説明

水素含有飲料パウチの水素保存構造

【課題】 水素含有飲料パウチにおける水素保存性を改善する。
【解決手段】 袋状容器にストローを貫通し、ストローの内端を袋状容器内に開口し、ストローの外端を袋状容器外に開口し、ストローの外端にキャップを被せてストローの外端を閉鎖するパウチにおいて、ストロー2とキャップ3及び袋状容器1は、水素含有飲料を封入した状態で、水素を含む気体の遮断性のある軟質外装シート21で包んで密封し、軟質外装シート内を減圧状態にし、軟質外装シートは、ストローとキャップ及び袋状容器の外面に密着した水素保存構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素を含有している飲料を封入するパウチにおける水素保存技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水素を含有している水素水は、還元力が高く、健康飲料と言われている。他の健康飲料と同様に、パウチと呼ばれる袋状容器に封入して保存する。水素水は、パウチ封入状態で販売される。
【0003】
パウチは、軟質包装シート製の袋状容器に合成樹脂成形品のストローを貫通して溶着している。ストローは、下端を袋状容器内に開口し、上端を袋状容器外に開口している。ストローの上端ないし外端は、袋状容器外に突出し、雄ねじを形成している。キャップは、雌ねじを形成している。水素水の保存時には、ストローの外端にキャップを螺合して締め付け、ストローの外端をキャップで閉鎖している。水素水の飲用時には、キャップを取り外してストローの外端を開口し、その外端を口にくわえる。水素水の飲み残しがあれば、ストローの外端にキャップを取り付けて締め付け、ストローの外端を再び閉鎖する。
【0004】
【特許文献1】特開平10−129782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[課 題]
水素水は、パウチに封入して保存して置くと、水素の含有率が減少して還元力が低下する。健康飲料として価値が落ちる。パウチは、水素の漏れ止めが十分ではなく、水素の保存性が高いとは言い難い。
【0006】
[課題の発生原因]
水素H2は、酸素O2や二酸化炭素CO2より、分子量が小さい。水素は、包装容器の壁を透過し易い。包装容器の隙間を通過し易い。
【0007】
ストロー・キャップ付きパウチにおいて、ストローとキャップは、合成樹脂の成形品である。成形樹脂には、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)が用いられる。これらのポリエチレンやポリプロピレンは、気体の遮断性が低い。ストローとキャップは、袋状容器を構成する軟質包装シートに比較して、厚肉の構造であるが、水素が透過して漏れ出し易い。また、水素は、ストローとキャップの間の隙間を通過して漏れ出ることもある。
【0008】
袋状容器の軟質包装シートは、複合シートである。この複合シートは、気体遮断性の高い金属箔や樹脂フイルム、溶着性の高い樹脂フイルムや強度の高い樹脂フイルムのような各種のフイルムないし箔を積層している。酸素や二酸化炭素のような気体の遮断性が高いが、水素の遮断性が十分に高いとは言い難い。
【0009】
従って、水素は、ストローとキャップから漏れ出し、また、袋状容器からも漏れ出すものと推察される。
【0010】
[課題を解決するための着想]
ストローとキャップ及び袋状容器は、全体を、水素を含む気体の遮断性のある軟質外装シートで包んで密封し、軟質外装シート内を減圧状態にする。すると、軟質外装シートは、ストローとキャップ及び袋状容器の外面に密着し、水素を含む気体の遮断性のある壁ないし層を形成する。
【0011】
水素を含む気体の遮断性のある樹脂には、ポリアミド(ナイロン)、エチレンビニルアルコール共重合体やポリビニルアルコール(PVA)がある。これらの樹脂は、二軸延伸フイルムであると、気体の遮断性能が高い。また、ポリアミドは、二酸化ケイ素SiO2の膜を被覆した二軸延伸フイルムであると、気体の遮断性能が高い。
【0012】
[比較実験]
試作例のストロー・キャップ付きパウチは、水素水を充填して封入した直後に、軟質外装シートで包んで密封し、軟質外装シート内を減圧状態にした。軟質外装シートは、ストロー・キャップ付きパウチの外面に密着した。この軟質外装シートは、複合シートにした。このシートは、溶着性のある内層をポリエチレンフイルムにし、水素を含む気体の遮断性のある中間層をポリアミドフイルムにし、強度のある外層をポリエチレンテレフタレートフイルムにした。
【0013】
比較例のストロー・キャップ付きパウチは、水素水を充填して封入したままであった。軟質外装シートで包まなかった。
【0014】
試作例と比較例のストロー・キャップ付きパウチは、共に、常温常圧の下に放置した。試作例と比較例において、水素水は、充填封入時に、水素含有率が0.5〜0.8ppmであった。3日経過時には、比較例では、水素含有率が0.1〜0.2ppmに低下した。試作例では、ほとんど低下せず、水素含有率が0.5〜0.8ppmであった。試作例のストロー・キャップ付きパウチは、比較例のそれより、水素の保存性が高い。
