説明

水溶性のロジン酸エステル

本発明は、ロジン酸エステル、ロジン酸エステルを含有する組成物、ロジン酸エステルの製造法、およびロジン酸エステルの使用法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロジン酸エステル、ロジン酸エステルを含有する組成物、ロジン酸エステルの製造方法、およびロジン酸エステルの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
合成潤滑油含有配合物、半合成潤滑油含有配合物、および水溶性潤滑油含有配合物において有用な従来の潤滑油(例えば、金属加工の分野において有用な潤滑油)は、水に対して難溶性である。例えば、こうした従来の潤滑油は、約20重量%以下の水を含有する配合物に対してのみ溶解する。配合物中の水の量がこのポイントを越えて増大すると、従来の潤滑油を含有する配合物についての所定のトルクでの負荷特性が非常に損なわれる。“ロードキャリング(load carrying)”は、関連技術分野において使用されている特性であり、例えば、工業的に受け入れられている基準(例えばASTM3233)に従って測定することができる。配合物の“ロードキャリング”特性は、ある程度は、従来の潤滑油の水への溶解性のレベルに依存する。したがって従来の潤滑油が、上記潤滑油含有配合物のいずれかに使用される場合、良好なロードキャリング特性を保持するために、それらの水溶性を低下させざるをえない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、オイル含有配合物に使用した場合に優れたロードキャリング特性を保持すると同時に高い水溶性を有する潤滑油、を含有する配合物を提供するのが望ましい。
本出願は、例えば、“Kirk−Othmer“Encyclopedia of Chemical Technology”,第4版(1996),John Wiley & Sons(該文献の全内容を参照により本明細書に援用する)に記載されている化学とポリマーサイエンスの分野に関する。
【0004】
本発明者らは、驚くべきことに、オイル含有配合物中の潤滑油(金属加工用配合物において有用であることが好ましい)として使用する上で比較的低コストで且つ環境に優しい組成物を見出した。本発明に係る組成物は、水に対する溶解性が比較的高い。さらに、本発明に係る組成物をオイル含有配合物中の潤滑油(金属加工用配合物において有用であることが好ましい)として使用すると、広範囲のトルク範囲内で優れたロードキャリング特性をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はロジン酸エステルに関する。ロジン酸エステルは、組成物の総重量を基準として約20重量%以上の水に対して溶解するのが好ましく、約30重量%以上の水に対して溶解するのがさらに好ましく、そして約40重量%の水に対して溶解するのが最も好ましい。組成物中の水の量は、組成物の総重量を基準として約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約75重量%、約80重量%、約85重量%、約90重量%、約95重量%、および約99重量%(該数値間の全範囲と部分的範囲を含む)であってよい。
【0006】
本発明のロジン酸エステルはさらに、水とエステルとが約1/4以上の重量比で存在するときに組成物に溶解し、約1/3以上の重量比で存在するときに組成物に溶解することが好ましく、約1/2以上の重量比で存在するときに組成物に溶解するのがさらに好ましく、約1/1以上の重量比にて存在するときに組成物に溶解するのが最も好ましい。水とエステルとの重量比は、約1/4、約1/3、約1/2、約1/1、約2/1、約3/1、約4/1、約5/1、約6/1、約7/1、約8/1、約9/1、および約10/1(該数値間の全範囲と部分的範囲を含む)であってよい。
【0007】
本発明はさらに、組成物であって、エステル含有組成物(好ましくはロジン酸エステル、および/またはロジン酸エステルを含有するもの)に関する。エステル含有組成物は、2つの反応プロセスの反応生成物であるが、これら2つの反応を一工程で同時に、および/または複数の工程で連続的に行うことができる。第1の反応においては、少なくとも1種のロジン酸含有組成物を少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸もしくはそれらのエステルと反応させて、ロジン酸とα,β−不飽和カルボン酸もしくはそれらのエステルとの付加物を含有する中間体組成物を形成させる。引き続き、該付加物を含有する中間体組成物をアルコール含有化合物と反応させて本発明の組成物を得る。こうして得られるエステル含有組成物が本発明の少なくとも1種のロジン酸エステルであり、および/または、こうして得られるエステル含有組成物は、本発明の少なくとも1種のロジン酸エステルを含有する。
【0008】
ロジン酸含有組成物は、いかなるロジン酸含有組成物であってもよい。ロジン酸含有組成物は、バイオマスおよび/またはそれらの副生物を含むことが好ましい。従って、ロジン酸含有組成物は再生可能資源である。
【0009】
バイオマス生成物(例えば、石油精製や天然の産生源を利用するプロセスからの副生物)は、通常低コストである。バイオマス生成物の例としては、木から紙を製造する際の副生物が挙げられる。従って、黒液固形物(black liquor solids)、石ケン、浮き滓(skimmings)、およびトール油生成物(例えば、ピッチおよび/またはそれらの蒸留物)に類似の生成物等のバイオマス生成物も、こうしたバイオマス生成物の例である。このようなバイオマス生成物はさらに、上記の採鉱プロセスおよび/または石油精製プロセスにおいて使用される従来の消泡剤と比較したときに圧倒的に環境に優しい。
【0010】
ロジン酸含有組成物は、少なくとも1種のロジン酸化合物を含有する。ロジン酸化合物は、天然樹脂をベースとする酸(例えば、天然油の蒸留残渣から得られる酸)から選択することができる。さらに、ロジン酸化合物を誘導することもできる。ロジン化合物は酸であるので、誘導体は、一般的な有機化学の教科書(例えば、Leroy G.Wade著“Organic Chemistry”,第5版)において知られているカルボニル含有化合物のいかなる公知の誘導体であってもよい。このような誘導体の例としては、ロジン酸化合物のエステル誘導体、アミンカルボキシレート誘導体、およびニトリル誘導体などがあるが、これらに限定されない。
