説明

水素精製工程を包含するオレフィンガソリンの選択的脱硫方法

【課題】より多彩な水素源を用い、かつ、典型的にはより緩和な精製処理を行いながら、水素化処理工程、特に、オレフィンフラクション(典型的にはガソリン)の選択的脱硫のための水素化処理工程を首尾良く操作すること。
【解決手段】本発明は、オレフィンガソリンの選択的な水素化脱硫方法であって、触媒反応器への入口における補給水素および/または原料油全体のCO含量が50ppmv以下であるが、COx(=CO+1/2CO)含量が120ppmvを超える、方法に関する。本発明により、補給水素の供給源に関して多様化させることが可能であり、かつ/または、水素の精製処理を単純化することができ、かつ/または、水素化脱脱硫装置からの水素のパージを低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄含量が低い炭化水素を製造する方法に関する。本発明は、主として、一般的に5重量%を超え、通常は10重量%を超えるオレフィンフラクションおよび少なくとも50重量ppmの硫黄を含む炭化水素混合物に適用可能である。本方法によると、CO含量が非常に低いがCO含量が比較的高い水素が、水素化脱硫工程の際に用いられる触媒の性能に顕著に影響を及ぼすことなく用いられることを可能にする。これによって、可能な補給水素の供給源に関して多様化が可能になり、かつ/または多量のCOを除去することにたよることがなく水素処理を単純化し得る。
【背景技術】
【0002】
乗物用燃料についての将来的な仕様によると、このような燃料、特にガソリンの硫黄含量の相当の低減が予見されている。欧州では、硫黄含量についての仕様は150重量ppmであり、来る数年のうちに、50重量ppmのレベルを経て10ppmより低いレベルまで低下するだろう。したがって、硫黄含量仕様の変化により、ガソリンを強度に脱硫する新規な方法を開発することが必要である。
【0003】
ガソリンを基本とした場合の主要な硫黄源は、分解されたガソリン、主として、常圧蒸留残渣または原油の真空蒸留物を接触分解する方法由来のガソリンフラクションである。ガソリン中に含まれる硫黄量の90%までが、接触分解からのガソリンフラクション(ガソリンベースの平均40%を示す)が原因となっている。結果として、硫黄含量が低いガソリンを製造するためには、接触分解されたガソリンを脱硫する工程が必要である。都合良くは、該当する脱硫は、水素化脱硫と称される方法において水素が豊富に含まれるガスの存在下に前記ガソリンに含まれる硫黄含有化合物を触媒と接触させる1以上の工程を用いて行われる。
【0004】
さらに、このようなガソリンのオクタン価は、オレフィン含量が高いので非常に高い。このようなガソリンのオクタン価を保持するためには、オレフィンがパラフィンに変換される反応を制限することが必要である。このような水素化反応は、水素化脱硫方法に本来的なものであり、これにより、オレフィン含量の低減を主たる原因としてオクタン価が5〜10程にも損なわれ得る。
【0005】
さらに、精油所において、ガソリンの水素化脱硫方法は、しばしば、通常は数年にわたって連続的に駆動させる接触分解装置等の分解装置からの出口において直接的にガソリンフラクションについて備えられる。このため、水素化脱硫方法は、中断されることなく3〜5年にわたって操作されなければならない。数年にわたって連続して操作され得るように、硫黄をHSに変換するために用いられる触媒の活性および量は高くなければならない。
【0006】
競争に耐え得るために、水素化脱硫方法は、2つの主たる制約、すなわち、
・制限されたオレフィンの水素化;
・触媒系の良好な安定性および数年にわたる連続的な操作性
を満たさなければならない。
【0007】
水素化脱硫方法は、水素の存在下に、硫化された非貴金属を含み、かつ無機担体上に担持された触媒によって炭化水素フラクションを処理することに基づく。用いられる金属は、一般的に、周期表第VIII族からの少なくとも1種の金属(例えばコバルト)および場合により第VIB族からの金属(例えばモリブデン)を含む。最も汎用される触媒形式は、アルミナ上に担持されたCoおよびMoまたはNiおよびMoに基づいている。分解装置からのオレフィンガソリンを処理する場合には、触媒および操作条件は、硫黄含有有機化合物のHSへの変換を最大にしながらオレフィンの水素化の程度を制限するように最適化される。このような方法は、特に特許文献1および2に記載されている。
【0008】
水素化脱硫方法は、多くの供給源からの水素を用いてよい。精油所における主要な水素源は接触改質からの水素である。接触改質装置は、ナフテンの芳香族への脱水素および脱水素化環化の間に水素を生成する。当該水素は、一般的に60〜90%の純度であるが、実質的にCOおよびCOを含んでいない。
【0009】
