説明

水素生成装置

【課題】水添脱硫器の作動温度との差を抑えて、原料ガスを水添脱硫器に供給できる水素生成装置を提供する。
【解決手段】水素生成装置GHは原料ガスを用いて改質反応により水素含有ガスを生成する筒状の改質器102と、改質器102で生成された水素含有ガス中の一酸化炭素を低減する筒状の一酸化炭素浄化器104と、改質器102の外周に設けられ、原料ガス中の硫黄化合物を除去する筒状の水添脱硫器103と、水添脱硫器103に供給される原料ガスが流れる原料ガス供給路108、Hexとを備え、原料ガス供給路108、Hexは、前記一酸化炭素浄化器104の外周面に沿って熱交換可能に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水素生成装置に関し、より詳しくは、燃料電池発電装置に組み込まれて、炭化水素系の原料ガスに含まれる硫黄化合物を除去する水添脱硫器を備えた水素生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池発電装置では、燃料である水素は、LPガス、及び天然ガスなどのメタンを主成分とする炭化水素系ガスと水蒸気とからなる原料ガスが水素生成装置によって改質されて水素が生成される。生成された水素は燃料電池の燃料極に供給されて、発電が行われる。水素生成装置において、原料ガスは燃料改質器での改質反応により、水素リッチなガスに改質される。このように、炭化水素から燃料電池に供給される水素を発生することを改質という。改質反応で水素と同時に生じた一酸化炭素は、発電部であるスタックの発電特性を著しく低下させる。それを防止するために、一酸化炭素変成反応や選択酸化反応などを生じさせる一酸化炭素浄化器で、改質後の水素リッチなガスから一酸化炭素が除去されて、その含有率が低減される。
【0003】
原料ガスの改質には一般に水蒸気改質法が採用されている。具体的には、改質触媒としてPt(プラチナ)系、Ni(ニッケル)系、及びRu(ルテニウム)系などの金属触媒を用いて、約600℃から700℃で反応を生じさせる。また、一酸化炭素変成反応を生じる触媒には、CuZn(銅亜鉛)系が用いられ、150℃から350℃で反応を生じさせられる。選択酸化反応を生じる触媒には、Pt系やRu系が用いられ、80℃から200℃で反応を生じさせる。
【0004】
原料ガスである都市ガス、LPガス、及び天然ガスなどには付臭剤として有機硫黄化合物が添加されている。改質触媒は、硫黄化合物により被毒し性能劣化をきたすので、原料ガス中の硫黄化合物を許容濃度以下まで除去するために、改質触媒に原料ガスを通流させる前処理として脱硫工程を設ける必要がある。
【0005】
原料ガス中の硫黄化合物を除去する脱硫方法の一つとして、原料ガスに水素を混合し硫黄化合物を除去する水添脱硫方式がある。水添脱硫方式は、硫黄分の吸着容量が大きいことから長期間にわたって吸着剤を交換する必要がない。一方、水添脱硫方式の脱硫反応には水素が必要であるため、改質触媒により生成された改質ガスの一部を原料ガスに添加して水添脱硫器に供給する。
【0006】
水添脱硫器では、水添脱硫触媒により硫黄化合物が水素と反応し除去される。このとき、触媒に適切な反応を生じさせる温度は、触媒種にもよるが、触媒を200℃〜400℃程度の高温状態に保つ必要がある。水添脱硫触媒はCuZn系、Ni系、CoMo(コバルト・モリブデン)系、ZnO(酸化亜鉛)系などが用いられる。
【0007】
図8に、従来の水素生成装置の一例として、特許文献1に提案されている水添脱硫器一体型円筒式水蒸気改質器を示す。水添脱硫器一体型円筒式水蒸気改質器GHcは、簡単に言えば、水素生成装置に水添脱硫器が組み込まれて一体化されて構成されている。具体的には、水添脱硫器200が水素生成装置本体201の変成器202が位置する下方、かつ改質器203が位置する外周に組み込まれている。改質器203の外周に配置するのは、約600℃と高温になる改質器203の熱を利用して水添脱硫触媒204を反応に適した温度に保つためである。
【0008】
