説明

水系電極組成物用水分散体

【課題】 水系の電極組成物を調製する際に、分散機能と粘度調整機能を有し、且つ電極組成物のpHを低く保つ効果を有し、水系の電極組成物に好適に用いることができる水分散体を提供する。
【解決手段】 水系電極組成物に用いるアルカリ可溶性ポリマーを含有する水分散体であって、該アルカリ可溶性ポリマーは、ポリマーが有する構造単位の全量100質量%に対して、エチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位を20〜60質量%、及び、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位を40〜80質量%必須として有するものであり、該水分散体は、ポリマー濃度を2質量%としたときに、25℃における粘度が、pH5未満の状態で50mPa・s以下、pH8に中和した状態で100mPa・s以上となり、かつ、pH8の状態で全光線透過率が90〜100%となるものであることを特徴とする水分散体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散体に関する。より詳しくは、二次電池等に用いられる電極を形成する際に用いられる水系電極組成物に好適に用いることができるアルカリ可溶性ポリマーを含有する水分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、繰り返し充放電を行うことができる電池であり、近年の環境問題への関心の高まりを背景に、携帯電話やノートパソコン等の電子機器だけでなく、自動車や航空機等の分野においても使用が進んでいる。このような二次電池への需要の高まりを受けて、研究も活発に行われており、特に、二次電池の中でも軽量、小型かつ高エネルギー密度のリチウムイオン電池は、各産業界から注目されており、開発が盛んに行われている。
【0003】
リチウムイオン電池は、主に正極、電解質、負極及びセパレータから構成され、この中で電極は、電極組成物を集電体の上に塗布したものが用いられている。電極組成物のうち、正極の形成に用いられる正極組成物は、主に正極活物質、導電助剤、バインダー及び溶媒からなっており、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)が一般的に用いられている。
これは、PVDFが化学的、電気的に安定であり、NMPがPVDFを溶解する経時安定性のある溶媒であることに拠っている。
【0004】
しかしながら、PVDFは溶解濃度が高くなく、PVDFを用いると固形分濃度を上げるのが難しい。また、NMPは、沸点が高いため、NMPを溶媒として用いると電極を形成する際に溶媒の揮発に多くのエネルギーが必要となるといった問題もある。それに加えて、近年は環境問題への関心の高まりもあり、電極組成物にも有機溶媒を使用しない水系の電極組成物への要求が高くなってきている。
【0005】
水系の電極組成物に用いられるバインダーとしては、水溶性ポリマー及びエマルション(ポリマー粒子の水分散体)の2つの成分を併用するバインダーが多く検討されている。水溶性ポリマーは分散性能及び粘度調整機能(増粘機能)を有している。また、エマルションは電極活物質同士を結着させる性質(結着性、なお、結着性を有するものはその性能から「結着剤」とも呼ばれている。)を有し、更に、電極に柔軟性や可とう性を付与する役割を担っている。このように水溶性ポリマーとエマルションは、バインダーに必要とされる機能を分担して担っている。水溶性ポリマーとしては、代表的にはカルボキシメチルセルロース(CMC)が挙げられる。
【0006】
水系の電極組成物に用いられるバインダーに、水溶性ポリマーを単独で用いる例として、(メタ)アクリル酸ポリオキシアルキレンエーテル化合物およびエチレン性不飽和カルボン酸を共重合して得られる共重合体であって、その共重合体が濃度2重量%でpH7の水溶液の粘度が温度25℃において1,000〜20,000mPa・sであるリチウムイオン二次電池負極用増粘剤が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、エチレン性不飽和カルボン酸エステルモノマー由来の構造単位(a)と、エチレン性不飽和カルボン酸モノマー由来の構造単位(b)とを有し、構造単位(a)/構造単位(b)=99〜60/1〜40(重量比)、かつ構造単位(a)と構造単位(b)の合計が全単位に対して90重量%以上であるニトリル基を実質的に有さないポリマー粒子と水からなるリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4412443号公報(第1−2頁)
【特許文献2】特許第4389282号公報(第1−2頁)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ヒデトシ・アベ(Hidetoshi Abe)、外5名、「FBテクニカルニュース」、2007年、第63巻、p.38−43
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
水系の電極組成物について様々な検討が行われているが、水系の電極組成物は、特許文献2に開示されているように一般的な水分散体(ポリマー粒子と水)は、活物質や導電助剤を濡らすことができず分散することができない。また、スラリー化した場合に粒子の沈降防止や塗工性を確保するために、粘度調整も必要である。その為、水分散体単独でスラリー化するのではなく、必ず水溶性ポリマー(主にCMC)を併用している。また、特許文献1では、アルキレンオキサイド鎖を多く有する水溶性ポリマーを増粘剤として用いているが、アルキレンオキサイド鎖により保水性が高くなることから電極膜とした場合に水離れが悪くなり易いという欠点がある。更に、非特許文献1に開示されているようにニッケルを含有した三元系酸化物のような酸化物系正極活物質を用いると、水系スラリーのpHが高くなることが多く、集電体に用いられるアルミニウムが電極形成時に腐食、変性してしまうことが懸念されるという課題を有している。そこで、水系の電極組成物を調製する際に電極組成物のpHが高くなるのを抑えることができ、集電体の腐食、変性を抑えることができるバインダーの開発が望まれていた。
【0010】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、水系の電極組成物を調製する際に、分散機能と粘度調整機能を有し、且つ電極組成物のpHを低く保つ効果を有し、水系の電極組成物に好適に用いることができる水分散体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、水系の電極組成物に用いるバインダーについて種々検討を行い、ポリマーが有する構造単位の全量100質量%に対して、エチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位を20〜60質量%、及び、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位を40〜80質量%必須として有し、特定の粘度を有するとともに、所定のpHで水溶液となるアルカリ可溶性ポリマーを含む水分散体をバインダー(結合剤)として用いることに想到した。当該アルカリ可溶性ポリマーはアルカリ可溶性の水分散樹脂であるが、このような水分散体をバインダーとして用いて、電極活物質、導電助剤などと共に混練して電極組成物を調製すると、電極活物質に由来するアルカリによってアルカリ可溶性ポリマーが中和されて水溶性ポリマーとなり、スラリー化することとなり、分散機能や粘度調整機能を発現することを見出した。また、アルカリ可溶性ポリマーを一度アルカリ溶液により中和して水溶性ポリマーとし、その溶液を、電極活物質、導電助剤などと共に混練して電極組成物を調製する場合と比べて、電極組成物のpHが高くなるのを抑え、低く保つことが可能となることを見出し、上記課題を見事に解決することができることに想到した。更に、そのようにして調製される電極組成物内で生成する水溶性ポリマーは、水溶化することで分散機能及び粘度調整機能を有するのみならず、結着剤としての機能も発現することができることを見出した。そして更に、このような水分散体をエマルションと併用して電極組成物のバインダーとして用いることにより、電極の柔軟性や可とう性を更に優れたものとすることが可能となることをも見出した。このように、電極組成物のバインダーとして上述のようなアルカリ可溶性ポリマーを含む水分散体を用いることによって、上記課題を見事に解決することができることも見出し、本発明に想到したものである。
