説明

水素製造装置および燃料電池システム

【課題】 水素源から発生させることができる水素量の残量を検出する手段を備えた、簡便で効率よく水素を発生させる利便性の高い水素製造装置、ならびにこの水素製造装置を備えた燃料電池システムを得ること。
【解決手段】 水5との発熱反応により水素を発生する水素発生物質を含む水素発生材料2を収容可能な反応容器1と、前記反応容器1に水5を供給する水供給手段10と、前記水素発生材料2が前記反応容器1内で水5と反応して生成される反応生成物の量を検出する生成物量検出手段14と、前記生成物量検出手段14での検出結果から、前記水素発生材料2から発生させることができる水素の残量を算出する演算手段11とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素発生材料と水とを反応させて水素を発生させる水素製造装置、および、この水素製造装置を含む燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューター、携帯電話などのコードレス機器の普及に伴い、その電源である電池は、ますます小型化、高容量化が要望されている。現在、エネルギー密度が高く、小型軽量化を図り得る二次電池としてリチウムイオン二次電池が実用化されており、ポータブル電源としての需要が増大している。しかし、このリチウムイオン二次電池は出力容量に限界があり、使用されるコードレス機器の種類によっては十分な連続使用時間を保証することができないという問題がある。
【0003】
このような問題の解決に向けて、例えば固体高分子型燃料電池などの燃料電池の開発が進められている。燃料電池は、燃料および酸素の供給を行えば連続的に使用することが可能である。例えば、高分子電解質膜型燃料電池(PEMFC:Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell)は、電解質に固体高分子電解質、正極活物質に空気中の酸素、負極活物質に燃料(水素、メタノールなど)を用いるものであり、リチウムイオン二次電池よりも高エネルギー密度化が期待できる電池として注目されている。
【0004】
このような燃料電池に、燃料である水素を供給する方法として、水と、例えばアルミニウム、マグネシウム、ケイ素、亜鉛等の水素発生物質とを反応させて水素を発生させる方法が提案されている。
【0005】
ところで、ユーザーがコードレス機器等を使用する場合を想定すると、当該機器の電源の電池残量を正確に知ることが必要である。このような状況下、水素を燃料として用いる燃料電池において、電池の放電電流と放電時間を測定して累積放電容量を求め、燃料電池に供給された水素量から求めた全電池容量と比較することで、電池残量を検出する方法が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−171945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した水と水素発生物質との発熱反応によって水素を発生させる方法では、燃料タンクなどの水素貯蔵容器や水素吸蔵合金などに貯蔵された水素を用いる場合とは異なり、供給される水素の総量を直接把握することが困難である。また、燃料電池が発電した電流量を計測する従来の方法では、電流の検出手段が必要となり、小型軽量化が求められるモバイル機器に使用される燃料電池には好ましくなく、コストも増大する。さらに、燃料電池が、供給された水素のすべてを発電に使うことができずに一部を外部へ放出したときには、残量の誤差が発生する。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、水素源から発生させることができる水素量の残量を検出する手段を備えた、簡便で効率よく水素を発生させる利便性の高い水素製造装置、ならびにこの水素製造装置を備えた燃料電池システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の水素製造装置は、水との発熱反応により水素を発生する水素発生物質を含む水素発生材料を収容可能な反応容器と、前記反応容器に水を供給する水供給手段と、前記水素発生材料が前記反応容器内で水と反応して生成される反応生成物の量を検出する生成物量検出手段と、前記生成物量検出手段での検出結果から、前記水素発生材料から発生させることができる水素の残量を算出する演算手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明の燃料電池システムは、本発明にかかる水素製造装置と、前記水素製造装置で製造された水素を用いて発電を行う燃料電池とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡便で効率よく水素を発生させる利便性の高い水素製造装置を提供できる。特に、水素源である水素発生材料から発生させることができる水素量の残量を検出することが可能となり、コードレス機器等の使用に適した水素製造装置を提供することができる。
