説明

水素発生デバイス及び該水素発生デバイスを用いた燃料電池

水素化物の加水分解により水素を発生するデバイスであって、固体状であり、分離した状態または分離していない状態の水素化物(22、32)を含み、及び生成された水素を取り除くための少なくとも1つのオリフィス(27、37)を備える反応装置(28、38)と、加水分解反応に必要な水(24、34)を放出するための手段と、加水分解反応に必要な水(24、34)から水素化物(22、32)を分離するのに適した少なくとも1つのエンベロープ(23、33)であり、消費材から作られる前記エンベロープ(23、33)とを備える。前記加水分解反応の部位としての機能を果たすこと可能であり、且つ、前記エンベロープを構成する材料が加水分解反応生成物によって消費される際に、前記反応装置内を移動することが可能であるサイトにおいて、前記エンベロープは水と水素化物を接触させるのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水素発生デバイスを提供するものであって、特に水素ガスを発生するためのデバイスに関する。既知の方法において、この生成物はホウ化水素の加水分解によって得ることが出来る。
【0002】
本発明は特に固体高分子型燃料電池(PEMFC:Proton Exchange Membrane Fuel Cells)型の燃料電池の発生器の利用に関する。さらに、この利用に関連して、本発明はポータブル電気または電子デバイス、すなわち、低い電力を必要とするデバイスに電気を供給するための燃料電池に関する。しかし本発明は、高容量の燃料電池に水素を供給するために利用することが出来る。
【背景技術】
【0003】
燃料電池は非汚染であり、及び特に自動車における炭化水素燃焼の代替エネルギー源である。燃料電池は還元燃料の酸化によって発生される電気を用いたバッテリーである。この還元材料は、例えば、電極上の水素であり、もう一方の電極上における空気中の酸素のような酸化剤の還元と結び付けて考えられる。この水素酸化反応は、一般的に金属元素を含む触媒を利用することにより、促進させることが出来る。
【0004】
しかし、水素、極めて可燃性の高い生成物を用いた燃料電池の場合、主な障壁の1つとして、この生成物及び/又はこの燃料の貯蔵がある。これが、今日の技術上の判断において、セルのアノードにおいて直接酸化される液体燃料、または“要求どおりに”、すなわちセルによって消費される水素量が発生される水素量と等しい水素を発生することが出来る液体または固体燃料が好まれる理由である。
【0005】
水素を生成する既知の方法の1つとして、溶解し及び固体触媒材料と接触反応する水素化ホウ素ナトリウムまたはテトラヒドロホウ酸ナトリウム NaBH のような固体ホウ化水素の加水分解がある。水素化ホウ素ナトリウムは、ある状態化において以下の反応によって加水分解される。
M(BH+2nHO→M[B(OH)+4nH
Mはアルカリまたはアルカリ土類元素であり、nは元素Mの価電子の数と等しい正の整数である。前記元素Mは、例えばナトリウム(Na)であり、この場合nは1であり、以下の反応を生じる。
NaBH+2HO→NaB(OH)+4H
また、元素Mはカリウム(K)、リチウム(Li)または他の適当な元素であってもよい。
【0006】
例えば、それぞれ燃料としてメタノール及びギ酸を用いる直接メタノール型燃料電池(DMFC)またはギ酸燃料電池(FAFC)において生じる反応とは対照的に、ホウ化水素の加水分解反応は、無害な、すなわち非毒性、非汚染な試薬及び残留物を含むという利点を持つ。
【0007】
この反応スキームに従うと、一般に利用される水素化ホウ素ナトリウムは、2モルの水とともに反応することにより4モルの水素を発生する。
【0008】
加水分解反応の収率を向上させるために、いくつかの従来技術の反応装置では、固体の、例えば分離した状態すなわち粉体形状のホウ化水素を利用している。この時、固体のホウ化水素を望ましくは触媒材料を含む水溶液に接触させることにより、水素が発生される。
【0009】
しかし、このタイプの水素発生器はその利用が複雑であるという欠点を持つ。固体のホウ化水素と水溶液との間の反応を制御することが難く、それ故に発生された水素の流れを制御することが難しい。
【0010】
実際には、水がホウ化水素に拡散するメカニズムを必要とするため、液体及び固体状態の試薬を含むこの不均一な反応を制御することは難しい。
【0011】
この拡散メカニズムは、反応媒体の多孔性(porosity)に強く依存し、程度の差はあるが凝集副産物(compact by−products)を形成するため、加水分解反応の進行に伴って変化する。これにより、浸透性の膜を横切る拡散による試薬の接触を提供する特許文献1、特許文献2、特許文献3、及び特許文献4に記載のデバイスにおいて、加水分解反応の速度制御が困難になる。実際に、このような膜は、化合物NaB(OH)のような凝集反応生成物(compact reaction products)による影響を受けやすい。
