説明

水素化ニトリルゴムに基づく加硫可能なミクロゲル含有組成物

【課題】水素化ニトリルゴムに基づく加硫可能なミクロゲル含有組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも1種の水素化ニトリルゴムと、少なくとも1種の過酸化物と、少なくとも1種の不飽和カルボン酸および/またはその塩と、特定のミクロゲルとに基づく新規の加硫可能な組成物が提供される。これらの加硫可能な組成物を用いて、特に、駆動ベルト、ロール被覆材、ホースおよびケーブルに使用可能な加硫製品を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化ニトリルゴムに基づく加硫可能なミクロゲル含有組成物およびその調製、ならびにそれから製造される加硫製品に関し、そして特に、駆動ベルト、ロール被覆材、ガスケット、ホースおよびケーブルにおけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
水素化ニトリルゴムに基づく加硫ゴム物品の製造は、特に駆動ベルト、ロール被覆材、ガスケット、ホースおよびケーブルについて知られている。(特許文献1)または(特許文献2)に従って硫黄加硫により、部分的に水素化されたニトリルゴムに基づく物品が製造されると、これらのゴム物品の特性は、特に、現在では様々な用途で遭遇する高温において不十分になる。より良い耐老化性を有する加硫物は、(特許文献3)に従って硫黄で加硫されるか、(特許文献4)に従って有機過酸化物を用いて加硫されるか、あるいは(特許文献5)に従って無機過酸化物で加硫された、より高度に水素化されたニトリルゴムに基づいて得られる。しかしながら、硬度と、様々な引張ひずみ値における引張応力値とは、室温および高温(例えば、130℃)の両方においてまだ改善され得る。不飽和カルボン酸塩の添加は、過酸化物で加硫されるニトリルゴムの場合に、室温および130℃の両方において硬度およびモジュラスレベルを改善するために成功した方法である。ここで不飽和カルボン酸塩は、酸化物および対応する不飽和カルボン酸から配合材料を調製する間に、「その場(in situ)」で調製され得る(特許文献6)。しかしながら、(特許文献7)によると、不飽和カルボン酸塩を直接添加することも可能である。この場合、不飽和カルボン酸塩は、工程の別の段階で調製されるか、あるいは購入される。
【0003】
しかしながら、特に駆動ベルト、ロール、ガスケット、ホースおよびケーブルで使用するために、水素化ニトリルゴムに基づく加硫ゴム物品の特性プロファイルの更なる改善を目的として、機械特性の更なる改善が望ましく、特に130℃またはそれ以上の高温(これらは、自動車用途において特に、そしてますます生じうる温度である)において望ましい。これらの温度で長期間にわたって貯蔵されても、この改善された特性プロファイルは保持されることが意図される。しかしながら同時に、このようにして改善されたゴム物品は、不変の良好な硬度値を有することも意図される。
【0004】
ミクロゲルともよばれるゴムゲルの使用は、加硫物の特性の基礎的な制御のために知られている(例えば、(特許文献8)、(特許文献9)、(特許文献10)、(特許文献11)、(特許文献12)、(特許文献13)、(特許文献14)、(特許文献15)、(特許文献16)、(特許文献17)、(特許文献18)、(特許文献19)、(特許文献20)、(特許文献21)、(特許文献22)、(特許文献23)、(特許文献24)、(特許文献25)および(特許文献26))。これらの明細書はミクロゲルの添加による様々な加硫物の特性の改善を開示しているが、焦点が高温用途に合わせられていない。
【特許文献1】DE−A−2913992号明細書
【特許文献2】EP−A−0265706号明細書
【特許文献3】EP−A−0112109号明細書
【特許文献4】DE−A−3438414号明細書
【特許文献5】EP−A−0383127号明細書
【特許文献6】米国特許第5,391,627号明細書
【特許文献7】米国特許第5,208,294号明細書
【特許文献8】EP−A−0405216号明細書
【特許文献9】DE−A−4220563号明細書
【特許文献10】英国特許第1078400号明細書
【特許文献11】DE−A−19701487号明細書
【特許文献12】DE−A−19701489号明細書
【特許文献13】DE−A−19701488号明細書
【特許文献14】DE−A−19834804号明細書
【特許文献15】DE−A−19834803号明細書
【特許文献16】DE−A−19834802号明細書
【特許文献17】EP−A−1063259号明細書
【特許文献18】DE−A−19939865号明細書
【特許文献19】DE−A−19942620号明細書
【特許文献20】DE−A−19942614号明細書
【特許文献21】DE−A−10021070号明細書
【特許文献22】DE−A−10038488号明細書
【特許文献23】DE−A−10039749号明細書
【特許文献24】DE−A−10052287号明細書
【特許文献25】DE−A−10056311号明細書
【特許文献26】DE−A−10061174号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、特に130℃のような高温で、そして150℃の熱い空気中で貯蔵した後でも、著しく改善された機械特性を有する、水素化ニトリルゴムに基づく加硫物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くことにこの目的は、水素化ニトリルゴムと、不飽和カルボン酸またはその塩と、過酸化物と、特定のミクロゲルとから構成される組み合わせに基づく加硫可能な組成物から出発することによって達成され得る。
【0007】
従って、本発明は、
a)1種または複数種の水素化ニトリルゴムと、
b)1種または複数種の不飽和カルボン酸および/または1種または複数種のその塩と、
c)少なくとも1種の過酸化物と、
d)ガラス転移温度が−20℃よりも低い少なくとも1種のミクロゲルと、
を含む加硫可能な組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
目的を達成する本発明の方法は、ガラス転移温度が−20℃よりも低いミクロゲルが、とりわけブタジエンやイソプレンなどのジエンを用いて調製され、そのため老化(エージング)過程の影響を受けやすい二重結合を含有する範囲において、驚くほどであった。ASTM D2000によると、二重結合含有ゴムゲルの最高使用温度は100℃より低いと想定されるので、ASTM D2000によれば、二重結合含有ゴムゲル(「Rゴム」として知られる材料)の使用が150℃において耐老化性を損ない得ることが予想される。
【0009】
しかしながら、本発明の加硫可能な組成物中で特定のミクロゲルが使用されると、対応する加硫物の機械特性のレベルは、130℃の使用温度においても、そして150℃の熱い空気中での貯蔵後も著しく改善される。ミクロゲルを含まない、これまで知られている水素化ニトリルゴムの加硫可能な組成物を用いる場合には、これらの改善は不可能である。例えば、このタイプの組成物では、高温での特性の改善は、ジアクリル酸亜鉛の量の増大だけでは達成されない。本発明の組成物が使用される場合の結果は、高温における特性の改善だけでなく、室温で変わらない良好な機械特性の保持、および低密度における高硬度値でもある。
【0010】
本発明の組成物は、更に、加硫製品の製造方法に関連して利点をもたらす。加硫製品は、射出成形方法によって製造されることが多い。ここで本発明のミクロゲル含有組成物の加硫物は粘着性が少なく、そのため型から取り出すのが容易であり、そしてこのことにより、製造工程におけるモールドの汚れが少なくなる。本発明のミクロゲル含有組成物は、更に、不変のスコーチ時間(例えば、t10)、そして同時に、短い完全加硫時間(t90およびt95)を与える。
【0011】
水素化ニトリルゴム:
この用途のために、水素化ニトリルゴムは、少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリルモノマーと、そして適切な場合には他の共重合性モノマーとに基づくコポリマーおよび/またはターポリマーであり、ポリマー中に組み込まれたジエン単位は、完全にまたはある程度水素化されている。ポリマー中に組み込まれたジエン単位の水素化度は、通常50〜100%の範囲、好ましくは85〜100%の範囲、そして特に好ましくは95〜100%の範囲である。
【0012】
