説明

水系の発電運用計画作成支援装置

【課題】 多くの制約条件や複雑な諸条件の下においても、より柔軟に適切な発電運用計画を作成できる水系の発電運用計画作成支援装置を得る。
【解決手段】 自動運用計画計算装置2は、基準日量に基づいて、運用計画作成条件設定手段2aに設定された条件下で運用計画作成手段2aにて運用データを求める。運用データが満足すべきものでない場合は、類似運用計画選択装置3により過去の実績データを検索し、抽出した実績データに基づいて運用データを計算する。さらに、運用データが満足すべきものでない場合は、運用計画修正装置6により表示装置8に表示された発電放流量カーブ及びダム水位カーブの一方をドラッグアンドドロップにより修正する。他方のカーブは運用カーブ自動修正手段2により自動修正される。これにより、運用計画作成条件として与えきれない複雑な諸条件をも考慮した適切な発電運用計画を柔軟に作成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水力発電所群に対する発電運用計画の作成作業を、計算機により支援する水系の発電運用計画作成支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、計算機による水系発電所群の発電運用計画作成支援装置として、水力発電所群日間発電計画立案方式がある(例えば、特許文献1参照)。これらの発電計画の作成に用いる自動計算のアルゴリズムは、縮約勾配法等によって行われており、ダム水位以外の制約条件違反の解消には予め定められたルールが用いられている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−91799号公報(段落番号0014〜0016及び図1)
【非特許文献1】片山徹他 連接水系の日間運用計画における最適化手法 電力技術研究会資料PE−89−187、社団法人電気学会、1989年7月21日、P139−148
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記縮約勾配法や水力発電所群日間発電計画立案方式は、計算機処理に適しており、ある条件下で最適解を出すことに関しては、非常に適したものであると考えられる。しかし、その計算において与える制約条件(ルール)等を整定することは、最も困難な作業である。これらのルールとして、河川法、発電機の運転制約(起動停止頻度、発電機の短時間運用の禁止、周辺住民への配慮による夜間運転の禁止等)、ダムの特性、河川の流下遅れ等があげられる。また、発電運用計画の立案に当たっては、当日までの降雨出水状況(渇水・濁水)、天候、季節(台風、雪解け)、鮎釣りやカヌー大会等の利水の考慮等の複雑な条件を考慮して計画する必要がある。しかし、時々刻々と変化する全ての情報を計算機に取り込んで処理することは困難である。
【0005】
さらに、河川状況を観測するセンサーの精度や観測地点数の限界等、情報収集手段にも限界がある。このため、全ての制約条件や複雑な諸条件の全てを計算機上でルール化し、現在の状態を全て計算機に取り込んで、計画を自動立案する発電運用計画作成支援装置を構築することは困難である。さらに、従来の発電運用計画作成支援装置においては、計算機上で全ての諸条件を考慮するわけではなく、ある条件を割り切って構築しているため、必ずしも運用計画作成者が望む最適解が得られるとは限らない。
【0006】
このため、従来の発電機運転計画や各貯水池の水位計算の自動計算では、作成者が望んでいる解が得られない場合、マニュアルで入力条件を変更し、発電機運転計画や各貯水池の水位計算の再計算を繰り返すことで計算の収束を図ったり、自動計算をあきらめてマニュアルで計画を作成したりすることも多かった。
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたものであり、多くの制約条件や複雑な諸条件の下においても、より柔軟に適切な発電運用計画を作成できる水系の発電運用計画作成支援装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る水系の発電運用計画作成支援装置においては、複数の貯水池が連なる水系に設けられた発電所の発電運用計画の作成を支援するものであって、基準日量設定手段と、自動運用計画計算装置と類似運用計画選択装置との少なくとも一方と、運用計画修正装置とを備え、基準日量設定手段は各貯水池における1日の放水水量である基準日量を設定するものであり、自動運用計画計算装置は基準日量に基づき各発電所の発電