【0011】
また、本発明の燃料電池システムは、前記本発明の水素製造装置を用いることにより、燃料電池の電池残量を検出することが可能となり、利便性の高い燃料電池システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
上記のように、本発明にかかる水素製造装置は、水との発熱反応により水素を発生する水素発生物質を含む水素発生材料を収容可能な反応容器と、前記反応容器に水を供給する水供給手段と、前記水素発生材料が前記反応容器内で水と反応して生成される反応生成物の量を検出する生成物量検出手段と、前記生成物量検出手段での検出結果から、前記水素発生材料から発生させることができる水素の残量を算出する演算手段とを備える。
【0013】
このようにすることで、反応容器内で水素発生材料と水との水素製造反応により水素を製造し、生成物量検出手段によって、水素生成反応が進むにつれて増加する反応生成物の量が検出できる。そして、演算手段で反応生成物の量から未反応の水素発生材料の量を算出することで、発生させることができる水素の残量を求めることができる。
【0014】
また、前記生成物量検出手段が、前記反応容器の形状変化を検出するものであることが好ましい。水素発生材料が水と反応して生成される反応生成物は、水素発生材料よりも体積が大きいため、この体積変化が引き起こす前記反応容器の形状変化から、反応生成物量を検出することができる。
【0015】
前記反応容器の形状変化は、前記反応容器と、前記反応容器を収容する容器収容部との間の圧力の変化で検出することができる。また、前記反応容器の形状変化は、前記反応容器の大きさの変化で検出することができる。
【0016】
また、前記生成物量検出手段が、前記反応容器の重量変化を検出するものであることが好ましい。水素発生材料が水と反応して生成される反応生成物は、水素発生材料よりも重量が大きいため、反応容器内で反応生成物が増加することによる前記反応容器の重量変化から、反応生成物量を検出することができる。
【0017】
さらに、前記生成物量検出手段が、前記反応容器に供給される水の量を、前記水が収容される水収容容器の重量により検出するものであることが好ましい。反応生成物の量は、水素発生材料と反応させるために反応容器に供給される水の量によって左右されるため、水収容容器の重量から水素発生反応に使用された水の量を検出することで、反応生成物量を検出することができる。
【0018】
また、前記水素発生材料に含まれる前記水素発生物質が、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウムおよびこれらの元素を主体とする合金からなる群より選択された少なくとも1種以上の金属材料であることが好ましい。
【0019】
さらに、前記水素発生材料が、前記水素発生物質以外に水と反応して発熱する発熱材料をさらに含んでいることが好ましい。
【0020】
さらに、本発明の燃料電池システムは、上記した本発明の水素製造装置と、前記水素製造装置で製造された水素を用いて発電を行う燃料電池とを備える。
【0021】
このようにすることで、本発明にかかる水素製造装置の特徴を活かして、燃料電池の電池残量を検出することが可能な燃料電池システムを得ることができる。
【0022】
(実施の形態)
以下、本発明にかかる水素製造装置と燃料電池システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。本発明の実施形態の水素製造装置を説明するにあたり、まず、本発明の実施形態における水素発生材料に含まれる水素発生物質と水との発熱反応による水素発生反応について説明する。
【0023】
本発明の実施形態である水素製造装置で使用される水素発生物質は、水として反応して水素を発生させる材料であれば特に限定されないが、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウムおよびこれらの元素を主体とする合金でからなる群から選択される少なくとも1種の金属材料が好適に使用できる。なお、合金の場合には、主体となる元素以外の金属成分は特に限定されない。また、主体とは、合金全体に対して80重量%以上、より好ましくは、90重量%以上含有されている物質をいう。上記した金属材料は、常温では水と反応しにくいが、加熱することにより水との発熱反応が容易となる物質である。なお、ここで「常温」とは、20〜30℃の範囲の温度である。
【0024】
このような金属材料は、少なくとも常温以上に加温された状態において、水と反応して水素を発生させることができる。しかし、表面に安定な酸化皮膜が形成されるため、低温下、あるいは、板状、ブロック状等のバルクの形状では、水素を発生しないか、または水素を発生し難い物質である。ただし、酸化皮膜の存在により、空気中での取り扱いは容易である。
【0025】
