説明

水洗トイレの流水システム

【課題】 災害等により停電が発生し、電動操作機構部を作動させることができない場合であっても、そのまま通常通り使用できるようにして利用者の利便性を確保するとともに、追加する構造の簡略化及び低コスト化を図る。
【解決手段】 電動操作機構部3に加えて、手動により操作可能な手動操作部4と、操作ハンドルVh又はフラッシュバルブVmに係合させる係合部5と、手動操作部4の手動操作に基づく変位を係合部5に伝達する変位伝達部6とを備え、手動操作部4の操作により、フラッシュバルブVmを開側に切換えて便器Bに洗浄水を流し、かつ操作ハンドルVhの手動操作を解除し、フラッシュバルブVmを閉側に切換えて便器Bに洗浄水を流すのを停止させる手動操作機構部7を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動駆動部によりフラッシュバルブの操作ハンドルを操作して便器に洗浄水を流すための水洗トイレの流水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、オフィスビルや公共施設等の水洗トイレ、特に、和式大便器を用いた水洗トイレの場合、一回に使用する洗浄水の量は、通常、10リットルを超える大量の水道水が使用されるため、無駄な流水をできるだけ排することが、節水対策において重要な課題となる。
【0003】
したがって、従来より、節水機能を付加した水洗トイレも知られており、既に、本出願人も、このような節水機能を有する水洗トイレの流水システムを特許文献1により提案した。この流水システムは、フラッシュバルブの操作ハンドルを少なくとも開位置に操作して便器に洗浄水を流す水洗トイレの流水システムであって、駆動モータの回転を運動変換機構により運動変換して、操作ハンドルを開位置又は閉位置に選択的に変位させる駆動部と、この駆動部の出力部に係合する係合部を形成した操作ハンドルとを有する駆動機構を備えるとともに、少なくとも、予め設定した条件により擬音を発生させ、かつ駆動部を駆動制御する制御手段と、この制御手段の制御に係わるデータを記憶するデータ記憶手段とを有するコントロールユニットを備えて構成したものである。これにより、実際の使用状態を的確かつ容易に把握でき、データ解析を行うなどにより、流水システムの本来の機能や利便性を確保しつつ、より発展させた節水対策を行ったり節水意識を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−92348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来における水洗トイレの流水システムは、駆動モータの回転を運動変換機構により運動変換して、操作ハンドルを開位置又は閉位置に選択的に変位させる電動式の駆動部を備えるため、停電時には作動させることができない。したがって、水洗トイレを使用したとしても、洗浄水を流すことができないため、衛生上及び環境上の悪化を招き、使用禁止措置を採らざる得ない。
【0006】
一方、予め準備した予備バッテリ等に接続したり、或いは一時的に流水システムの一部を取り外して操作ハンドルを手で操作できるようにするなどの、幾つかの対策も考えられるが、全体の構成が大掛かりとなりコスト面で不利になるとともに、停電時における準備や操作が大変となる。特に、水洗トイレによっては、流水システムを壁の裏側の空間に設置する場合もあるため、この場合には、予め壁に開閉扉を設け、停電時に、この開閉扉を開けて操作ハンドルを操作できるようにする必要があり、管理者にとってのコストアップ要因になるとともに、利用者にとっても利便性に難があるという解決すべき課題が存在した。
【0007】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した水洗トイレの流水システムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するため、電動駆動部2により、フラッシュバルブVmの操作ハンドルVhを操作し、フラッシュバルブVmを開側に切換えて便器Bに洗浄水を流し、かつ当該操作ハンドルVhの操作を解除し、フラッシュバルブVmを閉側に切換えて便器Bに洗浄水を流すのを停止させる電動操作機構部3を備える水洗トイレTの流水システム1を構成するに際して、電動操作機構部3に加えて、手動により操作可能な手動操作部4と、操作ハンドルVh又はフラッシュバルブVmに係合させる係合部5と、手動操作部4の手動操作に基づく変位を係合部5に伝達する変位伝達部6とを備え、手動操作部4の操作により、フラッシュバルブVmを開側に切換えて便器Bに洗浄水を流し、かつ操作ハンドルVhの手動操作を解除し、フラッシュバルブVmを閉側に切換えて便器Bに洗浄水を流すのを停止させる手動操作機構部7を設けたことを特徴とする。
