説明

水溶液中の絶縁物粒子の濃度を測定する方法及び装置

【課題】水溶液中に浮遊する砂、プラスチック、気泡などの絶縁物粒子の濃度を測定する方法及に関する。
【解決手段】水溶液W中に浮遊する絶縁物粒子dの体積比の濃度を測定するために測定対象の水溶液W中に一対の電極A,Bを設け、水溶液W中に絶縁物粒子dが浮遊していない濃度Dが0の状態の電極間A,Bの電気抵抗値をR0 とし、電極間A,Bの電気抵抗値を無限大に設定したときの前記濃度Dを1とし、水溶液W中に絶縁物粒子dが浮遊している状態の電極間A,Bの電気抵抗値をRとし、水溶液W中の絶縁物粒子dが浮遊している状態の濃度DをD=1−R0 /Rとして求めるように構成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶液中に浮遊する例えば砂,プラスチック,気泡などの絶縁物粒子濃度を測定する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の各種濃度計は、光を利用した光学濃度計や超音波を利用した超音波濃度計が一般的に用いられている。光を利用した濃度計(濁度計)としては、光束をセル内の試料液に照射し、液中に浮遊する粒子(鉄)により透過した光と散乱した光とに別れ、この透過光と散乱光を検出して散乱光/透過光の比率を演算して、鉄濃度(濁度)として表示メータに表示させるものがある。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−292329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これらの光学濃度計や超音波濃度計は、水中に浮遊する粒子の粒径が異なると、濃度が同じでも出力値が異なる欠点があった。この理由は、これらの光学,超音波濃度計は粒子からの反射を利用するため、平面的な情報しか得られないことによるためである。正しい濃度を測定するためには、水中に浮遊する粒子の立体的な情報を考慮することが必要である。
本発明は、水溶液中の絶縁物粒子の濃度を測定する場合に、絶縁物粒子の粒径が異なっていても正確な体積比によるセンサ出力が得られる水溶液中の絶縁物粒子の濃度を測定する方法及び装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明による水溶液中の絶縁物粒子の濃度を測定する方法は、水溶液中に浮遊する絶縁物粒子の体積比の濃度を測定するために測定対象の水溶液中に一対の電極を設け、前記水溶液中に前記絶縁物粒子が浮遊していない濃度Dが0の状態の前記電極間の電気抵抗値をR0 とし、前記電極間の電気抵抗値を無限大に設定したときの前記濃度Dを1とし、前記水溶液中に前記絶縁物粒子が浮遊している状態の前記電極間の電気抵抗値をRとし、前記水溶液中の前記絶縁物粒子が浮遊している状態の濃度Dを
D=1−R0 /R
として求めるように構成されたものである。
【0005】
本発明による水溶液中の絶縁物粒子の濃度を測定する装置は、濃度測定対象の水溶液中に設けられ、一方が接地された一対の電極を有する前記水溶液中の絶縁物粒子の体積比の濃度を検出する粒子濃度検出部と、正弦波発振器と、一端に該正弦波発振器の出力が接続され、他端に前記濃度検出部の他方の電極が接続され、かつその出力と前記他端との間に接続された帰還抵抗を有する前記電極間の電気抵抗値を検出する電気抵抗検出増幅器と、該電極間電気抵抗検出増幅器の出力を絶対値に変換する絶対値増幅器と、該絶対値増幅器の出力に接続され、前記電極間の濃度Dが0における抵抗値を基準抵抗値R0 として出力が0となるように調整する定数加算器と、該定数加算器の出力に接続され、前記電極間の抵抗値が無限大であるとき、濃度Dが1になるように調整する利得調整器と、該利得調整器の出力に接続され、前記濃度検出部の被測定水溶液中の濃度測定における濃度Dを出力する出力増幅器とを備え、
前記濃度検出部の被測定水溶液中の濃度0及び濃度1に前記定数加算器及び利得調整器をそれぞれ調整した後、前記被測定水溶液中の濃度Dを
D=1−R0 /R
として求めるように構成されたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、前述したように水溶液中に設けられた電極間に浮遊する粒子の体積比による濃度を、電気抵抗として検出し、この電気抵抗の逆数を求めることにより極めて容易に測定することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の水溶液中の絶縁物粒子の濃度を測定する方法及び装置は、水溶液の中に一対の電極を配置し、その間の電気抵抗を検出して利用するものである。電極間を流れる電流は、図1に示すように電極Aから電極Bに対して、球状のような立体的な広がりをもって流れるため、絶縁物粒子の粒径が異なっていても体積比によるセンサ出力が得られるものである。なお、本発明による絶縁物粒子の濃度測定に際しては、水溶液中に浮遊する絶縁物粒子の粒子径の大小に拘らず一様に分布している状態で測定することを要する。
