説明

水熱酸化分解処理装置

【課題】反応器内全体に酸化剤が導かれ易くして、被処理物を効率よく処理することができる水熱酸化分解処理装置を提供する。
【解決手段】水熱酸化分解処理装置は、被処理物を酸化処理する反応器20と、同反応器20に供給された被処理物を攪拌しながら移送するスクリューコンベア26とを備えている。反応器20の上部には、スクリューコンベア26の軸線方向に沿って反応器20内に酸化剤である空気を供給するための3つの供給管41,42,43がそれぞれ接続されている。スクリューコンベア26は、移送モータ27に連結された駆動軸26a上に羽根体26bが螺旋状に巻き回されて構成されている。羽根体26bには、半円状に切り欠かれた切欠き部26cが略等間隔に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分を含む被処理物を高温・高圧の条件下で酸化分解処理する水熱酸化分解処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、PCB(ポリ塩素化ビフェニル)またはダイオキシンなどの有害物質の無害化や、食品加工残渣、下水汚泥または家畜排泄物などの有機性廃棄物の効率的な処理を行う水熱酸化分解処理装置が知られている。水熱酸化分解処理装置は、高温・高圧状態の水の中に酸化剤と被処理物とを投入して被処理物を酸化分解する装置である。一般に、このような水熱酸化分解処理装置においては、反応器内に供給された被処理物を排出口側に向けて攪拌しながら移送するためのスクリューコンベアが設けられている。例えば、下記特許文献1には、丸棒状に形成された駆動軸上に略帯状に形成された羽根体を螺旋状に巻き回して構成したスクリューコンベアを備えた水熱酸化分解処理装置が開示されている。
【特許文献1】特開2004−290819号公報
【0003】
しかしながら、このような水熱酸化分解処理装置においては、被処理物を酸化処理するために反応器内に供給される酸化剤がスクリューコンベアの存在により反応器内全体に充分拡散せず、被処理物の処理効率が低下するという問題がある。特に、スクリューコンベアにおける羽根と羽根との間の領域には酸化剤が導かれ難く、同領域に多く存在する被処理物の酸化分解が進まないという問題があった。
【発明の開示】
【0004】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、反応器内全体に酸化剤が導かれ易くして、被処理物を効率よく処理することが可能な水熱酸化分解処理装置を提供することにある。
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、加熱および加圧された条件下で水と酸化剤とを用いて被処理物を酸化分解する反応器と、螺旋状に形成された羽根体を回転させることにより、反応器内の被処理物を攪拌または移送する攪拌・移送手段とを備えた水熱酸化分解処理装置において、攪拌・移送手段における羽根体は、酸化剤が流通可能な孔部または切欠き部を備えることにある。
【0006】
この場合、前記攪拌・移送手段を、例えば、反応器内の被処理物を移送するスクリューコンベアにするとよい。また、前記反応器内の水を、例えば、超臨界水、亜臨界水、または温度が水の臨界温度(374℃)以上700℃以下、圧力が5MPa以上水の臨界圧力(22MPa)未満の高圧過熱水蒸気にするとよい。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、被処理物を攪拌または移送する羽根体に孔部または切欠き部が設けられている。これにより、攪拌または移送されている被処理物に酸化剤が導かれ易くなり、被処理物と酸化剤との接触効率の低下を防止することができる。この結果、被処理物を効率よく処理することができる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、加熱および加圧された条件下で水と酸化剤とを用いて被処理物を酸化分解する反応器と、反応器内に酸化剤を供給する酸化剤供給手段とを備えた水熱酸化分解処理装置において、酸化剤供給手段は、反応器内に複数の位置から酸化剤を供給することにある。この場合、前記反応器内の水を、例えば、超臨界水、亜臨界水、または温度が水の臨界温度(374℃)以上700℃以下、圧力が5MPa以上水の臨界圧力(22MPa)未満の高圧過熱水蒸気にするとよい。