【0011】
ロジン酸としては、黒液の浮き滓、粗製トール油、トール油ピッチ、および蒸留トール油から単離できるロジン酸などがある。ロジン酸はさらに、トール油ロジン、ガムロジン、およびウッドロジン中に見られるロジン酸であってもよい。これらの天然に産するロジンは、通常は約20個の炭素原子を含有するロジン三環式モノカルボン酸の混合物および/または異性体であってよい。三環式ロジン酸は、主に二重結合の位置が異なる。ロジン酸は、レボピマール酸、ネオアビエチン酸、パルストリン酸、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、セコ−デヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、ピマル酸、paulstric acid、イソピマル酸、前記化合物の混合物、異性体、および/または誘導体の少なくとも1種であってよい。天然の産生源に由来するロジンとして、重合、異性化、不均化、または水素化によって著しく変性されたロジン(すなわちロジン混合物)も挙げることができる。ロジン酸は、米国特許第6,900,274号、第6,875,842号、第6,846,941号、第6,344,573号、第6,414,111号、第4,519,952号、および第6,623,554号(これら特許の全開示内容を参照により本明細書に援用する)に記載のロジン酸を含んでよい。
【0012】
ロジン酸含有組成物は、天然油の蒸留残渣から得られる天然樹脂ベースの酸、アミンカルボキシレート、これら酸のエステル化合物、およびこれら酸のニトリル化合物からなる群から選択される少なくとも1種のロジン酸化合物を、組成物の総重量を基準として0.1〜100重量%含有する。ロジン酸含有組成物は、少なくとも1種のロジン酸化合物を、組成物の総重量を基準として約50重量%以上含有するのが好ましく、約60重量%以上含有するのがさらに好ましく、約70重量%以上含有するのが最も好ましい。少なくとも1種のロジン酸化合物の量は、組成物の総重量を基準として40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、または100重量%であってよい。
【0013】
組成物中に存在する、天然油の蒸留残渣から得られる天然樹脂ベースの酸、アミンカルボキシレート、これら酸のエステル化合物、およびこれら酸のニトリル化合物からなる群から選択されるロジン酸化合物の量は、組成物の総重量を基準として0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.5重量%、1.0重量%、1.5重量%、2.0重量%、3.0重量%、4.0重量%、5.0重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、99重量%、99.1重量%、99.2重量%、99.3重量%、99.4重量%、99.5重量%、99.6重量%、99.7重量%、99.8重量%、または99.9重量%(該数値間の全範囲と部分的範囲を含む)であってよい。
【0014】
ロジン酸含有組成物は、少なくとも1種の不鹸化物質を含有してよい。不鹸化物質の例として、米国特許第6,465,665号、第6,462,210号、および第6,297,353号(これら特許の全開示内容を参照により本明細書に援用する)に記載の不鹸化物質があるが、それらに限定されない。不鹸化物質は、鹸化することのできないあらゆる中性物質もしくはそれらのエステルであってよい。
【0015】
不鹸化物質の例としては、トコフェロール、トコトリエノール、カロテノイド、ビタミンA、ビタミンK、ビタミンD、リポタンパク質、コレステロール、プロビタミン、成長因子、フラボノイド、ステロール、スチルベン、スクアラン、オリザノール、およびリコピンなどがあるが、これらに限定されない。不鹸化物質は、米国特許第6,875,842号、第6,846,941号、第6,344,573号、第6,414,111号、第4,519,952号、および第6,623,554号(これら特許の全開示内容を参照により本明細書に援用される)に記載の不鹸化物質を含んでよい。
【0016】
このような不鹸化物質のさらなる例としては、植物[例えば本木植物、好ましくは木]において見出される不鹸化物質が挙げられる。このような不鹸化物質の例としては、ステロール、スタノール、ポリコサノール、3,5−シトスタジエン−3−オン、4−スチグマステン−3−オン、α−および/またはβ−シトステロール、α−および/またはβ−シトスタノール、カンペスタノール、カンペステロール、シクロアルテノール、ドコサノール、エイコサノール、エルゴステロール、スクアレン(escualene)、脂肪族アルコールエステル、ステロールエステル、ヘキサコサノール、メチレンシクロアルテノール、ピマラール、ピマロール、スチグアスタン−3−オン、およびテトラコサノール等があるが、これらに限定されない。
【0017】
ロジン酸含有組成物は、組成物の総重量を基準として75重量%以下の不鹸化物質を含有してよい。ロジン酸含有組成物は、組成物の総重量を基準として約50重量%未満の不鹸化物質を含有するのが好ましく、約25重量%未満の不鹸化物質を含有するのがさらに好ましく、約10重量%未満の不鹸化物質を含有するのが最も好ましい。ロジン酸含有組成物中に存在する不鹸化物質の量は、組成物の総重量を基準として0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.5重量%、1.0重量%、1.5重量%、2.0重量%、2.5重量%、3.0重量%、4.0重量%、4.5重量%、5.0重量%、5.5重量%、6.0重量%、6.5重量%、7.0重量%、7.5重量%、8.0重量%、8.5重量%、9.0重量%、9.5重量%、または10.0重量%(該数値間の全範囲と部分的範囲を含む)であってよい。
【0018】