例えば、上記金属材料の1つであるアルミニウムと水との反応は、下記式(1)〜(3)のいずれかによって進行していると考えられる。下記式(1)による発熱量は、419kJ/molである。
【0026】
2Al+6H2O→Al23・3H2O+3H2 (1)
2Al+4H2O→Al23・H2O+3H2 (2)
2Al+3H2O→Al23+3H2 (3)
また、前記金属材料は、その平均粒径によって特に限定されないが、その平均粒径が0.1μm以上100μm以下とすることが好ましく、0.1μm以上50μm以下がより好ましい。上記したように前記の金属材料は、一般に、表面に安定な酸化皮膜が形成されている。そのため、板状、ブロック状および粒径1mm以上のバルク状等の金属材料は、加熱しても水との反応が進行せず、実質的に水素を発生させない場合もある。しかし、金属材料の平均粒径を100μm以下とすると、酸化皮膜による水との反応抑制作用が減少し、常温では水と反応しにくいものの、加熱すれば水との反応性が高まり、水素発生反応が持続するようになる。また、金属材料の平均粒径を50μm以下とすると、40℃程度の穏和な条件でも水と反応して水素を発生させることができる。
【0027】
金属材料の平均粒径が50μmを超える場合であっても、金属材料が鱗片状であり、かつその厚みが5μm以下である場合には、水との反応性を高めて、より効率よく水素を生じさせることができ、特に金属材料の厚みが3μm以下の場合には、反応効率をより一層向上させることができる。
【0028】
一方、金属材料の平均粒径を0.1μm未満としたり、鱗片状の金属材料の厚みを0.1μm未満とすると、発火性が高くなって取り扱いが困難となったり、金属材料の充填密度が低下してエネルギー密度が低下しやすくなったりする。このような理由から、金属材料の平均粒径は、0.1μm以上とすることが好ましく、また、金属材料が鱗片状の場合には、その厚みは0.1μm以上であることが好ましいのである。
【0029】
なお、上記の平均粒径は、体積基準の積算分率50%における粒子直径の値であるD50を意味する。平均粒径の測定方法としては、例えば、レーザー回折・散乱法等を用いることができる。より具体的には、水等の液相に分散させた測定対象物質にレーザー光を照射することによって検出される散乱強度分布を利用した粒子径分布の測定方法である。レーザー回折・散乱法による粒子径分布測定装置としては、例えば、日機装株式会社製の「マイクロトラックHRA(製品名)」等を用いることができる。
【0030】
また、上記した鱗片状の金属材料の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することができる。
【0031】
さらに、前記金属材料の形状も特に限定されないが、例えば、略球状(真球状を含む)やラグビーボール状の他、前記の通り、鱗片状のものなどが挙げられる。略球状やラグビーボール状などの場合には上記した平均粒径を満足するものが好ましく、鱗片状の場合には上記した厚みを満足するものが好ましい。また、鱗片状の金属材料の場合には、上記した平均粒径も満足していることがより好ましい。
【0032】
また、前記した水素発生物質である金属材料に、親水性酸化物、炭素および吸水性高分子からなる群から選ばれる少なくとも1つの物質(以下、添加剤という。)を添加すれば、金属材料と水との反応を促進させることができるので好ましい。このような親水性酸化物としては、アルミナ、シリカ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ゼオライト、酸化亜鉛等が使用できる。
【0033】
さらに、本発明の本実施形態としての水素製造装置において、水と水素発生物質との発熱反応を容易に開始させるために、使用される水素発生材料として、前記金属材料などの水素発生物質以外の材料であって水と反応して発熱する発熱材料を含むことが好ましい。
【0034】
発熱材料としては、水と反応して水酸化物や水和物となる材料、水と発熱して水素を生成する材料等を用いることができる。このような発熱材料のうち、水と反応して水酸化物や水和物となる材料としては、例えば、アルカリ金属の酸化物(例えば、酸化リチウム等。)、アルカリ土類金属の酸化物(例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等。)、アルカリ土類金属の塩化物(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等。)、アルカリ土類金属の硫酸化合物(例えば、硫酸カルシウム等。)等を用いることができる。前記水と反応して水素を生成する物質としては、例えば、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム等。)、アルカリ金属水素化物(例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化リチウム等。)等を用いることができる。これらの物質は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