【0008】
図2は、本発明の水溶液W中の絶縁物粒子dの濃度を測定する方法及び装置の一実施例を示すブロック回路図である。図2において、1は測定対象の粒子浮遊水溶液W中に設置される粒子濃度検出部であり、絶縁枠1aの上下に電極Aと電極Bとが設けられ、一方の電極Bは接地されている。なお、電極AとBは絶縁枠1aの左右に設けてもよい。2は正弦波発振器であり、例えば発振周波数8kHz,出力電圧は100mV程度の出力特性を有する。3は電極間抵抗検出増幅器であり、例えば演算増幅器で構成されており、帰還抵抗Tを含む。4は絶対値増幅器であり、交流信号を負の直流信号に変換する。
【0009】
5は定数加算器であり、直流電圧Zを加減算する。具体的には後述する測定前の調整において、入力側に設けられた可変抵抗VRZの抵抗値を増減して定数加算器5の出力を0とする。6は利得調整器であり、帰還信号Kの増減により調整する。具体的には後述する測定前の調整において、帰還回路の可変抵抗VRKの抵抗値を増減して、利得調整器6の出力を所要の電圧に調整する。7は出力増幅器であり、定数加算器5と利得調整器6の調整の結果として絶縁物粒子dの濃度Dが出力される。
【0010】
次に各ブロック回路の動作を定量的に説明する。図2の正弦波発振器2の出力は、
【数1】

である。なお、各式中の“C”は、正弦波発振器2の出力電圧の実効値を示すものである。
粒子濃度検出部1と電極間抵抗検出増幅器3及び帰還抵抗Tで構成した回路出力は、
v{1+(T/R)} ……(式2)
となり、絶対増幅器4の極性反転により、
−C{1+(T/R)} ……(式3)
となる。
定数加算器5及び利得調整器6を通して出力増幅器7からの出力される濃度Dは、
D=KZ−KC{1+(T/R)} ……(式4)
である。
【0011】
濃度Dの定義を粒子浮遊水溶液の中の絶縁物粒子dの集合体としての体積比とし、濃度D=0のときの電極A−B間の電気抵抗をR0 、D=1のときは電極A−B間が総て絶縁物粒子で埋め尽くされて、電気抵抗は無限大(∞)となる。絶縁物粒子dを図3に示すように立体的に又は平面的に集約し、Dを絶縁物粒子dの集合体、Wを水溶液とし、D+W=1とする。電気抵抗Rは、水溶液Wの増減によって変化する。即ち、
R=R0 ×(1/W)=R0 ×{1/(1−D)}
となる。変形して、
(1−D)R=R0
−D=(R0 −R)/R
となる。従って、
D=1−(R0 /R) ……(式5)
で表現される。このように濃度Dの値は、0〜1となる。
式4と式5とを比較すれば、Z及びKの調整により、式4を式5に一致させることが理解できる。
【0012】
Zの調整 R=R0 のとき、D=0とすれば、式4より
0=KZ−KC{1+(T/R0 )} 従って、
Z=C{1+(T/R0 )}となり、これを式4に代入して
D=KCT/R0 −KCT/R ……(式6)
R=R0 の状態は、浮遊する絶縁物粒子dが無い水溶液である。
【0013】
Kの調整 R=∞のとき、D=1とすれば、式6より
1=KCT/R0 従って、
K=R0 /CTとなり、これを式6に代入して
D=1−(R0 /R) ……(式7)
R=∞ は電極間に水溶液が無い状態である。
【0014】
濃度測定の手順としては、先ず、最初に濃度対象の絶縁物粒子dが浮遊する水溶液Wから、絶縁物粒子dを除去した水溶液Wの電極A・B間の抵抗値R0 を測定すると共に、定数加算器5の直流電圧Zを調整して定数加算器5の出力を0にし、濃度Dが0の場合の出力増幅器7の出力を0とする。
次に、水溶液Wの電極A・B間を開放し、水溶液Wの無い状態、即ち抵抗値Rを無限大(∞)にし、利得調整器6の帰還信号Kを調整して、利得調整器6の出力を測定し易い電圧にして、これを濃度Dが1の場合の出力増幅器7の出力電圧とする。
粒子濃度検出部1の電極A・B間の電気抵抗値Rと濃度Dとの関係は、式7によるものであるから、図4に示す電極間電気抵抗−濃度の関係図に示されるように、濃度D=1−R0 /Rによる特性図として表される。ただし、図4の場合はR0 =23Ωである。
【0015】
前述の直流電圧Z及びKを調整した後、水溶液Wを測定対象の絶縁物粒子dが浮遊する水溶液Wとして電極A−B間の抵抗値Rの状態と、浮遊している絶縁物粒子dが無い水溶液Wの電極A−B間の抵抗値R0 の状態とが比較されて、出力増幅器7の出力に測定結果が出力される。例えば、前述の水溶液Wが無い状態の出力増幅器7の出力電圧を1Vに調節してある場合において、測定出力電圧が0.32Vである場合は、当該水溶液の濃度は32%(体積比)として把握される。
【0016】