ロジン酸含有組成物は、少なくとも1種の飽和もしくは不飽和の脂肪族モノカルボン酸炭化水素を含有してよい。飽和もしくは不飽和の脂肪族モノカルボン酸炭化水素は、5〜30個の炭素原子(好ましくは8〜24個の炭素原子)を有してよい。該炭化水素は、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、および30個(該数値間の全範囲と部分的範囲を含む)の炭素原子を有してよい。
【0019】
ロジン酸含有組成物は、少なくとも1種の飽和もしくは不飽和の脂肪族モノカルボン酸炭化水素またはそれらの誘導体を含有してよい。該炭化水素はモノカルボン酸であるので、誘導体は、一般的な有機化学の教科書[例えば、Leroy G.Wade著“Organic Chemistry”,第5版(該文献の全内容を参照により本明細書に援用する)]において公知のカルボニル含有化合物の一般的に知られているいかなる誘導体であってもよい。
【0020】
飽和もしくは不飽和の脂肪族モノカルボン酸炭化水素の誘導体の例としては、エステル、ニトリル、前記物質のアミンカルボキシレート、ならびに、黒液固形物、石ケン、浮き滓、およびトール油生成物(例えば、ピッチおよび/またはそれらの蒸留物)中に一般的に見られる物質などがある。この場合も、飽和もしくは不飽和の脂肪族モノカルボン酸炭化水素は、5〜30個の炭素原子(好ましくは8〜24個の炭素原子)を有してよい。該炭化水素は、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、および30個(該数値間の全範囲と部分的範囲を含む)の炭素原子を有してよい。
【0021】
ロジン酸含有組成物は、少なくとも1種の飽和もしくは不飽和の脂肪族モノカルボン酸炭化水素、あるいは直鎖、分岐鎖、および/または環式鎖を有するそれらの誘導体を含有してよい。この場合も、飽和もしくは不飽和の脂肪族モノカルボン酸炭化水素は、5〜30個の炭素原子(好ましくは8〜24個の炭素原子)を有してよい。該炭化水素は、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、および30個(該数値間の全範囲と部分的範囲を含む)の炭素原子を有してよい。
【0022】
ロジン酸含有組成物は、少なくとも1種の飽和もしくは不飽和の脂肪族モノカルボン酸炭化水素;直鎖、分岐鎖、および/または環式鎖を有するそれらの誘導体;それらの二量体;それらの三量体;あるいはそれらの混合物;を含有してよい。ロジン酸含有組成物は、組成物の総重量を基準として約75重量%未満の量で、飽和もしくは不飽和の脂肪族モノカルボン酸炭化水素;直鎖、分岐鎖、および/または環式鎖を有するそれらの誘導体;それらの二量体;それらの三量体;あるいはそれらの混合物;を含有してよい。ロジン酸含有組成物は、飽和もしくは不飽和の脂肪族モノカルボン酸炭化水素;直鎖、分岐鎖、および/または環式鎖を有するそれらの誘導体;それらの二量体;それらの三量体;あるいはそれらの混合物;を約50重量%未満含有するのが好ましく、約25重量%未満の量で含有するのがさらに好ましく、約10重量%未満の量で含有するのが最も好ましい。非常に好ましい一実施態様において、ロジン酸含有組成物は、飽和もしくは不飽和の脂肪族モノカルボン酸炭化水素;直鎖、分岐鎖、および/または環式鎖を有するそれらの誘導体;それらの二量体;それらの三量体;あるいはそれらの混合物;を、組成物の総重量を基準として約4重量%以下の量で含有してよい。
【0023】
ロジン酸含有組成物中に存在する、飽和もしくは不飽和の脂肪族モノカルボン酸炭化水素;直鎖、分岐鎖、および/または環式鎖を有するそれらの誘導体;それらの二量体;それらの三量体;あるいはそれらの混合物;の量は、組成物の総重量を基準として0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.5重量%、1.0重量%、1.5重量%、2.0重量%、2.5重量%、3.0重量%、3.5重量%、4.0重量%、4.5重量%、5.0重量%、5.5重量%、6.0重量%、6.5重量%、7.0重量%、7.5重量%、8.0重量%、8.5重量%、9.0重量%、9.5重量%、または10.0重量%(該数値間の全範囲と部分的範囲を含む)であってよい。
【0024】
飽和もしくは不飽和の脂肪族モノカルボン酸炭化水素;直鎖、分岐鎖、および/または環式鎖を有するそれらの誘導体;それらの二量体;あるいはそれらの三量体;は、バイオマス生成物中に見られる1種以上の物質{例えば、黒液固形物、石ケン、浮き滓、およびトール油生成物[例えば、ピッチおよび/またはそれらの蒸留物(例えば、トール油脂肪酸、蒸留トール油、粗製トール油、およびモノマー)]と同類の生成物等}であってよい。
【0025】
飽和もしくは不飽和の脂肪族モノカルボン酸炭化水素は脂肪酸である。このような脂肪酸の例としては、オレイン酸、リノール酸、および/またはステアリン酸(それらの誘導体を含む);それらの直鎖モノマー、分岐鎖モノマー、および/または環式モノマー;それらの二量体;および/またはそれらの三量体;などがある。
【0026】
飽和もしくは不飽和の脂肪族モノカルボン酸炭化水素;直鎖、分岐鎖、および/または環式鎖を有するそれらの誘導体;それらの二量体;あるいはそれらの三量体;は、直鎖、分岐鎖、および/または環式のC18鎖を有する酸であってよい。このような酸の例としては、リノール酸および/またはオレイン酸、あるいはそれらの誘導体などがある。さらに他の例としては、リノール酸および/またはオレイン酸の直鎖異性体、分岐鎖異性体、および/または環状異性体などがある。
【0027】
飽和もしくは不飽和の脂肪族モノカルボン酸炭化水素;直鎖、分岐鎖、および/または環式鎖を有するそれらの誘導体;それらの二量体;あるいはそれらの三量体;は、例えば米国特許第6,875,842号、第6,846,941号、第6,344,573号、第6,414,111号、第4,519,952号、および第6,623,554号(これら特許の全開示内容を参照により本明細書に援用する)に記載の化合物であってよい。
【0028】