【0012】
すなわち本発明は、水系電極組成物に用いるアルカリ可溶性ポリマーを含有する水分散体であって、上記アルカリ可溶性ポリマーは、ポリマーが有する構造単位の全量100質量%に対して、エチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位を20〜60質量%、及び、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位を40〜80質量%必須として有するものであり、上記水分散体は、ポリマー濃度を2質量%としたときに、25℃における粘度が、pH5未満の状態で50mPa・s以下、pH8に中和した状態で100mPa・s以上となり、かつ、pH8の状態で全光線透過率が90〜100%となるものであることを特徴とする水分散体である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載される本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせた形態もまた、本発明の好ましい形態である。
【0013】
本発明の水分散体は、水系電極組成物に用いるものであって、アルカリ可溶性ポリマーが水を含む溶媒に分散したものであるが、ポリマーが有する構造単位の全量100質量%に対して、エチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位を20〜60質量%、及び、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位を40〜80質量%必須として有するアルカリ可溶性ポリマーの他、水を含む溶媒に加えて、その他の成分を含んでいてもよい。水分散体における上記特定の単量体単位を有するアルカリ可溶性ポリマーの含有割合としては、溶媒を除いた水分散体の全量100質量%に対して、70〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは、90〜100質量%である。特に好ましくは、水分散体が上記特定の単量体単位を有するアルカリ可溶性ポリマーと溶媒とからなることである。
水分散体は上記特定の単量体単位を有するアルカリ可溶性ポリマーを1種含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
本発明の水分散体は、上記特定の単量体単位を有するアルカリ可溶性ポリマー以外のその他のポリマー成分(例えば、上記特定の単量体単位を有するアルカリ可溶性ポリマー以外のアルカリ可溶性ポリマー、水溶性ポリマー、水溶性オリゴマー)を含んでいてもよい。その場合、その他のポリマー成分の含有割合は、溶媒を除いた水分散体の全量100質量%に対して、0〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは、0〜10質量%である。
上記水分散体におけるアルカリ可溶性ポリマーと溶媒との含有割合としては、アルカリ可溶性ポリマー/溶媒(質量比)=0.5〜60/40〜99.5であることが好ましい。より好ましくは、0.8〜45/55〜99.2である。
【0014】
また、上記水を含む溶媒は、水以外の他の溶媒を含んでいてもよい。該他の溶媒としては、親水性溶媒、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール溶媒や、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、エチルカルビトールなどのカルビトール系溶媒などが挙げられる。これら他の溶媒は、1種であってもよいし、2種以上が用いられていてもよい。
上記溶媒中の水の含有割合は、水分散体に含まれる溶媒の全量100質量%に対して、80〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは、90〜100質量%である。特に好ましくは、水分散体に含まれる溶媒が水のみからなることである。
これらのことから、本発明の水分散体は、上記特定の単量体単位を有するアルカリ可溶性ポリマーと水のみからなることが最も好ましい。
【0015】
上記水分散体は、アルカリ可溶性ポリマーの濃度を2質量%としたときに、25℃における粘度がpH5未満の状態で50mPa・s以下であり、pH8に中和した状態で100mPa・s以上であるものである。本発明の水分散体は、未中和の状態ではpHが5未満のものであり、その状態では水に対して不溶であるため、水分散体の粘度を測定すると、その測定値は非常に低い値となる。しかしながら、当該アルカリ可溶性ポリマーはアルカリ可溶性のため、水分散体をアルカリで中和していくと、ポリマーが水溶化していき、水に溶解していく。これによりpH8の状態では、ポリマーの粘度は高くなる。
pH5未満の状態における25℃での粘度としては、0.1〜40mPa・sが好ましく、より好ましくは、0.2〜20mPa・sである。pH8に中和した状態における25℃での粘度としては、120〜20,000mPa・sが好ましく、より好ましくは、150〜10,000mPa・sである。
【0016】
上記水分散体をpH8の状態に調整する方法としては、未中和の状態の水分散体に金属塩やアミン(アンモニア水を含む)を加えて中和する方法が挙げられる。アルカリ可溶性ポリマーの中和のために用いられる金属塩としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩が好ましい。より好ましくは、リチウム塩である。これら金属塩は1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。未中和の状態の水分散体に金属塩を加えて中和する方法としては、具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩などの水溶液を、未中和の状態の水分散体に加えて中和反応を行う方法が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、水酸化リチウム水溶液を用いて中和反応を行うことである。すなわち、本発明の水分散体を水酸化リチウム水溶液により中和して、pH8に調整した時の溶液の25℃における粘度が、上述したpH8の状態における25℃での粘度の範囲であることが好ましい。
また、未中和の状態における水分散体のpHとしては、好ましくは、1〜4である。
上記水分散体として、このような粘度範囲のものを用いることにより、電極組成物の粘度を調整する機能を充分に発揮することができる。
上記pH測定は、ガラス電極式水素イオン度計F−21(製品名、堀場製作所社製)を用いて、25℃での値を測定することにより行うことができる。
