説明

水素発生器

【課題】小型の場合であっても水素を発生する化合物を含む材料から安定的且つ効率的に水素を発生させられるようにすること。
【解決手段】加熱されることによって水素を発生する化合物を含む材料で構成された複数の燃料ペレット3と、上記複数の燃料ペレットを格納する耐圧容器と、上記燃料ペレットからの水素発生を制御するコントローラを搭載した制御基板と、を有する水素発生器において、上記耐圧容器内の基板16上に上記複数の燃料ペレット3に対応した複数の発火器を設置し、上記複数の燃料ペレット3を上記発火器上に配置し、それぞれの上記燃料ペレット3の周囲を断熱部材20によって囲むと共に、他の燃料ペレット3との間に熱伝導率の高い導熱部材18で構成された格子状の枠を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーを発生させるための水素燃料電池に水素ガスを供給する水素発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やPDA、デジタルカメラ等の携帯情報機器は、主に、リチウムイオン電池等の充電可能な二次電池が電源として用いられてきている。近年、これらの機器の高機能化・多機能化・高速化や長時間駆動の要求に伴い、小型燃料電池が新たな電源として期待されており、一部では試作・試用も始まっている。
【0003】
燃料電池は、従来の二次電池とは異なり充電作業が不要で、燃料を補充または燃料カートリッジを交換するだけで瞬時に機器を長時間稼動させることが可能な状態にすることができる。これらの燃料電池のうち、水素を燃料とする水素燃料電池はその特性上、パワー密度を高くすることが可能であるため、従来の二次電池に準じてある程度のピーク負荷にも対応できる燃料電池として、携帯情報機器等への応用が検討されている。
【0004】
特に、携帯情報機器の場合は、水素を如何にコンパクトに且つ軽量に貯蔵するかがキーであり、特許文献1には、水素貯蔵合金で構成されるタンクに水素を充填して使用することが提案されている。しかし、水素吸蔵合金は重量が重く且つサイズも大きくなってしまうので、携帯情報機器には適していない。また、水素吸蔵合金に吸収された水素を使用し終わった場合には、何らかの方法で水素を再度タンクに充填する必要があるが、そのためのインフラを整えねばならないという問題がある。
【0005】
水素吸蔵合金に関わるこれらの問題を解決するために、特許文献2には、アンモニア・ボレインのような水素を多く含む物質を熱分解することによって水素を発生させる水素発生器が提案されている。この方法によれば、水素は固体燃料から発生するので、重く大きい水素吸蔵合金のタンクや、気体の水素を水素吸蔵合金に充填するためのインフラを新たに整える必要はない。
【特許文献1】特開2005−321490号公報
【特許文献2】国際公開第02/18267号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に記載された水素発生器の物理的な構造は、野外で利用できる運搬可能な発電機等の一般用途には適用できるが、非常に小さいサイズの水素発生器には適用できない。デジタルカメラやPDA等の携帯情報機器においては、水素発生器のサイズや形状は現状の1次電池または2次電池と同等のサイズや形状(例えば、18650サイズ、直径約18ミリ×高さ約65ミリ)が望まれるが、上記特許文献2に開示された水素発生器の構造では、このようなサイズ・形状にすることは不可能である。
【0007】
また、上記特許文献2には、上記携帯情報機器用の水素発生器においてアンモニア・ボレインから水素を発生させるためにアンモニア・ボレインの温度を100℃以上に加熱するための小型の具体的な手段が記載されていない。
【0008】
更に、水素発生器を小型にするための水素発生器の具体的な構造、各部品の構成、制御手段等についても記載されていない。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、小型の場合であっても水素を発生する化合物を含む材料から安定的且つ効率的に水素を発生させることができ、単位体積当たりの水素発生量を向上させることが可能な水素発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の水素発生器の一態様は、
加熱されることによって水素を発生する化合物を含む材料で構成された複数の燃料ペレットと、
上記複数の燃料ペレットを格納する耐圧容器と、
上記燃料ペレットからの水素発生を制御するコントローラと、
を有する水素発生器において、
上記耐圧容器内の基板上には上記複数の燃料ペレットに対応した複数の発火器が設置されており、
上記複数の燃料ペレットは上記発火器上に配置され、
それぞれの上記燃料ペレットは、断熱部材によってその周囲が囲われており、且つ、他の燃料ペレットとの間には熱伝導率の高い部材で構成された格子状の枠が配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小型の場合であっても水素を発生する化合物を含む材料から安定的且つ効率的に水素を発生させることが可能となり、単位体積当たりの水素発生量を向上させることが可能な水素発生器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0013】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る水素発生器を説明する前に、水素発生の原理を説明する。
【0014】
図1(A)は、水素発生器で使用する燃料ペレットの構成を示す図である。
【0015】
水素発生化合物であるアンモニア・ボレイン(NHBH)1と、該アンモニア・ボレイン1を加熱するためのヒート・ミックス2とを、それぞれ適当な圧力をかけることによって所定の形状、ここでは円筒状の形状に固め、それらアンモニア・ボレイン1とヒート・ミックス2に更に圧力をかけて一体物となるように形成することで、燃料ペレット3が構成されている。アンモニア・ボレイン1に加える圧力としては、実験的に50MPa〜250MPaの値が好ましいことが求められている。
【0016】
ここで、アンモニア・ボレイン1とヒート・ミックス2について説明する。
【0017】
