説明

水素充填ステーション及び水素充填方法

【課題】水素充填時における制御の複雑化を抑制しながら、水素タンク内の温度上昇を低減できる水素充填ステーションを提供する。
【解決手段】水素充填ステーション1は、高圧水素貯蔵タンク22と、車両に搭載される水素タンク内に水素を充填する水素供給ノズル32と、水素供給管路26と、水素供給ノズル32を保持するための保持スタンド28と、水素供給ノズル32が保持スタンド28に保持されているか否かを検出するリミットスイッチ34と、前記水素タンクを冷却する冷却システム5と、冷却システム5による前記水素タンクの冷却動作を制御するバルブ開閉制御装置7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素を貯蔵する水素タンクに水素を充填するための水素充填ステーション及び水素充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水素と酸素との電気化学反応により発電する燃料電池においては、燃料としての水素は、例えば高圧で水素タンクに貯蔵されて、前記燃料電池の近傍に配置される。このような水素タンクの水素充填量が低下した場合には、該水素タンクは、該水素タンクよりも高圧の水素が貯蔵されている高圧水素貯蔵タンクに接続されて水素が充填補充される。また、通常、燃料電池車両等に搭載される水素タンクにおいては、上記のような水素タンクへの水素充填は、水素充填ステーションにおいて行われる。
【0003】
ところで、上記のように、高圧の水素を高圧水素貯蔵タンクから水素タンクに充填する場合には、充填される側の水素タンク内で水素が発熱することが知られており、水素充填が成された後の水素タンク内温度は外気温度よりも高く、例えば、+70℃以上となる。このような場合、水素充填直後の水素タンク内の水素圧力は、上記のように温度上昇後の高温状態での圧力となっている。その後、水素タンク内の温度が外気温程度まで低下すると、当該水素タンク内の水素圧力も水素充填直後に比べて低下することになる。これにより、上記のような温度上昇が生じる場合には、水素タンクへの水素充填量が減少するという問題があった。
【0004】
上記のような水素充填時における水素タンク内の温度上昇を抑制する方法として、特許文献1には、圧力ステージを複数段に異ならせた複数の高圧水素貯蔵タンクから、車両に搭載された水素タンクに水素を供給するための供給管路に、その内部を流れる水素を冷却するための冷却手段を設けることが記載されており、さらに、水素タンク内の温度をモニターしながら検出温度をフィードバックし、当該検出温度に応じて冷却手段により水素を冷却しながら水素タンクに充填することが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−69332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法は、水素タンク内の温度をモニターしながら検出温度を冷却手段にフィードバックして水素を冷却した後、該冷却された水素を水素タンク内に充填させるように構成されているため、検出手段やバルブ等の部品点数が増加して、制御が複雑化するという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、水素タンクへの水素充填時における制御の複雑化を抑制しながら、水素充填時における水素タンク内の温度上昇を低減して、該水素タンクへの水素充填量を増加させることができる水素充填ステーション及び水素充填方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の水素充填ステーションは、高圧水素貯蔵タンクと、該高圧水素貯蔵タンクから水素が充填される水素タンクに接続され、該水素タンク内に水素を充填するための水素供給ノズルと、該水素供給ノズルと前記高圧水素貯蔵タンクとを接続し且つ水素が流通可能に構成される水素供給管路と、前記水素供給ノズルを保持するための保持手段と、前記保持手段に設けられ、前記水素供給ノズルが前記保持手段に保持されているか否かを検出する検出手段と、前記水素タンクを冷却する冷却手段と、該検出手段の検出結果に基づき、前記冷却手段による前記水素タンクの冷却動作を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、高圧水素貯蔵タンクから水素タンクへの水素充填時、上記検出手段と制御手段による簡単な構成を用いて、水素タンクを冷却できるので、当該水素充填時における水素タンク内の温度上昇を低減できる。これにより、水素タンクへの水素充填量を増加させることができる。
【0010】