精油所の要求に応じて、水素は軽質炭化水素のスチームリフォーミングまたは種々の炭化水素、特に重質残渣の部分酸化によって生成されてもよい。スチームリフォーミングは、ニッケルをベースとする触媒による水蒸気との反応によって軽質炭化水素原料油を合成ガス(H、CO、CO、CHおよびHOの混合物)に変換する工程からなる。部分酸化による水素の生成は、酸素を用いた高温酸化により炭化水素フラクションを処理して、CO、CO、HおよびHOによって構成される合成ガスを生成する工程からなる。最後の2つの場合には、水素の生成は、炭素酸化物の生成に伴われ、この炭素酸化物は、通常は、メタネーションまたは吸着のいずれかによって実質的に除かれる。しかしながら、炭素酸化物(COおよびCO)の残量は、ある場合には、50ppmv超、または100ppmv以上であるかもしれない。接触分解ガス由来の水素等の他の水素源も用いられる場合があるが、接触分解ガス由来の水素は、相当量のCOおよびCOを含む。最後に、COおよびCOは、ある場合には、原料油が痕跡量の上流のガスと接触するであれば溶解されたガスの形態で炭化水素原料油自体によって供給されるかもしれない。
【0010】
したがって、精油所からの水素および水素化処理工程の反応帯域からの水素は、種々の量のCOおよびCOを含んでいるかもしれない。COおよびCOを含む水素が用いられるか生成される場合に最も広範に用いられる技術は、典型的にはPSA(pressure swing adsorption)によってこれらの不純物を完全に除去することである。しかしながら、当該技術は高価であり、利用可能な水素の一部を消費する。
【特許文献1】欧州特許第01031622号明細書
【特許文献2】欧州特許第01250401号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的の一つは、より多彩な水素源を用い、かつ、典型的にはより緩和な精製処理を行いながら、水素化処理工程、特に、オレフィンフラクション(典型的にはガソリン)の選択的脱硫のための水素化処理工程を首尾良く操作することである。
【0012】
本発明はまた、水素化処理工程における水素のパージ流量(水素化脱硫反応器周囲の再循環ガスの一部のパージ)を低減することによって水素の消費量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本出願人により実施された研究の過程で、100ppmv(part per million by volume)あるいは50ppmvあるいは20ppmv程度の量であっても水素中にCOが存在することによって、水素化脱硫触媒の活性が大きく低減されることが発見された。さらに、COが存在することによってオレフィンの水素化反応速度がほとんど影響されないことが分かった。このため、水素化脱硫工程の間に触媒容量を増大して脱硫の度合いを維持する場合には、水素中にCOが存在することにより、触媒活性が低減され、かつ、オクタン価が大きく損なわれる結果となる。活性の低減は温度を上昇させることによって補償されるかもしれないが、その場合には、触媒の耐用期間が影響される。同様の観察が、米国特許出願2003/0221994においても報告された。この特許出願によると、選択的水素化脱硫工程のために、炭化水素および水素の混合物において(CO+1/2CO)の合計(以降では、COxで表す)が100ppmvを超えることが禁止されるような量の炭素酸化物を含む水素を用いることが推奨されている。
【0014】
しかしながら、驚くべきことに、本出願人は、CO含量が脱硫触媒の実質的な阻害に直接的に結び付けられるパラメータであるけれども、対照的に、重大な影響を及ぼすことなくCOの量が広く変動し得ることを発見した。COをCOに酸化するがこのようにした形成されたCOを抽出しない工程からなる水素の事前処理工程が、CO含量が200ppmvを超えていても炭素酸化物の有害な影響を克服し得ることも発見された。COをほぼ完全に除去するための高価な工程の費用を節約することは非常に大きな利点であると同時に、低純度の水素源を用いる可能性を開くものである。このため、本発明は、CO含量は非常に低いがCOx含量が相当であることが両立可能な炭化水素フラクションを脱硫する方法を提示する。この方法は、好ましくは、水素に含まれるCOをCOに選択的に酸化する工程と、水素化脱硫する工程とを包含し、この2つの工程は、連続して、典型的には、形成されたCOを中間抽出することなく実施される。この提案は、炭素酸化物による水素化脱硫触媒の阻害に関する問題を克服するために簡単で安価な解決策を用いる点で従来技術の方法を超える利点を有する。
【0015】
COを相当量除去するための主要な方法は、COをCOに酸化する方法(本発明においてこの方法が好ましい)およびCOをメタネーションする(メタン化)方法である。
【0016】
