説明

水田における半翅目害虫の防除方法

【課題】水田における半翅目害虫の防除方法において、肥料成分と水溶解度が100ppm以上であるニトロメチレン系、ニトロイミノ系又はシアノイミノ系殺虫化合物とを含有する農薬含有肥料組成物を苗移植時の水田に側条施用することを特徴とする半翅目害虫の防除方法。
【解決手段】本発明により、薬剤の残効をできるだけ長く延ばし、秋口まで薬剤の効果を維持することができるようになった。このため、水田における半翅目害虫の防除方法において、1回の農薬散布によって、しかも手間のかかる本田作物への直接的な茎葉散布を避けるような薬剤処理方法を提供可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田における半翅目害虫の防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水田における多くの害虫のうち、きわめて重要な害虫として半翅目害虫を挙げることができる。これら害虫は、ある時期に水田に入り込み、そこで増殖を繰り返し、作物に被害を導く。特にトビイロウンカ等のウンカ類の場合、6月から7月の梅雨の時期に水田に入り込み、そこで増殖を繰り返し、8月から9月の秋口に大発生する。そして、大発生した害虫によって収量に最も重要な影響を与える生育期にある稲がダメージを受けることになり、しばしば重大な被害を生じる。
このため、実用場面では、6月から7月の時期に一度、さらに8月から9月の時期に一度の計2回の農薬散布を行い、上記のような害虫を防除する必要があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記方法では計2回の農薬散布を行う必要があり、人手や費用の面から必ずしも充分なものではなかった。
そこで、1回の農薬散布によって、しかも手間のかかる本田作物への直接的な茎葉散布を避けるような薬剤処理方法が好ましい。このような薬剤処理方法において効果を上げるには、薬剤の残効をできるだけ長く延ばし、秋口まで薬剤の効果を維持する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような状況下、本発明者らは鋭意検討を行った結果、ある特定な水溶解度を有し、特定の化学構造を持つ殺虫化合物を肥料成分とともに、しかも苗移植時の水田に一度だけ側条施用することによって、水田における前記の化合物の半翅目害虫に対する防除効果を最大限に発揮させることができることから、一度の施用であっても充分な殺虫効果が得られることを見い出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、水田における半翅目害虫の防除方法において、肥料成分と水溶解度が100ppm以上であるニトロメチレン系、ニトロイミノ系又はシアノイミノ系殺虫化合物とを含有する農薬含有肥料組成物を苗移植時の水田に一度だけ側条施用することを特徴とする半翅目害虫の防除方法(以下、本発明方法と記す。)を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、薬剤の残効をできるだけ長く延ばし、秋口まで薬剤の効果を維持することができるようになった。このため、水田における半翅目害虫の防除方法において、1回の農薬散布によって、しかも手間のかかる本田作物への直接的な茎葉散布を避けるような薬剤処理方法を提供可能にした。さらに、肥料の施用も併せて行えることから、省力化効果の大きいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、詳細に本発明を説明する。
【0007】
本発明で用いられる肥料成分としては、特に限定されず、広い範囲のものが用いられる。具体的には、例えば、窒素、リン酸、カリウム、珪酸、マグネシウム、カルシウム、マンガン、ホウ素、鉄等の稲が要求する元素を挙げることができるが、特に、窒素(N)、リン酸(P)およびカリウム(K)が適している。これら特に適する肥料成分を一種以上、特にそれらを全部含むことが好ましい。さらに、NPK成分型(N−P2 O5 −K2 O)としては、例えば、5−5−7 、12−12−16等の1型平上り型、5−5−5 、14−14−14等の2型水平型、6−6−5 、8−8−5 等の3型平下がり型、4−7−9 、6−8−11等の4型上り型、4−7−7 、10−20−20等の5型上り平型、4−7−4 、6−9−6 等の6型山型、6−4−5 、14−10−13等の7型谷型、6−5−5 、18−11−11等の8型下がり平型、7−6−5 、14−12−9 等の9型下がり型、3−20−0、18−35−0 等の10型NP型、16−0−12 、18−0−16 等の11型NK型、0−3−14、0−15−15 等の12型PK型等を挙げることができる。