また、前記水素タンクが車両に搭載された水素タンクである場合には、前記冷却手段は前記車両の下側から前記水素タンクを冷却するように構成されていることが好ましい。これにより、車両に搭載される水素タンクへの水素充填時でも、当該水素タンクの温度上昇を低減させ、水素充填量を増加させることができる。
【0011】
さらに、前記冷却手段は、前記水素タンクに冷却媒体を噴射する冷却媒体噴射手段と、該冷却媒体噴射手段に冷却媒体を供給する冷却媒体供給源と、該冷却媒体供給源と前記冷却媒体噴射手段とを接続し且つ前記冷却媒体が流通可能に構成される冷却媒体供給管路と、該冷却媒体供給管路に設けられるバルブとを含み、前記制御手段は、前記バルブの開閉を制御するバルブ開閉制御装置とすることが好ましい。また、前記冷却媒体としては、水又は空気を用いることができる。これにより、水素充填ステーションの構成が一層簡略化され、水素タンクへの水素充填時における制御の複雑化が抑制されると共に、水素タンクの温度上昇を低減させ、水素充填量を増加させることができる。
【0012】
本発明の水素充填方法は、高圧水素貯蔵タンクと、該高圧水素貯蔵タンクよりもタンク内の水素圧力が低い水素タンクと、前記高圧水素貯蔵タンクと前記水素タンクとを接続し且つ水素が流通可能に構成される水素供給管路と、該水素供給管路を前記水素タンクに接続する水素供給ノズルとを用い、前記高圧水素貯蔵タンクから前記水素タンクに水素を充填する水素充填方法であって、前記水素タンクを冷却する冷却手段により前記水素タンクの冷却を開始する第1の工程と、該第1の工程の後、前記水素供給ノズルを介して前記水素タンク内に水素を充填した後、該充填を停止する第2の工程と、該第2の工程の後、前記冷却手段による前記水素タンクの冷却を停止する第3の工程と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、前記第1の工程は、前記水素供給ノズルを、該水素供給ノズルを保持する保持手段から外した後、前記冷却手段により前記水素タンクの冷却を開始する工程であり、前記第2の工程は、前記水素供給ノズルを前記水素タンクに接続した後、前記水素タンク内に水素を充填し、その後、前記充填を停止する工程であり、前記第3の工程は、前記水素供給ノズルを前記水素タンクから外した後、該水素供給ノズルを前記保持手段に保持させ、その後、前記冷却手段による前記水素タンクの冷却を停止する工程とするとよい。
【0014】
このような方法によれば、高圧水素貯蔵タンクから水素タンクへの水素充填時、上記水素タンクを冷却できるので、当該水素充填時における水素タンク内の温度上昇を低減できる。これにより、水素タンクへの水素充填量を増加させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単な構成で水素タンクへの水素充填時における水素タンク内の温度上昇を低減して、水素タンクへの水素充填量を増加できる水素充填ステーション及び水素充填方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の水素充填ステーション及び水素充填方法について実施形態と実施例を挙げ、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態としての水素充填ステーションを示す概略構成図である。なお、本実施形態における水素充填ステーションは、燃料電池車両に搭載される水素タンクに水素を充填するものである。図1に示すように、本実施形態に係る水素充填ステーション1は、該水素充填ステーション1において水素が充填される水素タンク110を搭載する車両としての燃料電池車両100(図7参照)が停車する停車スペース10を有し、該停車スペース10に停車する燃料電池車両100の水素タンク110に水素を充填する水素供給システム3と、前記停車スペース10に敷設され該停車スペース10に停車する燃料電池車両100の水素タンク110を冷却する冷却手段としての冷却システム5と、該冷却システムによる前記水素タンク110の冷却動作の開始又は停止を制御する制御手段としてのバルブ開閉制御装置7とを備える。
【0018】
燃料電池車両100は、水素タンク110に貯蔵される水素と空気中から取り込まれる酸素との電気化学反応により得られる電力により、図示しない駆動用モータを駆動して走行する車両である。また、水素タンク110としては、高圧で水素を貯蔵するもの、水素の貯蔵と放出が可能な水素吸着剤を収容したもの、又は水素の吸着と放出が可能な水素吸着材、例えば錯体、活性炭、カーボンナノチューブ、アモルファスカーボン、グラファイトカーボン、ゼオライト若しくはメソポーラスシリケート等を収容したもの等、水素の貯蔵が可能なものであれば何れも使用可能である。なお、本実施形態において、水素タンク110は、燃料電池車両100の後方下部に2個配置されている(図7及び図8参照)。