また、発熱材料が塩基性材料であれば、水素発生反応に用いられる水に溶解して、高濃度のアルカリ水溶液を形成するので、水素発生物質である金属材料の表面に形成された酸化皮膜を溶解させ、水との反応性を大きくすることができるので好ましい。この酸化皮膜を溶解する反応は、金属材料と水との反応の起点となることもある。特に、発熱材料がアルカリ土類金属の酸化物であれば、塩基性材料でありかつ取り扱いが容易であるのでより好ましい。
【0036】
発熱材料としては、水以外の物質と常温で発熱反応を生じる物質、例えば、鉄粉のように酸素と反応して発熱する物質も知られている。しかし、水素発生材料が、前記酸素と反応する物質と前記水素発生物質である金属材料とを含む場合、反応のために必要とされる酸素は、同時に、金属材料から発生する水素の純度を低下させたり、金属材料を酸化させて水素発生量を低下させたりする等の問題を生じることがある。このため、本実施形態における発熱材料としては、前述のとおり、水と反応して発熱するアルカリ土類金属の酸化物等を用いるのが好ましい。また、同様の理由から、水素発生材料に含まれる発熱材料は、反応時に水素以外の気体を生成しないものが好ましい。
【0037】
水素発生材料全体中における前記した金属材料等の水素発生物質の含有率は、より多くの水素を発生させる観点から、好ましくは85重量%以上、より好ましくは90重量%以上であり、また、発熱材料の併用による効果をより確実にする観点から、好ましくは99重量%以下、より好ましくは97重量%以下である。また、水素発生材料全体中における発熱材料の含有率は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上であって、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
【0038】
発熱材料を含有する水素発生材料は、水素発生物質である金属材料等と発熱材料を混合することにより得ることができる。金属材料と発熱材料との混合の際には、金属材料のみが1mm以上の凝集体にならないようにすることが好ましい。例えば、金属材料と発熱材料を撹拌混合することにより、金属材料が凝集するのを抑制しつつ、水素発生材料を作製することができる。また、金属材料の表面に発熱材料をコーティングして複合化し、水素発生材料としてもよい。
【0039】
次に、発明の実施形態としての水素製造装置、および、この水素製造装置と、水素製造装置で製造された水素を燃料とする燃料電池とを備えた燃料電池システムの具体的な構成について説明する。
【0040】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態として、反応容器内で水素発生材料が水と反応して水素を生成するときにできる反応生成物の量を検出する生成物量検出手段が、反応容器の形状変化を検出するものである場合の例について説明する。第1の実施形態では、反応容器の形状の変化を、圧力センサで検出する場合について説明する。この圧力センサは、反応容器と、反応容器を収容する容器収容部との間の圧力の変化を検出するもので、この圧力の変化から、反応容器の形状変化の度合いを検出するものである。
【0041】
図1は、本実施形態としての水素製造装置100および燃料電池システム200の一例を示す概略構成図である。
【0042】
本実施形態の水素製造装置100は、水との発熱反応により水素を発生する水素発生物質を含む水素発生材料2を収納可能な反応容器1と、反応容器1内に収容された水素発生材料2との発熱反応によって水素を発生させる水5を収容する水収容容器4を有している。また,水収容容器4から反応容器1への水5の供給を行う水供給手段としてのポンプ10,さらに反応容器1内の水素発生材料2が水5と反応して生成された生成反応物の量を検出する生成物量検出手段としての圧力センサ14、反応容器1を収容する容器収容部13、圧力センサ14の出力から反応生成物の量、さらに残存する水素発生材料2を算出して、水素発生材料2から発生させることができる水素の残量を算出する演算手段である制御部11,制御部11で演算された水素の残量を表示する表示部12とを有している。
【0043】
図1では、反応容器1として、本実施形態にかかる水素製造装置を、より小型化する場合に好適な例であるカートリッジ化したものを示している。また、反応容器1と水収容容器4とは、その内部構造を示すために断面図で表している。
【0044】
図1に示すように、燃料カートリッジとした反応容器1は、内部に水素発生材料2を封入したものであり、水素発生材料2に水を供給するための水供給管6と、反応容器1内で発生した水素を外部に取り出すための水素導出管9とを備えている。水供給管6に備えられたマイクロポンプ等のポンプ10により、水供給口7から反応容器1内へ供給された水5は、水素発生材料2と反応して水素を発生させる。この反応により生成した水素は、水素導出口8から、水素導出管9を通じて、水素製造装置100の外部(本実施形態では燃料電池20)に取り出される。
