説明

水溶性高分子物質含有組成物の製造方法

【課題】分散媒を使用しなくても、水溶性高分子をダマ化することなく溶解させることのできる、水溶性高分子含有組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】平均粒子径が1〜100μmである水溶性高分子(A)粉体を、該高分子(A)とは異なる種であって、10%水溶液の粘度が1〜200mPa・sである水溶性高分子(B)の水溶液に添加し、水溶性高分子(A)の濃度が3〜7[%]であってかつ水溶性高分子(B)濃度が10〜30[%]である予備分散液を調製する工程;及び
該予備分散液と水とを混合し、水溶性高分子(A)を溶解する工程;
を含むことを特徴とする水溶性高分子物質含有組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性高分子物質含有組成物の製造方法に関する。詳しくは、食器用洗剤、特に自動食洗機用液体洗剤や、衣料用洗剤、化粧料等を製造するのに好適な水溶性高分子物質含有組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性高分子は、食器用洗剤や衣料用洗剤、化粧料等広い範囲で増粘剤或いはキレート剤等として使用されている。しかしながら、水溶性高分子は、その性質上、水と接触すると粒子表面が急激に膨潤して、高粘度化し、また、粘着性が出るために、凝集を起こしたり、未膨潤のままダマ化してしまったり、製品中に残存して、品質を損なうことが多い。
これまでに、水溶性高分子を予備分散する分散剤に、有機溶剤(特許文献1)や水溶性溶媒(特許文献2)を使用する方法が報告されている。
【0003】
【特許文献1】特開昭63−215773号公報
【特許文献2】特開2002−241506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記溶剤や溶媒が存在しなくても、高分子未膨潤ダマの残存が少ない水溶性高分子含有組成物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが鋭意検討した結果、分散媒の無い系で、少量の他の水溶性高分子水溶液を活用することにより、対象の水溶性高分子の分散性を確保できることを見出した。
すなわち、本発明は、平均粒子径が1〜100μmである水溶性高分子(A)粉体を、該高分子(A)とは異なる種であって、10質量%水溶液の粘度が1〜200mPa・sである水溶性高分子(B)の水溶液に添加し、水溶性高分子(A)の濃度が3〜7質量%であってかつ水溶性高分子(B)濃度が10〜30質量%である予備分散液を調製する工程(工程I);及び
該予備分散液と水とを混合し、水溶性高分子(A)を溶解する工程(工程II);
を含むことを特徴とする水溶性高分子物質含有組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、上記溶剤や溶媒が存在しなくても、高分子未膨潤ダマの残存が少ない水溶性高分子含有組成物を短時間で調製できる。本発明の方法により得られる水溶性高分子含有組成物は保存安定性に優れ、性能も保持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
水溶性高分子(A)
本発明において、「水溶性高分子」とは、任意の割合で自由に水と混合する高分子をいう。
水溶性高分子(A)としては、増粘剤として作用するものを用いることができる。本発明において用いることのできる水溶性高分子(A)の平均粒子径は1〜100μm、好ましくは5〜50μmである。平均粒子径がこのような範囲になると凝集しにくくダマになりにくいので好ましい。なお、平均粒子径は、微分干渉顕微鏡で測定することができる。
水溶性高分子(A)の重量平均分子量は、増粘剤としての機能及びハンドリング性の観点から、50万〜500万であるのが好ましく、70万〜300万であるのがより好ましい。