機運転計画及び各貯水池の水位計画を自動計算するものであり、類似運用計画選択装置は各発電所の発電機運転計画及び各貯水池の水位計画の実績データの中から所定の条件を満たす実績データを検索して抽出データとして出力する類似データ検索手段を有し抽出データに基づいて各発電所の発電機運転計画及び各貯水池の水位計画を自動計算するものであり、運用計画修正装置は各発電所の発電機運転計画及び各貯水池の水位計画を画面上に表示する表示手段とこの表示された各発電所の発電機運転計画及び各貯水池の水位計画の一方を修正操作する修正操作手段と各発電所の発電機運転計画及び各貯水池の水位計画の一方の修正操作に応じて他方を自動修正する運用計画自動修正手段とを有するものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、複数の貯水池が連なる水系に設けられた発電所の発電運用計画の作成を支援するものであって、基準日量設定手段と、自動運用計画計算装置と類似運用計画選択装置との少なくとも一方と、運用計画修正装置とを備え、基準日量設定手段は各貯水池における1日の放水水量である基準日量を設定するものであり、自動運用計画計算装置は基準日量に基づき各発電所の発電機運転計画及び各貯水池の水位計画を自動計算するものであり、類似運用計画選択装置は各発電所の発電機運転計画及び各貯水池の水位計画の実績データの中から所定の条件を満たす実績データを検索して抽出データとして出力する類似データ検索手段を有し抽出データに基づいて各発電所の発電機運転計画及び各貯水池の水位計画を自動計算するものであり、運用計画修正装置は各発電所の発電機運転計画及び各貯水池の水位計画を画面上に表示する表示手段とこの表示された各発電所の発電機運転計画及び各貯水池の水位計画の一方を修正操作する修正操作手段と各発電所の発電機運転計画及び各貯水池の水位計画の一方の修正操作に応じて他方を自動修正する運用計画自動修正手段とを有するものであるので、多くの制約条件や複雑な諸条件の下においても、より柔軟に適切な発電運用計画を作成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1〜図3は、この発明の実施の一形態を示すものであり、図1は水系の発電運用計画作成支援装置の構成を示す構成図、図2は発電運用計画作成支援装置の動作を示すフローチャートである。図3は、運用カーブの変化点の操作を説明するための説明図である。図1において、発電運用計画作成支援装置は基準日量設定手段1、自動運用計画計算装置2、類似運用計画選択装置3、運用計画修正装置6、表示装置8を有する。自動運用計画計算装置2は、運用計画作成条件設定手段2a、運用データ計算手段2b、次行程指示手段2cを有する。類似運用計画選択装置3は、検索条件設定手段3a、類似データ検索手段3b、運用計画作成条件設定手段3c、運用データ計算手段3d、次行程指示手段3eを有する。
【0010】
また、運用計画修正装置6は、修正操作手段としての変化点操作手段6a、運用計画自動修正手段としての運用カーブ自動修正手段6b、運用計画作成条件設定手段6cを有する。運用計画修正装置6は、自動運用計画計算装置2や類似運用計画選択装置3により得られた結果が、運用計画作成者が望む最適解が得られていない場合や、水位違反や制約条件を解消しきれていない場合に、マニュアルで運用計画を修正するためのものである。変化点操作手段6aは、表示装置8の画面上に表示された運用カーブ(発電放流量カーブ及びダム水位カーブ)上の任意の点をドラッグアンドドロップにより任意の位置に移動させることにより、運用カーブの変化点を変更したり、削除したり、追加することが可能なものである。
【0011】
次に、発電運用計画作成支援装置を使用しての一連の作業について説明する。以下の説明においては、翌日の日間発電運用計画(以下、単に発電運用計画という)を立案するものとして説明する。まず、従来から一般的に使用されている自動運用計画計算装置2により、運用データの自動作成を行う。この詳細を、図2のフローチャートにより説明する。なお、以下に説明するステップS11〜S20が自動運用計画計算装置2において実行される自動運用計画計算フローF1であり、S21〜S28が類似運用計画選択装置3において実行される類似運用計画選択支援フローF2である。また、S31〜S34が、運用計画修正装置6において実行される運用計画修正支援フローF3である。
【0012】
