説明

水素溶解燃料の製造装置

【課題】バーナで連続燃焼する際に完全燃焼し、煤の発生を減少し、かつ水素ガスの消費量を抑えて、省エネルギを図ることができる燃料の製造装置を提供する。
【解決手段】燃料タンク1内の燃料を循環管路10にポンプ9により循環する。燃料は、ボンベ2からの水素ガスが混入され、水素溶解装置3により過飽和状態に溶解される。バーナ25で連続燃焼する際、化石燃料に溶解された水素の燃焼に基づく火炎温度の上昇が、後続する燃焼にサイクリックに連続して影響し、火炎温度を上昇すると共に、火炎長を短くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重油、灯油等の化石燃料を基にし、それに水素ガスを溶解した燃料をバーナにより連続燃焼する水素溶解燃料の製造装置に関する。本水素溶解燃料は、旅館、ホテル、スーパー銭湯、温水プール施設、病院、クリーニング工場等の湯沸し用ボイラ、又は船舶、火力発電所等の蒸気タービン用若しくは食品工業等の産業用の蒸気発生源としてのボイラ等のあらゆるボイラに用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来、化石燃料と水素ガスとを併用したボイラは、本出願人等らにより提案されている(特許文献1参照)。該ボイラは、重油バーナと水素バーナとを備え、重油バーナにより重油を燃焼させて噴射させた火炎に対して、水素バーナにより燃焼させた水素燃料の燃焼ガスを噴射させることにより、重油バーナにより燃焼させた化石燃料を完全燃焼して、燃焼効率を向上すると共に、煤の発生を減少することができる。
【0003】
また、液体燃料(ガソリン)と水素ガスとを燃料として使用可能な水素利用内燃機関も提案されている(特許文献2参照)。このものは、水素生成手段によって生成された水素ガスをマイクロバブル発生装置により微細気泡として液体燃料に混合し、該水素ガスを混合した液体燃料を、筒内インジェクタによりエンジン内に噴射して爆発燃焼する。
【0004】
【特許文献1】特開2007−139405号公報
【特許文献2】特開2007−77930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のものは、ボイラに用いる連続燃焼に係るものであるが、水素ガスは、重油バーナの周囲からその火炎に向けて噴射されるものであり、重油バーナ火炎の噴き出し部分に接触して共に燃焼する。このため、水の電気分解等による水素生成装置をボイラに近接して設置する必要があり、ボイラ設備が高価となると共に、重油バーナの周囲から水素ガス燃焼の影響を与えるために水素ガスを大量に消費することになる。
【0006】
一方、特許文献2のものは、水素を混合した液体燃料が用いられるが、限られた僅かな時間で燃焼を完結させる必要のある内燃機関の爆発燃焼に係るものであって、バーナ用の連続燃焼とは燃焼の形態が相違している。またそのため、比較的大量の水素を液体燃料に混合する必要があり、水素ガスを生成する水素生成手段を必要とし、かつマイクロバブル発生装置により液体燃料中に水素ガスをマイクロバブル化にすることにより混合している。このものは、水素ガスが液体燃料中にある程度溶解することがあるとしても、マイクロバブルの状態で液体燃料中に均一に存在するものであって、燃焼に際してインジェクション又はバーナから噴霧される際、水素バブルの径が霧滴の微細化への規制となると共に、良好な燃焼を妨げる虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、化石燃料に水素ガスを過飽和状態で溶解した燃料をバーナで連続燃焼することにより、水素の燃焼により化石燃料を完全燃焼し、煤の発生を減少するものでありながら、水素ガスの消費量を抑えて、省エネルギを図ることができる燃料の製造装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る水素溶解燃料の製造装置は、例えば図1又は2を参照すると、