具体的には、カルボキシビニルポリマー(CVP)、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成高分子や、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体等があげられる。これらは単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。このうち、カルボキシビニルポリマーが好ましい。平均粒子径が10μmであり、重量平均分子量が100万であるCVPが最も好ましい。
【0008】
水溶性高分子(B)
水溶性高分子(B)としては、増粘作用の小さいものを用いることができる。その重量平均分子量は、予備分散液のハンドリング性の観点から、5000〜200000であるのが好ましく、10000〜100000であるのがより好ましい。
具体的には、ポリアクリル酸マレイン酸共重合体及びその塩等の(メタ)アクリル酸系高分子、ポリビニルアルコール及びその塩、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルビニル無水マレイン酸及びその塩、エチル無水マレイン酸及びその塩等があげられる。塩を形成する対イオンとしては、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属のイオンがあげられる。これらは単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。このうち、キレート力が強く、生分解性を有することから、(メタ)アクリル酸系高分子、特に(メタ)アクリル酸マレイン酸共重合体及びその塩が好ましい。10%水溶液の粘度が10mPa・sであって、重量平均分子量が50000であるポリアクリル酸マレイン酸共重合体のナトリウム塩が最も好ましい。
本発明において水溶性高分子(B)は、10質量%水溶液の粘度が1〜200mPa・sとなるものである。10質量%としたのは、少量の高分子(B)を用いて高分子(A)の分散性、及び分散液のハンドリング性の善良を判断ができるからである。10質量%水溶液の粘度を上記範囲にするには、上記高分子(B)を用いることにより行うことができる。10質量%水溶液の粘度がこの範囲にあることにより、高分子(A)を分散させても低粘度で、流動性を確保できる。なお、粘度は、25℃においてBL型回転式粘度計を用いて測定できる。
【0009】
工程I
本発明において、粉体状態の水溶性高分子(A)を、水溶性高分子(B)の10質量%水溶液に、少量ずつ分けて添加し、予備分散液を調製するが、このとき、予備分散液中の濃度が所定範囲内になるようにする。水溶性高分子(A)については、予備分散液の容量及び粘度を小さくでき、ハンドリング性が良好であることから、3〜7質量%、好ましくは4〜6質量%とする。水溶性高分子(B)については、水が多いために水溶性高分子(A)が膨潤しやすくなって予備分散液のハンドリング性が低下するのを防ぐ観点から、10〜30質量%、好ましくは13〜25質量%とする。予備分散液の粘度(25℃、BL型回転粘度計にて測定)は、10000mPa・s以下であるのが好ましく、5000mPa・sであるのがより好ましい。予備分散液の粘度がこの範囲にあると、分散液が流動性を有し、ハンドリング性が良く、かつ工程IIにおいて短時間で高分子未膨潤ダマが消失できるので好ましい。
水溶性高分子(A)を、水溶性高分子(B)の10質量%水溶液に分散させるには、スタティックミキサー、アジホモミキサー、ディスパーミキサー、パドルミキサー等、公知の混合装置を使用することができる。混合条件は特に限定されるものではないが、例えば、回転数1000〜2000rpm、時間5〜15分の条件で行うことができる。調製温度(予備分散液の温度)は、膨潤及び高粘度化を抑制する観点から、30〜50℃、好ましくは35〜45℃である。攪拌翼径と容器径は特に限定されるものではないが、例えば攪拌翼径50mm、容器径180mmで行うことができる。
この様にして水溶性高分子(A)の予備分散液を調製することにより、該高分子(A)を出来るだけ溶解膨潤させずに分散させることにより予備分散液の粘度が上昇するのを抑制することができる。如何なる理論にも拘束されるものではないが、水溶性高分子(A)と水溶性高分子(B)との間で水を奪い合うために予備分散液中で水溶性高分子(A)が過度に膨潤するのを抑制できるものと考えられる。