【0045】
反応容器1内では、水素発生材料2の上下に吸水材3が配置されていて、水供給管6の先端の水供給口7は、水素発生材料2の下方に配置された吸水材3内にその開口部が位置するように配置されている。このようにすることで、水供給管6の水供給口7から容器内部に供給された水5の一部は、吸水材3により保持され、残部は水素発生材料2と反応して水素発生の発熱反応が開始される。発生した水素は、水素導出口8から水素導出管9を通じて水素製造装置100外に導出され、例えば燃料電池20の負極に供給される。
【0046】
なお、本発明において、吸水材3は必ずしも必要なものではないが、水素発生の発熱反応による水の消費に応じて、吸水材3により保持された水も水素発生材料2に供給されるため、水素発生速度の時間変動を抑制する上で効果的である。また、吸水材3は、水を吸って保持することのできる材質のものであれば特に限定されるものではなく、一般には脱脂綿や不織布等を用いることができる。
【0047】
本実施形態における反応容器1では、水素発生材料2を、水供給管6の水供給口7により近い側に位置する部分に収容された水素発生材料2aと、水供給管6の水供給口7からの距離がある位置に収容された水素発生材料2bとに分けて収容している。そして、水供給口7により近い位置の水素発生材料2aは、水素発生物質と混合された発熱材料の比率がより高いものとしている。
【0048】
上記したように、水素発生材料として、水素発生物質に発熱材料を混合したものを用いることで、水と水素発生材料の反応の初期において、発熱材料が水との反応によって発熱し、水と水素発生物質との水素生成反応をより速やかに開始させることができる。このとき、水素発生材料を、発熱材料を水素発生物質である金属材料と均一に分散・混合させた混合物として用いてもよいが、本実施形態のように、水供給口7により近い部分に発熱材料の混合割合の高い水素発生材料2aを配置することで、発熱材料が水素生成反応の開始を早めるという効果をより顕著に引き出すことができる。このため、水5を供給し始めてから水素発生物質が加温されるまでの時間をより短くして、より迅速な水素発生を可能とすることができる。
【0049】
なお、図1では図示していないが、水供給管6と水素導出管9には、着脱機構が設けられていて、この着脱機構によって、反応容器1を水素製造装置100の本体部分から分離することができるようになっている。反応容器1内において、水素発生材料2と水5とを反応させて水素を発生させると、反応容器1に収容されている水素発生材料2は反応生成物に変化し、水素を生成する能力を失う。このため、水と反応して反応生成物となった水素発生材料の割合である反応率が高くなっていくと、さらなる水素発生が困難となる。この場合には、着脱機構によって反応容器1を内部の反応率の高くなった水素発生材料2ごと切り離し、新しい水素発生材料2が収容された反応容器1と交換することで、引き続き水素の製造を行うことができるようになる。
【0050】
反応容器1内において、水素発生材料2と水5とを反応させて水素を発生させると、反応容器1に収容されている水素発生材料2は反応生成物に変化し、水収容容器4に収容されている水5は消費されて減少していく。この水素発生材料2が水5と反応することで生じる反応生成物は、水素発生材料2よりも体積が大きくなる。このため、水素発生材料2と水5との反応が進行するのに伴い、水5と未反応の水素発生材料2及び水5と反応して生じた反応生成物とをあわせた全体の体積は単調的に増加する。
【0051】
反応容器1を、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)の等の樹脂製容器、あるいは軟包装容器などの、収容された内容物の体積変化に伴い変形が生じる材料で形成することで、水素発生反応に伴う水素発生材料2と反応生成物との総体積の増加によって、これらが収容されている反応容器1が膨張する。そして、本実施形態の水素製造装置100では、この反応容器1の膨張による形状の変化を、反応容器1と、反応容器1を収容する容器収容部13との間にかかる圧力を、圧力センサ14で検出する。
【0052】
ここで、上述した軟包装容器とは、プラスチックフィルムを主体とした軟質易変形性の袋状本体に口栓を設けたような容器を指す。例えば、口栓付きのガゼット袋など公知の容器を用いることができる。このような容器は、飲料水、液状洗剤、浴用液状石鹸、食用油など、各種流動状物の包装に広く使用されている。
【0053】
水素発生物質2と水5との反応で反応生成物が生成されることで生じる、反応容器1と容器収容部13との間の圧力の変化は、単調的な変化として現れる。このため、圧力変化を測定することで反応生成物の量が検出でき、検出された反応生成物の量から、既に水5と反応して水素を発生した水素発生材料2の割合である反応率を求めることができる。この反応率から、まだ水素発生反応を起こしていない水素発生材料2の割合がわかる。反応容器1内に収容されていた水素発生材料2が発生させることができる水素の総量と、求められた水5と未反応の水素発生材料2との対比から、水素発生材料2が発生させることができる水素量の残量が算出できる。
