説明

水浄化システム及び水浄化方法

【目的】設置費用だけでなく稼動運用管理・保守点検管理等の手間及びコストが低減され、自然景観を阻害することなく且つ水浄化性能の高い水浄化システム及び水浄化方法を提供する。
【構成】湖沼等の閉鎖水域内の水を導入して浄化した後、前記閉鎖水域内に還流する水循環路を有する水浄化システムにおいて、
該水循環路に間隔をあけて複数の汚泥沈降槽を有し、該汚泥沈降槽の間の水循環路内に接触繊維からなる濾過材を複数個並列垂下させてあり、
水循環路の上流から下流に向かって複数個の濾過材に対する汚泥付着が次々と進捗することで水浄化を行う構成であることを特徴とする水浄化システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水浄化システム及び水浄化方法に関し、詳しくは湖沼等の閉鎖水域の水を浄化する水浄化システム及び水浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
湖沼等の閉鎖水域の浄化には、接触材を用いた礫間接触曝気法や、接触繊維曝気法等の浄化方法が一般的に行われている。これらの浄化方法に用いられる浄化装置・浄化施設は浄化する閉鎖水域の規模(水量)に応じて大規模のものとなる。
【0003】
水質の浄化に最も効果のある浄化方法は濾過することであるが、自然環境である湖沼の場合、景観に対する配慮や建設費の観点から原水の接触濾過による浄化方法(浄化装置・浄化施設)は採用されることが極めて少ない。採用された場合であっても、設置費や建設費の制約によって浄化に必要充分な規模の装置又は施設が設置或いは建設されない場合もある。
【0004】
必要充分な浄化性能を有する浄化装置・浄化施設は上述したような景観に対する配慮や設置費・建設費の問題だけでなく、設置或いは建設できたとしても充分な浄化性能を有していなかったり、設置後の稼動運用時の手間や保守管理の手間がかかる等の問題をも有している。
【0005】
景観に対して配慮した浄化技術としては、例えば、特許文献1又は2に記載されているものを挙げることができる。
【0006】
【特許文献1】特開2006−218401
【特許文献2】特開2003−236574
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1又は2には、共に閉鎖水域外に設けた水循環路で濾過した後に閉鎖水域内へ還流させることで水浄化を行う技術が記載されている。
【0008】
特許文献1の技術は、主としてレジオネラ菌や藻類・大型微生物の発生を防止するものであり、汚泥等の汚濁物の除去には水浄化性能が不充分である。
【0009】
特許文献2の技術は、閉鎖性水域外に設けた水循環路で水浄化を行うだけでなく、水流を発生させるための水流促進装置を閉鎖水域内に備えたものであるため、水流促進装置の稼動運用管理や保守点検管理等の手間及びコストがかかるだけでなく、閉鎖水域内を常に移動しているため自然景観を阻害するという欠点を有している。
【0010】
そこで本発明の課題は、設置費用だけでなく稼動運用管理・保守点検管理等の手間及びコストが低減され、自然景観を阻害することなく且つ水浄化性能の高い水浄化システム及び水浄化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明は、下記構成を有する。
【0012】
1.湖沼等の閉鎖水域内の水を導入して浄化した後、前記閉鎖水域内に還流する水循環路を有する水浄化システムにおいて、
該水循環路に間隔をあけて複数の汚泥沈降槽を有し、該汚泥沈降槽の間の水循環路内に接触繊維からなる濾過材を複数個並列垂下させてあり、
水循環路の上流から下流に向かって複数個の濾過材に対する汚泥付着が次々と進捗することで水浄化を行う構成であることを特徴とする水浄化システム。
【0013】
2.水循環路内に導入する水がエアレーションの如き前処理を施した前処理済水であることを特徴とする上記1に記載の水浄化システム。
【0014】
3.水循環路内の容積中、接触繊維からなる濾過材の占有率が30〜35%であることを特徴とする上記1又は2に記載の水浄化システム。
【0015】
4.接触繊維がバサルト長繊維であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の水浄化システム。
【0016】
5.汚泥沈降槽の一つが、水循環路の最上流部に配設されており、該最上流部の汚泥沈降槽に閉鎖水域内の水を導入する構成であることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の水浄化システム。
【0017】
6.汚泥沈降槽の一つが、水循環路の最下流部に配設されており、該最下流部の汚泥沈降槽から閉鎖水域内に水を放流する構成であることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の水浄化システム。
【0018】
7.汚泥沈降槽が、上層域に水循環路と連絡する水通過部を有し、該水通過部より下方域である下層域に沈降汚泥貯溜部を有し、前記水通過部の低域部に向けて上部開口が設けられると共に前記沈降汚泥貯溜部に向けて下部開口が設けられるスリット状及び/又は細管状の複数の通路を有してなる汚泥沈降促進装置を中層域に有する構成であることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の水浄化システム。
【0019】
8.汚泥沈降槽の水通過部内に接触繊維からなる濾過材を垂下させてあることを特徴とする上記7に記載の水浄化システム。
【0020】
9.前記汚泥沈降促進装置が、複数のハニカム孔群を有してなるハニカム構造体からなることを特徴とする上記7又は8に記載の水浄化システム。
【0021】
10.前記汚泥沈降促進装置の複数の通路の上部開口の高さに段差が設けられていることを特徴とする上記7〜9のいずれかに記載の水浄化システム。
【0022】
11.前記水循環路の底部ないしは底部近傍に逆洗用散気管を配設し、前記接触繊維からなる濾過材に向けて散気可能な構成であることを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載の水浄化システム。
【0023】
12.水浄化を行う水にマイクロバブル又はエアバブルの如き気泡を混入する構成であることを特徴とする上記1〜11のいずれかに記載の水浄化システム。
【0024】
13.閉鎖水域内で浮島型給水濾過装置を用いて前処理を施した水を水循環路内に導入する構成であることを特徴とする上記1〜12のいずれかに記載の水浄化システム。
【0025】