水添脱硫器200の反応容器は同心二重円筒形状で、外筒205と内筒206で囲まれた空間の上下端面を中空2重円筒形状の上面板207と底面板208とで閉塞した縦型の容器である。水添脱硫触媒204は、反応容器内の上下に配した仕切り板209の間に充填されている。触媒層を挟んで反応容器内の上側には上面板207と水添脱硫触媒204との間に上側ヘッダー210が形成され、また下側には底面板208と水添脱硫触媒204との間に下側ヘッダー211が形成されている。
【0009】
そして、上面板207には、脱硫済の原料ガスを排出する原料ガス排出管212が接続され、底面板208には水素を添加した原料ガスを供給する原料ガス供給管213が下から接続されている。水素が添加された原料ガスは、原料ガス供給管213から下側ヘッダー211に導入され、触媒層(水添脱硫触媒204)を上昇する過程で原料ガス中の硫黄化合物が水素との脱硫反応により除去される。硫黄化合物が除去された原料ガスは、上側ヘッダー210に達し原料ガス排出管212を通って改質器203に向かう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−58995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の如く構成された水添脱硫器一体型円筒式水蒸気改質器GHc(水素生成装置)においては、原料ガス供給管213が水添脱硫器200が直接接続されているために、200℃〜400℃程の高温である水添脱硫触媒204の作動温度に比べて、遙かに低温である(常温で25℃)の原料ガスが水添脱硫器200に導入される。つまり、水添脱硫器200の原料ガス供給管213と出口付近では、適正な温度(200℃〜400℃程)に比べて、175℃〜275℃も低い原料ガスが流入することによって、水添脱硫器200に内部の均熱帯が壊れたり、その部分が過度に冷やされたりして触媒層全体を適正温度範囲に保つことがでない。そして、水添脱硫器200における脱硫反応が損なわれたり、最悪の事態では熱衝撃により水添脱硫器200が損傷を受けることもある。結果、硫黄化合物が十分に除去されていない原料ガス中が、反応容器に供給されてしまう。
【0012】
本発明は、上述の問題に鑑みて、水添脱硫器の作動温度との差を抑えて、原料ガスを水添脱硫器に供給できる水素生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決する為に、本発明は、水素生成装置であって、
原料ガスを用いて改質反応により水素含有ガスを生成する筒状の改質器と、
前記改質器で生成された水素含有ガス中の一酸化炭素を低減する筒状の一酸化炭素浄化器と、
前記改質器の外周に設けられ、前記原料ガス中の硫黄化合物を除去する筒状の水添脱硫器と、
前記水添脱硫器に供給される原料ガスが流れる原料ガス供給路とを備え、
前記原料ガス供給路は、前記一酸化炭素浄化器の外周面に沿って熱交換可能に配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水素生成装置によれば、温度を適切にした原料ガスを水添脱硫器に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1に係る水素生成装置の内部構成を示す縦断面図である。
【図2】図1の水素生成装置の外観構造を示す部分斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る水素生成装置の外観構造を示す部分斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態3に係る水素生成装置の内部構造を示す縦断面図である。
【図5】本発明の実施の形態4に係る水素生成装置の外観構造を示す部分斜視図である。
【図6】本発明に係る水素生成装置の実機実験における温度測定点を示す図である。
【図7】図6に示す各測定点における測定温度を示す図である。
【図8】従来の水素生成装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図1、図2、図3、図4、図5、図6、及び図7を参照して、本発明の実施の形態1〜4に係る水素生成装置について説明する。なお、異なる実施の形態において、同一或いは類似の部材については、原則的に同一の符号を付すと共に説明を省略する。