【0009】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、反応器内に対して複数の位置から酸化剤を供給している。このため、反応室24内全体にムラなく迅速に酸化剤を供給することができるとともに、充分な酸化剤濃度を維持することができる。この結果、被処理物と酸化剤との接触効率の低下を防止することができ、被処理物を効率よく処理することができる。
【0010】
また、前記水熱酸化分解処理装置において、さらに、螺旋状に形成された羽根体を回転させることにより、反応器内の前記被処理物を攪拌または移送する攪拌・移送手段を備えている場合、酸化剤供給手段は、羽根体の回転軸方向に沿って酸化剤を供給するようにするとよい。これによれば、攪拌・移送手段の羽根体における各羽根と羽根との間に効率よく酸化剤を供給することができ、被処理物を効率よく処理することができる。
【0011】
また、本発明の他の特徴は、加熱および加圧された条件下で水と酸化剤とを用いて被処理物を酸化分解する反応器と、螺旋状に形成された羽根体を回転させることにより、反応器内に導入された被処理物を攪拌または移送する攪拌・移送手段と、反応器内に酸化剤を供給する酸化剤供給手段とを備えた水熱酸化分解処理装置において、攪拌・移送手段における羽根体は、酸化剤が流通可能な孔部または切欠き部を備え、酸化剤供給手段は、反応器内に複数の位置から酸化剤を供給することにある。この場合、前記反応器内の水を、例えば、超臨界水、亜臨界水、または温度が水の臨界温度(374℃)以上700℃以下、圧力が5MPa以上水の臨界圧力(22MPa)以下の高圧過熱水蒸気にするとよい。
【0012】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、被処理物を攪拌または移送する羽根体に孔部または切欠き部が設けられているとともに、反応器内における複数の位置から酸化剤を供給している。このため、前記した羽根体に孔部または切欠き部を備えたのみの水熱酸化分解処理装置、または反応器内に複数の位置から酸化剤を供給する構成のみの水熱酸化分解処理装置よりも、より確実に酸化剤を反応器内全体に供給することができる。この結果、被処理物と酸化剤との接触効率の低下を防止することができ、被処理物を効率よく処理することができる。
【0013】
なお、上記した超臨界水とは、水を水の臨界温度(374℃)以上の温度に加熱するとともに、水の臨界圧力(22MPa)以上の圧力に加圧した状態の流体である。また、亜臨界水とは、水を200℃〜350℃の温度に加熱するとともに、同加熱した温度に対応する飽和水蒸気圧以上(200℃では1.55MPa、350℃では16.5MPa)の圧力に加圧した状態の流体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る水熱酸化分解処理装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、超臨界水を用いて家畜排泄物や下水汚泥を酸化処理して無害な物質に分解する水熱酸化分解処理装置の全体構成を模式的に示すブロック図である。ここで超臨界水とは、上記したように、水を水の臨界温度(374℃)以上の温度に加熱するとともに、水の臨界圧力(22MPa)以上の圧力に加圧した状態の流体である。この水熱酸化分解処理装置は、被処理物を貯留する貯留タンク11を備えている。
【0015】
貯留タンク11は、水熱酸化分解処理装置の処理対象である流体状の被処理物を貯留するための容器である。本実施形態においては、家畜排泄物や下水汚泥に所定量の水を加えてスラリー状(流体状)にした被処理物を貯留する。貯留タンク11の底部には、導入管12が接続されている。導入管12は、貯留タンク12に貯留されているスラリー状の被処理物を高圧ポンプ13およびバルブ14を介して反応器20に導くための配管である。高圧ポンプ13は、貯留タンク11に貯留されている被処理物を導入管12を介して反応器20に供給するための送液ポンプであり、図示しない制御装置により作動が制御される。また、高圧ポンプ13は、前記制御装置による作動制御により、反応器20内の圧力を水の臨界圧力(22MPa)以上の圧力、具体的には25MPaに加圧する。バルブ14は、導入管12を介して反応器20に供給される被処理物の流量を調節するための手動弁である。