14.上記1〜13のいずれかに記載の水浄化システムを用いて行う水浄化方法であって、湖沼等の閉鎖水域内の水を水循環路内に導入し、該水中に浮遊する汚泥は接触繊維からなる濾過材に付着させ、前記水中を沈降する汚泥は汚泥沈降槽に沈殿させることにより水浄化を行い、浄化の済んだ水を前記閉鎖水域内に還流することを特徴とする水浄化方法。
【0026】
15.水浄化を任意の時間行った後、閉鎖水域内から水循環路内への水の導入を停止して水循環路内の水位を低下させることにより、接触繊維からなる濾過材に付着した汚泥の少なくとも一部を剥落させて水循環路の底部に沈積させた後、前記閉鎖水域内から水循環路内への水の導入を再開することで前記沈積した汚泥を汚泥沈降槽に導き流すことを特徴とする上記14に記載の水浄化方法。
【発明の効果】
【0027】
請求項1又は14に示す発明によれば、設置費用だけでなく稼動運用管理・保守点検管理等の手間及びコストが低減され、自然景観を阻害することなく且つ水浄化性能の高い水浄化システム及び水浄化方法を提供することができる。
【0028】
特に、閉鎖水域外に設けた水循環路で水浄化を行うため、自然景観を阻害することがなく、
水循環路内に複数個並列垂下した接触繊維からなる濾過材で水浄化を行うため、水浄化性能が高く、
閉鎖水域から水循環路に水を導入し、浮遊する汚泥を接触繊維からなる濾過材で濾過すると共に沈降する汚泥を汚泥沈降槽に沈殿させることで水浄化を行い、浄化の済んだ水を閉鎖水域に還流させることで水浄化を行うことができるので、
設置費用が高価ではなく、稼動運用・保守点検管理の手間がかからず、コストも低減することができる。
更に、濾過材に付着した汚泥が多くなった際等に水流等の影響で濾過材から剥離して沈降した場合であっても、沈降した汚泥を汚泥沈降槽に沈殿させて貯溜させることで除去することができる。
【0029】
請求項2に示す発明によれば、既にある程度の大きさの汚泥が分離回収された水を浄化することになるので、より細かな汚泥の浄化に対応することができる。
【0030】
請求項3に示す発明によれば、水循環路内の通水を阻害することなく接触繊維からなる濾過材の濾過性能を発揮することができる。
【0031】
請求項4に示す発明によれば、柔軟で高剛性の素材であるバサルト長繊維を用いたことにより、水循環路内に柔軟に且つ繊維空隙の細かい状態で均等に充填することができるので、汚泥による濾過材内の部分的な閉塞を水が自在に回避して濾過が行われるので濾過材の目詰まりが著しく少なく、より効率的な濾過(水浄化)を行うことができる。
【0032】
請求項5に示す発明によれば、導入された水に含まれる汚泥の内、浮遊することなく沈降するものについてはこの最上流部に配設されて汚泥沈降槽に沈殿させて貯溜させることで第一段階の汚泥の除去ができる。
【0033】
請求項6に示す発明によれば、水循環路の最下流部の位置においても水に残っている汚泥を汚泥沈降槽に沈殿させて貯溜させることで、閉鎖水域に還流させる直前まで可能な限りの汚泥の除去ができる。
【0034】
請求項7に示す発明によれば、上層域の水通過部を水が通過する際に、水中を沈降する汚泥は、汚泥沈降促進装置であるスリット状及び/又は細管状の複数の通路の上部開口から入り込み、該通路を通過して下部開口を介して通り抜けた後、沈降汚泥貯溜部に溜まることになる。
特に、スリット状及び/又は細管状の複数の通路内を沈降する汚泥が通過する際に、汚泥の微粒子同士が結合することで沈降速度が増し、汚泥沈降貯溜部に速やかに沈殿させることができる。
さらに、汚泥沈降貯溜部に溜まった汚泥は、該汚泥沈降貯溜部の上方に配設された汚泥沈降促進装置によって水流が遮られているため、水流の影響による巻き上げを防ぐことができる。
【0035】
請求項8に示す発明によれば、水中を浮遊する汚泥を汚泥沈降槽の上層域である水通過部を通過する際にも接触繊維からなる濾過材に付着させることで除去することができる。
【0036】
請求項9に示す発明によれば、ハニカム孔群は複数の細管状の通路が規則正しく並ぶ構成を有していることから、沈降する汚泥をより効率的に汚泥沈降貯溜部に沈殿させることができる。
【0037】
請求項10に示す発明によれば、水中を水流に乗って移動しながら沈降する汚泥が、汚泥沈降促進装置の上部開口の段差に当接することで該汚泥沈降促進装置に補足され、上部開口から通路内を通って沈降汚泥貯溜部に貯溜されることになる。
【0038】
請求項11に示す発明によれば、逆洗用散気管から汚泥の付着した濾過材に向けて散気することにより、接触繊維からなる濾過材に付着した汚泥を剥離させることができる。剥離した汚泥は、汚泥沈降槽に貯溜させた後に回収することができることから、接触繊維からなる濾過材を水循環路から取り出すことなく付着した汚泥の除去が可能であるため、濾過材のメンテナンスが極めて容易である。
【0039】
請求項12に示す発明によれば、水中の汚泥に気泡が付着することにより該汚泥の粒子がフロック化するため、濾過性をより向上させることができる。
【0040】
請求項13に示す発明によれば、既にある程度の大きさの汚泥が除去された前処理済みの水を浄化することで、更なる浄化が可能となる。
【0041】
請求項15に示す発明によれば、濾過材に付着した汚泥を汚泥沈降槽に導き流して貯溜させることで汚泥沈降槽内に水循環路内で分離除去された汚泥を集めることができるので、該汚泥沈降槽内に堆積した汚泥はバキューム等の回収手段によって容易に回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明に係る水浄化システム及び水浄化方法について図面に基づき詳細に説明する。
【0043】
図1は本発明に係る水浄化システムの一実施例を示す概略構成図、図2は図1のII−II線部分の水循環路の概略断面構成図、図3は図1のII−II線部分の水循環路から接触繊維からなる濾過材を除いた状態を示す概略断面構成図、図4は図1のII−II線部分の水循環路の他の実施例を示す概略断面構成図である。
【0044】
図1に示すように、本発明に係る水浄化システム1は、湖沼等の閉鎖水域(図示は省略)内の水を導入して浄化した後、前記閉鎖水域内に還流する水循環路2を有するものであり、該水循環路2に間隔をあけて複数の汚泥沈降槽3を有し、該汚泥沈降槽3の間の水循環路2内に接触繊維からなる濾過材4を複数個並列垂下させた構成となっている。
【0045】
本発明の水浄化システム1を用いて行う湖沼等の閉鎖水域内の浄化は、該閉鎖水域内の水を水循環路2内に導入し、水中に浮遊する汚泥は該水循環路2の上流から下流に向かって複数個の濾過材4・4・4・・・に対する汚泥付着が次々と進捗することで水浄化を行い、水中を沈降する汚泥は汚泥沈降槽3に沈殿させることにより水浄化を行い、浄化の済んだ水は前記閉鎖水域内に還流する方法によって行われる。以上のような、閉鎖水域から水循環路2内への導入、該水循環路2内での浄化、該水循環路から閉鎖水域への還流、という水浄化方法を連続的(或いは間欠的)に行うことにより、湖沼等の閉鎖水域内の水を浄化することができる。