【0017】
(実施の形態1)
図1に、本発明の実施の形態1に係る水素生成装置の内部構造を示す。水素生成装置GH1は、上述の水添脱硫器一体型円筒式水蒸気改質器GHcと同様に、水添脱硫器103が、水素生成装置本体101の一酸化炭素浄化器104が位置する下方、かつ改質器102が位置する外周に断熱材107を介して配設されている。なお、本実施形態においては、水素生成装置GH1は円筒形に形成されているが、円筒形に限定されるものではない。また、改質器102や水添脱硫器103も、改質反応や、一酸化炭素変成反応及び選択酸化反応を効果的引き起こすことができる形状であれば何でもよい。そのような例として、円筒状、角筒状、及び筒状などの形状を挙げることができる。なお、燃料電池発電装置に組み込まれる場合は、円筒状が好ましい。
【0018】
一酸化炭素浄化器104とは、変成器105および選択酸化器106の少なくともいずれか一方を指す。一酸化炭素変成反応を生じる触媒には、CuZn(銅亜鉛)系が用いられ、150℃から350℃で反応が生じさせられる。改質器102で改質反応により生成された水素と、都市ガス、LPガス、及び天然ガスといった炭化水素系のガスとを混合させた原料ガスは、原料ガス供給路108を介して水添脱硫器103に充填された脱硫触媒内を通流して、硫黄化合物が除去された後に、原料ガス排出路110を通流し改質器102へ供給される。原料ガス供給路108は、変成器105の外周に接触または隣接させて配設されている。このような変成器105は、PEFC(固体高分子形燃料電池)やSOFC(固体酸化物形燃料電池)に水素を供給するための水素生成装置に設けられている。
【0019】
図2に、水素生成装置GH1の外観を部分的に示す。水添脱硫器103に原料ガスを供給する原料ガス供給路108は、選択酸化器106と変成器105との側面に沿って配置され変成器105の下端近傍で、変成器105の側面の周方向に折り返され、変成器105の外周に沿って接触または隣接されるように配される。この変成器105の外周に沿って変成器105に接触または隣接する部分を、原料ガス供給路の熱交換部Hex1と呼ぶ。原料ガス供給路108及び熱交換部Hex1は、それぞれ、変成器105と熱交換可能となるように、変成器105の外周に沿って接触または隣接して配設されている。なお、熱交換機能の観点から言えば、原料ガス供給路108は補助的なもので、原料ガスの温度を安定化するには、変成熱交換部Hex1が必須である。
【0020】
つまり、原料ガス供給路108は、一酸化炭素浄化器104(変成器105)の長さ方向に延在させる構造的制約があるため、延在長に対応する吸熱量(原料ガスの昇温度)の制御が難しい。これに対して、熱交換部Hex1は、変成器105の周方向に延在(巻回)させるために、吸熱量(原料ガスの昇温度)に対する延在(巻回)長さ制御が(中心角θによって)容易である。よって、本発明においては、熱交換部Hex1が主な熱交換手段であり、原料ガス供給路108が補助の熱交換手段である。具体的に言えば、原料ガス供給路108では熱交換を十分するだけの熱交換面積が足りないので、単独では、温度制御ができないので、補助的熱交換手段として用いて、温度制御が容易な熱交換部Hex1を主な熱交換手段として用いている。
【0021】
仮に、原料ガス供給路108に十分な吸熱(原料ガスの昇温)能力を持たせてしまった場合について考える。上述のように、原料ガス供給路108は一酸化炭素浄化器104(変成器105)の長さ方向に延在させるという構造的制約があるために、原料ガス供給路108自体では吸熱量を減少するように制御できない。よって、意に反して、原料ガスを過剰に加熱してしまうことが起こりえる。この場合、過熱された原料ガスを冷却する必要が生じるが、そのために本来不必要な設備や工数を要求されるばかりでなく、原料ガスの加熱のために変成器105から吸収された熱が無駄である。つまり、本発明においては、構造的制約を有する原料ガス供給路108の吸熱能力を、原料ガスを所望の温度に加熱するのに必要とされる最低限より小さく設定しておき、不足する加熱能力は構造的制約のない変成熱交換部Hex1の吸熱能力を制御することによって、原料ガスの安定加熱をはかっているとも言える。