【0010】
工程II
次いで、予備分散液と水とを混合し、水溶性高分子(A)を溶解する。予備分散液中で水溶性高分子(A)を溶解も膨潤もさせない状態のまま水と混合することにより、水溶性高分子(A)を短時間で溶解させることが可能となる。
予備分散液と水とを混合するときの攪拌翼剪断力が、20×103〜40×103[1/sec]であるのが好ましく、より好ましくは25×103〜37×103[1/sec]、特に好ましくは32×103[1/sec]である。20×103[1/sec]より小さいと、水溶性高分子(A)の膨潤溶解に時間がかかることがあり、40×103[1/sec]より大きいと、水溶性高分子(A)及び(B)の高分子鎖が切断され、所定の製品粘度が発現しないことがある。
試料に与えられる剪断力と羽根先端の剪断速度の関係は、
剪断力 ∝ 移動速度/クリアランス
移動速度:羽根先端速度Ut[m/s]
クリアランス:回転する攪拌羽根とその周囲にある固定壁との距離[m]
であるから、剪断力は、羽根先端速度をクリアランスで割った値[1/s]とする。
混合条件は特に限定されるものではないが、例えば、回転数6000〜7000rpm、圧力0.07〜0.08MPaの減圧下、時間5〜7分の条件で行うことができる。
添加する水量は、高分子未膨潤ダマの溶解時間や製品性能確保の観点から、予備分散液量に対して、好ましくは1.5〜4.5倍量、より好ましくは2〜3.5倍量、特に好ましくは2.5倍量である。
【0011】
本発明の製造方法により水溶性高分子含有組成物を製造するのに、該組成物に影響を与えない程度に上記水溶性高分子(A)及び(B)以外の成分を添加することもできる。通常、食器用洗剤、自動食洗機用洗剤、シャンプー、リンス、衣料用洗剤、化粧料などの液体洗剤に含まれる成分、例えば、界面活性剤、アルコール類、無機・有機塩類、保湿剤、防腐剤、酸化防止剤、UV吸収剤、キレート剤、香料、色素などが挙げられる。なお、これらの成分は、予備分散液を調製するときに添加することもできるし、予備分散液に水を添加するときや水添加後に添加することもできる。
【実施例】
【0012】
表1、表2及び以下に示す原料並びに装置を用い、水溶性高分子物質含有組成物を製造した。
[使用原料]
<高分子A>
・カルボキシビニルポリマー(i):住友精化(株)製 商品名「アクペックHV-505ED」
・カルボキシビニルポリマー(ii):Noveon製 商品名「カーボポール940」
<高分子B>
・マレイン酸アクリル酸共重合体Na塩(40%水溶液):日本触媒(株)製 商品名「アクアリックTL−400」
・ポリビニルアルコールNa塩:(株)クラレ製 商品名「ポバール102」
<その他成分>
・NREP:ライオンケミカル(株)製 商品名「NNAEP-3030」
・エソカード:ライオンアクゾ(株)製 商品名「エソカードC/25」
・水酸化ナトリウム:純正化学製「水酸化ナトリウム(95%)造粒品」を精製水で希釈して48%品を調製
【0013】
[調製装置]
予備分散液調製:容器 ・・・5Lビーカー(底径180mmφ)
攪拌翼・・・ディスパー翼(50mmφ)
高分子水溶液(水溶性高分子物質含有組成物)調製:
容器 ・・・みずほ工業(株)製 20L真空乳化釜
(ホモミキサー羽根計48mmφ、ホモクリアランス
0.5mm、パドル翼計310mmφ)
【0014】
[実施例1]
(工程I)
予備分散液調製のため、はじめに5Lビーカーに精製水1734gとマレイン酸アクリル酸共重合体Na塩(MAC−Na)の40%水溶液1734gを投入してからスリーワンモーターと攪拌翼を用いて1500rpmで攪拌混合を行いながら系内温度を40℃まで昇温させた。昇温後、これにCVP(i)粉体204gを10分かけて加え、そのままさらに10分攪拌を継続して予備分散液を調製した。予備分散液の粘度は25℃で5000mPa・sであり流動性は良好であった。
(工程II)
