説明

水産加工食品の製造方法

【課題】ばらの水産食材を用いて、新食感で身持ちのしっかりした水産結着品を製造すること。
【解決手段】日寒水式測定法に準拠して測定された所定性状の寒天溶液と、あらかじめ加温されたばらの水産食材を混合させた後、冷却環境下で結着成形させること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水産食材の切れ端やばら材、あるいは破卵したばら魚卵等、製品価値の低い水産食材を結着加工し、新食感の水産加工食品を提供する為の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のような製品価値の低い水産食材の結着加工は、スケソウダラを原料とする凍結乾燥魚肉粉末や、酵素を結着材とし、これを上記水産食材に混和させて行われていた。
また、結着材として一部に寒天を用いる技術(例えば特開2000−308472、特開2009−213356)も散見されている。
【0003】
特許文献1:特開2000−308472
特許文献2:特開2009−213356
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、結着材として凍結乾燥魚肉粉末や酵素を用いる方法では、油脂分や水分の多い水産食材では結着が不可能であった。そのため油脂分、水分の多い水産食材でも結着できる製造方法が要望されている。
【0005】
また、上記特許文献の技術においては、結着材の一部として寒天が用いられてはいるものの、この寒天の他に、特許文献1では熱凝固性蛋白質が、特許文献2では植物タンパク質が併用されることが必須の要件となっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、既に確立されている結着方法では不可能な水分、油脂分の多い水産食材を、特定性状の寒天のみを用いることで結着が可能である事を見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち本発明は、日寒水式測定法に準拠して測定され、ゼリー強度が300〜2500g/cmの寒天を溶解した寒天溶液と、あらかじめ20℃以上に加温したばらの水産食材を混合した後、冷却環境下で結着させる事を特徴とするである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、特定の性状での寒天溶液と、あらかじめ20℃以上に加熱されているばらの水産食材を混合させ、型に流し込み、冷却することで、新食感で身持ちのしっかりした水産結着品を製造することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ここで、日寒水式測定法とは、寒天1.5%水溶液を20℃で15時間放置し、凝固させたゲルの固さを測定する方法として認知されているものであり、本発明で使用する寒天の性状としては、水に1.5%濃度で溶解したとのちゼリー強度が300〜2500g/cmのものが好ましい。ゼリー強度が300g/cmを下回る寒天では、強度不足で成形品とは成り難い。
【0010】
寒天溶液は、仕上がりの結着加工品の総重量に対し5重量%〜50重量%で使用されることが好ましい。そして、この寒天溶液中の寒天は、その質量が0.3〜5.0%の範囲で使用されることが好ましい。また、冷却環境下としては冷蔵庫等の人工環境が好ましいが、自然環境に置くことも可能である。
【0011】
本発明の対象となる水産食材は、魚卵、魚肉、あわび等の貝類、エビ、カニ等の甲殻類、イカ、タコ等の軟体動物であり、特に魚卵に限定されるものではない。また、これらを二種類以上組み合わせることも可能である。
【実施例】
【0012】
以下、実施例によって本発明方法を説明するが、本発明の技術的範囲はこれによって限定されるものではない。
【実施例1】
【0013】
日寒水式によるゼリー強度が異なる各寒天を水に2%分散させ、90℃以上に加熱し溶解させた。50℃に加温済みのばらの辛子明太子70重量部と、この各寒天溶液30重量部を均一に混和して、型に流し込み冷蔵庫にて中心品温を20℃以下まで冷却した。得られた結着辛子明太子を短冊状にカットし、その製品評価を表1に示す。評価内容としては、+++が、結着力が十分で、つまみ上げた時に、身折れや身崩れせず、食感も極めて良好、++が、つまみ上げると身折れは起こすが、身崩れはなく、食感も良好、+は、結着はするが結着力が弱く、身崩れを起こすこともあるとした。
【0014】
【表1】

【実施例2】
【0015】
原料鮭の身をスプーンで削ぎ落とし、25℃に加温し保持した。日寒水式ゼリー強度が1800g/cmの寒天溶液20重量部、鮭の身80重量部を均一に混和して、型に流し込み8℃の冷蔵庫にて中心品温を20℃以下まで冷却した。得られた鮭結着品は身持ちが良好(身折れ、身崩れなし。)で鮭の風味を損なうことなく、任意の形に成形されたものが得られた。
【実施例3】
【0016】
原料するめいかをこまかく細断し、25℃に加熱し保持した。「実施例2」の寒天溶液20重量部、いかの身80重量部を均一に混和して、型に流し込み8℃の冷蔵庫にて中心品温を20℃以下まで冷却した。得られたいか結着品は、身持ちも良好で、するめいかの風味を損なうことなく、任意の形に成形されたものが得られた。
【実施例4】
【0017】
原料つぶ貝をこまかく細断し、25℃に加熱し保持した。「実施例2」の寒天溶液20重量部、つぶ貝80重量部を均一に混和して、型に流し込み8℃の冷蔵庫にて中心品温を20以下まで冷却した。得られたつぶ貝結着品は、身持ちも良好で、つぶ貝の風味を損なうことなく、任意の形に成形されたものが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0018】
今まで廃棄されたり、加工の困難な水産原料を、所定性状の寒天だけを用いて結着させることで、身持ちのしっかりした任意の形に成形することができるで、水産原料以外の原料への利用価値が広がる可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
日寒水式測定法に準拠して測定され、ゼリー強度が300〜2500g/cmの寒天を溶解した寒天溶液と、あらかじめ20℃以上に加温したばらの水産食材を混合した後、冷却環境下で結着させることを特徴とする水産加工食品の製造方法。