説明

水生植物からエタノールを収集する方法およびシステム

水生植物による嫌気的代謝中に生成されたエタノールを収集、精製、および/または抽出する方法およびシステムが提供される。前記システムは、水および水生植物を収容したセルと、水からエタノールを取り出するためにセルと流体連通したエタノール抽出アセンブリとを備える。エタノールは、水生植物に到達する光合成誘発光の調節などによって、植物における嫌気的過程を開始することにより、水生植物によって放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水生植物からエタノールを収集する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本開示は、エタノールの生成および収集システムおよび方法に関し、より具体的には、嫌気的代謝中に遊離エタノールを生成する植物による植物成長を促進し、植物成長およびエタノール生成の自立したサイクルを形成するための新規のエタノール生成方法に関する。また、本開示は、水生植物による嫌気的代謝中に生成されたエタノールを収集、精製、および/または抽出するシステムにも関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願では、水生植物による嫌気的代謝中に生成されたエタノールの収集、精製および/または抽出の方法およびシステムが提供される。本願において提供されるシステムは、植物における好気的代謝を誘発する工程と嫌気的代謝を誘発する工程とを交互に行うことを含む、水生植物によるエタノール生成の方法の恩恵を享受する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
実施例1は、水および少なくとも1つの水生植物を含むセルと、水と流体が流れるように連通している(以下「流体連通している」と記載する)エタノール除去アセンブリと、水生植物における光合成を抑制するように構成された光合成光調節システムとを備えたエタノール生成および収集システムである。
【0005】
実施例2は、水および少なくとも1つの水生植物を含むセルと、前記水と流体連通しているエタノール除去アセンブリと、少なくとも1つの水生植物に到達することができる光合成誘発光を調節するための手段とを備えたエタノール生成および収集システムである。例示的な手段は本願において開示される。
【0006】
実施例3は、エタノールの形成を誘発する方法であり、前記方法は、水を収容するセルに水生植物を配置する工程と、前記水生植物による嫌気的過程を開始するために、前記セル内に酸素欠乏状態(anoxic condition)を生じさせる工程と、好気的過程を開始するために、前記セル内に含酸素状態(oxygenated condition)を生じさせる工程と、前記酸素欠乏状態を生じさせる工程と、前記含酸素状態を生じさせる工程を繰り返す工程とを含む。前記嫌気的過程中における貯蔵した炭水化物の代謝によって、前記水生植物は大きさを増大し、エタノールを放出する。前記水生植物は好気的過程中に炭水化物を形成し貯蔵する。前記酸素欠乏状態を生じさせる工程および含酸素状態を生じさせる工程の繰り返しは、水生植物の大きさの増大を促し、エタノールの放出を増大させる。
【0007】
実施例4において、実施例3の方法は、前記セルからエタノールを除去する工程をさらに含む。実施例5において、実施例3または4の方法は、嫌気的代謝を増進するために2,4−ジクロロフェノキシ酢酸のような触媒を導入する工程をさらに含む。実施例6において、実施例3〜5のいずれかの方法は、好気的代謝および炭水化物の形成を増進するために、COを添加する工程をさらに含む。
【0008】
実施例7において、実施例3〜6のいずれかにおける酸素欠乏状態を生じさせる工程は、前記セル内に酸素欠乏水を有することを含み、含酸素状態を生じさせる工程は前記セル内に含酸素水を有すること含む。実施例8において、実施例7の酸素欠乏水は保持され、別の酸素欠乏状態を開始するために、少なくとも1回は再使用される。実施例9において、実施例3〜8の方法のいずれかにおける前記植物は複数のセルに配置され得、酸素欠乏水は、酸素欠乏水中のエタノールの濃度を増大させるために、前記セル間を移送され得る。
【0009】
実施例10において、実施例3〜9のうちのいずれかの方法は、好気的過程中における炭水化物の生成を増進するために、前記セルに植物栄養素を導入する工程をさらに含む。実施例11において、実施例3〜10のうちのいずれかの方法は、生化学産業において水生植物供給材料として使用可能にするため、または新たなセルに播種するために、過剰な、または老化した植物物質を除去する工程をさらに含む。実施例12において、実施例3〜11のいずれかの方法は、ヒルムシロ科(family Potamogetonaceae)からの水生植物を用いて実施され得る。
【0010】
実施例13は、水を収容したセルに水生植物を配置する工程と、前記植物による好気的過程を開始するために、前記セル内に含酸素状態を生じさせる工程と、前記水に酸素が侵入するのを防止するために、前記セルを密封バリアで被覆する工程と、前記水生植物による嫌気的過程を開始するために、前記セル内に酸素欠乏状態を生じさせる工程と、前記水からエタノールを分離する工程とを含む、エタノールの形成を誘発する方法である。前記水生植物は好気的過程中に炭水化物を形成し貯蔵する。前記水生植物は、前記嫌気的過程中における貯蔵炭水化物の代謝によって、大きさを増大してエタノールを放出する。実施例14において、実施例13の方法は水生植物大きさの増大を促し、かつエタノールの放出を促すために、酸素欠乏状態を生じさせる工程と含酸素状態を生じさせる工程とを繰り返すことをさらに含む。
【0011】
実施例15において、実施例13または14の方法は、前記セルに光が入ることを阻害するために、酸素欠乏状態中に前記セルを遮光カバーで被覆する工程をさらに含む。実施例16において、実施例15の前記セルを遮光カバーで被覆する工程は、暗期を定める。実施例17において、明期を定めるために、実施例15または16の遮光カバーは含酸素状態中に除去されて、前記セルを光に曝露する。実施例18において、実施例16または17における前記暗期は少なくとも2日間にわたって連続し、前記明期は、暗期に対して1:2未満の割合の継続時間を有する。
【0012】
実施例19において、実施例13〜18のいずれかの方法は、嫌気的代謝を増進するために2,4−ジクロロフェノキシ酢酸のような触媒を導入する工程をさらに含む。実施例20において、実施例13〜18のいずれかの方法は、ヒルムシロ科からの水生植物を用いて実施され得る。
【0013】
実施例21において、実施例3〜20のいずれかの方法は、前記セルに酵母を添加する工程をさらに含む。実施例22において、実施例3〜21のいずれかの方法は、酸素欠乏状態中における前記水生植物に隣接した植物廃棄物質の蓄積を防止するために、前記セル内において水の撹拌を生じさせる工程をさらに含む。
【0014】
実施例23は、水を収容したセルに水生植物を配置する工程と、前記植物による好気的過程を開始するために、前記セル内に含酸素状態を生じさせる工程と、前記セルに光が入ることを阻害するために前記セルを遮光バリアで被覆する工程と、前記水生植物による嫌気的過程を開始するために、前記セル内に酸素欠乏状態を生じさせる工程と、前記水からエタノールを分離する工程とを含む、エタノールの形成を誘発する方法である。前記水生植物は好気的過程中に炭水化物を形成し貯蔵する。前記水生植物は、前記嫌気的過程中における貯蔵した炭水化物の代謝によって、大きさを増大してエタノールを放出する。実施例24において、実施例23の方法は、水生植物大きさの増大を促し、かつエタノールの放出を促すために、酸素欠乏状態を生じさせる工程と、含酸素状態を生じさせる工程とを繰り返すことをさらに含む。
【0015】
実施例25において、実施例23または24の前記セルを遮光カバーで被覆する工程は、暗期を定める。実施例26において、明期を定めるために、実施例23〜25の遮光カバーは含酸素状態中に除去されて、前記セルを光に曝露する。実施例27において、実施例25または26における前記暗期は少なくとも2日間にわたって連続し、前記明期は、暗期に対して1:2未満の割合の継続時間を有する。
【0016】
実施例28において、実施例23〜27のいずれかの方法は、前記セルに酵母を添加する工程をさらに含む。実施例29において、実施例23〜28のいずれかの方法は、嫌気的代謝を増進するために、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸のような触媒を導入する工程をさらに含む。実施例30において、実施例23〜39のいずれかの方法は、酸素欠乏状態中における前記水生植物に隣接した植物廃棄物質の蓄積を防止するために、前記セル内において水の撹拌を生じさせる工程をさらに含む。実施例31において、実施例23〜30のいずれかの方法は、ヒルムシロ科からの水生植物を用いて実施され得る。実施例32において、実施例23〜31のいずれかの方法は、酸素が水に侵入するのを防止するために前記セルを密封バリアで被覆する工程をさらに含む。