上記粘度は、B型粘度計(東京計器社製)を用いて、25±1℃、30rpmの条件で測定することができる。
【0017】
また、本発明の水分散体は、上述したように金属塩を加えて中和し、pH8の状態に調整すると、アルカリ可溶性ポリマーは水溶性ポリマーとなり水に溶解していき、水分散体は透明な溶液となる。
ここで、透明溶液とは、ポリマー濃度2質量%水溶液の全光線透過率が90〜100%であるものを意味する。すなわち、上記水分散体は、pH8の状態に調整した後の2質量%水溶液の全光線透過率が90〜100%であるものである。全光線透過率が90%未満である場合には、pH8の状態でポリマー粒子が可溶化しているとはいえず、これは、電極組成物を調製した場合に均一な電極組成物を調製できないことを意味し、結果、安定した電池性能を発揮する電極を形成することができないおそれがある。全光線透過率として好ましくは、95%以上であり、より好ましくは、97%以上である。
また、上記水分散体をpH8の状態に調整した後の2質量%水溶液は、ヘイズが10以下であることが好ましく、より好ましくは、5以下である。
上記全光線透過率及びヘイズは、ヘイズメーター(製品名「NDH5000」、日本電色工業社製)を用いて、測定することができる。
【0018】
上記アルカリ可溶性ポリマーは、重量平均分子量が、50万〜300万であることが好ましい。重量平均分子量が50万未満である場合、アルカリ可溶性ポリマーに由来するバインダーに求められる分散性は発現できるが、粘度調整機能が充分でない場合があり、粒子間の結着性を向上させる上では充分でないおそれがある。重量平均分子量としてより好ましくは、70万〜200万である。
上記重量平均分子量は、ポリスチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC装置、展開溶媒;テトラヒドロフラン)によって以下の装置、及び、測定条件で測定することができる。
GPC装置:HLC−8120(製品名、東ソー社製)
カラム:TSK−gel GMHXL(製品名、東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン
溶離液流量:1ml/min
カラム温度:40℃
測定方法:未中和のアルカリ可溶性ポリマーを溶離液に測定対象物の固形分が0.1質量%となるように溶解し、フィルターを用いてろ過したものを測定サンプルとする。
【0019】
上記アルカリ可溶性ポリマーは、ポリマーが有する構造単位の全量100質量%に対して、エチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位を20〜60質量%、及び、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位を40〜80質量%必須として有するものである。アルカリ可溶性ポリマーとしてこのようなものを用いることによって、電極活物質、導電助剤などと共に混練して水系電極組成物を調製することで生成する水溶性ポリマーが、分散機能及び粘度調整機能を発現するのみならず、結着剤としての機能をも発揮することとなる。
【0020】
上記エチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位とは、エチレン性不飽和カルボン酸単量体の炭素−炭素二重結合が単結合になった構造を表している。
上記エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸単量体;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸単量体及びそれらの酸無水物などが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸単量体が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸がより好ましい。これらエチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0021】
上記エチレン性不飽和カルボン酸単量体の有するカルボン酸は、後述する重合方法によりアルカリ可溶性ポリマーを合成することができる限り、その一部が金属塩の形態であってもよい。上記エチレン性不飽和カルボン酸単量体の有するカルボン酸の一部が金属塩となっている形態の場合には、エチレン性不飽和カルボン酸単量体の有するカルボン酸のうち、金属塩の形態となっているものが40モル%以下であることが好ましい。より好ましくは、25モル%以下であり、更に好ましくは、10モル%以下である。
上記カルボン酸の金属塩としては、カルボン酸のリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。これらの中でも、リチウム塩が好ましい。これら金属塩としては、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0022】
上記エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位とは、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体の炭素−炭素二重結合が単結合になった構造を表している。
上記エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のエステルが挙げられ、好ましくは、例えば、一般式(1);
CH=CR−C(=O)−OR’ (1)
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。R’は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基を表す。)で表される化合物である。
【0023】
上記一般式(1)におけるR’としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜10のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜10のシクロアルキル基;ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基等の炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基;などが挙げられる。
これらの中でも、後述する乳化重合時の安定性等の観点からは、疎水性の高いものが好ましく、すなわち、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基が好ましい。より好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基であり、更に好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基である。上記一般式(1)におけるR’がアルキル基であると、得られるアルカリ可溶性ポリマーのガラス転移温度(Tg)が低くなるため好ましい。R’として特に好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基であり、最も好ましくは、炭素数1〜3のアルキル基である。これらエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0024】
