説明

水硬性材料用収縮低減剤および水硬性材料用収縮低減剤組成物

【課題】優れた機能を有する、水硬性材料用収縮低減剤を提供する。
【解決手段】A成分とB成分の比率が質量比で1/99〜60/40である。A成分:一般式(1)で表される化合物の少なくとも1種。


(Rは水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、AOは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、xはオキシアルキレン基AOの平均付加モル数を表し、xは1〜100である。)B成分:トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタトリオール、4価以上の多価アルコールのアルキレンオキシド付加物、ポリアルキレンイミンから選ばれる少なくとも1種。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性材料用収縮低減剤および水硬性材料用収縮低減剤組成物に関する。より詳細には、優れた収縮低減機能を有する水硬性材料用収縮低減剤、および、優れた収縮低減機能と優れた減水機能を併せ持つ水硬性材料用収縮低減剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水硬性材料は、強度や耐久性等に優れた硬化物を与える。このことから、水硬性材料は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物として広く用いられている。水硬性材料は、土木・建築構造物を構築するために欠かすことができない。
【0003】
水硬性材料は、硬化した後に、外気温や湿度条件等により、内部に残った未反応水分の散逸を起こす。このため、乾燥収縮が進行し、硬化物中にひび割れが生じ、強度や耐久性が低下するという問題がある。土木・建築構造物の強度や耐久性等が低下すると、安全性の低下や修復コストの増大など、重大な問題が生じる。
【0004】
このような問題に対し、法規制が強化されてきている。1999年6月に成立した住宅の品質確保の促進に関する法律では、コンクリートのひび割れも瑕疵保証の対象となっている。2008年の秋以降に改訂が予定されている、鉄筋コンクリート造に関するJASS 5(日本建築学会)は、耐用年数が長期(100年以上)にわたるコンクリートにおける26週での収縮ひずみを800×10−6以下に規制する予定である。
【0005】
最近、コンクリート硬化物の乾燥収縮を低減させる方法として、水硬性材料用収縮低減剤が重要視されている。上記JASS 5の改訂と同時に、水硬性材料用収縮低減剤に関する建築学会基準の制定が予定されている。
【0006】
水硬性材料用収縮低減剤として、炭素原子数1〜4のアルコールのアルキレンオキシド付加物(特許文献1参照)、2〜8価の多価アルコールのエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共付加物(特許文献2参照)、低級アルキルアミンのアルキレンオキシド付加物(特許文献3参照)、オリゴマー領域のポリプロピレングリコール(特許文献4参照)、低分子アルコール類(特許文献5参照)、2−エチルヘキサノールのアルキレンオキシド付加物(特許文献6参照)が報告されている。しかしながら、これらの水硬性材料用収縮低減剤は、コンクリートに使用した場合に強度が低下するという問題がある。このため、強度を保つためにセメントペースト分の割合を高くする必要があり、コンクリートコストが高くなるという問題が生じる。
【0007】
コンクリートに使用した場合の強度低下を抑制し得る水硬性材料用収縮低減剤として、2〜8価の多価アルコールのアルキレンオキシド付加物が報告されている(特許文献7、8参照)。しかしながら、これらの水硬性材料用収縮低減剤は、いずれも、粉末樹脂、膨張材などの他の混和材料との組み合わせが必要となっており、コンクリートコストが高くなるという問題は解決できていない。
【特許文献1】特公昭56−51148号公報
【特許文献2】特公平1−53214号公報
【特許文献3】特公平1−53215号公報
【特許文献4】特開昭59−152253号公報
【特許文献5】特公平6−6500号公報
【特許文献6】特許第2825855号公報
【特許文献7】特開平9−301758号公報
【特許文献8】特開2002−68813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、他の混和材料との組み合わせを必要とせず、安価で、硬化物の強度低下を抑制し、優れた収縮低減機能を有する、汎用性の高い水硬性材料用収縮低減剤を提供することにある。また、そのような水硬性材料用収縮低減剤を含む、優れた収縮低減機能と優れた減水機能を併せ持つ水硬性材料用収縮低減剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、下記A成分およびB成分を含有し、該A成分と該B成分の比率が質量比でA成分/B成分=1/99〜60/40である。
A成分:一般式(1)で表される化合物の少なくとも1種。
【化1】

(一般式(1)中、Rは水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、AOは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、xはオキシアルキレン基AOの平均付加モル数を表し、xは1〜100である。)