COをCOに酸化する主要な方法は水蒸気変換反応(この水蒸気転換反応は、例えばニッケルをベースとする触媒によって実施される水蒸気との反応によってCOをCOに変換し得る)または、酸素を用いるCOのCOへの選択的酸化である。この第二の選択肢(本発明において最も好ましい)は、本出願においてより詳細に記載されている。
【0017】
酸素を用いてCOをCOに選択的に酸化する方法は、文献に記載されている。例えば、国際特許出願WO01/0181242が引用され得る。この文献は、反応の選択性を向上させるために30W/m・Kを超える熱伝導性を有する材料を用いてCOをCOに酸化することに基づいて水素を精製する方法を提案する。米国特許第5789337号は、活性が増大された担体上に微細に分散された金を含む触媒を合成する方法を記載する。国際特許出願WO00/17097は、αアルミナをベースとする担体上に担持されたルテニウムまたは白金またはこれら2つの元素の混合物を含む触媒の使用を推奨する。
【0018】
本発明は、少なくとも5重量%のオレフィンを含む炭化水素フラクションの水素化脱硫方法であって、前記炭化水素フラクション、補給水素のHYD流および場合により再循環水素のREC流が混合されて、炭化水素フラクションの硫黄含有有機化合物をHSに変換し得る操作条件下に脱硫触媒を含む少なくとも1つの反応器への入口に供給される原料油全体を形成する方法であって、HYD流を形成する1つまたは複数の水素源が選択され、少なくとも1回の水素精製処理がHYD、RECまたはこれらの混合物について適宜行われ、この結果、前記原料油全体が多くとも50ppmvのCOおよび少なくとも120ppmvのCOx(ここで、COx=CO+1/2CO)を含む、方法である。
【0019】
上記本発明の方法において、HYD流を形成する1つまたは複数の水素源が選択され、少なくとも1回の水素精製処理が少なくとも一部のHYDについて行われ、その結果、HYDは多くとも50ppmvのCOおよび少なくとも120ppmvのCOxを含むことが好ましい。
【0020】
上記本発明の方法において、HYD、RECまたはこれらの混合物について行われる少なくとも1回の水素精製処理T1を含み、該処理T1は、原料油全体において少なくとも200ppmvのCOを得るために制限されたCO除去を行うことが好ましい。
【0021】
上記本発明の方法において、HYD、RECおよびこれらの混合物について行われる、水素を精製するための少なくとも1回の処理T2を含み、該処理T2は、原料油全体において多くとも50ppmvのCOを得るためにOおよび/またはHOによるCOの接触酸化を行うことが好ましい。
【0022】
上記本発明の方法において、HYD、RECまたはこれらの混合物について行われる、水素を精製するための少なくとも1回の処理T3を含み、該処理T3は、原料油全体において多くとも50ppmvのCOを得るためにHによるCOの触媒的メタネーションを行うことが好ましい。
【0023】
上記本発明の方法において、HYDおよび場合によりRECまたはこれらの混合物について行われる水素精製処理を含み、該処理は、OによるCOの接触酸化を行う処理T2を行い、その後直接的にかつ二次的なCO除去を行うことなく、精製された水素流の存在下に炭化水素フラクションの脱硫を行うことを含むことが好ましい。
【0024】
上記本発明の方法において、HYDおよび場合によりRECまたはこれらの混合物について行われる水素精製処理T3を含み、該処理T3は、HによるCOのメタネーションを行い、その後直接的にかつ二次的なCO除去を行うことなく、精製された水素流の存在下に炭化水素フラクションの脱硫を行うことを含むことが好ましい。
【0025】
上記本発明の方法において、T2またはT3の上流のHYDについて行われる、COを除去するための処理T1を含むことが好ましい。
【0026】
上記本発明の方法において、水素再循環RECおよび再循環された水素WGASのパージを含み、パージWGASの流量は、原料油全体におけるCO含量が50ppmv未満であるが、原料油全体におけるCOx含量が120ppmvを超えるように制御されることが好ましい。
【0027】
上記本発明の方法において、オレフィンガソリンフラクションの水素化脱硫のために、第VIII族からの少なくとも1種の元素および場合により第VIB族からの元素を含む触媒を用いて行われ、第VIII族からの元素がニッケル、コバルトおよび鉄によって構成された群から選択され、場合による第VIB族の元素がモリブデンまたはタングステンであり、反応器の圧力は0.5〜5MPaであり、水素流量(時間当たりの水素の標準リットル)の炭化水素流量(時間当たりのリットル)に対する比が50〜800であり、温度が200〜400℃であることが好ましい。
【0028】