肥料成分の原料としては、例えば、尿素、硝酸アンモニウム、硝酸苦土アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ソーダ、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、石炭窒素、ホルムアルデヒド加工尿素肥料(UF)、アセトアルデヒド加工尿素肥料(CDU)、イソブチルアルデヒド加工尿素肥料(IBDU)、グアニール尿素(GU)等の窒素質肥料、過リン酸石炭、重過リン酸石炭、苦土過リン酸、リン酸アンモニウム、苦土リン酸、硫リン安、リン硝安カリウム、塩リン安等のリン酸質肥料、塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸カリソーダ、硫酸カリ苦土、重炭酸カリウム、リン酸カリウム、硝酸カリウム等のカリウム質肥料、珪酸カルシウム等の珪酸質肥料、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のマグネシウム質肥料、生石炭、消石炭、炭酸カルシウム等のカルシウム質肥料、硫酸マンガン、硫酸苦土マンガン、鉱さいマンガン等のマンガン質肥料、ホウ酸、ホウ酸塩等のホウ素質肥料、鉄鋼スラグ等の含鉄肥料等の肥料取締法に定められる普通肥料(複合肥料を含む)を挙げることができる。
用いる肥料の形態は、粒状、粉状、塊状、液状等、特に問うものでなく、製造工程に応じた形態の肥料を用いることができる。
徐放性を付与された化成肥料を用いる場合、本発明の効果がより向上する。このような化成肥料は、例えば、リン酸をリン酸カルシウムの形で含有させたり、ピッチ、イオウ等を添加する等の公知の方法により徐放性を付与されている。
また、被覆資材を溶媒に溶解あるいは分散し、この溶液を肥料成分の表面に被覆し、乾燥後、溶媒を除去することによって製造される被覆粒状肥料も徐放性を付与する方法として挙げることができる。なお、被覆資材の被覆粒状肥料に対する重量割合、すなわち、被覆率としては、例えば、約2から20重量%の範囲が挙げられる。
なお、粒状肥料組成物または後述する農薬含有肥料組成物の製造時のブロッキング防止のため、必要に応じて、本発明で用いられる肥料成分には、本発明の効果を損なわない範囲で上述の成分以外の助剤、例えば、タルク、ろう石、炭酸カルシウム、シリカ等の水不溶性無機物質等を加えてもよい。
【0008】
本発明で用いられる水溶解度が100ppm以上であるニトロメチレン系、ニトロイミノ系又はシアノイミノ系殺虫化合物(以下、ニトロメチレン系、ニトロイミノ系又はシアノイミノ系化合物と記す。)とは、下記の一般式 化1

(式中、Arは置換されてもよいヘテロアリールを表し、X及びYはC原子又はN原子で、かつ少なくとも一方がN原子であり、Zは電子吸引性基を表す。)で示される骨格を有する化学構造である浸透性殺虫化合物のことを意味する。ここで、置換されてもよいヘテロアリールとは、置換されてもよい5員環又は6員環のヘテロ(1〜2個のN原子を含むか、又は1個のN原子とO原子若しくS原子のいずれか1個とを含む)不飽和環式基のことであり、特に、2−クロロピリジン−5−イル及び2−クロロチアゾール−5−イルが好ましい。また、電子吸引性基とは、例えば、ニトロ基又はシアノ基等を挙げることができる。
一般式 化1で示される骨格としては、例えば、ニトロメチレン骨格、ニトロイミノ骨格、シアノイミノ骨格等を挙げることができる。さらに具体的には、2−(ニトロイミノ)イミダゾリジン基、2−(シアノイミノ)イミダゾリジン基、2−ニトロイミノ−ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、2−シアノイミノ−ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン等の環状グアニジン骨格又は該環状グアニジン骨格が開環した構造(例えば、置換グアニジン骨格等)およびその類似構造(例えば、置換アミジン骨格、置換ビニリデンジアミン骨格等)を挙げることができる。具体的な化合物としては、例えば、
1.1−(2−クロロ−5−ピリジルメチル)−2−(ニトロイミノ)イミダゾリジン(以下、化合物Aと記す。)
2.1−〔N−(2−クロロ−5−ピリジルメチル)−N−エチル〕アミノ−1−メチルアミノ−2−ニトロエチレン(以下、化合物Bと記す。)
3.1−〔N−(2−クロロ−5−ピリジルメチル)−N−メチル〕アミノ−1−(シアノイミノ)エタン(以下、化合物Cと記す。)