B成分:トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタトリオール、4価以上の多価アルコールのアルキレンオキシド付加物、ポリアルキレンイミンから選ばれる少なくとも1種。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記B成分におけるアルキレンオキシド付加物中のオキシアルキレン基が炭素原子数2〜3のオキシアルキレン基である。
【0011】
好ましい実施形態においては、上記B成分におけるアルキレンオキシド付加物中のオキシアルキレン基がオキシエチレン基である。
【0012】
本発明の別の局面によれば、水硬性材料用収縮低減剤組成物が提供される。本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物は、本発明の水硬性材料用収縮低減剤と分散剤を含む。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記分散剤が、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、他の混和材料との組み合わせを必要とせず、安価で、硬化物の強度低下を抑制し、優れた収縮低減機能を有する、汎用性の高い水硬性材料用収縮低減剤を提供することができる。また、そのような水硬性材料用収縮低減剤を含む、優れた収縮低減機能と優れた減水機能を併せ持つ水硬性材料用収縮低減剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
≪水硬性材料用収縮低減剤≫
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、下記A成分およびB成分を含有する。
A成分:一般式(1)で表される化合物の少なくとも1種。
【化2】

(一般式(1)中、Rは水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、AOは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、xはオキシアルキレン基AOの平均付加モル数を表し、xは1〜100である。)
B成分:トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタトリオール、4価以上の多価アルコールのアルキレンオキシド付加物、ポリアルキレンイミンから選ばれる少なくとも1種。
【0016】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤において、A成分とB成分の比率は、質量比で、A成分/B成分=1/99〜60/40である。好ましくは、A成分/B成分=5/95〜55/45であり、より好ましくは、A成分/B成分=5/95〜50/50である。A成分とB成分の比率を上記範囲内に制御することにより、他の混和材料との組み合わせを必要とせず、安価で、硬化物の強度低下を抑制し、優れた収縮低減機能を有する、汎用性の高い水硬性材料用収縮低減剤を提供することができる。
【0017】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、A成分とB成分のみからなっていても良いし、本発明の効果を損なわない範囲で、他の任意の適切な成分を含んでいても良い。例えば、水が挙げられる。本発明の水硬性材料用収縮低減剤中の、A成分とB成分の合計量の割合は、上記他の任意の適切な成分の種類によって変動しうる。例えば、A成分とB成分の相溶性の度合い、使用条件、使用対象などによって適宜設定される。A成分は1種のみでも良いし、2種以上を併用しても良い。B成分は1種のみでも良いし、2種以上を併用しても良い。本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、任意の適切な方法で調製すれば良い。例えば、A成分、B成分、および任意の他の成分を、任意の適切な方法で混合すれば良い。
【0018】
A成分は、一般式(1)で表される化合物の少なくとも1種である。
【0019】
一般式(1)中、Rは水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。Rは、水素原子または炭素原子数1〜18の炭化水素基が好ましい。Rを上記の水素原子あるいは炭化水素基とすることにより、B成分と組み合わせることで水硬性材料用収縮低減剤とした場合に、硬化物の強度低下を抑制し得るとともに、優れた収縮低減機能を発現し得る。
【0020】
一般式(1)中、AOは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表す。AOは、炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基が好ましく、炭素原子数2〜3のオキシアルキレン基がより好ましい。また、AOは、全オキシアルキレン基中、炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基が30〜100モル%含まれていることが好ましく、40〜100モル%含まれていることがより好ましい。AOの炭素原子数が大きすぎると、本発明の水硬性材料用収縮低減剤の水への溶解性が低下するおそれがある。一般式(1)中、AOは1種のみでも良いし、2種以上を併用しても良い。AOが2種以上ある場合には、それらはランダム付加体となっていても良いし、ブロック付加体となっていても良いし、交互付加体となっていても良い。