【0054】
図2は、反応容器1と容器収容部13との間の圧力と、水素発生材料2が発生させることができる水素の残量との関係の例を示したものである。なお、図2では、発生させることができる水素の残量は、反応容器1に収容された水素発生材料2から発生させることができる総水素量に対する割合で示している。図2に示す曲線Fをあらかじめ求めておくことで、反応容器1と容器収容部13との間の圧力から、発生させることができる水素の残量を求めることができる。
【0055】
容器収容部13は、反応容器1を収納可能であり、かつ反応容器1と容器収容部13との間にかかる圧力を正確に測定できるものであれば、その材質や形状は特に限定されない。しかし、収容される反応容器1の温度が100℃程度になることや、反応容器1が水素発生材料2と水5との反応の進行に伴う体積膨張を生じても、変形や破損が生じない材質が好ましい。このような観点から、容器収容部13の材料としては、アルミニウム、鉄等の金属を用いることができる。
【0056】
反応容器1と容器収容部13との間にかかる圧力を測定する圧力センサ14は、実際に反応容器1と容器収容部13との間に生じる圧力のレベルとその変化度合いに基づいて、この圧力変化を検出できるものを適宜選択する。また、圧力センサ14の取り付け位置は、反応容器1と容器収容部13との間の圧力が正確に測定できる場所、たとえば、図1に示すように、水素導出口8に対向する反応容器1の壁面を基準面として、この基準面に対して垂直方向に伸びる垂直壁面と、容器収容部13との間に配置するのが好ましい。もちろん、これは一例であって、反応容器1と容器収容部13との間の圧力の変化を測定できる位置であれば、上記の例に限定されるものではない。
【0057】
制御部11は、圧力センサ14からの出力信号を読み取り、図2に例示した圧力と水素発生残量との相関関係Fに基づいて、水素発生材料2から発生させることができる水素量の残量を検出する。また、本実施形態の水素製造装置100における制御部11は、この水素の残量を演算する演算機能の他にも、ポンプ10に信号を出力して、反応容器1内への水5供給速度と供給時間との制御を行う。このようにすることで、発生できる水素の残量に応じた水の供給を行うことができる。このような機能を有するため、制御部11はマイコン等のプログラミング可能な制御装置を用いることが好ましい。
【0058】
表示部12は、制御部11で演算された水素の残量を表示するモニタである。表示部で、水素製造装置100から発生することができる水素の残量を表示することで、これをユーザーに確実に報知することができ、その結果、利便性の高い水素製造を行うことができる。表示部12は、例えば、液晶ディスプレイ、文字盤、LEDランプなど公知の表示手段を用いることができる。また、表示内容としては、発生できる水素の残量を具体的に表示する以外に、水素の残量に応じて、反応容器1を交換すべきであることを表示することもできる。また、残量の数値と、ユーザーに反応容器1の交換を促す表示との双方を表示してもよい。
【0059】
水供給手段であるポンプ10は、制御部11からの制御信号にしたがって、水の供給量をたとえば、供給速度と供給時間として正確に制御できるのであれば特に限定されない。容易に制御可能であるという点からは、チューブポンプ、ダイヤフラムポンプあるいはシリンジポンプなどの電動ポンプが好ましい。
【0060】
なお、反応容器1に接続された水供給口7と水素導出口8には、容器1内の水5や水素発生材料2が外部に流出しないように、フィルターを設置することが好ましい。このフィルターとしては、気体を通すが液体および固体を通しにくい特性を有するものが好ましく、例えば、多孔性のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の気液分離膜、ポリプロピレン(PP)製の不織布等を用いることができる。
【0061】
容器収容部13の外部には、保温材を配置することが好ましい。保温材によって、水5と水素発生材料2との発熱反応を維持できる温度を保持しやすくなり、また、外気温の影響も受けにくくなる。保温材の材質は、断熱性が高い材質であれば特に限定されず、例えば、発泡スチロール、ポリウレタンフォーム、発泡ネオプレンゴム等の多孔性断熱材、或いは真空断熱構造を有する断熱材等を用いることができる。
【0062】
さらに、水素導出管9には、反応容器1から導出される水素と未反応の水を分離するための気液分離部と、気液分離部で分離された水を水収容容器4に戻す手段とを備えていることが好ましい。反応容器1内において、水素発生材料2と水5とを反応させると、未反応の水5が水素と共に噴き出され、水素導出管9から、水素との混合物として反応容器1の外部へ排出される場合がある。しかし、気液分離部を備えることで、反応容器1から排出された水と水素の混合物を、気液分離部において水(液体)と水素(気体)とに分離し、分離した水を水収容容器4に戻すことができる。そのため、実質的な水の供給量を低減できることから、水収容容器4内に収容しておく水5の量を減らすことが可能となり、水素製造装置100の体積および重量を低減してコンパクトにすることができる。