【0022】
原料ガス供給路108及び変成器105と熱交換部Hex1とが熱交換可能な構成となるように接触するか、または隣接しているとは、熱的に接触、または隣接していることを意味する。物理的に接触、または隣接していても間に断熱材料が挟まれるなどして、熱的に遮断されることがないようにする。また隣接する場合は、原料ガス供給路108及び変成器105と熱交換部Hex1との距離が、2mm以下であることが好ましい。さらに、原料ガス供給路108の熱交換部Hex1は、所定の中心角θが約300°以上の円弧となるように変成器105の外周に沿って巻かれるように配設されることが好ましい。なお、このように、熱交換部Hex1が変成器105の外周に沿って巻かれる中心角度θを熱交換部Hex1の巻回角θと呼ぶものとする。
【0023】
上述のような、原料ガス供給路108の熱交換部Hex1の配置は、変成器105と水添脱硫器103に充填される各々の触媒がCuZn系といった同種である場合に、制御温度が変成器105と水添脱硫器103のそれぞれにおいて150℃から350℃と同領域となるため特に有効である。熱交換部Hex1で変成器105と十分に熱交換させることで、水添脱硫器103に通流させる原料ガス温度を最適な温度に近づけることができる。また、水添脱硫器103に充填される触媒の制御温度が変成器105に充填された触媒の制御温度よりも高温である場合は、変成器105の下方にある改質器102に原料ガス供給路108の熱交換部Hex1を接触または隣接させることで、水添脱硫器103に供給する原料ガス温度を適切な範囲の値にできる。
【0024】
このように、原料ガス供給路108と原料ガス供給路108の熱交換部Hex1とを一酸化炭素浄化器104(変成器105)の外周に沿って配置することにより、原料ガス供給路108と熱交換部Hex1とが一酸化炭素浄化器104と熱交換可能な構成とすることで、水添脱硫触媒の温度を適切に保ち反応を良好にすることができる。つまり、このように、150℃〜350℃の温度範囲内にある一酸化炭素浄化器104(変成器105)から、原料ガス供給路108と熱交換部Hex1は熱交換、つまり熱を貰って昇温することができる。しかしながら、水添脱硫器103に供給される原料ガスの温度は好ましくは、200℃〜280℃である。また、原料ガスは水添脱硫器103の内部で、改質反応熱によりさらに昇温される。これらの状況を勘案して、水添脱硫器103に供給される原料ガスの温度が所定の温度(200℃〜280℃)になるように、熱交換部Hex1の巻回角θが決定される。
【0025】
(実施の形態2)
図3に、本発明の実施の形態2に係る水素生成装置の外観を部分的に示す。水素生成装置GH2の水素生成装置本体101bは、実施の形態1に係る水素生成装置本体101と基本的に同様の構成である。しかし、水素生成装置本体101においては、原料ガス供給路108と原料ガス排出路110とは互いに離間しているが、実施の形態2では、原料ガス供給路108と原料ガス排出路110とが接触または隣接する位置に配されている。具体的には、原料ガス供給路108と原料ガス排出路110とが、一酸化炭素浄化器104の同一側(図3においては左側)において接触または隣接しているが、このような配置に限られるものではない。このように本実施の形態においては、熱交換部Hex2は、実施の形態1の熱交換部Hex1と同様に変成器105から吸熱(熱交換)し、原料ガス供給路108は実施の形態1とは異なり原料ガス排出路110からも吸熱(熱交換)可能に構成されている。
【0026】
本実施の形態においては、原料ガス排出路110の熱を有効に利用することを目的の一つにしている。つまり、原料ガス排出路110のガスは、排出されるガスの露点より高く凝縮しないような高温(60℃以上)である。排出されるガスの熱を変成反応に有効に利用するため、排出ガスから熱をできる限り取り去る(排出されるガスの温度を下げる)ことを意図している。この観点より、原料ガス供給路108は、変成器105と原料ガス排出路110との両方と熱交換可能に構成されている。
