説明

水硬性組成物

【課題】水溶性アルカリ量の異なるセメントを使用しても、初期の流動性に優れ、かつ流動性の経時変化が小さく流動保持性に優れた水硬性組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】水溶性アルカリ量が0.1〜0.6質量%のセメント、及び側鎖にポリオキシアルキレン鎖を有するポリカルボン酸系減水剤であって、重量平均分子量が5000〜25000であり、カルボン酸誘導体由来の繰り返し単位数nとポリオキシアルキレン鎖を有する繰り返し単位数mの合計が、15〜35であり、nとmの合計に対するnの割合が、0.70〜0.95であり、ポリオキシアルキレン鎖のオキシアルキレン単位数aが、15〜100であるポリカルボン酸系減水剤を含有することを特徴とする水硬性組成物。この水硬性組成物を、ペースト、モルタル、コンクリートに使用した場合に、混練直後の流動性とその保持性の変動を小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性アルカリ量の異なるセメントを使用しても、初期の流動性に優れ、かつ流動性の経時変化が小さく流動保持性に優れた水硬性組成物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントは水と反応して硬化する水硬性材料であり、ペースト、モルタル、コンクリート等の水硬性組成物として大量に使用されている。これらの水硬性組成物の製造に当たっては、混練時の流動性を高めるために種々の減水剤が添加されている。近年、減水剤の進歩により低水/セメント比の組成物が容易に製造されるようになってきたが、高性能化にともない、ロットや製造工場の違い等によるセメントの品質や組成の変動に対して、減水剤が敏感に影響を受け、ひいては水硬性組成物の特性までもが影響を受ける傾向があることが知られている。
【0003】
ポリカルボン酸系の高性能AE減水剤においても、種々の構造のものが開発されているが、低水/セメント比で使用される場合には、上記のような傾向が顕著であり、水硬性組成物の流動性に影響が及ぶことがあるため、セメントの品質や組成の変動に対して、影響を受けにくいポリカルボン酸系減水剤が求められている。
【0004】
特許文献1には、硫酸イオン濃度の変動の影響を受けにくい減水剤が開示されている。この減水剤を使用した場合、水硬性組成物における初期の流動性の一応の改善は見込めるが、流動性の経時的変化への作用は検討されていない。
【0005】
特許文献2には、水溶液部分の硫酸イオン濃度が2500mg/kg以上、40000mg/kg以下である場合に、2種類のポリカルボン酸系減水剤を組み合わせて、水硬性組成物の流動性等を改善する方法が開示されている。この方法では、流動性等における一応の改善は見込めるが、2種類の減水剤の組み合わせが必要であり、煩雑である。
【0006】
特許文献3には、ポリカルボン酸系減水剤を配合した水硬性組成物が開示され、組成物における水溶性アルカリ量が規定されている。しかしながら、特許文献3では、水溶性アルカリ量が変動した場合においても、流動性と流動保持性の両方に優れた水硬性組成物を与えるための方策については検討されていない。
【特許文献1】特開2000−327385号公報
【特許文献2】特開2003−335566号公報