【0009】
この場合、発明の好適な態様により、操作ハンドルVhを操作前の位置に戻すリターンスプリング11を備えるとともに、このリターンスプリング11は、フラッシュバルブVmに内蔵した既存のリターンスプリングと交換し、かつ当該既存のリターンスプリングよりも弾性力を小さく選定したリターンスプリング11を用いることができる。一方、変位伝達部6には、フレキシブルなワイヤ部材12を用いることができる。なお、手動操作部4には、手動により押操作可能な押ボタン4bを用いてもよいし、手動により引操作可能なツマミ4tを用いてもよい。この際、押ボタン4bは、変位伝達部6及び係合部5を兼ねることができる。
【発明の効果】
【0010】
このような構成を有する本発明に係る水洗トイレの流水システム1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0011】
(1) 電動操作機構部3に加えて、手動操作部4の操作により、フラッシュバルブVmを開側に切換えて便器Bに洗浄水を流し、かつ操作ハンドルVhの手動操作を解除し、フラッシュバルブVmを閉側に切換えて便器Bに洗浄水を流すのを停止させる手動操作機構部7を設けたため、例えば、災害等により停電が発生し、電動操作機構部3を作動させることができない場合であっても、使用禁止措置を採ることなく、通常通り使用することができる。
【0012】
(2) 手動により操作可能な手動操作部4と、操作ハンドルVh又はフラッシュバルブVmに係合させる係合部5と、手動操作部4の手動操作に基づく変位を係合部5に伝達する変位伝達部6とを備えて構成するため、簡易な追加構成で足り、容易かつ低コストに実施できるとともに、停電時には、特に準備をすることなくそのままの状態で操作できるなど、利用者の利便性を確保できる。
【0013】
(3) 好適な態様により、操作ハンドルVhを操作前の位置に戻すリターンスプリング11を備えるとともに、このリターンスプリング11は、フラッシュバルブVmに内蔵した既存のリターンスプリングと交換し、かつ当該既存のリターンスプリングよりも弾性力を小さく選定したリターンスプリング11を用いれば、電動操作機構部3の負荷の軽減化により、消費電力の低減、更にはフラッシュバルブVmの周辺構成の簡略化,低コスト化及び小型化に寄与できるとともに、手動操作機構部7の操作力軽減を含む操作性の向上に寄与できる。
【0014】
(4) 好適な態様により、変位伝達部6に、フレキシブルなワイヤ部材12を用いれば、手動操作部4の配設位置や向き(角度)等を任意に選定できるため、設計自由度の向上及び施工性の向上に寄与できる。
【0015】
(5) 好適な態様により、手動操作部4として、手動により押操作可能な押ボタン4bを用いれば、最も一般的かつ汎用的な操作手段を構成できるため、良好な操作性を確保できるとともに、利用者にとって迷うことなく容易に操作できる。
【0016】
(6) 好適な態様により、押ボタン4bに、変位伝達部6及び係合部5を兼用させれば、別途の変位伝達部6及び係合部5が不要となるため、更なる構成の簡略化,省スペース化及び低コスト化に寄与できる。
【0017】
(7) 好適な態様により、手動操作部4として、手動により引操作可能なツマミ4tを用いれば、手動操作部4の変位をより確実かつ強力に伝達できるとともに、変位伝達部6の構成簡略化及び省スペース化にも寄与できる。したがって、手動操作機構部7の配設スペースが制限され、押ボタン4bを用いた手動操作機構部7を配設できない場合にも設置可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好適実施形態に係る水洗トイレの流水システムの一部抽出拡大断面を含む構成図、
【図2】同流水システムを備える水洗トイレの全体構成図、
【図3】同流水システムの電気系統ブロック図、
【図4】同流水システムの全体の動作を説明するためのフローチャート、
【図5】同流水システムに備える押ボタンを押操作した状態を示す構成図、
【図6】同流水システムに備える手動操作部の変更例を示す構成図、
【図7】本発明の変更実施形態に係る流水システムの一部断面構成図、
【図8】図7に示した流水システムの変更例を示す一部断面構成図、
【図9】図1に示した流水システムの変更例を示す一部断面構成図、