【0027】
具体的には、原料ガス供給路108内を通流された原料ガスは、水添脱硫器103を介して硫黄化合物を取り除かれた後、原料ガス排出路110から改質器102に通流させる経路に送られる。原料ガス排出路110から出た原料ガスは最適な反応制御温度に加温される。特にCuZn系の触媒を用いる場合、約150℃から約350℃と高温となる。そのため、原料ガス排出路110が長ければ外気への放熱により原料ガス排出路110を通流する原料ガスの熱量が取り去られるため、この熱量を、水添脱硫器103に供給される原料ガス温度の調整に、十分に利用できない。
【0028】
熱利用を十分に行うためには、原料ガス排出路110を通流する原料ガスの熱量を原料ガス供給路108または変成器105へ供給する必要がある。また、原料ガス供給路108も同様に、長さが短いほど放熱が少なくなり熱を効率的に使える。したがって、図3に示すように、水素生成装置GH2の、原料ガス供給路108と原料ガス排出路110とを接触または隣接させ熱交換を行い、原料ガス供給路108を通流する原料ガスの温度を上げることは効果的である。上述のように、本実施形態においては、原料ガス排出路110内を流れるガスの熱を奪うことを目的の一つにしている。つまり、変成器105を流れるガスの温度は200℃〜350℃と高温である一方、原料ガス供給路108内を流れるガスは常温に近い低温である。よって、水添脱硫器103から返ってくるガスの温度を排出ガスの露点よりは高い60℃まで下げるために上述の如く構成されている。
【0029】
原料ガスの流量が約15NLM以下であれば、原料ガス供給路108と原料ガス排出路110との接触または隣接させる長さは50mm以上であることが好ましい。原料ガス供給路108と原料ガス排出路110とを隣接させる場合は、両者の間の距離は2mm以内であることが好ましい。このように、原料ガス供給路108と原料ガス供給路108の熱交換部Hex2とを一酸化炭素浄化器104の外周に沿って配置することにより、原料ガス供給路108と熱交換部Hex2とが一酸化炭素浄化器104と熱交換可能な構成とし、さらに、原料ガス供給路108と原料ガス排出路110を接触または隣接させて配置することにより、水添脱硫触媒の温度を適切に保ち反応を良好にすることができる。
【0030】
なお、本実施の形態においては、原料ガスは150℃〜350℃まで加熱/昇温され得る。しかし、原料ガス排出路110との熱交換で、原料ガス供給路108中の原料ガスは予熱(大体50℃〜100℃温度上昇)されるため、変成器105との熱交換面積を小さくし、水添脱硫器103の入口での温度を適切に保つことが必要である。例えば、実施の形態1では、変成器105に巻きつける巻回角θを300℃以上としているが、それよりも小さくすることが適当である。
【0031】
(実施の形態3)
図4に、本発明の実施の形態3に係る水素生成装置の内部構造を示す。水素生成装置GH3の水素生成装置本体101cは、実施の形態1に係る水素生成装置本体101と基本的に同様の構成である。しかし、水素生成装置本体101においては、変成器105と水添脱硫器103とは互いに離間しているが、実施の形態3では、水添脱硫器103cの一部が変成器105の外周に接触または隣接するように配されている。このように構成すると、水添脱硫器103cと変成器105とを熱交換させることにより、水添脱硫器103cの温度を適切に保ち、水添脱硫触媒の温度を適切に保つことができる。
【0032】
水添脱硫器103cは、その一部分が変成器105の外周に接して配設され、水添脱硫器103cの当該一部分以外の部分が改質器102の位置する外周に断熱材107cを介して接して配設される。原料ガス供給路108内を流通された原料ガスは、変成器105で予熱された後に水添脱硫器103cに通流される。しかしながら、水素生成装置本体101cを起動する際や水素生成量を変化させる運転負荷変動時、特に原料ガス流量を急激に増加させる場合には、原料ガスを十分に加温するために、原料ガス供給路108と熱交換部Hex1との変成部105との熱交換にて、水添脱硫器103cと変成器105とが熱交換される。これにより、総熱交換量が多くなり、水添脱硫器103cの温度をより適切に保つことができる。