【課題を解決するための手段】
【0015】
1)袋状容器にストローを貫通し、ストローの内端を袋状容器内に開口し、ストローの外端を袋状容器外に開口し、ストローの外端にキャップを被せてストローの外端を閉鎖するパウチにおいて、
ストローとキャップ及び袋状容器は、水素含有飲料を封入した状態で、水素を含む気体の遮断性のある軟質外装シートで包んで密封し、軟質外装シート内を減圧状態にし、軟質外装シートは、ストローとキャップ及び袋状容器の外面に密着したことを特徴とする水素含有飲料パウチの水素保存構造。
2)上記の水素含有飲料パウチの水素保存構造において、
軟質外装シートは、複合シートにし、水素を含む気体の遮断性のある層をポリアミドフイルム、エチレンビニルアルコール共重合体フイルム又はポリビニルアルコールフイルムにしたことを特徴とする。
3)上記の水素含有飲料パウチの水素保存構造において、
軟質外装シートは、透明シートにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
水素含有飲料パウチは、全体が水素を含む気体の遮断性のある軟質外装シートで包まれ、外面に水素を含む気体の遮断性のある軟質外装シートが密着する。水素の保存性が改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施形態例の水素含有飲料パウチは、ストロー・キャップ付きパウチにしている。軟質外装シートで包んだ状態は、図1〜図3に示す。軟質外装シートで包む前の状態は、図4〜図6に示す。
【0018】
ストロー・キャップ付きパウチは、図4〜図6に示すように、平パウチにしている。このパウチは、袋状容器1にストロー2を取り付け、ストロー2にキャップ3を取り付けている。袋状容器1は、上側の側辺部にストロー2を上下方向に貫通している。ストロー2は、下端を袋状容器1内に開口し、上端を袋状容器1外に開口している。ストロー2の上端は、キャップ3を被せて閉鎖している。袋状容器1には、水素水hを充填して封入している。水素水hは、天然水に水素ガスを溶かし込んでいる。
【0019】
袋状容器1は、前側の軟質包装シート11と後側の軟質包装シート12をそれらの側辺部で溶着し、軟質包装シート製の縦長の袋に形成している。前側の軟質包装シート11と後側の軟質包装シート12は、上側の側辺部の間に合成樹脂成形品のストロー2を挟んでいる。前側と後側の軟質包装シート11、12の上側の側辺部は、ストロー2の中央部の溶着部14に溶着している。
【0020】
円筒形状のストロー2は、下端ないし内端15を袋状容器1内に突出し、上端ないし外端16を袋状容器1外に突出している。ストロー2の内端15は、袋状容器1の封入物の水素水hに没入している。ストロー2の外端16は、外周面に雄ねじを形成している。合成樹脂成形品のキャップ3は、内周面に雌ねじを形成している。ストロー2の外端16には、キャップ3を被せて螺合している。水素水hの保存時には、ストロー2の外端16にキャップ3を締め付けている。ストロー2の外端16は、開口がキャップ3で覆われて閉鎖されている。
【0021】
ストロー2の成形樹脂は、ポリエチレンにしている。キャップ3の成形樹脂は、ポリエチレン又はポリプロピレンにしている。
【0022】
軟質包装シート11、12は、4層の複合シートにしている。複合シートは、ポリエチレンテレフタレートフイルム、アルミ箔、ポリアミドフイルムとポリエチレンフイルムをこの順に積層している。アルミ箔とポリアミドフイルムは、複合シートの中間層、気体遮断層を構成している。ポリエチレンフイルムは、複合シートの内層、溶着層を構成している。前側と後側の軟質包装シート11、12の複合シートは、内層のポリエチレンフイルム面をストロー2の溶着部14のポリエチレン面に溶着している。軟質包装シート11、12の側辺部は、複合シートの内層のポリエチレンフイルム面同士を溶着している。
【0023】
ストロー・キャップ付きパウチは、図1〜図3に示すように、水素水hを封入した状態で、ストロー2とキャップ3及び袋状容器1の全体を、水素を含む気体の遮断性のある軟質外装シート21で包んで密封し、軟質外装シート21内を減圧状態にしている。軟質外装シート21は、ストロー2とキャップ3及び袋状容器1の外面に密着している。
【0024】
軟質外装シート21は、前側シート22と後側シート23をそれらの側辺部で溶着し、縦長の袋に形成し、ストロー2とキャップ3及び袋状容器1の全体を密封している。軟質な前側シート22の中央部は、キャップ3付きストロー外端16の前側面と袋状容器1の前側軟質包装シート11の外面に密着している。軟質な後側シート23の中央部は、キャップ3付きストロー外端16の後側面と袋状容器1の後側軟質包装シート12の外面に密着している。
【0025】