共役ジエンはどのタイプのものでもよい。(C〜C)共役ジエンを使用するのが好ましい。特に好ましいのは、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ピペリレン、またはこれらの混合物である。特に好ましいのは、1,3−ブタジエンおよびイソプレンまたはこれらの混合物である。1,3−ブタジエンは非常に特に好ましい。
【0013】
使用されるα,β−不飽和ニトリルは、任意の既知のα,β−不飽和ニトリルを含むことができ、好ましいのは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、またはこれらの混合物などの、(C〜C)α,β−不飽和ニトリルである。アクリロニトリルは特に好ましい。
【0014】
その他の共重合性モノマーは不飽和カルボン酸、および不飽和カルボン酸エステルである。
【0015】
不飽和カルボン酸は、好ましくは、3〜16個の炭素原子を有するα,β−不飽和のモノカルボン酸またはジカルボン酸である。α,β−不飽和カルボン酸の例は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、およびこれらの混合物である。
【0016】
3〜16個の炭素原子を有するα,β−不飽和カルボン酸エステルは、好ましくは、上記のカルボン酸のアルキルエステルおよびアルコキシアルキルエステルを包含する。3〜16個の炭素原子を有する好ましいα,β−不飽和カルボン酸エステルは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、およびアクリル酸オクチルである。好ましいアルコキシアルキルエステルは、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチルおよびアクリル酸メトキシエチル、およびこれらの混合物である。
【0017】
水素化ニトリルゴム中の共役ジエンおよびα,β−不飽和ニトリルの割合は、大きく異なり得る。共役ジエンまたは共役ジエン全体の割合は、ポリマー全体を基準として、通常40〜90重量%の範囲であり、好ましくは50〜80重量%の範囲である。α,β−不飽和ニトリルまたはα,β−不飽和ニトリル全体の割合は、ポリマー全体を基準として、通常10〜60重量%の範囲であり、好ましくは20〜50重量%の範囲である。追加のモノマーの存在可能な量は、ポリマー全体を基準として、0.1〜40重量%の範囲、好ましくは1〜30重量%の範囲である。この場合、共役ジエンおよび/またはα,β−不飽和ニトリルの対応する割合が追加のモノマーの割合によって置き換えられ、ここでモノマー全体の割合は、いずれの場合にも全体で100重量%になる。
【0018】
本発明の加硫可能な組成物に適したこのタイプの水素化ニトリルゴムの調製は、当業者に非常によく知られている。
【0019】
上記のモノマーの重合によるニトリルゴムの最初の調製は、文献(例えば、ホーベン−ウェイル(Houben−Weyl)、「有機化学の方法」第14/1巻、ゲオルグ・ティーメ・フェアラーク・シュトゥットガルト(Georg Thieme Verlag Stuttgart)1961年)に広範囲にわたって記載されている。
【0020】
水素化ニトリルゴムを得るための上記のニトリルゴムの次の水素化は、当業者には公知の方法で行うことができる。例として、適切な方法は、例えば「ウィルキンソン(Wilkinson)」触媒((PPhRhCl)として知られる触媒などの均一触媒を用いての水素との反応である。ニトリルゴムの水素化のための方法は公知である。通常、ロジウムまたはチタンが触媒として使用されるが、金属の形態、あるいは好ましくは金属化合物の形態のいずれかである白金、イリジウム、パラジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、コバルトまたは銅を使用することも可能である(例えば、米国特許第3,700,637号明細書、DE−A−2539132号明細書、EP−A−134023号明細書、DE−A−3541689号明細書、DE−A−3540918号明細書、EP−A−298386号明細書、DE−A−3529252号明細書、DE−A−3433392号明細書、米国特許第4,464,515号明細書および米国特許第4,503,196号明細書を参照)。
【0021】
均一相水素化のために適切な触媒および溶媒は以下に記載されており、DE−A−2539132号明細書およびEP−A−0471250号明細書にも開示されている。
【0022】
例えば、ロジウム含有触媒の存在下で選択的な水素化を達成することができる。例として、一般式
(RB)RhX
の触媒を使用することが可能であり、式中、
は同一または異なり、C〜C−アルキル基、C〜C−シクロアルキル基、C〜C15−アリール基またはC〜C15−アラルキル基であり、
Bは、リン、ヒ素、硫黄またはスルホキシド基S=Oであり、
Xは、水素またはアニオン、好ましくはハロゲン、特に好ましくは塩素または臭素であり、
lは、2、3または4であり、
mは2または3であり、そして
nは1、2または3、好ましくは1または3である。
【0023】
好ましい触媒は、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(III)クロリド、およびトリス(ジメチルスルホキシド)ロジウム(III)クロリド、ならびに式((CP)RhHのテトラキス(トリフェニルホスフィン)ロジウムヒドリド、そしてトリフェニルホスフィンが完全にまたはある程度トリシクロヘキシルホスフィンで置換された、対応する化合物である。少量の触媒を用いることができる。適切な量は、ポリマーの重量を基準として0.01〜1重量%の範囲、好ましくは0.03〜0.5重量%の範囲、特に好ましくは0.1〜0.3重量%の範囲である。
【0024】
通常、式RB(式中、R、m、およびBは、触媒について上記で定義したとおりである)の配位子である共触媒と一緒に触媒を使用することが望ましい。mは好ましくは3に等しく、Bはリンであるのが好ましく、基Rは、同一でも異なっていてもよい。共触媒は、好ましくは、トリアルキル、トリシクロアルキル、トリアリール、トリアラルキル、ジアリールモノアルキル、ジアリールモノシクロアルキル、ジアルキルモノアリール、ジアルキルモノシクロアルキル、ジシクロアルキルモノアリール、またはジシクロアルキルモノアリール基を有する。
【0025】
適切な共触媒は、例として、米国特許第4,631,315号明細書に見られる。トリフェニルホスフィンは、好ましい共触媒である。共触媒の使用量は、好ましくは、水素化すべきニトリルゴムの重量を基準として0.3〜5重量%、好ましくは0.5〜4重量%の範囲である。ロジウム含有触媒と共触媒との重量比は、更に好ましくは、1:3〜1:55の範囲、好ましくは1:5〜1:45の範囲である。適切な方法では、水素化すべきニトリルゴム100重量部を基準として、0.1〜33重量部、好ましくは0.5〜20重量部、特に好ましくは1〜5重量部の共触媒、特に、2重量部よりも多いが5重量部よりも少ない共触媒が使用される。
【0026】
これらの水素化の実際的な方法は、例えば米国特許第6,683,136号明細書により、当業者にはよく知られている。通常の方法では、水素化すべきニトリルゴムは、トルエンまたはモノクロロベンゼンなどの溶媒中、100〜150℃の範囲の温度および50〜150バールの範囲の圧力で2〜10時間、水素で処理される。
【0027】
本発明の方法において使用される水素化ニトリルゴムのムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、10〜120MUの範囲、好ましくは15〜100MUの範囲であり、ムーニー粘度は、ASTM標準D1646により測定される。
【0028】
このタイプの水素化ニトリルゴムは市販されている。水素化ニトリルゴムの例は、20〜50重量%の範囲のアクリロニトリル含量を有する完全および部分的に水素化されたニトリルゴム(ランクセス・ドイチュラント社(Lanxess Deutschland GmbH)のテルバン(Therban)(登録商標)系列、および日本ゼオン株式会社(Nippon Zeon Corporation)のゼットポール(Zetpol)(登録商標)系列)である。水素化ブタジエン−アクリロニトリル−アクリレートポリマーの例は、ランクセス・ドイチュラント社のテルバン(登録商標)LT系列、例えばテルバン(登録商標)LT2157、およびテルバン(登録商標)VP KA8882である。カルボキシル化水素化ニトリルゴムの例は、ランクセス・ドイチュラント社のテルバン(登録商標)XT系列である。低ムーニー粘度を有し、従って改良された加工性を有する水素化ニトリルゴムの例は、テルバン(登録商標)AT系列、例えばテルバンAT VP KA8966からの生成物である。