4.1−(2−クロロ−5−チアゾリルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン(以下、化合物Dと記す。)
5.1−(2−クロロ−5−チアゾリルメチル)−3,5−ジメチル−2−ニトロイミノ−ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン(以下、化合物Eと記す。)
等を挙げることができる。
本発明方法においては、これらの化合物を単独でも、又二種以上を混合して用いてもよい。なお、これら化合物は、例えば、特開昭61−267575号、特開平2−171号、特開平4−154741号、特開平2−288860号、特開平2−235881号等に記載される製造方法により市販または公知の化合物から製造することができる。
【0009】
本発明で用いられる化合物は、他の何らの成分も加えず、そのまま後述の農薬含有肥料組成物の製造に使用してもよいし、固体担体、液体担体等の各種担体と混合し、必要あれば添加剤として界面活性剤、その他の製剤用補助剤を加えて、乳剤、水和剤、水中懸濁剤、水中乳濁剤、粒剤、粉剤等に製剤した薬剤を使用してもよい。
【0010】
これらの製剤には、有効成分として前記のニトロメチレン系、ニトロイミノ系又はシアノイミノ系化合物を、通常、重量比で0.001 %〜95%含有する。
【0011】
製剤化の際に用いられる固体担体としては、例えば、粘土類(カオリンクレー、珪藻土、合成含水酸化珪素、ベントナイト、フバサミクレー、酸性白土等)、タルク類、セラミック、その他の無機鉱物(セリサイト、石英、硫黄、活性炭、炭酸カルシウム、水和シリカ等)等の微粉末あるいは粒状物等が挙げられ、液体担体としては、例えば、水、アルコール類(メタノール、エタノール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メチルナフタレン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、シクロヘキサン、灯油、軽油等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、ニトリル類(アセトニトリル、イソブチロニトリル等)、エーテル類(ジイソプロピルエーテル、ジオキサン等)、酸アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等)、ジメチルスルホキシド、大豆油、綿実油等の植物油等が挙げられる。
【0012】
界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル類、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルアリールエーテル類およびそのポリオキシエチレン化物、ポリエチレングリコールエーテル類、多価アルコールエステル類、糖アルコール誘導体等が挙げられる。
【0013】
固着剤や分散剤等の製剤用補助剤としては、例えば、カゼイン、ゼラチン、多糖類(でんぷん粉、アラビアガム、セルロース誘導体、アルギン酸等)、リグニン誘導体、ベントナイト、糖類、合成水溶性高分子(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸類等)等が挙げられ、安定剤としては、例えばPAP(酸性リン酸イソプロピル)、BHT(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、BHA(2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールと3−tert−ブチル−4−メトキシフェノールとの混合物)、植物油、鉱物油、界面活性剤、脂肪酸またはそのエステル等が挙げられる。
【0014】
フロアブル剤(水中懸濁剤または水中乳濁剤)の製剤は、一般に1〜75%の化合物を0.5 〜15%の分散剤、0.1 〜10%の懸濁助剤(例えば、保護コロイドやチクソトロピー性を付与する化合物)、0〜10 %の適当な補助剤(例えば、消泡剤、防錆剤、安定化剤、展着剤、浸透助剤、凍結防止剤、防菌剤、防黴剤等)を含む水中で微小に分散させることによって得られる。水の代わりに化合物がほとんど溶解しない油を用いて油中懸濁剤とすることも可能である。保護コロインドとしては、例えば、ゼラチン、カゼイン、ガム類、セルロースエーテル、ポリビニルアルコール等が用いられる。チクソトロピー性を付与する化合物としては、例えば、ベントナイト、アルミニウムマグネシウムシリケート、キサンタンガム、ポリアクリル酸等が挙げられる。
【0015】