最後に、飽和もしくは不飽和の脂肪族モノカルボン酸炭化水素;直鎖、分岐鎖、および/または環式鎖を有するそれらの誘導体;それらの二量体;あるいはそれらの三量体;は、カプロン酸、enthanic acid、カプリル酸、カプリン酸、イソデシル酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、エルカ酸、アゼライン酸、ヤシ油、大豆油、トール油、獣脂、ラード、牛脚油、アプリコット油、小麦の胚種油、トウモロコシ油、綿実油、リシン酸(ricinic acid)、リシノール酸、菜種油、パーム核油脂肪酸、ダイマー酸、トリマー酸、オゾン酸、二塩基酸、三塩基酸、これらの組み合わせ物、またはこれらの混合物であってよい。
【0029】
ロジン酸含有組成物は任意の酸価を有する。ロジン酸含有組成物は、200未満(好ましくは190未満、さらに好ましくは180未満、最も好ましくは170未満)の酸価を有することが好ましい。ロジン酸含有組成物の酸価は、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、75、80、85、90、95、100、105、110、120、125、130、140、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、または200(該数値間の全範囲と部分的範囲を含む)であってよい。酸価は、10〜165であることが好ましいが、上記の任意の酸価(該数値間の全範囲と部分的範囲を含む)であってよい。
【0030】
前述したように、本発明のロジン酸エステルは、一部は、少なくとも1種のロジン酸含有組成物と、α,β−不飽和カルボキシル化合物もしくはそれらのエステルとの反応生成物である。α,β−不飽和カルボキシル化合物は、カルボキシル基の炭素原子に隣接してオレフィン性不飽和を有する(すなわち、炭素原子と酸素原子に関して−C=C−C(=O)−O−配置を有する)。α,β−不飽和カルボキシル化合物は、ロジン酸と反応して付加物を形成する。α,β−不飽和カルボキシル化合物が無水マレイン酸であるとき、ロジンとマレイン酸との間の付加物はマレイン化(maleated)ロジンとして知られている。α,β−不飽和カルボキシル化合物がフマル酸もしくはフマル酸のエステルであるとき、ロジンとフマル酸もしくはフマル酸エステルとの間の付加物はフマル化(fumarated)ロジンとして知られている。
【0031】
適切なα,β−不飽和カルボキシル化合物としては、無水マレイン酸、フマル酸、フマル酸のモノ(C−C12アルキル)エステル、フマル酸のジ(C−C12アルキル)エステル、アクリル酸、アクリル酸のC−C12アルキルエステル、メタクリル酸、メタクリル酸のC−C12アルキルエステル、イタコン酸、およびイタコン酸のC−C12アルキルエステルなどがある。好ましいα,β−不飽和カルボキシル化合物は、無水マレイン酸、フマル酸、およびフマル酸のエステルであり、最も好ましいのはフマル酸及びフマル酸のエステルである。
【0032】
前述したように、本発明のロジン酸エステルは、一部は、少なくとも1種のロジン酸含有組成物とα,β−不飽和カルボキシル化合物もしくはそれらのエステルとの反応生成物であって、それらの間の付加物である中間体組成物、および/またはそれらの間の付加物を含有する中間体組成物を形成する。次いで、中間体組成物および/または付加物とアルコール含有組成物とを反応させて、本発明の組成物を得る。本発明の組成物は、本発明の少なくとも1種のロジン酸エステルであるか、又は、本発明の少なくとも1種のロジン酸エステルを含有してよい。
【0033】
本発明のアルコール含有組成物は、任意のアルコール含有組成物であってよい。アルコール含有組成物は、少なくとも1種の任意の多価アルコールであるか、および/または、少なくとも1種の任意の多価アルコールを含有することが好ましい。本発明の多価アルコールは、標準的なエステル化反応を介して酸成分と反応し、そして標準的なエステル交換反応によってエステル成分と反応して、架橋樹脂状付加物を生成する。代表的なポリオールとしては、アルキレングリコール(例えば、エチレングリコールやプロピレングリコール)、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール)、アルキレントリオール(例えば、グリセロール、トリメチロールエタン、およびトリメチロールプロパン)、四官能性アルコール(例えばペンタエリスリトール)、五官能性アルコール(例えば二量化トリメチロールプロパン)、および6官能性アルコール(例えば二量化ペンタエリスリトール)などがあるが、これらに限定されない。本発明の好ましいポリオールはポリエチレングリコールである。
【0034】
アルコール含有組成物が少なくとも1種のポリエチレングリコールおよび/またはポリオールである場合、および/またはアルコール含有組成物が少なくとも1種のポリエチレングリコールおよび/またはポリオールを含有する場合、少なくとも1種のポリエチレングリコール(PEG)および/またはポリオールは、5000未満の重量平均もしくは数平均分子量を有するのが好ましく、2000未満の重量平均もしくは数平均分子量を有するのがさらに好ましく、1000未満の重量平均もしくは数平均分子量を有するのが最も好ましい。ポリエチレングリコールおよび/またはポリオールの重量平均もしくは数平均分子量は、5000未満、4000未満、3000未満、2000未満、1000未満、900未満、800未満、700未満、600未満、500未満、400未満、300未満、200未満、または100未満である。最も好ましいポリオールは、約400の数平均もしくは重量平均分子量を有するポリエチレングリコール(例えばPEG−400)である。
【0035】
本発明のロジン酸エステルは、任意の酸価を有してよい。こうした好ましい酸価は、10より大きい酸価、および200以下の酸価を含む。本発明のロジン酸エステルの酸価は、150以下であるのが好ましく、100以下であるのがさらに好ましく、50以下であるのが最も好ましい。本発明のロジン酸エステルの酸価は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、120、125、130、140、150、160、170、180、190、または200(該数値間の全範囲と部分的範囲を含む)であってよい。酸価は1〜50であるのが好ましいが、上記の任意の酸価(該数値間の全範囲と部分的範囲を含む)であってよい。