一般式(1)中、xはオキシアルキレン基AOの平均付加モル数を表し、xは1〜100である。xは、2〜50が好ましく、2〜30がより好ましい。xを上記範囲内に制御することにより、B成分と組み合わせることで水硬性材料用収縮低減剤とした場合に、硬化物の強度低下を抑制し得るとともに、優れた収縮低減機能を発現し得る。
【0021】
一般式(1)で表されるA成分の具体例としては、炭素原子数1〜8のアルコールのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加体、炭素原子数1〜8のアルコールのエチレンオキシドおよび/またはブチレンオキシド付加体、炭素原子数12〜14の2級アルコールのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールのブロックまたはランダム共重合体、などが挙げられる。
【0022】
B成分は、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタトリオール、4価以上の多価アルコールのアルキレンオキシド付加物、ポリアルキレンイミンから選ばれる少なくとも1種である。B成分として、このような特定の化合物を採用することにより、A成分と組み合わせることで水硬性材料用収縮低減剤とした場合に、硬化物の強度低下を抑制し得るとともに、優れた収縮低減機能を発現し得る。
【0023】
B成分として、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタトリオール、4価以上の多価アルコールのアルキレンオキシド付加物とは、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタトリオール、4価以上の多価アルコールに、アルキレンオキシドを付加させることによって得られる、多価アルコールのアルキレンオキシド付加物である。
上記4価以上の多価アルコールとしては、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、ポリグリセリン、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール、グルコース、フルクトース、マンノース、インドース、ソルボース、グロース、タロース、タガトース、ガラクトース、アロース、プシコース、アルトロース、アラビノース、リブロース、リボース、キシロース、キシルロース、リキソース、トレオース、エリトルロース、ラムノース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュウクロース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレジトースなどが挙げられる。上記4価以上の多価アルコールとしては、好ましくは、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、ポリグリセリンが挙げられ、より好ましくは、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ポリグリセリンが挙げられる。
すなわち、B成分として特に好ましくは、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタトリオール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ポリグリセリンに、アルキレンオキシドを付加させることによって得られる、多価アルコールのアルキレンオキシド付加物である。
B成分において、多価アルコールのアルキレンオキシド付加物中のオキシアルキレン基としては、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基が好ましい。該オキシアルキレン基は1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。多価アルコールのアルキレンオキシド付加物中のオキシアルキレン基としては、より好ましくは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素原子数2〜3のオキシアルキレン基であり、特に好ましくはオキシエチレン基である。
B成分において、多価アルコールのアルキレンオキシド付加物中のオキシアルキレン基として少なくともオキシエチレン基が用いられる場合は、付加されるオキシアルキレン基中、オキシエチレン基が50〜100モル%含まれていることが好ましく、70〜100モル%含まれていることがより好ましく、90〜100モル%含まれていることがさらに好ましい。
B成分において、多価アルコールのアルキレンオキシド付加物における、アルキレンオキシドの平均付加モル数は、該多価アルコールの水酸基1モルあたり、好ましくは1〜500モルであり、より好ましくは1〜400モルであり、さらに好ましくは1〜300モルである。該多価アルコールの水酸基1モルあたりのアルキレンオキシドの平均付加モル数が1モルより小さいと、著しい凝結遅延が起こって強度が低下するおそれがある。該多価アルコールの水酸基1モルあたりのアルキレンオキシドの平均付加モル数が500モルより大きいと、十分な収縮低減性が得られないおそれがある。
【0024】
B成分において、上記ポリアルキレンイミンとしては、例えば、下記の(a)〜(c)のポリアルキレンイミンが挙げられる。
【0025】
(a)エチレンイミン、プロピレンイミン、1,2−ブチレンイミン、2,3−ブチレンイミン、1,1−ジメチルエチレンイミン等の単独重合体、共重合体。特に、エチレンイミンの単独重合体、エチレンイミンとプロピレンイミンの共重合体が好ましい。