前述の説明は、定数加算器5におけるZの調整、及び利得調整器6におけるKの調整は、それぞれ手動によるものであるが、自動調整を行うようにしてもよい。特に水溶液の性質が変化するような測定環境における継続的な濃度測定において必要である。
Zの自動調整は、絶縁物粒子dが浮遊していない濃度D=0の専用検出部を設置し、指定した時刻又は時間間隔毎に切り替え調整し、その値をディジタルホールドする。絶縁物粒子dが浮遊している水溶液Wの性質が変化するような場合は、専用検出部の水溶液を測定対象の水溶液Wに対応するよう常に交換させる。
Kの自動調整は、濃度D=1のときの電極A又はBの切り離しての利得調整を、指定した時刻又は時間間隔毎に行い、その値をディジタルホールドする。このZとKの自動調整後に、絶縁物粒子dが浮遊する水溶液Wの電極A−B間の抵抗値Rを検出することにより、出力増幅器7の出力に濃度データが検出される。
【0017】
なお、水の電気伝導率は、水の種類や性質等によって異なる。例えば、海水は10Ω・cm〜100Ω・cm、冷却水は1kΩ・cm前後、水道水は10kΩ・cm前後、雨水は10kΩ・cm〜100kΩ・cmなどであり、測定対象の水溶液(水)の種類等を考慮する必要がある。また、前述の回路説明では、正弦波発振器2の発振周波数を8kHzとして説明したが、1kHz〜60kHz程度の周波数のものを使用し得る。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明による水溶液中の絶縁物粒子の濃度を測定する方法及び装置は、絶縁物粒子が浮遊する水溶液の体積比による濃度測定を必要とする各種水溶液の濃度測定に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の水溶液中の絶縁物粒子の濃度を測定する方法及び装置の測定原理を説明する模式図である。
【図2】本発明の水溶液中の絶縁物粒子の濃度を測定する方法及び装置の一実施例のブロック回路図である。
【図3】本発明の水溶液中の絶縁物粒子の濃度を測定する方法及び装置における粒子濃度を集約状態にして示した模式図である。
【図4】本発明の水溶液中の絶縁物粒子の濃度を測定する方法及び装置における電極間電気抵抗と濃度との関係を示す特性図の一例である。
【符号の説明】
【0020】
1 粒子濃度検出部
1a 絶縁枠
2 正弦波発振器
3 電極間抵抗検出増幅器
4 絶対値増幅器
5 定数加算器
6 利得調整器
7 出力増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液中に浮遊する絶縁物粒子の体積比の濃度を測定するために測定対象の水溶液中に一対の電極を設け、
前記水溶液中に前記絶縁物粒子が浮遊していない濃度Dが0の状態の前記電極間の電気抵抗値をR0 とし、
前記電極間の電気抵抗値を無限大に設定したときの前記濃度Dを1とし、
前記水溶液中に前記絶縁物粒子が浮遊している状態の前記電極間の電気抵抗値をRとし、
前記水溶液中の前記絶縁物粒子が浮遊している状態の濃度Dを
D=1−R0 /R
として求めるように構成された水溶液中の絶縁物粒子の濃度を測定する方法。
【請求項2】
濃度測定対象の水溶液中に設けられ、一方が接地された一対の電極を有する前記水溶液中の絶縁物粒子の体積比の濃度を検出する粒子濃度検出部と、
正弦波発振器と、
一端に該正弦波発振器の出力が接続され、他端に前記濃度検出部の他方の電極が接続され、かつその出力と前記他端との間に接続された帰還抵抗を有する前記電極間の電気抵抗値を検出する電気抵抗検出増幅器と、
該電極間電気抵抗検出増幅器の出力を絶対値に変換する絶対値増幅器と、
該絶対値増幅器の出力に接続され、前記電極間の濃度Dが0における抵抗値を基準抵抗値R0 として出力が0となるように調整し得る定数加算器と、
該定数加算器の出力に接続され、前記電極間の抵抗値が無限大であるとき、濃度Dが1になるように調整し得る利得調整器と、
該利得調整器の出力に接続され、前記濃度検出部の被測定水溶液中の濃度測定における濃度Dを出力する出力増幅器とを備え、
前記濃度検出部の被測定水溶液中の濃度0及び濃度1に前記定数加算器及び利得調整器をそれぞれ調整した後、前記被測定水溶液中の濃度Dを
D=1−R0 /R
として求めるように構成された水溶液中の絶縁物粒子の濃度を測定する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−121133(P2007−121133A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314370(P2005−314370)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(395018550)電子工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】