【0033】
特に変成器105に封入される触媒と水添脱硫器103cに封入される触媒が例えばCuZn系触媒などの同系の触媒となる場合、制御温度の範囲が夫々近いためより効果的である。このように、原料ガス供給路108と原料ガス供給路108の熱交換部Hex1とを一酸化炭素浄化器104の外周に沿って配置することにより、原料ガス供給路108と熱交換部とが一酸化炭素浄化器104と熱交換可能な構成とし、さらに、水添脱硫器103cの一部が変成器105の外周に接触または隣接するように配することにより、水添脱硫触媒の温度を適切に保ち反応を良好にすることができる。本実施の形態において、150℃から350℃の反応温度で運転している一酸化炭素浄化器104(変成器105)から吸熱して、150℃から350℃の範囲内に昇温/加熱され得るが、昇温後の温度は200℃〜280℃が好ましい。
【0034】
(実施の形態4)
図5に、本発明の実施の形態4に係る水素生成装置の外観を部分的に示す。水素生成装置GH4の水素生成装置本体101dは、実施の形態1に係る水素生成装置本体101と基本的に同様の構成である。しかし、実施の形態4では、熱交換部Hex4は変成器105と水添脱硫器103の外周に接触または隣接させて配設されている。このように構成すると、熱交換部Hex4を、水添脱硫器103と変成器105との双方と熱交換させることにより、水添脱硫触媒の温度を適切に保つことができる。
【0035】
水添脱硫器103は、水素生成装置本体101dの一酸化炭素浄化器104が位置する下方、かつ改質器102が位置する外周に断熱材107を介して配設される。原料ガス供給路108の、変成器105の外周に沿って変成器105と水添脱硫器103とに接触または隣接する部分を、原料ガス供給路108の熱交換部Hex4と呼ぶ。原料ガス供給路108は、熱交換部Hex4を、変成器105と水添脱硫器103との外周に沿って接触または隣接させて、変成器105及び水添脱硫器103と、原料ガス供給路108と熱交換部Hex4とが熱交換可能な構成となるように配される。
【0036】
原料ガス供給路108の熱交換部Hex4を水添脱硫器103と熱交換させることにより、水添脱硫器103から放熱される熱量の一部を原料ガス供給路108の熱交換部Hex4を通流する原料ガスに戻すことができ熱を有効利用できる。原料ガス供給路108の熱交換部Hex4からも放熱は生じるが、水添脱硫器103よりも原料ガスの上流側に位置するためと水添脱硫器103と比して低温であるため放熱量は小さくより放熱量を小さく抑えられるという効果を有する。
【0037】
このように、一酸化炭素浄化器104の外周に沿って、原料ガス供給路108と熱交換部Hex4とを熱交換可能な構成とし、さらに、熱交換部Hex4を変成器105と水添脱硫器103の外周に接触または隣接させて配設することにより、水添脱硫触媒の温度を適切に保ち反応を良好にすることができる。本実施の形態における吸熱(熱交換)対象は、一酸化炭素浄化器104(変成器105)及び水添脱硫器103であり、吸熱対象の温度は両方とも150℃から350℃である。つまり、水添脱硫器103の熱を原料ガスに与えることで、一酸化炭素浄化器104単独の場合に比べてより原料ガスの温度を上げることができる。
【0038】
原料ガスの昇温は、熱交換部Hex4の巻き方により変わるが、好ましくは水添脱硫器103に入る原料ガスの温度を200℃〜280℃にすることである。また、水添脱硫器103の熱を原料ガスに戻しているため、水添脱硫器103の温度上昇が、実施の形態l及び2よりも上がりにくく、より適切な温度状態を保つことができる。
【実施例1】
【0039】
次に、図6及び図7を参照して、実機運転を行った際に実機を通流するガス温度の測定結果について述べる。なお、実機運転とは、上述の実施の形態1に係る水素生成装置GH1の構成を用いて、実際の燃料電池システムを運転した時の状態をいう。図6において、点A,B、C、D、E、F、及びGは、それぞれ実機において、通流するガスの温度を測定した場所、つまり測定点を示している。具体的には、測定点A及びBは原料ガス供給路の両端部における点である。測定点C、D、及びEは水添脱硫器の触媒中で、原料ガス供給路側端部から他端部側の間の、所定の間隔で離間した点である。測定点F及びGは変成器の触媒内部で両端部側の点である。