アンモニア・ボレイン1は、質量比で約20%の水素を含み、常温では固体で爆発性が無く安定な水素源であり、熱分解によって水素を発生する。同じ体積であれば、液体水素の2倍の質量の水素を含んでいる。アンモニア・ボレイン1は通常は粉状であるが、必要に応じて圧力を加えることによって硬いペレット状、棒状、円錐状等にプレスすることができる物質である。
【0018】
このアンモニア・ボレイン1は、温度を上昇させることにより3段階に熱分解して水素を発生する。熱せられると約100℃で溶けて液体になり、その後に1分子の水素を発生させる。その際の反応式は、下記(1)式の通りであり、これが第1段階の水素発生反応である。
【0019】
NHBH → NHBH + H …(1)
この反応は発熱反応であり、この反応熱によってアンモニア・ボレイン1自身の温度が上昇して、第2段階の水素発生反応に進む。即ち、上記第1段階の水素発生反応で生成されるNHBHは、更に温度が上昇して約150℃で1分子の水素を発生する。その際の反応式は、下記(2)式の通りであり、これが第2段階の水素発生反応である。
【0020】
NHBH → NHBH + H …(2)
この反応も発熱反応であり、理論的にはNHBHが第3段階の熱分解を行うことができる温度まで、NHBHの温度を上げるだけの熱を発生する。温度が約480℃を越えると、残ったNHBHは最後の1分子の水素を発生させる。その際の反応式は、下記(3)式の通りであり、これが第3段階の水素発生反応である。
【0021】
NHBH → BN + H …(3)
理論的には、この第3段階の水素発生反応も、熱分解が完全に行われるための十分な熱を発生させる。
【0022】
このように、アンモニア・ボレイン1は、加熱することにより、その1分子から3分子の水素を発生する。
【0023】
一方、上記ヒート・ミックス2は、リチウム・アルミニウム水素化合物(LiAlH)と塩化アンモニウム(NHCl)の混合物である。これは、外部からヒータ等で少量の熱を与えられると自ら発熱する熱源となり、上記アンモニア・ボレイン1を加熱する。また、単に熱源としてだけではなく、下記(4)式のように若干の水素を発生する。
【0024】
LiAlH + NHCl → LiCl + AlN + 4H …(4)
なお、上記ヒート・ミックス2としては、このようなLiAlHとNHClの混合物に限らず、外部から少量の熱を与えられた際に上記アンモニア・ボレイン1が熱分解を開始するために必要な熱を自ら発熱する特性を有するものであれば、どのようなものであっても良い。
【0025】
このようなアンモニア・ボレイン1とヒート・ミックス2でなる燃料ペレット3は、携帯情報機器用に使用することを考慮すると、直径3mmから10mm、全体の高さが3mmから10mm程度の大きさが適当である。本発明者の実験によれば、直径5.2mm、高さ3.4mm程度のサイズのペレットにおいて、高効率で水素を発生させることができた。このペレットでは、アンモニア・ボレイン1とヒート・ミックス2の比率は、質量比で4:1から5:1程度に設定することで最も収率の高い水素発生が行われることが実験的に確かめられている。
【0026】
次に、上記のような燃料ペレット3を使用する水素発生器を説明する。
【0027】
図1(B)は、本発明の第1実施形態に係る水素発生器の構成を示す図である。
【0028】
水素発生器のケースは、その内部で水素が発生するため耐圧容器10となっており、ステンレス等の十分強度のある部材で構成される。この水素発生器の耐圧容器10の一側面には、水素発生口11が設けられている。この水素発生口11の内側には水素以外の不純物を吸収するカーボン・フィルタ(図示しない)が内蔵されており、また、外部から開け閉めできるストップバルブ(図示しない)が外付けされている。更に、この水素発生口11が設けられた側面には、電気信号を入出力するためのコネクタ12も設けられている。このコネクタ12には、水素発生器の状態を示す信号の出力端子と、動作を制御するための信号の入力端子が配置されており、この水素発生器の外部に位置する図示しない機器に図示しないケーブルによって接続される。
【0029】
また、水素発生器の耐圧容器10の上面には、破裂板13も設けられている。この破裂板13は、当該破裂板13にかかる圧力が既定の圧力以上になると破れるように構成されている市販の部品である。耐圧容器10の内部圧力が何らかの異常動作によって最大耐圧を超える前に、この破裂板13が破れることによって、水素発生器が爆発等の危険な状態になるのを防止する安全装置である。なお、この破裂板13は、安全弁PRV(Pressure Relief Valve)のような機械的なバルブを使用しても良い。
【0030】
なお、上記水素発生口11、コネクタ12、破裂板13はそれぞれ水素発生器の耐圧容器10に取り付けられているが、それらは気密状態を保つため、Oリング等の漏れを防ぐ部材が併用されている。
【0031】
図2は、図1(B)に示した水素発生器の内部構造を示す断面図である。
水素発生器の内部には、当該水素発生器の動作を制御する制御回路が搭載された制御基板14が配されている。この制御基板14は、ガラスエポキシやベークライト等の耐熱性と絶縁性を有するもので構成される。この制御基板14は一端側で上記コネクタ12に接続され、また、他端側にはコネクタ15が設けられている。
【0032】
上記コネクタ15には、基板16Aに設けられたコネクタ17Aが接続されるようになっている。この基板16A上には、格子状の導熱部材18Aが配されている。また、上記コネクタ17Aとは反対面側に更にコネクタ19Aが設けられている。このコネクタ19Aには、基板16Bに設けられたコネクタ17Bが接続されるようになっている。この基板16B上には、格子状の導熱部材18Bが配されている。また、上記コネクタ17Bとは反対面側に更にコネクタ19Bが設けられている。ここで、基板16A,コネクタ17A,導熱部材18A,コネクタ19Aで構成されるユニット、及び基板16B,コネクタ17B,導熱部材18B,コネクタ19Bで構成されるユニットは、水素発生ユニットであり、同一のものである。これら2つの水素発生ユニットがコネクタ17Bとコネクタ19Aで接続され、更にそれらがコネクタ17Aとコネクタ15によって制御基板14に接続されている。なお、コネクタ19Bは、この実施形態では、どこにも接続されないダミーとなる。