【0046】
水循環路2は、水処理施設・設備等の如き水関連施設・設備等に用いられる水移送配管や水移送溝として公知公用の管類や溝類を特別の制限なく用いていることができ、例えば、図2に示すような断面円形の配管類の他、図4に示すようなU字溝を用いることもできる。尚、水循環路2として管類ではなく、図4に示すようなU字溝の如き溝類を用いる場合には蓋体等(例えば、図4ではグレーチング等の蓋体)で上方を閉塞することは勿論である。
【0047】
汚泥沈降槽3は、閉鎖水域から導入された水に含まれる汚泥の内、水中を沈降する汚泥を沈殿させることで貯溜する槽であり、該汚泥沈降槽3内に貯溜堆積した汚泥は一定期間毎或いは一定量堆積する毎にバキューム等の回収手段によって回収除去する。
【0048】
水循環路路2に間隔をあけて複数配設される汚泥沈降槽3の各配設位置としては、図1に示すように、水循環路2の最上流部、最下流部、中流部の少なくとも3箇所に配設されることが好ましい。
【0049】
先ず、最上流部に配設された一つ目の汚泥沈降槽3は、閉鎖水域から導入された水に含まれる汚泥の内、浮遊することなく沈降する汚泥をこの最上流部の汚泥沈降槽3に沈殿させて貯溜させることで、第一段階の汚泥の除去ができる。尚、最上流部の汚泥沈降槽3と水循環路2との境界部分に配設された水位維持壁部31であり、閉鎖水域からの水の導入開始(再開)時や流量が大であったり流速が急であった場合等に、最上流部の汚泥沈降槽3に沈殿する汚泥や既に沈殿して貯溜している汚泥が撹乱されて水循環路2へ流れ込んでしまうのを防止したり、水浄化システム1の運転停止時や休止時に水循環路2内の水位が低下した際の逆流防止のためのものである。
【0050】
また、最下流部に配設された最後の汚泥沈降槽3は、水循環路2の最下流の位置においても未だ水に残っている汚泥があった場合に、この残っている汚泥をこの最下流部の汚泥沈降槽3に沈殿させて貯溜させることで、閉鎖水域に還流させる直前まで可能な限りの汚泥の除去ができる。
【0051】
更に、中流部に配設された汚泥沈降槽3は、水循環路2の上流から中流にかけて次々と濾過された水中に未だに残っている汚泥をこの中流部の汚泥沈降槽3に沈殿させて貯溜させることで水循環路2の中流部での汚泥の除去ができる。尚、中流部の汚泥沈降槽3とその下流側の水循環路2との境界部分に配設された沈降汚泥逸流防止壁部32は、水浄化システム1の運転停止時や休止時に水循環路2内の水位が低下した際の逆流防止や、中流部の汚泥沈降槽3に貯溜された汚泥の逸流防止のためのものである。
【0052】
汚泥沈降槽3の好ましい構成としては、上層域に水循環路2と連絡する水通過部33を有し、該水通過部33より下方域である下層域に沈降汚泥貯溜部34を有し、前記水通過部33の低域部に向けて上部開口51が設けられると共に前記沈降汚泥貯溜部34に向けて下部開口52が設けられるスリット状及び/又は細管状の複数の通路を有してなる汚泥沈降促進装置5を中層域に有することである。
【0053】
汚泥沈降槽3の中層域に汚泥沈降促進装置5を配設することにより、上層域の水通過部33を水が通過する際に、水中を沈降する汚泥は、汚泥沈降促進装置5のスリット状及び/又は細管状の複数の通路の上部開口51から入り込み、該通路を通過して下部開口52を介して通り抜けた後、沈降汚泥貯溜部34に溜まることになる。特に、スリット状及び/又は細管状の複数の通路内を沈降する汚泥が通過する際に、汚泥の微粒子同士が結合することで沈降速度が増し、汚泥沈降貯溜部34に速やかに沈殿させることができる。更に、汚泥沈降貯溜部34に溜まった汚泥は、該汚泥沈降貯溜部34の上方に配設された汚泥沈降促進装置5によって水流が遮られているため、水流の影響による巻き上げを防ぐことができる。尚、汚泥沈降槽3の汚泥沈降貯溜部34に貯溜堆積した汚泥を回収除去する際には、汚泥沈降槽3の蓋体35と汚泥沈降促進装置5を取り外して回収除去する。
【0054】
汚泥沈降促進装置5のスリット状及び/又は細管状の複数の通路の具体的構成としては、例えば、複数枚の邪魔板を任意の間隔で並列させることで各邪魔板間の間隙がスリット状の複数の通路として形成される構成、複数枚の波板を任意の間隔で並列させることで各波板間の間隙が波形のスリット状の複数の通路として形成される構成、角管又は丸管等の管体を複数本束ねることで細管状の複数の通路が形成される構成、ハニカム構造体の複数のハニカム孔群が通路となる構成、これらの混合混成、等を挙げることができ、中でも複数のハニカム孔群を有してなるハニカム構造体を用いることで形成される構成が好ましい。ハニカム構造体のハニカム孔群は、複数の細管状の通路が規則正しく並ぶ構成を有していることから、沈降する汚泥をより効率的に汚泥沈降貯溜部32に沈殿させることができる。
【0055】
また、汚泥沈降促進装置5の更に好ましい構成としては、複数の通路の上部開口51の高さに段差を設けることであり、この上部開口51の段差に水中を水流に乗って移動しながら沈降する汚泥が当接することで該汚泥が汚泥沈降促進装置5に補足され、上部開口51から通路内を通って沈降汚泥貯溜部34に貯溜されることになる。
【0056】
水循環路2内に複数個並列垂下された濾過材4は、この種の濾過手段を採る水浄化手段に用いられる濾過材として公知公用の接触繊維からなるものを特別の制限なく用いることができ、特に好ましくはバサルト長繊維である。バサルト長繊維は、柔軟で且つ高剛性であるため濾過材素材に適しているだけでなく、使用可能温度域が−260〜650℃と広範囲であり、耐熱温度が高い(焼結温度は1050℃)ため、強熱再生処理によって被濾過物である汚泥中の有機物を燃焼して減量乃至は除去することができる。
【0057】
接触繊維からなる濾過材4は、水の浄化を行いながら該水循環路2内の通水を阻害することなく円滑に通水されるように、該水循環路2内の上流側から下流側に向けて適宜間隔で垂下されていることが好ましく、図1に示すように、上流側では一段構成の濾過材4を略等間隔で複数配設し、上流側より浄化が進んだ中流側では二段構成の濾過材4・4を略等間隔で複数配設し、更に浄化が進み水中の汚泥が少なくなった下流側では残った細かな汚泥を濾過できるように塊状の濾過材4・4を配設することが好ましい。
【0058】
水循環路2内における濾過材4の配設量(充填量)としては、水循環路2内の通水を阻害することなく濾過性能を効率的に発揮させるために、該水循環路2内の容積中の濾過材4の占有率は30〜35%であることが好ましい。
【0059】
接触繊維からなる濾過材4は、図2に示すように水循環路2内の水流路部分に充填された状態で並列垂下されており、好ましい並列垂下構成としては、例えば、図3に示すように、水循環路2内の上部に軸方向に取付配設されたガイドレール21に水循環方向に移動可能に垂下されて濾過材支持フレーム22に巻き付け・張設・取付け等の固定状態で垂下される構成を挙げることができる。図3に示すような濾過材支持フレーム22が濾過材4の骨格を成すことで、該濾過材4の一部が水流によって部分的に捲れることによる濾過性能の低下を防止する。