【0019】
水素供給システム3は、上記水素タンク110への充填圧力よりも高圧の水素が貯蔵される高圧水素貯蔵タンク22と、該高圧水素貯蔵タンク22から供給される水素を水素タンク110へ供給するための水素供給管路26と、該水素供給管路26途中に配設され高圧水素貯蔵タンク22から流出する水素の圧力を所定値に低減させるレギュレータ24と、前記水素供給管路26におけるレギュレータ24の二次側(低圧側)の端部に取り付けられ水素タンク110に着脱自在に接続される水素供給ノズル32と、非使用時の水素供給ノズル32を保持する保持手段としての保持スタンド28とを備える。なお、本実施形態における高圧水素貯蔵タンク22は、同容積の3個のタンクが配管接続されるカードルであり、レギュレータ24は上記3個のタンクからの配管が合流した後の水素供給管路26の途中に配設される。
【0020】
水素供給ノズル32は、その先端部分が燃料電池車両100の水素タンク110における図示しない水素充填口に着脱自在に接続できるように構成されており、これにより高圧水素貯蔵タンク22と水素タンク110とが水素供給管路26を介して接続され、水素タンク110に水素を充填できる。また、保持スタンド28は、水素タンク110への水素充填時以外の水素供給ノズル32を使用していない際に、該水素供給ノズル32を保管するものであり、例えば水素供給ノズル32を掛けて保持可能な図示しないフック部を有する。さらに、保持スタンド28には、水素供給ノズル32が保持されているか否かを検出する検出手段としてのリミットスイッチ34が配設されている。なお、詳細は後述するが、リミットスイッチ34は、例えば上記フック部に設けられてバルブ開閉制御装置7と電気的に接続されており、水素供給ノズル32が保持スタンド28から取り外された信号、又は取り付けされた(戻された)信号をバルブ開閉制御装置7に送信する。
【0021】
冷却システム5は、停車スペース10に敷設され燃料電池車両100の水素タンク110に冷却媒体としての水や空気等を噴射して冷却するものであり、冷却媒体供給源16と、該冷却媒体供給源16から加圧されて供給される冷却媒体を燃料電池車両100の下側から上方に向けて噴射する冷却媒体噴射手段としての噴射部14と、冷却媒体供給源16から噴射部14に冷却媒体を供給する冷却媒体供給管路20と、該冷却媒体供給管路20の途中に設けられ当該冷却媒体供給管路20における冷却媒体の流通を制御する電磁式開閉弁であるバルブ18とを備える。ここで、冷却媒体供給源16は、冷却媒体として水を用いる場合には例えば水道管であって、冷却媒体として空気を用いる場合には例えば空気圧縮装置である。
【0022】
バルブ18は、バルブ開閉制御装置7と電気的に接続されており、上記リミットスイッチ34からの入力信号に基づいたバルブ開閉制御装置7によって開閉制御され、これにより、バルブ18が開かれると噴射部14から水素ボンベ110に向かって冷却媒体が噴射され、バルブ18が閉じられると噴射部14からの冷却媒体の噴射は停止される。すなわち、バルブ開閉制御装置7は、リミットスイッチ34により水素供給ノズル32が保持スタンド28から取り外された信号(以下、オン信号とする)が入力されると、バルブ18を開くように制御する一方、前記リミットスイッチ34により水素供給ノズル32が保持スタンド28に取り付けられた信号(以下、オフ信号とする)が入力されると、バルブ18を閉じるように制御する。
【0023】
ここで、本実施形態における噴射部14について図2乃至図5を参照して説明する。図2は、噴射部14の概略平面図である。噴射部14は、冷却媒体供給管路20に連通する噴射管路40が網目状に連結されて構成され、全体として略矩形状を成している。また、噴射部14は、通常の車両に搭載される水素タンクを十分に冷却可能な大きさに設定され、本実施形態においては、幅方向約2000mm、長さ方向約5000mmである。そして、噴射部14における各噴射管路40の交差部分には、噴射口42(図3及び図4参照)が設けられており、該噴射口42は、幅方向及び長さ方向共に50〜200mm間隔で設置される。なお、噴射部14の冷却媒体供給管路20に連結する幅方向及び長さ方向の縁部には、夫々噴射管路40を幅方向及び長さ方向に分岐して冷却媒体の流れを均一化するための若干の余裕部分A、Bが設けられている。
【0024】
図3は、噴射部14における噴射管路40が十字状に交差する部分の拡大斜視図であり、図4は、噴射管路40が噴射部14の縁部で交差する部分の拡大斜視図である。図3及び図4に示すように、噴射口42は、噴射管路40の各交差部分に配設されているため、噴射部14の幅方向及び長さ方向の全面から均一に冷却媒体を車両に向けて噴射することができる。これにより、停車スペース10での燃料電池車両100の停車位置が若干ずれた場合や、さらに、当該燃料電池車両100自体の大きさが異なる場合にも水素タンク110を確実に冷却することが可能となる。