まず、基準日量設定手段1により、発電運用計画において目標とする各ダム(本発明においては、貯水池と特に区別しないで適宜用いている)における基準日量を設定する(ステップS11)。自動運用計画計算装置2の運用計画作成条件設定手段2aに、季節(台風、雪解け)の影響なども考慮した発電使用水量の上下限等の運用計画作成条件を設定する(ステップS12)。なお、河川法による制限、発電機の運転制約(起動停止頻度、発電機の短時間運用の禁止、周辺住民への配慮による夜間運転禁止等)、ダムの特性、河川の流下遅れ等は予め本装置のロジック(プログラム)に組み込まれており、ここでは設定を要しない。
【0013】
運用データ計算手段2bは、各貯水池の基準日量の範囲で、各発電所の単位時間あたりの使用水量を、夜間帯・深夜帯は少なくし、昼間帯に盛り上げを行い、使用単位水量あたりの発電価値が最も高くなるように自動配分する計算を行い、運用データ(発電放流量、ゲート放流流量、ダムの水位、ダムへの流入量他)等の計算を行う(ステップS13)。この自動配分の計算に際して、ダムの出発水位と上ダムからの流入及び使用水量を用いて、ダムの水位状況を監視しながら行う。次に、運用データが次行程指示手段2cに設定された運用計画作成条件を満たしているかどうか判断する(ステップS14)。
【0014】
ステップS14において、運用データが条件を満たしていなければ繰り返し計算の回数が規定回数を超えたかどうか判定し(ステップS15)、超えていなければ運用計画作成条件を変更し(ステップS16)、ステップS13へ戻り、ステップS14以下の計算を繰り返し、運用データが運用計画作成条件を満たせば(ステップS15)、ステップS17へ行く。満たさなければ規定回数を超えるまで運用計画作成条件を変更しながら計算を繰り返す(ステップS13〜S16)。ステップS14において、運用データが条件を満たしていれば、得られた運用データが発電放流量カーブ及びダム水位カーブ(実際は折れ線であるが)として表示される(ステップS17)。そして、運用計画作成者がその内容を確認し、次行程指示手段2cにより次行程の指示を行う。次行程の指示内容は、作業終了、類似データ検索、運用カーブ修正の3種類である。
【0015】
このステップS17において、運用計画作成者は、表示装置8に表示された発電放流量カーブ及びダム水位カーブを含む運用データを、上記運用計画作成条件に入りきらなかった鮎釣り、カヌー大会、利水などの複雑な条件をも勘案しながらチェックして、満足すべきものかどうか判定し、問題がなければ当該運用データを採用する。この場合は、次行程指示手段2cに「終了」を設定する。上記運用データが満足すべきものでない場合は、類似運用計画選択装置3により類似データによる運用データの作成を行う。この場合は、次行程指示手段2cに「類似データ検索」を設定する。また、類似データによる運用データの作成を行わないで、直接運用計画修正装置6による運用カーブの修正を行う場合は、次行程指示手段2cに「運用カーブ修正」を設定する。
【0016】
ステップS19において、次行程が類似データ検索であれば類似運用計画選択支援フローF2のステップS21へ行く。ステップS19において、次行程が類似データ検索でなければステップS20へ行く。ステップS20において、次行程が運用カーブ修正であれば、運用計画修正支援フローF3のステップS31へ行き、そうでなければ自動運用計画計算装置2による自動計算により満足すべき運用データが得られたとして終了する。以上が自動運用計画計算フローF1である。
【0017】
類似運用計画選択装置3においては、過去の類似データを検索して抽出した類似データに基づいて運用データを作成する。まず、検索条件設定手段3aに、検索条件を設定する(ステップS21)。検索条件としては、各ダムの過去の基準日量範囲や、季節、曜日、作業の有無等、運用計画立案時に必要な条件を用いる。類似データ検索手段3bは、検索条件設定手段3aに設定された条件に従って、過去の運用計画の実績データから検索条件に適う実績データ(類似データ)を検索する(ステップS22)。なお、基準日量範囲を検索条件にする場合の検索処理においては、設定された基準日量データと過去の実績データとの誤差比率を計算した後、予め条件ごとに指定された優先順位で比較し、誤差比率の少ない順に選択する。また、それ以外の検索条件は具体的には例えば以下のような条件設定を意味する。すなわち、季節条件は、検索実行日の前月、当月、翌月を検索条件とする。曜日については、平日、土曜日、日曜日を抽出条件とする。作業設定条件とは、発電機等の点検作業の有り無しを検索条件とすることを意味している。
【0018】
この場合、次のような方法を選択することができ、過去の実績データの中から最適な実績データを抽出することができる。