【0016】
反応器20は、図2に示すように、略円筒状に形成された筐体21と、略円盤状に形成された蓋体22,23とを備えている。これらのうち、蓋体22,23は、筐体21の両端部に各3つのボルト22a,23a(各1ずつ図示)によって固定されており、筐体21の内部を密閉して反応室24を形成している。反応室24は、超臨界水を用いて被処理物を酸化反応させて分解処理するための領域である。したがって、筐体21および蓋体22,23は、被処理物を酸化反応させて分解処理する温度(本実施形態においては、650℃)および圧力(本実施形態においては、25MPa)に耐えられる材料、例えばニッケル・クロム合金でそれぞれ構成されている。
【0017】
この反応器20における筐体21の上部には、反応室24に連通する貫通孔25a,25b,25c,25d,25eが筐体21の一方の端部側(図示左側)から他方の端部側(図示右側)に沿ってそれぞれ略等間隔に設けられている。これらのうち、貫通孔25aは、反応室24内に被処理物を導入するための孔であり、前記導入管12が接続される。また、貫通孔25b〜25dは、被処理物を酸化処理するための酸化剤を反応室24内に導入するための孔であり、貫通孔25eは、被処理物を酸化反応させることにより生成される反応ガスを反応室24外に排気するための孔である。
【0018】
この反応器20は、互いに高さの異なる支持台31,32によって水平な床面Gに対して僅かに傾斜させた状態で設置されている。具体的には、反応器20における貫通孔25a(導入口)側が貫通孔25e(排気口)側より低くなるように、換言すれば、反応器20における被処理物の導入側から反応ガスの排気側に向けて上り勾配となるように反応器20を傾斜させている。すなわち、この反応器20は、反応室24が略水平方向(横方向)に延びて形成された所謂横型の反応器を傾斜させて配置されている。本実施形態においては、反応器20を床面Gに対して8°だけ傾斜させている。
【0019】
反応室24内には、スクリューコンベア26が設けられている。スクリューコンベア26は、丸棒状に形成された駆動軸26aの外周面に略帯状の羽根体26bが螺旋状に巻き回されて構成されており、反応室24内に投入される被処理物を駆動軸26aの軸線方向に沿って攪拌しながら移送する。このスクリューコンベア26の駆動軸26aは、その一端部(図示左側)が蓋体22の略中心部を貫通して移送モータ27に連結支持されているとともに、他端部(図示右側)が蓋体23の略中心部に軸受28を介して回転自在に支持されている。すなわち、スクリューコンベア26は、反応室24の長手方向に沿って設置されており、被処理物を貫通孔25a側から貫通孔25e側に向けて攪拌しながら移送する。
【0020】
また、スクリューコンベア26の外径は、筐体21の内径(反応室24内の直径)より若干小さく形成されている。これは、被処理物の酸化処理によって筐体21の内壁面(反応室24の内壁面)に付着する塩類を羽根体26bの外周端面で掻き取るためである。具体的には、筐体21の底部内壁面(反応室24の底部内壁面)と羽根体26bの外周端面との間に2mm程度の隙間を形成するとともに、筐体21の上部内壁面(反応室24の上部内壁面)と羽根体26bの外周端面との間に5mm程度の隙間を形成するようにスクリューコンベア26の外径が設定される。この場合、筐体21の底部内壁面側の隙間が、筐体21の上部内壁面側の隙間より小さいのは、反応室内に投入された被処理物を充分攪拌するとともに、被処理物の酸化処理によって析出する固体(無機)残渣を的確に移送するためである。
【0021】
また、スクリューコンベア26の羽根体26bには、その外周端面が駆動軸26aの軸心に向って半円状に切り欠かれた切欠き部26cが等間隔に形成されている。切欠き部26cは、羽根体26bによって攪拌される被処理物に酸化剤を導き易くするとともに、反応室24内に供給される酸化剤が反応室24内の全体に速やかに行き渡るように設けられた所謂通風孔である。移送モータ27は、蓋体22の外側壁面(図示左側壁面)に固定された電動モータであり、前記制御装置によって作動が制御されてスクリューコンベア26の駆動軸26aを回転させる。