【0063】
また、さらに、反応容器1から導出された水5と水素の混合物を冷却する為の冷却部を有していることが好ましい。反応容器1の内部が水の沸点に近い温度になり得るため、水素との混合物として排出される水5は、部分的に水蒸気となる。そこで、冷却部を設けることにより、混合物中の水蒸気を冷却して液体の水にして、気液分離部での水の回収率を高めることができる。このため、冷却部は反応容器1と気液分離部との間に設置されることが好ましい。冷却部としては、例えば、金属製冷却フィンが管に接するように配置された構造の冷却手段を用いることができる。さらには、空冷ファンを用いることもできる。
【0064】
本実施形態の燃料電池システム200は、図1に示したように、本実施形態の水素製造装置100と、この水素製造装置100の水素導出管9から水素を流入させ、この水素を燃料として発電する燃料電池20を有している。なお、燃料電池20は、水素を燃料として酸素と反応させる、周知の高分子電解質膜型燃料電池(PEMFC:Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell)などであり、電解質に固体高分子電解質、正極活物質に空気中の酸素、負極活物質に水素燃料を用いるものである。この燃料電池の構成は、一般的なものであるため、図示および詳細な説明は省略する。
【0065】
以上のように、本発明の第1の実施形態として示した水素製造装置100は、簡便で効率よく水素を発生させる利便性の高い水素製造を行うことができる。特に、水素源から発生させることができる水素量の残量を検出することが可能となり、コードレス機器等の使用に適した水素製造装置を提供することができる。また、このような水素製造装置を備えた燃料電池システム200は、小型ができ、かつ、十分な連続使用時間を実現できるため、ポータブル機器の電源としての要求に応えた電源とすることができる。
【0066】
(実施の形態2)
次に、反応容器内で水素発生材料が水と反応して水素を生成するときにできる反応生成物の量を検出する生成物量検出手段が、反応容器の形状変化を検出するものである場合の他の例として、反応容器1の形状の変化を、反応容器の寸法の変化で検出する場合について説明する。
【0067】
図3は、本実施形態としての水素製造装置100および燃料電池システム200の一例を示す概略構成図である。本実施形態の水素製造装置100は、第1の実施形態として図1で示したものと、生成物量検出手段として反応容器の形状の変化を検出する手段が、反応容器の寸法の変化を計測するものである点のみが異なる。このため、水収容器4、水供給手段10、制御部11および表示部12と、発生した水素を利用する燃料電池20などは、図1に示したものと同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0068】
図3に示す、第2の実施形態の水素製造装置100は、反応容器1に、その寸法の変化を検出するひずみセンサ21が設けられている。また、上記第1の実施形態の水素製造装置100に用いられていた、反応容器1を収容する容器収容部13は用いられていない。
【0069】
本実施形態においても、反応容器1を、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)の等の樹脂製容器、あるいは上記実施の形態1で用いた軟包装容器などの、収容された内容物の体積変化に伴い変形が生じる材料で形成することで、水素発生反応に伴う水素発生材料2と反応生成物との総体積の増加によって、収容されている反応容器1が膨張する。そして、第2の実施形態にかかる水素製造装置100では、この反応容器1の膨張による形状の変化を、反応容器1の側面に貼着したひずみセンサ21で検出する。
【0070】
具体的には、水素発生物質2と水5との反応で反応生成物が生成されることで生じる、反応容器1の形状変化をあらかじめ測定しておき、それが貼着したひずみセンサ21にどのように現れるかを測定しておく。そして、ひずみセンサ21の指標と、水素発生材料2で発生することのできる水素の残量との関係を、図2で示したような相関関係を示すグラフとしておくことで、ひずみセンサ21の指標から発生させることができる水素の残量を制御部11で演算することができる。
【0071】
なお、このひずみセンサの指標と、発生させることができる水素の残量との関係は、水素発生材料2の種類や量、反応容器の材質や大きさおよび形状、ひずみセンサの種類や貼着位置などによって異なるものであり、適宜、実際の測定条件にあわせた相関関係を求めておくことが必要となる。なお、水素発生材料2の種類や、水素発生材料中の発熱材料の量などは、上記実施の形態1のものと同じものを用いることができる。