前側シート22と後側シート23は、3層の複合シートにしている。複合シートは、内層、溶着層をポリエチレンフイルムにし、中間層、気体遮断層をポリアミドフイルムにし、外層、補強層をポリエチレンテレフタレートフイルムにしている。気体遮断層のポリアミドフイルムは、二酸化ケイ素の膜を片面に積層した二軸延伸ポリアミドフイルムにしている。このポリアミドフイルムは、水素や酸素などの各種の気体の遮断性が非常に高い。
【0026】
軟質外装シート21の前側シート22と後側シート23は、透明シートにしている。袋状容器1の前側軟質包装シート11、後側軟質包装シート12の外面に印刷した文字や図形は、透明な軟質外装シート21を透して見られる。また、その印刷した文字や図形は、軟質外装シート21で覆われ、保護される。
【0027】
水素水hの飲用時には、軟質外装シート21の上部を破断し、キャップ3付きストロー外端16を露出する。そして、キャップ3を取り外してストロー2の外端16を開口し、ストロー2の外端16を口にくわえる。水素水hの飲み残しがあれば、キャップ3をストロー2の外端16に取り付けて締め付け、ストロー2の外端16を再び閉鎖する。
【0028】
軟質外装シート21で包んだ水素水パウチは、水素が漏れ出し難い。水素水hの保存が良好である。
【0029】
[変形例]
1)上記の実施形態において、軟質外装シート21の複合シートは、3層であるが、2層、4層や5層にする。
2)上記の実施形態において、軟質外装シート21の複合シートの水素を含む気体の遮断性のある気体遮断層は、ポリアミドフイルムにしているが、エチレンビニルアルコール共重合体フイルム又はポリビニルアルコールフイルムにする。
3)上記の実施形態において、軟質外装シート21は、前側シート22と後側シート23の2枚からなるが、1枚や3枚にする。
4)上記の実施形態において、ストロー2の内端15は、袋状容器1内に突出しているが、袋状容器1内に突出させない。
5)上記の実施形態において、ストロー2は、袋状容器1の上下方向、長手方向に配置しているが、上下方向から左側又は右側に傾ける。
6)上記の実施形態において、袋状容器1は、平パウチであるが、ガゼットパウチやスタンディングパウチにする。
7)上記の実施形態において、袋状容器1の軟質包装シート11、12の複合シートは、4層であるが、2層、3層や5層にする。
8)上記の実施形態において、ストロー2とキャップ3の締め付け機構、ストロー2の外端16を閉鎖する機構は、ねじ機構であるが、嵌め込み機構にする。
9)上記の実施形態において、水素含有飲料は、水素水hであるが、その他の水素含有飲料にする。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態例における水素含有飲料パウチの正面図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】図1のB−B線断面図。
【図4】同水素含有飲料パウチの軟質外装シートで包む前の状態を示す正面図。
【図5】図4のC−C線断面図。
【図6】図4のD−D線断面図。
【符号の説明】
【0031】
h 水素水、水素含有飲料、袋状容器の封入物
1 袋状容器、軟質包装シート製
2 ストロー、合成樹脂成形品
3 キャップ、合成樹脂成形品
11、12 軟質包装シート、複合シート
11 前側の軟質包装シート
12 後側の軟質包装シート
14 ストローの中央部、溶着部
15 ストローの下端、内端
16 ストローの上端、外端
21 軟質外装シート、複合シート、透明シート
22 軟質外装シートの前側シート
23 軟質外装シートの後側シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋状容器にストローを貫通し、ストローの内端を袋状容器内に開口し、ストローの外端を袋状容器外に開口し、ストローの外端にキャップを被せてストローの外端を閉鎖するパウチにおいて、
ストローとキャップ及び袋状容器は、水素含有飲料を封入した状態で、水素を含む気体の遮断性のある軟質外装シートで包んで密封し、軟質外装シート内を減圧状態にし、軟質外装シートは、ストローとキャップ及び袋状容器の外面に密着したことを特徴とする水素含有飲料パウチの水素保存構造。
【請求項2】
軟質外装シートは、複合シートにし、水素を含む気体の遮断性のある層をポリアミドフイルム、エチレンビニルアルコール共重合体フイルム又はポリビニルアルコールフイルムにしたことを特徴とする請求項1に記載の水素含有飲料パウチの水素保存構造。
【請求項3】
軟質外装シートは、透明シートにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の水素含有飲料パウチの水素保存構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−292511(P2009−292511A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149092(P2008−149092)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(596101842)株式会社牧野総合研究所 (8)
【Fターム(参考)】