【0012】
さらに、これらの反応凝集副産物は、しばしば固体のホウ化水素を含む反応装置内の取水経路を妨害する。その結果、この取水の妨害の程度により、反応速度(reaction kinetics)は不安定になりやすい。この問題解決のために装置がさらに重く及び高価になることを避けるために、反応を最大限制御することより水素発生を最適化することが必要である。
【0013】
特許文献5及び特許文献6にも水素発生器が記載されており、これら明細書において、試薬は様々なポイントで接触し、よって反応は広い交換反応領域にわたってほぼ同時に全面的に開始及び発生するので、加水分解反応は正確に制御されないことが記載されている。
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0182459号明細書
【特許文献2】国際公開第05/102914号パンフレット
【特許文献3】米国特許第4261956号明細書
【特許文献4】米国特許第4261955号明細書
【特許文献5】国際公開第02/030810号パンフレット
【特許文献6】米国特許出願公開第2001/045364号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、従来技術の欠点を持たない水素発生器を提案することである。従って、本発明の主題は、水素化物の加水分解により水素を発生するデバイスであって、反応速度を良好に制御でき、それ故に発生された水素の流れを制御でき、一方、取水の妨害のリスクを避けることが出来るデバイスを提供することである。
【0015】
従って、本発明は水素化物の加水分解によって水素を発生するデバイスに関するものであって、
− 分離された状態又は分離されていない状態の固体の水素化物を含み、生成された水素を取り除く少なくとも1つのオリフィスを備える反応装置と;
− 加水分解反応に必要な水を放出するための手段と;
− 加水分解反応に必要な水から水素化物を分離するのに適した少なくとも1つのエンベロープであり、消費材(consumable material)から作られるエンベロープと、
を備える。
【0016】
本発明により、前記加水分解反応の部位(seat)としての機能を果たすことが可能であり、且つ、前記エンベロープを構成する材料が加水分解反応生成物によって消費される際に、前記反応装置内を移動することが可能であるサイト(site)において、前記エンベロープは水と水素化物を接触させるのに適している。
【0017】
言い換えると、水溶性または分散性である消費材は、一時的に水素化物を分離することによって水から保護し、その後、前記消費材は反応中に消滅する。本発明に関連し、エンベロープは、試薬の1つを囲み及び覆う1つ(またはそれ以上)の材料を意味する。従って、この定義は、用語“エンベロープ”の一般的な意味に直接関連する。
【0018】
本発明の第1実施形態によると、反応装置はさらに、反応装置に水を運ぶためのエンベロープによって形成されるラインと一致する少なくとも一つのオリフィスを備える。
【0019】
言い換えると、取水経路は反応装置に挿入され、水素化物が消費されるにつれ、加水分解反応生成物によって溶解される。従って、この反応が進むにつれ、このパイプは短くなる。
【0020】
本発明の第2実施形態によると、反応装置は、そこに含まれる全ての水素化物を加水分解するのに必要な量の水を含む。この水は、消費材から作製されたエンベロープによって前記水素化物から分離される。また一方、このエンベロープは水素化物を含むが水を含まず、さらに、デバイスを使用する前に、水に分散され得るが溶解し得ない材料からなるライニング材によって大部分が覆われる。言い換えると、ライニング材は浸漬されたエンベロープを不浸透状態にし、早期の溶解から保護する。
【0021】
実際には、このエンベロープはシリンダーまたは円錐の形状を持ち、円形または多角形の基部を持つ。このような形状は制御された流量の取水を形成するのに適しており、及び前記の所定の形状を持つエンベロープの消費時間を予測するのに適している。従って、これらの形状は、水素流量を正確に制御する機能を果たす。
【0022】
本発明の特定の実施形態によると、水素発生器は、同様のまたは同様でない形状を持ち、反応装置内に分布する多数のエンベロープを持つ。これは、流量が制御された反応装置内において、水の注入口の数を増やすことにより、加水分解反応の制御性をさらに改善する役目を果たす。
【0023】