【0026】
(b)上記(a)で示したポリアルキレンイミンに含まれる活性水素含有アミノ基に対してアルキレンオキシドを付加重合した、ポリエーテル鎖を有するポリアルキレンイミン。特に、上記アミノ基の活性水素の当量を超えるアルキレンオキシドを付加重合した、ポリエーテル鎖を有するポリアルキレンイミンが好ましい。上記ポリアルキレンイミンとしては、ポリエチレンイミンが好ましい。上記アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシドが好ましい。
【0027】
(c)上記(a)で示したポリアルキレンイミンに含まれる窒素原子の一部あるいは全てに、
(i)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸などのα,β−不飽和カルボン酸、
(ii)上記カルボン酸と炭素数1〜20のアルコールとのモノもしくはジエステル、
(iii)上記カルボン酸と炭素数1〜30のアルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキシドを1〜300モル付加させたアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールとのモノもしくはジエステル、
をMichael付加させた、カルボキシル基あるいはエステル基を有するポリアルキレンイミン。上記α,β−不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸が好ましい。上記(a)で示したポリアルキレンイミンとしては、ポリエチレンイミンが好ましい。
【0028】
B成分において、上記ポリアルキレンイミンの重量平均分子量は、好ましくは300〜500000、より好ましくは500〜100000、さらに好ましくは600〜10000である。
【0029】
≪水硬性材料用収縮低減剤組成物≫
本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物は、本発明の水硬性材料用収縮低減剤と分散剤を含む。
【0030】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物中の本発明の水硬性材料用収縮低減剤の含有割合は、目的に応じて、任意の適切な割合を採用し得る。水硬性材料用収縮低減剤組成物中、好ましくは40〜99.9質量%、より好ましくは50〜99.5質量%である。
【0031】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物中の上記分散剤の含有割合は、目的に応じて、任意の適切な割合を採用し得る。水硬性材料用収縮低減剤組成物中、好ましくは0.1〜60質量%、より好ましくは0.5〜60質量%である。
【0032】
上記分散剤としては、例えば、任意の適切なセメント分散剤や、リグニンスルホン酸、ポリカルボン酸系、ナフタレン系、メラミン系、アミノスルホン酸系の減水剤が挙げられる。分散剤は1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。このような分散剤を含むことにより、水硬性材料中の粒子を分散させる作用が向上することから、水硬性材料が流動性に優れたものとなり、作業性が著しく向上し、水硬性材料中の水の含有量を低減して硬化物の強度や耐久性を向上させ得る。
【0033】
上記減水剤において、リグニンスルホン酸は、一般的にAE減水剤と呼ばれる。また、ポリカルボン酸系、ナフタレン系、メラミン系、アミノスルホン酸系の減水剤は、一般的に高性能AE減水剤と呼ばれる。
【0034】
本発明においては、上記分散剤として、高性能AE減水剤を用いることが好ましく、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤を用いることがより好ましい。優れた収縮低減機能と優れた減水機能を併せ持つ水硬性材料用収縮低減剤組成物を提供し得るからである。
ポリカルボン酸系高性能AE減水剤の具体例としては、3−メチル−3−ブテン−1−オール等の特定の不飽和アルコールにエチレンオキシド等を付加したアルケニルエーテル系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、これらの単量体と共重合可能な単量体から得られる共重合体および/またはその塩(特開昭62−68806号公報参照);(a)成分としてポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系化合物と(メタ)アクリル酸系化合物との共重合体および/またはその塩、(b)成分としてポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系化合物と無水マレイン酸との共重合体および/またはその加水分解物および/またはその塩、(c)成分としてポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系化合物とポリアルキレングリコール系化合物のマレイン酸エステルとの共重合体および/またはその塩、からなるセメント用分散剤(特開平7−267705号公報参照);A成分として(メタ)アクリル酸のポリアルキレングリコールエステルと(メタ)アクリル酸(塩)との共重合体、B成分として特定のポリエチレングリコールポリプロピレングリコール系化合物、C成分として特定の界面活性剤、からなるコンクリート混和剤(特許第2508113号公報参照);(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステルあるいはポリエチレン(プロピレン)グリコールモノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)、からなる共重合体(特開昭62−216950号公報参照);(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)、からなる共重合体(特開平1−226757号公報参照);(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)あるいはp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)、からなる共重合体(特公平5−36377号公報参照);ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルとマレイン酸(塩)との共重合体(特開平4−149056号公報参照);(メタ)アクリル酸のポリエチレングリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)、アルカンジオールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、分子中にアミド基を有するα,β−不飽和単量体、からなる共重合体(特開平5−170501号公報参照);ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸(塩)、(メタ)アリルスルホン酸(塩)あるいはp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)、からなる共重合体(特開平6−191918号公報参照);アルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体あるいはその加水分解物またはその塩(特開平5−43288号公報参照);ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、マレイン酸、これらの単量体と共重合可能な単量体、からなる共重合体あるいはその塩またはそのエステル(特公昭58−38380号公報参照);ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、(メタ)アクリル酸系単量体、これらの単量体と共重合可能な単量体、からなる共重合体(特公昭59−18338号公報参照);スルホン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび必要に応じてこれと共重合可能な単量体からなる共重合体またはその塩(特公昭62−119147号公報参照);アルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体と末端にアルケニル基を有するポリオキシアルキレン誘導体とのエステル化反応物(特開平6−271347号公報参照);アルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体と末端に水酸基を有するポリオキシアルキレン誘導体とのエステル化反応物(特開平6−298555号公報参照);ポリアルキレングリコールモノエステル系単量体と、(メタ)アクリル酸系単量体、不飽和ジカルボン酸系単量体、および(メタ)アリルスルホン酸系単量体の中から選ばれる1種以上の単量体との、共重合体(特開平7−223852号公報参照);オキシアルキレン基を有する単量体と、不飽和カルボン酸系単量体とを含む単量体成分を、炭素数3以上の炭化水素基を有するチオール系連鎖移動剤を用いて共重合することによって製造される、ポリカルボン酸系共重合体(特開2003−128738号公報参照);などが挙げられる。これらの中でも、3−メチル−3−ブテン−1−オール等の特定の不飽和アルコールにエチレンオキシド等を付加したアルケニルエーテル系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、これらの単量体と共重合可能な単量体から得られる共重合体および/またはその塩(特開昭62−68806号公報参照);ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルとマレイン酸(塩)との共重合体(特開平4−149056号公報参照);アルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体あるいはその加水分解物またはその塩(特開平5−43288号公報参照);ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、マレイン酸、これらの単量体と共重合可能な単量体、からなる共重合体あるいはその塩またはそのエステル(特公昭58−38380号公報参照);ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、(メタ)アクリル酸系単量体、これらの単量体と共重合可能な単量体、からなる共重合体(特公昭59−18338号公報参照);オキシアルキレン基を有する単量体と、不飽和カルボン酸系単量体とを含む単量体成分を、炭素数3以上の炭化水素基を有するチオール系連鎖移動剤を用いて共重合することによって製造される、ポリカルボン酸系共重合体(特開2003−128738号公報参照);が好ましい。
【0035】