上記アルカリ可溶性ポリマーにおけるエチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位の含有割合は、アルカリ可溶性ポリマーの有する構造単位の全量100質量%に対して、20〜60質量%であるものである。アルカリ可溶性ポリマーは、後述するように、水系電極組成物調製時に電極活物質由来のアルカリによって中和され水溶性ポリマーとなるが、エチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位の含有量をこのような範囲とすることによって、生成する水溶性ポリマーの水への溶解度が充分なものとなり均一な水溶液を得ることができ、また、アルカリ可溶性ポリマーを合成する際の重合反応を後述する乳化重合法により行う場合に、容易に製造可能となる。アルカリ可溶性ポリマーにおけるエチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位の含有量として好ましくは、25〜50質量%であり、より好ましくは、30〜45質量%である。
【0025】
上記アルカリ可溶性ポリマーにおけるエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位の含有割合は、アルカリ可溶性ポリマーの有する構造単位の全量100質量%に対して、40〜80質量%であるものである。エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体は、カルボキシル基を有する単量体であり、疎水性単量体であるが極性基を含有しているものであるため、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位の含有量をこのような範囲とすることによって、得られるアルカリ可溶性ポリマーから生成する水溶性ポリマーは、水への溶解度が充分なものとなり均一な水溶液を得ることができ、また、アルカリ可溶性ポリマーを合成する際の重合反応を後述する乳化重合法により行う場合に、乳化滴の核になり易くなるために、乳化重合により容易に製造することが可能となる。アルカリ可溶性ポリマーにおけるエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位の含有量として好ましくは、50〜75質量%であり、より好ましくは、55〜70質量%である。
【0026】
上記アルカリ可溶性ポリマーとしては、エチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位、及び、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位を含む限り、その他の重合可能な単量体由来の構造単位を含んでいてもよい。
【0027】
上記その他の重合可能な単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、エチルビニルベンゼン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸アミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;酢酸ビニル、フタル酸ジアリル等の多官能アリル系単量体;ブタジエン、イソブレン系等の共役ジエン系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
また、末端にハロゲン化していてもよい炭素数5〜30のアルキル基等の疎水基を有するポリアルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリルエステルやビニル化合物を用いることもできる。その場合、アルキレンオキサイド末端に疎水基を有することで、疎水基が会合することにより電極組成物の粘性を変えることができる。
上記アルキレンオキサイド末端の疎水基として好ましくは炭素数5〜30のアルキル基であり、より好ましくは炭素数10〜20のアルキル基である。これらその他の重合可能な単量体としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0028】
上記アルカリ可溶性ポリマーがその他の重合可能な単量体由来の構造単位を含む場合、その含有割合としては、アルカリ可溶性ポリマーの有する構造単位の全量100質量%に対して、30質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、10質量%以下であり、更に好ましくは、5質量%以下である。
【0029】
すなわち、上記アルカリ可溶性ポリマーにおける構造単位の比率としては、アルカリ可溶性ポリマーの有する構造単位の全量を100質量%とした時に、(エチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位)/(エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位)/(その他の重合可能な単量体由来の構造単位)=20〜60質量%/40〜80質量%/0〜30質量%となるものである。
【0030】
上記アルカリ可溶性ポリマーは、上述したアルカリ可溶性ポリマーが含む構造単位の由来となる各単量体成分を上述した含有割合で含むように重合することにより製造することができる。単量体成分を重合する方法としては、特に限定されず、例えば、乳化重合、逆相懸濁重合、懸濁重合、溶液重合、水溶液重合、塊状重合等の方法が挙げられる。これらの重合方法の中でも、乳化重合法が好ましい。
乳化重合法は、高分子量の共重合体を高濃度で容易に重合することが可能で、重合溶液の粘度も低い方法である。重量平均分子量が50万以上のアルカリ可溶性ポリマーは、乳化重合法により簡便に製造することができるため、アルカリ可溶性ポリマーの製造方法として乳化重合法を選択することは生産コストの上でもメリットがある。
【0031】
上記乳化重合は、乳化剤を用いて行うことができる。乳化剤としては特に限定されないが、例えば、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤や、これらの界面活性剤の構造中にラジカル重合性の不飽和基を有するものである反応性界面活性剤等が挙げられる。これら乳化剤は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0032】
上記反応性界面活性剤としては、例えば、ラテムルPD(花王社製)、アデカリアソープSR(アデカ社製)、アクアロンHS(第一工業製薬社製)、アクアロンKH(第一工業製薬社製)、エレミノールRS(三洋化成工業社製)等が挙げられる。
【0033】
上記重合反応は、重合開始剤を用いて行うことができる。重合開始剤としては通常重合開始剤として用いられているものを使用することができ、特に制限されず、熱によってラジカル分子を発生させることができるものであればよい。重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)等の水溶性アゾ化合物;過酸化水素等の熱分解系開始剤;過酸化水素とアスコルビン酸、t−ブチルヒドロパーオキサイドとロンガリット、過硫酸カリウムと金属塩、過硫酸アンモニウムと亜硫酸水素ナトリウム等のレドックス系開始剤等が挙げられる。これら重合開始剤は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
なお、重合方法として特に乳化重合を行う場合には、これら重合開始剤の中でも水溶性の開始剤が好ましく使用される。
【0034】
上記重合反応は、分子量の調整を目的として連鎖移動剤を用いて行ってもよい。連鎖移動剤としては、特に制限されないが、例えば、ハロゲン化置換アルカン、アルキルメルカプタン、チオエステル類、アルコール類等が挙げられる。これら連鎖移動剤は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
上記連鎖移動剤の使用量としては、重合反応に供する単量体成分の総量100重量部に対して、0.1〜1重量部であることが好ましい。より好ましくは、0.1〜0.5重量部である。
【0035】
上記重合反応を乳化重合により行う場合の重合温度としては、特に限定されないが、例えば、20〜100℃が好ましく、より好ましくは、50〜90℃である。重合時間についても特に限定されないが、生産性を考慮すると、1〜10時間が好ましい。
また、乳化重合を行う際、得られる共重合体(アルカリ可溶性ポリマー)に悪影響を及ぼさない範囲で、親水性溶媒や添加剤等を加えることができる。
【0036】
上記重合反応を乳化重合により行う場合の、各単量体成分の反応系への添加方法としては、特に制限されず、反応様式としては、一括重合法、単量体成分滴下法、プレエマルション法、パワーフィード法、シード法、多段添加法等を用いることができる。これらの中でも、プレエマルション法が好ましい。
【0037】
上記乳化重合反応後に得られるエマルション(アルカリ可溶性ポリマー)の不揮発分としては、20〜60%であることが好ましい。不揮発分が20〜60%の範囲であることにより、得られるエマルションの流動性や分散安定性を保つことが容易となる。また、目的とする重合体の生産効率の点からも好ましい。
上記エマルションの平均粒子径としては、特に限定されないが、好ましくは10nm〜1μmであり、より好ましくは30〜500nmである。エマルションの粒子径がこの範囲であることにより、粘度が高くなりすぎたり、分散安定性が保てず凝集したりする可能性を低くすることができる。
【0038】
本発明の水分散体は、含有するアルカリ可溶性ポリマーが水系電極組成物を調製する過程で水溶化し、水溶性ポリマーとなることで分散機能及び粘度調整機能を有するのみならず、結着剤としての機能も発現することができることから、水系の電極組成物に用いるバインダーとして好適に用いることができるものである。
すなわち、アルカリ可溶性ポリマー及び電極活物質を必須成分として含む水系電極組成物であって、本発明の水分散体を用いてなる水系電極組成物もまた、本発明の1つである。
【0039】
本発明の水系電極組成物は、アルカリ可溶性ポリマー、電極活物質を必須成分として含むものであるが、それらを含む限り、後述する水分散樹脂(pH7の状態でエマルションの形態である、本発明の水分散体に含まれるアルカリ可溶性ポリマーとは別のポリマー)、分散剤、導電助剤等のその他の成分を含んでいてもよい。また、これらの各成分は、1種を含んでいても2種以上を含んでいてもよい。
【0040】
上記水系電極組成物は、アルカリ可溶性ポリマー、電極活物質を含むものであるが、電極組成物におけるアルカリ可溶性ポリマーの含有量としては、電極活物質100質量%に対して、0.1〜6質量%であることが好ましい。アルカリ可溶性ポリマーの含有量がこの範囲であると、バインダーが分散性、粘度調整機能を充分に発揮し、電極活物質や後述する導電助剤等のフィラーを結合し、かつ、電極中のバインダー使用量を抑えることができる。より好ましくは、0.2〜3質量%である。
上記電極活物質の含有量としては、電極組成物の全量100質量%に対して、85〜99質量%であることが好ましい。より好ましくは、90〜98質量%である。
また、上記水系電極組成物は水を含むものであるが、水系電極組成物における水の含有量としては、電極活物質100質量%に対して、30〜300質量%であることが好ましい。水の含有量がこの範囲であると、適当な粘度のスラリーを作製することができる。より好ましくは、50〜200質量%である。
【0041】
上記電極活物質としては、正極活物質及び負極活物質のいずれもが挙げられる。すなわち、本発明の水系電極組成物は、正極活物質を含む正極組成物であってもよいし、負極活物質を含む負極組成物であってもよい。ただし、電極活物質が正極活物質であって、正極組成物を調製する場合に正極組成物のpHが高くなることが多いことから、この電極組成物のpHの上昇を抑えることができる本発明の効果は、電極活物質が正極活物質であって、正極組成物を調製する際により顕著に表れるため、電極活物質は正極活物質であることがより好ましい。
【0042】
上記正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵、放出できる化合物であることが好ましい。このような正極活物質を用いることで、リチウムイオン電池の正極として好適に用いることができるものとなる。リチウムイオンを吸蔵、放出できる化合物としては、リチウム含有の金属酸化物が挙げられ、そのような金属酸化物としては、コバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、マンガン酸リチウム、多元系活物質等が挙げられる。
これら正極活物質としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0043】
上記正極活物質を用いた場合、電極組成物をスラリー化した際にpHを抑える効果が発現される。pH抑制の効果が大きく現れる正極活物質として、コバルト酸リチウムや多元系活物質が好ましい。特には下記一般式(2)に示される三元系活物質が好ましい。
LiNi1−y−zCo (2)
上式において、0.9≦x≦1.3、0≦y≦0.5、0≦z≦0.7、0<a≦2である。ただし、y、zは、0≦1−y−zを満たすものであり、y及びzが共に0となることはない。また、上記MはMnまたはAlであり、好ましくはMnである。
更にはNiの組成比を大きくした三元系活物質が好ましい。すなわち、上記一般式(2)において、0≦y≦0.2であることがより好ましい。
【0044】
上記負極活物質としては、例えば、グラファイト、天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素材料、ポリアセン系導電性高分子、チタン酸リチウム等の複合金属酸化物、リチウム合金などが挙げられる。これらの中でも、炭素材料が好ましい。
これら負極活物質としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0045】
本発明の水系電極組成物は、更に、水分散樹脂(pH7の状態でエマルションの形態である、本発明の水分散体に含まれるアルカリ可溶性ポリマーとは別のポリマー)を含むことが好ましい。このように、電極活物質が、正極活物質であり、水系電極組成物が、更に、pH7の状態でエマルションの形態である別のポリマーを含むこともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0046】
上記水分散樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アクリル系ポリマー、ニトリル系ポリマー、ジエン系ポリマー等の非フッ素系ポリマー;PVDF、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、(メタ)アクリル変性フッ素系ポリマー等のフッ素系ポリマー;などが挙げられる。これらの中でも、水分散樹脂としては粒子間の結着性や柔軟性(膜の可とう性)に優れるものが好ましいことから、アクリル系ポリマー、ニトリル系ポリマー、(メタ)アクリル変性フッ素系ポリマーが好ましい。
特に水系電極組成物において電極活物質として正極活物質を用いる場合には、フッ素含有重合体を(メタ)アクリル変性した構造を有する重合体のエマルションが、フッ素含有重合体が持つ化学的、電気的に安定な性質を有しつつ、フッ素含有重合体の欠点である低い結着性や得られる塗膜の密着性の低さ、塗膜の硬脆さをアクリルで変性することにより改善されているので、好ましい。