水素ガス供給装置(2)と、
連続して化石燃料に水素ガスを混合して溶解する水素溶解装置(3)と、
前記水素溶解装置(3)により化石燃料に水素を過飽和状態で溶解した燃料を貯留する燃料タンク(1)(1)(1)と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
なお、上記水素溶解燃料は、水素が化石燃料に溶解されていることを基本とするものであるが、一部水素ガスが溶けきらずに、マイクロバブル又はナノバブルで混在することもあり、このものも、バーナの形態等にあっては、支障なく燃焼することができ、上記水素溶解燃料は、このものをも含むものである。
【0010】
好ましくは、前記燃料タンク(1)(1)からの燃料を流出し再び流入するようにポンプ(9)を介在した循環管路(10)を設け、
該循環管路(10)に、前記水素ガス供給装置(2)からの水素ガスを導入する水素導入管(11)及び前記水素溶解装置(3)を介在し、
前記循環管路(10)に前記燃料タンク(1)内の燃料を循環することにより、化石燃料に水素を過飽和状態で溶解してなる。
【0011】
前記水素ガス供給装置は、ボンベ等の水素貯蔵手段(2)である。
【0012】
更に、前記水素溶解装置(3)の流入側(3a)に燃料冷却装置(12)を配置し、
前記水素溶解装置(3)に供給される水素ガスを混合した化石燃料を所定低温状態に保持して、該化石燃料に前記水素を過飽和状態で溶解してなる。
【0013】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより、請求項記載の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0014】
水素溶解燃料は、化石燃料に過飽和状態で溶解されている水素が、化石燃料と共に蒸発・燃焼し、化石燃料の燃焼による火炎温度を僅かに上昇し、この僅かな上昇による影響が後続燃料の燃焼に伝播され、それが更に後続燃料の蒸発・燃焼状態を変化させ、この影響が更に続いて連続燃焼場に供給される燃料の燃焼をサイクリックに影響を及ぼす。これにより、化石燃料に溶解されている水素ガスの量は僅かであっても、上記サイクリックな現象が連続して定常状態として、連続燃焼を良好に保持できる。上記サイクリックな現象は、限られた時間内で燃焼を完結させなければならない内燃機関とは異なり、充分な時間を確保できる連続燃焼において可能となる。
【0015】
特に、バーナによる液体燃料の噴霧の燃焼では、上記蒸発過程は強い輻射加熱により燃焼が促進され、下流側に形成される燃焼領域が高温であれば蒸発に要する時間が短くなり、その結果火炎長を短くすることができる。
【0016】
また、水素は、化石燃料内に溶解されているので、マイクロバブル等の水素ガスの微細気泡(例えば30〜60μm)が、液体燃料の噴霧液滴の微粒化の制限となることがなく、かつ溶解された水素が化石燃料の噴霧液滴中に均一に混在し、バーナから噴射する全域範囲に亘って均等に上述したサイクリックな現象による良好な連続燃焼を現出する。
【0017】
バーナによる連続燃焼は、一般に、化石燃料として重油や灯油等の高沸点材料が用いられるが、これら揮発性のあまりよくない粘性の大きい材料にあっても、上述した水素溶解燃料による良好な燃焼が顕著に発揮される。
【0018】
以上各効果が相俟って、本水素溶解燃料を連続燃焼として用いることにより、高温による短い火炎長による良好な火炎が得られると共に、通常の化石燃料用ボイラをそのまま用いることができ、かつ完全燃焼により煤の発生を防止して、ボイラメンテナンスを減少できることが相俟って、ボイラ用燃料として有効な燃料を提供することができる。また、消費する水素の量は僅かであり、かつ大掛かりな水素生成装置を必要とせず、ボイラ設備等の初期投資及びランニングコストも抑えた効率の良い燃料を提供することができる。