本発明において、上記分散剤として高性能AE減水剤を用いる場合、本発明の水硬性材料用収縮低減剤と上記分散剤との配合割合としては、例えば、(水硬性材料用収縮低減剤/高性能AE減水剤)が、固形分の質量比で、好ましくは1/100〜100/1であり、より好ましくは1/100〜75/1であり、さらに好ましくは1/100〜50/1である。(水硬性材料用収縮低減剤/高性能AE減水剤)が上記範囲を外れると、高性能AE減水剤の減水性が阻害されるおそれがある。
【0036】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物は、本発明の作用効果を奏する限り、必要に応じて、その他の成分を含んでいても良い。その他の成分としては、例えば、水溶性高分子物質、高分子エマルジョン、遅延剤、早強剤・促進剤、鉱油系消泡剤、油脂系消泡剤、脂肪酸系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、オキシアルキレン系消泡剤、リン酸エステル系消泡剤、金属石鹸系消泡剤、シリコーン系消泡剤、AE剤、界面活性剤、防水剤、防錆剤、ひび割れ低減剤、膨張材、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、他の乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石膏が挙げられる。これらは1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。しかしながら、本発明の水硬性材料用収縮低減剤は、他の混和材料との組み合わせを必要とせず、安価で、硬化物の強度低下を抑制し、優れた収縮低減機能を有するという効果を発現できるので、上記に挙げたような他の混和材料は、必要でなければ、特に用いなくても良い。
【0037】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物に制泡機能を付加する場合には、空気連行成分や消泡成分を含めても良い。空気連行成分としては、例えば、カルボン酸型(樹脂酸塩、脂肪酸塩)、硫酸エステル型(高級アルコール硫酸エステル塩)、スルホン酸型(アルキルベンゼンスルホン酸塩)、エーテル型・エステルエーテル型(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル)が挙げられる。消泡成分としては、例えば、ポリエーテル系、脂肪酸・脂肪酸誘導体類、アルコール類が挙げられる。
【0038】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物の製造方法については、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、各成分を適宜混合して製造することができる。
【0039】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物は、優れた収縮低減機能と優れた減水機能を併せ持つ。本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物は、経時安定性が優れており、分離沈殿することなく相溶性に優れ、水/セメント比の適用範囲が広く、水/セメント比(質量比)で、好ましくは60%〜15%のコンクリートまで製造が可能である。従って、汎用性が高く、種々の用途のセメント組成物に添加して用いることが可能である。
【0040】
本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物を用いたセメント組成物とは、好ましくは、セメント、細骨材、および水から成るモルタル、さらに粗骨材から成るコンクリート等のセメント組成物に、本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物を所定の割合で添加したものである。
【0041】
セメント組成物の製造に用いるセメントとしては、例えば、普通、低熱、中庸熱、早強、超早強、耐硫酸塩等のポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、エコセメント、シリカヒュームセメントが挙げられる。また、セメント組成物中の粉体として、例えば、シリカヒューム、フライアッシュ、石灰石微粉末、高炉スラグ微粉末、膨張材、その他の鉱物質微粉末等が挙げられる。細骨材としては、例えば、川砂、山砂、海砂、砕砂、重量骨材、軽量骨材、スラグ骨材、再生骨材が挙げられる。粗骨材としては、例えば、川砂利、砕石、重量骨材、軽量骨材、スラグ骨材、再生骨材が挙げられる。水としては、例えば、JIS
A 5308付属書9に示される上水道水、上水道水以外の水(河川水、湖沼水、井戸水など)、回収水が挙げられる。
【0042】
コンクリート組成物中には、任意の適切な添加剤を加えても良い。例えば、硬化促進剤、凝結遅延剤、防錆剤、防水剤、防腐剤が挙げられる。
【0043】
コンクリート組成物の製造方法、運搬方法、打設方法、養生方法、管理方法などについては、任意の適切な方法を採用し得る。
【0044】
セメント組成物における、本発明の水硬性材料用収縮低減剤組成物の添加量は、目的に応じて任意の適切な量を採用し得る。例えば、0.5〜6.0質量%とすることが好ましい。また、セメント組成物100容量部当たりのセメント容量が14容量%を超える場合は、好ましくは1.0〜6.0質量%、より好ましくは1.0〜5.0質量%とすることが好ましい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は質量基準である。
【0046】
≪モルタル物性評価≫
1.モルタルの混練
