説明

水素化触媒および脱水素触媒の調製

炭化水素の水素化反応および/または脱水素反応の実施に適した金属含有触媒組成物を製造する方法において、多孔性結晶質材料を非晶質結合剤と組み合わせて含む触媒担体が、当該担体の表面に結合し、かつ金属成分にも結合することができるアンカー材料で処理される。さらに、当該金属成分の前駆体は、触媒担体の表面に析出し、次いで、当該前駆体を金属成分に変換するため、なおかつ、アンカー材料を当該担体の表面に結合し、かつ当該金属成分にも結合させるために有効な条件に、前記の処理された触媒担体上に前記前駆体が析出している触媒担体を供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(分野)
本発明は、水素化反応および/または脱水素反応の実施に適した触媒の調製に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
炭化水素の水素化および脱水素は、精製および石油化学の産業では重要な反応である。このような反応の非限定的な例としては、改質(リホーミング)、脱ロウ(デワキシング)、水素化分解(ハイドロクラッキング)、水素化処理(ハイドロトリーティング)および水素化精製(ハイドロフィニッシング)が挙げられる。多くのこのような反応は、貴金属成分を含む触媒を用い、貴金属成分は、多孔性結晶質材料を非晶質の結合剤と組み合わせて構成される担体上に析出(堆積もしくは沈殿)されている。
【0003】
現在、大部分の貴金属触媒は、白金および/またはパラジウムの錯体を触媒担体に含浸させることによって製造されている。次いで、触媒を乾燥して水を除去し、大気中で焼成して金属錯体を分解し、担体表面に高度に分散した白金および/またはパラジウムの酸化物が残る。次いで、触媒を水素の存在下で貴金属酸化物を還元することにより活性化して、活性な白金およびパラジウムの部位を生じさせる。しかし、触媒活性化(特に水蒸気の存在下での触媒活性化)の間ならびにストリームで作用(実施)している間の両方において、金属の焼結(シンタリング)が原因でこの触媒活性は低下する。この金属焼結は、微細に分散した白金およびパラジウムの粒子が集合するときに生じ、活性金属の表面が減少する。
【0004】
本発明は、前処理によって触媒担体の表面に貴金属アンカーを加え、それにより、金属が焼結する傾向を減少させ、かつ、触媒安定性を著しく向上させる新規な方法を提供することによって、この問題を解決しようとするものである。安定性を向上させる一方で、貴金属アンカーを加えることによって、初期の触媒の活性または選択性への悪影響は測定できないと考えられる。
【0005】
特許文献1には、ゼオライトの触媒組成物を開示し、このゼオライトの触媒組成物は、(a)ゼオライト成分と、(b)このゼオライトの細孔を占める非骨格多価金属酸化物成分と、(c)貴金属成分とを含み、前記非骨格多価金属酸化物は、約1〜100ppmの水を含有する大気中で少なくとも約600℃の温度で焼成することを含む方法によって、前記ゼオライト成分の細孔内に組み込まれている。金属酸化物成分(b)の存在によって、効力を有する貴金属成分(c)の集合および/または移動の防止が顕著に増大させると言われている。しかし、ゼオライトの細孔内に金属酸化物を組み込むことによって、完成した触媒の活性および選択性が変化することが予想される。
【0006】
「チオフェン水素化脱硫のためのMCM−41に担持されたPtの触媒の性能に対するアルミニウム修飾の効果(Effect of aluminum modification on catalytic performance of Pt supported on MCM−41 for thiophene hydrosulfurization)」と題された非特許文献1には、MCM−41のアルミナ修飾によって、Pt/MCM−41水素化脱硫触媒のPt分散および触媒活性が改善されることが開示されている。しかし、この論文では、アルミニウム修飾が、結合したMCM−41触媒に析出する貴金属の集合防止を増加させるとの開示や示唆はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,041,401号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Applied Catalysis A:General 308(2006年)、111〜118頁(Kandaら)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