水素化物は、テトラヒドホウ酸ナトリウム(NaBH)、テトラヒドホウ酸マグネシウム(Mg(BH)、及び水素化リチウム(LiH)、からなる群から有利に選択される。これら3つの化合物は非汚染反応残留物を生成する。これらは高い水素発生能力を持つ。テトラヒドホウ酸ナトリウム NaBH は、生成が容易でありかつ安価であるので、最も好都合である。
【0024】
水素化物はLiBH、Al(BH、Be(BH、MgH、CaH、Ca(AlH、Zr(BH、Ca(BH、NaAlH、KBH、LiAlHからなる群から選択してもよい。
【0025】
実際には、本発明のエンベロープを構成する消費材は、塩基性媒体の存在下において腐食する金属材料、または劣化する有機材料から形成してもよい。よって、水素化物の加水分解の間、付随する水酸化物イオンの発生によりこの材料は消費される。
【0026】
有機材料はポリアミド、ポリカーボネート、PET(ポリエチレン テレフタラート)、ポリエステル、PVDF(フッ化ビニリデン樹脂)、PBT(ポリブチル テレフタラート)からなる群から選択してもよい。
【0027】
この材料は、前記反応生成物の作用下において溶解することにより、水素をもまた生成する材料であってよい。この第2の水素生成反応は、反応装置内で生成される水素の総量を増加させ、よって発生器の重さに対する水素生成の割合を改善するのに役立つ。
【0028】
実際には、この材料はアルミニウムまたはアルミニウム合金でよい。実際に、アルミニウムは加水分解反応によって生成される水酸化物イオンによって腐食される。その結果、以下の反応によって水素及びアルミナは生成される。
2Al+6OH→Al+3H
【0029】
付加的な水素の発生に加え、この反応は水酸化物イオンが消費されることにより、pHを低下するという利点を持ち、主である水素化物の加水分解反応を減速しうる。
【0030】
本発明の特定の実施形態によると、触媒は、水に溶解された塩の形、または水素化物内に分散された固体粒子の形で反応装置に導入される。この触媒は、反応の収率増加に役立ち、存在する試薬の1つの中に直接追加されることで、反応装置への特別な導入を回避し、従って発生器の利用を単純化する。
【0031】
具体的には、この触媒を構成する元素は、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、金(Au)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、レニウム(Re)、ロジウム(Rh)、チタニウム(Ti)、バナジウム(V)、及びセリウム(Ce)からなる群から選択してもよい。もしこれらの金属の1つまたはそれ以上が触媒粒子の形成に利用された場合、水素化物の加水分解によって発生される水素は良好な反応収率に達することが出来る。
【0032】
本発明の実用的な実施形態によると、反応装置内の水素化物と水の量は選択され、本発明のエンベロープの特徴は所定の水素流量を作り出すための特定の寸法とされる。
【0033】
本発明は、電界液、アノード及びカソードを備える燃料電池にも関連し、この燃料電池の酸化剤は酸素(O)であり、及び還元剤は加水分解によって生成される水素(H)である。本発明によると、前述したように、水素化物の加水分解によって水素を発生するためのデバイスを備える。
【0034】
本発明は、以下特定の実施形態の記述を考慮することによって、より明確に表現されるだろう。しかし、本発明の主題はこれらの特定の実施形態に制限されるものではなく、本発明の他の実施形態も想起され得るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1に、本発明の対象となる、ポータブル電子デバイスに電力を供給するための燃料電池1を備えるシステムの略図を示す。本実施形態においてポータブル電子デバイスは携帯電話2である。携帯電話2に運ぶ電流を安定させるために適当なバッファバッテリーと呼ばれるバッテリー3を経由して電力供給が行われる。通常、燃料電池1は電解液、アノード及びカソードを備える。酸化剤として酸素ガス(O)、及び還元剤として本発明による発生器5を利用して生成される水素ガス(H)を利用する。従って、記述した電池は特に低電力のデバイス、すなわち、通常1Wから100Wを必要とするデバイスに電力を供給してもよい。
【0036】
図1の例では、発生器5は燃料貯蓄部4’を備える。この燃料貯蓄部4’は、電池1内に設けられた適当なハウジング4内で、2つの適合部6及び7を持つクイック連結部(quick coupling)を介して接続されている。
【0037】