所定量の試験液を秤量して水で希釈したもの225g、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)450g、セメント強さ試験用標準砂(JIS R5201−1997附属書2の5.1.3に規定:セメント協会)1350gを、ホバート型モルタルミキサー(ホバート社製、型番:N−50)を用い、JIS R5201−1997の方法に従い、モルタルの混練を行った。
また、モルタル空気量が試験液を添加しないモルタル(基準モルタル)の空気量に対して±3vol%以内となるように、必要に応じて消泡剤(ポリアルキレングリコール誘導体)を使用して調整した。
【0047】
2.モルタル空気量の測定
モルタル空気量の測定は、500mlメスシリンダーを用い、JIS A1174(まだ固まらないポリマーセメントモルタルの単位容積質量試験方法及び空気量の質量による試験方法(質量方法))に準拠して実施した。
【0048】
3.乾燥収縮低減性の評価
モルタルの混練を上記1と同様に実施した。次に、乾燥収縮低減性評価用のモルタル供試体(4×4×16cm)の作成を、JIS A1129に従って実施した。型枠には予めシリコングリースを塗布して止水すると共に容易に脱型できるようにした。また、供試体の両端にはゲージプラグを装着した。混練して得られたモルタルを流し込んだ型枠を容器に入れ、密閉し、20℃で保管し、初期養生を行った。1日後に脱型し、供試体に付着したシリコングリースを、たわしを用いて水で洗浄し、続いて、20℃の静水中で6日間養生(水中養生)した。JIS A1129に従い、ダイヤルゲージ((株)西日本試験機製)を使用し、静水中で6日間養生した供試体の表面の水を紙タオルで拭き取った後、直ちに測長し、この時点の長さを基準とした。その後、温度20℃、湿度60%に設定した恒温恒湿室内に保存し、適時測長した。この際、長さ変化比は、下記式81)で示されるように、基準モルタルの収縮量に対する、試験液添加モルタルの収縮量の比とし、値が小さいほど、収縮を低減できることを示す。
長さ変化比
={(試験液添加モルタルの収縮量)/(基準モルタルの収縮量)}×100
【0049】
4.モルタル圧縮強度の評価
モルタルの混練を上記1と同様に実施した。得られたモルタルを圧縮強度評価用の供試体型枠(直径5cm、高さ10cm)に入れ、密閉して20℃で保管し、初期養生を行った。1日後に脱型し、20℃で水中養生を行い、材齢7日および28日時点で圧縮強度の測定を実施した。この際、圧縮強度比は、下記式(2)で示されるように、基準モルタルの圧縮強度に対する、試験液添加モルタルの圧縮強度の比とし、値が大きいほど、圧縮強度の低下が抑制されることを示す。
圧縮強度比
={(試験液添加モルタルの圧縮強度)/(基準モルタルの圧縮強度)}×100
【0050】
〔実施例1〜9〕
表1に示す化合物I、IIを用いて、表2に示す配合で収縮低減剤を調製した。得られた収縮低減剤を用いて、モルタル物性評価を行った。結果を表2に示す。
【0051】
〔比較例1〕
基準モルタルを用いて、モルタル物性評価を行った。結果を表2に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、他の混和材料との組み合わせを必要とせず、安価で、硬化物の強度低下を抑制し、優れた収縮低減機能を有する、汎用性の高い水硬性材料用収縮低減剤と、そのような水硬性材料用収縮低減剤を含む、優れた収縮低減機能と優れた減水機能を併せ持つ水硬性材料用収縮低減剤組成物を提供することができるので、これらはセメント用の添加剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記A成分およびB成分を含有し、該A成分と該B成分の比率が質量比でA成分/B成分=1/99〜60/40である、水硬性材料用収縮低減剤。
A成分:一般式(1)で表される化合物の少なくとも1種。
【化1】

(一般式(1)中、Rは水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、AOは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、xはオキシアルキレン基AOの平均付加モル数を表し、xは1〜100である。)
B成分:トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタトリオール、4価以上の多価アルコールのアルキレンオキシド付加物、ポリアルキレンイミンから選ばれる少なくとも1種。
【請求項2】
前記B成分におけるアルキレンオキシド付加物中のオキシアルキレン基が炭素原子数2〜3のオキシアルキレン基である、請求項1に記載の水硬性材料用収縮低減剤。
【請求項3】
前記B成分におけるアルキレンオキシド付加物中のオキシアルキレン基がオキシエチレン基である、請求項2に記載の水硬性材料用収縮低減剤。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれかに記載の水硬性材料用収縮低減剤と分散剤を含む、水硬性材料用収縮低減剤組成物。
【請求項5】
前記分散剤が、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤である、請求項4に記載の水硬性材料用収縮低減剤組成物。

【公開番号】特開2009−274913(P2009−274913A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127982(P2008−127982)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】