説明

水活性化方法及びその装置

【課題】水活性化方法及びその装置
【解決手段】
】構成材の要部を合成高分子物質とし、阻止孔径が少なくとも0.2μm以下、或いは分画分子量として100万以下で、濾過時の行路が殆ど屈曲して形成される如く構成された濾過メディアよりなるフィルターを用い、50L/m2/時以上の濾過流束にて処理する水活性化処理方法である。
上記構成材の要部を、合成高分子物質のみにて構成するのが特に好ましい。
これらの手段を組み込んだ装置として活用する事が出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道水、地下水、工業用水などを活用するに際し、その供給安定性や利用効率などの向上に関し、利用者の満足度を向上させる為の水活性化処理方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水を使用するに際し、その供給安定性や利用効率を向上させる為に多大の努力が払われて来た。とりわけ、安定的に水質と水量を確保するには定期的な点検保守が重要なポイントである。
例えば、井戸水汲上げ動力源の確認、原水槽センサーの作動確認、原水ポンプの作動確認、濾過装置の確認およびメンテナンス、残留塩素の監視など細部に亘り主として人海戦術的に気が配られて来た。
更に、半導体製造における超純水装置のように水質を極度に追及する試みが数多くなされ、その結果として高度な技術が形成され実用に移されてきた。
【0003】
一方、生活用水や産業用水の分野に多く見られる赤錆や赤水、給水管内に生ずるスケール、藻類の発生防止、悪臭やぬめりの除去等の提案なども数多く報告されているものの、未だ実用上決定的なものは無いと言っても過言ではない。
即ち、配水管路を赤錆やスケール或いは細菌発生やぬめりから防御する方法については、物理的にブロー処理による水の入れ替え、珪砂等の吹込みによる管内洗浄法などが知られているが大量の水道水を要し、処置している間は断水させる必要があるなどの欠点を有する。
【0004】
また、薬注化学処理により配管内に防御皮膜を形成する方法も有り、実績もあり信頼性も高い面が評価されるが、緊急処理に近く恒久的な安定策ではない為に本来の定常的な処理が求められる。
又、管理がシビアーである点で専門的な工法と位置付けられており、ランニングコストも高い。これらの欠陥を改善する方法として、エポキシ樹脂ライニングが提案されているものの、コスト高の面で適用上限定される。
【0005】
このような状況に鑑み、水そのものを活性化して沈着防止、防錆、錆除去に有効な効果を期待する技術が提案されている。
例えば、磁石構造体が内在する配管流路中で水を磁気処理する方法が提案されている。(特許文献1及び2を参照)更に夫々超音波、高周波等との組み合わせ、それらの多段処理が提案されている。(特許文献3及び4を参照)
また、遠赤外線放射材が塗布された通水用パイプに永久磁石を組み合わせて水の活性化を提案しているが、この処理では多数の永久磁石が必要となる。(特許文献5を参照)
しかしながら、これらの手段は何れも管路内が複雑で構造上流路抵抗が大きくなる方向で何らかの改善が求められる。
【0006】
その他、α線照射による電子・原子の励起と磁気の組み合わせや、磁性セラミックスによる処理で防錆効果付与、複合材料による磁性セラミックス処理などが挙げられるが、処理コストが高価で実用的ではない。
以上に説明したように現状では、いずれの方法でも十分な対処が果たされておらず、更に実効有る解決方策が求められている。
【0007】
【特許文献1】 実公平4−29917号公報
【特許文献2】 特開平10−85757号公報
【特許文献3】 特開平7−241566号公報
【特許文献4】 特開平9−66285号公報
【特許文献5】 特許第2622911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上の様な各種の状況に鑑み、通常水処理に使用されている資材を使い、安価にして且つ恒久的効果が得られる送配水管内の水の活性化、特に広く問題となっているスケール付着防止を、薬品を用いることなく実現できる水処理技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、このような観点から上記目的を達成するため鋭意研究した結果、水濾過に際し処理条件を選ぶことにより、被処理水の移動中に発生する電気化学的作用に起因する効果に基づき、水自体を変態せしめ溶存するスケール物質を水中にて不活性状態とし浮遊析出させる方法である。