触媒活性化(特に水蒸気の存在下での触媒活性化)の間ならびにストリームで作用(実施)している間の両方において、金属の焼結(シンタリング)が原因でこの触媒活性は低下する。この金属焼結は、微細に分散した白金およびパラジウムの粒子が集合するときに生じ、活性金属の表面が減少する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前処理によって触媒担体の表面に貴金属アンカーを加え、それにより、金属が焼結する傾向を減少させ、かつ、触媒安定性を著しく向上させる新規な方法を提供することによって、この問題を解決しようとするものである。安定性を向上させる一方で、貴金属アンカーを加えることによって、初期の触媒の活性または選択性への悪影響は測定できないと考えられる。
【0011】
(要旨)
一態様において、本発明は、炭化水素の水素化反応および/または脱水素反応の実施に適した金属含有触媒組成物を製造する方法にあり、当該方法は、
(a)多孔性結晶質材料を実質的に非晶質の結合剤と組み合わせて含む触媒担体を供給する工程と、
(b)前記触媒担体の表面に結合し、かつ金属成分にも結合することができるアンカー材料で前記触媒担体を処理する工程と、
(c)前記触媒担体の表面に、前記金属成分の前駆体を析出(または堆積もしくは沈殿)させる工程と、
(d)前記前駆体を前記金属成分に変換し、なおかつ、前記アンカー材料を前記担体の表面に結合し、かつ前記金属成分にも結合させるのに有効な条件に、前記の処理された触媒担体(処理触媒担体)上に前記前駆体が析出(または堆積もしくは沈殿)している触媒担体を供する工程と
を含む。
【0012】
都合よくは、前記多孔性結晶質材料は、ケイ酸塩またはアルミノケイ酸塩である。
【0013】
一実施形態において、前記多孔性結晶質材料は、メソ多孔性(メソポーラス)の材料であり、例えば、メソ多孔性材料は、MCM−41、MCM−48、MCM−50およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0014】
都合よくは、前記非晶質の結合剤は、無機酸化物材料である。
【0015】
一実施形態において、前記アンカー材料は、酸化リン、リン酸素酸、オキシハロゲン化リンおよびそれらの混合物から選択される。
【0016】
別の実施形態において、前記アンカー材料は、元素周期表の第4族および第13族から選択される金属の硝酸塩、例えば、硝酸アルミニウム、硝酸ジルコニウムおよびそれらの混合物である。
【0017】
都合よくは、前記金属成分は、元素周期表の第6族〜第10族から選択される少なくとも1種の金属ならびにそれらの化合物および混合物、例えば、白金、パラジウムならびにそれらの化合物および混合物を含む。
【0018】
都合よくは、前記前駆体は、前記金属成分の錯体を含み、前記析出(または堆積もしくは沈殿)工程(c)は、含浸またはイオン交換によって行われる。
【0019】
都合よくは、前記工程(d)は、前記処理触媒担体を酸素含有雰囲気中で加熱し、前記前駆体を前記金属成分の酸化物に変換する工程と、次いで、前記処理触媒担体を水素含有雰囲気中で加熱して、前記酸化物を前記金属成分に変換する工程とを含む。
【0020】
さらなる態様において、本発明は、本明細書中に記載される方法により製造される金属含有触媒組成物にあり、ならびに、芳香族含有炭化水素原料(フィード)中の芳香族濃度を減少させる方法での本発明の触媒組成物の使用にある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1のPt/Pd Si−MCM−41触媒を用いて、水素化処理された600N脱ロウ油を水素化精製する際に得られるストリームでの時間に対する全芳香族濃度と、実施例2のリン酸と共含浸したPt/Pd Si−MCM−41を用いて得られる全芳香族濃度とを比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態の詳細な説明)