【0017】
実施例33は、エタノールの形成を誘発する方法であり、該方法は、水を収容したセルに水生植物を配置する工程と、前記水は含酸素状態を生じるように酸素を供給され(oxygenated)、かつ前記植物は明期を定めるように光に曝露される回復段階(recharge phase)を開始する工程と、前記水は酸素欠乏状態を定めるように酸素欠乏にされ、前記セルは暗期を定めるように光合成誘発光を奪われる移行段階(transition phase)を引き起こす工程と、前記植物を酸素欠乏状態かつ暗期に保持することによって、酸素欠乏段階(anoxic phase)を促進する工程と、植物によって前記水中に放出されたエタノールを捕捉する工程とを含む。前記明期は、前記植物による好気的代謝を通じて炭水化物形成を助長する。前記暗期は、前記植物が水中にエタノールを放出するように、前記植物による嫌気的代謝を助長する。実施例34において、実施例33の移行段階を引き起こす工程は、前記水に酵母を添加する工程をさらに含む。
【0018】
実施例35において、実施例33または34の回復段階は0.5日間〜12日間にわたって維持される。実施例36において、実施例33〜35のいずれかの移行段階は0.5日間〜6日間にわたって維持される。実施例37において、実施例33〜36のいずれかの酸素欠乏段階は少なくとも3日間にわたって維持される。
【0019】
実施例38において、実施例33〜37のいずれかの方法は、エタノールの放出を促すために、前記回復段階を開始する工程と、前記移行段階を引き起こす工程と、前記酸素欠乏段階を促進する工程とを繰り返す工程をさらに含む。実施例39において、実施例33〜38のいずれかの方法は、暗期を定めるために前記セルに光が入ることを阻害するために、酸素欠乏状態中に前記セルを遮光カバーで被覆する工程をさらに含む。実施例40において、実施例33〜39のいずれかにおける前記暗期は少なくとも2日間にわたって連続し、前記明期は、暗期に対して1:2未満の割合の継続時間を有する。実施例41において、実施例33〜40のいずれかの方法は、嫌気的代謝を増進するために2,4−ジクロロフェノキシ酢酸のような触媒を導入する工程をさらに含む。実施例42において、実施例33〜41のいずれかの方法は、酸素欠乏状態中における前記水生植物に隣接した植物廃棄物質の蓄積を防止するために、前記セル内において水の撹拌を生じさせる工程をさらに含む。実施例43において、実施例33〜42のいずれかの方法は、ヒルムシロ科からの水生植物を用いて実施され得る。
【0020】
実施例44において、実施例33〜43のいずれかにおける前記暗期は少なくとも2日間にわたって連続し、前記明期は、前記暗期中に失われた炭水化物含量を補充するのに必要である継続時間を有する。実施例45において、実施例33〜44のいずれかの前記回復段階は、前記酸素欠乏段階の間に失われた消耗した炭水化物を再構築するように維持される。実施例46において、実施例33〜45のいずれかの移行段階は2日間〜6日間にわたって維持される。実施例47において、実施例33〜46のいずれかの酸素欠乏段階は少なくとも6日間にわたって維持される。
【0021】
実施例48において、実施例33〜47のいずれかの移行段階を引き起こす工程は、前記水に酸素低減(oxygen reducing)酵母、細菌または酵素を添加する工程を含む。実施例49において、実施例48の方法は、酸素欠乏状態を増進するために、前記移行段階中に炭水化物源を添加する工程をさらに含む。
【0022】
このように、後続する本開示の詳細な説明が一層よく理解され得るために、かつ当業への本貢献がより良好に認識され得るために、本開示のより重要な特徴をかなり大まかに概説してきた。以下に記載する本開示の付加的な特徴が存在し、それらは本願に添付される特許請求の範囲の主題を形成するであろう。
【0023】
本開示の目的は、本開示を特徴付ける新規の様々な特徴と共に、本開示に添付されその一部を形成する特許請求の範囲に詳細に説明されている。
本開示の以下の詳細な説明を検討すれば、本開示は一層よく理解され、上述したもの以外の目的が明らかになるであろう。そのような説明は添付の図面に言及する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本開示の実施形態に従ったエタノールの生成および水生植物の成長を促す方法の概略図。
【図2】本開示の実施形態に従った水生植物からエタノールを分離するためのシステムの概略図。
【図3】本開示の実施形態に従ったエタノールの生成および水生植物の成長を促す方法の概略図。
【図4】本開示の実施形態に従った水生植物からエタノールを分離するためのシステムの概略図。
【図5】本開示の実施形態に従った水生植物からエタノールを分離するためのシステムの概略図。
【図6】本開示の実施形態に従った水生植物によって生成された糖類からエタノールを得る方法の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ここで、図面、具体的には図1および図3を参照すると、本開示の実施形態の原理および概念を具体化し、参照数字20によって全体を示された新たなエタノール生成方法が記載されている。図3は、図1のより詳細な概略図である。図2、図4および図5は、方法20に基づいた様々なシステム30,40,50を示している。
【0026】
図1および図3に示されるように、エタノール生成および水生植物の成長を促す方法20は、概して、1つ以上のセルにおいて水生植物を栽培することを含む。水生植物からエタノールを分離するためのシステムは、本願において、下記に述べる方法に基づいて提供される。前記水生植物は、前記植物を湖または池から採取して、それらの植物をタンク内で栽培するか、またはそれらの植物を前記セル内で直接栽培するといったような任意の従来の方法で、入手され、前記セル内に配置され得る。方法20が実施される場合、該方法は、水生植物は将来のセルに必要とされるか、または補充の目的で必要とされるのに応じて、水生植物を成長させて提供するために用いられる。前記セルに用いられる水の種類は、植物の種類によって変化するが、淡水、塩水、および半塩水はすべて様々な実施形態に適している。
【0027】
各セルは水を保持するように構成され、セルを支持する地面への流体および気体の移動を防止するために内張りされていてもよいし、内張りされていなくてもよい。前記セルは1つ以上の水生植物を保持するような寸法に形成されている。前記セルの寸法は、用いられる水生植物の大きさおよび種類、ならびに選択された水生植物が制限されることなく適切に成長するのに必要とされる深さに依存するであろう。各セルの深さは約10cm〜約20m(例えば、10cm〜100cm、50cm〜1m、100cm〜1m、500cm〜3m、1m〜5m、4m〜10m、5m〜7m、5m〜10m、または10m〜20m)にわたり得る。深さにおいて変則的に高い水温のような他の環境要因を提供する劇的に深い深さにおいて成長し得るいくつかの植物が存在することが分かっている。例えば、リュウノヒゲモは、熱水噴出孔(thermal vents)が北米の湖においてそのような深さで典型的に見られるよりも少なくとも暖かい水を提供する20mを超える水深において成長することが示されている。
【0028】
セルの幅および長さは該システムには重要ではない。前記セルの幅および長さは等しい必要はなく、該システムに用いられる植物の数および種類に適応するように調節され得、さらにセル形状、利用可能な土地面積、原材料へのアクセス、および原価管理に依存し得ることが理解されるべきである。セルが単一の植物を保持する寸法に形成される場合、該システムにおいて2つ以上のセルを備えることが有利であることがある。
【0029】
前記セルはまた温度制御されてもよく、具体的には、前記セルは、水生植物を枯らしてしまうことがある凍結を避けるべきである。前記セルのための熱は、隣接するエタノール処理プラントによって放出される廃熱または他の好都合な廃熱の供給源から捕捉されてもよい。地熱および太陽のような付加的な熱源も、好都合な場合には用いられてもよい。一実施形態において、汚水処理施設または電力施設(electricity facility)から退出する水が、温度を調節するため、および水生植物に付加的な栄養分を与えるための双方に用いられ得る。加えて、特に高温気候では、前記セルは、そうでなければ植物に害を与える温度を防止するために、冷却を必要とし得る。用いられる水生植物の品種に依存して、植物成長およびエタノール生成を最適化する温度範囲は選択され得る。例えば、成長およびエタノール生成のための全温度範囲ははるかに広い範囲にあることが理解されるはずであるが、リュウノヒゲモのようないくつかの選択された植物は、最適な成長には華氏85度〜華氏73度に維持され得る。温度を制御する1つの手法は前記セルを地中に埋めることであり、地中ではセルの周りの土はセルの温度を緩和するであろう。
