS113bでは、流量情報算出部6dが、給水部12から通水路14に給水されて電磁弁16、発電ユニット8を経て浄水ユニット10を通過した通水の積算流量Vを第2の流量情報として算出し、この算出した積算流量Vが所定値以下(例えば、3000[L]以下)である場合には、コントローラ6の制御基板6aの異常判定部6eが、発電ユニット8の水車(図示せず)が回転不足である等、発電ユニット8の異常や不具合が発生していると判定し、ステップS113cに進むようになっている。
【0051】
上述した本実施形態による水栓装置において実行されるリトライ動作モードに関する制御内容の変形例によれば、コントローラ6の制御基板6aの流量情報算出部6dが算出した第1の流量情報である瞬間流量Q1が所定値以下(例えば、通常の通水の瞬間流量が3.0[L/min]〜3.5[L/min]に対し、流量情報算出部6dが算出した瞬間流量Q1が1.2[L/min]以下)である場合には、流量情報算出部6dが、給水部12から通水路14に給水されて電磁弁16、発電ユニット8を経て浄水ユニット10を通過した通水の積算流量Vを第2の流量情報として算出する。そして、この積算流量Vが所定値以下(例えば、3000[L]以下)である場合には、コントローラ6の制御基板6aの異常判定部6eが、発電ユニット8が異常であると判定することができるため、コントローラ6の制御基板6aの流量情報算出部6dや異常判定部6e以外に流量センサー等の流量検出手段を別途設ける必要がなく、発電ユニット8が異常であることをより正確に判断することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 水栓装置
2 水栓装置本体
2a 通水路
2b 吐水口
2c スパウト
4 操作ユニット
4a 操作スイッチ
4b 表示ランプ(報知部)
4c ブザー(報知部)
6 コントローラ(制御部)
6a 制御基板
6b 蓄電装置
6c 電池
6d 流量情報算出部
6e 異常判定部
6f タイマー
6g メモリ
8 発電ユニット(発電部)
10 浄水ユニット(浄水手段)
10a 浄水カートリッジ
12 給水部
12a 止水栓
12b 定流量弁
14 通水路
16 電磁弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機の電力により電磁弁を駆動して吐水と止水を切り換える水栓装置であって、
水を給水する給水部からの水が通水する通水路に設けられ、この通水路を開閉する電磁弁と、
上記通水路に設けられ、上記電磁弁を通過する水の流れにより回転する水車を備え、この水車を回転させることにより上記電磁弁を駆動するための電力を発生させる発電部と、
上記通水路に設けられ、上記通水路を流れる水を浄水する浄水手段と、
上記電磁弁及び上記発電部の作動を制御する制御部と、を有し、
上記制御部は、上記給水部から上記通水路に給水されて上記浄水手段を通過した通水に関する第1の流量情報を上記発電部で発電された出力値に基づいて算出し、上記第1の流量情報が所定以下である場合には、上記浄水手段を通過した通水に関する第2の流量情報を上記発電部で発電された出力値に基づいて算出する流量情報算出部を備え、上記制御部は、更に、上記流量情報算出部が算出した上記第2の流量情報が所定以下である場合には、上記発電部が異常であると判定する異常判定部を備えていることを特徴とする水栓装置。
【請求項2】
上記制御部の流量情報算出部は、上記浄水手段を通過した通水の瞬間流量を上記第1の流量情報として算出し、この第1の流量情報である瞬間流量が所定値以下である場合には、更に、上記流量情報算出部が前回算出した瞬間流量から今回算出した瞬間流量に減少しているときの両瞬間流量の差を第2の流量情報として算出し、上記両瞬間流量の差の大きさが所定以上である場合には、上記制御部の異常判定部が、上記発電部が異常であると判定する請求項1記載の水栓装置。
【請求項3】
上記制御部の流量情報算出部は、上記浄水手段を通過した通水の瞬間流量を上記第1の流量情報として算出し、この第1の流量情報である瞬間流量が所定値以下である場合には、更に、上記流量情報算出部が上記浄水手段を通過した通水の積算流量を上記第2の流量情報として算出し、上記積算流量が所定値以下である場合には、上記制御部の異常判定部が、上記発電部が異常であると判定する請求項1記載の水栓装置。
【請求項4】
上記制御部は、上記異常判定部によって上記発電部が異常であると判定された場合には、上記発電部の水車の回転を停止させた後、上記水車を再び回転させるリトライ動作を実行する請求項2又は3に記載の水栓装置。
【請求項5】
更に、上記制御部の異常判定部によって上記発電部が異常であると判定された場合には、上記発電部が異常であることを報知する報知部を有する請求項2又は3に記載の水栓装置。
【請求項6】
更に、上記制御部の異常判定部によって上記発電部が異常であると判定された場合には、上記発電部が異常であることを報知する報知部を有し、この報知部は、更に、上記リトライ動作後、上記制御部の異常判定部によって上記発電部が異常であると判定された場合に上記発電部が異常であることを報知する請求項4記載の水栓装置。
【請求項7】
上記制御部は、上記異常判定部によって上記発電部が異常であると判定された場合には、上記電磁弁を閉鎖して上記給水部から上記通水路への給水を停止する請求項2乃至6の何れか1項に記載の水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−158881(P2012−158881A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17871(P2011−17871)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】