水に電気化学的変化を生ぜしめる要因として、被処理水によるフィルターの擦過力即ち、濾過流束が大きく影響する。本発明者らは、各種素材から構成されたフィルターの濾過組織である孔構造の異なるフィルターを用いて精査した結果、以下の条件を見出した。
【0010】
物質との擦過による水の電気化学的変化は、被処理水と接する物質の電気物性(体積固有抵抗,表面固有抵抗,誘電率,電荷減衰率、ゼータ電位等)が支配的因子と考えられた。
これら物質の電気特性に着目し、フィルターの素材、阻止孔径等の構成、濾過処理条件について精査すると共に、スケール生成防止効果を評価指標として水の活性化効果を探求したところ、潜在的に一種の変態水可が現出する予測をした。
これらの条件で処理された変態水を送配水管内に送り込むことにより、驚くべきことに送配水管内にスケールが付着しないのみならず、既に付着していたスケールも剥離流出せしめる効果を有することを確認し本発明に到達した。
【0011】
即ち、本発明の要旨とするところは、構成材の要部を合成高分子物質とし、阻止孔径が少なくとも0.2μm以下、或いは分画分子量として100万以下で、濾過時の行路が殆ど屈曲して形成される如く構成された濾過メディアよりなるフィルターを用い、50L/m2/時以上の濾過流束にて処理することを特徴とする水活性化処理方法並びにその装置にある。
【0012】
ここで、濾過メディアを形成するフィルター素材は、その構成材として各種の素材が使用可能で有るが、構成要部として採用する合成高分子物質は以下のような検討を経て決定されている。
本発明の特徴である、水の活性化に影響する濾過メディアは、それを構成するフィルター素材との擦過による電気化学的作用にて発生する。このために、被処理水と接する素材物質の電気物性(体積固有抵抗,表面固有抵抗,誘電率,電荷減衰率、ゼータ電位等)の影響が極めて重要である。
【0013】
フィルターを構成する素材として,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリブチレンテレフタレート,ポリビニリデンフロライド、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化エチレン、(スチレン、ジビニルベンゼンスルホン酸、フェノール、ベンジルアルコール、レゾルシン、カルバマイド、ピロカテコール、メラミン、レゾルシン酸、ハイドロキノン等)の特殊モノマーを主体とするイオン交換樹脂型の合成高分子等の合成樹脂物質を対象とする。
これらについて、更に空隙率、阻止孔径或いは分画分子量(以後、阻止孔径と統一的に表記する)の異なる中空糸膜フィルター、合成樹脂微粒子焼結型カートリッジフィルターなどを製作し、それぞれについて水濾過流束と濾過水を送配水管に通した時のスケールの発生状況を調査確認した。
【0014】
フィルターを構成する素材は、合成高分子物質であれば全てスケール防止効果を評価指標とする水の活性化を、生じせしめることを確認した。次にフィルター厚さ及び阻止孔径と濾過流束については相互に影響しあうが、阻止孔径に関し0.2μm以下でもスケール防止効果が認められる一方、阻止孔径0.3μm以上ではスケール防止効果は認められなかった。
濾過流束については、阻止孔径0.01μmに於いて少なくとも10L/m2/時以上、好ましくは30L/m2/時以上の流束でないとスケール防止効果は認められなかった。
流束の上限は、2,000L/m2/時まで確認したが、流束が高くなるとフィルターが目詰まりし易くなるので処理水として求められる濁度などの水質データとの関係で決定されるものである。
【0015】
フィルターの形態は、中空糸膜フィルターモジュール、合成樹脂微粒子焼結型カートリッジフィルターとして基本的に検討した。中空糸膜フィルターとして、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性の結晶性高分子を素材とするものは溶融延伸法により製作した。ポリアミド系、ポリスルホン系、ポリ塩化ビニル系、アクリル系、フロロカーボン系等の高分子を素材とするものは、素材各々の溶剤にて溶解し合成樹脂溶液として非溶剤中に押し出す湿式紡糸法を基本として製作した。
【0016】
中空糸膜とする場合は、その膜壁の厚さは製造の都合上及び実用時の物理的強度への配慮から、50μm〜100μmとするのが好ましく、フィルターの阻止孔径は、夫々0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.5μmのものから選択使用する。尚、中空糸膜の開孔率は、60〜75%であった。
また、中空糸膜フィルターモジュールとするには、シリンダー状の外筒に中空糸膜に入れ、両端部を二液性のウレタン樹脂で含浸処理後、硬化させ原水入り口、処理水出口を設け、外圧型又は内圧型としてモジュール形状となる。