【0030】
前記セルには、基材、例えば微小粒状物(fine particulate)が入れられ、前記水生植物は前記セル内に導入される。前記セルにおいて、前記水生植物は前記粒状物に自身を固着することができる。微小粒状物は、該微小粒状物が粒状物内への根の成長に対する水生植物の側のエネルギー消費の低減を促進し、微小粒状物の表面より上方の植物物質のより高い割合を維持するように用いられる。
【0031】
しかしながら、方法20によって用いられる植物の多くは、固着手段(anchoring means)として主にそれらの根系に頼っており、従って、根によって係合され得る任意の種類の固着機構(anchoring mechanism)または基材が用いられてもよい。加えて、セル内の水流がより頑丈な固着基材を必要とする場合には、より稠密な粒状物が有用であり得る。したがって、本願において提供されるシステムのセルは、根が係合してそれら自身を連結し得る格子またはスクリーンのような機械的固着装置を備え得る。
【0032】
水生植物は、直接水中で、または恒久的な飽和土のような水生環境中または同環境上で容易に生息する様々な水生植物から選択され得る。より一般的に、「水生植物」という用語は任意の藻類、水生植物、または氾濫期中に絶えず水没するか、または断続的に水没するかのいずれかに対して高い耐性を有する半水生植物を含み得る。さらに、単一セル内に二種類以上の水生植物が用いられてもよい。
【0033】
前記水生植物としては、例えば、リュウノヒゲモ(Stuckenia pectinata)(以前にはポタモゲトン・ペクチナトゥス(Potamogeton pectinatus)として知られている)、エビモ(Potamogeton crispus)、ヒルムシロ(Potamogeton distintcus)、 ポタモゲトン・ノドスス(Potamogeton nodosus)、カワツルモ(Ruppia maitima)、ホザキノフサモ(Myriophyllum spicatum)、クロモ(Hydrilla verticillata)、オオカナダモ(Elodea densa)、スギナモ(Hippuris vulgaris)、アポノゲトン・ボイビニアヌス(Aponogeton boivinianus)、アポノゲトン・リギディフォリウス(Aponogeton rigidifolius)、アポノゲトン・ロンギプルムロスス(Aponogeton longiplumulosus)、ディディプリス・ディアンドラ(Didiplis diandra)、ジャワモス(Vesicularia dubyana)、ハイグロフィラ・アングスティフォリア(Hygrophilia augustifolia)、ラージパールグラス(Micranthemum umbrosum)、エイクホルニア・アズレア(Eichhornia azurea)、アメリカ半夏生(Saururus cernuus)、クリプトコリネ・リングア(Cryptocoryne lingua)、ヒドロトリケ・ホトニフローラ(Hydrotriche hottoniiflora)、オランダプラント(Eustralis stellata)、バリスネリア・ルブラ(Vallisneria rubra),ハイグロフィラ・サリチフォリア(Hygrophila salicifolia)、シペルス・ヘルフェリー(Cyperus helferi)、クリプトコリネ・ペッチー(Cryptocoryne petchii)、バリスネリア・アメリカーナ(Vallisneria americana)、バリスネリア・トルータ(Vallisneria torta)、ヒドロトリケ・ホトニフローラ(Hydrotriche hottoniiflora)、クラウスラ・ヘルムシー(Crassula helmsii)、キクモ(Limnophila sessiliflora)、ヒロハノエビモ(Potamogeton perfoliatus)、ロタラ・ワリッキー(Rotala wallichii)、クリプトコリネ・ベケッティ(Cryptocoryne becketii)、ブリクサ・アウベルティ(Blyxa aubertii)およびハイグロフィラ・ディフォルミス(Hygrophila difformmis)のような、しかしこれらに限定されない藻類、沈水生草本(submersed aquatic herbs)、スピロデラ・ポリュリザ(Spirodela polyrrhiza)、ミジンコウキクサ(Wolffia globosa)、ヒンジモ(Lemna trisulca)、イボウキクサ(Lemna gibba)、コウキクサ(Lemna minor)、およびヒメウキクサ(Landoltia punctata)のような、しかしこれらに限定されないウキクサ、ボタンウキクサ(Pistia stratiotes)のような、しかしこれらに限定されないウォーターキャベツ、ラナンキュラスのような、しかしこれらに限定されないキンポウゲ、トラパ・ナタンスおよびトラパ・ビコルニスのような、しかしこれらに限定されないオニビシ、ヨザキスイレン(Nymphaea lotus)、スイレン科植物(Nymphaeaceae)およびハス科植物(Nelumbonaceae)のようなスイレン(water lily)、ホテイアオイ(Eichhornia crassipes)、ボルビティス・ヒュデロッティ(Bolbitis heudelotii)およびカボンバ(Cabomba)のような、しかしこれらに限定されないウォーターヒヤシンス、並びに、ヘテランテラ(Heteranthera zosterifolia)、ポシドニア科(Posidoniaceae)、アマモ科(Zosteraceae)、トチカガミ科(Hydrocharitaceae)およびシオニラ科(Cymodoceaceae)ような、しかしこれらに限定されない海草が挙げられ得る。さらに、様々な実施形態のうちの1つにおいて、宿主藻類は、緑藻類、紅藻類、褐藻類、珪藻類、海藻類、淡水性藻類、単細胞藻類、多細胞藻類、海草、低温耐性藻類(cold-tolerant algal strains)、熱耐性藻類(heat-tolerant algal strains)、エタノール耐性藻類(ethanol-tolerant algal strains)およびそれらの組み合わせのうちから選択され得る。
【0034】
前記水生植物一般はまた、ヒルムシロ科(Potamogetonaceae)(例えばスツッケニア(Stuckenia))、マツモ科(Ceratophyllaceae)、アリノトウグサ科(Haloragaceae)およびミカン科(Ruppiaceae)を含む植物の科のうちの1つから選択されてもよい。より具体的には、選択された水生植物は、嫌気性CO生成の好気性CO生成に対する比を増大させる大きなパスツール効果を有するべきである。典型的には、この比は1:3のオーダーであが、例えば、以前には、また時としてポタモゲトン・ペクチナトゥス(Potamogeton pectinatus)とし知られており、一般的にはサゴ・ポンドウィード(Sago Pondweed)として知られているリュウノヒゲモ(Stuckenia pectinata)のような水生植物は、「Anoxia tolerance in the aquatic monocot Potamogeton pectinatus: absence of oxygen stimulates elongation in association with an usually large Pasteur effect」、Journal of Experimental Botany、第51巻、第349号、第1413〜1422頁、2000年8月の中で説明されているように、この比を2:1に増大し得る。暗い酸素欠乏環境において起こる伸長過程の間に、植物の細胞の室は、水生植物の好気的過程を通じて好気的代謝中に形成される炭水化物を貯蔵するために伸長する。次に、これらの炭水化物は、水生植物の嫌気的過程を通じて、嫌気的代謝の間にエタノールを放出するために用いられ得る。概して、反応式は以下の通りである。
【0035】
好気性植物代謝:6CO+6HO→6O+C12
嫌気性植物代謝:C12→2CO+2COH