【0036】
さらに、本発明のロジン酸エステルは水溶性である。ロジン酸エステルは、水に対して100%溶解するのが好ましい。ロジン酸エステルは、[オイル含有組成物(好ましくは金属加工組成物)に使用する場合]本明細書に記載の物理特性と性能特性の全てを有する限りは、水への溶解性は50〜100%でよい。
【0037】
本発明のロジン酸エステルはさらに、任意の鹸化価を有する。鹸化価は、25〜200であることが好ましく、50〜150であることがさらに好ましく、75〜125であることが最も好ましい。
【0038】
本発明のロジン酸エステルはさらに、任意のヒドロキシル価を有する。ヒドロキシル価は25〜150であることが好ましく、40〜120であることがさらに好ましく、50〜100であることが最も好ましい。
【0039】
本発明のロジン酸エステルはさらに、任意の流動点を有する。流動点は25℃以下であることが好ましく、10℃以下であることがさらに好ましく、0℃以下であることが最も好ましい。当然のことながら、流動点と他の低温流動改善特性は、当業界に公知の、及び前述の流動点降下剤を使用することによって降下させることができる。
【0040】
本発明のロジン酸エステルはさらに、ベックマン・コールター・バージョン3.29からのウインドウズベースの“LS”ソフトウェアで作動するベックマン・コールターLS230粒径アナライザーによる測定では0.04〜0.2ミクロンの平均粒径を有し、0.07〜0.17ミクロンの平均粒径を有するのが好ましく、0.08〜0.16ミクロンの平均粒径を有するのがさらに好ましく、0.09〜0.15ミクロンの平均粒径を有するのが最も好ましい。平均粒径は、0.04ミクロン、0.05ミクロン、0.06ミクロン、0.07ミクロン、0.08ミクロン、0.09ミクロン、0.11ミクロン、0.12ミクロン、0.13ミクロン、0.14ミクロン、0.15ミクロン、0.16ミクロン、0.17ミクロン、0.18ミクロン、0.19ミクロン、または0.2ミクロン(該数値間の全範囲と部分的範囲を含む)であってよい。
【0041】
本発明のロジン酸エステルはさらに、100℃、40℃、および25℃の一定温度の浴中に浸漬したCannon Fenske viscosity tubesを使用したときの測定(ASTM D445基準による)では、それぞれ250〜650センチストークス、4500〜6000センチストークス、および10000〜15000センチストークス(それぞれ、該数値間の全範囲と部分的範囲を含む)の運動粘度(センチストークス)を有する。さらに好ましくは、100℃、40℃、および25℃の一定温度の浴において、本発明のロジン酸エステルの粘度はそれぞれ、400〜500センチストークス、5000〜5500センチストークス、および12000〜13000センチストークス(それぞれ、該数値間の全範囲と部分的範囲を含む)である。
【0042】
前述したように、本発明のロジン酸エステルおよび/またはロジン酸エステル組成物は2つの反応プロセスによって製造することができるが、これら2つの反応は、一工程で同時に行うこともできるし、および/または複数の工程で連続的に行うこともできる。第1の反応においては、少なくとも1種のロジン酸含有組成物を少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸もしくはそれらのエステルと反応させて、ロジン酸とα,β−不飽和カルボン酸もしくはそれらのエステルとの間の付加物を含有する中間体組成物を形成させる。引き続き、付加物を含有する中間体組成物をアルコール含有化合物と反応させて、本発明の組成物を生成させる。こうして得られるエステル含有組成物が本発明の少なくとも1種のロジン酸エステルであり、および/または、こうして得られるエステル含有組成物は本発明の少なくとも1種のロジン酸エステルを含有する。
【0043】
第1の反応においては、ロジン酸含有化合物と、α,β−不飽和カルボン酸もしくはそれらのエステルとの間の付加物が形成される。上記の中間体組成物はこの付加物を含有する。この反応は、ロジン酸含有組成物と、α,β−不飽和カルボン酸もしくはそれらのエステルとの間のディールス・アルダー反応を果たすように行われる。該反応は高温で行うのが好ましい。180℃〜205℃の反応温度(例えば約200℃)であることがさらに好ましい。反応時間は、任意の反応時間であってよい。しかしながら、好ましい反応時間は30分〜90分であり、さらに好ましい反応時間は45分〜75分である(該数値間の全範囲と部分的範囲を含む)。ロジン酸含有組成物は、α,β−不飽和カルボン酸もしくはそれらのエステルを添加する前に溶融させることが好ましい。こうして得られる、ロジン酸含有化合物と、α,β−不飽和カルボン酸もしくはそれらのエステルとの間の付加物を含有する中間体組成物を冷却する。
【0044】
本発明の種々の態様では、中間体組成物は、α,β−不飽和カルボン酸もしくはそれらのエステルを、約1〜25重量%、約2〜25重量%、約3〜25重量%、約1〜20重量%、約2〜20重量%、約3〜20重量%、約1〜15重量%、約2〜15重量%、または約3〜15重量%含む。最も好ましい実施態様では、α,β−不飽和カルボン酸もしくはそれらのエステルは、フマル化ロジン酸を生成させるためのフマル酸もしくはそのエステルである。上記の中間体組成物は、少なくとも1種のフマル化ロジン酸を含有する。
【0045】
第2の反応に関しては、付加物もしくは付加物を含有する中間体組成物とアルコール含有組成物とを、任意の量で、また本発明のロジン酸エステルを製造するのに必要な任意の条件の下で接触させることができる。付加物もしくは付加物を含有する中間体組成物とアルコール含有組成物とを、エステル化反応および/またはエステル交換反応を受けるように接触させることができる。
【0046】