上記本発明の方法において、触媒がコバルトおよびモリブデンを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、少なくとも1回の水素精製処理がHYD、RECまたはこれらの混合物について適宜行われることにより、触媒反応器への入口における補給水素および/または原料油全体のCO含量が50ppmv以下であるが、COx(=CO+1/2CO)含量が120ppmvを超え、これにより、補給水素の供給源に関して多様化させることが可能であり、かつ/または、水素の精製処理を単純化することができ、かつ/または、水素化脱脱硫装置からの水素のパージを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明は、補給水素源、一般的には再循環された水素を用いて炭化水素フラクションを水素化脱硫する方法であり、水素化脱硫反応器への入口において、原料油全体におけるCO含量が多くとも50ppmv、好ましくは多くとも20ppmv、より好ましくは多くとも10ppmvであり、他方、COx(=CO+1/2CO)の量が少なくとも一部の時間(例えば、時間の少なくとも30%または50%、好ましくは作用時間の100%)にわたって120ppmvを超えるようにする。COxの量は、一般には10000ppmv未満であり、通常は5000ppmv未満である。典型的には、COx含量は120〜1000ppmvであり、より好ましくは120〜500ppmvである。本発明の方法は、時間のうちの一部の間にCOx含量が120ppmv未満あるいは50ppmv以下であるという場合(function)を除外しない。このことは、例えば、実質的にCOもCOも含まない「清浄な」水素源が種々の消費装置に供給するのに十分な量で利用可能な場合に生じ得る(これは、処理された原油の性質次第である)。
【0031】
より詳細には、本発明は、少なくとも5重量%のオレフィンを含む炭化水素HCフラクションを水素化脱硫する方法であって、前記炭化水素フラクション、補給水素のHYD流(stream HYD)および一般的には再循環水素のREC流(stream REC)が混合されて炭化水素HCフラクションの硫黄含有有機化合物をHSに変換し得る操作条件下に脱硫触媒を含む少なくとも1つの反応器への入口に供給される原料油全体を形成し、HYD流を形成する1つまたは複数の水素源が選択され、場合によっては、HYD流、REC流(またはRECの一部)またはこれらの混合物について少なくとも1回の水素精製処理が行われ、この結果、前記原料油全体は、多くとも50ppmvのCOを含み、かつ、時間のうちの少なくとも不可欠な部分にわたって少なくとも120ppmvのCOxを含む、方法を提案する。
【0032】
好ましくは、本発明に一致する前記純度条件:(多くとも50ppmvのCO[または20または10ppmv]および時間のうちの少なくとも不可欠な部分にわたって少なくとも120ppmvのCOx)はまた、補給水素のHYD流に対して得られる。本発明における最良の量の補給水素は、CO含量が非常に低く(10ppmv未満、好ましくは5ppmv未満)、かつ、CO/COの比が高く(例えば5または10より大きく、例えば、5〜60)なるようなものである。
【0033】
さらに、水素化脱硫装置周囲の水素再循環REC流を用いる場合には、不純物が蓄積するのを防止するためにWGASパージ流も用いられる。水素のループは、COおよびCOを濃縮する傾向がある。本発明は、結果として、大量のCOを受け入れ、したがって、本発明は、REC/HYD再循環比を増大させ得る。これは、4を超える場合もあり、もしくは、6〜30であり得る。これにより、結果として必要とされる水素パージWGASが低減される。有利には、パージ比は、原料油全体におけるCO含量が50ppmv未満、好ましくは20ppmv未満になるが、原料油全体におけるCOx含量が120ppmvを超えるように制御される。
【0034】
本方法は、典型的には、HYD、RECまたはこれらの混合物について行われる、水素を精製するための少なくとも1回の処理T1を含む。この処理T1は、制限されたCO除去を行い、この除去により、原料油全体におけるCO含量は少なくとも200ppmvになる。
【0035】
好ましくは、本方法は、HYD、RECまたはこれらの混合物について行われる、水素を精製するための少なくとも1回の処理T2を含む。この処理T2は、Oおよび/またはHOによるCOの接触酸化を行い、これにより、得られるCOは原料油全体において多くとも50ppmv(好ましくは多くとも20ppmv)である。
【0036】
酸化は、スチームCO転換によって行われてよい。このスチームCO転換は、シフト転換として知られており、1または2工程で行われてよい。
【0037】
好ましくは、本方法は、HYDおよび場合によってはREC(またはRECの一部)またはこれらの混合物について行われる水素精製処理を含む。この処理は、O(存在する水素によるCOの優先的な酸化)によるCOの接触酸化を行う処理T2を含み、その後直接的かつ二次的なCO除去を行うことなく、精製された水素流の存在下に炭化水素HCフラクションの脱硫を行う。典型的には低温で、スチーム転換と最終の優先的酸化とを結び付けることも可能である。