【0060】
濾過材4の並列垂下位置や垂下数を変更する際には、ガイドレール21への濾過材支持フレーム22の垂下位置や垂下数を変更することで対処可能である。また、濾過材4の交換その他のメンテナンスの際には、ガイドレール21に沿って濾過材支持フレーム22を水循環方向に移動させることで水循環路2の端部まで各濾過材4を移動させることで対処することができる。
【0061】
尚、以上の構成を有する濾過材4は、水循環路2内だけでなく、最上流部以外の汚泥沈降槽3の水通過部33内にも垂下することが好ましい。汚泥沈降槽3の水通過部33にも濾過材4を垂下することで、該水通過部31を水中を浮遊する汚泥が通過する際にも濾過材4に付着させることで除去することができる。汚泥沈降槽3の水通過部33に濾過材4を垂下配設した構成とする場合、垂下部分の上方に植生部36を設けることで、濾過材4からの毛細管現象による植生部36への水分補給により植栽が可能となる。汚泥沈降槽3の上部に植栽部36を設けた場合、該植栽部36によって汚泥沈降槽3の上部を閉塞することができるので蓋体35は省略することもできる。
【0062】
以上の構成を有する本発明の水浄化システム1により、前述したように、湖沼等の閉鎖水域の浄化が可能である。
【0063】
水の浄化を行う際の水浄化システム1の稼動態様としては、連続運転であってもよいし、任意の時間の運転と停止とを繰り返す間欠運転であってもよい。
【0064】
連続運転の一例としては、前述したように、閉鎖水域内の水を水循環路2内に導入し、水中に浮遊する汚泥は該水循環路2の上流から下流に向かって複数個の濾過材4・4・4・・・に対する汚泥付着が次々と進捗することで水浄化を行い、水中を沈降する汚泥は汚泥沈降槽3に沈殿させることにより水浄化を行い、浄化の済んだ水は前記閉鎖水域内に還流することを連続的に行うものであり、運転を続ける限り、閉鎖水域から水循環路2内への導入、該水循環路2内での浄化、該水循環路から閉鎖水域への還流、という水浄化が連続的に行われることになる。
【0065】
間欠運転の一例としては、
水浄化システム1を運転させて水浄化を任意の時間行った後、閉鎖水域内から水循環路2内への水の導入を停止する、
水の導入の停止により、水循環路2内の水位が低下する、
接触繊維からなる濾過材4に付着した汚泥の少なくとも一部が剥落して水循環路2の底部に沈積する、
剥落した汚泥の一部が水位低下によって汚泥沈降槽3に移動して流れ込み、一部が水循環路2の底部に堆積する、
水浄化システム1の運転を再開して、前記閉鎖水域内から水循環路2内への水を導入する、
水が水循環路2内に流入することで該水循環路2の底部に堆積していた汚泥が流れて汚泥沈降槽3に移動して流れ込み、該汚泥沈降槽3内に貯溜する、
水循環路2内の水位が上昇し、該水循環路2内を水が移動することで、新たに導入された水の中に浮遊する汚泥は該水循環路2の上流から下流に向かって複数個の濾過材4・4・4・・・に対する汚泥付着が次々と進捗することで水浄化が行われ、水中を沈降する汚泥は汚泥沈降槽3に沈殿させることにより水浄化が行われ、浄化の済んだ水は閉鎖水域内に還流する、
この水浄化が任意の時間行われた後、水浄化システム1が停止し、・・・・・
以上の繰り返しにより、閉鎖水域内の水を浄化することができる。
【0066】
水浄化を任意の時間(期間)行った後は、汚泥沈降槽3に貯溜堆積した汚泥を前述したように回収除去するだけでなく、水浄化によって濾過材4に付着した汚泥を取り除くことで濾過性能を再生させる。濾過材4の再生に際しては、前述したようにガイドレール21に沿って濾過材支持フレーム22を水循環方向に移動させることで水循環路2の端部まで各濾過材4を移動させることで行うこともできるが、下記するように濾過材4を移動することなく行うことも可能である。
【0067】
水循環路2の底部ないしは底部近傍に逆洗用散気管23を配設し、水循環路2内に通水した状態で該逆洗用散気管23から濾過材4に向けて散気することで、該濾過材4に付着した汚泥を剥離除去することができる。剥離除去した汚泥は、汚泥沈降槽3に貯溜させた後に回収することができることから、濾過材4を水循環路2から取り出すことなく付着した汚泥の除去が可能であるため、濾過材のメンテナンスが極めて容易となる。
【0068】
本発明の水浄化システムの全体長、即ち、水の浄化を行う水循環路2の最上流から最下流までの全体の浄化長としては、浄化すべき湖沼等の閉鎖水域の大きさ・水量・濁度・水生生物や水生植物の数等の諸条件によって適宜決まるものであるが、例えば、池を中心として自然公園等が付随される規模の数ha程度の大きさの池に適用する場合、概ね100m程度の浄化長となる。また、浄化長が100m程度である場合、汚泥沈降槽3は最上流に1つと最下流に1つと中間に1つの少なくとも計3つ配設されることが好ましい。
【0069】
本発明の水浄化システムは上記した実施例に限定されず、本発明の範囲内において他の態様を採ることもできる。
【0070】
例えば、水浄化を行う水にマイクロバブル又はエアバブルの如き気泡を混入する構成とすることもできる。かかる構成によれば、水中の汚泥に気泡が付着することにより該汚泥の粒子がフロック化するため、濾過性をより向上させることができる。
【0071】
また、水循環路2内に導入する水は、エアレーションの如き前処理を施した前処理済水であることが好ましい。かかる構成によれば、既にある程度の大きさの汚泥が分離回収された水を浄化することになるので、より細かな汚泥の浄化に対応することができる。前処理としては、この種の水浄化装置・施設における水浄化技術において公知公用の前処理手段を挙げることができ、例えば、フィルター処理、金網を通過させることによる異物除去処理、前処理浴に任意の時間貯溜することによる沈殿処理、浮島型給水濾過装置による給水濾過、その他の前処理浄化手段等を挙げられ、中でも浮島型給水濾過装置による給水濾過による前処理が好ましい。
【0072】
以下、前処理手段として好ましい浮島型給水濾過装置について説明するが、当該浮島型給水濾過装置は、上記した水浄化システム及び水浄化方法と組み合わせるだけでなく、他の浄化手段と組み合わせたり、或いは単独の浄化手段として用いることもできる。
【0073】
前記浮島型給水濾過装置は、例えば、下記の構成を有する。
【0074】
(1)湖沼等の閉鎖水域の水面に浮上状態に配設し、該閉鎖水域内の水を給水濾過することで水浄化を行う浮島型給水濾過装置において、
前記浮島型給水濾過装置が、親浮島装置と、一個又は複数個の子浮島装置と、を有して構成されており、
前記親浮島装置が、