【0019】
請求項1に係る本発明によると、水素溶解装置により化石燃料に水素を過飽和状態に溶解した燃料を、比較的簡単な装置で容易に製造することができる。
【0020】
請求項2に係る本発明によると、燃料タンクに燃料を循環する循環管路を設け、該循環管路に水素ガスを導入すると共に水素溶解装置を介在し、燃料タンク内の燃料を循環することにより、燃料タンク内の燃料に、必要とする量の水素を過飽和状態で溶解することができる。
【0021】
請求項3に係る本発明によると、水素溶解燃料の水素ガスの使用量は多くはなく、従って水素ガスの供給源として、ボンベ等の水素貯蔵手段で充分であり、大掛かりで操作の面倒な水素生成装置を必要とせず、水素溶解燃料の製造装置を簡単で操作の容易なものとすることができ、ボイラ設備の一部としても容易に配設することができる。
【0022】
請求項4に係る本発明によると、燃料冷却装置により化石燃料を所定低温状態として、充分な量の水素を過飽和状態で溶解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態を説明する。本発明に係る水素溶解燃料を生成する製造装置は、ボイラ、例えば従前の湯沸し用ボイラBに付設される。水素溶解燃料の製造装置U1は、図1に示すように、燃料タンク1、水素ガス供給装置を構成する水素ガスボンベ2及び水素溶解装置3を有している。
【0024】
燃料タンク1には、該タンク内の燃料を流出し、再び流入する循環管路10が連接されており、該循環管路には、その流出側10aから順次仕切り弁20、水素ガスボンベ2からの導入管11、燃料冷却装置12、水素溶解装置3が介在しており、該水素溶解装置3の吐出側口3bがタンク1への流入口10bに連通している。水素ガスボンベ2の水素ガスHは、流量調整弁21により適宜流量を調整して、導入管11から循環管路10を流れる燃料に供給・混合される。なお、水素ガス供給装置2は、上記水素ガスボンベがその水素ガス消費量、施設費用及びメンテナンス等で望ましいが、これに限らず、有機ハイドロイド、炭素系材料素材料、水素吸蔵合金、多孔性金属有機構造体、アミド系、ボロハイドライド系、アラネート系等の他の固体水素吸蔵材料による水素貯蔵手段でもよく、更には電気分解による水素生成装置でもよい。
【0025】
燃料タンク1は、上方が大気に開放されているオープンタイプの容器であり、所定量の化石燃料、例えばA重油、灯油が貯留される。該燃料タンク1への化石燃料は、作業者が該タンク内の燃料レベルを見て適宜ドラム缶等から供給してもよく、また図1に示すように、別の化石燃料タンク6を設置しておき、フロートバルブ等により燃料タンク1内の燃料レベルが一定になるように、上記化石燃料タンク6からポンプ22により供給してもよい。
【0026】
前記水素溶解装置3は、螺旋流形成部、気液反応部及び超音波照射部を有しており、水素ガスHを混合した化石燃料がその流入口3aから供給されて、螺旋流形成部及び気液反応部により剪断、撹拌、混合されると共に、超音波による振動・圧力変化作用が併用されて、連続的に水素ガスが化石燃料中に過飽和状態で溶解される。なお、本水素溶解装置3は、特開2007−185576号公報に示される装置を基本としており、効率よく水素ガスを化石燃料中に溶解できるが、これに限らず、水素ガスの化石燃料中への噴射、キャビテーションによる方法、それらの組合せ等の他の方法による装置でもよい。
【0027】
前記燃料タンク1から、ボイラBのバーナ25に向けて供給管路26が連通されている。該供給管路26は、ポンプ27、仕切り弁29、流量計30等を介在してバーナ25の噴出口に導かれている。バーナ25は、上記燃料以外に、エアー及び酸素ボンベ31からの酸素が流量調整弁32を介して導入され、上記燃料を燃焼する。
【0028】
ボイラBは、湯沸し用のボイラを示しており、バーナ25による燃焼室33での高熱を効率よく螺旋管35の水に熱交換して、貯湯タンク36に溜める。なお、上記ボイラBは、湯沸し用を示してあるが、蒸気発生用ボイラでもよいことは勿論である。