【0022】
筐体21の外周面であって前記貫通孔25b〜25eの各孔の間には、電熱コイル29が巻き回された状態で設けられている。電熱コイル29は、前記制御装置によって作動が制御される加熱装置であり、反応室24内の温度を水の臨界温度(374℃)以上、具体的には650℃程度の温度に加熱するとともに、同温度状態を維持する。すなわち、この電熱コイル29は、被処理物に含まれる水を超臨界状態にするための熱源である。
【0023】
筐体21に設けられた貫通孔25b〜25dには、反応室24内に酸化剤である空気(酸素)を供給するための供給管41,42,43がそれぞれ接続されている。供給管41,42,43の各上流側は、バルブ41a,42a,43a、共通配管44およびコンプレッサー45を介して空気取込口46が接続されている。バルブ41a,42b,43cは、供給管41,42,43内をそれぞれ流れる空気の流量を調節するための手動弁である。コンプレッサー45は、前記制御装置により作動が制御される空気圧縮装置である。具体的には、コンプレッサー45は、空気取込口46を介して大気中から吸引した空気を圧縮して反応室24に供給するとともに、反応室24内の圧力を水の臨界圧力(22MPa)以上の圧力、具体的には25MPaに加圧し維持する。
【0024】
筐体21に設けられた貫通孔25eには、被処理物を酸化反応させることにより生成される反応ガスを反応室24の外に排出するための排気管51が接続されている。この排気管51の下流側には、冷却器52、焼結フィルタ53および気液分離器54がそれぞれ設けられている。冷却器52は、排気管51を空冷および水冷方式により冷却して反応器20から排気された反応ガスの温度を大気温度に略等しい温度にまで下げる冷却装置であり、前記制御装置によって作動が制御される。焼結フィルタ53は、反応器20から排気された反応ガスに含まれる固形分を分離するためのものである。また、気液分離装置54は、反応器20から排気された反応ガスに含まれる水蒸気を液体として分離するとともに、同水蒸気が除かれた反応ガスを大気中に放出するための装置である。
【0025】
また、筐体21の外周面における前記排気管51の反対側には、反応室24内にて生成された固体(無機)残渣を廃棄するための廃棄管61が接続されている。この廃棄管61が接続される反応室24内における筐体21の内周面は、すり鉢状に窪んだ形状に形成されており、反応室24内で生成されスクリューコンベア26にて移送された固体(無機)残渣が廃棄管61に導かれ易くなっている。廃棄管61の下流側には、残渣受器62およびバルブ63が設けられている。残渣受器62は、反応器20にて生成された固体(無機)残渣を回収して貯留しておく容器である。また、バルブ63は、残渣受器62に貯留された固体(無機)残渣を放出するための手動弁である。
【0026】
上記のように構成された水熱酸化分解処理装置の作動について説明する。まず、作業者は、家畜排泄物(または下水汚泥)と水とを混ぜ合わせたスラリー状の被処理物(含水率約60%)を貯留タンク11内に貯留する。そして、水熱酸化分解処理装置における図示しない電源スイッチを投入して、被処理物の処理の開始を制御装置に指示する。この指示に応答して前記制御装置は、コンプレッサー45および電熱コイル29の各作動を開始させる。これにより、反応器20における反応室24内は、酸化剤(空気)が供給されて水の臨界圧力(22MPa)以上に加圧されるとともに、電熱コイル29により水の臨界温度(374℃)以上に加熱される。本実施形態においては、前記したように反応室24内の温度を650℃とし、圧力を25MPaとする。
【0027】
この場合、反応室24内には、スクリューコンベア26に駆動軸26aの軸線方向に沿って設けられた3つの供給管41,42,43からそれぞれ酸化剤が供給される。これにより、反応室24内全体に迅速に酸化剤が拡散する。また、この場合、反応室24内に供給された酸化剤は、スクリューコンベア26の羽根体26bに設けられた切欠き部26cを介して速やかに反応室24全体に拡散する。
【0028】