本明細書では、炭化水素の水素化反応および/または脱水素反応の実施に適した金属含有触媒組成物を製造する方法が記載される。本発明の方法は、非晶質結合剤と組み合わせた多孔性結晶質材料を含む触媒担体を用いる。また、本発明の方法は、触媒担体の表面に結合し、かつ金属成分にも結合することができるアンカー材料で触媒担体を処理する工程を最初に含む。触媒担体をアンカー材料で処理すると同時に、またはその後に、金属成分の前駆体は、触媒担体の表面に析出する。その後、処理した触媒担体上に析出した金属前駆体を有する処理触媒担体は、前駆体を金属成分に変換し、なおかつ、アンカー材料を担体の表面に結合し、かつ金属成分にも結合させるために有効な条件で、1または複数の加熱工程に供される。得られた触媒は、貴金属アンカーを有しないこと以外は同じ触媒に比べて、同様の初期の触媒活性を示すが、向上した金属集合防止性(metal agglomeration resistance)を示す。
【0023】
得られた触媒組成物は、脂肪族および芳香族の両方の炭化水素の水素化および/または脱水素を含む多種多様な方法(プロセス)において使用され得る。好適な例としては、改質(リホーミング)、脱ロウ(デワキシング)、水素化分解(ハイドロクラッキング)および水素化処理(ハイドロトリーティング)が挙げられる。しかし、特に、本発明の方法は、潤滑油および燃料の芳香族含有量を低減させるために使用される水素化精製触媒の製造に関する。
【0024】
本発明の金属含有触媒組成物を製造するために使用される触媒担体は、実質的に非晶質の結合剤と組み合わせた多孔性結晶質材料を含む。多孔性結晶質材料は、一般に、ケイ酸塩またはアルミノケイ酸塩であり、触媒組成物の意図された用途に依存して、ミクロ多孔性材料またはメソ多孔性材料であってもよい。本発明で使用される場合、ミクロ多孔性という用語は、1.5nm未満の直径の細孔を有する材料を意味するために使用され、メソ多孔性は、1.5nm〜50nmの直径の細孔を有する材料を意味するために使用される。
【0025】
好適なミクロ細孔性材料の例は、ゼオライトであり、特に、約1〜12の拘束指数(Constraint Index)(米国特許第4,016,218号明細書で定義されたとおり)を有して通常は中細孔サイズのゼオライトと指定されるものと、1未満の拘束指数を有して通常は大細孔サイズのゼオライトと指定されるものである。
【0026】
好適な中細孔モレキュラーシーブとしては、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35およびZSM−48が挙がられる。ZSM−5は、米国特許第3,702,886号明細書および再発行特許第29,948号明細書に詳細に記載されている。ZSM−11は、米国特許第3,709,979号明細書に詳細に記載されている。ZSM−12は、米国特許第3,832,449号明細書に記載されている。ZSM−22は、米国特許第4,556,477号明細書に記載されている。ZSM−23は、米国特許第4,076,842号明細書に記載されている。ZSM−35は、米国特許第4,016,245号明細書に記載されている。ZSM−48は、米国特許第4,234,231号明細書にさらに詳細に記載されている。中細孔モレキュラーシーブを用いる触媒組成物は、改質および脱ロウなどの反応で特に有用である。
【0027】
好適な大細孔モレキュラーシーブとしては、ゼオライトベータ、ゼオライトY、超安定性Y(Ultrastable Y)(USY)、脱アルミニウム化Y(Deal Y)、モルデナイト、ZSM−3、ZSM−4、ZSM−18、ZSM−20およびMCM−22ならびにその関連のモレキュラーシーブが挙げられる。ゼオライトZSM−14は、米国特許第3,923,636号明細書に記載されている。ゼオライトZSM−20は、米国特許第3,972,983号明細書に記載されている。ゼオライトベータは、米国特許第3,308,069号明細書および再発行特許第28,341号明細書に記載されている。低ナトリウム超安定性Yモレキュラーシーブ(USY)は、米国特許第3,293,192号明細書および同第3,449,070号明細書に記載されている。脱アルミニウム化Yゼオライト(Deal Y)は、米国特許第3,442,795号明細書に見出された方法によって調製され得る。ゼオライトUHP−Yは、米国特許第4,401,556号明細書に記載されている。モルデナイトは、天然に存在する材料であるが、合成型、例えば、TEA−モルデナイト(すなわち、テトラエチルアンモニウム指向剤を含む反応混合物から調製される合成モルデナイト)も利用できる。TEA−モルデナイトは、米国特許第3,766,093号明細書および同第3,894,104号明細書に開示されている。MCM−22は、米国特許第4,954,325号明細書に記載されている。大細孔モレキュラーシーブを用いる触媒組成物は、水素化分解および水素化処理などの反応において特に有用である。