【0029】
ついで、上述した装置の作用について説明する。水素溶解燃料の製造装置U1は、燃料タンク1内に所定量の化石燃料(例えばA重油)が貯留されている。そして、ポンプ9を駆動して、循環管路10に燃料を循環した状態で、流量調整弁21を開いて所定流量で管路10内に水素ガスHを供給すると共に、冷却装置12及び水素溶解装置3を作動する。これにより、循環管路10内の燃料は、冷却装置12により冷却されて、水素ガスが溶込み易い状態になり、そして水素溶解装置3により、水素ガスHを混合した化石燃料は、剪断、撹拌されると共に超音波振動が与えられ、化石燃料中に水素ガスHが過飽和状態に溶解される。なお、一部の水素ガスHは、マイクロバブル、ナノバブルとなって液相中に漂うこともある。
【0030】
上記循環管路10による水素ガスの溶解作業は、複数回行われ、燃料タンク1内の化石燃料中に所定量[例えば5%]の水素ガスHが溶解される。燃料タンク1内の化石燃料に略々均一に水素ガスHが溶解され、かつできるだけフレッシュ(水素ガスが大気中に放散されない状態)のうちに、ポンプ27を駆動すると共に仕切り弁29を開いて、燃料タンク1内の水素溶解燃料をバーナ25に供給して燃焼する。
【0031】
該水素溶解燃料の燃焼に際して、まず水素ガスが燃焼して、その熱により化石燃料の蒸発を促進する。水素ガスの熱量は大きくなくとも、化石燃料内に均一に溶解しており、外部からの水素ガスの供給に比して、化石燃料をその全域範囲に亘って蒸発を促進し、化石燃料の燃焼を早めると共に火炎温度を僅かに上昇する。この僅かな燃焼の早期化及び火炎温度の上昇による影響が後続燃料の燃焼に伝播され、それが更に後続燃料の蒸発・燃焼状態を変化させ、この影響が更に続いて連続燃焼場に供給される燃料の燃焼をサイクリックに影響を及ぼす。これにより、化石燃料に溶解されている水素ガスの量は僅かであっても、上記サイクリックな現象が連続して定常状態として、燃焼を良好に保持する。即ち、高い温度での燃焼を短い火炎長で行うことができ、かつ完全燃焼により煤の発生を防止できる。
【0032】
図1に示す装置にあっては、燃料タンク1の上方が開放されているため、化石燃料に溶解された水素ガスは、時間経過と共に大気に放散される。従って、できるだけフレッシュのうち、例えば循環管路10で水素の溶解作業を行いつつ、供給管路26から燃料をバーナ25に供給して燃焼することが好ましいが、それでも、水素ガスHは、燃料タンク1の上方から放散される。そこで、図1に鎖線で示すように、燃料タンク1の上方を覆うように、水素ガス集積部材37を配置し、該集積部材37で集められた水素ガスHを管路39を介してバーナ25に送って、水素溶解燃料と共に該集積水素ガスHを燃焼する。
【0033】
これにより、放散する水素ガスを有効に利用できると共に、安全性を向上することができる。なお、水素ガスの集積供給経路に、水素ガスを溜める水素ガス貯留手段及び供給を遮断し得るバルブを介在することが望ましい。
【0034】
図1に示す燃料タンク1では、循環管路10により水素の溶解量を高めると共にフレッシュのうちに使用して、所定の水素溶解量を得ているが、更に多くの水素ガスを溶解することが望ましい場合もある。
【0035】
図2はそのための実施の形態であり、燃料タンクを圧力容器1とすることにより、水素溶解量を高めている。圧力容器からなる燃料タンク1は、調圧リリーフ弁39により所定高圧に保持されている。該高圧状態に保持された燃料タンク1内の化石燃料は、より多くの水素ガスHを溶解して保持することが可能となる。
【0036】
水素溶解燃料製造装置U2は、1列状の管路40に配置することも可能である。該管路40の一端には、化石燃料を貯留するタンク6が流量調整弁41を介して接続されており、かつ該管路40に水素ボンベ2からの導入管11が連通している。更に、該管路40の後流側には、順次、逆止弁43、燃料冷却装置12及び水素溶解装置3が介在して、その他端が燃料タンク1に接続している。