次に、本混合を行うため、20L真空乳化釜に精製水9443gとMAC−Naの40%水溶液3366gを添加しパドル翼55rpmで5分間混合した後に予備分散液を全量添加し、ホモミキサー6400rpm(剪断力32×103[1/s])で6分間攪拌混合を行った。さらに高分子水溶液にノニオン界面活性剤NREP176g、カチオン界面活性剤エソカード134g、48%水酸化ナトリウム水溶液209gを添加、パドル55rpmで10分間攪拌し、水溶性高分子含有組成物(自動食洗機用液体洗剤)17000gを製造した。得られた高分子水溶液を濾過したところ、未膨潤ダマは4粒しか確認されなかった。
【0015】
[実施例2]
(工程I)
予備分散液調製のため、はじめに5Lビーカーに精製水2374gとマレイン酸アクリル酸共重合体Na塩(MAC−Na)の40%水溶液2318gを投入してからスリーワンモーターと攪拌翼を用いて1500rpmで攪拌混合を行いながら系内温度を40℃まで昇温させた。昇温後、これにCVP(i)粉体204gを10分かけて加え、そのままさらに10分攪拌を継続して予備分散液を調製した。予備分散液の粘度は25℃で2300mPa・sであり流動性は良好であった。
(工程II)
次に、本混合を行うため、20L真空乳化釜に精製水8803gとMAC−Naの40%水溶液2782gを添加しパドル翼55rpmで5分間混合した後に予備分散液を全量添加し、ホモミキサー6400rpm(剪断力32×103[1/s])で6分間攪拌混合を行った。さらに高分子水溶液にノニオン界面活性剤NREP176g、カチオン界面活性剤エソカード134g、48%水酸化ナトリウム水溶液209gを添加、パドル55rpmで10分間攪拌し、水溶性高分子含有組成物(自動食洗機用液体洗剤)17000gを製造した。得られた高分子水溶液を濾過したところ、未膨潤ダマは4粒しか確認されなかった。
【0016】
[実施例3]
(工程I)
予備分散液調製のため、はじめに5Lビーカーに精製水2448gとマレイン酸アクリル酸共重合体Na塩(MAC−Na)の40%水溶液1632gを投入してからスリーワンモーターと攪拌翼を用いて1500rpmで攪拌混合を行いながら系内温度を40℃まで昇温させた。昇温後、これにCVP(i)粉体204gを10分かけて加え、そのままさらに10分攪拌を継続して予備分散液を調製した。予備分散液の粘度は25℃で3500mPa・sであり流動性は良好であった。
(工程II)
次に、本混合を行うため、20L真空乳化釜に精製水8729gとMAC−Naの40%水溶液3468gを添加しパドル翼55rpmで5分間混合した後に予備分散液を全量添加し、ホモミキサー6400rpm(剪断力32×103[1/s])で6分間攪拌混合を行った。さらに高分子水溶液にノニオン界面活性剤NREP176g、カチオン界面活性剤エソカード134g、48%水酸化ナトリウム水溶液209gを添加、パドル55rpmで10分間攪拌し、水溶性高分子含有組成物(自動食洗機用液体洗剤)17000gを製造した。得られた高分子水溶液を濾過したところ、未膨潤ダマは確認されなかった。
【0017】
[実施例4]
(工程I)
予備分散液調製のため、はじめに5Lビーカーに精製水1632gとマレイン酸アクリル酸共重合体Na塩(MAC−Na)の40%水溶液2448gを投入してからスリーワンモーターと攪拌翼を用いて1500rpmで攪拌混合を行いながら系内温度を40℃まで昇温させた。昇温後、これにCVP(i)粉体204gを10分かけて加え、そのままさらに10分攪拌を継続して予備分散液を調製した。予備分散液の粘度は25℃で3000mPa・sであり流動性は良好であった。
(工程II)
次に、本混合を行うため、20L真空乳化釜に精製水9545gとMAC−Naの40%水溶液2652gを添加しパドル翼55rpmで5分間混合した後に予備分散液を全量添加し、ホモミキサー6400rpm(剪断力32×103[1/s])で6分間攪拌混合を行った。さらに高分子水溶液にノニオン界面活性剤NREP176g、カチオン界面活性剤エソカード134g、48%水酸化ナトリウム水溶液209gを添加、パドル55rpmで10分間攪拌し、水溶性高分子含有組成物(自動食洗機用液体洗剤)17000gを製造した。得られた高分子水溶液を濾過したところ、未膨潤ダマは7粒しか確認されなかった。