【0028】
好適なメソ多孔性材料の例は、M41Sファミリーの材料であり、その調製は、J.Amer.Chem.Soc.、1992年、114、10834頁にてさらに記載されている。M41Sファミリーの材料の例としては、MCM−41、MCM−48およびMCM−50が挙げられる。このクラスの好ましいメンバーは、その調製が米国特許第5,098,684号明細書に記載されているMCM−41である。MCM−41は、均一サイズの細孔の六方晶系の配置を有する無機の多孔性の非層状の相である。MCM−41の物理的構造は、ストローの束のようであり、そのストローの開口部(細孔の気泡直径)は1.5〜10nmの範囲である。MCM−48は、立方の対称性を有し、米国特許第5,198,203号明細書に記載されているが、MCM−50は、ラメラ構造を有し、米国特許第5,304,363号明細書に記載されている。メソ多孔性モレキュラーシーブを用いる触媒組成物は、水素化精製反応において特に有用である。
【0029】
本発明の触媒組成物において、多孔性結晶質材料は、実質的に非晶質の結合剤と複合化され、これは、使用時の触媒が受ける温度および他の条件に対して耐性を有する。好適な結合剤の材料としては、無機酸化物、例えば、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、またはこれらと他の酸化物との混合物が挙げられる。後者は、シリカと金属酸化物の混合物を含み、天然に存在していてもよく、あるいは、ゼラチン状沈殿物もしくはゲルの形態であってもよい。また、触媒の機械的特性を改良し、あるいはその製造で助けとなるために、クレイを酸化物型の結合剤とともに含めてもよい。モレキュラーシーブと関連した材料、すなわち、モレキュラーシーブと組み合わせる材料またはモレキュラーシーブの合成中に存在する材料であって、それ自体が触媒活性を有する材料の使用は、触媒の転化率(コンバージョン)および/または選択性を変化させ得る。不活性材料は、好適には、反応の速度を制御する他の手段を用いることなく、生成物を経済的および規則的に得ることができるように、転化の量を制御する希釈剤として役立つ。これらの材料は、天然に存在するクレイ、例えば、ベントナイトおよびカオリン中に取り込まれて、商業運転(実施)の条件下での触媒の破砕強度を向上させ、触媒の結合剤またはマトリックスとして機能し得る。モレキュラーシーブと無機酸化物結合剤の相対比率は、広範にわたって変動し、シーブの含有量は、複合体の約1〜約90重量パーセントの範囲であり、より通常には、約2〜約80重量パーセントの範囲である。
【0030】
また、本発明の触媒組成物は、水素化金属成分/脱水素金属成分を含み、典型的には、元素周期表の第6族〜第10族から選択される少なくとも1種の金属ならびにそれらの化合物および混合物を含む。より詳細には、水素化金属成分/脱水素金属成分は、通常、元素周期表の第8族〜第10族から選択される少なくとも1種の貴金属ならびにそれらの化合物および混合物、例えば、白金、パラジウムならびにそれらの化合物および混合物を含む。本発明で使用される場合、周期表の族の番号スキームは、Chemical and Engineering News、63(5)、27頁(1985年)に開示されたとおりである。
【0031】
典型的には、水素化金属成分/脱水素金属成分は、全触媒組成物の約0.2重量%〜約3.0重量%の量で触媒組成物中に存在する。実際的な一実施形態において、触媒組成物は潤滑油および燃料を水素化精製する際に使用することが意図され、水素化金属成分/脱水素金属成分は、白金およびパラジウムの両方を含み、それぞれ、全触媒組成物の約0.1重量%〜約1.0重量%、約0.1重量%〜約2.0重量%の量で存在する。
【0032】
また、本発明の触媒組成物は、活性化および運転(実施)の間に、その安定性を高めて、金属の焼結(シンタリング)および集合(アグロメレーション)の傾向を減少させるために、金属および担体に化学的に結合する金属アンカーを含む。これらの金属アンカーは、触媒担体の非晶質成分に結合すると考えられ、触媒の選択性は、一般に、アンカーの存在に影響を受けないので、多孔性結晶質成分と明らかに相互作用しない。
【0033】