【0025】
図5は、図1中の線V−Vにおける概略断面図であり、噴射部14の停車スペース10への敷設状態を示している。噴射部14は、上記のように網目状に連結される噴射管路40により構成されるため、地面の上に直接敷設すると、その上に直接燃料電池車両100が乗り上げることになり、噴射部14の破損を生じたり、燃料電池車両100が乗り上げる際に不安定になる等の問題が生じるおそれがある。そこで、本実施形態では、図5に示すように、停車スペース10に噴射部14が収納可能な凹部11を設け、該凹部11内に噴射部14を敷設すると共に、凹部11を噴射部14から噴射される冷却媒体が流通可能であり、燃料電池車両100の重量に十分耐えることが可能な、例えば網目状の金属蓋12により蓋をするようにしている。これにより、噴射部14を保護した状態で、燃料電池車両100の下側から冷却媒体を水素ボンベ110に向けて噴射することが可能となる。なお、凹部11の底部には、図示しない排水部が設けられる。
【0026】
次に、以上のように構成される水素充填ステーション1において燃料電池車両100に搭載される水素ボンベ110に水素を充填する水素充填方法について、図6乃至図8を用いて説明する。図6は、本実施形態に係る水素充填方法の動作を示すフローチャートである。なお、以下の説明では表記したステップ番号順に処理が実行されるものとする。
【0027】
図6におけるステップS1において、図7に示すように、停車スペース10の噴射部14が敷設されている位置に燃料電池車両100を停車させる。噴射部14は、通常の車両に搭載される水素タンクを十分に冷却可能な大きさに設定されているので、燃料電池車両100の停車位置が若干ずれる等しても確実に冷却ができる。
【0028】
ステップS2において、水素供給ノズル32を保持スタンド28の図示しないフック部から取り外す。
【0029】
ステップS3において、リミットスイッチ34からバルブ開閉制御装置7に、水素供給ノズル32が保持スタンド28から取り外された信号、すなわちオン信号が送信される。
【0030】
ステップS4において、バルブ開閉制御装置7によりバルブ18が開かれ、図8に示すように、冷却媒体供給源16からの冷却媒体が、冷却媒体供給管路20を介して噴射部14における噴射口42から上方、すなわち燃料電池車両100の下側に向かって噴射される。このため、燃料電池車両100の下部に搭載されている水素タンク110の冷却が開始される。なお、図8では、各噴射口42から上方に向かって図示されている矢印が冷却媒体を示している。
【0031】
ステップS5において、水素供給ノズル32を燃料電池車両100の水素タンク110の図示しない水素充填口に接続し、水素タンク110への水素充填を開始する。ここで、高圧水素貯蔵タンク22内の高圧水素は、レギュレータ24により所定の圧力まで減圧されて水素タンク110へと供給される。
【0032】
ステップS6において、水素タンク110に所定圧力まで水素が充填されると、水素の供給が停止される。なお、このような水素充填中は、噴射部14からの冷却媒体の噴射、すなわち水素タンク110の冷却が継続され、これにより、水素充填時における水素タンク110内での温度上昇が抑制される。
【0033】
ステップS7において、水素供給ノズル32を水素タンク110の水素充填口から外し、保持スタンド28のフック部に戻される。
【0034】
ステップS8において、リミットスイッチ34からバルブ開閉制御装置7に、水素供給ノズル32が保持スタンド28に取り付けされた信号、すなわちオフ信号が送信される。
【0035】
ステップS9において、バルブ開閉制御装置7によりバルブ18が閉じられ、噴射部14からの冷却媒体の噴射が停止される。すなわち、水素タンク110の冷却が停止される。
【0036】
上記各ステップにより水素タンク110への水素充填が完了すると、ステップS10に示すように、停車スペース10から燃料電池車両100を移動させる。また、その後、他の車両に対して水素充填を行う場合には、上記と同様の手順による水素充填を繰り返せばよい。
【0037】
以上のように、本実施形態に係る水素充填ステーションにおける水素充填方法によれば、リミットスイッチ34とバルブ開閉制御装置7等を用いた簡単な制御により、水素充填時における水素タンク110内の温度上昇を低減させることができ、当該水素タンク110へ十分な量の水素を充填することが可能となる。
【0038】
次に、上記実施形態に係る水素充填ステーションにおける水素充填方法を適用した実施例について、図面を参照し、比較例を示して説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではないのは当然である。