【0033】
図3は、変形例として、制御基板14を水素発生器の耐圧容器10の外に出した場合の構成図である。コネクタ17Aが耐圧容器10の下側から外に出て、そのコネクタ17Aに制御基板14のコネクタ15が接続する。このような構成にすると、制御基板14は温度の上昇や圧力の変化等の影響をほとんど受けないため、複数回の使用にも耐えるので経済的である。
【0034】
なお、図2及び図3は、水素発生ユニットを2段に配置した例を示したが、段数はそれに限定されないことは勿論である。また、図の奥行き方向に複数の水素発生ユニットを配置することも可能である。
【0035】
次に、上記水素発生ユニットについて詳細に説明する。なお、上記2つの水素発生ユニットは同一構造であるため、以下の説明では、特に必要な場合を除き、基板16A,16Bを基板16、コネクタ17A,17Bをコネクタ17、導熱部材18A,18Bを導熱部材18、コネクタ19A,19Bをコネクタ19として説明する。
【0036】
図4は、水素発生ユニットの上面図である。格子状の導熱部材18が基板16の上に接着されて、それぞれの格子内には、図1(A)に示したような燃料ペレット3が、エポキシ樹脂やポリカーボネート樹脂で構成された断熱部材20によってその円周方向の周囲を囲われて、1個ずつ格納されている。この格子状の導熱部材18は、その材料にもよるが、約1mm程度の厚さを有することで、適度な導熱機能と強度を持たせている。また、この格子の内のりは、中に格納される断熱部材20でその周囲を囲われた円筒形の燃料ペレット3の直径よりも若干大きめの寸法になっている。例えば、断熱部材20を含んで直径5.2mmの燃料ペレット3の場合には、0.1mmの余裕を見込んで格子の内のりは5.4mm角にする。このように適当な余裕を持たせることにより、格子内に燃料ペレット3を格納する際に傾いたり、つかえたり等の不具合を防止することができ、また、逆に大きすぎて格子内で燃料ペレット3が動いて遊んでしまい、発火器から離れて正常な水素発生が行われなくなることを防止できる。格子状の導熱部材18は、基板16に対しては隙間がないように例えばコーキング機能を持った接着剤で接着されている。これは発生した水素は高熱であり、その水素が隣接する燃料ペレット3に流れ込んで、その隣接燃料ペレット3に対して意図しない高温化を及ぼすことを防止するためである。燃料ペレット3は、図1(A)に示したものであり、その円周方向の周囲を断熱部材20で囲んだものである。なお、図4の例では、横7個縦5列で合計35個の燃料ペレット3が格納できるものを示しているが、個数はこれに限定されないことは勿論である。
【0037】
以下、各水素発生ユニットについて、図4を使用して説明する。
燃料ペレット3の円周方向の周囲は、断熱部材20によって囲われており、一方、図中の上方に相当する、基板とは反対側の端面部は、断熱部材によって囲われていないので、燃料ペレット3から発生する水素と熱は、燃料ペレット3の上方に向かって流れ出し、円周方向の周囲にはほとんど伝わらない。つまり、水素発生のために加熱した燃料ペレット3のみが加熱されることになる。
【0038】
しかし、断熱部材20の大きさ・形状や、燃料ペレット3への取り付け状態のバラつきによって、断熱部材20が燃料ペレット3の円周方向の周囲を完全に囲うことができず、微小な隙間が存在する場合も起こりうる。このような場合、水素発生時に発生した熱は、その隙間を通って導熱部材18に伝わる。この場合、導熱部材18は熱の伝わり方に関して、電気回路のアースのような働きをする。即ち、導熱部材18に伝わった熱は、瞬時に導熱部材18全体に広がり、熱が発生した局地的な場所に留まることはない。導熱部材18の熱容量は発生した熱に比べて大きいので、導熱部材18自身の温度上昇は微々たるものである。このように、導熱部材18が熱アースの働きをすることにより、加熱されるべき燃料ペレット3のみが加熱され、加熱された燃料ペレット3からその周囲に熱が拡散して、本来は加熱されるべきでない周囲の燃料ペレット3が加熱されることを防止できる。
【0039】
なお、水素発生器の耐圧容器10の外装は、ステンレス等の金属で構成されている。そこで、図5に示すように、該耐圧容器10の外装と導熱部材18との間を銅などの金属ばね21を介して接触させる構造とすることで、導熱部材18で発生した熱を金属ばね21を通じて耐圧容器10に伝え、その外装を通して熱を外部に拡散させることが可能となり、更に放熱効果が向上する。
【0040】
上記金属ばね21の内、水素発生口11が設けられている一側面に対し直交する側面における金属ばね21に関しては、上記水素発生口11が設けられている一側面側にその開放端が配されるような取り付け向きで、耐圧容器10の外装内面に取り付けられる。こうすることで、図2に示すような制御基板14配置を持つ場合に、上記水素発生口11が設けられている一側面に対向する側の外装を取り外し、図6(A)及び(B)に矢印で示すようにスライドさせて、水素発生ユニットを出し入れすることができるので、耐圧容器10の再利用が可能となる。
【0041】
また、図7(A)及び(B)に示すように、銅などの接続部材22をビス23によって各水素発生ユニットの導熱部材18A,18Bに結合させることで、各導熱部材同士を熱的に接続させる構造としても良い。こうすることで、各導熱部材18A,18Bを一つの大きな導熱部材の一部とすることかでき、更に熱アースの機能が向上する。
【0042】
更に、図5に示したような導熱部材18を水素発生器の耐圧容器10の外装に接触させる構造と、図7(A)及び(B)に示したような導熱部材同士を接続する構造との両方を共に採用すれば、より一層の効果が得られることは勿論である。なおこの場合には、金属ばね21と接続部材22とが干渉しないように、接続部材22の上下方向の位置を選定することが必要である。
【0043】
上記導熱部材18の熱アースの機能は、燃料ペレット3が小さくなればなるほど重要であり、より熱伝導率の高い部材を使用する必要が出て来る。なお、格子状の導熱部材18の材料としては、コスト的な観点を考慮して、アルミニウムや銅などが使用可能である。燃料ペレット3は80℃を越えると液体化が始まり、上述したように100℃を越えると水素を発生するので、この導熱部材18は、望ましくは、隣接する格子内の温度が例えば60℃以下となるような材料及び厚さを選定する。