また、PVDFやPTFEを(メタ)アクリル変性した構造を有するエマルションも、PVDFやPTFE自体は結晶性を有するポリマーであるが、それらフッ素系ポリマーにアクリルが入り込んだ「IPN構造」を有するような粒子とすることにより結晶性が低下し、エマルションの造膜温度も低くなっているため、好ましい。
そのような(メタ)アクリル変性したフッ素含有重合体のエマルションは、例えば、PVDFやPTFEの水分散粒子存在下に、(メタ)アクリル酸エステル、又は、カルボン酸やスルホン酸等官能基を有する不飽和単量体等を乳化重合することにより得ることができる。
【0047】
上記水分散樹脂を用いる場合の、水系電極組成物中の水分散樹脂の含有量としては、電極活物質100質量%に対して、0.5〜7質量%であることが好ましい。水分散樹脂の含有量がこの範囲であると、結着性、膜の柔軟性や可とう性を更に優れたものとすることができる。より好ましくは、1〜5質量%である。
【0048】
本発明の水系電極組成物は、特に電極活物質として正極活物質を用いる正極組成物である場合には、更に導電助剤を含むことが好ましい。導電助剤はリチウムイオン電池を高出力化するために用いられるものであり、主に導電性カーボンが用いられる。導電性カーボンとしては、カーボンブラック、ファイバー状カーボン、黒鉛等が挙げられる。これらの中でもケッチェンブラック、アセチレンブラックが好ましい。
ケッチェンブラックは中空シェル構造を持ち、導電性ネットワークを形成しやすい。そのため、従来のカーボンブラックに比べると半分程度の添加量で同等性能を発現することができるため、好ましい。また、アセチレンブラックは高純度のアセチレンガスを用いることで生成されるものであり、カーボンブラックの不純物が非常に少なく、表面の結晶子が発達しているため、好ましい。
【0049】
上記導電助剤を用いる場合の、水系電極組成物中の導電助剤の含有量としては、電極活物質100質量%に対して、0.5〜10質量%であることが好ましい。導電助剤の含有量がこの範囲であると、電極抵抗を充分に低減し導電助剤としての効果を発揮することができる。より好ましくは、1〜6質量%である。
【0050】
本発明の水系電極組成物は、特に導電助剤を含む場合、更に必要に応じて分散剤を含むことができる。分散剤を用いることにより電極活物質や導電助剤の分散性を更に高め水系電極組成物の粘度を低減することが可能となり、水系電極組成物の固形分の濃度を高く設定することが可能となる。
上記分散剤としては、特に制限されず、アニオン性、ノニオン性若しくはカチオン性の界面活性剤、又は、スチレンとマレイン酸との共重合体(ハーフエステルコポリマー塩を含む)等の高分子分散剤などの種々の分散剤を用いることができる。分散剤を用いる場合の分散剤の使用量としては、導電助剤100質量%に対して1〜20質量%含有させることが好ましい。分散剤の含有量がこのような範囲であると、電極活物質や導電助剤を混合した場合の分散性を充分に確保することが可能となる。分散剤の使用量としてより好ましくは、3〜15質量%である。
このように分散剤を併用して、水系電極組成物における電極活物質及び導電助剤の均一分散安定性を向上させることで、電極活物質粒子間の接触抵抗を低減することができ、良好な電極膜の電気伝導度を達成することが可能となる。
【0051】
上記水系電極組成物が正極活物質を含む正極組成物である場合の、組成物中に含まれる構成成分の含有割合の一例としては、固形分におけるアルカリ可溶性ポリマー、正極活物質、導電助剤、水分散樹脂、及び、これらの成分以外のその他の成分の比が、アルカリ可溶性ポリマー/正極活物質/導電助剤/水分散樹脂/その他の成分=0.2〜3.0/70〜95/2〜20/2〜10/0〜5であることが好ましい。正極組成物がこのような含有割合で構成成分を含むものであると、正極組成物から形成される電極を電池の正極として用いた場合の出力特性や電気特性を優れたものとすることが可能となる。より好ましくは、0.3〜2.0/80〜93/3〜10/2〜5/0〜3である。
なお、ここでいうその他の成分は、上述のアルカリ可溶性ポリマー、正極活物質、導電助剤、水分散樹脂以外の成分を指し、分散剤や他の増粘剤等が含まれる。
【0052】
また、上記水系電極組成物が負極活物質を含む負極組成物である場合の、組成物中に含まれる構成成分の含有割合の一例としては、固形分におけるアルカリ可溶性ポリマー、負極活物質、導電助剤、水分散樹脂、及び、これらの成分以外のその他の成分の比が、アルカリ可溶性ポリマー/負極活物質/導電助剤/水分散樹脂/その他の成分=0.2〜2/85〜99/0〜10/0.5〜9/0〜5であることが好ましい。負極組成物がこのような含有割合で構成成分を含むものであると、負極組成物から形成される電極を電池の負極として用いた場合の出力特性や電気特性を優れたものとすることが可能となる。より好ましくは、0.3〜1.5/90〜98.9/0〜5/0.8〜2/0〜3である。
なお、ここでいうその他の成分は、上述のアルカリ可溶性ポリマー、負極活物質、導電助剤、水分散樹脂以外の成分を表し、分散剤や他の増粘剤等が含まれる。
【0053】
本発明の水系電極組成物は、粘度が1〜20Pa・sであることが好ましい。水系電極組成物の粘度がこのような範囲にあると、塗工する際の適当な流動性を確保でき、作業性の面で好ましい。より好ましくは2〜12Pa・sであり、更に好ましくは、2〜10Pa・sである。
【0054】
また、上記水系電極組成物は、チクソ値が2.5〜8であることが好ましい。2.5未満の場合は塗工液が流れてハジキ易くなり、8を超える場合は塗工液の流動性が無く塗工し難い。より好ましくは3〜6である。
水系電極組成物の粘度は、B型粘度計(東京計器社製)を用いて、25±1℃、30rpmの条件で測定することができる。また、水系電極組成物のチクソ値は、B型粘度計(東京計器社製)を用いて、25±1℃、6rpmと60rpmの粘度を測定し、6rpmの粘度を60rpmの粘度で除した値として求めることができる。
【0055】
上記水系電極組成物は、25℃でのpHが6以上10未満であることが好ましい。pHがこのような範囲にあることで集電体の腐食を起こしにくくなる。結果、材料の持つ電池性能を充分に発現することができる。
pH測定は、ガラス電極式水素イオン度計F−21(製品名、堀場製作所社製)を用いて、25℃での値を測定することにより行うことができる。
【0056】
上記水系電極組成物の製造方法としては、アルカリ可溶性ポリマー及び電極活物質が均一に分散されることになる限り特に制限されないが、本発明の水分散体と電極活物質とを混練する工程を含むことが好ましい。このように混練することによって、電極活物質に由来するアルカリによりアルカリ可溶性ポリマーが中和され、生成した水溶性ポリマーが粒子を分散させる働きを担い、電極活物質が充分均一に分散されることとなる。このように、アルカリ可溶性ポリマー及び電極活物質を必須成分として含む水系電極組成物を製造する方法であって、上記製造方法が、本発明の水分散体と電極活物質とを混練する工程を含むこともまた、本発明の1つである。
【0057】
上記混練工程においては、ビーズ、ボールミル、攪拌型混合機、2軸遊星方式の混合混練装置(例えば、TKハイビスミックス(登録商標)(プライミクス社製)等が挙げられる。)等を用いて混練することができる。
なお上記混練工程としては、本発明の水分散体及び電極活物質を加える限り、その他の成分を加えてもよく、その場合の混練工程の一例としては、水分散体に、場合により分散剤を添加し、更に必要に応じて導電助剤を混合して混練することで分散させ、その溶液に電極活物質を加えて更に混練することで分散、スラリー化させる工程が好適な実施形態として挙げられる。