上記の肥料成分とニトロメチレン系、ニトロイミノ系又はシアノイミノ系化合物を含有する農薬含有肥料組成物(以下、農薬含有肥料組成物と記す。)は、例えば、以下の公知な方法によって製造することができる。
1.粒状、塊状等の肥料(約50から99.9重量部)を粉砕要素のない混合機中へ導入し、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート等の粘着剤(約0.1から5重量部)を含む水溶液を混合操作過程でスプレーする。ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート等の粘着剤の溶液が肥料の表面上に均一に分布した後、水和性粉剤の形に製剤したニトロメチレン系、ニトロイミノ系又はシアノイミノ系化合物(有効成分量として約1から50重量部)を混合機中に導入する。混合時間約10から30分間の後、混合機を運転しながら、顆粒を温度約50から150℃で乾燥することによって顆粒状の農薬含有肥料組成物を得る。
2.例えば、アセトン、キシレン等の溶剤にニトロメチレン系、ニトロイミノ系又はシアノイミノ系化合物(有効成分量として約0.01から20重量部)を溶解させた液を流動コーティング装置や粉砕要素のない混合機によって粒状、塊状等の肥料にコーティングまたは含浸を行い、更に温度約50から150℃で乾燥する、もしくは自然条件下で風乾することによって農薬含有肥料組成物を得る。
3.ニトロメチレン系、ニトロイミノ系又はシアノイミノ系化合物(有効成分量として約0.01から5重量部)もしくは水和剤や粉剤の形に製剤したニトロメチレン系、ニトロイミノ系又はシアノイミノ系化合物(有効成分量として約0.01から5重量部)をあらかじめ混合した粉状等の肥料を皿型造粒機等の造粒機を用いて造粒することによって農薬含有肥料組成物を得る。
なお農薬含有肥料組成物が粒状の場合、該農薬含有肥料組成物の形状は、通常使用される肥料と同様でよく、ハンドリングの面から粒径約1〜10mmのものが好ましい。
農薬含有肥料組成物中の肥料成分の含有量としては、例えば、約75から99.99重量%、好ましくは、約95から99.99重量%程度を挙げることができ、また、ニトロメチレン系、ニトロイミノ系又はシアノイミノ系化合物の含有量(有効成分量として)は、通常、約0.001から20重量%、好ましくは、約0.01から2重量%程度がよい。
【0016】
本発明では、このように製造された農薬含有肥料組成物を苗移植時の水田に一度だけ側状施用するだけで、半翅目害虫を充分に防除できる。
ここで、防除可能な半翅目害虫の例としては、例えば、以下のものが挙げられる。
ウンカ類
ウンカ科
トビイロウンカ属
トビイロウンカ(Nilaparvata lugens)
Laodelphax属
ヒメトビウンカ(Laodelphax striatellus)
Segatella属
セジロウンカ(Sogatella furcifera)
ヨコバイ類
ヨコバイ科
ツマグロヨコバイ属
ツマグロヨコバイ(Nephotettix cincticeps)
タイワンツマグロヨコバイ(Nephotettix virescens)
クロスジツマグロヨコバイ(Nephotettix nigropictus)
マラヤツマグロヨコバイ(Nephotettix malayanus)
Recilia属
イナズマヨコバイ(Recilia dorsalis)
ヒメヨコバイ科
Arboridia属
フタテンヒメヨコバイ(Arboridia apicalis)
Empoasca属
チャノミドリヒメヨコバイ(Empoasca onukii)
上記の半翅目害虫のうちで、ウンカ類、特にトビイロウンカ属により適する。
【0017】
本発明で用いられる農薬含有肥料組成物は、苗移植時の水田に側条施用する。ここで、側条施用とは、一般に「側条施用」とよばれる土壌の下層部に側条として施肥するという施肥法に従った施肥法であり、具体的な例としては、列をなして移植される稲苗の株元を結んで得られる線とおよそ平行で、且つかかる線より水平方向に約2から15cm程度、下方に約3から15cm程度離れた水田土壌中の線上に施肥する方法が挙げられる。
本発明で用いられる農薬含有肥料組成物の施用量、施用濃度は、種々の状況によって異なり、下記の範囲にかかわることなく増加させたり、減少させたりすることができるが、通常、農薬含有肥料組成物の施用量としては、肥料成分の有効成分量として、約1から20000g/a 、好ましくは約10から2000g/a 、ニトロメチレン系、ニトロイミノ系又はシアノイミノ系化合物の有効成分量として、約0.1から100g/a 、好ましくは、約0.5から10g/a を挙げることができる。
【実施例】
【0018】