【図10】本発明の他の変更実施形態に係る流水システムの一部断面構成図、
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
まず、本実施形態に係る流水システム2の構成について、図1〜図3を参照して具体的に説明する。
【0021】
図2は、トイレブースRに設置された水洗トイレTを示し、Bは和式の便器である。この水洗トイレTは、便器Bに洗浄水(水道水)を流す流水システム1を備えている。例示のトイレブースRは壁Rwにより囲まれており、流水システム1における流水系は、図1及び図2に示すように、トイレブースRの前方に位置する壁Rwの向こう側(裏側)に配設してある。
【0022】
図1に示す流水システム1において、Vmはフラッシュバルブであり、一側の側面に配した流水入口Vmi,底部に配した流水出口Vmo及び他側(反対側)の側面に配した操作ハンドル突出口Vmrを有する。この場合、流水入口Vmiは、図2に示すように、止水栓22を介して上流側の水道管23に接続するとともに、流水出口Vmoはバキュームブレーカ24を介して便器B側に接続する。また、図1に示すように、操作ハンドル突出口Vmrからは操作ハンドルVhが突出し、この操作ハンドルVhはフラッシュバルブVmに内蔵する弁機構側に係合する。なお、水道管23,止水栓22,フラッシュバルブVm,バキュームブレーカ24,便器Bに至る流水系は既存の流水経路と同じである。
【0023】
一方、図2に示すように、流水システム1には、基本構成として、駆動ユニットUd及びコントロールユニットUcを含む電動操作機構部3を備えるとともに、停電用の手動操作機構部7を備える。駆動ユニットUdは、図1に示すように、壁Rwの裏側に設置させたフラッシュバルブVmにおける操作ハンドル突出口Vmrに、一端側を固定することにより操作ハンドルVhの真上に位置させる。また、本実施形態の場合、既設のフラッシュバルブVmはそのまま利用し、図1に一部抽出拡大断面で示すように、フラッシュバルブVmに内蔵する既存のリターンスプリングのみを新たなリターンスプリング11に交換する。
【0024】
この場合、新たなリターンスプリング11の弾性力は、既存のリターンスプリングの弾性力よりも小さくなるように選定する。このような弾性力を小さく選定したリターンスプリング11を用いれば、電動操作機構部3の負荷の軽減化により、消費電力の低減、更にはフラッシュバルブVmの周辺構成の簡略化,低コスト化及び小型化に寄与できるとともに、手動操作機構部7の操作力軽減を含む操作性の向上に寄与できる利点がある。なお、リターンスプリング11は、図1に示すように、フラッシュバルブVmに内蔵し、プッシュバー25に装填することにより、当該プッシュバー25を図中右方向へ付勢する機能を備える。これにより、非操作時には、プッシュバー25に当接する操作ハンドルVhをほぼ水平状態に保持するとともに、フラッシュバルブVmを閉側に切換える(保持する)ように機能する。
【0025】
また、駆動ユニットUdは、駆動モータ26及びこの駆動モータ26の回転を運動変換する運動変換機構27を含む電動駆動部2を備え、この電動駆動部2の出力となる運動変換機構27の出力により、下方に突出する操作体28を昇降させることができる。この場合、駆動モータ26は、特に種類を問わないが、後述するコントロールユニットUcにより正回転制御及び逆回転制御可能な駆動モータを選定する。例示の駆動モータ26はDCモータである。なお運動変換機構27には、減速機構,及び回転−直進変換機構が含まれる。このような構成により、駆動モータ26を作動させ、操作体28を下降位置まで下降変位させれば、操作体28が操作ハンドルVhの上面に当接して当該操作ハンドルVhを押し下げるため、フラッシュバルブVmは開側に切換わり、便器Bに洗浄水を流すことができる。一方、操作体28を下降位置から上昇位置まで上昇変位させれば、操作ハンドルVhは水平状態に復帰できるため、フラッシュバルブVmは閉側に切換わり、便器Bに洗浄水を流すのを停止させることができる。
【0026】
他方、コントロールユニットUcは、図2に示すように、トイレブースRに臨む壁Rwの表面に取付ける。コントロールユニットUcは、ケーシング31を備え、前面には、音声及び擬音を出力するスピーカ32を配設するとともに、利用者の存在を検知する人検知センサ34,非接触スイッチを用いた手動操作スイッチ35及び後述する外部機器Uoに対して交信を行う赤外線送受のための送受信部36等を配した入出力パネル33を備える。この入出力パネル33は半透明カバーにより覆われている。手動操作スイッチ35は前方に手を翳すことによりONさせることができる。そして、このコントロールユニットUcは、ケーブル37を介して上述した駆動ユニットUdに接続する。