本発明のロジン酸エステルは、約25重量%以上の、好ましくは約40重量%以上の、さらに好ましくは約50重量%以上の、そして最も好ましくは約52重量%以上のアルコール含有化合物と、約75重量%以下の、好ましくは約60重量%以下の、さらに好ましくは約50重量%以下の、そして最も好ましくは約48重量%以下の、ロジン酸化合物とα,β−不飽和カルボン酸もしくはそれらのエステルとの間の付加物とを接触させることによって製造することができる。さらに詳細には、反応に対して添加されるアルコール含有化合物の量は、ロジン酸化合物と、α,β−不飽和カルボン酸もしくはそれらのエステルとの間の付加物とアルコール含有化合物との合計量を基準として、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上、約46重量%以上、約47重量%以上、約48重量%以上、約49重量%以上、約50重量%以上、約51重量%以上、約52重量%以上、約53重量%以上、約54重量%以上、約55重量%以上、約60重量%以上、約65重量%以上、約70重量%以上、約75重量%以上、約80重量%以上、約85重量%以上、約90重量%以上、または約95重量%以上(該数値間の全範囲と部分的範囲を含む)であってよい。さらに、反応に対して添加される、ロジン酸化合物とα,β−不飽和カルボン酸もしくはそれらのエステルとの間の付加物の量は、ロジン酸化合物とα,β−不飽和カルボン酸もしくはそれらのエステルとの間の付加物とアルコール含有化合物との合計量を基準として、約5重量%以下、約6重量%以下、約7重量%以下、約8重量%以下、約9重量%以下、約10重量%以下、約15重量%以下、約20重量%以下、約25重量%以下、約30重量%以下、約35重量%以下、約40重量%以下、約45重量%以下、約46重量%以下、約47重量%以下、約48重量%以下、約49重量%以下、約50重量%以下、約51重量%以下、約52重量%以下、約53重量%以下、約54重量%以下、約55重量%以下、約60重量%以下、約65重量%以下、約70重量%以下、または約75重量%以下(該数値間の全範囲と部分的範囲を含む)であってよい。
【0047】
エステル化反応および/またはエステル交換反応の速度を高めるために、エステル化反応のための触媒を反応混合物中に組み込むことができる。エステル化反応/エステル交換反応触媒は当業界ではよく知られており、硫酸、リン酸、および他の無機酸;金属酸化物やアルコキシド(例えば、酸化スズ、酸化マグネシウム(MgO)、およびチタンイソプロポキシド);および二価金属塩(例えば、スズ塩や亜鉛塩);などがある。触媒は酸化マグネシウム(MgO)であるのが好ましい。触媒が存在する場合、触媒は少ない量で使用しなければならない(例えば、反応混合物全量の約5重量%未満、好ましくは約2重量%未満、さらに好ましくは約1重量%未満)。触媒は、反応混合物全量の0.05〜0.8重量%の量にて存在してよく、0.07〜0.6重量%の量にて存在するのが好ましく、0.09〜0.4重量%の量にて存在するのが最も好ましい。触媒の量が過剰であると、ロジン酸エステルを製造するコストが増加するだけでなく、ロジン酸エステルが存在する環境にとって有害な残留物を生じる場合が多い。
【0048】
ロジン酸化合物と、α,β−不飽和カルボン酸もしくはそれらのエステルとの間の付加物、アルコール含有化合物、および触媒は、同時に加えることもできるし、あるいは連続的に加えることもできる。反応は、高温で行うことが好ましい。反応温度は230〜290℃であり、好ましくは240〜280℃であり、さらに好ましくは250〜270℃であり、最も好ましくは255〜265℃である(該数値間の全範囲と部分的範囲を含む)。
【0049】
ロジン酸含有組成物は、アリゾナケミカル社から市販の任意のロジン酸含有組成物(例えばシルバロスNCY)であることが好ましい。ロジン酸化合物と、α,β−不飽和カルボン酸もしくはそれらのエステルとの間の付加物は、好ましくはディールス・アルダー反応条件下でシルバロスNCYとフマル酸とを接触させて、本明細書にてフマル化ロジン酸と呼ぶ付加物を含有する中間体組成物を生成させることによって製造される。フマル化ロジン酸の例としては、アリゾナケミカル社から市販の物質(例えばシルバプリント8250)がある。他の好ましい実施態様では、フマル化ロジン酸エステルを、アルコール含有化合物[最も好ましくはポリエチレングリコール(例えばPEG−400)]と、本発明の具体的な態様に相当するロジン酸エステルが得られるように、好ましくはエステル化反応条件および/またはエステル交換反応条件下で接触させる。
【0050】
他の実施態様では、ロジン酸エステルは、完全に、および/または部分的にさらに水素化することができる。任意的に水素化することができるロジン酸エステルはさらに、本明細書に記載のロジン酸エステルとして(好ましくは、金属加工用組成物等の潤滑油含有組成物として)使用することができる。
【0051】
本発明のロジン酸エステルおよび/またはロジン酸エステルを含有する組成物は、種々の能力を有することから非常に有用である。ロジン酸エステルは、オイル含有組成物に使用するための潤滑油として有用であるのが好ましい。オイル含有組成物は金属加工用組成物であるのがさらに好ましい。金属加工用組成物は、合成潤滑油、半合成潤滑油、および/または水溶性潤滑油であってよく、金属を切削、研削、および打ち抜くのに使用される液体であってよい。
【0052】
本発明のロジン酸エステルは、金属加工液(金属加工液の主要な機能は、加工される金属と工作機械との間に潤滑性をもたらすことにある)に使用される潤滑液のロードキャリング特性を向上させるために使用するのが好ましい。金属加工液として使用される潤滑基液としては、鉱油、エステル、およびポリアルキレングリコールなどがあるが、これらに限定されない。代表的な金属加工用配合物は下記のような構成であってよい:鉱油68%;スルホネート14%;蒸留トール油4%;トリエタノールアミン2.5%;エトキシル化ヒマシ油6.5%;乳化剤2.5%;および潤滑油3%。
【0053】
合成、半合成、および/または水溶性の金属加工用オイル組成物は、少なくとも1種のオイル、ヒマシ油、鉱油、pH緩衝液、極圧潤滑剤、極圧添加剤、結合潤滑剤、境界潤滑剤、腐食防止剤(錆止め剤)、発色剤、殺真菌剤/殺生物剤、乳化剤、一次乳化剤、共乳化剤、または希釈剤を含有してよい。これらの物質としては、硫酸化ヒマシ油−境界潤滑剤、Actracor4000−錆止め剤、トリエタノールアミン−pH緩衝液、Actrafos110A−極圧添加剤、スルホネート−錆止め剤と乳化剤、蒸留トール油−共乳化剤、エトックス(Ethox)TO−8−乳化剤、エトックスGMO−共乳化剤、およびエトックスCO−36−境界潤滑剤などがあるが、これらに限定されない。希釈剤は水であるのが好ましい。