【0044】
この格子状の導熱部材18の製作方法は、板状の部材に切り込みを入れた部材を複数組み合わせる方法が一般的である。この場合、隣接する格子に対しては気密状態が保たれていなければならない。
【0045】
この格子状の導熱部材18は、円柱状の燃料ペレット3を囲う断熱部材20の周囲に接する形になっており、格子の角の部分、即ち、導熱部材18と断熱部材20との間には隙間ができる。この隙間は、燃料ペレット3から発生する水素のための空間としての機能も有する。即ち、水素発生器のケースは密閉された耐圧容器10であり、内部で水素が発生すれば内部圧力が上昇する。このとき、内部に空間が全くないと圧力上昇が急激になり高い圧力まで耐える耐圧設計をする必要があるが、水素発生器の内部のどこかに空間があれば、圧力上昇を緩和することができる。上記隙間を設けないような格子を設計し、圧力緩和用の空間を水素発生器内部のどこかに設ける方法もあるが、そのような格子の形状は複雑であり、また、水素発生器内部の空間のバランスが悪い等の理由で好ましくない。図4の実施形態では、上記隙間を水素発生器内部に均等に設けることにより、全体のバランスを向上させ、且つ、耐圧設計を低い圧力に抑えることにより、設計の自由度の広がり、低コスト化・安全性向上を達成することができ、好都合である。
【0046】
次に、水素発生ユニット上の格子内に格納される燃料ペレット3の周囲の状態を説明する。
【0047】
図8は、水素発生ユニットの断面図である。同図に示すように、基板16上には、各燃料ペレット3に対応して発火器24が設けられている。この発火器24は、制御基板14に搭載された制御回路(図示せず)からの制御信号により電流を流すことによって発熱して、ヒート・ミックス2を反応させて発熱させ、その熱でアンモニア・ボレイン1を加熱させ、水素を発生させる。前述したように、ヒート・ミックス2とアンモニア・ボレイン1で円筒形の燃料ペレット3を構成している。
【0048】
各燃料ペレット3の上には、円形状の厚さ0.01〜0.02mmで、燃料ペレット3の直径と同じ直径を有するアルミ・フォイル25が載置される。このアルミ・フォイル25は、発火器24によって発火されたヒート・ミックス2から発生した熱や、その熱によってアンモニア・ボレイン1から発生した水素発生反応から発生する熱が、このアルミ・フォイル25に反射することにより、水素発生を指示された燃料ペレット3周辺にとどまることを助ける機能を有する。
【0049】
上記アルミ・フォイル25上には、格子の内のり寸法にほぼ合致した大きさの正方形のカーボン・フィルタ26が載置される。このカーボン・フィルタ26は、水素以外の不純物を吸収する機能を有する。そして、その上に、円形状の断熱部材の蓋27が配される。この蓋27は、断熱部材20を含めた燃料ペレット3の直径より若干大きめで、且つ格子開口に隙間なく入り込む大きさであり、この蓋27によってこの格子内部の燃料ペレット3やカーボン・フィルタ26等が水素発生時の反応によって動くのを防止している。この断熱部材の蓋27は、エポキシ樹脂やポリカーボネート樹脂等の断熱部材が使用可能である。
【0050】
図8からわかるように、正方形の格子の中に断熱部材20を周囲に配置された円筒形の燃料ペレット3が格納され、その上に円形のアルミ・フォイル25、正方形のカーボン・フィルタ26、円形の断熱部材の蓋27が順に積層されている構造になっている。
【0051】
ここで、カーボン・フィルタ26のみが正方形である理由は下記のとおりである。もし、カーボン・フィルタ26が円形であると、正方形の格子と円筒形の燃料ペレット3との間には隙間があり、それが格子の上方に露出する。この状態で水素を発生させた場合に、もし不純物が発生すると不純物がそのまま格子の外に出てしまい、水素発生口11に取り付けた不純物吸収用フィルタで吸収しきれない場合、水素燃料電池に不純物が流出してしまう。水素燃料電池では、水素は高い純度が要求され、もし水素純度が低いと水素燃料電池の破壊につながる。それを防ぐために、それぞれの燃料ペレット3の段階で不純物が流出しないようにするために、カーボン・フィルタ26は格子の内のりに合わせた正方形の形状である必要がある。
【0052】
また、蓋27が円形状である理由は、発生した水素がカーボン・フィルタ26を通して、容易に上方に拡散し易いようにするためである。
【0053】
このような理由により、アルミ・フォイル25、カーボン・フィルタ26、蓋27の形状が定められている。
【0054】
図9(A)乃至(D)は、格子状の導熱部材18に対する発火器24、ヒート・ミックス2、アンモニア・ボレイン1、断熱部材20、アルミ・フォイル25、カーボン・フィルタ26、蓋27の水平方向の位置関係を示す図である。
【0055】
図9(A)は、発火器24が後述するような表面実装型の抵抗器の場合で、外形が正方形の場合を示している。発火器24の中心点が格子状の導熱部材18が形成する格子状の平面の中心点とほぼ一致していることを示している。抵抗器の外形が長方形の場合にも同様にその中心点が格子状の導熱部材18が形成する格子状の平面の中心点とほぼ一致する位置に配置する。
【0056】
図9(B)は、円筒形のヒート・ミックス2とアンモニア・ボレイン1と断熱部材20とアルミ・フォイル25の中心点が格子状の導熱部材18が形成する格子開口部の中心点とほぼ一致していることと、格子開口部の一辺の長さがヒート・ミックス2,アンモニア・ボレイン1,アルミ・フォイル25の部材より若干大きく、隙間があることを示している。そして、この隙間に断熱部材20が配置される。即ち、断熱部材20と格子開口部の一辺との間には隙間がない。
【0057】
図9(C)は、カーボン・フィルタ26が格子開口と同じ大きさであり、必然的にその中心点は一致することを示している。
【0058】
図9(D)は、蓋27の直径が格子開口部の一辺とほぼ同じであり、ヒート・ミックス2,アンモニア・ボレイン1,アルミ・フォイル25とは異なり格子開口部の一辺との間には隙間がないことを示している。
【0059】
このように、燃料ペレット3と発火器24の水平方向の位置関係として、それぞれの中心点を略一致させるように格子状の導熱部材18で規制している。このようにすることで、発火器24から発生する熱が燃料ペレット3下部のヒート・ミックス2に的確に伝達され、その結果、ヒート・ミックス2がアンモニア・ボレイン1を十分に加熱し、アンモニア・ボレイン1から水素を最大限に発生させることが可能となる。