【0029】
不飽和カルボン酸および/または1種または複数種のその塩:
本発明の加硫可能な組成物は、1種または複数種の不飽和カルボン酸および/または1種または複数種のその塩を含む。この成分は、次の過酸化物加硫時に付随して、ある程度網状構造内に組み込まれる。不飽和カルボン酸は、好ましくは、3〜10個の炭素原子を有するα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、またはイタコン酸である。アクリル酸およびメタクリル酸は特に好ましい。適切な金属塩は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、アルミニウム、スズ、ジルコニウム、リチウムの塩である。ナトリウム、亜鉛、マグネシウム、およびアルミニウムは特に好ましい。金属ジアクリレート、特にジアクリル酸亜鉛、および金属ジメタクリレート、特にジメタクリル酸亜鉛は、特に好ましい。
【0030】
水素化ニトリルゴム100重量部を基準として、本発明の組成物は、好ましくは、1〜100重量部、より好ましくは5〜80重量部の不飽和カルボン酸および/または1種または複数種のその塩、好ましくは3〜10個の炭素原子を有するα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸もしくは1種または複数種のその塩を使用する。本発明によると、本発明の加硫可能な組成物の調製(「配合」)時、または次の「その場」での加硫時に、α,β−不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸の塩を調製することも可能である。
【0031】
過酸化物:
本発明の加硫可能な組成物は、更に、特にジクミルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシド、ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン2,5−ジヒドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサ−3−イン2,5−ジヒドロペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、tert−ブチルペルベンゾアート、ブチル4,4−ジ(tert−ブチルペルオキシ)バレラート、または1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンである有機過酸化物から選択されるのが好ましい少なくとも1種の過酸化物を含む。しかしながら、ミクロゲル調製のために以下の後段で言及する過酸化物を使用することも可能である。使用される過酸化物の全量は、好ましくは、水素化ニトリルゴム100重量部を基準として、0.2〜8重量部、特に好ましくは0.2〜5重量部、特に0.2〜4重量部である。
【0032】
ガラス転移温度が−20℃よりも低いミクロゲル:
本発明の加硫可能な組成物において使用可能なミクロゲルのガラス転移温度は、−20℃よりも低い。
【0033】
本発明の加硫可能な組成物において使用されるミクロゲルは、通常、ホモポリマーまたはランダムコポリマーに基づいて架橋されたミクロゲルである。従って、本発明で使用されるミクロゲルは、通常、架橋ホモポリマーまたは架橋ランダムコポリマーである。ホモポリマーおよびランダムコポリマーという表現は当業者には周知であり、例として、フォルメルト(Vollmert)、「ポリマーケミストリー」、シュプリンガー(Springer)1973年において説明されている。
【0034】
ミクロゲルのガラス転移温度は、一般に、対応する非架橋ホモポリマーまたはコポリマーのガラス転移温度よりも1℃〜10℃だけ高く、第一近似まで、ミクロゲルのガラス転移温度はここでは架橋度に比例して上昇する。弱く架橋したミクロゲルの場合、ガラス転移温度は、対応するホモポリマーまたはコポリマーよりも約1℃しか高くない。高度に架橋したミクロゲルの場合、ガラス転移温度は、対応する非架橋ホモポリマーまたはコポリマーのガラス転移温度よりも最大10℃まで高いことが可能である。基礎となる非架橋コポリマーのガラス転移温度は、ゴードン−テイラー(Gordon−Taylor)の関係またはフォックス−フローリー(Fox−Flory)の関係を用いて計算することができる(フォルメルト(Vollmert)、「ポリマーケミストリー」、シュプリンガー(Springer)1973年)。対応するホモポリマーについて以下のガラス転移温度が入力されると、これらの計算は良好な結果を与える。
ポリブタジエン:−80℃、ポリイソプレン:−65℃、ポリクロロプレン:−39℃、ポリスチレン:100℃、およびポリアクリロニトリル:100℃。
【0035】
本発明の加硫可能な組成物において使用されるミクロゲルは、23℃のトルエンに不溶性の画分(「ゲル含量」)を少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、特に好ましくは少なくとも90重量%有することが有利である。トルエンに不溶性のこの画分は、23℃の温度においてトルエン中で測定される。250mgのミクロゲルを、ここでは、25mlのトルエン中に23℃で24時間振とうさせながら膨潤させる。20000rpmで遠心分離した後、不溶性画分を単離および乾燥する。ゲル含量は、乾燥残渣および出発重量の比率をとることによってわかり、重量パーセントで記載される。
【0036】
本発明の加硫可能な組成物において使用されるミクロゲルは、通常、23℃のトルエン中で、80未満、好ましくは60未満、特に40未満の膨潤指数(「SI」)を有する。ミクロゲルの膨潤指数は、特に好ましくは1〜30の範囲であり、特に1〜20の範囲である。膨潤指数SIは、23℃のトルエン中で24時間膨潤された溶媒含有ミクロゲルの重量(20000rpmでの遠心分離後)と、乾燥ミクロゲルの重量とから、以下の式を用いることによって計算される。
SI=ミクロゲルの湿潤重量/ミクロゲルの乾燥重量
【0037】
膨潤指数を決定するために、250mgのミクロゲルを、25mlのトルエン中で24時間振とうせながら膨潤させる。遠心分離によってゲルを分離し、秤量した後、70℃で一定重量になる(恒量)まで乾燥させ、再度秤量する。
【0038】
本発明の加硫可能な組成物において使用されるミクロゲルのガラス転移温度Tは、好ましくは−100℃〜−20℃の範囲であり、特に好ましくは−80℃〜−20℃の範囲、特に−80℃〜−50℃の範囲である。
【0039】
使用されるミクロゲルのガラス転移の幅(「ΔT」)は、通常5℃よりも大きく、好ましくは10℃よりも大きく、特に好ましくは20℃よりも大きい。このガラス転移幅を有するミクロゲルは、一般に、完全に均一な架橋を有さないという点で、例えば放射線架橋により得られる完全に均一なミクロゲルとは異なっている。この結果、マトリックス相から分散相へのモジュラスの変化は迅速でない。この結果、急激な応力があった場合に、マトリックスと分散相との間で剥離効果が発生せず、これに伴い、機械特性、膨潤挙動および座屈挙動に対して有利な効果が存在する。
【0040】
ミクロゲルのガラス転移温度(T)およびそのガラス転移幅(ΔT)は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定される。TおよびΔTを決定するために、2回の冷却/加熱サイクルが実行される。TおよびΔTは、第2の加熱サイクルにおいて測定される。測定のために、10〜12mgの選択されたミクロゲルをパーキン−エルマー(Perkin−Elmer)のDSC試料容器(標準アルミニウム皿)に置く。第1のDSCサイクルは、まず試料を液体窒素で−100℃に冷却し、次に20K/分の速度で+150℃まで加熱することにより実行される。第2のDSCサイクルは、+150℃の試料温度に到達したら、即座に試料を冷却することによって開始される。使用される冷却速度は、約320K/分である。第2の加熱サイクルでは、試料は、第一のサイクルと同様に+150℃まで再度加熱される。第2のサイクルの加熱速度は、この場合も20K/分である。TおよびΔTは、第2の加熱行程のDSC曲線において、グラフにより決定される。このために、DSC曲線の上に3本の直線が引かれる。第1の直線はTよりも下の部分のDSC曲線上に引かれ、第2の直線は変極点でTを通る部分の曲線上に引かれ、そして第3の直線は、Tよりも上の部分のDSC曲線上に引かれる。この方法は、2つの交点を有する3本の直線を与える。2つの交点のそれぞれは、特性温度により特徴付けられる。ガラス転移温度Tは、これらの2つの温度の平均として得られ、ガラス転移幅ΔTは、この2つの温度の差から得られる。