1.基準日量に一致あるいは類似する同一の日における各発電所の発電機運転計画を、水系全体一括で1日又は複数日分抽出して、その中から1日分を選択して抽出データとして出力する一括抽出方法。
2.基準日量に一致あるいは類似する同一の日における各発電所の発電機運転計画を、水系全体を複数の貯水池群にブロック割りし、貯水池群ごとに1日又は複数日分抽出して、その中から貯水池群ごとに1日分を選択して抽出データとして出力するブロック抽出方法。
3.基準日量に一致あるいは類似する同一の日における各発電所の発電機運転計画を、各貯水池ごとに1日又は複数日分抽出してその中から各貯水池ごとに1日分を選択して抽出データとして出力する発電所単位の所別抽出方法。
4.基準日量によらず、任意に設定された日付の各発電所の発電機運転計画を抽出データとして出力する。
これらの方法により得られた抽出データを基に、計画対象日の基準日量を設定し、この基準日量に基づき類似運用計画選択装置3の運用データ計算手段3dにより(実施の形態1(図1)の運用データ計算手段2bと同様のものであり、運用データ計算手段2bを兼用してもよい)、運用データを作成する(ステップS23)。
【0019】
次に、運用データが自動運用計画計算装置2の運用計画作成条件設定手段2aと同様の条件が設定された運用計画作成条件設定手段3cに設定された運用計画作成条件を満たしているかどうか、具体的には水位違反及び制約条件違反等の発生状態を判断する(ステップS24)。運用データが運用計画作成条件を満たしていなければ、検索条件を変更し(ステップS25)、ステップS22へ戻り、ステップS22以下の計算を繰り返し、運用計画作成条件を満たせば(ステップS24)、ステップS26へ行く。そして、運用データ、発電放流量カーブ及びダム水位カーブが、表示装置8に表示される(ステップS26)。なお、検索条件の変更にあたっては、水量に影響しない抽出条件を一つずつ自動的に除外することにより、検索条件を自動的に緩くし、抽出処理におけるヒット率を自動的に高める。自動的に除外された条件は、検索結果を提示するタイミングに合わせて表示する。これにより、運用計画作成者が、最適な検索結果が得られない場合の試行錯誤の無駄を省くことができる。
【0020】
運用計画作成者は、上記運用計画作成条件に入りきらなかった鮎釣り、カヌー大会、利水などの複雑な条件をも勘案しながら、表示装置8に表示された発電放流量カーブ及びダム水位カーブ及び運用データを、チェックして、満足すべきものかどうか判定し、問題がなければ当該運用データを採用する。この場合は、次行程指示手段3eに「終了」を設定する。上記運用データが満足すべきものでない場合は、運用計画修正装置6により運用データ(運用カーブ)の修正を行うべく、次行程指示手段3eに「運用カーブ修正」を設定する(ステップS27)。ステップS28において、終了か運用カーブ修正か判断され、運用カーブ修正であれば運用計画修正支援フローF3へ行き、運用データ(運用カーブ)を修正する。
【0021】
既に得られた運用データは、表示装置8に表示され(ステップS31)、変化点操作手段6aにより、画面に表示された発電放流量カーブ及びダム水位カーブの何れか一方の運用カーブの任意の(変化点)を画面上で選択し、直接ドラッグアンドドロップ操作する(ステップS32)。すると、これに応じて運用カーブ自動修正手段6bが他方の運用カーブを自動計算で修正し、運用データを自動修正する(ステップS33)。自動修正の結果得られた運用データは、フローチャートでは省略しているが運用計画作成条件設定手段6cに設定された運用計画作成条件に違反していないかどうか、具体的には水位違反や制約条件等の違反等がないかどうかのチェックがなされ、チェック結果とともに表示装置8に表示される(ステップS34)。
【0022】
ここで、上記運用カーブの変化点操作の具体例を、図3により説明する。現在、図3(a)示すように、得られた修正前の発電放流量カーブQAは、左方に修正前部分Aを有し、変化点である時間T1において放流量を増加させ、時間T2において放流量を減少させるようなものであるとする。このとき、もう一方の運用カーブである修正前のダム水位カーブWLAは、図3(a)に示すようなものであるとする。なお、修正前のダム水位カーブWLAが満水水位WLmaxを超える場合は、溢水することになるので、避けなければならない。
【0023】