図2aから図2cに、本発明の第1実施形態を示す。本実施形態によると、発生器は反応装置28を備える。反応装置の本体は水素生成反応の部位を収容している。反応装置28の本体は、生成された水素ガスを取り除くためのオリフィス27を持つ。水素を燃料電池1に運ぶ経路はこのオリフィス27に取り付けられることが出来る。
【0038】
反応装置28の本体は、粉末を集めた状態の固体である水素化ホウ素ナトリウム22を含む。水素化ホウ素ナトリウム NaBH は反応装置28の本体の大部分の空間を占め、ここで、加水分解反応によって生成される水素を取り除くためのオリフィス27を妨げない。
【0039】
本発明の範囲を超えることなく、マグネシウム(Mg)(化学式Mg(BH)のような他のアルカリまたはアルカリ土類元素のホウ化水素を利用することも出来る。これらの化合物は水素発生反応の収率増加に役立つ。さらに、これらホウ化水素は無害であり、すなわち非汚染及び非毒性であるため、これらの利用には、特別な安全対策を必要としない。
【0040】
加水分解反応の収率を増加させるため、反応に利用する水に溶解させた塩の形にて触媒を反応装置28に導入する。水素化物22の中に分散された固体粒子形状である触媒を導入することも可能である。存在する試薬の1つに直接触媒を追加することによって、反応装置への導入を分けて行うことを避け、自動的に発生器の利用を単純化する。
【0041】
この触媒は、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、金(Au)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、レニウム(Re)、ロジウム(Rh)、チタニウム(Ti)、バナジウム(V)、及びセリウム(Ce)からなる群から選択してもよい。
【0042】
さらに、本発明によるデバイスは、加水分解反応に必要となる水24を放出するための手段を備え、前記手段は反応装置28に水24を運ぶ機能を果たす。図2の例では、前記手段は、図示しないバルブによって制御される取水24のための経路21からなる。この経路21は、反応装置28の壁内に形成されたオリフィス29を経由して、経路23において終了する。経路23の機能の1つは、加水分解反応の部位に水24を運ぶことである。
【0043】
この経路23は、円形基部を持つシリンダー形のエンベロープによって形成される。このシリンダー形のエンベロープは、加水分解反応を提供する部位を除いた、反応装置28内に収容される水素化物22から運ばれる水24を分離する役目を持つ。実際は、その名の通り、エンベロープまたは経路23は、試薬の1つ、本実施形態においては水24を取り囲み、覆い、“保護する(protects)”。従って、経路23は、水素化物22を収容し及び取り囲むために中空形状を有する。
【0044】
本実施形態において、経路23を形成するエンベロープはアルミニウムから作られる。この金属は、水素化物の加水分解反応によって得られる特定の塩基性媒体中において腐食することが知られている。これは、加水分解反応により水酸化物イオン(OH)が形成されるためである。従って、前記加水分解反応の結果生じるpHは、およそ11の値に達してもよい。
【0045】
水酸化物イオンの作用下において、アルミニウムが腐食し及び溶解した時、以下反応によって水素だけでなくアルミナも生成される。
2Al+6OH→Al+3H
【0046】
その結果、この水素生成“サイド(side)”反応により、反応装置内で生成される水素の総量が増加し、対応して、発生器の重さに対し生成される水素の割合、いわば、反応の“質量の効率(mass efficiency)”が改善する。
【0047】
さらに、この反応は、水酸化物イオンを消費することにより、反応部位のpHを低下させる利点を持ち、これにより、主である水素化物の加水分解反応を減速させうる。従って、アルミニウムの腐食下におけるこの水酸化物イオンの消費によるpHの低下により、水素の生成のばらつきを回避する。
【0048】
発生器の構造により、このアルミニウムの腐食は、経路23を形成するエンベロープを進行的に消費するという結果をもたらす。従って、本発明の1つの特徴によると、このエンベロープは加水分解に必要な水24を部分的にかつ進行的に放出する。
【0049】
まず第1に、水24の放出は“局部的な(localized)”ものであるが、これは経路23の26の端部においてのみ発生するためであり、反応装置内のこの位置は、上述したアルミニウムの消費に伴って変化する。言い換えると、この形容詞“局部的な”は相対的に限られた反応交換領域を示し、具体的にはエンベロープ23の長さに関する。
【0050】
実際には、水24の放出位置は反応装置28内で変化するが、経路の消費によって、水24の放出は常に加水分解反応が起こる、すなわち、水素化物の消費が進む領域に位置する。その結果、従来技術のデバイスとは異なり、経路23は加水分解反応から生じる生成物25によって妨害されることはなく、これにより 凝集物の均一性(compact consistency)を有する場合がある。