前記水面の一部を環状乃至は多角形状に囲撓して該囲撓部分の外側と内側とを分離した状態で前記水面に浮上する親浮島本体と、
前記親浮島本体から下方の水中に垂下状態で張設することで前記囲撓部分の下方の水中の外側と内側とを分離するように配設される接触繊維からなる濾過材と、
前記囲撓部分の内側の水中に給水部を有し、前記囲撓部分の外側に排水部を有するポンプと、
を有して構成されており、
前記子浮島装置が、
前記水面に浮上する子浮島本体と、
前記水面に接触した状態及び/又は水中に浸漬した状態で前記子浮島本体に取付けた接触繊維からなる浮上分離物吸着材と、
を有して構成されており、
前記親浮島装置の前記囲撓部分の内側の水面に、前記子浮島装置の一個又は複数個を浮上状態に配設する構成であることを特徴とする浮島型給水濾過装置。
【0075】
(2)前記親浮島装置の親浮島本体の少なくとも上部に植栽部が設けられており、該植栽部と前記接触繊維からなる濾過材の一部とが連絡することで該接触繊維の毛細管現象を利用した前記植栽部への水の供給が可能な構成であることを特徴とする上記(1)に記載の浮島型給水濾過装置。
【0076】
(3)前記親浮島装置の植栽部の植物繁茂による重量変化による浮力の変化に応じて前記親浮島本体の浮力を調整する浮力体を追加又は削減可能な構成であることを特徴とする上記(2)に記載の浮島型給水濾過装置。
【0077】
(4)前記囲撓部分の外周部と内周部の夫々の水中に前記親浮島本体から垂下状態で張設することで前記囲撓部分の下方の水中の外側と内側とを二重に分離するように網状体が配設された構成であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の浮島型給水濾過装置。
【0078】
(5)前記二重に配設された網状体の外側と内側との間に前記浮力体を配設する構成であることを特徴とする上記(4)に記載の浮島型給水濾過装置。
【0079】
(6)前記子浮島装置の子浮島本体の少なくとも上部に植栽部が設けられており、該植栽部と前記接触繊維からなる浮上分離物吸着材の一部とが連絡することで前記接触繊維の毛細管現象を利用した前記植栽部への水の供給が可能な構成であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の浮島型給水濾過装置。
【0080】
(7)複数の子浮島体同士が連結可能な構成であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の浮島型給水濾過装置。
【0081】
(8)前記親浮島装置の接触繊維及び前記子浮島装置の接触繊維がバサルト長繊維であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の浮島型給水濾過装置。
【0082】
(9)前記囲撓部分の内側の水中にマイクロバブル又はエアバブルの如き気泡を発生させる気泡発生装置を有する構成であることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の浮島型給水濾過装置。
【0083】
(10)前記ポンプが、親浮島装置に着脱可能に取り付けられる構成であることを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載の浮島型給水濾過装置。
【0084】
(11)前記子浮島装置の1個又は複数個を、前記親浮島装置の囲撓部分の内側の水面から取り出し、外側の水面や他の閉鎖水域に移設可能な構成であることを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれかに記載の浮島型給水濾過装置。
【0085】
(12)前記ポンプの排水を他の水処理手段に供給して、再浄化等の水処理を行う構成であることを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかに記載の浮島型給水濾過装置。
【0086】
上記構成を有する浮島型給水濾過装置は下記効果を有する。
【0087】
上記(1)に示す構成によれば、浮島型の給水濾過装置としては簡易な構成でしかも濾過性能の高い浮島型給水濾過装置を提供することができる。
【0088】
特に、閉鎖水域の囲撓部分の水中の内側でポンプによって給水すると、前記囲撓部分の外側から内側に向けて水流が生じ、この水流が前記囲撓部分の下方の水中に垂下状態で張設された接触繊維からなる濾過材を通過する際に、水内の混在している汚泥等の汚濁物が前記濾過材に付着されることで水の浄化を行うことができる。
【0089】
更に、濾過材に付着されずに前記囲撓部分の内側の水中に入り込んだ汚泥等の汚濁物の一部については、前記囲撓部分の内側の水面に浮上してきた際に、該囲撓部分の内側の水面に浮上配設されている子浮島装置に取付けた接触繊維からなる浮上分離物吸着材に吸着されることで水の浄化を更に行うことができる。
【0090】
上記(2)に示す構成によれば、植栽部に植物を植栽すること及び/又は植物が自然に自生することで自然景観を阻害することなく給水濾過装置を配設することができる。しかも、植栽部の植物への水やりは、閉鎖水域の水浄化のための濾過材を構成する接触繊維によって植栽部へ水供給されるので、人手を介したり、散水器等の手段を用いることなく可能である。
【0091】
上記(3)に示す構成によれば、植栽部の植物繁茂により重量が増加しても、かかる重量増加に対応する浮力を親浮島装置に付与することができるので、この種の浮島型の水浄化装置において発生し易い水没の問題を回避することができる。
【0092】
上記(4)に示す構成によれば、網状体により、亀や魚等の水生生物、木枝・葉等・ゴミ・その他の漂流物の囲撓部分への浸入を低減することができる。
【0093】
上記(5)に示す構成によれば、二重の網状体の外側と内側との間に浮力体を配設するだけで、該浮力体を親浮島本体に固定したり取付けたり等の手間をかけることなく親浮島装置の浮力を極めて容易に調整することができる。
【0094】
上記(6)に示す構成によれば、植栽部に植物を植栽すること及び/又は植物が自然に自生することで自然景観を阻害することなく子浮島装置を配設することができる。しかも、子浮島装置の植栽部の植物への水やりは、前記囲撓部分の内側の水面に浮上する浮上分離物を吸着するための浮上分離物吸着材を構成する接触繊維によって植栽部へ水供給されるので、人手を介したり、散水器等の手段を用いることなく可能である。
【0095】
上記(7)に示す構成によれば、子浮島装置同士を連結した状態で水面に浮上配設することができる。
【0096】
上記(8)に示す構成によれば、バサルト長繊維は柔軟で高剛性の素材であるため、親浮島装置の濾過材に用いた場合は、囲撓部分の下方の水中に濾過吸着能の高い状態で効率的に張り巡らした状態で張設することができる。また、子浮島装置の浮上分離物吸着材として用いた場合は、子浮島装置を中心とする任意の範囲内の水面部分に濾過吸着能の高い状態で効率的に配設することができる。