【0039】
本実施例では、水素供給システム3において、高圧水素貯蔵タンク22内の水素圧力を42MPaとし、これをレギュレータ24により水素圧力35MPaに減圧した水素を燃料電池車両100に充填するものとした。保持スタンド28は、フック部により水素供給ノズル32を固定する形式とし、リミットスイッチ34を該フック部に配設した。
【0040】
冷却システム5としては、図2乃至図4に示す網目状で、幅2000mm、長さ5000mmの噴射部14を用い、噴射管路40は、外径20mm、内径18mmとした。噴射部14における噴射口42は、幅方向、長さ方向共に100mm毎、合計1071箇所に設け、当該噴射口42の口径は直径1mmとした。また、冷却媒体としては、0.2MPaの水道水を用い、これを冷却媒体供給源16とした。なお、バルブ18には電磁弁を用いた。
【0041】
燃料電池車両100には、車両後方下部に2個の水素タンク110を搭載させると共に、該水素タンク110には、その内部温度を測定するために温度測定手段としての熱電対を取り付けて、停車スペース10における噴射部14が敷設されている位置に停車させた。そして、水素供給ノズル32を保持スタンド28のフック部から取り外すと、バルブ開閉制御装置7により電磁弁(バルブ7)が開かれ、これにより冷却媒体としての水道水が噴射部14より水素タンク110に向けて噴射され、水素タンク110の冷却が開始された。
【0042】
次に、水素供給ノズル32を水素タンク110に接続し、水素充填を開始し、該水素タンク110内の圧力が35MPaとなるまで水素充填を行った。このときの水素タンク110への水素充填量(kg)と水素タンク110内の温度変化(℃)のグラフを図9に示す。また、図9には、比較例として、本実施例における水素供給システム3及び燃料電池車両100等と同一の装置を適用し、冷却システム5を省略した水素充填ステーションにおいて、水素タンク110内が35MPaとなるまで水素充填を行った場合における、水素タンク110への水素充填量(kg)と水素タンク110内の温度変化(℃)のグラフも記載した。
【0043】
図9において、横軸は水素充填時間(min)であり、左側の縦軸は水素充填量(kg)であり、右側の縦軸は水素タンク110内の温度(℃)である。さらに、図9において、実線は本実施例による測定結果を示し、破線は比較例による測定結果を示している。なお、実施例及び比較例共に、水素タンク110内の圧力が35MPaになるまでには、約5分の水素充填時間を要した。図9から分かるように、水素充填後の水素タンク110内の温度は、本実施例では、+65℃であり、比較例では、+75℃となった。また、このときの水素充填量は、本実施例では、4.4kgであり、比較例では、4.3kgであった。
【0044】
以上から、冷却システム5を用いた本実施例では、該冷却システム5を用いていない比較例に比べて、水素充填後の水素タンク110内の温度が低く、水素充填量が多くなることが明白となった。
【0045】
以上のように、実施形態及び実施例を示して本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは当然可能である。例えば、上記実施形態等では、高圧水素貯蔵タンク22から燃料電池車両100に搭載される水素タンク110に水素を充填する構成について説明したが、これに限らず、本発明は、高圧水素貯蔵タンク22の近傍に冷却システム5を敷設して、該高圧水素貯蔵タンク22内に、図示しない移動式高圧水素貯蔵タンク(例えば、水素タンク搭載トレーラ)から水素を充填する場合や、図示しない天然ガス等から改質装置を経て生成される水素を圧縮機等を介して充填する場合等にも適用することができる。
【0046】
また、リミットスイッチ34は、上記のように保持スタンド28に設けるだけでなく、水素供給ノズル32にも設けることができ、また、保持スタンド28及び水素供給ノズル32の両方に設けるようにしてもよく、さらに、使用条件等によっては、該リミットスイッチ34は、手動式スイッチ等に置換することもできる。さらに、寒冷地等では凍結防止のために、上記冷却媒体として水よりも空気を用いる方が好ましいが、例えば気温の高い夏場と気温の低い冬場とで、水と空気の使用を切り替えるようにしてもよい。
【0047】
なお、噴射部14は、使用条件や設置場所等によっては、直接地面の上に敷設することも当然可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態に係る水素充填ステーションを示す概略構成図である。
【図2】前記実施形態に係る噴射部の概略平面図である。
【図3】図2に示す噴射部において、噴射管路が十字状に交差する部分の拡大斜視図である。