【0051】
第2に、この水24の放出は進行的である。なぜならば、加水分解反応生成物によってエンベロープが進行的に消費されることにより生じるからである。従って、加水分解反応の進行により水酸化物イオンが生成されるにつれ、エンベロープは消費される。その結果、まだ加水分解されていない水素化物22の領域に向かって進む反応の部位に伴い、この端部26は進行的に移動する。
【0052】
エンベロープ23は、自身の腐食による消費が、水素化物の加水分解に一致するような寸法とされる。例として、アルミニウムチューブの厚さ50μmの壁の半分を腐食するには、約3時間かかると予測することが出来る。
【0053】
図3に本発明の別の実施形態を示す。水はもはや反応装置38の外部から運ばれるものではなく、反応装置38の中に直接含まれる。第1の実施形態のように、局部的に加水分解反応が開始される部位は除き、水はエンベロープ33によって水素化物32から分離される。しかし、図2aから2cに示す実施形態に反して、この覆われていない部分を除き、水素化物32はエンベロープ33の中に収容される。
【0054】
前記実施形態のように、分離するエンベロープはアルミニウムから作られる。経路23を形成するアルミニウムと同様に、加水分解反応が進むにつれ、進行的かつ部分的に腐食する。本実施形態では、反応が進むにつれ、加水分解反応を行う部位をより効果的に局部化するために、経路33はコイル状の形を持つ。コイル状を形成するアルミニウムの腐食反応は、先の実施形態に関連して記述したものと同じ特徴と利点を持つ。
【0055】
目的とするサイト、本実施形態ではコイルの端部36の1つに反応を局部化するために、アルミニウムからなるエンベロープ33の大部分上にライニング材39が堆積される。このライニング材39は水に対して不活性な材料の層からなる。本発明に関連し、不活性とは水と接触しても反応せず及び変化しないままである材料を意味する。従って、ライニング材は水に溶解しない。その結果、このライニング材39はその不浸透性により、堆積された領域内において腐食からエンベロープ33を“保護する(protects)”。その結果、反応開始時において、エンベロープ33は、ライニング材39によって覆われておらず及び水素化物32を覆っていない端部36においてのみ局部的に腐食する。従って、浸漬されたエンベロープ33は、早期の溶解、すなわち、予測よりも早い溶解から“保護される(protected)”。
【0056】
従って、エンベロープ33の大部分はライニング材39によって覆われ、総合的に組み合わせたものが水に浸漬される。本実施形態では端部36にて、エンベロープ33が水34と接触した時、前述したような加水分解反応が起こる。
【0057】
第1実施形態の記述とは反対に、本実施形態では、取水は制御され、水は全体に導入され、その結果、加水分解反応が引起こされる。
【0058】
その後、水素化物のために選択された構造により制御された方法で反応は止まることなく継続する。しかし、この反応にて生成される凝集生成物によるライニング材39の妨害を回避するため、ライニング材39は十分に細かな層によって形成され、エンベロープ33によって提供される固体による支持がないときでも水34内での分散が可能である。その結果、エンベロープ33が腐食するにつれて、ライニング材39はそのサポートを失い、従って、小さな粒子状にて水に分散される。これらの粒子は溶解しない。なぜならば、上述したように、ライニング材39を構成する材料は水に溶解しないためである。従って、ライニング材39の厚さは、エンベロープ33を不透過性とする機能と、反応装置38内に含まれる液体中でのライニング材39の必要な分散性とを両立した厚さとされる。
【0059】
従って、本発明では、水34は局部的かつ進行的に水素化物に接触し、加水分解反応生成物による前記エンベロープ33を構成する材料の消費の結果進行する。
【0060】
一旦加水分解反応が開始されると、エンベロープ33が消滅することにより、自動的に進行し、ライニング材または水素化物が完全に消費されるとようやく停止する。
【0061】
本実施形態では、エンベロープ33は円形の基部を備えたシリンダーの形状を持ち、発生経路は“コイル”のような形を形成するために曲がっており、その結果、デバイスの一層の小型化が図られる。
【0062】
さらに第1実施形態のように、加水分解反応の収率を増加させるため、水34または水素化物32に触媒を導入することは都合が良い。
【0063】
図2aから図2c及び図3の例では、経路23またはコイル33を形成するエンベロープは円形の基部を備えたシリンダーの形状を持つが、これらは円錐形でもよく及び/又は多角形の断面を持ってもよい。