次に、制御装置は、高圧ポンプ13、移送モータ27および冷却器52の各作動を開始させる。これにより、反応器20における反応室24内に貯留タンク11に貯留されている被処理物の供給が開始されるとともに、反応室24内のスクリューコンベア26の回転が開始される。反応室24に供給された被処理物は、反応室24の底部に向かって自由落下した後、スクリューコンベア26により攪拌されながら排気管51側に移送される。このスクリューコンベア26による攪拌・移送過程において被処理物に含まれる水分は、水の臨界温度(374℃)以上、かつ臨界圧力(22MPa)以上の雰囲気中に曝されて超臨界水となり、被処理物に含まれる有機物を溶解する。超臨界水に溶解した有機物は、反応室24内に供給されている酸化剤によって酸化分解されて、水蒸気、二酸化炭素ガスおよび窒素ガス等からなる反応ガスに転化する。また、被処理物に含まれる無機物(アルミナ、シリカ、リンなど)は粉状の固体(無機)残渣として析出する。
【0029】
この被処理物の酸化分解処理中においても、反応室24内には供給管41,42,43から酸化剤が供給され続けるため、酸化剤のムラ(偏在)を防止して被処理物と酸化剤との接触効率を維持することができる。この場合、供給管41,42,43は、スクリューコンベア26の駆動軸26aの軸線方向に沿って設けられているため、スクリューコンベア26の羽根体26bにおける各羽根と羽根との間に効率よく酸化剤を供給することができる。また、この場合、スクリューコンベア26の羽根体26bに設けられた切欠き部26cによっても、攪拌されている被処理物に酸化剤が導かれ易くなっているため、被処理物と酸化剤との接触効率を維持することができる。
【0030】
被処理物の酸化処理によって生成された前記反応ガスは、排気管51を介して冷却器52、焼結フィルタ53および気液分離器54に導かれる。気液分離器54は、反応ガスに含まれる水蒸気を液化して貯留するとともに、二酸化炭素ガスおよび窒素ガスを大気中に放出する。一方、固体(無機)残渣は、スクリューコンベア26により廃棄管61に導かれた後、残渣受器62内に回収される。この場合、スクリューコンベア26の外径は、反応室24の直径より僅かに小さく形成されているため、反応室24の内壁面に付着した塩類を回転する羽根体26bの外周端面部にて掻き取る。したがって、この掻き取られた塩類も固体(無機)残渣として回収される。このようにして、被処理物の酸化処理が連続的に実行されて、有機物を含む被処理物が水、二酸化炭素ガス、窒素ガスおよび無機物質などの無害な物質に分解される。そして、すべての被処理物を酸化処理した場合には、作業者は水熱酸化分解処理装置の作動を停止させて被処理物の酸化処理作業を終了する。
【0031】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、反応室24内に対して複数の位置(供給口41,42,43)から空気(酸化剤)を供給している。このため、反応室24内全体にムラなく迅速に酸化剤を供給することができるとともに、充分な酸化剤濃度を維持することができる。また、供給管41,42,43は、スクリューコンベア26の駆動軸26aの軸線方向に沿って設けられているため、スクリューコンベア26の羽根体26bにおける各羽根と羽根との間に効率よく酸化剤を供給することができる。この結果、被処理物を効率よく処理することができる。
【0032】
また、上記実施形態によれば、被処理物を攪拌するスクリューコンベア26の羽根体26bに切欠き部26cが設けられている。これにより、攪拌されている被処理物に酸化剤が導かれ易くなり、被処理物と酸化剤との接触効率の低下を防止することができる。この結果、被処理物を効率よく処理することができる。
【0033】
さらに、反応室24に内に複数の位置から酸化剤を供給したことや、スクリューコンベア26の羽根体26bに切欠き部26cを設けたことにより、スクリューコンベア26の外径を反応室24内の直径より僅かに小さく形成することができる。このため、反応室24の内壁面に付着した塩類を回転する羽根体26bの外周端面部にて掻き取ることができる。これにより、反応室24内の壁面に付着した塩類による被処理物の処理不良を防ぐことができるとともに、同付着した塩類を除去するためのメンテナンス作業を軽減することができる。
【0034】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0035】