【0041】
本発明の組成物中に存在するミクロゲルは原則として既知であり、それ自体公知の方法で調製することができる(例えば、EP−A−0405216号明細書、EP−A−0854171号明細書、DE−A4220563号明細書、英国特許第1078400号明細書、DE−A−19701489号明細書、DE−A−19701488号明細書、DE−A−19834804号明細書、DE−A−19834803号明細書、DE−A−19834802号明細書、EP−A−1063259号明細書、DE−A−19939865号明細書、DE−A−19942620号明細書、DE−A−19942614号明細書、DE−A−10021070号明細書、DE−A−10038488号明細書、DE−A−10039749号明細書、DE−A−10052287号明細書、DE−A−10056311号明細書およびDE−A−10061174号明細書を参照されたい)。
【0042】
特許出願EP−A405216号明細書、DE−A−4220563号明細書および英国特許第1078400号明細書は、二重結合含有ゴムとの混合物におけるCRミクロゲル、BRミクロゲルおよびNBRミクロゲルの使用について記載している。DE−A−19701489号明細書は、NR、SBRおよびBRなどの二重結合含有ゴムとの混合物における、後で変性されるミクロゲルの使用について記載している。
【0043】
本発明の組成物において使用することができるミクロゲルは、通常、以下のゴムの架橋によって得られる。
BR:ポリブタジエン、
IR:ポリイソプレン、
SBR:1〜60重量%、好ましくは5〜50重量%のスチレン含量を有するランダムスチレン−ブタジエンコポリマー、
X−SBR:カルボキシル化スチレン−ブタジエンコポリマー、
FKM:フッ素ゴム、
ABR:ブタジエン−C1〜4−アルキルアクリレートコポリマー、
ACM:アクリレートゴム、
NBR:5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%のアクリロニトリル含量を有するニトリルゴム、すなわちブタジエン−アクリロニトリルコポリマーまたはターポリマー、
X−NBR:カルボキシル化ニトリルゴム、
CR:ポリクロロプレン、
IIR:0.5〜10重量%のイソプレン含量を有するイソブチレン−イソプレンコポリマー、
BIIR:0.1〜10重量%の臭素含量を有する臭素化イソブチレン−イソプレンコポリマー、
CIIR:0.1〜10重量%の塩素含量を有する塩素化イソブチレン−イソプレンコポリマー、
HNBR:部分的および完全に水素化されたニトリルゴム、
EPDM:エチレン−プロピレン−ジエンコポリマー、
EAM:エチレン−アクリレートコポリマー、
EVM:エチレン−酢酸ビニルコポリマー、
COおよびECO:エピクロロヒドリンゴム、
Q:シリコーンゴム、
AU:ポリエステルウレタンポリマー、
EU:ポリエーテルウレタンポリマー、
ENR:エポキシド化天然ゴムまたはその混合物。
【0044】
非架橋ミクロゲル出発材料は、乳化重合により調製されるのが有利である。
【0045】
また、天然に存在するラテックス、例えば天然ゴムラテックスを使用することも可能である。
【0046】
本発明の組成物において使用されるミクロゲルは、好ましくは、乳化重合と、それに続く架橋とによって得られるものである。
【0047】
本発明で使用されるミクロゲルが乳化重合により調製される場合、フリーラジカル重合が可能な使用モノマーの例は、次の通りである。
ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、イソプレン、アクリル酸およびメタクリル酸のエステル、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロペン、2−クロロブタジエン、2,3−ジクロロブタジエン、二重結合含有カルボン酸、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸またはイタコン酸、二重結合含有ヒドロキシ化合物、好ましくは、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチルまたはメタクリル酸ヒドロキシブチル、アミン官能基化アクリレート、アミン官能基化メタクリレート、アクロレイン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−アリル尿素およびN−アリルチオ尿素、第2級アミノ(メタ)アクリレート、例えばメタクリル酸2−tert−ブチルアミノエチルおよび2−tert−ブチルアミノエチルメタクリルアミド。
【0048】
ゴムゲルの架橋は、架橋作用を有する多官能性化合物との共重合によって、あるいは以下に記載されるその後の架橋によって、乳化重合過程の間に直接達成することができる。
【0049】
乳化重合過程の間の直接架橋が好ましい。好ましい多官能性コモノマーは、少なくとも2個、好ましくは2〜4個の共重合性C=C二重結合を有する化合物、例えば、ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、1,2−ポリブタジエン、N,N’−m−フェニレンジマレイミド、N,N’−(4−メチル−m−フェニレン)ジマレイミドおよび/またはトリアリルトリメリテートである。同様に使用可能なその他の化合物は、多価アルコール、好ましくは2〜4価のC〜C10アルコール、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトールおよびソルビトールのアクリレートおよびメタクリレートである。また、2〜20個、好ましくは2〜8個のオキシエチレン単位を有するポリエチレングリコールのアクリレートおよびメタクリレートを使用することも可能である。また、脂肪族ジオールおよび/またはポリオール、あるいはマレイン酸、フマル酸および/またはイタコン酸で構成されるポリエステルを使用することも可能である。
【0050】
乳化重合工程の間にゴムのミクロゲルを生じさせるための架橋は、高転換率に関しては重合工程の継続によって、あるいはモノマー供給過程において、高レベルの内部転換での重合によって起こることも可能である。もう1つの可能性は、調節剤を存在させずに乳化重合工程を実行することである。
【0051】
乳化重合工程の後、非架橋または弱架橋ミクロゲル出発生成物の架橋のためには、乳化重合過程の間に得られるラテックスを直接使用することが最良である。この方法は、天然ゴムラテックスを架橋するためにも使用することができる。
【0052】
架橋は、架橋作用を有する適切な化学物質により行われる。架橋作用を有するこれらの適切な化学薬品の例は、
ジクミルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシド、ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン2,5−ジヒドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサ−3−イン2,5−ジヒドロペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、またはtert−ブチルペルベンゾアートなどの有機過酸化物と、
アゾビスイソブチロニトリルまたはアゾビスシクロヘキサンニトリルなどの有機アゾ化合物と、
ジメルカプトエタン、1,6−ジメルカプトへキサン、1,3,5−トリメルカプトトリアジンまたはメルカプト末端ポリスルフィドゴム(ビスクロロエチルホルマールと多硫化ナトリウムとのメルカプト末端反応生成物など)などのジメルカプトまたはポリメルカプト化合物とである。
【0053】
後架橋工程を行うために理想的な温度は、当然ながら架橋剤の反応性に左右され、適切な場合には高圧で、20℃〜約180℃の温度で行うことができる。(これに関しては、ホーベン−ウェイル(Houben−Weyl)、「有機化学の方法」、第4版、第14/2巻、848頁を参照されたい)。
【0054】
特に好ましい架橋剤は、過酸化物である。
【0055】