製造例1 (農薬含有肥料組成物の製造)
粒径約1ないし4mmの粒状肥料(N−P2 O5 −K2 O=14%−14%−14%)92.5を粉砕要素のない混合機中に投入し、ポリビニルアルコールを2重量%含む水溶液をスプレーする。スプレー後、化合物A1重量%を含有する水和剤7.5重量部を混合機中に投入し、20分間混合する。この顆粒を60℃で20分間乾燥し、農薬含有肥料組成物(農薬有効成分量を0.075重量含有)を製造する。
【0019】
製造例2 (農薬含有肥料組成物の製造)
化合物B0.075重量部、粉状肥料(N−P2 O5 −K2 O=8%−18%−14%)99.925重量部を混合機中に投入し、20分間混合する。この化合物Bを0.075重量%含有する粉状肥料を皿型造粒機を用いて転動させながら、水をスプレーして粒状に造粒する。この顆粒を60℃で20分間乾燥し、農薬含有肥料組成物(農薬有効成分量を0.075重量%含有)を製造する。
【0020】
製造例3 (農薬含有肥料組成物の製造)
化合物D0.075重量部、粉状肥料(N−P2 O5 −K2 O=10%−10%−10%)99.925重量部を混合機中に投入し、20分間混合する。この化合物Dを0.075重量%含有する粉状肥料を皿型造粒機を用いて転動させながら、水をスプレーして粒状に造粒する。この顆粒を60℃で20分間乾燥し、農薬含有肥料組成物(農薬有効成分量を0.075重量%含有)を製造する。
【0021】
製造例4 (農薬含有肥料組成物の製造)
化合物E0.075重量部、粉状肥料(N−P2 O5 −K2 O=14%−20%−12%)99.925重量部を混合機中に投入し、20分間混合する。この化合物Eを0.075重量%含有する粉状肥料を皿型造粒機を用いて転動させながら、水をスプレーして粒状に造粒する。この顆粒を60℃で20分間乾燥し、農薬含有肥料組成物(農薬有効成分量を0.075重量%含有)を製造する。
【0022】
製造例5 (農薬含有肥料組成物の製造)
化合物C1重量部をアセトン99重量部に溶解して、有効成分量が1重量%である溶液を得た。次いで、該溶液7.5重量部を粒径約1ないし4mmの粒状肥料(N−P2 O5 −K2 O=6%−20%−20%)100重量部に添加し、粉砕要素のない混合機中によって十分に混合した後、一昼夜風乾することによって農薬含有肥料組成物(農薬有効成分量を0.075重量%含有)を製造する。
【0023】
製造例6 (農薬含有肥料組成物の製造)
化合物A1重量部をアセトン99重量部に溶解して、有効成分量が1重量%である溶液を得た。次いで、該溶液7.5重量部あるいは3.75重量部を粒径約1ないし4mmの粒状肥料(N−P2 O5 −K2 O=14%−20%−12%)100重量部に添加し、粉砕要素のない混合機中によって十分に混合した後、一昼夜風乾することによって農薬含有肥料組成物(農薬有効成分量を0.075重量%あるいは0.0375重量%含有)を製造した。
【0024】
試験例1 (トビイロウンカに対する防除効果)
製造例6によって製造された農薬含有肥料組成物を、イネ(品種:ひめのまい)の幼苗を本田に移植する際に、側条施用肥田植機を用いて、イネ株から横3cm、深さ5cmの水田土壌中に筋状に施用量4000g/a(農薬有効成分量として3.0g/a)で処理した(本発明区)。
対照区として、農薬含有肥料組成物の代わりに農薬を含有しない肥料組成物を用いること以外は、上記と同様な方法でイネ幼苗の移植、肥料の施用を行った。
その後、栽培を継続し、移植後50、70、90日後に試験区内の20株について、トビイロウンカの成虫及び幼虫数を調査した。
試験は1区300m2 の1反復で行った。
結果を表1に示す。表1から明らかなように、本発明区ではイネ幼苗の移植後約3ヶ月経過しても、トビイロウンカの成虫及び幼虫を低密度に抑えていた。
【0025】
【表1】

【0026】
移植日:6月17日
【0027】
試験例2 (セジロウンカに対する防除効果)
製造例6によって製造された農薬含有肥料組成物を、イネ(品種:ひめのまい)の幼苗を本田に移植する際に、側条施用肥田植機を用いて、イネ株から横3cm、深さ5cmの水田土壌中に筋状に施用量4000g/a(農薬有効成分量として3.0g/a)で処理した(本発明区)。
対照区として、農薬含有肥料組成物の代わりに農薬を含有しない肥料組成物を用いること以外は、上記と同様な方法で、イネ幼苗の移植、肥料の施用を行った。
その後、栽培を継続し、移植後13、40、60、90日後に試験区内の20株についてセジロウンカの成虫及び幼虫数を調査した。
試験は1区300m2 の1反復で行った。