【0040】
実機試験の条件は、水素生成装置に対して、原料ガスとして都市ガスを流量2.96NLMで、水を7.8cc/minで、燃焼空気を18.3NLMで、S/C(水蒸気とカーボン比率)が2.8で、改質触媒の制御温度を630℃である。原料ガスに混合させる改質器で生成した水素含有ガスを300CCMと設定した。また、原料ガスの流入温度は常温である22℃とした。触媒は、変成触媒および水添脱硫触媒はCuZn系を用いており、夫々の触媒の制御温度は150℃から300℃とする。
【0041】
図7に、各測定毎の測定されたガスの温度を示す。図7(a)において、点Ta及びTbは原料ガス供給路の両端部での測定点A及びBにおける測定温度を示している。線L1は、測定点A及び測定点B間での温度勾配を表している。具体的には、測定点Aでのガス温度Taは22℃であり、測定点Bでのガス温度Tbは237℃であった。
【0042】
図7(b)において、点Tc、Td、及びTeはそれぞれ、水添脱硫器の触媒中の測定点C、D、及びEの温度、つまり触媒温度を示している。線L2は、測定点C、D、及びE間での温度勾配を表している。具体的には、測定点Aでの触媒温度Tcは207℃であり、測定点Dでの触媒温度Tdは235℃であり、測定点Eでの触媒温度Teは274℃であった。
【0043】
図7(c)において、点Tf及びTgはそれぞれ、変成器の触媒中の測定点F及びGの温度、つまり触媒温度を示している。線L3は、測定点Tf及び測定点Tg間の温度勾配を表している。具体的には、測定点Fでの触媒温度Tfは258℃であり、測定点Gでの触媒温度Tgは178℃であった。
【0044】
上記測定結果より、以下の事実が確認される。つまり、常温で投入された原料ガスは、原料ガス供給路を通流する間に変成器の上流の測定点Fでは、258℃の温度帯で熱交換されて、22℃(Ta)から測定点Bに到達した時点で、237℃(Tb)に昇温される。そして、水添脱硫器入口の測定点Cで207℃(Tc)に下がるが、中流の測定点Dで235℃(Td)を経て、出口の測定点Eで274℃(Te)まで昇温される。水添脱硫器入口の測定点Cで207℃(Tc)が測定点Bで237℃(Tb)に比べ30℃温度低下しているのは放熱による影響と考えられる。しかしながら、本発明の構成により、水添脱硫器の入口側から触媒の仕様温度を満足できる構成となっていることがわかる。このことから、本発明は効果的であることがわかる。
【0045】
なお、上述の如く、水素生成装置GH1〜GH4(必要に応じて、水素生成装置GHと総称)の各部はそれぞれ所定の温度範囲で運転されている。具体的には、改質器102は600℃〜700℃、一酸化炭素浄化器104(変成器105)は80℃〜200℃、及び水添脱硫器103は200℃〜400℃である。つまり、各部はそれぞれ所定の温度範囲内で任意の温度になり得る。よって、各部の温度によっては、原料ガスは水添脱硫器103の入り口での温度と同一することができない。
【0046】
詳しくいえば、熱交換部Hexや原料ガス供給路108の吸熱対象が、原料ガスの望まれる温度より高い場合には、熱交換部Hexや原料ガス供給路108を工夫(例えば、熱交換部Hexの巻回角θの調節他)で吸熱量を制限することで、原料ガスの必要以上の加熱を防止して、好ましい温度にすることができる。この場合、原料ガスと水添脱硫器103の内部とは温度差が無い、つまり均一な温度で改質できるという効果を奏する。
【0047】
しかしながら、吸熱対象の温度が原料ガスの望まれる温度より高い場合には、原料ガスは好ましい温度まで加熱することができない。この場合、原料ガスと水添脱硫器103の内部とは温度差があるが、水添脱硫器103の内部温度との差は、従来の技術における差に比べて55℃も減少する。このような、温度差の緩和によって、水添脱硫器103に内部の均熱帯が崩壊も緩和され、その部分が過度の冷却が防止される。結果、水添脱硫器103における脱硫反応が損なわれたり、最悪の事態では熱衝撃により水添脱硫器103が損傷したりするのを防止できるという効果を奏する。