水生植物がセル内に定着したならば、前記水生植物では貯蔵された炭水化物のエタノールへの代謝を促進する嫌気的過程が開始される。一実施形態において、前記嫌気的過程は、前記セルにおいて酸素欠乏状態(また本願において嫌気状態(anaerobic condition)とも称される)を生じさせることによって、開始または促進される。「酸素欠乏の(anoxic)」という用語は、本願では、植物を嫌気的代謝状態に入らせるか、またはその状態を維持するようにさせる酸素枯渇のレベルとして定義される。したがって、酸素欠乏状態は、植物における嫌気的過程または代謝を促進するように植物中の細胞内酸素のレベルを低下させるか、または維持するのに十分であり得る。
【0036】
前記セルにおいて酸素欠乏状態を生じさせるためのいくつかのアプローチが存在し、各アプローチは独立して用いられてもよいし、または1つ以上の他のアプローチと組み合わせて用いられてもよい。一実施形態において、酸素欠乏状態は、セルに収容されている水中の酸素濃度を激減または低下させることによって生じさせられる。これは、有機的、化学的、または機械的手段を用いることによって、酸素が大幅に枯渇した(すなわち、酸素欠乏にされた)セルに水を導入することによって行われてもよい。これはまたセルに収容されている水から酸素を除去することによって行われてもよい。「酸素欠乏の」という用語は、恐らく非常に小量の酸素は水中に溶解されるので、必ずしも酸素が水中に完全にないことを示すわけではない。
【0037】
本発明のこの実施形態および他の実施形態は多数のセルを有して実施することができ、酸素欠乏状態と含酸素状態とを交替させるために、必要に応じて、前記セル間で酸素欠乏水および含酸素水が循環させられる。例えば、多数のセルを用いるプロセスは、2%まで(例えば0.1%、0.2%、0.3%>、0.4%>、0.5%、0.75%、1.0%、1.25%、1.5%、または1.75%)のエタノールを含有する酸素欠乏水を有する第1セルを備え得る。前記酸素欠乏水は、予め酸素を供給されている第2セルに移動される。前記酸素欠乏水は、第2セルの除去された含酸素水に置き換わって、第2セルに酸素欠乏状態を生じさせる。次いで第2セル内では、植物成長およびエタノール生成が促される。第2セル中に元々エタノールを有していることは(前記酸素欠乏水は第1セルの嫌気的過程からのエタノールを含有しているので)、水生植物が水中のエタノールを検知した場合に、エタノールの生成をさらに促進し得ることが注目される。エタノール濃度は、第2セルにおいて、例えば4%まで(例えば、0.5%、0.75%、1.0%、1.5%、1.75%、2.0%、2.5%、3.0%または3.5%)増大させてもよい。酸素欠乏水が新たなセルに移動される毎に、それらの植物の伸長およびエタノールの生成が促される。酸素欠乏水のエタノール濃度が、例えば、体積で10%>(例えば1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%または9%)のような所定レベルに到達したならば、前記酸素欠乏水は前記セルから取り出されて、従来の手段を用いて前記水からエタノールが抽出される。
【0038】
これに代わって、またはこれに加えて、酸素レベルを激減させるために、酸素および糖を消費すると同時に二酸化炭素を生成するトウモロコシ、酵母、細菌(例えば遺伝子組み換え細菌および/または発酵を行うことができる細菌)または酵素のような酸素低減添加剤を前記セルに添加してもよい。酸素レベルの激減を増進するために、酸素低減添加剤によって使用することを目的として二次的な炭水化物源、例えばトウモロコシ、糖蜜、小麦、他の糖供給源を前記水に添加してもよい。前記二次的な炭水化物源は、前記システムから相当量の酸素を除去するのに十分に強力な反応を起こすために、酵母と共に添加され得る。酸素の低減の1つの利点は、酸素低減添加剤によるエタノールの付加的な生成であり得る。
【0039】
水中における十分な酸素の不足は、水生植物に炭水化物を代謝させてエタノールを生成させる水生植物における嫌気的過程を開始する。前記エタノールの生成は、化学触媒およびCOの導入によってさらに促されてもよい。適当な化学触媒としては、酢酸および2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(一般的に2,4dとして知られている)が挙げられる。COは、例えば、電力施設(electricity facilities)および石油精製装置のような廃棄物源から得られ得る。水生植物の成長を増進するために、付加的な栄養分、およびカリウム、窒素およびリンの塩のような塩がさらに添加されてもよい。さらに、用いられている水生植物の種によって、スクロース、グルコースおよびアセテートのようなものを含むが、これらに限定されない、有機基質も前記セルに添加されてもよい。
【0040】
嫌気的過程の間に、前記水生植物は大きさを劇的に増大することができ、その元の長さの10倍以上の伸長を達成し得る。本願において「大きさ」という用語は、植物が大量の炭水化物を貯蔵できるようにする植物の体積増加を含むことが理解される。この伸長は、後に水生植物によって形成される炭水化物を保持するための付加的な細胞室の容積を提供する。加えて、嫌気的過程中に、エタノールは水生植物によって細胞内で生成され、細胞外に放出される。このエタノールは、その後、以下にさらに開示される方法によって取り出されるまで、前記セルの水中に保持される。
【0041】
この嫌気的過程は1日〜数日間にわたって行なわれ得る。ポタモゲトン・ペクチナトゥス(またはリュウノヒゲモ)の場合には、合計6日間で十分であり得るが、産生効率を最大にするために、14日間以内のようなより長い期間がより有用であり得る。必要な時間は、光拡散性、栄養分の有無、セルの大きさ、植物の大きさ、植物の品種、水温および植物の炭素含量のような多くの要因に依存するであろう。前記植物は、数週間にわたって酸素欠乏状態のままにされてもよい。前記時間の長さの決定は、主にエタノールの産生量を最大にすることに依存する。前記植物が、有益なパラメーターを超過して、そのエタノール生成を減少させた場合には、その植物を酸素欠乏状態に保持する必要はないことがある。さらに、水があまりにも酸性または塩基性になるのを防止するために、前記セルのpHを監視しなければならない。これは、炭酸カルシウムおよび塩素酸カルシウムのようなカルシウム緩衝化合物(calcium buffering compounds)によって、または(塩基性水への)COの導入によって中和され得るが、最終的には前記セル内の特定の水生植物種の耐性に依存するであろう。
【0042】
別の実施形態において、前記嫌気的過程は、植物に到達することを許容された光合成誘発光の量を調節することによって、開始および/または促進され得る。具体的には、嫌気的期間中に、前記セルは、光合成を助長する光源から遮蔽され得る。この光の欠如は嫌気的過程およびエタノールの放出を助長し、光合成による酸素の生成を防止する。前記セル内に暗状態を生じさせるために、前記光は任意の従来の方法によって調節されてもよい。当然のことながら、遮断されるべき「光」という用語は、光合成触媒として作用し、かつ各植物によって用いられる化学的受容体の種類に依存する放射の形態または光の波長のみに当てはまる。従って、本願において用いられる「暗」という用語は、光合成を増進する周波数の光が実質的に不在であることを示すことが意図される。
【0043】
光合成誘発光を水生植物に到達するように調節する(例えば、選択的に遮蔽する/許容する)ための様々な手段が用いられ得る。そのような手段としては、例えば、少なくとも嫌気的過程中に光バリアとして機能するバリア、カバー、ドームまたは他の包囲構造が挙げられる。これらの前述のバリア、カバーなどは、水生植物を嫌気状態に維持することがもはや望まれない場合には、取り外し可能であり得る。一実施形態において、前記セルは、ヒトには可視であるが植物に対しては「暗」状態を促進する光によって照明される。他の適当な調整手段としては、光合成誘発光を拡散する光フィルタが挙げられる。嫌気状態が所望されない場合に、暗状態を維持するため、および/または選択的に光合成を可能にするために、人工光源が用いられてもよい。
【0044】