【0054】
潤滑液は、本発明のロジン酸エステルのほかに、1種以上の添加剤を含有してよい。潤滑液中には添加剤が組み込まれることが多く、従ってこのような添加剤(耐摩耗添加剤、極圧添加剤、酸化防止剤、および消泡剤等があるが、これらに限定されない)は当業者に周知である。これらの添加剤は、本発明の潤滑液配合物中に一般的な量(すなわち、本発明のロジン酸エステルを含まない組成物において使用される量)にて組み込むことができ、このときこれらの添加剤は通常の特性をもたらす。
【0055】
代表的な添加剤としては、イミダゾリン(例えば2−メチルイミダゾリン)やポリアルキルアミン(例えば米国特許第4,713,188号に開示の物質);400〜2500(好ましくは約950)の数平均分子量を有するポリイソブチレン[ポリイソブチレンは、潤滑剤の潤滑性とアンチ・スカッフ活性(anti−scuff activity)を向上させるように作用する];400〜2500(好ましくは約1300)の数平均分子量を有する官能化ポリイソブチレン[オレフィンに対する官能基は、一般にはアミンをベースとしている。こうした官能化ポリイソブチレンは、最大で15重量%(好ましくは最大で10重量%、さらに好ましくは最大で約5重量%)の量で存在する。従って官能化ポリイソブチレンは、オレフィンおよびオレフィンポリマーと、アミン(モノアミンまたはポリアミン)との反応生成物である。官能化ポリイソブチレンは、特に2サイクルエンジンにおいて優れた洗浄性能をもたらす];補助極圧添加剤、腐食防止剤、および酸化防止剤[例えば、塩素化脂肪族炭化水素(例えば塩素化ワックス)や塩素化芳香族化合物;有機スルフィドや有機ポリスルフィド;硫化アルキルフェノール;ホスホ硫化炭化水素;リンエステル;主として、ジヒドロカーボンホスファイト、トリヒドロカーボンホスファイト、およびチオカルバミン酸金属塩を含む。これらの補助極圧添加剤や腐食酸化防止剤も、耐摩耗添加剤として作用する。亜鉛ジアルキルホスホロジチオエートは、よく知られている例である。];潤滑液をベースとする組成物の低温特性を改良するのに役立つ流動点降下剤[有用な流動点降下剤の例としては、ポリアミド、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ハロパラフィンワックスと芳香族化合物との縮合生成物、ビニルカルボキシレートポリマー、ジアルキルフマレートのターポリマー、脂肪酸のビニルエステル、およびアルキルビニルエーテルなどがある。本発明の目的に対して有用な流動点降下剤、それらの製造方法、およびそれらの使用が、米国特許第2,387,501号、第2,015,748号、第2,655,479号、第1,815,022号、第2,191,498号、第2,666,746号、第2,721,877号、第2,721,878号、および第3,250,715号に記載されている。];ならびに、安定な泡の形成を少なくするか又は妨げるように機能する消泡剤[代表的な消泡剤としては、シリコーンや有機ポリマーがある。]などがある。
【0056】
ロジン酸エステルは、金属加工用組成物中の潤滑剤であることが好ましいが、本発明のロジン酸エステルは、他の任意のオイルと組み合わせて使用することができ、このときオイルのロードキャリング特性を向上させることが望ましい。このようなオイルとしては、オートマチック・トランスミッション液(ATF)、シリンダ潤滑油、クランクケース潤滑油、機能性液(例えば、代表的な動力伝達液が作動液や油圧オイルである場合の動力伝達液)、トラクターオイル、ギヤオイル、およびエンジンオイルなどがあるが、これらに限定されない。これらのオイルにおいては、本発明のロジン酸エステルが、組成物のロードキャリング特性を向上させるのに有効な量で組成物中に存在してよい。
【0057】
水溶性オイル金属加工用配合物の例は下記のとおりである:
水溶性オイル
鉱油、67%;スルホン酸ナトリウム、67%;潤滑剤、13%;共乳化剤(DTO)、4%;共乳化剤、2%。
【0058】
合成オイル金属加工用配合物の例は下記のとおりである:
合成液
水、70%;錆止め剤、10%;pH緩衝剤、5%;極圧潤滑剤、4%;境界潤滑剤1、5%;境界潤滑剤2、4%;殺真菌剤、2%。
【0059】
言うまでもなく、前記した他の添加剤のいずれも、上記配合物例のいずれかにそれらの有効量で加えることができる。上記配合物の両方において、潤滑剤は、本発明のロジン酸エステル、および/または、本発明のロジン酸エステルを含有する組成物であることが好ましい。
【0060】
本発明のロジン酸エステルは、オイル含有組成物(例えば、金属加工用組成物/配合物)に任意の重量%で加えることもできるし、あるいはオイル含有組成物の前記従来成分(特に、金属加工液の成分)のいずれかに置き換わってもよい。ロジン酸エステルの添加量は、本発明のロジン酸エステルを含有しない場合の同一組成物のロードキャリング特性と比較して、最終組成物のロードキャリング特性を増加させるような量である。ロジン酸エステルの添加量は任意の量であってよい。ロジン酸エステルは、組成物の総重量を基準として50重量%以下の量にて存在するのが一般的であり、30重量%以下の量にて存在するのが好ましい。ロジン酸エステルの量はさらに、組成物の総重量を基準として1〜30重量%の範囲であってよく、3〜15重量%であるのが好ましい。オイル含有組成物(好ましくは金属加工用組成物)中に存在してよい本発明のロジン酸エステルの量は、組成物の総重量を基準として1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、22重量%、24重量%、26重量%、28重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、および50重量%(該数値間の全範囲と部分的範囲を含む)であってよい。
【0061】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0062】
実施例1−本発明のロジン酸エステル#1(U398)の製造