【0060】
次に、上記発火器24について説明する。
発火器24は、基板16上の導熱部材18の各格子に対応する位置に配置されており、その上に各燃料ペレット3のヒート・ミックス2が接するように位置決めされる。前述したように、発火器24の中心と燃料ペレット3の中心が略一致するように位置決めされる。発火器24は表面実装型の抵抗器である。
【0061】
図10は、発火器24の駆動回路の構成を示す図である。
発火器24を構成する表面実装型の抵抗器28は、一端が駆動用FET29の電流経路を介して駆動回路の電源電圧であるDC+12Vに接続され、他端がGNDに接続されている。駆動用FET29の制御端子には、HighレベルとLowレベルの電圧値を示すディジタル信号である駆動制御信号30が制御基板14に搭載された制御回路(図示せず)から印加される。駆動用FET29は、この駆動制御信号30がHighレベルになるとONし、LowレベルになるとOFF状態となる。
【0062】
従って、発火させない状態では、駆動制御信号30はLowレベルで、駆動用FET29はOFFの状態であり、抵抗器28には電流は流れていない。次に、駆動制御信号30がHighレベルになって駆動用FET29がONすると、抵抗器28には電流が流れる。抵抗器28が例えば4Ωとすると、電源電圧が+12Vであるため、FETの電圧降下約0.6Vを考慮しても約2.8Aの電流が流れるので、発火器24の抵抗器28で消費される電力は、4*2.8*2.8=約31Wとなる。この31Wの電力が、表面実装用の抵抗器28で消費されるため、その温度が急激に上昇してヒート・ミックス2を発熱することが可能となる。
【0063】
なお、この発火器24は、抵抗器28として、表面実装用の抵抗器を用いたが、印刷技術を用いて抵抗器を基板上に直接印刷しても同様の効果を得ることがでる。その場合は、抵抗器28の厚さを薄くすることができ、且つ、表面実装用の抵抗器を半田付け等の手段で基板に実装する手間が省け、結果として回路の信頼性を高めることができるので、水素発生器をより小型にするためにはより好適である。
【0064】
上記に説明した発火器24は、本実施形態では1つの水素発生ユニットにおいては、図4に示したように横7個縦5列で合計35個必要となる。そのレイアウトとしては、表面実装用の抵抗器28が基板16の上面(燃料ペレット3の搭載面と同じ面)に実装され、駆動用の駆動用FET29が基板16の下面に実装され、これらの部品とコネクタ19を接続する配線パターンが基板16の上面と下面の両方を使用して配置される。
【0065】
図11は、基板16上に配置された35個の発火器24と、それぞれの発火器24にコネクタ19を介して35本の駆動制御信号30が印加される様子を示した模式図である。この接続方法では、それぞれの基板16に対して独立の駆動制御信号線が必要になる。即ち、基板16が1枚の場合は35本の駆動制御信号線で良いが、基板16が5枚ある場合には、35×5=175本の駆動制御信号線が必要となり、これらがコネクタ19を経由するので、コネクタ19のピン数が増える。
【0066】
図12は、別の接続方法を示す図である。基板16、コネクタ19及び発火器24は、図11の構成と同様である。この接続方法では、各発火器24への駆動制御信号30は、6入力64出力のデコーダ31の出力端子から印加されている。このデコーダ31の入力端子には、制御基板14からコネクタ19を介して、6ビットデジタル信号32が入力されると共に、この基板16を動作可能にするイネーブル信号33が入力される。ここで、6ビットデジタル信号32は、どの発火器24をONにするかを決定する信号である。入力信号が6ビットであるので、最大2の6乗、即ち64個の発火器24に対して発火を指示する事ができる。コネクタ19を経由してデコーダ31には6ビットデジタル信号32とイネーブル信号33が入力される。デコーダ31は、イネーブル信号33がHighレベル、即ち「1」の時のみ、その動作が有効になる。
【0067】
図13は、デコーダ31の入力信号と出力信号の対応の一部を示す図である。入力信号の64種類のパターンに一義的に対応して、64本の出力信号のうちのいずれか1本が「1」、即ちHighレベルになることを示している。このHighレベルになった信号を駆動制御信号30として発火器24に入力すれば良い。基板16には、駆動用信号としては6本のみで良く、且つ、それぞれの基板16で共通に使用できるので、基板枚数が増えても駆動用信号の本数は増えない。ただし、それぞれの基板16を有効にするイネーブル信号33がそれぞれの基板16ごとに1本ずつ必要になるが、この方法の場合、必要な信号線の本数は、基板16が1枚の場合は6+1=7本、基板16が5枚の場合でも6+5*1=11本と大幅に少なくすることができる。
【0068】
次に、水素発生器の動作を説明する。ここで、図示はしないが、水素発生口11の先には水素燃料電池が接続され、外付けのストップ・バルブは開かれているものとする。
【0069】
制御基板14に搭載された不図示のコントローラが1個の発火器24を選択して所定の電流を一定時間流すことにより、発火器24内の抵抗器28が発熱してヒート・ミックス2が加熱され、その熱によってアンモニア・ボレイン1が加熱されて水素が発生する。この時、少量ではあるが、ヒート・ミックス2からも水素が発生する。発生した水素は、水素発生口11の入口に内蔵された不図示カーボン・フィルタを通って、水素発生口11から放出される。
【0070】
本実施形態における水素発生の動作シーケンスは以下のとおりである。
図14は、制御基板14に搭載されているコントローラ34のブロック構成図である。このコントローラ34は、マイクロコントローラ35、不揮発メモリ36、発火器セレクタ37、2次電池38、及び充電回路39を備え、また、同じく制御基板14に搭載された又は水素発生器内の任意の場所に取り付けられた圧力センサ40が接続されている。
【0071】