中空糸膜フィルターモジュールの場合は、外圧濾過の場合には中空糸膜の全外周膜面積、内圧濾過の場合には中空糸膜の全内周面積を基準とした。又、カートリッジフィルターの場合は外圧濾過であるので全外周面積を基準とした。
【0017】
又、フィルターの阻止孔径については、「阻止孔径」は精密濾過レベルで使用されており、0.01μm以下の限外ろ過領域では「分画分子量」で表示される。本発明では、「阻止孔径」で表示を統一して記述したが、「阻止孔径」0.1μmが分画分子量で約100万ダルトンに相当することから、両者を併用する。
【0018】
他にスチレン、ジビニルベンゼンスルホン酸、あるいは特殊モノマーからの合成樹脂は、直径0.1mm〜1.0mmのビーズ状ペレットをつくり、これに少量の溶剤とともにカートリッジフィルター成型用の型にて加熱成型し、外直径64mm、長さ10インチの合成樹脂微粒子焼結型カートリッジフィルターを製作した。
この種のカートリッジフィルターの阻止孔径は、約0.03μm、0.05μm、1.0μmが主体で、フィルターの壁厚は10mmである。
【0019】
本発明の水濾過に使用する各種フィルターは、濾過行路即ちフィルターの構造体の厚み方向に連なる通水隙水路が直線路でなく曲折路となる事が極めて望ましい。
即ち、水濾過に於いては、フィルターの厚みが濾過抵抗となり、単位面積あたりの濾過速度、即ち流束に対し大きな影響力を持つのでフィルターの厚みは薄い方向に有る事が濾過効率向上の面から必須条件となる。
【0020】
しかしながら、水に電気化学的変化を生ぜしめるためには、被処理水とフィルターとの接触時間が大きくなければならない。この流束と接触時間の二律背反をフィルターの厚みを増すことなく実現するには、フィルターにおける流路を屈曲していなければならない。屈曲した流路の行路長は、直線的空隙による流路のそれの少なくとも4倍が望ましいが、特に本発明を限定するものではない。
【発明の効果】
【0021】
本発明の出現により、永年未解決であった薬品を使用せず簡単な施設により安価で恒久的なスケール防止手段が実現出来る。本発明は、電気化学的な水活性化効果に起因しており、各種ボイラ、熱交換器およびその縮流部、水洗浄乾燥機などに適用可能で、且つ画期的なスケール防止技術として有用である。
即ち、用水の受水時に於いて受水槽への着水直前に本発明で特定する水濾過装置を配するか、或いはスケールなどの発生で問題となるボイラー、熱交換器、食器洗浄器など、末端機器への用水導入部に本発明で特定する水濾過装置を設けることにより達成出来る。
【0022】
このことにより、水の電気化学的作用に起因して用水が変態し活性化状態を作り出され、スケール防止などの効果を確実に且つ持続的に具現するものである。
更に、除菌によるぬめり防止、赤錆防止にも効果があり、本発明の効果は工業的に著大であるものと確信する。
【0023】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0024】
スチレン、ジビニルベンゼンスルホン酸からなる合成樹脂を用いて、直系0.1mm〜1.0mmのビーズ状ペレットを製作し、これを用い少量の溶剤とともにカートリッジフィルター成型用の型にいれ加熱成型し、外直径64mm、長さ10インチの合成樹脂微粒子焼結型カートリッジフィルターを数種製作した。
このカートリッジフィルターの阻止孔径は、夫々0.03μm.0.05μm、1.0μm、3.0μm、5.0μmで、フィルター壁厚を10mmに調整にして供試した。
【0025】
これらを夫々10インチフィルターカートリッジホルダーに入れ、濾過に供した。これらのフィルターを、地下水を用いたクーリングタワー(補給水量1m3/時)の補給水ラインに設置し、フィルター処理水がクーリングタワーに直接投入される形の試験ラインをつくり、各種条件で試験した。
補給水の全硬度は800mg/Lで、本発明のフィルター設置前には30日前後で、フィンに大量のスケール付着が見られたが、3.0μm、5.0μmのフィルターを除き、60日目を経過後も問題は発生せず本発明の効果が確認出来た。
【実施例2】
【0026】
ポリ塩化ビニル樹脂を主成分とする合成樹脂を溶剤に溶解し、その溶液を非溶剤中に同心円型のノズルを用いて押し出し、溶液濃度及び非溶剤構成要件を調整して、溶剤/非溶剤系から構成される相分離反応により、外周直径800μm、内周直径600μmで孔径0.01μm(A)と0.3μm(B)の中空糸膜フィルターを得た。
これらの中空糸膜を用いて、夫々膜面積20m2の内圧全量濾過型中空糸膜フィルターモジュールを製作した。
この中空糸膜モジュールを、地下水を用いたクーリングタワー(補給水量1m3/時)の補給水ラインのクーリングタワー入り口に設置した。