ミクロゲルを生じさせるためのC=C二重結合を含有するゴムの架橋は分散液またはエマルジョン中で起こることも可能であり、同時に、ヒドラジン(米国特許第5,302,696号明細書または米国特許第5,442,009号明細書に記載されるように)、あるいは適切な場合には水素化有機金属錯体などの他の水素化剤によって、C=C二重結合の部分的な水素化から、適切な場合には完全な水素化までが起こる。
【0056】
後架橋工程の前、最中、または後に、適切な場合には、アグロメレーションによる粒粗大化工程を実行することが可能である。
【0057】
上記のミクロゲルの調製方法は、完全に均一に架橋したミクロゲルを生じさせないことが好ましい。
【0058】
本発明の組成物のために使用されるミクロゲルは、特に具体的には表面において官能基を有する変性ミクロゲルでもよいし、あるいは特に具体的には表面において本質的に反応性基を有さない未変性ミクロゲルでもよい。
【0059】
ミクロゲルの変性は、官能性モノマーによるミクロゲルのグラフト化によって、あるいは低分子量薬剤との反応によって行なうことができる。
【0060】
ミクロゲルの変性の目的は、ミクロゲルのマトリックスとの相容性を改善して、調製時の良好な分散性と、マトリックスへの良好なカップリングとを達成することである。
【0061】
官能性モノマーによるミクロゲルのグラフト化のためには、水性のミクロゲル分散液から出発するのが有利であり、これがフリーラジカル乳化重合の条件下で、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、アクロレイン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−アリル尿素またはN−アリルチオ尿素などの極性モノマー、あるいはメタクリル酸2−tert−ブチルアミノエチル、および2−tert−ブチルアミノエチルメタクリルアミドなどの第2級アミノ(メタ)アクリレートと反応される。この方法は、コア/シェル型モルホロジーを有するミクロゲルを生じさせ、シェルがマトリックスと高い相容性を有することが意図される。未変性ミクロゲルに対する変性ステップにおいて使用されるモノマーのグラフト化は、できるだけ定量的であることが望ましい。官能性モノマーは、ミクロゲルの完全な架橋の前に、混合物中に計量されるのが有利である。
【0062】
官能基を有する変性ミクロゲルは、更に、予め架橋されたミクロゲルと、C=C二重結合に対して反応性の低分子量の反応剤(薬剤)との化学反応により調製することができる。これらの反応性化学薬品は、特に極性基、例えばアルデヒド基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ニトリル基など、あるいは硫黄含有基、例えばメルカプト基、ジチオカルバメート基、ポリスルフィド基、キサントゲネート基、チオベンゾチアゾール基および/またはジチオリン酸基および/または不飽和ジカルボン酸基の、ミクロゲルへの化学結合を生じることができる化合物である。これは、N,N’−m−フェニレンジアミンにも適用される。
【0063】
適切な薬剤の例は、硫化水素および/またはアルキルポリメルカプタン(1,2−ジメルカプトエタンまたは1,6−ジメルカプトヘキサンなど)、ジアルキルジチオカルバメートおよび/またはジアルキルアリールジチオカルバメート(例えば、ジメチルジチオカルバミン酸および/またはジベンジルジチオカルバミン酸のアルカリ金属塩)、アルキルキサントゲネートおよび/またはアリールキサントゲネート(エチルキサントゲン酸カリウムおよびイソプロピルキサントゲン酸ナトリウムなど)、ならびにジブチルジチオリン酸、ジオクチルジチオリン酸および/またはドデシルジチオリン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩である。上記の反応は、硫黄の存在下でも、有利に実行することができ、ここで硫黄は、ポリスルフィド系結合(polysulphidic bond)の形成と同時に組み込まれる。この化合物との付加反応のために、フリーラジカル開始剤、例えば、有機および/または無機の過酸化物および/またはアゾ開始剤が添加され得る。
【0064】
例えば、オゾン分解、あるいは塩素、臭素およびヨウ素を用いるハロゲン化による二重結合含有ミクロゲルの変性も可能である。変性ミクロゲルの更なる反応、例えばエポキシド化ミクロゲルからのヒドロキシ基変性ミクロゲルの調製も、ミクロゲルの化学変性と考えられる。
【0065】
1つの好ましい実施形態では、ミクロゲルは、ヒドロキシ基によって、特に表面において変性されている。mgKOH/gポリマーの次元を有するヒドロキシ価という形でのミクロゲルのヒドロキシ基含量は、DIN 53240により、無水酢酸の反応と、解放されて得られた酢酸のKOHによる滴定とによって決定される。ミクロゲルのヒドロキシ価は、好ましくは、0.1〜100mgKOH/gポリマーの範囲であり、特に好ましくは0.5〜50mgKOH/gポリマーの範囲である。
【0066】
使用される変性剤の量は、その活性と、特定の場合に設定される要件とに左右され、使用されるゴムミクロゲルの全量を基準として0.05〜30重量%の範囲、特に好ましくは使用されるゴムミクロゲルの全量を基準として0.5〜10重量%の範囲である。
【0067】
変性反応は、0〜180℃、好ましくは20〜95℃の温度において、適切な場合には1〜30バールの圧力下で行うことができる。変性は、ゴムミクロゲルにおいて、バルクで、またはその分散液の形態で行うことができ、後者の場合には、ここで使用される反応媒体は不活性有機溶媒を含むか、あるいは水を含むことができる。変性は、特に好ましくは、架橋ゴムの水性分散液中で行う。
【0068】
調製されるミクロゲルの平均直径は、例えば0.1マイクロメートル(100nm)±0.01マイクロメートル(10nm)までの高精度で調整することができ、従って、例えば、全てのミクロゲル粒子のうちの少なくとも75重量%のサイズが0.095マイクロメートル〜0.105マイクロメートルである粒度分布が達成される。ミクロゲルの他の実現可能な平均直径の例は、同じ調製および使用の精度で5〜500nmの範囲である(全ての粒子のうちの少なくとも75重量%が累積粒度分布曲線の最大値の上下±10%の範囲内であることを意味する(超遠心分離法により決定される))。従って、本発明の組成物中に分散したミクロゲルのモルホロジーは、要求に応じて実質的に正確に調整することができ、従ってそれに対応して、例えば、本発明の組成物およびそれから調製される加硫物の特性に影響を与える。特に微粒子ミクロゲルは、それ自体公知の方法で反応パラメータを制御して、乳化重合によって調製される(例えば、B.H.G.エリアス(Elias)、「高分子(Macromolecules)」、第2巻、テクノロジー、第5版、1992年、99頁以下を参照)。
【0069】
得られるミクロゲルは、例として、蒸発濃縮、凝集、別のラテックスポリマーとの共凝集、凍結凝集(米国特許第2,187,146号明細書を参照)、あるいは噴霧乾燥によって後処理することができる。噴霧乾燥により後処理する場合、CaCOまたはシリカなどの市販の流動助剤を添加することも可能である。
【0070】
1つの好ましい実施形態では、本発明の加硫可能な組成物は、
a)100重量部の1種または複数種の水素化ニトリルゴムと、
b)1〜100重量部、好ましくは5〜80重量部の、3〜10個の炭素原子を有する1種または複数種の不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸および/または1種または複数種のこれらの塩、好ましくはジアクリル酸亜鉛またはメタクリル酸亜鉛と、
c)0.2〜8重量部、好ましくは0.2〜5重量部、特に好ましくは0.2〜4重量部の1種または複数種の過酸化物、好ましくはジクミルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシド、ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン2,5−ジヒドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサ−3−イン2,5−ジヒドロペルオキシド、またはジベンゾイルペルオキシドと、
d)5〜60重量部、好ましくは10〜50重量部の、ガラス転移温度Tが−20℃よりも低い、好ましくはガラス転移温度Tが−50℃よりも低い1種または複数種のミクロゲル、好ましくはBRまたはSBRミクロゲル、と、