マイクロコントローラ35は、本水素発生器全体の動作を制御するマイクロコントローラであり、CPU、メモリ、入出力ポート等の機能を一体的に有するワンチップマイコンによって構成される。不揮発メモリ36は、燃料ペレット3の使用状態を記録するものであり、EEPROMやフラッシュメモリのように電気的に書き換え可能なメモリである。発火器セレクタ37は、発火させる発火器24を選択するための信号を生成するものである。2次電池38は、コントローラ34に電源を供給するものであり、リチウムイオン電池やニッケル水素電池が用いられる。充電回路39は、本水素発生器が接続される水素燃料電池から供給される電力によって上記2次電池38を充電する。圧力センサ40は、水素発生器の耐圧容器10内部の圧力を測定するものである。発火器セレクタ37によって、前述したような駆動制御信号30(図12の場合はイネーブル信号33も)を生成する。
【0072】
図14において、一点鎖線で囲まれた部分が2次電池38によって電源を供給される電子回路であり、破線で囲まれた部分がコントローラ34である。
【0073】
上記不揮発メモリ36は、コントローラ34が自由にリード・ライトすることができるように構成されており、それぞれの燃料ペレット3の使用状態を1対1に対応するメモリアドレスに記録するように割り当てられている。従って、不揮発メモリ36の1つのアドレスを指定することにより、そのアドレスに対応する燃料ペレット3の使用状態を設定すること、及び使用状態をチェックすることが可能となる。不揮発メモリ36の使用状態を示す例としては、メモリの値が16進数で「FFH」の場合は燃料ペレット3が未使用、「80H」の場合は燃料ペレット3が使用済み、「00H」の場合は燃料ペレット3が未装着、を示す等である。未使用の燃料ペレット3を探す場合には、不揮発メモリ36の内容をスキャンし、「FFH」であるものを探せば良い。燃料ペレット3の状態を記録するメモリとして不揮発メモリを使用したことにより、燃料ペレット3をすべて使い切らない状態で本水素発生器を取り外して他の水素燃料電池に接続した場合でも、どの燃料ペレット3が未使用であるかを知ることができるので、効率的である。
【0074】
図15は、マイクロコントローラ35の動作シーケンスのフローチャートを示す図である。
【0075】
まず、上記圧力センサ40の値を入力する(ステップS11)。この際、圧力センサ40の値を複数回入力し、その平均値を取ることによりノイズの影響を低減することも可能である。
【0076】
次に、上記入力した圧力センサ40の値が既定値より大きいか否かを判断する(ステップS12)。この既定値は、本水素発生器が接続されている水素燃料電池が継続して発電できる水素の量の限界値である。即ち、水素発生器の耐圧容器10内部の水素圧力がこの既定値より小さくなると、水素を新たに発生させないと水素燃料電池は継続して発電できなくなる。一方、アンモニア・ボレイン1から水素を発生させる際には、アンモニア・ボレイン1を加熱する際の周囲の初期圧力によって水素発生の収率が影響される。本発明者の実験した結果によると、それぞれの燃料ペレット3を加熱して水素を発生させる際には、周囲の圧力が5気圧(50万パスカル)以上である方が水素発生収率が高いこと、且つ、10気圧以上では水素発生収率はそれほど上がらないこと、が判明した。従って、上記既定値としては、5気圧(50万パスカル)以上で、且つ、水素発生器の耐圧容器10の最大耐圧(10気圧(100万パスカル))を超えない値にすることが望ましい。
【0077】
上記ステップS12において、圧力センサ40の値が既定値よりも大きいと判断した場合には、上記ステップS11の圧力センサ値の入力に戻る。
【0078】
これに対して、上記ステップS12において、圧力センサ40の値が既定値以下であると判断した場合には、水素発生要求があるか否かをチェックする(ステップS13)。この水素発生要求は、マイクロコントローラ35が接続されている上位機器から発生されるもので、今、水素燃料電池を稼動させて発電する必要がない場合、例えば、水素燃料電池が接続されている機器がスリープ状態にある場合など、には発電させる必要はないので、機器から水素発生要求が発生するまで待つ(ステップS14)。
【0079】
そして、水素発生要求が発生したならば(ステップS14)、不揮発メモリ36の内容をスキャンして未使用の燃料ペレット3を探し出す(ステップS15)。このスキャンは、最初だけ行い、その結果を不揮発メモリ36の所定のアドレスに記録しておき、初回以降では不揮発メモリ36のスキャンを省略しても良い。もし、すべての燃料ペレット3が使用されており未使用の燃料ペレット3がない場合には(ステップS16)、燃料切れエラーをこの水素発生器を使用している上位機器に報告する(ステップS17)。なお、ここでは、未使用の燃料ペレット3がない場合に燃料切れエラーを報告するものとしたが、未使用の燃料ペレット3の数が少なくなった場合に、燃料残り少量警告を報告するようにしても良い。
【0080】
これに対して、未使用の燃料ペレット3がある場合には(ステップS16)、その未使用の燃料ペレット3を選択して、その選択した未使用の燃料ペレット3に対応する発火器24に所定の電流を流すように指示し、該当する燃料ペレット3から水素を発生させる動作の起動をかける(ステップS18)。
【0081】
その後、その使用した燃料ペレット3に対応する場所の不揮発メモリ36の値を未使用から使用済みに書き換える(ステップS19)。なお、上記ステップS18において燃料ペレット3からの水素発生を起動させたが、実際の水素発生までには若干の時間がかかるので、一定時間だけ待った後に(ステップS20)、上記ステップS11に戻る。
【0082】
これらの水素発生反応は速い速度で行われ、水素燃料電池で発電のために要求されるより速い速度で水素が発生する。このために、少量のアンモニア・ボレイン1を耐圧反応器である水素発生器の耐圧容器10の中で断続的に水素発生させる。耐圧反応器の中で水素が発生すると内部圧力が高まり、燃料電池が水素を使用すると内部圧力が低下する。内部圧力が予め定められた圧力値より下がるまで、上記ステップS11、ステップS12のループを回り続ける。そして、内部圧力が予め定められた圧力値より下がったことを検出することで、別のアンモニア・ボレイン1の水素発生を開始させることにより、継続的に発電することが可能となる。
【0083】