【0038】
変形例においては、本方法は、HYD、RECまたはこれらの混合物について行われる、水素精製するための少なくとも1回の処理T3を含んでよい。この処理T3は、HによりCOの触媒的メタネーションを行い、得られるCOは原料油全体において多くとも50ppmvである。この場合には、本方法は、通常は、HYDおよび場合によってはRECまたはこれらの混合物について行われる水素精製処理を含む。T3を含むこの処理は、HによりCOのメタネーションを行い、その後直接的に二次的なCO除去を行うことなく、精製された水素流の存在下に炭化水素HCフラクションの脱硫を行う。メタネーションもCOを除去する傾向があるが、メタネーション条件は、原料油全体が相当量のCO(および場合によっては120ppmvを超えるCOx)をそれでも含むようにするか、および/または原料油中に溶解されたCOの存在と合体されてもよい。
【0039】
好ましくは、本方法は、HYDおよび場合によってはREC(またはRECの一部)またはこれらの混合物について行われる水素精製処理を含む。この処理は、OによるCOの接触酸化をもたらす処理T2を含み、その後直接的にかつ二次的なCO除去を行うことなく、精製された水素流の存在下に炭化水素HCフラクションの脱硫を行う。
【0040】
しばしば、本方法は、COの大部分を除去するために、T2またはT3の上流のHYDについて行われる、COを除去するための予備的処理T1も含む。
【0041】
補給水素の生成の例として、残されたCO含量が少なく(例えば2000〜5000ppmv)、かつ、CO含量が少ない(50〜1000ppmv)水素を得るために、水蒸気改質およびこれに続く1または2回のスチームCO転換工程および1回のCO除去工程T1(例えば、メチルジエタノールアミン溶液で洗浄することによる)によってメタンが処理されてもよい。次いで、この水素は、優先的酸素酸化処理T2(またはスチーム転換およびこれに続く優先的な酸化)によって処理されてよく、好ましくは、CO含量が10以下、または5ppmvより低く、かつ、CO含量が120〜1000ppmvである最終の補給水素を得るのに適した流量で、それを他の非常に純度の高い水素源(実質的にCOおよびCOを含まない、接触改質からの水素)と混合する。
【0042】
スチーム転換、メタネーションおよびアミン洗浄処理(または他の吸着液)によるCO除去に関する補足的な技術的特徴が、P LEPRINCEによる参照文献「Procedes de transformation」[「Transformation process」],Technip,publishers(Paris),1998,p476-490において見出され得る。
【0043】
(酸素を用いる好ましい優先的CO酸化処理の説明)
担持されたまたは担持されない貴金属をベースとする多くの触媒が、酸素の存在下にCOのCOへの酸化を触媒し得る。しかしながら、水素の存在下では、余り多量に水素を水に変換しない触媒が用いられなければならない。このため、COの優先的な酸化を行うために選択的な触媒を使用することは、水素精製の課題にとって非常に重要な解決策である。しかしながら、非常に高い選択性の度合いは必ずしも必要ではなく、本発明の絡みにおいて、優先的な酸化触媒によって精製された水素中にわずかに水蒸気が存在することが、選択的なオレフィンガソリンの水素化脱硫方法における水素の使用を完全に否定するわけではない。水素に含まれるHSの量は、一般的には10ppmv(容量ppm)を超えてはならず、好ましくは、優先的酸化工程前に1ppmvである。銅箔(copper strip)試験(当業者に周知である)は陰性でなければならない。このため、硫化水素の水素は、場合によっては、当業者に周知の任意の方法を用いて浄化されてよい。引用され得る例は、吸着、抽出またはアミン洗浄処理またはHSの化学的な転換のための処理である。このリストは、いかなる場合においても、本発明において用いられてよい処理を制限するものではない。
【0044】
本発明のCOをCOに優先的に酸化するための工程は、例えば、水素の存在下に選択的触媒により行われてよい。この反応を行うために用いられてよい金属は、貴金属であるPt、Pd、Ru、Rh、Ir、AuまたはCu、Cr、MnおよびCeによって形成される群から選択されてよい。金属は、単独または他の金属と組み合わせて用いられてよく、あるいは、それらはアロイを形成してもよい。それらは、塊状金属形態(フィラメント状、発泡状、スポンジ状等)で用いられても、アルミナ、セリウム酸化物(cerine)、鋭錘石、金紅石、ジルコニア、シリカ、鉄酸化物(α−Fe)または亜鉛酸化物等の細孔性耐火性酸化物上に担持されてもよい。どうあろうと本発明の範囲を制限することなく、本発明の優先的なCO酸化工程は、水酸化鉄上に微細に分配された金をベースとする触媒について行われてよい。このような触媒は、Harutaらによる出版物「J Catal」,1993年,144号,p175に記載された方法を用いて調製されてよいが、それはまた、文献に記載された任意の他の原案を用いて調製されてよい。