【0064】
さらに、単一のエンベロープ22、23は図2aから図2c及び図3にそれぞれ示されるが、本デバイスは、反応装置内に同じまたは異なる形状及び分布を持つそれらを複数備えてよい。これは、反応装置内における制御可能な取水口の数を増やすことによって、反応の制御性をさらに改善するのに役立つ。同様に、複数の“コイル”は反応装置38内に浸漬されることが出来る。
【0065】
これらエンベロープ23、33について、特定の反応装置内におけるこれらの数、形状及び位置の選択は、この発生器に規定される総水素生成時間の関数として、所望の加水分解反応の進行に依存する。同様に、目的の期間の間に所定の水素流量を生成するため、反応装置28、38内に配置される水素化物22、32及び水24、34の量を選択することは都合がよい。
【0066】
上に述べたように、一定の水素流量を得るために、細長く、及び直角な断面と一定の表面積を持つ水素化物コイルを用意することは可能である。図に注目することにより、特に図2bと2cとを比較することにより、エンベロープの中の水素化物の形態が、加水分解反応の部位の移動のための支持部として働くことが容易に理解出来るだろう。このような理由で、進行的な水素化物の加水分解を得るために、この形態は有利なことに細長いものとされている。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】ポータブル電子デバイスに電力を供給するための燃料電池を備えたシステムの略図
【図2a】本発明の第1実施形態による、様々な状態におけるデバイスの略図
【図2b】本発明の第1実施形態による、様々な状態におけるデバイスの略図
【図2c】本発明の第1実施形態による、様々な状態におけるデバイスの略図
【図3】本発明の第2実施形態による、デバイスの略図
【符号の説明】
【0068】
1 燃料電池
2 携帯電話
3 バッファバッテリー
4 ハウジング
4’ 燃料貯蓄部
5 発生器
6、7 適合部
21 経路
22 水素化ホウ素ナトリウム、水素化物
23 経路、エンベローブ
24 水
25 生成物
26 端部
27、29 オリフィス
28 反応装置
32 水素化物
33 エンベローブ
34 水
36 端部
37 オリフィス
38 反応装置
39 ライニング材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化物の加水分解により水素を発生するデバイスであって、
− 固体状であり、分離した状態または分離していない状態の水素化物(22、32)を含み、及び生成された水素を取り除くための少なくとも1つのオリフィス(27、37)を備える反応装置(28、38)と;
− 加水分解反応に必要な水(24、34)を放出するための手段と;
− 加水分解反応に必要な水(24、34)から水素化物(22、32)を分離するのに適した少なくとも1つのエンベロープ(23、33)であり、消費材から作られるエンベロープ(23、33)と;
を備え、
サイトであって、前記加水分解反応の部位としての機能を果たすことが可能であり、且つ、前記エンベロープ(23、33)を構成する材料が加水分解反応生成物によって消費される際に、前記反応装置(28、38)内を移動することが可能であるサイトにおいて、前記エンベロープ(23、33)は水(24、34)と水素化物(22、32)を接触させるのに適していること、
を特徴とする、水素発生デバイス。
【請求項2】
前記水素化物(22、32)は、テトラヒドホウ酸ナトリウム NaBH、テトラヒドホウ酸マグネシウム Mg(BH、テトラヒドホウ酸リチウム LiBH、テトラヒドホウ酸アルミニウム Al(BH、テトラヒドホウ酸ベリリウム Be(BH、テトラヒドホウ酸ジルコニウム Zr(BH、テトラヒドホウ酸カルシウム Ca(BH、テトラヒドホウ酸カリウム KBH、及び水素化物LiH、MgH、CaH、Ca(AlH、NaAlH、LiAlHからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の水素発生デバイス。
【請求項3】
前記エンベロープ(23、33)を構成する材料は、塩基性媒体存在下において腐食する金属材料であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の水素発生デバイス。
【請求項4】
前記エンベロープ(23、33)を構成する材料は、塩基性媒体存在下において劣化する有機材料であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の水素発生デバイス。
【請求項5】