金属アンカーは、典型的には含浸によって、触媒担体の表面に結合し、かつ触媒の金属成分にも結合することができるアンカー材料で触媒担体を処理することによって形成される。好適なアンカー材料としては、通常は水溶液中の酸化リン、リン酸素酸、オキシハロゲン化リンおよびそれらの混合物が挙げられる。他の好適なアンカー材料としては、元素周期表の第4族および第13族の金属の硝酸塩、例えば、硝酸アルミニウム、硝酸ジルコニウムおよびそれらの混合物の水溶液が挙げられる。アンカー材料による処理の後または処理と同時に、触媒の金属成分への前駆体は、触媒担体の表面上に析出される。前駆体は、典型的には、各触媒金属の錯体、例えばアミン錯体の水溶液であり、一般的には、含浸またはイオン交換によって触媒担体上に析出される。
【0034】
触媒担体へのアンカー材料および金属前駆体の析出後、触媒組成物を1または複数の加熱処理工程に供し、必要とされる触媒活性を有する金属成分へと前駆体を変換し(すなわち、触媒を活性化し)、アンカー材料を触媒担体の表面に結合し、かつ金属成分に結合させる。好適な加熱処理工程は、(i)大気などの酸素含有雰囲気中で上記の処理された触媒担体(処理触媒担体)を加熱し、金属前駆体を金属成分の酸化物または各金属成分の酸化物に変換する工程と、次いで、(ii)上記の処理触媒担体を水素含有雰囲気中で加熱して、酸化物を金属成分に変換する工程とを含む。上記の加熱工程(i)は、典型的には約250℃〜約350℃の温度で約0.5〜約4.0時間にわたって行われるが、上記の加熱工程(ii)は、典型的には約150℃〜約300℃の温度で約0.5〜約4.0時間にわたって行われる。
【0035】
本発明の触媒組成物は、現在、商業的/工業的に重要な多くのものを含めて、多種多様な炭化水素の水素化反応および脱水素反応を触媒するために使用され得る。例として、
(a)約150℃〜約400℃の温度、約740〜約20786kPa(100〜3000psig)の水素分圧、約0.1〜約10時間−1の液空間速度(LHSV)、および約89〜約1780m/m(500〜10000scf/B)の水素/原料(フィード)の比を含む反応条件での芳香族含有潤滑油および燃料の水素化精製(ハイドロフィニッシング)、
(b)約200℃〜約450℃の温度、約0〜1000psigの圧力、約0.2時間−1〜約10時間−1のWHSV、および約0.5/約10の水素/炭化水素のモル比を含む反応条件でのパラフィン原料(フィード)の脱ロウ(デワキシング)、
(c)約290℃〜約440℃の温度、約2860〜約10445kPaの圧力、約0.1〜約10時間−1の液空間速度(LHSV)、および250〜1000m/m(約1400〜5600SCF/bbl)の水素循環速度を含む反応条件での少なくとも345℃の初留点を有する重質炭化水素留分(ヘビーハイドロカーボンフラクション)の水素化分解(ハイドロクラッキング)、
(d)約400℃〜約600℃の範囲の温度、ほぼ大気圧〜約40バールの範囲の圧力、および約0.1〜約15時間−1の範囲の液空間速度(LHSV)を含む反応条件でのナフサストリームの改質(リホーミング)、
(e)約150〜400℃の温度、1480〜20786kPa(200〜3000psig)の水素分圧、0.1〜10時間−1の空間速度、および89〜1780m/m(500〜10000scf/B)の水素/原料(フィード)の比を含む反応条件での窒素および/または硫黄の不純物のレベルを低減させるべく潤滑油ベースストックの水素化処理(ハイドロトリーティング)が挙げられる。
【0036】
本明細書中、以下の非限定的な実施例および添付の図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【実施例】
【0037】
実施例1:ベースとなる例
35重量%アルミナと結合したSi−MCM−41約100グラムを含浸コーンに充填した。硝酸テトラアミン白金溶液(4重量%の白金)7.8グラムおよび硝酸テトラアミンパラジウム(3.64重量%の白金)25.86グラムを含有する溶液を水で142mlに希釈した。コーンを8RPMで回転しながら、この溶液をSi−MCM−41担体に噴霧した。次いで、担体を空気中で乾燥し、マッフルファーネス中、580°F(304℃)で1時間焼成した。得られた触媒の特性を表1に示す。
【0038】
実施例2:MCM−41とリン酸との共含浸
35重量%アルミナと結合したSi−MCM−41約100グラムを含浸コーンに充填した。硝酸テトラミン白金溶液(4重量%の白金)7.8グラム、硝酸テトラアミンパラジウム(3.64重量%の白金)25.86グラム、およびリン酸0.23グラムを含有する溶液を水で142mlに希釈した。コーンを8RPMで回転しながら、この溶液をSi−MCM−41担体に噴霧した。次いで、担体を空気中で乾燥し、マッフルファーネス中580°F(304℃)で1時間焼成した。得られた触媒の特性を表1に示す。