上記実施形態においては、反応室24の上部に設けた3つの貫通孔25b〜25dに供給管41,42,43をそれぞれ接続して反応室24内に酸化剤を供給するように構成した。しかし、反応室24内全体にムラなく迅速に酸化剤を供給することができるとともに、充分な酸化剤濃度を維持することが可能であれば、酸化剤が供給される位置や数は限定されるものではない。例えば、酸化剤が供給される位置を2つとしてもよいし、4つ以上としてもよい。また、反応室24内における他の位置、例えば、側壁面または底部壁面から酸化剤を供給するように構成してもよい。これによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0036】
また、上記実施形態においては、切欠き部26cの形状を半円状に切り欠いた形状としたが、スクリューコンベア26によって攪拌されている被処理物に酸化剤を導くことができる形状であれば、切欠き部26cの形状・位置・数は、これに限定されるものではない。例えば、図3に示すように、長孔状に形成した貫通孔26dを羽根体26bの略中央部に設けるようにしてもよいし、羽根体26bに複数の貫通孔を設けて羽根体26bを構成してもよい。また、さらには、羽根体26bの一部または全部を網状に構成してもよい。これらによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0037】
また、上記実施形態においては、反応室24内に投入された被処理物を攪拌および移送するためにスクリューコンベア26を用いたが、螺旋状に形成された羽根体を回転させることにより被処理物を攪拌または移送するものであれば、これに限定されるものではない。例えば、駆動軸26aを有しない無軸型のスクリューコンベアを用いてもよい。また、螺旋状の羽根体を反応室24の内壁面に形成してもよい。この場合、筐体21を筐体21の軸線を回転軸として回転させるように反応器20を構成すればよい。
【0038】
また、上記実施形態においては、超臨界水の雰囲気内で被処理物を酸化処理する構成について説明した。しかし、高温・高圧状態の水を用いて被処理物を酸化分解処理、すなわち水熱酸化分解処理するものであれば、必ずしも超臨界水を用いる必要はない。例えば、亜臨界水の雰囲気内で被処理物を酸化処理するようにしてもよい。ここで、亜臨界水とは、水を200℃〜350℃の温度に加熱するとともに、同加熱された温度に対応する飽和水蒸気圧以上(200℃では1.55MPa、350℃では16.5MPa)の圧力に加圧した状態の流体である。また、水の温度を水の臨界温度(374℃)以上700℃以下に加熱するとともに、同水の圧力を5MPa以上水の臨界圧力(22MPa)未満の圧力に加圧した状態の高圧過熱水蒸気を用いて被処理物を酸化処理するようにしてもよい。これらによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0039】
また、上記実施形態においては、反応室24内における被処理物と酸化剤との接触効率を高めるために、反応室24内に複数の位置(供給管41,42,43)から酸化剤を供給するとともに、スクリューコンベア26の羽根体26bに切欠き部26cを設けた。しかし、反応室24内における被処理物と酸化剤との接触効率を高めることが可能であれば、これらのうちいずれか一方を採用して水熱酸化分解処理装置を構成してもよい。これらによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0040】
また、上記実施形態においては、酸化剤として空気を用いたが、被処理物を酸化処理できる物質であれば、これに限定されるものではない。例えば、酸素、オゾンまたは過酸化水素などを用いることができる。これらによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0041】
また、上記実施形態においては、横型の反応器を傾斜させて設置した反応器20に本発明を適用したが、反応器20の形態はこれに限定されるものではない。すなわち、水平状態に設置された反応器20に本発明を適用してもよいし、反応室24が垂直方向に延びて形成された縦型の反応器に本発明を適用してもよい。これらによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0042】