【0027】
なお、Usは任意の場所に取付けることができる外部操作スイッチを示す。この外部操作スイッチUsは無線によりコントロールユニットUcに接続される。この外部操作スイッチUsはオプションとして設置することができ、必ずしも設置を要するものではない。上述したように、コントロールユニットUcには、外部操作スイッチUsと同様の機能を有する手動操作スイッチ35を備えているが、通常、コントロールユニットUcは、トイレブースRの入口から見て、奥の壁面下寄り位置に配するため、必ずしも操作しやすい場所(位置)に存在するものではない。しかし、外部操作スイッチUsは、任意の場所に取付けることができるため、例えば、清掃者が、自分の操作しやすい位置であって、利用者が無闇に操作できない位置を選定して取付けることができる。外部操作スイッチUsは、上述した手動操作スイッチ35と同じ非接触スイッチを用いることができる。したがって、外部操作スイッチUsの前に手を翳すことによりONさせることができる。なお、Useは他の位置に取付けた場合の外部操作スイッチを示す。一方、仮想線で示すUoは、管理者が携帯可能な携帯端末等の外部機器であり、コントロールユニットUcに対して無線により交信することができる。この外部機器Uoは、表示部41及び操作部42等を備えている。
【0028】
図3に、上述した駆動ユニットUd,コントロールユニットUc,外部操作スイッチUs及び外部機器Uoの電気系統ブロック図を示す。同図中、Ucはコントロールユニットであり、マイクロコンピュータ(マイコン)等を利用した制御部51を内蔵する。制御部51にはメモリ52が付属する。メモリ52は、予め設定したシーケンスプログラムを格納するとともに、各種データDを記憶するデータ記憶手段14を構成する。また、53はメモリに登録した音声データを用いてスピーカ32から音声を出力する音声発生部、54はメモリに登録した擬音データを用いてスピーカ32から擬音を出力する擬音発生部であり、それぞれ制御部51に接続する。この場合、音声データにはガイダンスデータが含まれるとともに、擬音データには流水音データが含まれる。その他、コントロールユニットUcにおいて、34は人検知センサ、35は手動操作スイッチ、55は無線送信部及び無線受信部を含む無線通信部であり、それぞれ制御部51に接続する。この無線通信部57には、前述した送受信部36が含まれる。なお、56は、AC100〔V〕電源に接続して直流出力を得る直流電源部である。
【0029】
このような構成を有するコントロールユニットUcは、予め設定した条件により擬音を発生させ、かつ駆動部4を駆動制御する制御手段13を構成するとともに、メモリ52(データ記憶手段14)に記憶したデータDを無線により外部機器Uoに転送可能なデータ通信手段15を構成する。このデータDには、操作ハンドルVhに対する操作の回数に係わるデータ及び操作時の条件に係わるデータが含まれる。
【0030】
また、図3において、駆動モータ26はケーブル37を介して制御部51に接続する。外部操作スイッチUsは、制御部62を備えるとともに、この制御部62に接続した無線送信機能を有する無線通信部63及び非接触スイッチ64を備える。なお、65は電池等を用いた電源部である。さらに、外部機器Uoは、制御部71を備えるとともに、この制御部71に接続したメモリ72,無線送信部及び無線受信部を含む無線通信部73,入出力ポート74,バッテリ等を用いた電源部75を備える。
【0031】
他方、本実施形態に係る流水システム1は、このような基本構成を備える電動操作機構部3に加えて、停電時用の手動操作機構部7を備える。手動操作機構部7は、手動により操作可能な手動操作部4と、操作ハンドルVh又はフラッシュバルブVmに係合させる係合部5と、手動操作部4の手動操作に基づく変位を係合部5に伝達する変位伝達部6とを備える。
【0032】
手動操作部4には、手動により押操作可能な押ボタン4bを用いる。押ボタン4bは、図1及び図2に示すように、取付パネル81に配設したユニットとして構成し、取付パネル81を壁Rwの表面に取付ける。この取付パネル81には、停電時に使用する押ボタンである旨を表示した表示部81dを設ける。手動操作部4として、このような押ボタン4bを用いれば、最も一般的かつ汎用的な操作手段を構成できるため、良好な操作性を確保できるとともに、利用者にとって迷うことなく容易に操作できる利点がある。
【0033】