更に別の実施形態において、前記嫌気的過程は、前記セルを1つ以上の密封バリアによって被覆して、前記セルに出入りする気体(例えば空気、酸素、CO、窒素、気化エタノールなど)の移動を調節することによって促進され得る。例えば、密封バリアは、前記セル内への酸素の不要な導入を防止し得る。特にCOが前記セルへ添加されている場合には、前記密封バリア(または付加的な密封バリア)はCOを前記セル内に保持するためにも用いられ得る。加えて、高いNレベルは、水中または前記シールとセルとの間に捕捉されている任意のOをさらに希釈するために同様に維持されていてもよい。密封バリアは、前記セルと隣接する大気との間における流体連通を防止するために前記セルをシールするであろう。これは酸素が前記セルに入ることを阻害し、嫌気的過程を助長するであろう。前記密封バリアは、前記水生植物に光を提供するために自然におよび/または人工的に用いられる光源からの放射熱の捕捉を助長する半透明バリアであってもよい。前記密封バリアはまた、上記で検討したように、光が嫌気的過程中に前記セルに光が入るのを防止するために前記セル上に配置される遮光バリアも構成してもよいし、または構成しなくてもよい。前記密封バリアおよび遮光バリアは、従来の材料で製造され得る。しかしながら、前記セルのまわりに構成されたドエリング、タンク、ドームまたは他の構造はまた、それらがそのような能力において用いられるならば、シーリングおよび遮光バリアを画定し得ることも理解されるに違いない。
【0045】
一実施形態において、上述した嫌気的過程は、好気的過程によって先行されるか、後続されるか、または好気的過程と交互に行われる。好気的過程は、前記セル内に含酸素状態を生じさせることによって、水生植物において開始および/または促進される。前記含酸素状態は、水生植物による炭水化物の生成および貯蔵を促進する。この含酸素状態は、様々なアプローチによって生じさせ得る。そのようなアプローチは独立して用いられてもよいし、または組み合わせて用いられてもよい。一実施形態において、前記セルに含酸素水を添加するか、または、前記セルに収容されている水に酸素を直接導入する。別の実施形態では、気体バリアを除去して、水の酸素濃度が自然に増大することを可能にする。従って、前記含酸素状態は、前記セルに含酸素水を導入すること、酸素欠乏水を除去すること、および/または植物の酸素の放出および含酸素雰囲気への曝露によって前記水が自然に酸素を供給されることを可能にすることによって達成され得る。
【0046】
独立して用いられてもよいし、または他の実施形態と組み合わせて用いられてもよい更に別の実施形態において、水生植物は、光合成を誘発し、前記セル内において含酸素状態を許容することによって嫌気的過程を停止するために、光に曝露される。これは好気的過程を開始および/または促進する。この「明状態」は本願で検討する光調整手段およびシステムを操作することによって行われ得る。例えば、天然または人工の光合成誘発光が水生植物に到達できるように、光バリア、カバー、フィルタなどが除去され得る。これに代わって、またはこれに加えて、光バリアは依然として有効であってもよく、人工光源は光合成誘発光が水生植物に到達できるように調整される。
【0047】
好気的過程中において、水生植物に栄養分を提供するために、方法10からの廃バイオマス、産業廃棄物、都市廃棄物などのような廃棄物が前記セルへ添加されてもよい。加えて、最大の日光/人工光の濾光は、水生植物の成長を促進するための温度制御になるので望ましい。光自体は人工光の追加によって強められてもよい。
【0048】
一般に、明期は、水生植物が糖を形成することを可能にするために、1/2日〜15日間、より一般的には少なくとも3〜6日間にわたって継続されるが、この時間枠は植物に特異的な要件に対して調節され得る。さらに、明期中の光は、植物の健康および炭水化物の生成を維持するために、用いられる植物種に適当な光周期を提供するように調節され得る。好気的過程の間に、上記に示したように、水生植物は代謝プロセスを通じて炭水化物を形成し、次いで、それらの伸長した構造内に炭水化物を保持する。好気的過程の継続時間は、同様に多くの因子に依存するが、典型的には、炭水化物の生成が遅くなり始めるか、または所定レベルに達したときに終了する。これは、ポタモゲトン・ペクチナトゥス(リュウノヒゲモ)では、セル内の環境条件に依存して、2日間〜14日間であり得る。
【0049】
明状態および暗状態の操作が、水生植物がエタノールおよび糖を生成する方法に影響を与え得ることが具体的に判明した。例えば、いくつかの水生植物は、明期を定める連続した数日間にわたって光に晒され、その後、暗期を定める連続した数日間にわたる光の制限が後続して、嫌気的なエタノール生成プロセスを促進する。一実施形態において、暗状態は、嫌気状態の開始と同時に、または開始の少し前もしくは後に、好ましくは互いに3日間以内に、生じるように設定される。ある植物、すなわちリュウノヒゲモは、約6日間以内の明期を有することが示されており、前記明記の後には、前記植物の糖の生成は、横ばい状態となるか、または所定の最適レベルに到達する。「日」という用語は24時間として定義される。この植物は約2日〜30日間の暗期を有し、その暗期の間に、前記植物は嫌気的過程に入って、エタノールを生成し得る。一般に、明期対暗期の比率は、1:2以下、かつ1:10程度であり、より一般的な比率は1:2〜1:7である。当然のことながら、明期および暗期の双方の間に、糖の生成およびエタノールの生成の双方を助長するために、前記水にCOが添加されてもよい。最終に、特定の植物は4時間未満の暗期の後にエタノールの生成を経験することもあるので、本願に記載した上記の明期および暗期を制御する能力および比率はすべての水生植物に適用可能なわけではない。これらの種類の水生植物については、明期対暗期の比が2:1より大きくてもよいが、そのような水生植物は、エタノール生成に関して、リュウノヒゲモのような植物によって経験されるのとは異なる制限を有し得る。
【0050】
一旦、最大の炭水化物生成、または所定レベルの炭水化物生成に近づいたならば、嫌気的過程が再び開始されて、炭水化物代謝およびエタノール生成のプロセスを開始する。上述したプロセスは嫌気性期によって開始し、その後に好気性期が後続するが、前記セル内に水生植物を定着させた後に、いずれの期を最初に開始してもよいことが理解されるであろう。前記酸素欠乏状態および含酸素状態を生じさせる工程は、伸長およびエタノール生成、およびそれに後続する炭水化物の生成を継続的に増進させるために、繰り返され得る。これは、植物成長が、植物老化に失われる植物、およびエタノール生成の確立された耐性にもはや合致しないそのような植物の双方を補充するように、自立したサイクルを形成する。補充目的のため、または別のセル用の植物物質の供給のために用いることができない付加的な植物成長物は、従来の方法を用いて、取り出され、発酵させられて、またエタノールを生成してもよい。発酵過程中に放出される二酸化炭素は捕捉され、炭水化物生成を促進するために前記セルに戻され得る。植物廃棄物は、発酵過程の前または後の双方において、セルへの栄養分の補充のために供給材料としてさらに用いられてもよいし、および/または、エタノールおよびディーゼル生物燃料、医薬品、化粧品、着色材、塗料などにおいてのような生化学工業的用途のために加工されてもよい。明期が終了するときに、含酸素段階と酸素欠乏段階との間に、酸素の量が消耗されていく移行段階が存在してもよい。移行段階の間に、前記セルに酸素の低減を促す酵母を添加して、前記酵母がエタノールを生成させることは有用であり得る。酵母によって形成されたエタノールは、植物による嫌気的活性の触媒として作用し、付加的なエタノール生成量(production outlet)を提供するであろう。酵母と共に添加された糖または他の炭水化物もまた嫌気的活性をさらに高め得る。
【0051】
この3つの部分のサイクルは、より広くは、1)水は酸素を供給され、かつ/または炭水化物が形成されるように、植物が光に曝露される回復段階と、2)水は酸素欠乏にされており、前記セルは光合成誘発光を奪われており、かつ/またはエタノールを形成し、酸素を消耗するために、酵母が添加され得る移行段階と、3)植物がエタノールを放出する嫌気的過程に入る酸素欠乏段階とを含むと定義され得る。第4期は、水が再び酸素を供給されるようになる第2移行段階として定義されてもよい。前記期は各々、植物成長およびエタノール生産量を最大にするために、本願において教示されるように変更されてもよい。1つの方法において、回復段階は0.5〜12日間にわたって行われてもよく、その後0.5〜6日間の移行段階が後続し、次に少なくとも6日間の酸素欠乏段階が後続する。前記酸素欠乏段階は植物の種類に依存して20日を超えて増大されてもよい。別の方法においては、回復段階は3〜6日間にわたって行われ、その後2〜6日間の移行段階が後続し、次に少なくとも6日間の酸素欠乏段階が後続する。前記酸素欠乏段階は植物の種類に依存して20日を超えて増大されてもよい。
【0052】