【0097】
上記(9)に示す構成によれば、濾過材に付着されずに前記囲撓部分の内側の水中に入り込んだ汚泥等の汚濁物の一部について、マイクロバブル又はエアバブルの如き気泡を付着させることでフロック化させて浮上させることができるので、前記囲撓部分の内側の水面に浮上配設されている子浮島装置に取付けた接触繊維からなる浮上分離物吸着材への吸着による水の浄化をより効率的且つ効果的に行うことができる。
【0098】
上記(10)に示す構成によれば、ポンプの清掃・修理・調整・交換等のメンテナンスを取り外して行うことができるのでメンテナンス性が高い。尚、濾過装置として役目を終えて閉鎖水域内の浮島として存続する場合に機械部分でポンプを取り外すことが容易であり、取り外したポンプは他に流用することができる。
【0099】
上記(11)に示す構成によれば、親浮島装置を配設するまでもない或いは配設できない程度の小水域部分に子浮島装置を配設することで、かかる小水域部分の水浄化を行うことができる。尚、移設の際には、子浮島装置に植物が繁茂した状態まで育てた後であることが好ましい。
【0100】
上記(12)に示す構成によれば、浮島型給水濾過装置によって浄化された水を他の水処理手段、例えば、上述した本発明に係る水浄化システムに供給することで、更なる水浄化等の水処理を行うことができる。
【0101】
以下、上記構成を有する浮島型給水濾過装置の実施例について添付図面に基づき説明する。
【0102】
図5は浮島型給水濾過装置の一実施例を示す概略平面図、図6は図5のVI−VI線部分の概略端面図、図7は図5のVII−VII線部分の概略端面図、図8は図6のVIII−VIII線部分の概略断面図、図9は子浮島装置の一実施例を示す概略平面図、図10は図9のX−X線部分の概略断面図、図11は図9の子浮島装置から浮上分離物吸着材を除いた状態を示す概略平面図である。尚、図6〜図8では親浮島装置の構成を明瞭化するために子浮島装置の図示を省略し、図9では親浮島装置の濾過材と網状体による囲撓構成を明瞭化するためポンプ構成及び気泡発生装置構成の図示を省略している。
【0103】
図5〜図11に示すように、浮島型給水濾過装置101は、湖沼等の閉鎖水域の水面Wに浮上状態に配設し、該閉鎖水域内の水を給水濾過することで水浄化を行うものであり、親浮島装置102と、一個又は複数個(本実施例では複数個)の子浮島装置103と、を有して構成されている。
【0104】
親浮島装置102は、図5〜図8に示すように、前記水面Wの一部を環状乃至は多角形状に囲撓して該囲撓部分の外側と内側とを分離した状態で前記水面Wに浮上する親浮島本体121と、前記親浮島本体121から下方の水中に垂下状態で張設することで前記囲撓部分の下方の水中の外側と内側とを分離するように配設される接触繊維からなる濾過材122と、前記囲撓部分の内側の水中に給水部123Aを有し、前記囲撓部分の外側に排水部を有するポンプ123と、を有して構成されている。
【0105】
親浮島装置102の親浮島本体121は、樹脂製及び/又は金属製等のパイプ材やジョイント材等で構成されたフレーム部材を基本骨格とし、該フレーム部材に濾過材122、ポンプ123、植栽部124、浮力体125等の各構成部材が取付けられることで親浮島装置102を形成する構成であることが好ましい。また、フレーム部材は部分的に分解可能とするだけでなく、任意の区画毎にブロック化した構成とし、メンテナンス等の際や後述するポンプ123の着脱の際等の作業性向上のために任意のブロック部分を取外し可能な構成とすることが好ましい。更に、ジョイント材等を介して追加のブロック部分を連結したり、或いは親浮島本体121自体の大きさや形状を変更可能に構成することも好ましい。
【0106】
ポンプ123は、この種の給水濾過装置に用いられる公知公用の給水ポンプを特別の制限なく用いることができる。ポンプ123は、ポンプ浮力体123Dを有するポンプユニット123Cを介して親浮島本体121のフレーム部121Aに着脱可能に連結されていることが好ましく、メンテナンス等の際にフレーム部121Aから取り外すことで取扱性が向上する。尚、ポンプ123の排水部は、排水管123Bを介して前記囲撓部分の外側に排水する構成であってもよいし、排水管123Bを介して他の水処理手段に供給して、再浄化等の水処理を行う構成であってもよい。他の水処理手段としては、上述した本発明に係る水浄化システムを好ましく挙げることができ、本発明に係る水浄化システムに供給することで、更なる水浄化等の水処理を行うことができる。
【0107】
接触繊維からなる濾過材122は、閉鎖水域の囲撓部分の水中の内側で前記ポンプ122の稼動による給水が開始されると、前記囲撓部分の外側から内側に向けて水流が生じ、この水流が前記囲撓部分の下方の水中に垂下状態で張設された接触繊維からなる濾過材122を通過する際に、水内の混在している汚泥等の汚濁物が前記濾過材122に付着されることで水の浄化を行うものである。
【0108】
濾過材122の張設構成としては、前記囲撓部分の下方の水中の外側と内側を分離する際に、該外側から内側に向けて通過する水流の中に含まれる汚泥を最大限補足できるように、且つ通水を阻害することなく円滑に通水可能な状態で間隙なく張設されることが好ましい。従って、濾過材122の下端は水底に接するまで垂下されるか、水深が深い閉鎖水域に用いる場合には、前記囲撓部分の下方の任意の深さにおいて底部を閉塞するように濾過材122を張設することが好ましい。
【0109】
濾過材122は、図6及び図7に示すように前記囲撓部分の下方の水中に垂下張設されているが、好ましい垂下構成としては、例えば、金網等の網状体やステンレスメッシュ材等の格子状体等の濾過材支持フレームを前記親浮島本体121の下方に垂下状態に配設し、該濾過材支持フレームに該濾過材122を巻き付け・張設・取付け等の固定状態で垂下される構成を挙げることができる。濾過材支持フレームが濾過材122の骨格を成すことで、該濾過材122の一部が水流によって部分的に捲れることによる濾過性能の低下を防止することができる。
【0110】
濾過材122を構成する接触繊維としては、この種の濾過手段を採る水浄化手段に用いられる濾過材として公知公用の接触繊維からなるものを特別の制限なく用いることができ、特に好ましくはバサルト長繊維である。バサルト長繊維は、柔軟で且つ高剛性であるため濾過材素材に適しているだけでなく、使用可能温度域が−260〜650℃と広範囲であり、耐熱温度が高い(焼結温度は1050℃)ため、強熱再生処理によって被濾過物である汚泥中の有機物を燃焼して減量乃至は除去することができる。
【0111】