変位伝達部6は、取付パネル81の裏面側に固定したレバー支持部83とこのレバー支持部83により中間位置が回動自在に支持された伝達レバー82を備えるとともに、駆動ユニットUdに固定したレバー支持部85とこのレバー支持部85により中間位置が回動自在に支持される伝達レバー84を備える。また、レバー支持部83とレバー支持部85間は、フレキシブル性を有するガイドチューブ86により連結するとともに、ガイドチューブ86にはフレキシブルなワイヤ部材12を挿通させ、このワイヤ部材12の一端を伝達レバー82の一端側に係止(接続)するとともに、ワイヤ部材12の他端を伝達レバー84の一端側に係止(接続)する。
【0034】
このような構成により、伝達レバー82の他端側は、押ボタン4bの後端に当接するとともに、伝達レバー84の他端側は、前述した操作ハンドルVhの先端に当接する。この場合、特に、伝達レバー84には梃子機能を持たせる。即ち、伝達レバー84が支持される支持位置から操作ハンドルVhに当接する当接位置までの距離を、伝達レバー84の支持位置からワイヤ部材12が係止する位置までの距離よりも短く選定する。これにより、押ボタン4bの操作力を軽減できるため、操作性の更なる向上に寄与できる。変位伝達部6に、このようなフレキシブルなワイヤ部材12を用いれば、手動操作部4の配設位置や向き(角度)等を任意に選定できるため、設計自由度の向上及び施工性の向上に寄与できる利点がある。なお、例示の場合、伝達レバー84の一側が操作ハンドルVhに係合する係合部5を兼ねている。
【0035】
以上の構成により、手動操作部4の操作により、フラッシュバルブVmを開側に切換えて便器Bに洗浄水を流し、かつ操作ハンドルVhの手動操作を解除し、フラッシュバルブVmを閉側に切換えて便器Bに洗浄水を流すのを停止させる手動操作機構部7が構成される。
【0036】
次に、本実施形態に係る流水システム1の使用方法及び動作について、図1〜図5を参照して説明する。
【0037】
最初に、流水システム1の通常時の動作について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。まず、水洗トイレTを使用していない状態であれば、人検知センサ34は非検知状態にあり、コントロールユニットUcは待機モードを維持する(ステップS1)。この際、駆動ユニットUdに備える操作体28は上昇位置にあり、操作ハンドル3は水平状態に保持される。
【0038】
今、利用者(女性)がトイレブースRに入り、水洗トイレTを使用する場合を想定する。利用者が人検知センサ34の検知エリアに入れば、人検知センサ34により検知され、この検知結果は、制御部51に付与される(ステップS2,S3)。そして、検知状態のまま2秒間が経過すれば、音声発生部53が制御され、スピーカ32から音声ガイダンス、例えば、「このトイレは自動で水が流れます」等の音声ガイダンスが出力する(ステップS4,S5)。なお、人検知センサ34が検知状態になった後、2秒間が経過する前に非検知状態になれば、一時的な外乱によるものと考えられるため、待機モードを維持する(ステップS4)。
【0039】
一方、音声ガイダンスの出力が終了すれば、続いて擬音発生部54が制御され、スピーカ32から流水音(擬音)が出力する(ステップS6)。女性の場合、一般的な水洗トイレでは、トイレ使用中の音を消すために、洗浄水を流し続ける場合も少なくなく、水道水のかなりの無駄を生じている。したがって、流水音(擬音)を流すことによりトイレ使用中の音を消すようにすれば、かなりの節水効果を得ることができる。なお、擬音の音量は設定可能であり、必要により擬音の種類を選択することもできる。そして、利用者が水洗トイレTの使用を終え、人検知センサ34の検知エリアから離れれば、人検知センサ34は非検知状態となるため、この非検知結果は、制御部51に付与され、擬音の出力が停止する(ステップS7,S8)。このように、擬音は、人検知センサ34が検知状態になってから非検知状態になるまでの間継続することになる。
【0040】
また、制御部51では、内蔵タイマにより、人検知センサ34が検知状態になった時点から非検知状態になる時点までの時間を計時することにより人検知時間Tdを求め、この人検知時間Tdの判定処理を行う(ステップS9)。具体的には、人検知時間Tdを、予め設定した判定時間Ts(通常、90〜120秒)と比較し、Td<Tsであれば、「小」と判定し、Ts≦Tdであれば、「大」と判定する。制御部51では、この判定結果により流水時間を選択して洗浄水を流す(ステップS10,S11)。この場合、「小」と判定した場合の流水時間は、1〜4秒に設定できるとともに、「大」と判定した場合の流水時間は、2〜8秒に設定でき、これらの流水時間の長さは予め設定することができる。なお、人検知センサ34が検知状態になってから所定時間経過しても非検知状態にならないときは、利用者に何らかの異常が発生したことが考えられるため、ステップS9における判定処理では、異常発生と判定し、アラーム音を発生させたり、管理室に通報するなどの異常処理を行わせることができる。そして、選択した流水時間が経過すれば、洗浄水を流すのを停止させる制御を行う(ステップS12)。