e)0〜100重量部、好ましくは5〜80重量部の1種または複数種の従来のゴム添加剤、好ましくは1種または複数種の充填剤、特にカーボンブラック、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウムまたは酸化アルミニウム、特に有機シランに基づく1種または複数種の充填剤活性化剤、1種または複数種の酸化防止剤、特にオリゴマー化2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(TMQ)、スチレン化ジフェニルアミン(DDA)、オクチル化ジフェニルアミン(OCD)または4−および5−メチルメルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩(ZMB2)、ならびに/もしくは1種または複数種の離型剤と、を含む。
【0071】
従来のゴム添加剤の中には、例として、充填剤、充填剤活性化剤、促進剤、多官能性架橋剤、オゾン安定剤、酸化防止剤、加工油、増量油、可塑剤、活性化剤、およびスコーチ防止剤がある。米国特許第4,826,721号明細書の教示に従ってガラスで構成される補強材料により加硫物を補強するか、あるいは補強のために芳香族ポリアミド(アラミド(登録商標))を使用することも可能である。
【0072】
使用可能な充填剤の例は、カーボンブラック、シリカ、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、ケイ藻土、またはケイ酸塩である。
【0073】
使用可能な特定の充填剤活性化剤は、有機シラン、例えば、ビニルトリメチルオキシシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシランまたは(オクタデシル)メチルジメトキシシランである。他の充填剤活性化剤の例は、74〜10000g/モルのモル質量を有するトリエタノールアミンまたはエチレングリコール類などの界面活性物質である。充填剤活性化剤の量は、通常、水素化ニトリルゴム100重量部を基準として0.5〜10重量部である。
【0074】
使用可能な酸化防止剤は、特に、過酸化物加硫時のフリーラジカルの捕捉を最小限にするものである。これらは、特に、オリゴマー化2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(TMQ)、スチレン化ジフェニルアミン(DDA)、オクチル化ジフェニルアミン(OCD)または4−および5−メチルメルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩(ZMB2)である。これらと一緒に、公知のフェノール系酸化防止剤、例えば立体障害フェノール、またはフェニレンジアミンに基づく酸化防止剤を使用することも可能である。また、言及した酸化防止剤の組み合わせを使用することも可能である。
【0075】
通常使用される酸化防止剤の量は、ポリマーの全量を基準として、0.1〜5重量部、好ましくは0.3〜3重量部である。
【0076】
使用可能な離型剤の例は、飽和または部分的に不飽和の脂肪酸およびオレイン酸またはこれらの誘導体(脂肪酸エステル、脂肪酸塩、脂肪アルコールまたは脂肪酸アミドの形)、モールドの表面に適用可能な製品、例えば低分子量シリコーン化合物に基づく製品、フルオロポリマーに基づく製品、ならびにフェノール樹脂に基づく製品である。
【0077】
混合物の成分として使用される離型剤の量は、ポリマーの全量を基準として、0.2〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。
【0078】
本発明は、更に、a)、b)、c)およびd)、ならびに適切な場合にはe)の成分を互いに混合することによる、上記の加硫可能な組成物の調製方法を提供する。これは、当業者には公知の装置および混合デバイスを使用して行なうことができる。
【0079】
本発明は、更に、本発明の加硫可能な組成物を熱処理にさらすことによる加硫製品の製造を提供する。
【0080】
加硫製品は、従来の方法で適切なモールド内で、好ましくは120〜200℃、特に好ましくは140〜180℃である範囲の温度に本発明の加硫可能な組成物をさらすことによって製造される。
【0081】
従って、本発明は、本発明の組成物の加硫により得られる加硫製品も提供する。
【0082】
これらの加硫製品は、好ましくは、駆動ベルト、ロール被覆材、ガスケット、ホース、およびケーブルである。
【0083】
これらの駆動ベルト、ロール被覆材、ガスケット、ホースおよびケーブルの製造の原理は、当業者には公知である。駆動ベルトの製造のためには、当業者は、本発明の加硫可能な組成物を使用し、例として米国特許第4,715,607号明細書の開示と類似して行なうことができる。
【0084】
[実施例]
ミクロゲルの調製の実施例:
残りの実施例において使用されるミクロゲルの調製を、以下に説明する。
【0085】
以下のモノマー:ブタジエン、スチレン、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン(TMPTMA)およびメタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)を用いて、ミクロゲルAおよびBを乳化重合により調製した。ミクロゲルの調製に使用されるモノマー、および混合仕様の実質的な構成要素は、以下の表1に順に記載されている。
【0086】
【表1】

【0087】
ミクロゲルの調製のために、表1に記載される量の乳化剤メルソラト(Mersolat)(登録商標)K30/95およびTCDをまず水中に溶解し、40lのオートクレーブの初期充填物として用いた。オートクレーブ3回排気し、窒素で処理した。次に表1に記載されるモノマーを添加した。モノマーを乳化剤溶液中に30℃で攪拌しながら乳化した。
【0088】
次に、171gの水、1.71gのエチレンジアミンテトラ酢酸(メルク−シューヒャルト(Merck−Schuchardt))、1.37gの硫酸第一鉄7HO、3.51gのナトリウムホルムアルデヒド−スルホキシレート水和物(メルク−シューヒャルト)、および5.24gのリン酸三ナトリウム12HOで構成される水溶液を計り入れた。このために使用される水の量は、表1の欄「開始」に記載されている。
【0089】
「活性化」欄に記載した半分の量の水中に10.53gのメルソラト(登録商標)K30/95によって乳化した5.8gのp−メンタンヒドロペルオキシド、50%(アクゾ−デグサ(Akzo−Degussa)からのトリゴノックス(Trigonox)(登録商標)NT50)の添加によって、反応を開始させた。
【0090】
2.5時間の反応時間の後、反応温度を40℃に上昇させた。更に1時間の反応時間の後、重合過程の開始に使用したものと同じ量の開始剤溶液(トリゴノックス(Trigonox)(登録商標)NT50/水/メルソラト(登録商標)K30/95)を用いて後活性化(post−activation)を実行した。重合温度をここで50℃に上昇させた。
【0091】
95%よりも高い重合転換率に達したら、23.5gのジエチルヒドロキシルアミンの添加により重合工程を終了させた。このために、ジエチルヒドロキシルアミンを表1の「終了」欄に記載される量の水中に溶解した。
【0092】
次に、スチームストリッピングによりラテックスから未反応モノマーを除去した。ラテックスをろ過し、米国特許第6,399,706号明細書の実施例2のように、安定剤をこの混合物と混ぜ、これを凝集および乾燥させた。
【0093】
ゲルは、ラテックス状態で超遠心分離法により(直径および比表面積)特徴付け、また固体生成物の形で、トルエン中の溶解度に関して(ゲル含量、膨潤指数/SI)、酸滴定によって(OH価およびCOOH価)、そしてDSCによって(ガラス転移温度/TおよびT転移幅)特徴付けた。
【0094】
ミクロゲルの特性データは、以下の表2に順に記載されている。
【0095】
【表2】

【0096】
表2において、
SAspec.:比表面積(m/g)である。
:直径
【数1】

は、DIN53206に従って、中央値または中心値として定義され、これより上およびこれより下のいずれの場合にも、全ての粒度の半分が存在する。ラテックス粒子の粒径は、超遠心分離法によって決定される(W.ショルタン(Scholtan)、H.ラング(Lange)、「超遠心分離を用いるラテックスの粒度分布の決定」、Kolloid−Zeitschrift und Zeitschrift fuer Polymere(1972年)、第250巻、第8号)。ミクロゲル粒子の粒度は、本発明の組成物の調製中に事実上変化を示さないので、ラテックスおよび本発明の組成物中の一次粒子の直径データは、事実上同一である。