【0018】
[実施例5]
(工程I)
予備分散液調製のため、はじめに5Lビーカーに精製水1224gとマレイン酸アクリル酸共重合体Na塩(MAC−Na)の40%水溶液1836gを投入してからスリーワンモーターと攪拌翼を用いて1500rpmで攪拌混合を行いながら系内温度を40℃まで昇温させた。昇温後、これにCVP(i)粉体204gを10分かけて加え、そのままさらに10分攪拌を継続して予備分散液を調製した。予備分散液の粘度は25℃で9000mPa・sであり流動性は良好であった。
(工程II)
次に、本混合を行うため、20L真空乳化釜に精製水9953gとMAC−Naの40%水溶液3264gを添加しパドル翼55rpmで5分間混合した後に予備分散液を全量添加し、ホモミキサー6400rpm(剪断力32×103[1/s])で6分間攪拌混合を行った。さらに高分子水溶液にノニオン界面活性剤NREP176g、カチオン界面活性剤エソカード134g、48%水酸化ナトリウム水溶液209gを添加、パドル55rpmで10分間攪拌し、水溶性高分子含有組成物(自動食洗機用液体洗剤)17000gを製造した。得られた高分子水溶液を濾過したところ、未膨潤ダマは18粒確認された。
【0019】
[実施例6]
(工程I)
予備分散液調製のため、はじめに5Lビーカーに精製水2856gとマレイン酸アクリル酸共重合体Na塩(MAC−Na)の40%水溶液1224gを投入してからスリーワンモーターと攪拌翼を用いて1500rpmで攪拌混合を行いながら系内温度を40℃まで昇温させた。昇温後、これにCVP(i)粉体204gを10分かけて加え、そのままさらに10分攪拌を継続して予備分散液を調製した。予備分散液の粘度は25℃で9000mPa・sであり流動性は良好であった。
(工程II)
次に、本混合を行うため、20L真空乳化釜に精製水8321gとMAC−Naの40%水溶液3876gを添加しパドル翼55rpmで5分間混合した後に予備分散液を全量添加し、ホモミキサー6400rpm(剪断力32×103[1/s])で6分間攪拌混合を行った。さらに高分子水溶液にノニオン界面活性剤NREP176g、カチオン界面活性剤エソカード134g、48%水酸化ナトリウム水溶液209gを添加、パドル55rpmで10分間攪拌し、水溶性高分子含有組成物(自動食洗機用液体洗剤)17000gを製造した。得られた高分子水溶液を濾過したところ、未膨潤ダマは12粒確認された。
【0020】
[実施例7]
(工程I)
予備分散液調製のため、はじめに5Lビーカーに精製水1041gとマレイン酸アクリル酸共重合体Na塩(MAC−Na)の40%水溶液2428gを投入してからスリーワンモーターと攪拌翼を用いて1500rpmで攪拌混合を行いながら系内温度を40℃まで昇温させた。昇温後、これにCVP(i)粉体204gを10分かけて加え、そのままさらに10分攪拌を継続して予備分散液を調製した。予備分散液の粘度は25℃で7000mPa・sであり流動性は良好であった。
(工程II)
次に、本混合を行うため、20L真空乳化釜に精製水10136gとMAC−Naの40%水溶液2672gを添加しパドル翼55rpmで5分間混合した後に予備分散液を全量添加し、ホモミキサー6400rpm(剪断力32×103[1/s])で6分間攪拌混合を行った。さらに高分子水溶液にノニオン界面活性剤NREP176g、カチオン界面活性剤エソカード134g、48%水酸化ナトリウム水溶液209gを添加、パドル55rpmで10分間攪拌し、水溶性高分子含有組成物(自動食洗機用液体洗剤)17000gを製造した。得られた高分子水溶液を濾過したところ、未膨潤ダマは13粒確認された。
【0021】
[実施例8]
実施例3と同様に水溶性高分子含有組成物(自動食洗機用液体洗剤)17000gを製造した。その際、工程IIにおけるホモミキサー回転数を4600rpm(剪断力23×103[1/s])で行った。得られた高分子水溶液を濾過したところ、未膨潤ダマが16粒確認された。
【0022】
[実施例9]