以上のように、本第1実施形態によれば、アンモニア・ボレイン1をペレット状に小分けにして水素を発生させる水素発生器の全体構造を提示し、且つそれに必要不可欠な要素として、発火器24の構成、燃料ペレット3の保持手段、水素発生時に発生する熱の保熱・断熱方法、水素発生器の動作制御フローを具体的に提示したので、アンモニア・ボレイン1から効率的に水素を発生させることができる小型水素発生器を実現することが可能となる。
【0084】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
【0085】
図16は、本第2実施形態に係る水素発生器の内部構造を示す断面図である。ここで、上記第1実施形態と同じ機能のものは同じ参照符号を付している。
【0086】
同図において、参照符号16Cは上記基板16A,16Bと同様の基板であり、18Cは上記導熱部材18A,18Bと同様の格子状の導熱部材であり、19Cは上記コネクタ19A,19Bと同様のコネクタである。ここでは、基板16Aと導熱部材18Aとコネクタ19Aとを組み合わせて1つの水素発生ユニットを構成し、基板16Bと導熱部材18Bとコネクタ19Bとを組み合わせて1つの水素発生ユニットを構成し、基板16Cと導熱部材18Cとコネクタ19Cとを組み合わせて1つの水素発生ユニットを構成している。これらの水素発生ユニットは、それぞれコネクタ41A,41B,41Cを介して制御基板14に接続されている。制御基板14上には、上記第1実施形態同様、この水素発生器の動作を制御する制御回路が搭載されている。また、コネクタ12を介してこの水素発生器の上位機器と接続されている。
【0087】
本実施形態においては、それぞれの水素発生ユニットは、コネクタ19A,19B,19Cを介してそれぞれ独立に制御基板14に接続されている。従って、すべての燃料ペレット3を使用した水素発生ユニットは、他の水素発生ユニットを脱着させることなく、独立に取り外し・取り付けが可能となっている。また、制御基板14を立てて配置しているので、上記第1実施形態の構造に比べて水素発生器内部のスペースをより有効に利用することが可能となっている。
【0088】
図17は、本第2実施形態に係る水素発生器の変形例の内部構造を示す断面図である。ここで、図16と同じ機能のものは同じ参照符号を付している。
【0089】
即ち、本変形例は、図16に示した水素発生器の耐圧容器10の内部にあった制御基板14を耐圧容器10の外に出したものである。3つの水素発生ユニットは、コネクタ19Aとコネクタ41A、コネクタ19Bとコネクタ41B、コネクタ19Cとコネクタ41Cを介して、中継基板42と接続される。そして、この中継基板42からの信号は、コネクタ43により耐圧容器10の外に出て、該コネクタ43を制御基板14上のコネクタ44に接続することにより、制御基板14に達する。この構成にすると、制御基板14は温度の上昇や圧力の変化等の影響をほとんど受けないため、複数回の使用にも耐えるので経済的である。
【0090】
本実施形態における水素発生器の動作は、上記第1実施形態と同様であるので省略する。
【0091】
なお、図16及び図17は、水素発生ユニットを3段に配置した例を示したが、それに限定されないことは勿論である。また、図の奥行き方向に複数の水素発生ユニットを配置することも可能である。
【0092】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
【0093】
図18は、本第3実施形態に係る水素発生器の上面図である。ここで、上記第1実施形態と同じ機能のものは同じ参照符号を付している。
【0094】
本実施形態は、格子状の導熱部材18を、基板16上に、その開口が正三角形をなすように配置し、燃料ペレット3と断熱部材20をその内部に配置するようにしたものである。この場合、コネクタ19は基板16上に実装されており、基板16の外形は六角形である。
【0095】
図19は、本第3実施形態に係る水素発生器の変形例の上面図である。ここで、上記第1実施形態と同じ機能のものは同じ参照符号を付している。
【0096】
この変形例は、格子状の導熱部材18を、基板16上に、その開口が正六角形の形状をなすように配置し、燃料ペレット3と断熱部材20をその内部に配置するようにしたものである。この場合、コネクタ19は基板16上に実装されており、基板16の外形は正六角形である。
【0097】
このような正三角形または正六角形の格子開口の場合でも、その大きさは円筒形の燃料ペレット3の直径に対して、開口のそれぞれの辺が0.1mm程度のギャップで接するように格子寸法を調整する。このことによって、燃料ペレット3の装填を容易にすると共に、水素発生時に燃料ペレット3が発火器から大きくずれることを防止することが可能となる。
【0098】
本実施形態においても、図示はしていないが、燃料ペレット3の上側には円形のアルミ・フォイル25、正三角形または正六角形のカーボン・フィルタ26、円形の断熱部材の蓋27が順に積層されている。カーボン・フィルタの形状が上記第1実施形態と異なるのみである。
【0099】
格子状の導熱部材18の開口部が正六角形である場合、断熱部材20を周囲に配置された円筒形の燃料ペレット3との隙間の体積は開口部が正三角形または正方形の場合に比べて小さくなるので、同じ体積の水素発生器に対してより多くの燃料ペレット3を実装できることになり、単位体積当たりの発生水素量が増加するので、単位体積当たりのエネルギー密度を高くすることができる。
【0100】
このような水素発生ユニットを使用した水素発生器の外形形状は、図18の場合は六角柱、図19の場合は正六角柱または円筒形となる。円筒形の場合は、内部の燃料ペレット3の直径を小さくすることによって円筒外周付近に発生する無駄なスペースを小さくすることができるので、既存の円筒形の2次電池等の形状に近くなり、2次電池との置き換えを容易に行うことが可能となる。
【0101】
本実施形態における水素発生器の動作は、上記第1実施形態と同様であるので省略する。
【0102】
また、本実施形態においても、上記第2実施形態のように、制御基板14の位置を水素発生器の耐圧容器10内部または外部のいずれにも設定することができる。
【0103】
以上実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0104】