【0058】
上記水系電極組成物の製造方法としては、上記混練工程後、更に、水分散樹脂を加える工程を含むことが好ましい。このような手順で水系電極組成物を調製することで、電極活物質を簡便かつ充分に均一分散させることが可能となる。
【0059】
本発明の水系電極組成物は、電極活物質の分散安定性、粘度調整機能を確保し、更に、塗膜の形成能、基材との密着性や可とう性に優れたものとなっている。そして、このような水系電極組成物を集電体上に塗工して得られる電極は、二次電池用の電極として充分な性能を発揮することができるものである。
このような本発明の水系電極組成物を用いて形成される電極もまた、本発明の1つである。そして更に、この電極を用いて構成される二次電池もまた、本発明の一つである。
上記集電体としては、特に制限されないが、例えば、アルミ集電体、銅箔等が挙げられる。
【0060】
また、本発明の二次電池は、充放電を100回繰り返した100サイクル後の電気容量維持率(単に、「100サイクル維持率」ともいう。)が85%以上であることが好ましい。より好ましくは90%以上であり、更に好ましくは95%以上である。
二次電池の電気容量は後述する実施例において行われるような充放電測定装置を用いた評価により測定することができる。
【発明の効果】
【0061】
本発明の水分散体は、上述の構成よりなり、水系の電極組成物を調製する際に電極組成物のpHを低く保つことができるため、電極形成時の集電体の腐食、変性を抑えることができ、その水分散体を用いた電極組成物から形成される電極が電池性能に優れたものとなることから、水系の電極組成物に好適に用いることができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0063】
(合成例1;水分散体(1)の合成)
攪拌機、温度計、冷却器、窒素導入管、滴下ロートを備えた四つ口セパラブルフレスコに、イオン交換水(115部)、ポリオキシエチレンドデシルエーテルのスルホン酸アンモニウム塩(1.5部)を投入した。内温68℃で攪拌しながら、緩やかに窒素を流し、反応容器内を完全に窒素置換した。
次に、ポリオキシエチレンドデシルエーテルのスルホン酸塩(1.5部)をイオン交換水(92部)に溶解した。ここに、重合体の単量体として、アクリル酸エチル(59.9部)とメタクリル酸(40部)とジアリルフタレート(0.1部)の混合物を投入し、プレエマルションを作製した。単量体を含む前記プレエマルションの5%を反応容器に投入して攪拌後、亜硫酸水素ナトリウム(0.017部)を投入した。別途、過硫酸アンモニウム(0.23部)をイオン交換水(23部)に溶解し、重合開始剤水溶液を作製した。この重合開始剤水溶液5%を、前記反応容器に投入し20分間初期重合を行った。反応容器内の温度を72℃に保ち、残りのプレエマルション及び開始剤水溶液を2時間にわたって均一に滴下した。滴下終了後、イオン交換水(8部)で滴下槽を洗浄後、反応容器に投入した。内温を72℃に保ち、更に1時間攪拌を続けた後、冷却して反応を完了し、固形分30%(ポリマー濃度30%)のエマルションを得た。この得られたエマルションをポリマー濃度2質量%に調整したものを水分散体(1)とした。水分散体(1)のpHは2.9で、粘度は3mPa・sであった。また、当該エマルションを、5%水酸化リチウム・一水和物水溶液を用いてpH8に中和してポリマー濃度2質量%に調整した水溶液(1)の全光線透過率は、97.0%で、粘度は2300mPa・sであった。なお、水分散体のpH、粘度、及び、水溶液の全光線透過率、粘度は、次のようにして測定した。
【0064】
<水分散体のpH>
ガラス電極式水素イオン度計F−21(製品名、堀場製作所社製)を用いて、25℃での値を測定した。
<水分散体、水溶液の粘度>
B型粘度計(東京計器社製)を用いて25±1℃、30rpmの粘度を測定した。
<水溶液の全光線透過率>
ヘイズメーター(NDH5000、日本電色工業社製)を用いて、セルに溶液を入れて測定し、全光線透過率を求めた。なお、水の全光線透過率を100%とした。
【0065】
(合成例2;水分散体(2)の合成)
重合体の単量体としてアクリル酸エチル(65部)、メタクリル酸(35部)を用いた以外は、合成例1と同様にして、固形分30%のエマルションを得た。この得られたエマルションをポリマー濃度2質量%に調整したものを水分散体(2)とした。水分散体(2)のpHは3.3で、粘度は3mPa・sであった。また、当該エマルションを、5%水酸化リチウム・一水和物水溶液を用いてpH8に中和してポリマー濃度2質量%に調整した水溶液(2)の全光線透過率は99.0%で、粘度は200mPa・sであった。
【0066】
(実施例1)
水(20.88部)、水分散体(1)(0.67部/固形分0.2部)を混合した水分散液に、正極活物質としてセルシードNMC(日本化学工業社製、N:M:C=1:1:1品)(36.8部)、導電助剤としてデンカブラックHS−100(デンカ社製)(2.4部)を混合して、混練した。混練後、更に水分散樹脂であるアクリル変性フッ化ビニリデン系エマルション(アルケマ社製、VDF:アクリル=70:30、「アクリル変性VDFポリマー」とも称する。)(1.25部/固形分0.6部)を加えて混合分散し、正極組成物(1)を得た。
得られた正極組成物(1)の粘度、チクソ値、pHを次のようにして測定、評価した。正極組成物(1)の特性を表1に示した。また、下記するようにして正極組成物(1)を用いてコイン電池を作製し電池評価を行ったところ、放電容量が142mAh/gで、100サイクルの維持率は95%であった。
【0067】
<正極組成物の粘度>
B型粘度計(東京計器社製)を用いて25±1℃、30rpmの粘度を測定した。
<正極組成物のチクソ値>
B型粘度計(東京計器社製)を用いて25±1℃、6rpm及び60rpmの粘度を測定し、6rpmの粘度を60rpmの粘度で除した値を求め、チクソ値とした。
<正極組成物のpH>
ガラス電極式水素イオン度計F−21(製品名、堀場製作所社製)を用いて、25℃での値を測定した。
【0068】
<電池評価(充放電評価)>
アプリケーターを用いて、正極組成物を塗工し、100℃で10分乾燥し、室温で5分プレスをして、80℃で減圧乾燥し電極シートを作製した。作製した電極シートを用いて、下記のようにコインセル(CR2032)を作製し、充放電測定装置ACD−001(製品名、アスカ電子社製)を用いて下記条件により電池評価を行った。
コインセル
正極 :表1の正極組成物
負極 :Li箔
電解液 :1mol%/L LiPF6 EC/EMC=1/1(キシダ化学社製)
電池評価条件
充電条件:0.2C CC Cut−off 4.3V
放電条件:0.5C CC Cut−off 2.7V
【0069】
(実施例2)
水(20.87部)、水分散体(1)(0.53部/固形分0.16部)、スチレン−マレイン酸コポリマー分散剤(0.15部/固形分0.04部)を混合した水分散液を用いた以外は、正極組成物(1)と同様にして正極組成物を作製し、正極組成物(2)を得た。
得られた正極組成物(2)の粘度、チクソ値、pHを実施例1同様に測定、評価した。正極組成物(2)の特性を表1に示した。正極組成物(2)を用いてコイン電池を作製し、実施例1と同様にして電池評価を行ったところ、放電容量が145mAh/gで、100サイクルの維持率は97%であった。
【0070】
(実施例3)