ポリビニルアルコールNa塩(PVA−Na)の水溶液(20%)を調製するため、15Lステンレス容器に精製水6120gとPVA−Na4080gを投入してから系内を40℃に昇温し、スリーワンモーターと攪拌翼を用いて1000rpmで攪拌混合を行いながら系内温度を40℃まで昇温し、完全に溶解するまで攪拌を行った。
(工程I)
次に予備分散液調製のため、5Lビーカーに精製水56gと上記PVA−Na水溶液4636gを投入してからスリーワンモーターと攪拌翼を用いて1500rpmで攪拌混合を行いながら系内温度を40℃まで昇温した。昇温後、これにCVP(i)粉体204gを10分かけて加え、そのままさらに10分攪拌を継続して予備分散液を調製した。予備分散液の粘度は25℃で2900mPa・sであり流動性は良好であった。
(工程II)
次に、本混合を行うため、20L真空乳化釜に精製水6021gと上記PVA−Na水溶液5564gを添加しパドル翼55rpmで5分間混合した後に予備分散液を全量添加し、ホモミキサー6400rpm(剪断力32×103[1/s])で6分間攪拌混合を行った。さらに高分子水溶液にノニオン界面活性剤NREP176g、カチオン界面活性剤エソカード134g、48%水酸化ナトリウム水溶液209gを添加、パドル55rpmで10分間攪拌し、水溶性高分子含有組成物(自動食洗機用液体洗剤)17000gを製造した。得られた高分子水溶液を濾過したところ、未膨潤ダマは5粒しか確認されなかった。
【0023】
[実施例10]
実施例9と同様に、ポリビニルアルコールNa塩(PVA−Na)の水溶液(20%)を調製した。
(工程I)
次に予備分散液調製のため、5Lビーカーに精製水816gと上記PVA−Na水溶液を3264g投入してからスリーワンモーターと攪拌翼を用いて1500rpmで攪拌混合を行いながら系内温度を40℃まで昇温した。昇温後、これにCVP(i)粉体204gを10分かけて加え、そのままさらに10分攪拌を継続して予備分散液を調製した。予備分散液の粘度は25℃で3900mPa・sであり流動性は良好であった。
(工程II)
次に、本混合を行うため、20L真空乳化釜に精製水5261gと上記PVA−Na水溶液6936gを添加しパドル翼55rpmで5分間混合した後に予備分散液を全量添加し、ホモミキサー6400rpm(剪断力32×103[1/s])で6分間攪拌混合を行った。さらに高分子水溶液にノニオン界面活性剤NREP176g、カチオン界面活性剤エソカード134g、48%水酸化ナトリウム水溶液209gを添加、パドル55rpmで10分間攪拌し、水溶性高分子含有組成物(自動食洗機用液体洗剤)17000gを製造した。得られた高分子水溶液を濾過したところ、未膨潤ダマは5粒しか確認されなかった。
【0024】
[実施例11]
(工程I)
予備分散液調製のため、はじめに5Lビーカーに精製水1583gとマレイン酸アクリル酸共重合体Na塩(MAC−Na)の40%水溶液1545gを投入してからスリーワンモーターと攪拌翼を用いて1500rpmで攪拌混合を行いながら系内温度を40℃まで昇温させた。昇温後、これにCVP(ii)粉体136gを10分かけて加え、そのままさらに10分攪拌を継続して予備分散液を調製した。予備分散液の粘度は25℃で3500mPa・sであり流動性は良好であった。
(工程II)
次に、本混合を行うため、20L真空乳化釜に精製水9662gとMAC−Naの40%水溶液3555gを添加しパドル翼55rpmで5分間混合した後に予備分散液を全量添加し、ホモミキサー6400rpm(剪断力32×103[1/s])で6分間攪拌混合を行った。さらに高分子水溶液にノニオン界面活性剤NREP176g、カチオン界面活性剤エソカード134g、48%水酸化ナトリウム水溶液209gを添加、パドル55rpmで10分間攪拌し、水溶性高分子含有組成物(自動食洗機用液体洗剤)17000gを製造した。得られた高分子水溶液を濾過したところ、未膨潤ダマは6粒しか確認されなかった。
【0025】
[実施例12]
(工程I)