例えば、上記第1乃至第3実施形態では、燃料ペレット3をアンモニア・ボレイン1とヒート・ミックス2とから構成しているが、ヒート・ミックス2は必ずしも必須ではなく、発火器24が直接アンモニア・ボレイン1を加熱するように構成することも可能である。この場合は、アンモニア・ボレイン1の加熱に必要な熱量をすべて発火器24から得ることになるので、発火器24と加熱用の電源はより大きなものが必要になる。
【0105】
また、燃料ペレット3の形状は円筒形としたが、これに限定する必要はなく、例えば図20に示すように、六角柱や直方体(その断面は六角形や四角形)、あるいは長円柱、楕円柱等の形状であっても構わず、格子状の導熱部材18の開口部の形状に対応して任意に組合せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】図1(A)は、水素発生器で使用する燃料ペレットの構成を示す図であり、図1(B)は、本発明の第1実施形態に係る水素発生器の構成を示す図である。
【図2】図2は、図1(B)に示した水素発生器の内部構造を示す断面図である。
【図3】図3は、第1実施形態の変形例として、制御基板を水素発生器の耐圧容器の外に出した場合の水素発生器の構成を示す図である。
【図4】図4は、水素発生ユニットの上面図である。
【図5】図5は、放熱効果を向上するための第1実施形態の別の変形例の構成を説明するための水素発生器の断面図である。
【図6】図6(A)は、水素発生ユニットの出し入れを説明するため図5の水素発生器の平面図であり、図6(B)は、同じく正面図である。
【図7】図7(A)は、熱アース機能を向上するための第1実施形態の更に別の変形例の構成を説明するための水素発生ユニットの正面図であり、図7(B)は、同じく側面図である。
【図8】図8は、水素発生ユニットの断面図である。
【図9】図9(A)は、格子状の断熱部材に対する発火器の水平方向の位置関係を示す図であり、図9(B)は、格子状の断熱部材に対するヒート・ミックス、アンモニア・ボレイン及びアルミ・フォイルの水平方向の位置関係を示す図であり、図9(C)は、格子状の断熱部材に対するカーボン・フィルタの水平方向の位置関係を示す図であり、図9(D)は、格子状の断熱部材に対する蓋の水平方向の位置関係を示す図である。
【図10】図10は、発火器の駆動回路の構成を示す図である。
【図11】図11は、発火器への駆動制御信号の接続方法を説明するための模式図である。
【図12】図12は、発火器への駆動制御信号の別の接続方法を説明するための模式図である。
【図13】図13は、デコーダの入力信号と出力信号の対応の一部を示す図である。
【図14】図14は、制御基板に搭載されているコントローラのブロック構成図である。
【図15】図15は、マイクロコントローラ(CPU)の動作シーケンスのフローチャートを示す図である。
【図16】図16は、本発明の第2実施形態に係る水素発生器の内部構造を示す断面図である。
【図17】図17は、第2実施形態に係る水素発生器の変形例の内部構造を示す断面図である。
【図18】図18は、本発明の第3実施形態に係る水素発生器の上面図である。
【図19】図19は、第3実施形態に係る水素発生器の変形例の上面図である。
【図20】図20は、水素発生器で使用する燃料ペレットの構成の別の例を示す図である。
【符号の説明】
【0107】
1…アンモニア・ボレイン、 2…ヒート・ミックス、 3…燃料ペレット、 10…耐圧容器、 11…水素発生口、 12,15,17,17A,17B,19,19A,19B,19C,41A,41B,41C,43,44…コネクタ、 13…破裂板、 14…制御基板、 16,16A,16B,16C…基板、 18,18A,18B,18C…導熱部材、 20…断熱部材、 22…接続部材、 23…ビス、 24…発火器、 25…アルミ・フォイル、 26…カーボン・フィルタ、 27…蓋、 28…抵抗器、 29…駆動用FET、 31…デコーダ、 32…6ビットデジタル信号、 33…イネーブル信号、 34…コントローラ、 35…マイクロコントローラ、 36…不揮発メモリ、 37…発火器セレクタ、 38…2次電池、 39…充電回路、 40…圧力センサ、 42…中継基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱されることによって水素を発生する化合物を含む材料で構成された複数の燃料ペレットと、
前記複数の燃料ペレットを格納する耐圧容器と、
前記燃料ペレットからの水素発生を制御するコントローラと、
を有する水素発生器において、
前記耐圧容器内の基板上には前記複数の燃料ペレットに対応した複数の発火器が設置されており、
前記複数の燃料ペレットは前記発火器上に配置され、
それぞれの前記燃料ペレットは、断熱部材によってその周囲が囲われており、且つ、他の燃料ペレットとの間には熱伝導率の高い部材で構成された格子状の枠が配置されていることを特徴とする水素発生器。
【請求項2】
前記発火器は、表面実装型の抵抗器または基板に印刷された印刷抵抗に電流を流すことによって発生する発熱を利用することを特徴とする請求項1に記載の水素発生器。
【請求項3】
前記格子状の枠は、アルミニウムまたは銅で構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の水素発生器。
【請求項4】
前記格子状の枠内に配置された前記燃料ペレットの最下部が前記発火器に接触し、且つ、前記燃料ペレットの上には円形アルミ・フォイル、水素以外の不純物を吸収するフィルタ、円形断熱部材が順に積層されており、
前記アルミ・フォイルの形状と大きさは前記ペレットに一致し、
前記フィルタの形状と大きさは前記格子開口に一致し、
前記円形断熱部材は前記格子開口に内接する直径を有していることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の水素発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−126417(P2010−126417A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304620(P2008−304620)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】