水(20.39部)、水分散体(2)(1.06部/固形分0.32部)、スチレン−マレイン酸コポリマー分散剤(0.30部/固形分0.08部)を混合した水分散液に、セルシードNMC(36.6部)、デンカブラックHS−100(2.4部)を混合して混練した。混練後、更にアクリル変性フッ化ビニリデン系エマルション(1.25部/固形分0.6部)を加えて混合分散し、正極組成物(3)を得た。
得られた正極組成物(3)の粘度、チクソ値、pHを実施例1同様に測定、評価した。正極組成物(3)の特性を表1に示した。正極組成物(3)を用いてコイン電池を作製し、実施例1と同様にして電池評価を行ったところ、放電容量が144mAh/gで、100サイクルの維持率は97%であった。
【0071】
(実施例4)
水(42.83部)、水分散体(2)(1.06部/固形分0.32部)、スチレン−マレイン酸コポリマー分散剤(0.30部/固形分0.08部)を混合した水分散液に、LiFePO(中国品)(36.0部)、デンカブラックHS−100(2.4部)を混合して混練した。混練後、更にアクリル変性フッ化ビニリデン系エマルション(2.5部/固形分1.2部)を加えて混合分散し、正極組成物(4)を得た。
得られた正極組成物(4)の粘度、チクソ値、pHを実施例1同様に測定、評価した。正極組成物(4)の特性を表1に示した。正極組成物(4)を用いてコイン電池を作製し、実施例1と同様にして電池評価を行ったところ、放電容量が140mAh/gで、100サイクルの維持率は97%であった。
【0072】
(比較例1)
水(14.05部)、水溶液(1)(8.0部/固形分0.16部)、スチレン−マレイン酸コポリマー分散剤(0.15部/固形分0.04部)を混合した水溶液に、セルシードNMC(36.8部)、デンカブラックHS−100(2.4部)を混合して混練した。混練後、更にアクリル変性フッ化ビニリデン系エマルション(1.25部/固形分0.6部)を加えて混合分散し、比較正極組成物(1)を得た。
得られた比較正極組成物(1)の粘度、チクソ値、pHを実施例1同様に測定、評価した。比較正極組成物(1)の特性を表1に示した。
【0073】
(比較例2)
水(28.27部)、水溶液(2)(16.0部/固形分0.32部)、スチレン−マレイン酸コポリマー分散剤(0.30部/固形分0.08部)を混合した水溶液に、LiFePO(中国品)(36.0部)、デンカブラックHS−100(2.4部)を混合して混練した。混練後、更にアクリル変性フッ化ビニリデン系エマルション(2.5部/固形分1.2部)を加えて混合分散し、比較正極組成物(2)を得た。
得られた比較正極組成物(2)の粘度、チクソ値、pHを実施例1同様に測定、評価した。比較正極組成物(2)の特性を表1に示した。
【0074】
(比較例3)
NMP(27.8部)、カイナーHSV900(ポリフッ化ビニリデン系樹脂、アルケマ社製)(1.2部)のポリマー溶液にセルシードNMC(36.4部)、デンカブラックHS−100(2.4部)を混合して混練し、比較正極組成物(3)を得た。
得られた比較正極組成物(3)の粘度、チクソ値、pHを実施例1同様に測定、評価した。比較正極組成物(3)の特性を表1に示した。比較正極組成物(3)を用いてコイン電池を作製し、実施例1と同様にして電池評価を行ったところ、放電容量が146mAh/gで、100サイクルの維持率は97%であった。
なお、表1中、各成分の配合組成の欄の数値は、各成分の固形分の配合割合(質量%)を表している。また、比較例3におけるチクソ値は、粘度が>10,000(6rpm)のため、測定できなかった。また、pHは、未測定であることを表している。
【0075】
【表1】

【0076】
実施例及び比較例の結果から、以下のことが分かった。
本発明の水分散体は、電極活物質と混練して電極組成物を調製することにより、粒子の分散性と粘度調整機能を有することが実証された。そして、初期放電容量、サイクル特性に関しても、バインダーにPVDFを用いた溶剤系の電極組成物である比較例3と比較しても同等の電池性能が発揮できていることが確認された。
また、本発明の水分散体を一度アルカリ水溶液を用いて中和して水溶性ポリマーとし、その溶液を電極活物質などと共に混練して電極組成物を調製する比較例1〜2と対比すると、実施例1〜4の結果から、本発明の水分散体を用いて電極組成物を調製することで、電極組成物のpHを10未満と低減させることができることを確認した。
なお、上記実施例においては、水分散体として特定のものが用いられ、また、電極活物質、導電助剤、水分散樹脂、分散剤としても特定のものが用いられているが、電極組成物のバインダーとして本発明の水分散体を用いることによって、それを用いて調製される電極組成物のpHが低く保たれ、また、その電極組成物から形成される電極が電池性能に優れたものとなる機構は、本発明における水分散体を用いた場合には全て同様である。
従って、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができると言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系電極組成物に用いるアルカリ可溶性ポリマーを含有する水分散体であって、
該アルカリ可溶性ポリマーは、
ポリマーが有する構造単位の全量100質量%に対して、エチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位を20〜60質量%、及び、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位を40〜80質量%必須として有するものであり、
該水分散体は、
ポリマー濃度を2質量%としたときに、
25℃における粘度が、pH5未満の状態で50mPa・s以下、pH8に中和した状態で100mPa・s以上となり、かつ、pH8の状態で全光線透過率が90〜100%となるものである
ことを特徴とする水分散体。
【請求項2】
前記エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体は、下記一般式(1);
CH=CR−C(=O)−OR’ (1)
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。R’は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基を表す。)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の水分散体。
【請求項3】
アルカリ可溶性ポリマー及び電極活物質を必須成分として含む水系電極組成物であって、
請求項1又は2に記載の水分散体を用いてなることを特徴とする水系電極組成物。
【請求項4】
前記電極活物質は、正極活物質であり、
前記水系電極組成物は、更に、pH7の状態でエマルションの形態である別のポリマーを含むことを特徴とする請求項3に記載の水系電極組成物。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の水系電極組成物を用いて形成されることを特徴とする電極。
【請求項6】
請求項5に記載の電極を用いて構成されることを特徴とする二次電池。
【請求項7】
アルカリ可溶性ポリマー及び電極活物質を必須成分として含む水系電極組成物の製造方法であって、
該製造方法は、請求項1又は2に記載の水分散体と電極活物質とを混練する工程を含むことを特徴とする水系電極組成物の製造方法。

【公開番号】特開2013−62080(P2013−62080A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198570(P2011−198570)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】