【特許文献3】特開平11−302062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、水溶性アルカリ量の異なるセメントを使用しても、初期の流動性に優れ、かつ流動性の経時変化が小さく流動保持性に優れた水硬性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一般に、水硬性組成物におけるポリカルボン酸系減水剤の分散作用は、セメント粒子に吸着した分子同士の重なりによって生じる立体的な斥力に起因すると説明できる。側鎖にポリオキシアルキレン鎖を有するポリカルボン酸系減水剤の場合、カルボン酸誘導体由来の繰り返し単位(吸着ユニット)がセメント粒子に吸着し、ポリオキシアルキレン側鎖を有する繰り返し単位(側鎖ユニット)が斥力に関係すると考えられる。本発明者らは、種々のポリカルボン酸系減水剤を検討した結果、水溶性アルカリ量が異なるセメントを用いても安定した流動性と流動保持性が得られる、吸着ユニットと側鎖ユニットの組み合わせを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、水溶性アルカリ量が0.1〜0.6質量%のセメント、及び側鎖にポリオキシアルキレン鎖を有するポリカルボン酸系減水剤であって、重量平均分子量が5000〜25000(ポリエチレングリコール/ポリエチレンオキサイド換算)であり、カルボン酸誘導体由来の繰り返し単位(吸着ユニット)数nとポリオキシアルキレン鎖を有する繰り返し(側鎖ユニット)数mの合計が、15〜35であり、nとmの合計に対するnの割合が、0.70〜0.95であり、ポリオキシアルキレン鎖のオキシアルキレン単位数aが、15〜100であるポリカルボン酸系減水剤を含有することを特徴とする水硬性組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、水溶性アルカリ量が0.1〜0.6質量%のセメントを使用した水硬性組成物の製造方法であって、添加する減水剤を、側鎖にポリオキシアルキレン鎖を有するポリカルボン酸系減水剤であって、重量平均分子量が5000〜25000であり、カルボン酸誘導体由来の繰り返し単位(吸着ユニット)数nとポリオキシアルキレン鎖を有する繰り返し単位(側鎖ユニット)数mの合計が、15〜35であり、nとmの合計に対するnの割合が、0.70〜0.95であり、ポリオキシアルキレン鎖のオキシアルキレン単位数aが、15〜100であるポリカルボン酸系減水剤とする方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、使用するセメントの水溶性アルカリ量が異なっても、初期の流動性に優れ、かつ経時変化が小さく流動保持性に優れた水硬性組成物が提供される。このため、本発明の水硬性組成物によれば、高強度・高流動性のコンクリート等を安定的に製造することができ、品質管理の容易化、施工不良の回避、材料コストの低減などに貢献することが期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明を詳しく説明する。本発明の水硬性組成物は、特定のセメント及びポリカルボン酸系減水剤を含有する。
【0013】
(セメント)
本発明におけるセメントは、水溶性アルカリ量が0.1〜0.6質量%である。使用するセメントの水溶性アルカリ量が異なっても、この範囲にあれば、後述する特定のポリカルボン酸系減水剤を添加することによって、優れた流動性と流動保持性を有する水硬性組成物を得ることができる。なかでも、セメントの水溶性アルカリ量が0.2〜0.4質量%、特に、0.26〜0.35質量%の場合に、効率的かつ効果的に、優れた流動性と流動保持性が得られる。なお、本発明において、水溶性アルカリ量はJCAS I−04−2004「セメントの水溶性成分の分析方法」によってNaO及びKOの合計量(ただし、KOはNaOモル換算値)として求めることができる。
【0014】
なお、ポリカルボン酸系減水剤の流動性に影響を及ぼす少量成分として硫酸イオンが知られていることは、特許文献1、2に記載の通りである。しかしながら、水硬性材料中の硫酸イオンはせっこうやエトリンガイト等の不溶性の水和物として析出するために、硫酸イオン濃度は時間の経過とともに低下し、一定ではない。また、硫酸イオンは、クリンカー中の硫酸イオンやセメント中のせっこうに由来するが、由来によって流動性に及ぼす影響は異なると考えられる。一方、水溶性アルカリは、大部分がクリンカー中の硫酸イオンに由来する。よって、硫酸イオン濃度を指標として減水剤を選択するよりも、水溶性アルカリ量を指標として減水剤を選定することが、優れた流動性と流動保持性を有する水硬性組成物の製造に適していると考えられる。