植栽部124は、前記親浮島本体121の少なくとも上部に設けられており、該植栽部124に植物を植栽したり、飛んで来た種子が根付くことで植物が自然に自生したりすることで植物が繁茂する部位である。該植栽部124は、前記濾過材122を構成する接触繊維の一部が連絡するように配設させておくことで、該接触繊維の毛細管現象によって、人手を介したり散水器等の手段を用いることなく植物への水やりをおこなうことができる。尚、該植栽部124には植物の繁茂のために土壌材が配設されることが好ましく、土壌材としては、植物繁茂に適するだけでなく、親浮島装置102の浮力への悪影響を低減した軽量土壌材であることが好ましい。
【0112】
浮力体125は、親浮島本体121を水面Wに浮上させるための浮きの役目を果たすものであり、植栽部124の植物繁茂による重量変化による浮力の変化に応じて前記親浮島本体121の浮力を調整する構成であることが好ましい。浮力の調整手段としては、浮力体125の大きさや数を増減したり、浮力性の高い素材を用いたり、バラスト水を増減したり、或いはフレーム部121Aに取付けたカウンターウェイト126を増減する等の手段を挙げることができ、中でも、浮力体125の数を追加又は削減することが容易であり好ましい。浮力体125の数を追加又は削減する構成の場合、該浮力体125としては、発泡樹脂材、灯油ポリタンクの如き軽量樹脂容器等の簡易な浮力物を用いることが好ましい。親浮島本体121の浮力を増加させる際には、単に軽量樹脂容器を親浮島本体121に適量数を取付けることで浮力の追加が可能である。尚、親浮島本体121自体も浮力を有していてもよい。
【0113】
前記親浮島本体121には、前記濾過材122の垂下張設に加えて、前記囲撓部分の外周部と内周部の夫々の水中に前記親浮島本体121から垂下状態で張設することで前記囲撓部分の下方の水中の外側と内側とを二重に分離するように網状体127を配設する構成であることが好ましい(図8参照)。かかる構成によれば、亀や魚等の水生生物、木枝・葉等・ゴミ・その他の漂流物の囲撓部分への浸入を低減することができる。更に、二重に配設された網状体127の外側と内側との間に前記浮力体125を配設する構成とすれば、該浮力体125を親浮島本体121に固定したり取付けたり等の手間をかけることなく親浮島装置102の浮力を得ることができる。更にまた、親浮島装置102の浮力の調整を調整する場合にも、二重に配設された網状体127の間に浮力体125を追加配設したり、かかる網状体127の間から浮力体125を取り出すだけでよいので、極めて容易に調整することができる。
【0114】
上記のような構成を有する親浮島装置102の前記囲撓部分の内側の水面Wに一個又は複数個浮上配設される子浮島装置103について以下に説明する。
【0115】
子浮島装置103は、図9〜図11に示すように、前記水面Wに浮上する子浮島本体131と、前記水面Wに接触した状態及び/又は水中に浸漬した状態で前記子浮島本体131に取付けた接触繊維からなる浮上分離物吸着材132と、を有して構成されている。
【0116】
一個又は複数個の子浮島装置103を親浮島装置102の前記囲撓部分の内側の水面Wに浮上配設することで、濾過材122に付着されずに前記囲撓部分の内側の水中に入り込んだ汚泥等の汚濁物の一部については、前記囲撓部分の内側の水面に浮上してきた際に、該子浮島装置103に取付けた接触繊維からなる浮上分離物吸着材132に吸着されることで更なる水の浄化を行うことができる。
【0117】
子浮島本体131は、浮力を有する発泡樹脂等の軽量材で形成されていることが好ましいが、本体部分と浮力部分とを別体で形成したものを組み合わせた構成であってもよい。また、子浮島本体131には、周囲に延びるアーム部材133が1本又は複数本(本実施例では8本)設けられていることが好ましい。更に、該アーム部材133の少なくとも一本(本実施例では全8本)には連結用フック133Aが設けられており、複数の子浮島体133同士を連結することで水面Wに連結状態で浮上配設することもできる。更にまた、アーム部材133が設けられている場合、前記浮上分離物吸着材132を該アーム部材133に絡めるように取付けることができる。
【0118】
浮上分離物吸着材132を構成する接触繊維としては、この種の吸着濾過手段を採る水浄化手段に用いられる吸着材として公知公用の接触繊維からなるものを特別の制限なく用いることができ、特に好ましくは前記濾過材122と同様にバサルト長繊維である。
【0119】
子浮島本体131の少なくとも上部には植栽部134が設けられており、該植栽部134と前記接触繊維からなる浮上分離物吸着材132の一部とが子浮島本体131に形成された透孔部134Aを介して連絡することで前記接触繊維の毛細管現象を利用した前記植栽部134への水の供給が可能に構成されることが好ましい。該植栽部134に植物を植栽したり、飛んで来た種子が根付くことで植物が自然に自生したりすることで植物が繁茂することで自然景観を阻害することなく子浮島装置を配設することができる。
【0120】
以上の構成を有する子浮島装置103によって、前記囲撓部分の内側に入り込んだ汚泥等の汚濁物の一部を吸着することで水の浄化を行うが、該子浮島装置103による汚泥等の汚濁物の吸着をより効率的且つ効果的に行うために、前記囲撓部分の内側の水中にマイクロバブル又はエアバブルの如き気泡を発生させる気泡発生装置128を有する構成とすることが好ましい。
【0121】
気泡発生装置128は前記囲撓部分の内側の水中に気泡を吐出する気泡吐出部128Aを配設し、本体部分である気泡発生装置128自体は他の部位(例えば、本実施例では親浮島装置102)に配設し、気泡配管128Bを介して前記気泡吐出部128Aから気泡を吐出する構成であることが好ましい。
【0122】
前記囲撓部分の内側の水中にマイクロバブル又はエアバブルの如き気泡を発生させることにより、濾過材122に付着されずに前記囲撓部分の内側の水中に入り込んだ汚泥等の汚濁物の一部にマイクロバブル又はエアバブルの如き気泡が付着し、この気泡の付着によって汚泥等の汚濁物がフロック化して浮上することになる。フロック化して浮上する汚泥等の汚濁物は、前記囲撓部分の内側の水面に浮上配設されている子浮島装置103に取付けた接触繊維からなる浮上分離物吸着材132に吸着することになり、水の浄化がより効率的且つ効果的に行われることになる。
【0123】
子浮島装置103は、前記囲撓部分の内側に入り込んだ汚泥等の汚濁物を吸着する共に、植物が繁茂した状態となった後は、前記親浮島装置102の囲撓部分の内側の水面から取り出し、外側の水面Wや他の閉鎖水域に移設してもよい。移設箇所としては、親浮島装置102を配設するまでもない或いは配設できない程度の小水域部分であり、かかる小水域部分に子浮島装置103を配設することで親浮島装置102が配設できない小水域部分の水浄化を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明に係る水浄化システムの一実施例を示す概略構成図