前記有機材料は、ポリアミド、ポリカーボネート、PET(ポリエチレン テレフタラート)、ポリエステル、PVDF(フッ化ビニリデン樹脂)、PBT(ポリブチル テレフタラート)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の水素発生デバイス。
【請求項6】
前記エンベロープ(23、33)を構成する材料は、加水分解反応生成物の作用下における前記材料の溶解によっても水素を生成することを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の水素発生デバイス。
【請求項7】
前記材料は、アルミニウム又はアルミニウム合金であることを特徴とする、請求項6に記載の水素発生デバイス。
【請求項8】
触媒は、前記水(24、34)の中に溶解した塩の形又は前記水素化物(22、32)内に分散された固体粒子の形にて前記反応装置(28、38)に導入されることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれかに1項に記載の水素発生デバイス。
【請求項9】
前記触媒を構成する元素は、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)及び白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、金(Au)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、レニウム(Re)、ロジウム(Rh)、チタニウム(Ti)、バナジウム(V)及びセリウム(Ce)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項8に記載の水素発生デバイス。
【請求項10】
前記反応装置(28、38)は、前記水(24)を前記反応装置(28)に運ぶための前記エンベロープ(23)によって形成されるラインと一致する少なくとも1つのオリフィス(29)をさらに備えることを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の水素発生デバイス。
【請求項11】
前記反応装置(38)は水(34)を含み、
前記エンベロープ(33)は水素化物(32)を含み、前記デバイスを使用する前に、前記水(34)に分散され得るが溶解され得ない材料から作製されたライニング材(39)によって大部分が覆われており、
前記ライニング材(39)及び前記エンベロープ(33)の組合せは前記水(34)の中に浸漬される、
ことを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の水素発生デバイス。
【請求項12】
前記エンベロープ(23、33)は、円形若しくは多角形の基部を持つシリンダー形状または円錐形状を有することを特徴とする、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の水素発生デバイス。
【請求項13】
前記エンベロープ(23、33)は、パイプに類する細長い中空形状を有することを特徴とする、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の水素発生デバイス。
【請求項14】
類似形状または異形状を有するエンベロープ(23、33)を複数備え、該エンベロープが反応装置内(28、38)に分配配置されていることを特徴とする、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の水素発生デバイス。
【請求項15】
電界液、アノード及びカソードを備え、酸化剤は酸素(O)であり、及び還元剤は加水分解によって生成される水素(H)である燃料電池であって、水素化物(22、23)の加水分解によって水素を発生するための請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のデバイス(5)を備えることを特徴とする、燃料電池。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−517311(P2009−517311A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541799(P2008−541799)
【出願日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【国際出願番号】PCT/FR2006/051221
【国際公開番号】WO2007/060369
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【Fターム(参考)】