【0015】
本発明におけるセメントには、JIS R 5201に規定される普通ポルトランドセメントや早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、JIS R 5211に規定される高炉セメント、JIS R 5212に規定されるシリカセメント、JIS R 5213に規定されるフライアッシュセメント、JIS R 5214に規定されるエコセメント等を使用することができる。また、これらのセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、メタカオリン、シリカ粉、石灰石微粉末等をさらに混合したセメントも使用することができる。さらに、セメントの構成鉱物であるアルミネート相とフェライト相の量が合計で20〜24質量%のセメントや、これらの構成鉱物量がさらに高いセメントを使用することもできる。なお、構成鉱物量は混合物量を補正してボーグ式によって算出できる。
【0016】
本発明におけるポリカルボン酸系減水剤は、側鎖にポリオキシアルキレン鎖を有するポリカルボン酸系減水剤であって、重量平均分子量が5000〜25000であり、カルボン酸誘導体由来の繰り返し単位(吸着ユニット)数nとポリオキシアルキレン鎖を有する繰り返し単位(側鎖ユニット)数mの合計(主鎖長)が、15〜35であり、nとmの合計に対するnの割合(カルボン酸密度)が、0.70〜0.95であり、ポリオキシアルキレン鎖のオキシアルキレン単位数a(側鎖長)が、15〜100であるポリカルボン酸系減水剤である。このようなポリカルボン酸系減水剤は、所定の吸着ユニットと側鎖ユニットの構造をもつ単量体を所定量用いて、重合させることによって製造することができる。重合は、重合開始剤(例えば、過酸化ベンゾイル)を用いた塊状重合であっても、溶媒中での重合でもよい。ポリカルボン酸系減水剤の重量平均分子量はGPC分析により求めることができる。また、側鎖長、主鎖長、主鎖中のカルボン酸密度は、分子量分布のピークトップの分画成分のNMR分析により求めたプロトン量から求めることができる。
【0017】
本発明におけるポリカルボン酸系減水剤の重量平均分子量は、5000〜25000である。重量平均分子量がこの範囲にあると、分散性が十分であり、かつ粘性も適切である。重量平均分子量は、好ましくは6000〜23000、特に好ましくは7000〜22000である。
【0018】
本発明におけるポリカルボン酸系減水剤のカルボン酸誘導体由来の繰り返し単位(吸着ユニット)数nとポリオキシアルキレン鎖を有する繰り返し単位(側鎖ユニット)数mの合計(主鎖鎖)は、15〜35である。主鎖長が、この範囲であれば、吸着ユニットによるセメントへの吸着量が十分であり、優れた分散性が発揮される。主鎖長は、好ましくは20〜30である。
【0019】
本発明におけるポリカルボン酸系減水剤における、nとmの合計に対するnの割合(カルボン酸密度)は、0.70〜0.95である。カルボン酸密度がこの範囲にあると、吸着ユニットによるセメントへの吸着量が十分であり、かつ側鎖ユニットの存在と相俟って、優れた分散性がもたらされる。カルボン酸密度は、好ましくは0.75〜0.90である。
【0020】
本発明におけるポリカルボン酸系減水剤における、ポリオキシアルキレン鎖のオキシアルキレン単位数(側鎖長)は、15〜100である。側鎖長がこの範囲にあると、分散性が十分であり、かつ粘性も適切である。側鎖長は、好ましくは25〜90である。
【0021】
例えば、ポリカルボン酸系減水剤における、カルボン酸誘導体由来の繰り返し単位(吸着ユニット)は、式(1):
【0022】
【化3】