植物成長を増進し、エタノールの生成をさらに促すために、付加的な工程が取られてもよい。例えば、エタノール生成を増進し、水のよどみ、その結果として生じる水生植物の死滅を防止するために、水撹拌システムを用いて水を継続的に撹拌して、水生植物の周囲や水生植物を通る水の移動を促す。これは、エタノール、および植物に隣接する他の植物廃棄物質の蓄積を防止し、植物に栄養分をもたらす。水の撹拌が酵母のような水添加剤の懸濁を増進することがさらに判明した。撹拌システムは、植物を介した波動運動または植物を通る水の持続的流動(sustained flow)のいかなる形態であってもよい。そのような水移動システムは、水がセルから送られるか、そうでなければ導かれた後で、かつその水がセルに戻される前に、水からエタノールをとり出す循環ループに流動可能に接続(fluidly coupled)され得る。いくつかの実施形態では、そのようなシステムにおいて水が前記セルの外部に位置する間に、栄養分、抗生物質、O、CO、酵母または任意の他の必要なまたは望ましい添加剤が前記水に添加されてもよい。加えて、循環ループはまた、水からOを除去して、水を酸素欠乏にするために用いられてもよく、その後、前記水はセルに戻されて、酸素欠乏状態を生じさせる。
【0053】
水生植物の生活環の制御が水生植物の寿命の延長に有用であり得ることも判明した。具体的には、水生植物のうちの一部の寿命はそれらの植物の開花後に終了する。これは、それらが開花し得る前に、水生植物の上部を切断することによって阻むことができる。そのような切断は、水生植物の一部が水の表面に達して開花するのを止めるであろう。前記植物は、死んだ植物物質を除去し、セル内への適当な光拡散を可能にするために前記セルを間引くために、全体的に切断されたり、部分的に採取されたりしてもよい。前記セルに栄養を補充するために、切断した物質を前記セル内に残したままにしてもよい。
【0054】
方法20が実施されている間に、細菌および水の華が生じることがあり、これらは、抗生物質、重亜硫酸塩、ホップ、殺藻剤、塩素処理、紫外線暴露および他の慣例によって制御することができる。しかしながら、方法20は、セル内の細菌増殖を助長する遊離炭水化物、特に単糖類、を生成することが分かっている。このため、炭水化物濃度を低下させて、細菌増殖を阻害する目的で、前記セルにエタノール生成酵母を導入することが有用であることが判明した。これに代わって、または酵母と共に、炭水化物濃度を低下させるために酵素または細菌も用いられ得る。酵母の添加の有用な結果はエタノール生成量の増大である。嫌気的過程でのように、このプロセスの一般式は、C12→2CO+2COHであり、当業において周知である。これは用いられる酵母の菌株に依存するが、前記酵母は、特に酸素欠乏状態が確立されて約3日間を超えて維持された後には、補充を必要とし得る。酵母をより強く反応させるために二次的な炭水化物源をシステムに追加してもよい。
【0055】
図6は、酵母からエタノールを収集する方法100を示している。方法100は、概して方法20に基づき、本願に記載するシステム30,40,50を用いて行なわれ得る。方法100は、概して、セル内に水生植物を定着させる工程と、前記セルに酵母を導入する工程と、前記植物による遊離炭水化物(例えば単糖類)の生成を助長するために嫌気状態を開始する工程と、前記酵母が前記遊離炭水化物をエタノールに変換することを可能する工程と、前記エタノールを収集する工程とを含む。この方法100は、エタノールを生成および収集ための単独の手段として用いることもできるし、または、エタノールを生成および収集するための本願に記載した他のプロセスと共に用いることもできる。
【0056】
前記嫌気状態は、方法100において、光合成誘発光が植物に到達するのを阻害することによる、または酸素が水に侵入するのを阻害することによるものを含めた、本願で検討したアプローチのいずれかにおいて開始され得る。いくつかの実施形態において、前記嫌気状態は、光合成誘発光が植物に到達するのを阻害すること、および酸素が水に侵入するのを阻害することの双方によって開始される。前記セルへの酵母の導入は、方法100の間の1つ以上の時点において行うことができる。
【0057】
炭水化物のエタノールへの酵母変換に主としてまたは完全に頼る方法100の実施形態において、前記植物は植物による炭水化物の放出をさらに助長するために切断または損壊され得る。いくつかの実施形態において、植物は茎または葉に沿って切断または損壊され得る。他の実施形態において、植物は根で切断され得る。植物は任意の適当な方法を用いて切断または損壊され得る。例えば、水生植物は、水中の雑草管理に用いられるものに類似した水中カッターを用いて切断することができる。いくつかの実施形態において、植物は炭水化物の放出を助長するために、切断することなく、破損または損壊され得る。例えば、水生植物は、くま手を用いて、破損または損壊され得る。
【0058】
いくつかの実施形態において、方法100は、植物中の炭水化物の貯蔵を促進するために好気状態を開始することを含む。好気状態は、方法100において、本願に記載する方法およびシステムを用いて、任意の適当な時点で開始することができる。例えば、好気状態は、遊離炭水化物が消耗されたとき、エタノール生成酵母が非効率になったとき、またはエタノール濃度が所定レベルに到達したときに、開始され得る。好気状態が開始される時点は、酵母菌株(例えばエタノール耐性または発酵効率)、植物の種類(例えばエタノール耐性、炭水化物貯蔵効率)、エタノール収集に用いられる装置などのような様々な条件に依存し得る。
【0059】
好気期間の後、例えば前記セルを自然光または人工光に曝露することによって、嫌気状態が再度開始される。いくつかの実施形態において、好気期間後に必要に応じて、水生植物および/または酵母は置き換えられてもよい。いくつかの実施形態において、方法100の酵母は発酵細菌によって置き換えられ得る。
【0060】
図2、図4および図5は、上記方法を行なうためのシステム30,40,50をそれぞれ示している。示したシステム30,40,50の各々からの構成要素および態様は、記載した方法20を実施するのに適当なように組み合わせられたり、追加されたり、除去されたり、または再構成されたりし得ることが理解されるべきである。
【0061】
図2は単一セルでの使用に特によく適した1つのシステム30を示しているが、このシステムは多数のセルによって用いられてもよいことも理解されるに違いない。このシステム30は、概して、水および少なくとも1つの水生植物61を収容するセル60と、セル60と流体連通しているエタノール除去アセンブリ66とを備える。セル60は地面またはドエリング基礎に埋め込まれていてもよく、部分的に埋め込まれたタンク構造または完全に地上に位置するタンク構造であってもよい。セル60はいかなる特定の形状を有してもよいが、セル60内の水の移動を促すには円形またはループ型セルが有用であり得る。前記水は従来の方法で移動されてもよいが、重力リフトシステムを用いるものは、必要な電力が低いためにより有用であることが判明し得る。システム30は、前記セルに出入りする酸素および/またはCOのようなガスの移動を阻害する1つ以上の密封バリア65をさらに備える。
【0062】
光合成光調節システム62は、前記セルへの光合成誘発光を選択的に許容/阻害するために用いられる。方法20に関して多くの光調整手段が検討され、それらのいずれも光調節システム62の全てまたは一部を構成し得る。例えば、光調節システム62は、1つ以上のセル60を覆う遮光カバーまたはバリアを備え得る。これに代わって、またはこれに加えて、光調節システム62は、セル60が囲まれるか、または収容される構造を備える。光調節システム62は、すべての光が該システムの植物に到達することを阻害することができるが、これは必要とされないことが理解されるべきである。むしろ、光調節システム62は、前記システムの植物において光合成を誘発する波長または強度における光のみを阻害してもよい。例えば、光調節システム62は、光合成を誘発しない波長のみを通過させるフィルタであり得る。光合成を誘発する波長の例としては、約380nm〜約710nmの波長が挙げられる。システム30に用いられる植物によって、光合成を誘発する波長の範囲は、より広くなったり、またはより狭くなったりし得るが、既知の方法を用いて確認することができる。一実施形態において、密封バリア65および光調節システム62は、分離可能であっても、分離可能でなくてもよい単一構造を構成する。
【0063】
光調節システム62は、好気的代謝中のようなある時点においては光合成誘発光を許容するか、または好気的代謝を誘発するが、嫌気的代謝中のような他の時点においては光合成誘発光を阻害するか、または嫌気的代謝を誘発するように、調整可能に構成され得る。例えば、光調節システム62は取り外し可能で有り得る。別の実施例において、光調節システム62は、装置の不透明度または色が電流の印加によって制御することができるように、エレクトロクロミックであってもよい。いくつかの実施形態において、光調節システム62は、光合成誘発光および/または光合成を誘発しない光を提供するために、図5に示すような人工光源86を備えることができる。そのような人工光源86は、所望の状態のために適当な強度またはスペクトルにおける光を放出するように構成することができる。例えば、人工光源86は、嫌気的代謝の期間の間に、または嫌気的代謝を誘発するために、前記システムの植物に対して、強度の光または光合成誘発光の範囲外の波長を有する光を放出することができる。同様に、人工照明は、好気的代謝の間に、または好気的代謝を誘発するために、前記システムの植物に対して、光合成を誘発するための強度または波長の光を放出することができる。