【図4】図2に示す噴射部において、噴射管路が噴射部の縁部で交差する部分の拡大斜視図である。
【図5】図1に示す線V−Vにおける概略断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る水素充填方法の動作を示すフローチャートである。
【図7】図1に示す水素充填ステーションに燃料電池車両が停車されている状態を示す概略構成図である。
【図8】図7に示す線VIII−VIIIにおける概略断面図である。
【図9】本発明の実施例及び比較例での水素充填時における、水素充填時間に対する水素タンク内の温度変化及び水素充填量を示すグラフである。
【符号の説明】
【0049】
1…水素充填ステーション 3…水素供給システム
5…冷却システム 7…バルブ開閉制御装置
10…停車スペース 11…凹部
12…金属蓋 14…噴射部
16…冷却媒体供給源 18…バルブ
20…冷却媒体供給管路 22…高圧水素貯蔵タンク
24…レギュレータ 26…水素供給管路
28…保持スタンド 32…水素供給ノズル
34…リミットスイッチ 40…噴射管路
42…噴射口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧水素貯蔵タンクと、
該高圧水素貯蔵タンクから水素が充填される水素タンクに接続され、該水素タンク内に水素を充填するための水素供給ノズルと、
該水素供給ノズルと前記高圧水素貯蔵タンクとを接続し且つ水素が流通可能に構成される水素供給管路と、
前記水素供給ノズルを保持するための保持手段と、
前記保持手段に設けられ、前記水素供給ノズルが前記保持手段に保持されているか否かを検出する検出手段と、
前記水素タンクを冷却する冷却手段と、
該検出手段の検出結果に基づき、前記冷却手段による前記水素タンクの冷却動作を制御する制御手段とを備えることを特徴とする水素充填ステーション。
【請求項2】
請求項1記載の水素充填ステーションにおいて、
前記水素タンクは車両に搭載された水素タンクであって、前記冷却手段は前記車両の下側から前記水素タンクを冷却するように構成されていることを特徴とする水素充填ステーション。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の水素充填ステーションにおいて、
前記冷却手段は、前記水素タンクに冷却媒体を噴射する冷却媒体噴射手段と、該冷却媒体噴射手段に冷却媒体を供給する冷却媒体供給源と、該冷却媒体供給源と前記冷却媒体噴射手段とを接続し且つ前記冷却媒体が流通可能に構成される冷却媒体供給管路と、該冷却媒体供給管路に設けられるバルブとを含み、
前記制御手段は、前記バルブの開閉を制御するバルブ開閉制御装置であることを特徴とする水素充填ステーション。
【請求項4】
請求項3記載の水素充填ステーションにおいて、
前記冷却媒体は、水又は空気であることを特徴とする水素充填ステーション。
【請求項5】
高圧水素貯蔵タンクと、該高圧水素貯蔵タンクよりもタンク内の水素圧力が低い水素タンクと、前記高圧水素貯蔵タンクと前記水素タンクとを接続し且つ水素が流通可能に構成される水素供給管路と、該水素供給管路を前記水素タンクに接続する水素供給ノズルとを用い、前記高圧水素貯蔵タンクから前記水素タンクに水素を充填する水素充填方法であって、
前記水素タンクを冷却する冷却手段により前記水素タンクの冷却を開始する第1の工程と、
該第1の工程の後、前記水素供給ノズルを介して前記水素タンク内に水素を充填した後、該充填を停止する第2の工程と、
該第2の工程の後、前記冷却手段による前記水素タンクの冷却を停止する第3の工程とを備えることを特徴とする水素充填方法。
【請求項6】
請求項5記載の水素充填方法において、
前記第1の工程は、前記水素供給ノズルを、該水素供給ノズルを保持する保持手段から外した後、前記冷却手段により前記水素タンクの冷却を開始する工程であり、
前記第2の工程は、前記水素供給ノズルを前記水素タンクに接続した後、該水素供給ノズルを前記水素タンク内に水素を充填し、その後、前記充填を停止する工程であり、
前記第3の工程は、前記水素供給ノズルを前記水素タンクから外した後、前記保持手段に保持させ、その後、前記冷却手段による前記水素タンクの冷却を停止する工程であることを特徴とする水素充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−139145(P2007−139145A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336839(P2005−336839)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】