【0048】
なお、上述の実機運転においては、図6の測定点A及と測定点Bとの距離を200mm、原料ガス排出路110及び原料ガス供給路108は2mmの間隔をあけて設置されている。熱交換部Hex2の巻回角θは300°であり、半径は140mmである。変成器105と熱交換部Hex2も2mmの間隔をあけて設置されている。結果、22℃の原料ガスを原料ガス供給路108に供給した場合でも、水添脱硫器103の入り口では207℃となっておいる。なお、従来の水素生成装置で、22℃の原料ガスは変成器105で22℃かそれに極めて近い温度になる。
【0049】
本発明にかかる水添脱硫器を備えた水素生成装置は、水素生成装置と、当該水素生成装置より供給される水素含有ガスを用いて発電する燃料電池とを備える燃料電池システムに適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明にかかる水添脱硫器を備えた水素生成装置は、PEFC(固体高分子形燃料電池)やSOFC(固体酸化物形燃料電池)に水素を供給する水素生成装置に利用できる。
【符号の説明】
【0051】
GHc、GH1、GH2、GH3、GH4 水素生成装置
Hex1、Hex2、Hex4 熱交換部
101、101b、101c、101d 水素生成装置本体
102 改質器
103、103c 水添脱硫器
104 一酸化炭素浄化器
105 変成器
106 選択酸化器
107、107c 断熱材
108 原料ガス供給路
109 原料ガス入口ヘッダー
110 原料ガス排出路
201 水素生成装置本体
202 変成器
203 改質器
204 水添脱硫触媒
205 外筒
206 内筒
207 上面板
208 底面板
209 仕切り板
210 上側ヘッダー
211 下側ヘッダー
212 原料ガス排出管
213 原料ガス供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスを用いて改質反応により水素含有ガスを生成する筒状の改質器と、
前記改質器で生成された水素含有ガス中の一酸化炭素を低減する筒状の一酸化炭素浄化器と、
前記改質器の外周に設けられ、前記原料ガス中の硫黄化合物を除去する筒状の水添脱硫器と、
前記水添脱硫器に供給される原料ガスが流れる原料ガス供給路とを備え、
前記原料ガス供給路は、前記一酸化炭素浄化器の外周面に沿って熱交換可能に配設されていることを特徴とする水素生成装置。
【請求項2】
前記原料ガス供給路は、前記一酸化炭素浄化器の中心軸に平行に延在する第1の熱交換部と、外周方向に所定の中心角で規定される長さだけ延在する第2の熱交換部とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の水素生成装置。
【請求項3】
前記第2の熱交換部は、前記一酸化炭素浄化器と前記水添脱硫器にまたがって延在することを特徴とする、請求項2に記載の水素生成装置。
【請求項4】
前記水添脱硫器から排出される原料ガスが流れる原料ガス排出路をさらに備え、
当該原料ガス排出路は、前記第1の熱交換部と熱交換可能に配設されていることを特徴とする請求項2に記載の水素生成装置。
【請求項5】
前記水添脱硫器は、前記一酸化炭素浄化器の外周に設けられていることを特徴とする、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の水素生成装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の水素生成装置と、前記水素生成装置より供給される水素含有ガスを用いて発電する燃料電池とを備える、燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−23421(P2013−23421A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161301(P2011−161301)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】