【0064】
用いられる特定の水生植物61または植物に対する適温を得るために、熱交換器68のような熱源が用いられてもよい。他の適当な熱源として、従来の温水器、地熱エネルギー源、太陽エネルギー源、および従来の電力施設および石油設備からの廃熱が挙げられる。水は、ポンプ63によって、前記セルから取り出され、セル60とエタノール除去アセンブリとの間の流体連通を提供する閉ループシステム67を介して前記セルに再導入され得る。閉ループシステム67は、水を大気に晒すことなく、上記で検討したすべての添加剤が水に供給されることを可能にする水へのアクセスポイントを備え得る。これに代わって、セル60がアクセスポイントを備えてもよい。
【0065】
エタノール除去アセンブリ66は、水からエタノールを抽出および収集することができる様々なシステムおよびシステム構成要素を備え得る。例示した実施形態において、アセンブリ66は、水からエタノールを分離するように機能する1つ以上の空気ストリッパー(またガスストリッパーとしても知られている)64を備える。ガスストリッパー64(例えば、大気、NまたはCOに基づくガスストリッパー)は、エタノール蒸気を捕捉するための凝縮器72、前記蒸気を精製するための分子篩70、および/または、エタノールを貯蔵するための容器74のうちの1つ以上と流体連通している。所望により、浸透気化器(pervaporator)(図示せず)を用いることもできるだろう。アセンブリ66は、エタノールが、前記セルにおいて行なわれている嫌気的過程および好気的過程を中断することなく、連続的に取り出されることを可能にする。ガスストリッパー64はさらに、前記水へのCO、窒素および栄養分の導入を同様に可能にするために用いられてもよい。前記セル60に水を戻して導入する前に、不要な細菌や藻類成長のない健全なセル60を維持するために、前記水を紫外線および/または抗生物質に晒してもよいし、また殺藻剤が添加されてもよい。いくつかの実施形態では、エタノール貯蔵コンテナ74は、使用または輸送のためにエタノールを分配するためのアセンブリ(図示せず)と置き換えられる。
【0066】
図4は、全体的な構造および機能においてシステム30に類似しているが、2つ以上のセル60A,60Bを備えるシステム40を示しており、それらのセルの一部または全部は互いに直接的または間接的に流体連通して接続されている。セル60A,60Bは任意の適当な手段によっても接続することができる。いくつかの実施形態では、2つ以上のセルが共通の透過性壁によって接続される。別の実施形態では、2つ以上のセルが流体導管によって接続される。前記接続は切断可能であり得る。例えば、2つ以上のセルは、2つ以上のセル60A,60Bの間の流体連通を途絶させるために閉鎖可能な弁82を備えた管によって接続され得る。一部の実施形態において、セル60Aまたはセル60Bの一方は、流体導管を介して、セル60Aまたはセル60Bの他方に対する含酸素水または酸素欠乏水の供給源として機能する。
【0067】
いくつかの実施形態において、システム30で使用されたものに類似した閉ループシステム67は、エタノール除去アセンブリ66とセル60A,60Bとの間の流体連通を提供するように実施され得る。示されるように、セル60A,60Bおよびエタノール除去アセンブリ66は、セル60Bからの水がエタノール除去アセンブリ66に移送され、エタノールを抽出した後の残りの水はセル60Aに戻されるように接続される。代替の実施形態において、セル60Aおよびセル60Bの各々は、独立してエタノール除去アセンブリ66と流体連通し得る。
【0068】
システム30,40または50において使用され得る図4に示した付加的な構成要素は、エアレーター78、酸素除去装置76(例えば真空ポンプ)および/または、植物物質、基材および微生物(例えば酵母または細菌)のような粒状物質を除去するための1つ以上のフィルタ80を含む。図4に示すエタノール除去アセンブリ66は、図2に関して記載されたアセンブリと同様に機能し得る。
【0069】
図5は、セル60とエタノール除去アセンブリ66との間に、図2に示した閉ループシステム67に類似した閉ループシステム67を備えたシステム50を示している。前記システムは、ポンプ63によって循環ループ90を介して移動される水を処理するためエアレーター78および/または酸素除去装置76を有する循環ループ90をさらに備える。いくつかの実施形態において、酸素除去装置76は酸素欠乏水の供給源(図示せず)と置き換えられ、かつ/またはエアレーター78は含酸素水の供給源と置き換えられる。循環ループ90は、添加剤の導入のため、または水から酸素を除去するための構成要素を備えるように構成され得る。いくつかの実施形態において、循環ループ90における水の流量および方向を調節するために、循環ループ90には弁82が備えられる。循環ループ90はまたセル内の水を撹拌するように機能してもよく、または、別個の水撹拌機が前記セルに含まれていてもよい。先にシステム30に関して記載したように、システム50は、光調節システム62として機能する人工光源86を、単独で、または光バリアなどと共に備える。具体的には、人工光源86は明期中には光合成誘発光を提供し、かつ/または暗期中には光合成を誘発しない光を提供し得る。
【0070】
システム50のエタノール除去アセンブリは、ガスストリッパーの代わりに蒸留器84(例えば蒸留塔)が用いられている点で、図2および図4に示されたものと異なる。蒸留器および/またはガスストリッパーは、例示したシステムのいずれにおいても用いられ得る。例えば、ガスストリッパー64はエタノールの濃度が比較的低い地点のシステムに備えられ、一方、蒸留器84はエタノールの濃度がより高い地点のシステムに備えられ得る。エタノール除去アセンブリは、システムの任意の地点において、システム中の水からエタノールを除去するのに適当な任意の組み合わせで備えられ得る。いくつかの実施形態において、エタノール除去アセンブリはシステムの多数の地点において備えられ得る。
【0071】
更に別の実施形態において、例示したシステムのうちのいずれかのエタノール除去アセンブリは、1つ以上のエタノール吸収収集システム(absorptive collection systems)を、単独で、または本願に開示した他の構成要素のいずれかと組み合わせて用いることができる。概して言えば、エタノール吸収収集システムは、水および他の異物からエタノールを分離する膜または他の吸収技術を用いる。そのような膜の一例は、ベイパーマ ガス セパレーション ソリューションズ(Vaperma Gas Separation Solutions)製の「シフテク(Siftek)(商標)」膜である。
【0072】
システム30,40,50は様々な他のシステムと一体化されるか、または関連付けられ得る。例えば、システム30,40,50は、隣接するエタノール処理プラントまたは他の好都合な廃熱の供給源によって放出された廃熱を捕捉するように構成することができる。別の実施例において、システム30,40,50は、典型的には華氏約50度〜華氏約85度の安定した温度の水の一定した供給源を有する廃水処理プラントに関連付けられる。電力施設からの廃水も用いられ得る。廃水源に関連付けられる場合、セル60内の水は、廃水からの熱交換によって調節され得るか、または、廃水が初期の排水処理の前または後にセル60に直接用いられ得る。より高い温度を有する水源の提供に加えて、廃水源はまた植物成長に好ましい栄養濃度も有し得る。
【0073】
本願に記載したシステム30,40,50の様々な構成要素は、方法20を実施するために様々な組み合わせにおいて用いることができることは明らかであろう。加えて、水流の制御、微小粒状物の除去、水のパラメーター(例えばpH)の監視および/または維持、エタノール濃度の監視、プラントパラメータの監視および/または維持、植物の切断、損壊、または除去などのために、従来の構成要素が備えられ得る。例えば、本願において提供されるシステム30は、弁82、フィルタ80、光センサーおよび/またはメーター(例えば光合成有効放射センサー)、pH計、フォームスキマーなどのような構成要素を備えることができる。
【実施例】
【0074】
【実施例1】
【0075】
水生植物におけるエタノール生成