【0041】
この場合、洗浄水を流す制御と流すのを停止させる制御は、次のように行われる。まず、洗浄水を流す制御は、制御部51から駆動モータ26に対して正回転駆動信号を供給する。これにより、駆動モータ26が正回転し、操作体28を下降させるため、この操作体28により操作ハンドルVhが押し下げられる。そして、操作体28が下降位置まで下降変位すれば、操作ハンドルVhは下方へ傾斜した状態となる。これにより、操作ハンドルVhの内端も傾斜し、プッシュバー25を、図1中、左方向に押すことになるため、フラッシュバルブVmは開側に切換えられ、洗浄水が便器Bに流れる。なお、プッシュバー25はリターンスプリング11の弾性に抗して変位する。この際、操作体28が下降位置まで下降変位すれば、不図示のリミットスイッチ等により検出され、駆動モータ26に対する停止制御が行われる。他方、洗浄水を流すのを停止させる制御は、制御部51から駆動モータ26に対して逆回転駆動信号を供給する。これにより、駆動モータ26が逆回転し、操作体28を上昇させるため、上昇位置に達すれば、操作ハンドルVhはリターンスプリング11の弾性により水平状態に復帰するとともに、プッシュバー25も、図1中、右方向に押されるため、フラッシュバルブVmは閉側に切換えられ、洗浄水が便器Bに流れるのを停止させる。この際、操作体28が上昇位置まで上昇変位すれば、不図示のリミットスイッチ等により検出され、駆動モータ26に対する停止制御が行われる。
【0042】
なお、操作ハンドルVhに対する操作の回数に係わるデータDと、操作時の条件、即ち、流水時間に係わるデータDは、メモリ52に記憶される(ステップS13)。このように、操作ハンドルVhに対する操作の回数に係わるデータD及び操作時の条件に係わるデータDを記憶するようにすれば、実際の使用状態をより的確に把握することができる。また、流水システム1に、予め設定した条件により擬音を発生させ、かつ電動駆動部2を駆動制御する制御手段13と、この制御手段13の制御に係わるデータを記憶するデータ記憶手段14とを有するコントロールユニットUcを設ければ、実際の使用状態を的確かつ容易に把握できるとともに、携帯端末等により容易かつ確実にデータ収集を行うことができる利点がある。この後、流水システム1をOFFにしない限り、同様の動作(処理)が繰り返される(ステップS14)。
【0043】
次に、流水システム1の停電時の機能について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0044】
今、待機モード(ステップS1)において、停電が発生するとともに、停電中に、利用者が水洗トイレTを使用する場合を想定する(ステップS2,S21)。この場合、停電のため、電動操作機構部3は動作せず、前述したステップS3〜S14までの動作(処理)は行われない。
【0045】
したがって、利用者が水洗トイレTを使用した後は、手動操作機構部7により洗浄水を流すことができる。この場合、まず、利用者は、取付パネル81の表示部81dに従って、押ボタン4bを手で押す(ステップS22)。これにより、図5に示すように、押ボタン4bは矢印Fp方向に押されるため、伝達レバー82の他端側が押ボタン4bの後端により押され、伝達レバー82は、仮想線で示す位置から実線で示す位置に回動変位する。この結果、ワイヤ部材12の一端が引っ張られる方向に変位し、この変位は、ワイヤ部材12(変位伝達部6)を介して伝達レバー84の他端側に伝達される。この結果、図5に示すように、伝達レバー84は仮想線位置から実線位置に回動変位し、操作ハンドルVhの先端は伝達レバー84の一端側(係合部5)により軸方向(水平方向)に押される。これにより、操作ハンドルVhはフラッシュバルブVmの内部側に押し込まれるとともに、プッシュバー25は操作ハンドルVhの内端により図1中の左方向に押されるため、フラッシュバルブVmは開側に切換えられ、洗浄水が便器Bに流れる(ステップS23)。この際、プッシュバー25はリターンスプリング11の弾性に抗して変位する。
【0046】