フマル化ロジン酸エステル(すなわちシルバプリント8250)とPEG−400とを、反応混合物の総重量を基準として0.1〜0.3重量%の量の酸化マグネシウム触媒の存在下で260℃で接触させた。反応からの水を捕集するためにトラップを取り付けた。酸価によって反応を監視し、所望の酸価(すなわち約10)に達したときに反応を停止させた(すなわち冷却した)。
【0063】
実施例2−オイル含有組成物の製造
下記のオイル含有組成物を製造した(好ましくは金属加工用組成物として)。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
実施例3−完全配合および/または部分配合オイル含有組成物中に使用される場合の、ロジン酸エステルのロードキャリング特性の試験
上記潤滑剤(特に、本発明のロジン酸エステル#1(U398))と市販の製品を、上記オイル含有組成物(合成金属加工用オイル配合物、部分配合合成金属加工用オイル配合物、水溶性オイル金属加工用配合物、部分配合水溶性オイル金属加工用配合物、および半合成金属加工液配合物)に加えたときのロードキャリング特性に関して試験した。
【0068】
ロードキャリング特性は、各配合物に関してそれぞれのトルクで破壊点荷重(ポンド・フィート)を測定するためのASTM D3233−93(Reapproved 2003)基準(添付図面を参照)を使用して、異なったトルクで測定した。得られた結果を図1〜5に示す。
【0069】
実施例4−本発明のロジン酸エステルの粒径の測定
本発明の、上記実施例1からのロジン酸エステル#1(U398)の粒径を、ベックマン・コールター・バージョン3.29からのウインドウズベースの“LS”ソフトウェアで作動するベックマン・コールターLS230粒径アナライザーによって測定した。得られた結果を図6に示す。
【0070】
本明細書の全体にわたって使用されているように、範囲は、範囲内のそれぞれの値と全ての値(該数値内の全ての部分的範囲を含む)を表わすための便法として使用されている。
【0071】
上記の開示内容を考慮して、本発明に対する多くの改良形や変形が可能である。従って理解しておかなければならないことは、本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲内において、本明細書に具体的に記載されているのとは別の仕方で本発明を実施することができる、という点である。
【0072】
本明細書において引用した全ての文献を、本発明および本発明の全ての実施態様に関連した該当箇所について参照により本明細書に援用する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】部分配合された水溶性オイル金属加工液のロードキャリング特性を示す。
【図2】完全配合された水溶性オイル金属加工液のロードキャリング特性を示す。
【図3】部分配合された合成オイル金属加工液のロードキャリング特性を示す。
【図4】完全配合された合成オイル金属加工液のロードキャリング特性を示す。
【図5】配合された半合成金属加工液のロードキャリング特性を示す。
【図6】実施例1で製造されたロジン酸エステルの粒径の測定結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のロジン含有組成物を、少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸もしくはそれらのエステルとを接触させて得られるそれらの付加物と、少なくとも1種のアルコール含有化合物との反応生成物であるロジン酸エステル。
【請求項2】
前記エステルが50以下の酸価を有する、請求項1に記載のロジン酸エステル。
【請求項3】
付加物とアルコール含有組成物との合計重量を基準として、48重量%以下の付加物を生成させ、付加物とアルコール含有組成物との合計重量を基準として少なくとも52重量%のアルコール含有組成物と接触させる、請求項1に記載のロジン酸エステル。
【請求項4】
アルコール含有化合物が多価アルコールである、請求項3に記載のロジン酸エステル。
【請求項5】
アルコール含有化合物がポリエチレングリコールである、請求項3に記載のロジン酸エステル。
【請求項6】
アルコール含有化合物がポリエチレングリコールであって、1000以下の重量平均分子量を有する、請求項3に記載のロジン酸エステル。
【請求項7】
アルコール含有化合物がポリエチレングリコールであって、1000以下の数平均分子量を有する、請求項3に記載のロジン酸エステル。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のロジン酸エステル及びオイルを含むオイル含有組成物。
【請求項9】
前記組成物が金属加工液である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
水をさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
α,β−不飽和カルボン酸を含む48重量%以下のロジン化合物付加物を、少なくとも52重量%の少なくとも1種のアルコール含有化合物と接触させて、50以下の酸価を有するロジン酸エステルを生成させることを含む方法によって製造されるロジン酸エステル。
【請求項12】
請求項13に記載のロジン酸エステル及び水を含む組成物。
【請求項13】
前記組成物が金属加工液である、請求項8に記載の組成物。
【請求項14】
オイルをさらに含む、請求項9に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−542824(P2009−542824A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510165(P2009−510165)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/068611
【国際公開番号】WO2007/134138
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ウィンドウズ
【出願人】(505333816)アリゾナ・ケミカル・カンパニー・エルエルシー (13)
【Fターム(参考)】