【0023】
(ここで、
〜Rは、それぞれ独立して、水素又はメチル、好ましくは、R及びRは水素、Rはメチルであり、
Mは、水素、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム)、アンモニウム又はアミン、好ましくは、アルカリ金属、より好ましくはナトリウムである)で示すことができ、
ポリオキシアルキレン鎖を有する繰り返し単位は、
式(2):
【0024】
【化4】

【0025】
(ここで、
〜Rは、それぞれ独立して、水素又はメチル、好ましくは、R及びRは水素、Rはメチルであり、
AOは、オキシエチレン又はオキシプロピレン、好ましくは、オキシエチレンであり、
は、水素又はC〜C18アルキル、好ましくは、水素又はメチルであり、
pは、0〜2の数、好ましくは0であり、
qは、0〜1の数、好ましくは1であり、
aは、15〜100、好ましくは25〜90である)で示すことができる。
【0026】
ポリカルボン酸系減水剤における吸着ユニット及び側鎖ユニットの存在の仕方は、特に限定されず、また、本発明の効果を損なわない限り、吸着ユニット及び側鎖ユニット以外の単位を含んでもよい。例えば、式(1)及び(2)で示される単位を含むポリカルボン酸系減水剤の場合、それぞれの単位が、ブロックで、ランダムで、又は交互に存在することができ、また、本発明の効果を損なわない限り、構造中に、式(1)及び(2)で示される単位以外の単位を含んでいてもよく、例えばマレイン酸誘導体に由来する単位や、アルキル基に結合したベンゼン環、カルボニル炭素に結合したベンゼン環を末端に有する単位等が挙げられる。
【0027】
本発明において、ポリカルボン酸系減水剤は、セメントに対して固形分換算で0.05〜1.00質量%であることが好ましい。ポリカルボン酸系減水剤がこの範囲であると、好ましい流動性が得られ、かつ硬化性も良好である。ポリカルボン酸系減水剤は、セメントに対して、より好ましくは、固形分換算で0.1〜0.8質量%であり、さらに好ましくは、0.2〜0.6質量%である。ここで、ポリカルボン酸系減水剤の固形分は、ポリカルボン酸系減水剤を105℃で48時間乾燥した残分とする。
【0028】
本発明の水硬性組成物は、さらに水、及び必要に応じて細骨材、粗骨材を含むことができる。セメントに対する水(水/セメント比)は、25〜45質量%が好ましい。水/セメント比がこの範囲にあると、強度を確保しつつ、所定の流動性を得ることができ、かつ材料分離が抑制され、管理上も便利である。
【0029】
また、本発明の水硬性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、硬化促進剤、硬化遅延剤、収縮低減剤、鉄筋防錆剤等、公知の添加剤や膨張材等の特殊混和材を含むことができる。
【0030】
本発明の水硬性組成物は、低水/セメント比のコンクリート等とした場合に、水硬性組成物の配合あるいは調合の大幅な見直しを行わずに高強度・高流動性を実現させることができる。
【0031】
(製造方法)
他の態様において、本発明は、水溶性アルカリ量が0.1〜0.6質量%のセメントを使用した水硬性組成物の製造方法であって、添加するポリカルボン酸系減水剤を、側鎖にポリオキシアルキレン鎖を有するポリカルボン酸系減水剤であって、重量平均分子量が5000〜25000であり、カルボン酸誘導体由来の繰り返し単位(吸着ユニット)数nとポリオキシアルキレン鎖を有する繰り返し単位(側鎖ユニット)数mの合計(主鎖長)が、15〜35であり、nとmの合計に対するnの割合(カルボン酸密度)が、0.70〜0.95であり、ポリオキシアルキレン鎖のオキシアルキレン単位数(側鎖長)aが、15〜100であるポリカルボン酸系減水剤とする方法に関する。具体的には、ポリカルボン酸系減水剤を、ペースト、モルタル、コンクリート等の製造工程で添加して製造することができる。
【実施例】
【0032】
以下、実験例に基づいて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実験例によって限定されるものではない。
【0033】
(実験例1〜4)
[使用材料]
以下に示す材料を使用した。
(1)セメント
普通ポルトランドセメントを用いた。表1にJIS R 5204−2002「ポルトランドセメントの蛍光X線分析方法」による試験結果(質量%)を示す。NaO及びKOについては、カッコ内に、JCAS I−04−2004「セメントの水溶性成分の分析方法」の測定結果を示す。ROに関するカッコ内の値が、水溶性アルカリ量に相当する。
【0034】
【表1】

【0035】
(2)減水剤
表2に示すポリカルボン酸系減水剤を用いた。いずれも式(3):
【0036】
【化5】

【0037】
(式中、Rは、メチルであり、吸着ユニット及び側鎖ユニットはブロックで存在しているとは限らない)で表すことができ、主鎖長、側鎖長、主鎖のカルボン酸密度、は、試料の分子量分布のクロマトグラム中最も面積の大きいピークの最もピーク高さの高い、ピークトップの分画成分を用いたNMR測定により、式(3)中、A、B、Cの位置で示したプロトンから求めた。NMR測定結果を図1〜4に示す。
重量平均分子量は昭和電工(株)製 Shodex GPC−101を用いて測定した。検出器は、昭和電工(株)製 示差屈折率検出器RID、カラムは、昭和電工(株)製 Shodex OHpak SB−806M HQを2本接続して用い、使用条件は、カラム温度40℃、溶離液は、容積比で100mM硝酸ナトリウム水溶液/メタノール=7/3、溶離液流量は、1.0mL/分で行った。検量線の作成には標準物質としてポリエチレングリコール/ポリエチレンオキサイドを用いた。
また、NMRは、日本電子(株)製 JNM−AL400、条件は、磁場強度9.39T(H共鳴周波数400MHz)、溶媒は重水で行った。
【0038】
表2の減水剤A〜Dのうち、減水剤A及びBが、本発明のポリカルボン酸系減水剤に相当し、それぞれ、実施例1、2で使用した。一方、減水剤Cは、カルボン酸密度の点で、また減水剤Dは、主鎖長の点で、それぞれ本発明のポリカルボン酸系減水剤には該当せず、比較例1、2で使用した。
【0039】
【表2】