結果を表2に示す。表2から明らかなように、本発明区ではイネ幼苗の移植後約3ヶ月経過しても、セジロウンカの成虫及び幼虫を低密度に抑えていた。
【0028】
【表2】

【0029】
移植日:6月17日
【0030】
試験例3 (ヒメトビウンカに対する防除効果)
製造例6によって製造された農薬含有肥料組成物を、イネ(品種:ひめのまい)の幼苗を本田に移植する際に、側条施用肥田植機を用いて、イネ株から横3cm、深さ5cmの水田土壌中に筋状に施用量4000g/a(農薬有効成分量として3.0g/a及び1.5g/a)で処理した(本発明区A及びB)。
対照区として、農薬含有肥料組成物の代わりに、農薬を含有しない肥料組成物を用いること以外は、上記と同様な方法でイネ幼苗の移植、肥料の施用を行った。
その後、栽培を継続し、移植後13、60、70日後に試験区内の20株について、ヒメトビウンカの成虫及び幼虫数を調査した。
試験は1区300m2 の1反復で行った。
結果を表3に示す。表3から明らかなように、本発明区A、Bではイネ幼苗の移植後70日経過してもヒメトビウンカの成虫及び幼虫を低密度に抑えていた。
【0031】
【表3】

【0032】
移植日:6月17日
【0033】
試験例4 (ツマグロヨコバイに対する防除効果)
製造例4によって製造された農薬含有肥料組成物を、イネ(品種:中生新千本)の幼苗を本田に移植する際に、側条施用肥田植機を用いて、イネ株から横3cm、深さ5cmの水田土壌中に筋状に施用量4000g/a(農薬有効成分量として3.0g/a)で処理した(本発明区)。
対照区として、農薬含有肥料組成物の代わりに、農薬を含有しない肥料組成物を用いること以外は、上記と同様な方法でイネ幼苗の移植、肥料の施用を行った。
その後、栽培を継続し、移植後15、22、29、39、49日後に試験区内の40株についてツマグロヨコバイの成虫及び幼虫数を調査した。
試験は1区5aの1反復で行った。
結果を表4に示す。表4から明らかなように、本発明区ではイネ幼苗の移植後約7週間経過してもツマグロヨコバイに対する優れた防除効果を維持していた。
【0034】
【表4】

【0035】
移植日:6月11日
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明により、薬剤の残効をできるだけ長く延ばし、秋口まで薬剤の効果を維持することができるようになった。このため、水田における半翅目害虫の防除方法において、1回の農薬散布によって、しかも手間のかかる本田作物への直接的な茎葉散布を避けるような薬剤処理方法を提供可能にした。さらに、肥料の施用も併せて行えることから省力化効果の大きいものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水田における半翅目害虫の防除方法において、粒状のNPK成分型肥料成分と、水溶解度が100ppm以上であるニトロイミノ骨格を有する化学構造である浸透性殺虫化合物とを含有する農薬含有肥料組成物を苗移植時の水田に側条施用することを特徴とする半翅目害虫の防除方法。
【請求項2】
ニトロイミノ骨格が、下記の骨格群から少なくとも一つ選ばれる骨格である請求項1記載の防除方法。
(骨格群)
a)2−(ニトロイミノ)イミダゾリジン基
b)c)記載の環状グアニジン骨格が開環した構造である置換グアニジン骨格
c)2−ニトロイミノ−ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン骨格
【請求項3】
水溶解度が100ppm以上であるニトロイミノ骨格を有する化学構造である浸透性殺虫化合物が、1−(2−クロロ−5−ピリジルメチル)−2−(ニトロイミノ)イミダゾリジン、または、1−(2−クロロ−5−チアゾリルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジンである請求項1記載の防除方法。
【請求項4】
半翅目害虫が、ウンカ類またはヨコバイ類である請求項1〜3のいずれか1項に記載される防除方法。

【公開番号】特開2007−153911(P2007−153911A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68048(P2007−68048)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【分割の表示】特願2005−6116(P2005−6116)の分割
【原出願日】平成7年3月9日(1995.3.9)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(000232564)バイエルクロップサイエンス株式会社 (23)
【Fターム(参考)】