【0045】
触媒は、例えば、HAuCl・3HOおよびFe(NO・9HOを含む溶液および炭酸ナトリウムを含む溶液の共沈(co-precipitation)によって調製される。これらの2つの溶液は徐々に加えられ、次いで、蒸留水を含む沈殿反応器において激しく攪拌される。2つの溶液が加えられる間反応混合物は80℃に維持され、操作の全体にわたって、pHは、8〜8.5に維持される。ろ過後、沈殿は、洗浄液が塩素を含まなくなるまで熱水で洗浄され(硝酸銀反応によってモニタリングされる)、次いで、真空オーブンにおいて40℃で12時間乾燥される。次いで、得られた粉体は、0.5L/g(触媒)/hの空気の流量で乾燥空気中400℃で2時間焼成される。粉砕後、平均粒度(granulometry)が20μm前後であり、表面積が60m/gである粉体が得られる。触媒は、3重量%のAuを含む。
【0046】
触媒は、当業者に知られた方法のすべてを用いて形成されてよく、引用されてよい非制限の例が、薄め塗膜(wash coat:液相中で担持されるコーティング)を用いる中空礎石(monolith)上への担持物、粒状物、押出物等である。
【0047】
(水素化脱硫工程の説明)
水素化脱硫工程は、第VIII族からの少なくとも1種の元素、好ましくは第VIII族からの元素および第VIB族からの元素を含む触媒について行われる。第VIII族からの元素は、ニッケル、コバルトおよび鉄によって構成される群から選択される。もし存在すれば、第VIB族からの元素は、好ましくはモリブデンまたはタングステンである。金属は、シリカ、ケイ素カーバイドおよびアルミナによって構成された群から選択された非晶質固体担体上に担持され、ビーズ状または押出物状に形成される。オレフィンを含む炭素質含有フラクションを選択的に水素化脱硫するために、アルミナをベースとする担体上にコバルトおよびモリブデンを含む触媒を用いることが好ましい。
【0048】
水素化脱硫工程は、有利には、原料油中に存在する硫黄の50%超をHSに変換し得る第一の水素化脱硫工程と、第VIII族からの金属を含む触媒による飽和硫黄含有化合物を水素化分解する工程または第一工程の触媒より低い活性を有する触媒によって水素化脱硫する工程のいずれかにより構成される最終工程との2工程で行われてよい。この種の連結は、水素化脱硫の選択性を向上させ得る。
【0049】
この工程の間に用いられる1つまたは複数の触媒は、硫化された形態である。硫化手順は、現場内または現場外で行われてよい。前者の場合には、触媒は、反応器に装填する前に硫化されるが、後者の場合には、触媒は、金属酸化物の形態で反応器に装填され、HSまたは分解してHSになり得る化合物(例えばDMDSおよび水素)を注入することによって反応器において硫化が行われる。担体上に担持された金属酸化物の少なくとも50%、好ましくは70%を硫化し得る、当業者によって用いられる任意の従来からの硫化方法が用いられてよい。
【0050】
反応器の圧力は、一般的に0.5〜5MPaであり、水素流量は、水素流量(1時間当たりの標準リットル)の炭化水素流量(1時間当たりのリットル)に対する比が50〜800、好ましくは60〜600である。脱硫されるべき炭化水素フラクション中の硫黄の量に応じ、温度は200〜400℃、好ましくは230〜350℃である。
【実施例】
【0051】
(実施例1:比較)
200mlの容量を有する反応器によって構成されたパイロット装置に、AXENSよって販売される市販のHR806S触媒を100ml装入した。この触媒は、アルミナ上に担持されたコバルトおよびモリブデンをベースとしており、予め硫化された形態で供給され、このため、原料油と接触させる前に引き続いて硫化する工程を必要としない。処理される原料油は、接触分解装置からのガソリンAであった。このガソリンは、水素化脱硫によってC+フラクションのみを処理するために脱ペンタン化(depentanize)された。この原料油は、425ppmの硫黄を含み、6ppmの硫黄がチオールの形態であり、ASTM D1159−98法を用いて測定された臭素価(bromine index)は、49g/100gであった。このガソリンAのカットポイントは、シミュレーション蒸留によって決定され、ガソリンAは、61℃のカットポイントが5重量%、229℃のカットポイントが95重量%であった。
【0052】