【0027】
(A)については流束50L/m2/時(A−1)、10L/m2/時(A−2)の2水準、(B)については50L/m2/時(B−1)で処理した。
補給水の全硬度は800mg/Lで、設置前には30日前後でフィンに大量のスケール付着が見られた。
30日後に観察したところ(A−1)ではフィンへのスケール付着は見られず、ドレンパンの底部に沈殿物が観察され、分析したところ主成分は炭酸カルシウムであった。この結果、本発明の効果が確認出来た。
一方、(A−2)、(B−1)ではフィンへのスケール付着は設置前と殆ど変わらず、本発明の効果が認められなかった。
【実施例3】
【0028】
粒径0.2mmに成型されたレゾルシンを主成分とするイオン交換樹脂を溶剤とともに同心円型成型器で加圧熱処理して焼結体状の外直径64mm、内直径44mm、長さ10インチのカートリッジフィルターを得た。
このカートリッジフィルターの阻止孔径は0.06μmであった。
このカートリッジフィルターを地下水と上水道水を混合して使用しているホテルの食器洗い機の仕上げ洗浄水入り口(洗浄水供給量1000L/時)に設置し試験した。
この地下水と上水道水の混合水の全硬度は550mg/Lで同食器洗い機の乾燥ラインはスケールが付着していた。このスケールを物理的に剥離洗浄した後、カートリッジフィルターを設置し、360L/m2/時(C)で処理した。
その結果、Cでは乾燥ラインでのスケールの発生は皆無で本発明の効果が確認出来た。
【実施例4】
【0029】
ポリビニリデンフロライドからなる阻止孔径0.01μm(D)とポリエチレン中空糸膜からなる阻止孔径0.25μm(E)の中空糸膜フィルターで構成された10m2の中空糸膜フィルターモジュールを型水管ボイラの補給水入り口に設置した。
Dは流束50L/m2/時(D−1)、10L/m2/時(D−2)Eは流束300L/m2/時(E)で処理した。この水管ボイラへの供給水の全硬度は600mg/Lで、成分はカルシウムとシリカが主体であった。
【0030】
設置から2ヵ月後に水管を点検したところ、フィルターモジュールを設置しないもの(ブランク)は水管内に多くのスケール付着が見られた。しかし、Dはスケールの付着が見られず、補給水放出口からの放出水中にカルシウム、シリカの沈殿物が検出された。D−2は、ブランクよりは少なかったが、スケールの除去が必要であった。Eは殆どブランクと差異が無かった。
このように、本発明の効果が明確に確認された。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上の実験例からも明白の通り、本発明の方法による水活性化効果が証明されている。
本発明は、薬品を使用せず簡単な施設により安価で恒久的なスケール防止手段であり、電気化学的な水活性化効果を活用するもので各方面に活用可能である。
例えば、各種ボイラ、熱交換器およびその縮流部、水洗浄乾燥機などに適用可能で、且つ画期的なスケール防止技術として有用である。
即ち、用水の受水時に於いては受水槽への着水直前に本発明で特定する水濾過装置を配するか、或いはスケールなどの発生で問題となるボイラー、熱交換器、食器洗浄器などであれば、末端機器への用水導入部に本発明で特定する水濾過装置を設けることにより達成出来る。
【0032】
この様な画期的効果は、本発明の特徴とする水の電気化学的作用に起因して用水が変態し、活性化状態を現出するもので、スケール防止などの効果が確実に得られ、且つ持続的に作動する点にある。
更にこの効果は、除菌によるぬめり防止、赤錆防止にも効果があり、本発明の効果は工業的に著大であるものと確信する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成材の要部を合成高分子物質とし、阻止孔径が少なくとも0.2μm以下、或いは分画分子量として100万以下で、濾過時の行路が殆ど屈曲して形成される如く構成された濾過メディアよりなるフィルターを用い、50L/m2/時以上の濾過流束にて処理することを特徴とする水活性化処理方法。
【請求項2】
構成材の要部を、合成高分子物質のみで構成することを特徴とする水の請求項1記載の水活性化処理方法。
【請求項3】
上記何れかの方法を用いる装置。

【公開番号】特開2006−21184(P2006−21184A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−231709(P2004−231709)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(596136316)株式会社ウェルシィ (18)
【Fターム(参考)】