【0037】
従って、ポンプ42の駆動により、タンク6の化石燃料とボンベ2の水素ガスとは、それぞれ流量調整弁41,21で適宜調節されて管路40に供給され、逆止弁43及び冷却装置12を介して水素溶解装置3に導かれる。そして、水素溶解装置3は、その吐出側に連通される燃料タンク1の高圧により加圧された状態で、剪断、撹拌、混合されると共に超音波により加振されて、より多くの水素が溶解される。そして、該水素を溶解した化石燃料は、高圧状態の燃料タンク1内にて高い水素溶解状態のまま保持される。なお、ポンプ42が停止して管路40からの化石燃料及び水素ガスの供給が停止されても、逆止弁43が介在することにより、燃料タンク1は、所定高圧に保持される。
【0038】
該圧力容器からなる燃料タンク1内の燃料は、ポンプ27及び仕切り弁29の連通により、供給管路26を介してバーナ25に供給されて燃焼される。燃料タンク1の燃料の使用等により、該タンク内の燃料のレベルは変化するが、該レベル変化によってもタンク内の圧力を所定高圧に維持するため、本実施の形態では、該タンク1に、アキュムレータ42及びエアポンプ43が連通している。これにより、燃料タンク1内は、使用により燃料レベルが低下しても、アキュムレータ42により所定高圧に保持される。なお、燃料レベルを一定に保持するように、化石燃料タンク6からの供給量が調整することにより、上記アキュムレータ42及びエアポンプ43等は不要とすることもできる。
【0039】
また、本製造装置U2は、一列状の管路40を用いて説明したが、図1に示すものと同様に、循環管路10を用いてもよい。
【0040】
本実施の形態では、燃料タンク1に循環管路10’を設け、該循環管路10’は、仕切り弁20、ポンプ9を介在して、前記冷却装置12と逆止弁43との間で前記管路40に合流する。また、水素ガスボンベ2からの管路に方向切換え弁41を介在して、該切換え弁41により、一列状管路40に直接連通する導入管11と、循環管路10’に導く導入管11に切換える。
【0041】
循環管路10’を用いる場合、ポンプ9を駆動して、圧力容器からなる燃料タンク1の燃料を循環して、導入管11から水素ガスを混入し、更に冷却装置12で冷却して水素溶解装置3により水素を溶解する。これにより、燃料タンク1の燃料は、所定回数循環されて、更に多くの水素ガスを化石燃料に溶解することができる。なおこの際、循環管路10’の圧力液体が、逆止弁43により管路40を通って化石燃料タンク6側に流れることはない。図1に示す装置と同様に燃料タンク1内の燃料が、循環管路10’により所定回数繰返して、水素溶解装置3により水素ガスが溶解され、より多くの水素ガスHを化石燃料に溶解することができる。
【0042】
図1及び図2に示す製造装置U1,U2であっても、循環管路26の流量計30で使用量を計量することにより、水素溶解燃料自体を販売することは可能であるが、水素溶解燃料製造装置U1,U2をボイラの近くに施設する必要がある。図3は、水素溶解燃料を図1又は図2に示す製造装置で製造し、該燃料を運搬して他のボイラに用いる燃料タンクを示す。
【0043】
図3に示す燃料タンク1は、圧力容器からなり、上壁に可変リリーフ弁39、圧力計45、圧力注入用バルブ46及び燃料残量ケージ47が設けられている。一方、該タンク1の下部には、コック付の導入管連結部49及び同じくコック付の導出管連結部50が設けられている。
【0044】
本燃料タンク1は、水素溶解製造装置U1,U2により製造された水素溶解燃料が、供給管路26から又は水素溶解装置3の吐出口から直接供給される。この際、圧力注入用バルブ46は開放されており、タンク上方空間の空気は逃される。燃料タンク1に水素溶解燃料が満たされた後、導入連結部49のコックが閉じられた状態で、燃料から放散した水素又は圧力注入用バルブ46を介して圧入される水素又は空気により、該燃料タンク1は、所定圧に保持される。