【0039】
実施例3:硝酸アルミニウムによる前処理
35重量%アルミナと結合したSi−MCM−41約100グラムを含浸コーンに充填した。硝酸アルミナ7.3グラムを水142mlに添加することによって溶液を調製した。次いで、コーンを8RPMで回転しながら、この溶液をSi−MCM−41担体に噴霧した。次いで、担体を空気中で乾燥し、マッフルファーネス中、約1000°F(538℃)で3時間焼成した。硝酸テトラアミン白金溶液(4重量%の白金)7.8グラムおよび硝酸テトラアミンパラジウム(3.64重量%の白金)25.86グラムを含有する第2の溶液を水で142mlに希釈した。コーンを8RPMで回転しながら、この溶液をSi−MCM−41担体に噴霧した。次いで、担体を空気中で乾燥し、マッフルファーネス中、580°F(304℃)で1時間焼成した。得られた触媒の特性を表1に示す。
【0040】
実施例4:硝酸ジルコニウムによる前処理
35重量%アルミナと結合したSi−MCM−41約100gを含浸コーンに充填した。ジルコニウム4.8グラムを水142mlに添加することによって溶液を調製した。次いで、コーンを8RPMで回転しながら、この溶液をSi−MCM−41担体に噴霧した。次いで、担体を空気中で乾燥し、マッフルファーネス中、約1000°F(538℃)で3時間焼成した。硝酸テトラアミン白金溶液(4重量%の白金)7.8グラムおよび硝酸テトラアミンパラジウム(3.64重量%の白金)25.86グラムを含有する第2の溶液を水で142mlに希釈した。コーンを8RPMで回転しながら、この溶液をSi−MCM−41担体に噴霧した。次いで、担体を空気中で乾燥し、マッフルファーネス中、580°F(304℃)で1時間焼成した。得られた触媒の特性を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
実施例5:Pt/Pd触媒の水蒸気処理
実施例1〜4の触媒(約10グラム)を試料ボートに充填し、石英管ファーネス中に100%水蒸気の雰囲気中、500°F(260℃)で約3時間置いた。実施例1〜4の触媒(10グラム)の第2のバッチを試料ボートに充填し、石英管ファーネス中に100%水蒸気の雰囲気中、800°F(427℃)で約3時間置いた。これらの水蒸気処理を用いて、開始の間およびストリームでの運転(実施)の間に生じる貴金属の集中をシミュレーションした。金属表面積の損失は、酸化化学吸着(O/M)、すなわち、還元後に水蒸気処理された触媒の金属表面上に吸収され得る酸素の量によって決定した。結果を表2にまとめる。
【0043】
【表2】

【0044】
表2に示すように、前含浸または共含浸によって、Si−MCM−41/結合剤の担体の表面に、これらの貴金属アンカー部位を加えることは、金属焼結を著しく減少させ、触媒の安定性を向上させる。
【0045】
実施例6:触媒性能
実施例1および実施例2における触媒のそれぞれの性能を水素化処理された600N脱ロウ油の水素化精製で評価した。脱ロウ油は、グループIIのベースストックをシミュレーションするために、前もって水素化処理して、硫黄含有量を約200ppmに低減し、全芳香族を約415mmol/kgに低減した。それぞれの触媒(約5cc)をアップフローミクロ反応器に充填した。80〜120メッシュの砂(約3cc)を触媒に加え、均一な液体のフローを確保した。窒素および水素による圧力試験後、触媒を窒素中、260°F(127℃)で約3時間乾燥し、室温に冷却し、水素中、約260℃で8時間にわたって活性化し、次いで、150℃に冷却した。オイル原料(フィード)を反応器に供給し、温度を275℃に上昇し、次いで、約7〜10日間一定に保持した。水素純度は100%であり、ガスのリサイクルはまったく使用しなかった。
【0046】
芳香族、硫黄、水素および窒素の含有量によって定義される生成物の品質を、毎日モニタリングした。芳香族は、UV吸収で測定した(mmol/kg)。ストリームでの時間の関数として、全芳香族含有量を図1に示す。図1から、金属含浸の間におけるSi−MCM−41担体のリン酸との共含浸によって、触媒の貴金属焼結に対する耐性は向上するが、触媒性能に有意な影響は与えなかったことがわかる。
【0047】