図3(a)において、運用計画作成者が諸条件を勘案してを修正前部分Aをドラッグアンドドロップにより修正後部分Bのように移動させたとする。このことは、時間0における変化点を移動させることに相当する。すると、修正前の発電放流量カーブQAが修正後発電放流量カーブQBのように変更される。このとき、発電機の応答の時間遅れを考慮した台形処理が自動的になされるので図3(a)の修正後部分Bは、修正後カーブCのように肩の部分が若干異なったものとなる。また、運用カーブ自動修正手段6bが動作して、修正前のダム水位カーブWLAを図3(b)の修正後ダム水位カーブWLBのように自動的に修正して、画面に表示するとともにその他の運用データも修正される。
【0024】
また、変化点操作手段6aにより、必要に応じて画面上に表示された発電放流量カーブとダム水位カーブの何れかの運用カーブ上の任意の変化点を画面上で選択し、削除する操作を行うことにより、運用カーブ自動修正手段6bが他方の運用カーブの上記削除操作した変化点に対応する変化点を削除し、自動計算を行う。さらに、画面上の上記両運用カーブ上の任意の位置に、変化点を追加する操作を行うことにより、運用カーブ自動修正手段6bが他方の運用カーブの上記追加操作した変化点に対応する変化点を追加し、自動計算を行う。上記各自動計算の結果は、表示装置8の画面上に運用カーブとして表示される。これにより、各発電所の発電機運転計画及び各貯水池の水位計画の修正を画面上において確認しながら視覚的に容易に修正することができる。また、容易に一方の運用カーブの修正結果を他方の運用カーブの修正結果に反映することができる。
【0025】
なお、自動運用計画計算装置2を用いることなく、初めから類似運用計画選択装置3を用いて運用計画を作成することも可能であるし、運用計画修正装置6により、自動運用計画計算装置2や類似運用計画選択装置3を用いることなく、マニュアルで初めから運用カーブ上に変化点を設定し、運用計画を作成することも可能である。
以上のように、この発明によれば、多くの制約条件や複雑な諸条件の下においても、より柔軟に適切な発電運用計画を作成できる水系の発電運用計画作成支援装置を得ることができる。
【0026】
以上のように、この発明は、複数の貯水池が連なる水系に設けられた発電所の発電運用計画の作成を支援するものであって、基準日量設定手段と、自動運用計画計算装置と類似運用計画選択装置との少なくとも一方と、運用計画修正装置とを備え、基準日量設定手段は各貯水池における1日の放水水量である基準日量を設定するものであり、自動運用計画計算装置は基準日量に基づき各発電所の発電機運転計画及び各貯水池の水位計画を自動計算するものであり、類似運用計画選択装置は各発電所の発電機運転計画及び各貯水池の水位計画の実績データの中から所定の条件を満たす実績データを検索して抽出データとして出力する類似データ検索手段を有し抽出データに基づいて各発電所の発電機運転計画及び各貯水池の水位計画を自動計算するものであり、運用計画修正装置は各発電所の発電機運転計画及び各貯水池の水位計画を画面上に表示する表示手段とこの表示された各発電所の発電機運転計画及び各貯水池の水位計画の一方を修正操作する修正操作手段と各発電所の発電機運転計画及び各貯水池の水位計画の一方の修正操作に応じて他方を自動修正する運用計画自動修正手段とを有するものであるので、多くの制約条件や複雑な諸条件の下においても、より柔軟に適切な発電運用計画を作成できる。
【0027】
そして、類似データ検索手段は、基準日量に一致あるいは類似する同一の日における各発電所の発電機運転計画を水系全体一括で1日又は複数日分抽出してその中から1日分を選択して抽出データとして出力するものであることを特徴とするので、適切な実績データに基づいて各発電所の発電機運転計画及び各貯水池の水位計画を自動計算できる。
【0028】
類似データ検索手段は、基準日量に一致あるいは類似する同一の日における各発電所の発電機運転計画を、水系全体を複数の貯水池群にブロック割りし、貯水池群ごとに1日又は複数日分抽出してその中から貯水池群ごとに1日分を選択して抽出データとして出力するものであることを特徴とするので、適切な実績データに基づいて各発電所の発電機運転計画及び各貯水池の水位計画を自動計算できる。
【0029】
類似データ検索手段は、基準日量に一致あるいは類似する同一の日における各発電所の発電機運転計画を水系の各貯水池ごとに、1日又は複数日分抽出してその中から各貯水池ごとに1日分を選択して抽出データとして出力するものであることを特徴とするので、適切な実績データに基づいて各発電所の発電機運転計画及び各貯水池の水位計画を自動計算できる。
【0030】