【0040】
(4)水(W)
蒸留水を用いた。
【0041】
(5)骨材
砂はJIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」に規定されている標準砂を用いた。
【0042】
(6) 硫酸カリウム
硫酸カリウム(試薬特級)を用いた。
【0043】
[流動性試験方法]
JASS 5T−701−2005「高強度コンクリート用セメントの品質基準(案)」に準拠して、モルタルを混練した。減水剤A〜Dの配合量は、表3のとおりであり、モルタルにおける、セメントに対する、水と減水剤A〜Dの合計量を30質量%とした。空気量調整剤としてBASFポゾリス社製のマイクロエア404を用いて、空気量を7.0%と以下した。
【0044】
得られたモルタルについて、流動性の測定をJASS 5T−701−2005「高強度コンクリート用セメントの品質基準(案)」に準拠して行った。流動性の測定項目は、混練直後の0打フロー、60分経過後の0打フローとした。
【0045】
流動性の測定は、水溶性アルカリ量の影響を確認するために硫酸カリウムを水溶性アルカリ量としてセメントの0.1質量%に相当する量を添加した場合についても行った。混練直後の0打フローが、硫酸カリウムの無添加時の0打フロー(混練直後)となるのに必要な減水剤の量を求め、無添加時の減水剤に対する割合を算出し、水溶性アルカリによる減水剤量の変動率として評価した。また、60分後の0打フローを求め、混練直後の0打フローに対する、60分経過後の0打フローの割合を算出し、フローの変動率として評価した。
【0046】
流動性試験の結果を表3の実験例1〜4に示す。
【0047】
【表3】

【0048】
表3より、本発明の減水剤A、Bを使用した水硬性組成物は、水溶性アルカリが増しても、初期の流動性に優れ、かつ流動性の経時的変化が小さく、流動性保持性に優れていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】減水剤AのNMR測定結果である。
【図2】減水剤BのNMR測定結果である。
【図3】減水剤CのNMR測定結果である。
【図4】減水剤DのNMR測定結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性アルカリ量が0.1〜0.6質量%のセメント、及び
側鎖にポリオキシアルキレン鎖を有するポリカルボン酸系減水剤であって、重量平均分子量が5000〜25000であり、カルボン酸誘導体由来の繰り返し単位数nとポリオキシアルキレン鎖を有する繰り返し単位数mの合計が、15〜35であり、nとmの合計に対するnの割合が、0.70〜0.95であり、ポリオキシアルキレン鎖のオキシアルキレン単位数aが、15〜100である、ポリカルボン酸系減水剤
を含有することを特徴とする水硬性組成物。
【請求項2】
ポリカルボン酸系減水剤における、カルボン酸誘導体由来の繰り返し単位が、
式(1):
【化1】


(ここで、
〜Rは、それぞれ独立して、水素又はメチルであり、
Mは、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又はアミンである)で示され、
ポリオキシアルキレン鎖を有する繰り返し単位が、
式(2):
【化2】


(ここで、
〜Rは、それぞれ独立して、水素又はメチルであり、
AOは、オキシエチレン又はオキシプロピレンであり、
は、水素又はC〜C18アルキルであり、
pは、0〜2の数であり、
qは、0〜1の数であり、
aは、15〜100である)で示される、請求項1記載の水硬性組成物。
【請求項3】
さらに、水を含有し、セメントに対して、水が25〜45質量%であり、ポリカルボン酸系減水剤が固形分換算で0.05〜1.00質量%である、請求項1又は2記載の水硬性組成物。
【請求項4】
水溶性アルカリ量が0.1〜0.6質量%のセメントを使用した水硬性組成物の製造方法であって、添加する減水剤を、側鎖にポリオキシアルキレン鎖を有するポリカルボン酸系減水剤であって、重量平均分子量が5000〜25000であり、カルボン酸誘導体由来の繰り返し単位数nとポリオキシアルキレン鎖を有する繰り返し単位数mの合計が、15〜35であり、nとmの合計に対するnの割合が、0.70〜0.95であり、ポリオキシアルキレン鎖のオキシアルキレン単位数aが、15〜100であるポリカルボン酸系減水剤とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−256148(P2009−256148A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108763(P2008−108763)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】