この後、利用者は、適度な時間を見計らって、押ボタン4bを押すのを止めれば、操作ハンドルVhは、リターンスプリング11の弾性により、図1中の右方向に変位(復帰)する。この結果、フラッシュバルブVmは閉側に切換えられ、便器Bに洗浄水を流すのを停止させる(ステップS24,S25)。
【0047】
よって、このような本実施形態に係る流水システム1によれば、電動操作機構部3に加えて、手動操作部4の操作により、フラッシュバルブVmを開側に切換えて便器Bに洗浄水を流し、かつ操作ハンドルVhの手動操作を解除し、フラッシュバルブVmを閉側に切換えて便器Bに洗浄水を流すのを停止させる手動操作機構部7を設けたため、例えば、災害等により停電が発生し、電動操作機構部3を作動させることができない場合であっても、使用禁止措置を採ることなく、通常通り使用することができる。また、手動により操作可能な手動操作部4と、操作ハンドルVh又はフラッシュバルブVmに係合させる係合部5と、手動操作部4の手動操作に基づく変位を係合部5に伝達する変位伝達部6とを備えて構成するため、簡易な追加構成で足り、容易かつ低コストに実施できるとともに、停電時には、特に準備をすることなくそのままの状態で操作できるなど、利用者の利便性を確保できる。
【0048】
次に、本発明の変更実施形態及び各部の変更例に係る流水システム1について、図6〜図10を参照して説明する。
【0049】
図6は、手動操作部4の変更例を示す。図1〜図5の実施形態では、手動操作部4として、押ボタン4bを示したが、図6は、手動により引操作可能なツマミ4tを用いた例を示す。この場合、利用者は、手でツマミ4tを持ち、矢印Fh方向に引っ張れば、ワイヤ部材12を引っ張る方向に変位させることができ、図1〜図5の実施形態の場合と同様に機能させることができる。この変更例では、伝達レバー82及びレバー支持部83が不要となる。このように、引操作可能なツマミ4tを用いれば、手動操作部4の変位をより確実かつ強力に伝達できるとともに、変位伝達部6の構成簡略化及び省スペース化にも寄与できる。したがって、手動操作機構部7の配設スペースが制限され、押ボタン4bを用いた手動操作機構部7を配設できない場合にも設置可能となる利点がある。
【0050】
図7に示す変更実施形態は、流水システム1における流水系が便器Bの近傍に配設、即ち、トイレブースRの内部に配設されている場合に適用したものである。図7の変更実施形態は、図1〜図5の実施形態に対して、操作ハンドルVh及び電動駆動部2の周りをカバー91により覆うとともに、このカバー91に手動操作部4を設けた点が異なる。この場合、押ボタン4bは、カバー91の側面に配設するとともに、この押ボタン4bの内端を操作ハンドルVhの先端に直接当接させる。したがって、押ボタン4bの内端側は、係合部5及び変位伝達部6を兼用する。これにより、利用者が押ボタン4bを押せば、押ボタン4bはカバー91の内部側に押し込まれるとともに、押ボタン4bの内端が操作ハンドルVhの先端を直接押し、フラッシュバルブVmを開側に切換える。このように、押ボタン4bに、変位伝達部6及び係合部5を兼用させれば、別途の変位伝達部6及び係合部5が不要となるため、更なる構成の簡略化,省スペース化及び低コスト化に寄与できる利点がある。
【0051】
図8は、図7に示した変更実施形態に係る流水システム1における操作ハンドルVhの変更例を示す。この場合、操作ハンドルVhの内部に軸方向の貫通孔を形成し、この貫通孔の内部に伝達軸92を挿通させたものであり、操作ハンドルVhの先端から突出する伝達軸92の一端は押ボタン4bの内端に当接させるとともに、伝達軸92の他端はプッシュバー25に当接させる。したがって、この場合、押ボタン4bは操作ハンドルVhを直接操作する機能は備えておらず、押ボタン4bの変位は、伝達軸92及びプッシュバー25を介してフラッシュバルブVmに伝達される。他方、図9は、図8に示した伝達軸92を挿通させた操作ハンドルVhを、図1〜図5に示した実施形態に適用したものである。このような伝達軸92を用いれば、操作ハンドルVhの位置に拘わらず、伝達軸92の長さ等の変更により、フラッシュバルブVmに対して係合部5の位置をマッチングさせることができる利点がある。
【0052】
図10に示す変更実施形態は、カバー91を付設した流水系に適用し、手動操作部4として、ツマミ4tを用いるとともに、手動操作機構部7を、操作ハンドルVhに掛けた係合部5と、この係合部5の下部から吊下げた紐(ワイヤ部材12)を用いた変位伝達部6と、この紐の下端に取付けたツマミ4tを備えて構成したものであり、ツマミ4tは、カバー91の底面に設けた開孔から下方に吊り下げられる。これにより、利用者は、ツマミ4tを手で持ち、下方へ引くことにより、操作ハンドルVhを下方へ回動変位させることができる。図10に示す変更実施形態は、少ない部品点数により簡易に構成できるとともに、操作ハンドルVhに対する取付けも極めて容易に行うことができる。