【0045】
そして、この状態で、本燃料タンク1は、所定のボイラ施設まで運搬され、そこに設置された後、燃料タンク1の導出管連結部50にボイラの供給管路が連結されて、そのコックが開かれる。これにより、燃料タンク1内の水素溶解燃料はボイラのバーナに供給されて燃焼される。
【0046】
使用によりタンク1内の燃料レベルが低下するが、燃料からの放散水素ガス又は圧力注入用バルブ46からの水素又は空気の圧入により、タンク1内は所定圧力に維持される。また、可変リリーフ弁39が、タンク1内が負圧になる場合は空気圧を吸入するような逆止弁機能を有するものを用いて、使用による燃料レベルの低下によっても、燃料の供給をスムーズにできるようにしてもよい。
【0047】
本燃料タンク1を用いることにより、水素溶解燃料製造装置の設備のないボイラにも、容易に水素溶解燃料を使用することができ、かつタンクは圧力容器からなり、所定圧を付与しているので、常に所定の水素溶解量を維持することができる。本実施の形態は、燃料を満たした燃料タンク1自体を運搬して、使用後回収して再充填するように説明したが、本燃料タンク1をボイラ施設に設置したままにして、タンクローリ等の運搬専用のタンクを用いて、現場で本燃料タンク1に水素溶解燃料を充填するようにしてもよい。
【0048】
なお、前述した水素溶解燃料の製造装置U1,U2において、冷却装置12はなくてもよく、またボイラの酸素ボンベ31等の酸素供給部もなくてもよいことは勿論であり、また蒸気発生用ボイラ等の他のボイラに適用してもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明による水素溶解燃料製造装置を付設したボイラを示す概略図。
【図2】他の実施の形態による水素溶解燃料製造装置を付設したボイラを示す概略図。
【図3】水素溶解燃料を貯留する燃料タンクを示す概略図。
【符号の説明】
【0050】
1,1,1 燃料タンク
2 水素ガス供給装置(水素ボンベ)
3 水素溶解装置
10,10’ 循環管路
11 水素導入管
12 燃料冷却装置
25 バーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガス供給装置と、
連続して化石燃料に水素ガスを混合して溶解する水素溶解装置と、
前記水素溶解装置により化石燃料に水素を過飽和状態で溶解した燃料を貯留する燃料タンクと、
を備えてなる水素溶解燃料の製造装置。
【請求項2】
前記燃料タンクからの燃料を流出し再び流入するようにポンプを介在した循環管路を設け、
該循環管路に、前記水素ガス供給装置からの水素ガスを導入する水素導入管及び前記水素溶解装置を介在し、
前記循環管路に前記燃料タンク内の燃料を循環することにより、化石燃料に水素を過飽和状態で溶解してなる、
請求項1記載の水素溶解燃料の製造装置。
【請求項3】
前記水素ガス供給装置は、ボンベ等の水素貯蔵手段である、
請求項1又は2記載の水素溶解燃料の製造装置。
【請求項4】
前記水素溶解装置の流入側に燃料冷却装置を配置し、
前記水素溶解装置に供給される水素ガスを混合した化石燃料を所定低温状態に保持して、該化石燃料に前記水素を過飽和状態で溶解してなる、
請求項1ないし3のいずれか記載の水素溶解燃料の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−25514(P2010−25514A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190721(P2008−190721)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(508223549)株式会社デバイス (2)
【出願人】(500348745)株式会社ナゴヤ大島機械 (4)
【Fターム(参考)】