運用計画修正装置は、表示手段が各発電所の発電機運転計画及び各貯水池の水位計画を運用カーブとして画面上に表示するものであり、修正操作手段は表示された各発電所の発電機運転計画カーブ又は各貯水池の水位計画カーブを画面上において修正操作するものであることを特徴とするので、各発電所の発電機運転計画及び各貯水池の水位計画の修正を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の実施の一形態である水系の発電運用計画作成支援装置の構成を示す構成図である。
【図2】発電運用計画作成支援装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】運用カーブの変化点の操作を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 基準日量設定手段、2 自動運用計画計算装置、
2a 運用計画作成条件設定手段、2b 運用データ計算手段、2c 次行程指示手段、
3 類似運用計画選択装置、3a 検索条件設定手段、3b 類似データ検索手段、
3c 運用計画作成条件設定手段、3d 運用データ計算手段、3e 次行程指示手段、
6 運用計画修正装置、6a 変化点操作手段、6b 運用カーブ自動修正手段、
6c 運用計画作成条件設定手段、8 表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貯水池が連なる水系に設けられた発電所の発電運用計画の作成を支援するものであって、基準日量設定手段と、自動運用計画計算装置と類似運用計画選択装置との少なくとも一方と、運用計画修正装置とを備え、
上記基準日量設定手段は上記各貯水池における1日の放水水量である基準日量を設定するものであり、
上記自動運用計画計算装置は上記基準日量に基づき上記各発電所の発電機運転計画及び上記各貯水池の水位計画を自動計算するものであり、
上記類似運用計画選択装置は上記各発電所の発電機運転計画及び上記各貯水池の水位計画の実績データの中から所定の条件を満たす実績データを検索して抽出データとして出力する類似データ検索手段を有し上記抽出データに基づいて上記各発電所の発電機運転計画及び上記各貯水池の水位計画を自動計算するものであり、
上記運用計画修正装置は上記各発電所の発電機運転計画及び上記各貯水池の水位計画を画面上に表示する表示手段とこの表示された各発電所の発電機運転計画及び上記各貯水池の水位計画の一方を修正操作する修正操作手段と上記各発電所の発電機運転計画及び上記各貯水池の水位計画の一方の修正操作に応じて他方を自動修正する運用計画自動修正手段とを有するものである、
水系の発電運用計画作成支援装置。
【請求項2】
上記類似データ検索手段は、上記基準日量に一致あるいは類似する同一の日における各発電所の発電機運転計画を上記水系全体一括で1日又は複数日分抽出してその中から1日分を選択して上記抽出データとして出力するものであることを特徴とする請求項1に記載の水系の発電運用計画作成支援装置。
【請求項3】
上記類似データ検索手段は、上記基準日量に一致あるいは類似する同一の日における各発電所の発電機運転計画を、上記水系全体を複数の貯水池群にブロック割りし、上記貯水池群ごとに1日又は複数日分抽出してその中から上記貯水池群ごとに1日分を選択して抽出データとして出力するものであることを特徴とする請求項1に記載の水系の発電運用計画作成支援装置。
【請求項4】
上記類似データ検索手段は、上記基準日量に一致あるいは類似する同一の日における各発電所の発電機運転計画を上記水系の各貯水池ごとに、1日又は複数日分抽出してその中から上記各貯水池ごとに1日分を選択して抽出データとして出力するものであることを特徴とする請求項1に記載の水系の発電運用計画作成支援装置。
【請求項5】
上記運用計画修正装置は、上記表示手段が上記各発電所の発電機運転計画及び上記各貯水池の水位計画を運用カーブとして画面上に表示するものであり、上記修正操作手段は上記表示された各発電所の発電機運転計画カーブ又は上記各貯水池の水位計画カーブを上記画面上において修正操作するものであることを特徴とする請求項1に記載の水系の発電運用計画作成支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−39838(P2006−39838A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217271(P2004−217271)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】