【図2】図1のII−II線部分の水循環路の概略断面構成図
【図3】図1のII−II線部分の水循環路から接触繊維からなる濾過材を除いた状態を示す概略断面構成図
【図4】図1のII−II線部分の水循環路の他の実施例を示す概略断面構成図
【図5】浮島型給水濾過装置の一実施例を示す概略平面図
【図6】図5のVI−VI線部分の概略端面図
【図7】図5のVII−VII線部分の概略端面図
【図8】図6のVIII−VIII線部分の概略断面図
【図9】子浮島装置の一実施例を示す概略平面図
【図10】図9のX−X線部分の概略断面図
【図11】図9の子浮島装置から浮上分離物吸着材を除いた状態を示す概略平面図
【符号の説明】
【0125】
1 水浄化システム
2 水循環路
21 ガイドレール
22 濾過材支持フレーム
23 逆洗用散気管
3 汚泥沈降槽
31 水位維持壁部
32 沈降汚泥逸流防止壁部
33 水通過部
34 沈降汚泥貯溜部
35 蓋体
36 植生部
4 濾過材
5 汚泥沈降促進装置
51 上部開口
52 下部開口
101 浮島型給水濾過装置
102 親浮島装置
121 親浮島本体
122 濾過材
123 ポンプ
123A 給水部
123B 排水管
123C ポンプユニット
123D ポンプ浮力体
124 植栽部
125 浮力体
126 カウンターウェイト
127 網状体
128 気泡発生装置
128A 気泡吐出部
128B 気泡配管
103 子浮島装置
131 子浮島本体
132 浮上分離物吸着材
133 アーム部材
133A 連結用フック
134 植栽部
134A 透孔部
W 水面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湖沼等の閉鎖水域内の水を導入して浄化した後、前記閉鎖水域内に還流する水循環路を有する水浄化システムにおいて、
該水循環路に間隔をあけて複数の汚泥沈降槽を有し、該汚泥沈降槽の間の水循環路内に接触繊維からなる濾過材を複数個並列垂下させてあり、
水循環路の上流から下流に向かって複数個の濾過材に対する汚泥付着が次々と進捗することで水浄化を行う構成であることを特徴とする水浄化システム。
【請求項2】
水循環路内に導入する水がエアレーションの如き前処理を施した前処理済水であることを特徴とする請求項1に記載の水浄化システム。
【請求項3】
水循環路内の容積中、接触繊維からなる濾過材の占有率が30〜35%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水浄化システム。
【請求項4】
接触繊維がバサルト長繊維であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水浄化システム。
【請求項5】
汚泥沈降槽の一つが、水循環路の最上流部に配設されており、該最上流部の汚泥沈降槽に閉鎖水域内の水を導入する構成であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水浄化システム。
【請求項6】
汚泥沈降槽の一つが、水循環路の最下流部に配設されており、該最下流部の汚泥沈降槽から閉鎖水域内に水を放流する構成であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水浄化システム。
【請求項7】
汚泥沈降槽が、上層域に水循環路と連絡する水通過部を有し、該水通過部より下方域である下層域に沈降汚泥貯溜部を有し、前記水通過部の低域部に向けて上部開口が設けられると共に前記沈降汚泥貯溜部に向けて下部開口が設けられるスリット状及び/又は細管状の複数の通路を有してなる汚泥沈降促進装置を中層域に有する構成であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の水浄化システム。
【請求項8】
汚泥沈降槽の水通過部内に接触繊維からなる濾過材を垂下させてあることを特徴とする請求項7に記載の水浄化システム。
【請求項9】
前記汚泥沈降促進装置が、複数のハニカム孔群を有してなるハニカム構造体からなることを特徴とする請求項7又は8に記載の水浄化システム。
【請求項10】
前記汚泥沈降促進装置の複数の通路の上部開口の高さに段差が設けられていることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の水浄化システム。
【請求項11】
前記水循環路の底部ないしは底部近傍に逆洗用散気管を配設し、前記接触繊維からなる濾過材に向けて散気可能な構成であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の水浄化システム。
【請求項12】
水浄化を行う水にマイクロバブル又はエアバブルの如き気泡を混入する構成であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の水浄化システム。
【請求項13】
閉鎖水域内で浮島型給水濾過装置を用いて前処理を施した水を水循環路内に導入する構成であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の水浄化システム。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の水浄化システムを用いて行う水浄化方法であって、湖沼等の閉鎖水域内の水を水循環路内に導入し、該水中に浮遊する汚泥は接触繊維からなる濾過材に付着させ、前記水中を沈降する汚泥は汚泥沈降槽に沈殿させることにより水浄化を行い、浄化の済んだ水を前記閉鎖水域内に還流することを特徴とする水浄化方法。
【請求項15】
水浄化を任意の時間行った後、閉鎖水域内から水循環路内への水の導入を停止して水循環路内の水位を低下させることにより、接触繊維からなる濾過材に付着した汚泥の少なくとも一部を剥落させて水循環路の底部に沈積させた後、前記閉鎖水域内から水循環路内への水の導入を再開することで前記沈積した汚泥を汚泥沈降槽に導き流すことを特徴とする請求項14に記載の水浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−42372(P2010−42372A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209460(P2008−209460)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【出願人】(000172813)佐藤工業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】