ガソリンAは、純粋な水素と混合され、反応器に注入された。圧力は、2.1MPaに維持され、原料油の流量は400ml/hであり、時間当たりの空間速度(hourly space velocity:HSV)は4h−1を表わし、水素流量は120リットル/hであり、300(標準)リットル/原料油リットルの流量を表わしていた。3種の異なる温度が試験された。
【0053】
各温度点に対して触媒の見かけの(apparent)選択性が、脱硫速度(desulphurization rate)とオレフィン水素化速度(olefin hydrogenation rate)との間の見かけの一次速度定数(first order rate constant)の比として計算された。
【0054】
臭素価によって測定された硫黄含量およびオレフィン含量および選択性が表1に示されている。
【表1】

【0055】
(実施例2:比較)
触媒性能についてのCOおよびCOの影響を測定するために、10ppmvのCOおよび350ppmvのCOを含む1シリンダ分の水素を用いた。この水素は、実施例1の流量と同一の流量のガソリンと混合された。このようにして形成された混合物のCO含量は65ppmvであり、CO含量は、228ppmvであった。操作条件は、実施例1と同一であった。表2は、試験の結果を示している。
【表2】

【0056】
水素およびガソリンAの混合物における65ppmvおよび228ppmvの各量のCOおよびCOの存在によって、触媒の水素化脱硫活性の成績が降下した。対照的に、水素化活性は、実質的に影響されておらず、これにより、選択性が降下した。
【0057】
(実施例3:本発明による)
実施例3は本発明に一致する、すなわち、実施例2において用いられたCOおよびCOを含む水素が予め処理されて、COをCOに酸化した。酸化は、水素および酸素を混合し、酸化触媒によってこの混合物を処理することによって行われた。水素は、純粋な酸素流と混合され、その流量は、酸素とCOとの間のモル比が1.1になるように調整された。反応器は、周囲温度(50℃)温度前後、2.1MPaの圧力で操作された。
【0058】
触媒の調製は、例えば、HAuCl・3HOおよびFe(NO・9HOを含む溶液および炭酸ナトリウムを含む溶液の共沈による。これらの2つの溶液は、蒸留水を含む沈殿反応器に徐々に加えられ、次いで、激しく攪拌された。反応混合物は、2つの溶液の付加の全体を通して80℃に維持され、全体の操作の間、pHは8〜8.5に維持された。ろ過後、沈殿物は熱水で洗浄水が塩化物を含まなくなるまで洗浄され(硝酸銀との反応によってモニタリングされた)、次いで、真空オーブンにおいて40℃で12時間乾燥された。得られた粉体は、乾燥空気中0.5L/触媒g/水素の空気流量で400℃、2時間にわたって焼成された。粉砕後、平均粒度が20μm前後であり、比表面積が約60m/gである粉体が得られた。触媒は、3重量%の量の金を含んでいた。Au[III]ピークを用いて、X線回折分析によって60Åサイズの金粒子を測定することができた。次いで、触媒(100mg、α−Alにより1:20の比で希釈された)は、10mmの内部直径を有するステンレス鋼反応器中に配置され、50℃に加熱された被包された管状オーブンに挿入された。水素流量は、5×10Nml/h/g(触媒)に調整され、その結果、時間当たりの空間速度は5×10−1であった。触媒の密度は1g/cmであった。反応器に入るガスおよび流出物の分析(CO、CO、HO、O)は、2つのカタロメータ検出計(catharometric detector)を有するガスクロマトグラフィによって行われた。
【0059】
記載された条件下に水素を優先的酸化触媒中に通した後、処理された水素中の安定化されたCOおよびCO含量はそれぞれ17ppmvおよび430ppmvであった。
【0060】
約17ppmvのCOおよび430ppmvのCOを含むシリンダ内の加圧された水素ガスが製造され、下記結果を生じた。次いで、これらを含むガスがガソリンAと混合され、同一の操作条件下に実施例1および2において用いられた反応器に送られた。このように構成された混合物のCO含量は11ppmvであり、CO含量は283ppmvであった。表3はこの試験の結果を示している。
【表3】

【0061】
水素を予め処理するための酸化工程を行うことによって、触媒の水素化脱硫活性が顕著に向上され、生成活性および選択性が実施例1において記載されたCOおよびCOを含まない水素で行われた試験結果と同様である。
【0062】
結果として、簡単な装置によるCOの酸化事前処理工程を用いることにより、いかに大きな程度であってもCOを除去する必要もなく、水素中にCOが存在することによる水素化脱硫触媒の性能における有害な作用を相当制限することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも5重量%のオレフィンを含む炭化水素フラクションの水素化脱硫方法であって、前記炭化水素フラクション、補給水素のHYD流および場合により再循環水素のREC流が混合されて、炭化水素フラクションの硫黄含有有機化合物をHSに変換し得る操作条件下に脱硫触媒を含む少なくとも1つの反応器への入口に供給される原料油全体を形成する方法であって、