付着した塊茎を有する2本のリュウノヒゲモ植物を原料成長タンクから取り出して、35mLの煮沸蒸留水を有する試験管に個々に入れた。酸素欠乏状態を示すために前記水にはレサズリン試薬が含まれていた。これらの酸素欠乏試料を箔ラップ内に配置して、光合成誘発光が植物に到達するのを防止することにより暗状態を生じさせた。これは、植物細胞内の水が再度酸素を供給されるようになることを可能にするであろう。次に、細胞外試料水に再び酸素が供給されるのを防止するために、前記試料を、陽圧窒素雰囲気を有するチャンバ内に配置した。次に、前記試料をこのチャンバ内において華氏76度で3日間にわたってインキュベートした。4日目の朝に、各試料から2mLの水試料を取り出し、該試料をエタノールの存在を検出するために、サウスダコタ州立大学において高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析した。各試料におけるHPLCピークはエタノールが存在することを示した。
【実施例2】
【0076】
水生植物におけるエタノール生成に対する光および抗生物質の効果
リュウノヒゲモ植物試料をサウスダコタ湖から収集した湖の物質から得て、ガラス瓶内に配置し、酸素欠乏状態を提供するための煮沸蒸留水を、植物を被覆するだけ添加した。8つの試料D5−8、D11およびD14−16を、該試料に暗状態を提供するために、インキュベーター内の密封されたステンレス鋼ポット内に配置した。残りの試料D1−4、D9−10およびD12−D13を、エアロックを有する透明なプラスチッククォート容器内に配置した。細菌によるエタノールの酢酸への変換を防止するために、試料D9−D16には抗生物質を添加した。前記試料を華氏約69度のインキュベーター内に配置して7日間にわたってインキュベートさせた。エタノールおよび酢酸の濃度を測定するために、各試料からの水を取り出して、サウスダコタ州立大学で高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析した。
【0077】
暗状態において抗生物質なしでインキュベートされた4つの試料D5、D6、D7およびD8は、それぞれ、10.825g/L、6.817g/L、7.733g/Lおよび10.595g/Lの濃度でエタノールを含有していた。暗状態において抗生物質を有してインキュベートされた試料D11およびD14は、それぞれ、6.573g/Lおよび4.237g/Lのエタノール濃度を有した。さらに、試料D11は酢酸を含有していなかったが、試料D14は2.192g/Lの濃度で酢酸を含有していた。これは、試料14における抗生物質の量が細菌によるエタノールの酢酸への変換を防止するのに不十分だったことを示唆している。透明容器内でインキュベートした試料は検出可能なエタノールを含有していなかった。これは光合成が植物試料によるエタノール生成に干渉したことを示唆している。結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

上記の記載に関して、本開示によって可能となる実施形態の各部分に対する、大きさ、材料、形状、形態、機能、並びに操作、組み立ておよび使用の手法における変形物を含む、最適の寸法的関係は、当業者には容易に分かり、かつ明白であると考えられる。また図面に図示され、本明細書中に記載されたものと均等な関係にあるものはすべて、本開示の実施形態によって包含されることが意図される。
【0079】
従って、前述のものは、本開示の原理の実例に過ぎないものとみなされる。さらに多数の修正および変更が当業者によって容易に想到されるので、本開示を図示および記載された厳密な構造および操作に限定することは望ましくない。従って、すべての適当な変更物および均等物は、本開示の範囲内にあるならば用いられ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノールを収集する方法であって、
水を収容したセルに少なくとも1つの水生植物を定着させる工程と、
前記少なくとも1つの水生植物に光合成誘発光が到達することを阻害する工程と、前記少なくとも1つの水生植物に光合成誘発光が到達することを許容する工程とを交互に行う工程と、
前記セルに収容された水からエタノールを収集する工程と
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記光合成誘発光を阻害する工程は暗期を定める方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法は、更に、
前記暗期中に酸素を阻害する工程を含む方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法において、
光源と少なくとも1つの水生植物との間に配置された光合成光阻害装置は、光合成誘発光が前記少なくとも1つの水生植物に到達することを阻害する方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法において、
酸素源と前記少なくとも1つの水生植物との間に配置された密封バリアは、酸素が前記水に侵入することを阻害する方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法において、
前記セルと光合成光調節システムとの間に人工光源が配置される方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法は、更に、
前記水の酸素濃度を低下させる工程を含む方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法は、更に、
前記セルに酸素欠乏水を導入する工程を含む方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法において、
前記セルに収容されている水にCOを添加する工程を含む方法。
【請求項10】
水および少なくとも1つの水生植物を収容するセル中のエタノールを収集する方法であって、
前記少なくとも1つの水生植物における嫌気的過程を開始する工程と、
前記少なくとも1つの水生植物における好気的過程を開始する工程と、
前記セルに収容されている前記水からエタノールを収集する工程と
を含む方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、
前記嫌気的過程を開始する工程は、光合成誘発光が前記少なくとも1つの水生植物に到達することを阻害する工程を含む方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の方法において、
前記嫌気的過程を開始する工程は、酸素が前記水に侵入することを阻害する工程を含む方法。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法において、
前記エタノールを収集する工程の少なくとも一部は、前記嫌気的過程の間に行われる方法。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法において、
前記嫌気的過程を開始する工程は、前記水中に酸素欠乏状態を生じさせることを含む方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、
酸素欠乏状態を生じさせることは、前記セルに酸素欠乏水を導入することを含む方法。
【請求項16】
請求項10〜15のいずれか一項に記載の方法において、
前記嫌気的過程を開始する工程は、前記嫌気的過程の間に前記セルへの光の拡散を制限する工程を含む方法。
【請求項17】
エタノールを収集する方法であって、
水を収容したセルにおいて少なくとも1つの水生植物を栽培する工程と、
前記少なくとも1つの水生植物による炭水化物の貯蔵を開始する工程と、
前記少なくとも1つの水生植物による貯蔵された炭水化物のエタノールへの代謝を開始する工程と、
前記水からエタノールを収集する工程と
を含む方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2013−511998(P2013−511998A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542112(P2012−542112)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/058178
【国際公開番号】WO2011/068748
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(511251881)アクアテック バイオエナジー エルエルシー (2)
【氏名又は名称原語表記】AQUATECH BIOENERGY LLC
【Fターム(参考)】