予備分散液調製のため、はじめに5Lビーカーに精製水1632gとマレイン酸アクリル酸共重合体Na塩(MAC−Na)の40%水溶液1088gを投入してからスリーワンモーターと攪拌翼を用いて1500rpmで攪拌混合を行いながら系内温度を40℃まで昇温させた。昇温後、これにCVP(ii)粉体136gを10分かけて加え、そのままさらに10分攪拌を継続して予備分散液を調製した。予備分散液の粘度は25℃で4100mPa・sであり流動性は良好であった。
(工程II)
次に、本混合を行うため、20L真空乳化釜に精製水9613gとMAC−Naの40%水溶液4012gを添加しパドル翼55rpmで5分間混合した後に予備分散液を全量添加し、ホモミキサー6400rpm(剪断力32×103[1/s])で6分間攪拌混合を行った。さらに高分子水溶液にノニオン界面活性剤NREP176g、カチオン界面活性剤エソカード134g、48%水酸化ナトリウム水溶液209gを添加、パドル55rpmで10分間攪拌し、水溶性高分子含有組成物(自動食洗機用液体洗剤)17000gを製造した。得られた高分子水溶液を濾過したところ、未膨潤ダマは8粒しか確認されなかった。
【0026】
[比較例1]
(工程I)
予備分散液調製のため、はじめに5Lビーカーに精製水979gとマレイン酸アクリル酸共重合体Na塩(MAC−Na)の40%水溶液1061gを投入してからスリーワンモーターと攪拌翼を用いて1500rpmで攪拌混合を行いながら系内温度を40℃まで昇温させた。昇温後、これにCVP(i)粉体204gを10分かけて加え、そのままさらに10分攪拌を継続して予備分散液を調製した。予備分散液の粘度は25℃で45000mPa・sで、ゲル状になった。
(工程II)
次に、本混合を行うため、20L真空乳化釜に精製水10198gとMAC−Naの40%水溶液4039gを添加しパドル翼55rpmで5分間混合した後に予備分散液をヘラを使用して全量添加し、ホモミキサー6400rpm(剪断力32×103[1/s])で6分間攪拌混合を行った。さらに高分子水溶液にノニオン活性剤NREP176g、カチオン界面活性剤エソカード134g、48%水酸化ナトリウム水溶液209gを添加、パドル55rpmで10分間攪拌し、水溶性高分子含有組成物(自動食洗機用液体洗剤)17000gを製造した。得られた高分子水溶液を濾過したところ、未膨潤ダマが多数(51粒以上)確認された。
【0027】
[比較例2]
(工程I)
予備分散液調製のため、はじめに5Lビーカーに精製水3264gとマレイン酸アクリル酸共重合体Na塩(MAC−Na)の40%水溶液816gを投入してからスリーワンモーターと攪拌翼を用いて1500rpmで攪拌混合を行いながら系内温度を40℃まで昇温させた。昇温後、これにCVP(i)粉体204gを10分かけて加え、そのままさらに10分攪拌を継続して予備分散液を調製した。予備分散液の粘度は25℃で40000mPa・sで、ゲル状でほとんど流動性がなかった。
(工程II)
次に、本混合を行うため、20L真空乳化釜に精製水7913gとMAC−Naの40%水溶液4284gを添加しパドル翼55rpmで5分間混合した後に予備分散液をヘラを使用して全量添加し、ホモミキサー6400rpm(剪断力32×103[1/s])で6分間攪拌混合を行った。さらに高分子水溶液にノニオン界面活性剤NREP176g、カチオン界面活性剤エソカード134g、48%水酸化ナトリウム水溶液209gを添加、パドル55rpmで10分間攪拌し、水溶性高分子含有組成物(自動食洗機用液体洗剤)17000gを製造した。得られた高分子水溶液を濾過したところ、未膨潤ダマが多数(51粒以上)確認された。
【0028】
[比較例3]
(工程I)
予備分散液調製のため、はじめに5Lビーカーに精製水408gとマレイン酸アクリル酸共重合体Na塩(MAC−Na)の40%水溶液3672gを投入してからスリーワンモーターと攪拌翼を用いて1500rpmで攪拌混合を行いながら系内温度を40℃まで昇温させた。昇温後、これにCVP(i)粉体204gを10分かけて加え、そのままさらに10分攪拌を継続して予備分散液を調製した。予備分散液の粘度は25℃で13000mPa・sと高粘度で流動性が悪かった。
(工程II)