【0053】
以上、好適実施形態(変更実施形態)について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0054】
例えば、フラッシュバルブVmに備える既存のリターンスプリングのみを変更した場合を示したが、必要により操作ハンドルVhを変更することも可能である。この際、図8及び図9に示したように、貫通孔を設ける場合のみならず、形状変更,素材変更による軽量化等、各種変更が可能である。また、図1の構成において、ワイヤ部材12の変位を伝達レバー84を介して操作ハンドルVhを軸方向(水平方向)に押す態様を示したが、ワイヤ部材12の変位を操作ハンドルVhの上側に配する他の形態の伝達レバーを介して当該操作ハンドルVhを図10の場合と同様に下方へ回動変位させてもよい。さらに、手動操作部4として、押ボタン4bとツマミ4tを例示したが、必要によりレバー部材を用いるなど、各種の手動操作部4を用いることができる。一方、変位伝達部6として、フレキシブルなワイヤ部材12を例示したが、リンク部材の連結など、各種伝達手段を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る流水システムは、電動駆動部によりフラッシュバルブの操作ハンドルを操作する和式,洋式等の各種タイプの水洗トイレに利用できる。
【符号の説明】
【0056】
1:流水システム,2:電動駆動部,3:電動操作機構部,4:手動操作部,4b:押ボタン,4t:ツマミ,5:係合部,6:変位伝達部,7:手動操作機構部,11:リターンスプリング,12:ワイヤ部材,B:便器,T:水洗トイレ,Vm:フラッシュバルブ,Vh:操作ハンドル,Uc:コントロールユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動駆動部により、フラッシュバルブの操作ハンドルを操作し、前記フラッシュバルブを開側に切換えて便器に洗浄水を流し、かつ当該操作ハンドルの操作を解除し、前記フラッシュバルブを閉側に切換えて便器に洗浄水を流すのを停止させる電動操作機構部を備える水洗トイレの流水システムにおいて、前記電動操作機構部に加えて、手動により操作可能な手動操作部と、前記操作ハンドル又は前記フラッシュバルブに係合させる係合部と、前記手動操作部の手動操作に基づく変位を前記係合部に伝達する変位伝達部とを備え、前記手動操作部の操作により、前記フラッシュバルブを開側に切換えて便器に洗浄水を流し、かつ前記操作ハンドルの手動操作を解除し、前記フラッシュバルブを閉側に切換えて便器に洗浄水を流すのを停止させる手動操作機構部を設けたことを特徴とする水洗トイレの流水システム。
【請求項2】
前記操作ハンドルを操作前の位置に戻すリターンスプリングを備えるとともに、このリターンスプリングは、フラッシュバルブに内蔵した既存のリターンスプリングと交換し、かつ当該既存のリターンスプリングよりも弾性力を小さく選定したリターンスプリングを用いることを特徴とする請求項1記載の水洗トイレの流水システム。
【請求項3】
前記変位伝達部は、フレキシブルなワイヤ部材を用いることを特徴とする請求項1又は2記載の水洗トイレの流水システム。
【請求項4】
前記手動操作部は、手動により押操作可能な押ボタンを用いることを特徴とする請求項1,2又は3記載の水洗トイレの流水システム。
【請求項5】
前記押ボタンは、前記変位伝達部及び前記係合部を兼ねることを特徴とする請求項4記載の水洗トイレの流水システム。
【請求項6】
前記手動操作部は、手動により引操作可能なツマミを用いることを特徴とする請求項1,2又は3記載の水洗トイレの流水システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−44190(P2013−44190A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183430(P2011−183430)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(504133291)株式会社ヒューネット・ジャパン (9)
【出願人】(390034153)株式会社バイタル (6)
【Fターム(参考)】