10およびd80:直径データd10およびd80はそれぞれ、10および80重量%の粒径が、記載された値よりも小さいことを示し、ここで粒度分布は、超遠心分離法によって決定される。ミクロゲル粒子の粒度は本発明の組成物の調製中に事実上変化を示さないので、ラテックスおよび本発明の組成物中の一次粒子の直径データは、事実上同一である。
:ガラス転移温度。これは、本出願において上記のように決定した。
ΔT:T転移の幅。これは、本出願において上記のように決定した。TおよびΔTの決定のために、パーキン−エルマー(Perkin−Elmer)DSC−2装置が使用される。
SI:膨潤指数である。これは、次のように決定した。
23°でトルエン中に24時間膨潤させた溶媒含有ミクロゲルの重量および乾燥ミクロゲルの重量から、膨潤指数が計算される。
SI=ミクロゲルの湿潤重量/ミクロゲルの乾燥重量
膨潤指数を決定するために、25mlのトルエン中に24時間振とうさせながら250mgのミクロゲルを膨潤させる。トルエン膨潤(湿潤)ゲルは20000rpmで遠心分離した後に秤量し、次に、70℃で恒量まで乾燥して、再度秤量する。
OH価:ヒドロキシ価である。OH価はDIN53240により決定し、無水酢酸を用いる1gの物質のアセチル化の間に解放された酢酸の量に等しいKOHの量(mg)に相当する。
酸価:酸価は上述のようにDIN53402により決定され、1gのポリマーを中和するのに必要とされるKOHの量(mg)に相当する。
ゲル含量:ゲル含量は23℃でトルエンに不溶性の画分に相当する。上記のように決定される。
【0097】
ゴム混合物の調製、加硫および特徴付け
インターメッシング型ロータージオメトリを有する1.5lの容量インターナルミキサー(ベルナー・フライデラー(Werner&Pfleiderer)GK1.5E)を用いてゴム混合物を調製した。最初に、水素化ニトリルゴムをミキサーに添加した。30秒後、ゲルおよびジアクリル酸亜鉛を添加し、40rpmの一定のローター回転速度で混合した。4分の混合時間の後、混合物を取り出した。24時間の貯蔵時間の後、再度、40rpmで4分間混合物を混合した。次に、40℃においてロール上で混合することによって、パーカドックス(Perkadox)(登録商標)14−40 B−GR、バルカノックス(Vulkanox)(登録商標)ZMB2/5およびレノフィット(Rhenofit)(登録商標)DDA−70を組み込んだ。
【0098】
以下の実施例1〜3は比較例であり、実施例4および5は本発明の実施例である。
【0099】
【表3】

【0100】
表3において、以下を使用した。
1)ランクセス・ドイチュラント社の、34重量%のアクリロニトリルを有する水素化ニトリルゴム、ML(1+4、100℃)=77、残留二重結合含量:3.5%、
2)サートマー(Sartomer)のジアクリル酸亜鉛、
3)アクゾ(Akzo)の、40%活性成分含量を有するペレット形態のジクミルペルオキシド、
4)ランクセス・ドイチュラント社の亜鉛メチルメルカプトベンゾイミダゾール、
5)ラインケミー・ライナウ社(RheinChemie Rheinau GmbH)の、70重量%の活性成分含量を有するオクチル化ジフェニルアミン。
【0101】
未加硫配合材料において、表4に記載される値を決定した。
【0102】
【表4】

【0103】
結果は、本発明のゴム混合物(4および5)が、ムーニー粘度およびムーニー緩和に関して、参照加硫物(1、2および3)と同程度であることを示す。
【0104】
アルファ・テクノロジー(Alpha Technology)からのMDR2000ムービング・ダイ・レオメータ(Moving Die Rheometer)を用いて、混合物の加硫性能をASTM D5289により180℃で研究した。特徴的なバルカメーター(vulcameter)値F、Fmax、Fmax−F、t10、t50、90およびt95をこのようにして決定した。
【0105】
【表5】

【0106】
DIN53529、パート3によると:
:架橋等温線の最小値におけるバルカメーター表示値である。
max:最大のバルカメーター表示値である。
max−F:バルカメーター表示値の最大値と最小値の差である。
10:最終転換率の10%が達成された時点である。
50:最終転換率の50%が達成された時点である。
90:最終転換率の90%が達成された時点である。
95:最終転換率の95%が達成された時点である。
【0107】
一連の実験は、本発明で調製されたゴム混合物(4および5)が、参照混合物(1、2および3)と同等の加硫性能を有することを示す。
【0108】
次に、加硫プレスにおいて170バールの圧力下、180℃で9分間、ゴム混合物を加硫した。エージングしていない加硫物について23℃で表6に記載される試験値を決定した。
【0109】
【表6】

【0110】
一連の実験は、本発明で調製された加硫物(4および5)が、ショアA硬度、反発弾性および摩耗に関して、参照加硫物(1、2および3)と少なくとも等しいことを示している。
【0111】
表7に記載される試験値も、エージングしていない試験体において130℃で決定した。
【0112】
【表7】

【0113】
一連の実験は、本発明で調製された加硫物(4および5)が、極限引張強さに関して参照加硫物(1、2および3)よりもわずかに優れており、積σ25×εおよびσ100×εに関しては著しく優れていることを示している。
【0114】
エージング性能を特徴付けるために、次に、DIN53508により加硫物全てを150℃で7日間エージングさせた。
【0115】
次に、表8に記載される値を、130℃の試験温度で決定した。
【0116】
【表8】

【0117】
一連の実験は、本発明で調製された加硫物(4および5)が、150℃(試験温度:130℃)における7日間の温風エージング後の積σ25×εおよびσ100×εに関して、参照加硫物(1、2および3)よりも優れていることを示す。
【0118】
物理パラメータのそれぞれは、関連するDIN仕様に準拠して決定した。補足的に、クリーマン(Kleemann)、ウェーバー(Weber)、「エラストマー加工のための式および表」、Dr Gupta Verlag、1994年が参照される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1種または複数種の水素化ニトリルゴムと、
b)1種または複数種の不飽和カルボン酸および/または1種または複数種のその塩と、
c)少なくとも1種の過酸化物と、
d)ガラス転移温度が−20℃よりも低い少なくとも1種のミクロゲルと、
を含む加硫可能な組成物。
【請求項2】
使用される前記成分a)が、少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリルモノマーと、さらに適切な場合には他の共重合性モノマーとに基づくコポリマーまたはターポリマーである1種または複数種の水素化ニトリルゴムを含み、前記ポリマー内に組み込まれたジエン単位が、完全にまたはある程度水素化されている請求項1に記載の加硫可能な組成物。
【請求項3】
使用される前記成分a)は、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が10〜120MUの範囲、好ましくは15〜100MUの範囲である1種または複数種の水素化ニトリルゴムを含み、前記ムーニー粘度が、ASTM標準D1646により決定される請求項1または2に記載の加硫可能な組成物。
【請求項4】
使用される前記成分b)が、1種または複数種の不飽和カルボン酸および/または1種または複数種のその塩を含み、前記不飽和カルボン酸が、3〜10個の炭素原子を有するα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸、好ましくは、メタクリル酸、アクリル酸、ケイ皮酸、クロトン酸またはイタコン酸であってよく、前記塩が、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、アルミニウム、スズ、ジルコニウム、リチウムの塩であってよい請求項1〜3のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物。
【請求項5】
使用される前記成分b)が、1種または複数種の金属ジアクリレートおよび/または金属ジメタクリレート、好ましくは、ジアクリル酸亜鉛またはジメタクリル酸亜鉛、を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物。
【請求項6】