HYD流を形成する1つまたは複数の水素源が選択され、少なくとも1回の水素精製処理がHYD、RECまたはこれらの混合物について適宜行われ、この結果、前記原料油全体が多くとも50ppmvのCOおよび少なくとも120ppmvのCOx(ここで、COx=CO+1/2CO)を含む、方法。
【請求項2】
HYD流を形成する1つまたは複数の水素源が選択され、少なくとも1回の水素精製処理が少なくとも一部のHYDについて行われ、その結果、HYDは多くとも50ppmvのCOおよび少なくとも120ppmvのCOxを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
HYD、RECまたはこれらの混合物について行われる少なくとも1回の水素精製処理T1を含み、該処理T1は、原料油全体において少なくとも200ppmvのCOを得るために制限されたCO除去を行う、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
HYD、RECおよびこれらの混合物について行われる、水素を精製するための少なくとも1回の処理T2を含み、該処理T2は、原料油全体において多くとも50ppmvのCOを得るためにOおよび/またはHOによるCOの接触酸化を行う、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
HYD、RECまたはこれらの混合物について行われる、水素を精製するための少なくとも1回の処理T3を含み、該処理T3は、原料油全体において多くとも50ppmvのCOを得るためにHによるCOの触媒的メタネーションを行う、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
HYDおよび場合によりRECまたはこれらの混合物について行われる水素精製処理を含み、該処理は、OによるCOの接触酸化を行う処理T2を行い、その後直接的にかつ二次的なCO除去を行うことなく、精製された水素流の存在下に炭化水素フラクションの脱硫を行うことを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
HYDおよび場合によりRECまたはこれらの混合物について行われる水素精製処理T3を含み、該処理T3は、HによるCOのメタネーションを行い、その後直接的にかつ二次的なCO除去を行うことなく、精製された水素流の存在下に炭化水素フラクションの脱硫を行うことを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
T2またはT3の上流のHYDについて行われる、COを除去するための処理T1を含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
水素再循環RECおよび再循環された水素WGASのパージを含み、パージWGASの流量は、原料油全体におけるCO含量が50ppmv未満であるが、原料油全体におけるCOx含量が120ppmvを超えるように制御される、請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
オレフィンガソリンフラクションの水素化脱硫のために、第VIII族からの少なくとも1種の元素および場合により第VIB族からの元素を含む触媒を用いて行われ、第VIII族からの元素がニッケル、コバルトおよび鉄によって構成された群から選択され、場合による第VIB族の元素がモリブデンまたはタングステンであり、反応器の圧力は0.5〜5MPaであり、水素流量(時間当たりの水素の標準リットル)の炭化水素流量(時間当たりのリットル)に対する比が50〜800であり、温度が200〜400℃である、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
触媒がコバルトおよびモリブデンを含む、請求項10に記載の方法。

【公開番号】特開2006−97029(P2006−97029A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281992(P2005−281992)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(591007826)アンスティテュ フランセ デュ ペトロール (261)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT FRANCAIS DU PETROL
【Fターム(参考)】