特定の実施形態を参照して本発明を説明し、例証してきたが、本明細書で必ずしも例証されない変形(バリエーション)と本発明が結び付くことを当業者は理解する。従って、そのため、ただ単に、本発明の真の範囲を決定することを目的とした添付の特許請求の範囲について参照すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素の水素化反応および/または脱水素反応の実施に適した金属含有触媒組成物を製造する方法であり、当該方法が、
(a)多孔性結晶質材料を非晶質の結合剤と組み合わせて含む触媒担体を供給する工程と、
(b)前記触媒担体の表面に結合し、かつ金属成分にも結合することができるアンカー材料で前記触媒担体を処理する工程と、
(c)前記触媒担体の表面に、前記金属成分の前駆体を析出させる工程と、
(d)前記前駆体を前記金属成分に変換し、なおかつ、前記アンカー材料を前記担体の表面に結合し、かつ前記金属成分にも結合させるのに有効な条件に、前記の処理された触媒担体上に前記前駆体が析出している触媒担体を供する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記多孔性結晶質材料が、ケイ酸塩またはアルミノケイ酸塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多孔性結晶質材料が、メソ多孔性材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記メソ多孔性材料が、MCM−41、MCM−48、MCM−50およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記非晶質の結合剤が、無機酸化物材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記アンカー材料が、酸化リン、リン酸素酸、オキシハロゲン化リンおよびそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アンカー材料が、元素周期表の第4族および第13族から選択される金属の硝酸塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記アンカー材料が、硝酸アルミニウム、硝酸ジルコニウムおよびそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記金属成分が、元素周期表の第6族〜第10族から選択される少なくとも1種の金属ならびにそれらの化合物および混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記金属成分が、白金、パラジウムならびにそれらの化合物および混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記前駆体が、前記金属成分の錯体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記析出工程(c)が、含浸またはイオン交換によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記処理工程(b)および前記析出工程(c)が、同時に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記工程(d)が、前記処理触媒担体を酸素含有雰囲気中で加熱し、前記前駆体を前記金属成分の酸化物に変換する工程と、次いで、前記処理触媒担体を水素含有雰囲気中で加熱して、前記酸化物を前記金属成分に変換する工程とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法により製造される金属含有触媒組成物。
【請求項16】
芳香族含有炭化水素原料中の芳香族濃度を低減させる方法であって、請求項15に記載の金属含有触媒組成物の存在下、前記原料を水素で処理する工程を含む方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−513479(P2013−513479A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544597(P2012−544597)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/059061
【国際公開番号】WO2011/081785
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】