使用される前記成分c)が、少なくとも1種の過酸化物、好ましくは少なくとも1種の有機過酸化物、特に、ジクミルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシド、ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン2,5−ジヒドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサ−3−イン2,5−ジヒドロペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、tert−ブチルペルベンゾアート、ブチル4,4−ジ(tert−ブチルペルオキシ)バレラートまたは1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、を含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物。
【請求項7】
使用される前記成分d)は、架橋ホモポリマーまたは架橋ランダムコポリマーである、ガラス転移温度が−20℃よりも低い少なくとも1種のミクロゲルを含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物。
【請求項8】
使用される前記成分d)は、23℃のトルエン中で少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、特に好ましくは少なくとも90重量%の不溶性の画分(「ゲル含量」)を有する、ガラス転移温度が−20℃よりも低い少なくとも1種のミクロゲルを含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物。
【請求項9】
使用される前記成分d)は、80未満、好ましくは60未満、特に40未満の、23℃のトルエン中での膨潤指数(「SI」)を有する、ガラス転移温度が−20℃よりも低い少なくとも1種のミクロゲルを含み、前記膨潤指数は、23℃のトルエン中で24時間膨潤された溶媒含有ミクロゲルの重量(20000rpmでの遠心分離後)と、乾燥ミクロゲルの重量とから、以下の式
SI=ミクロゲルの湿潤重量/ミクロゲルの乾燥重量
を用いて計算される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物。
【請求項10】
使用される前記成分d)は、ガラス転移温度が−20℃よりも低い、好ましくはガラス転移温度Tが−100℃〜−20℃の範囲、特に好ましくは−80℃〜−20℃の範囲、特に−80℃〜−50℃の範囲である少なくとも1種のミクロゲルを含む請求項1〜9のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物。
【請求項11】
使用される前記成分d)が、BR(ポリブタジエン)、IR(ポリイソプレン)、SBR(1〜60重量%、好ましくは5〜50重量%のスチレン含量を有するランダムスチレン−ブタジエンコポリマー)、X−SBR(カルボキシル化スチレン−ブタジエンコポリマー)、FKM(フッ素ゴム)、ABR(ブタジエン−C1〜4−アルキルアクリレートコポリマー)、ACM(アクリレートゴム)、NBR(5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%のアクリロニトリル含量を有するブタジエン−アクリロニトリルコポリマー)、X−NBR(カルボキシル化ニトリルゴム)、CR(ポリクロロプレン)、IIR(0.5〜10重量%のイソプレン含量を有するイソブチレン−イソプレンコポリマー)、BIIR(0.1〜10重量%の臭素含量を有する臭素化イソブチレン−イソプレンコポリマー)、CIIR(0.1〜10重量%の塩素含量を有する塩素化イソブチレン−イソプレンコポリマー)、HNBR(部分的および/または完全に水素化されたニトリルゴム)、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンコポリマー)、EAM(エチレン−アクリレートコポリマー)、EVM(エチレン−酢酸ビニルコポリマー)、COおよびECO(エピクロロヒドリンゴム)、Q(シリコーンゴム)、AU(ポリエステルウレタンポリマー)、EU(ポリエーテルウレタンポリマー)、ENR(エポキシド化天然ゴム)ならびにこれらの混合物からなる群から選択された、ガラス転移温度が−20℃よりも低い少なくとも1種のミクロゲルを含む請求項1〜10のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物。
【請求項12】
a)100重量部の1種または複数種の水素化ニトリルゴムと、
b)1〜100重量部、好ましくは5〜80重量部の、3〜10個の炭素原子を有する1種または複数種の不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸および/または1種または複数種のこれらの塩、好ましくはジアクリル酸亜鉛またはメタクリル酸亜鉛、と、
c)0.2〜8重量部、好ましくは0.2〜5重量部の1種または複数種の過酸化物、好ましくは、ジクミルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシド、ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン2,5−ジヒドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサ−3−イン2,5−ジヒドロペルオキシドまたはジベンゾイルペルオキシドと、
d)5〜60重量部、好ましくは10〜50重量部の、ガラス転移温度Tが−20℃よりも低い、好ましくはガラス転移温度Tが−50℃よりも低い1種または複数種のミクロゲル、好ましくはBRまたはSBRミクロゲル、と、
e)0〜100重量部、好ましくは5〜80重量部の1種または複数種の従来のゴム添加剤、好ましくは1種または複数種の充填剤、特にカーボンブラック、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウムまたは酸化アルミニウム、特に有機シランに基づく1種または複数種の充填剤活性化剤、1種または複数種の酸化防止剤、特にオリゴマー化2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(TMQ)、スチレン化ジフェニルアミン(DDA)、オクチル化ジフェニルアミン(OCD)または4−および5−メチルメルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩(ZMB2)、ならびに/もしくは1種または複数種の離型剤と、
を含む請求項1〜11のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物。
【請求項13】
前記成分a)、b)、c)およびd)を、互いに混合することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物を熱処理にさらすことを特徴とする加硫製品の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物を、モールド内で、120〜200℃の範囲、好ましくは140〜180℃の範囲の温度にさらす、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物の、加硫製品を製造するための使用。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物の、駆動ベルト、ロール被覆材、ガスケット、ホース、およびケーブルを製造するための使用。
【請求項18】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物の加硫により得られる加硫製品。
【請求項19】
請求項18に記載の加硫製品を含む駆動ベルト。
【請求項20】
請求項18に記載の加硫製品を含むロール被覆材。
【請求項21】
請求項18に記載の加硫製品を含むホース。
【請求項22】
請求項18に記載の加硫製品を含むケーブル。

【公開番号】特開2007−162025(P2007−162025A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−335826(P2006−335826)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】