また、上記実施形態においては、家畜排泄物および下水汚泥を被処理物としたが、当然、これに限定されるものではない。例えば、家畜排泄物および下水汚泥以外のバイオマス系廃棄物(例えば、廃材、食品加工残渣など)、PCB(ポリ塩素化ビフェニル)、ダイオキシンなどの物質も被処理物とすることができる。これらの場合においても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係る水熱酸化分解処理装置の全体構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1に示す水熱酸化分解処理装置における反応器を示す一部破断断面図である。
【図3】本発明の変形例に係る羽根体を示す一部破断断面図である。
【符号の説明】
【0044】
G…床面、11…貯留タンク、12…導入管、13…高圧ポンプ、20…反応器、21…筐体、22,23…蓋体、24…反応室、26…スクリューコンベア、26a…駆動軸、26b…羽根、27…移送モータ、29…電熱コイル、41,42,43…供給管、44…空気取込口、46…コンプレッサー、51…排気管、61…廃棄管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱および加圧された条件下で水と酸化剤とを用いて被処理物を酸化分解する反応器と、
螺旋状に形成された羽根体を回転させることにより、前記反応器内の前記被処理物を攪拌または移送する攪拌・移送手段とを備えた水熱酸化分解処理装置において、
前記攪拌・移送手段における前記羽根体は、前記酸化剤が流通可能な孔部または切欠き部を備えることを特徴とする水熱酸化分解処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載した水熱酸化分解処理装置において、
前記攪拌・移送手段は、前記反応器内の前記被処理物を移送するスクリューコンベアである水熱酸化分解処理装置。
【請求項3】
加熱および加圧された条件下で水と酸化剤とを用いて被処理物を酸化分解する反応器と、
前記反応器内に前記酸化剤を供給する酸化剤供給手段とを備えた水熱酸化分解処理装置において、
前記酸化剤供給手段は、前記反応器内に複数の位置から前記酸化剤を供給することを特徴とする水熱酸化分解処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載した水熱酸化分解処理装置において、さらに、
螺旋状に形成された羽根体を回転させることにより、前記反応器内の前記被処理物を攪拌または移送する攪拌・移送手段を備え、
前記酸化剤供給手段は、前記羽根体の回転軸方向に沿って酸化剤を供給する水熱酸化分解処理装置。
【請求項5】
加熱および加圧された条件下で水と酸化剤とを用いて被処理物を酸化分解する反応器と、
螺旋状に形成された羽根体を回転させることにより、前記反応器内に導入された前記被処理物を攪拌または移送する攪拌・移送手段と、
前記反応器内に前記酸化剤を供給する酸化剤供給手段とを備えた水熱酸化分解処理装置において、
前記攪拌・移送手段における前記羽根体は、前記酸化剤が流通可能な孔部または切欠き部を備え、
前記酸化剤供給手段は、前記反応器内に複数の位置から前記酸化剤を供給することを特徴とする水熱酸化分解処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載した水熱酸化分解処理装置において、
前記反応器内の水は、超臨界水、亜臨界水、または温度が水の臨界温度(374℃)以上700℃以下、圧力が5MPa以上水の臨界圧力(22MPa)未満の高圧過熱水蒸気である水熱酸化分解処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−207133(P2008−207133A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48190(P2007−48190)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(304023318)国立大学法人静岡大学 (416)
【Fターム(参考)】