次に、本混合を行うため、20L真空乳化釜に精製水10769gとMAC−Naの40%水溶液1428gを添加しパドル翼55rpmで5分間混合した後に予備分散液をヘラを使用して全量添加し、ホモミキサー6400rpm(剪断力32×103[1/s])で6分間攪拌混合を行った。さらに高分子水溶液にノニオン界面活性剤NREP176g、カチオン界面活性剤エソカード134g、48%水酸化ナトリウム水溶液209gを添加、パドル55rpmで10分間攪拌し、水溶性高分子含有組成物(自動食洗機用液体洗剤)17000gを製造した。得られた高分子水溶液を濾過したところ、未膨潤ダマが34粒確認された。
【0029】
[比較例4]
実施例3と同様に水溶性高分子含有組成物(自動食洗機用液体洗剤)17000gを製造した。その際、工程IIにおけるホモミキサー回転数を3600rpm(剪断力18×103[1/s])で行った。得られた高分子水溶液を濾過したところ、未膨潤ダマが25粒確認された。
実施例及び比較例の評価結果を表1及び表2に示す。





























【0030】
【表1】



















【0031】
【表2】

【0032】
[測定法・評価法]
*1)水溶性高分子(A)の平均粒子径
微分干渉顕微鏡(オリンパス製 AX70)で任意に50粒子を選択してその大きさを観察し、それらの平均を算出した。
*2)水溶性高分子(B)の10%水溶液粘度測定
装置:(株)東京計器製 BL型回転式粘度計
ローター:No.1(〜100mPa・s)、No.2(101〜500mPa・s)、
No.3(501mPa・s〜)
回転数:60rpm
測定温度:25℃
測定時間:10秒後(10回転目の値)
*3)予備分散液粘度測定
装置:(株)東京計器製 BL型回転式粘度計
ローター/回転数:No.3/60rpm(〜2000mPa・s)、
No.4/60rpm(〜10000mPa・s)、
No.4/12rpm(〜50000mPa・s)
測定温度:25℃
測定時間:60rpm時は10秒後、12rpm時は50秒後(いずれも10回転目の値)
*4)攪拌翼剪断力
試料に与えられた剪断力と羽根先端の剪断速度の関係は
剪断力 ∝ 移動速度/クリアランス
移動速度:羽根先端速度Ut[m/s]
クリアランス:回転する攪拌羽根とその周囲にある固定壁との距離[m]
であるから、ここでは剪断力を羽根先端速度をクリアランスで割った値[1/s]とする。
*5)外観(濾過)
調製した高分子水溶液500gを60メッシュ(250μm)の篩に通し、捕捉された未膨潤ダマ粒子が0〜10粒なら◎、11〜20粒なら○、21〜50粒なら△、51粒より多ければ×として評価した。◎、○が合格。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が1〜100μmである水溶性高分子(A)粉体を、該高分子(A)とは異なる種であって、10質量%水溶液の粘度が1〜200mPa・sである水溶性高分子(B)の水溶液に添加し、水溶性高分子(A)の濃度が3〜7質量%であってかつ水溶性高分子(B)濃度が10〜30質量%である予備分散液を調製する工程(工程I);及び
該予備分散液と水とを混合し、水溶性高分子(A)を溶解する工程(工程II);
を含むことを特徴とする水溶性高分子物質含有組成物の製造方法。
【請求項2】
水溶性高分子(A)粉体が(メタ)アクリル酸系高分子である請求項1記載の水溶性高分子物質含有組成物の製造方法。
【請求項3】
水溶性高分子(B)が(メタ)アクリル酸/マレイン酸共重合体又はその塩である請求項1又は2記載の水溶性高分子物質含有組成物の製造方法。
【請求項4】
水溶性高分子(A)粉体の予備分散液と水を混合する時(工程II)の攪拌翼剪断力が20×103〜40×103[1/sec]である請求項1〜3のいずれか1項記載の水溶性高分子物質含有組成物の製造方法。

【公開番号】特開2008−163075(P2008−163075A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351280(P2006−351280)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】