【0072】
本実施形態で、反応容器1の形状の変化を検出するひずみセンサは、たとえば測定対象の形状の変化に伴うセンサ自体の変形により、抵抗体であるセンサの抵抗値が変化し、この抵抗値の変化をホイートストンブリッジなどで求めて、形状変化の大きさを数値化できるものなどが好適に利用できる。また、反応容器の寸法の変化を測定できるその他方法のひずみセンサを用いることができる。
【0073】
以上の通り、本発明の第2の実施形態の水素製造装置100も、簡便で効率よく水素を発生させる利便性の高い水素製造を行うことができ、かつ、水素源から発生させることができる水素量の残量を検出することが可能なものである。このため、コードレス機器等の電源である燃料電池20の、燃料である水素を発生させることに適した水素製造装置を提供することができる。
【0074】
(実施の形態3)
次に、反応容器内で水素発生材料が水と反応して水素を生成するときにできる反応生成物の量を検出する生成物量検出手段が、重量センサである場合について、本発明の第3の実施形態として説明する。
【0075】
図4は、本実施形態としての水素製造装置100および燃料電池システム200の一例を示す概略構成図である。本実施形態の水素製造装置100は、第1の実施形態、および、第2の実施形態で示した水素製造装置100と、生成物量検出手段が異なるのみであり、水収容器4自体、水供給手段10、制御部11および表示部12と、発生した水素を利用する燃料電池20などは、図1または図3に示したものと同じである。よって、この共通する部分についての詳細な説明は省略する。
【0076】
図4は、本実施形態としての水素製造装置100および燃料電池システム200の一例を示す概略構成図である。本実施形態の水素製造装置100は、生成物量検出手段が反応容器1の重量の変化を検出する手段が設けられている点が異なる。
【0077】
図4に示す、第3の実施形態の水素製造装置100は、反応容器1の下側に、その重量を検出する重量センサ31が設けられている。また、上記第1の実施形態の水素製造装置100に用いられていた、反応容器1を収容する容器収容部13は用いられていない。
【0078】
本実施形態においては、水素発生材料2と水5との反応により生じる反応生成物の量を、反応容器1と、その内部に収容された水素発生材料2と、供給された水5と、反応の結果生成された反応生成物と、その他吸水材3などの、反応容器1全体の重量を測定することで求めるものである。
【0079】
このように、本実施形態の水素製造装置の反応容器1は、上記実施の形態1および2で示したように、水素発生材料2と反応生成物との総体積が増加することで、反応容器1が膨張変形するものである必要はない。したがって、反応容器1の材質としては、上記第1および第2の実施形態として示した、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)の等の樹脂製容器、あるいは上記した軟包装容器以外にも、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属も好適に用いることができる。本実施形態の場合の反応容器1は、水および水素を透過しにくく、かつ100℃程度に温度が上昇しても容器が破損しない、という観点から容器の材質を選択することができる。
【0080】
水素発生材料2が水5と反応することで生じる反応生成物は、通常、水素発生材料2よりも重量が大きい。そのため、水素発生材料2と水5との反応が進行するに伴い、水5と未反応の水素発生材料2と、水5と反応して生じた反応生成物との総重量は単調的に増加する。このため、水素発生材料2と反応生成物とを収容した反応容器1の重量を測定することにより、未反応の水素発生材料2の割合が演算でき、水素発生材料2から発生させることができる水素の残量を算出することが可能となる。
【0081】
このことを利用して、本実施形態の水素製造装置100では、水素発生反応により生成された反応生成物を、反応容器1自体,反応容器1に収容された水素発生材料2、水供給手段であるポンプ10によって反応容器1に供給された水5、そして発生した反応生成物をあわせた、容器全体の重量を測定することで、反応生成物の量を検出するものである。具体的には、水素発生材料2と水5との反応の開始時点から終了時点までの、反応容器1全体の重量を測定しておき、重量と水素発生材料2で発生することのできる水素の残量との関係を、図2で示したような相関関係を示すグラフとして表すことで、反応容器1の全体の重量から、水素発生材料で発生させることができる水素の残量を演算することができる。
【0082】
反応容器1全体の重量を測定する重量センサ31としては、小型化された周知のセンサを用いることができる。なお、重量センサ31の出力は、演算手段11において、水素発生材料から発生させることができる水素の残量として演算される必要があるため、測定された重量の値を電気信号として出力できるセンサが好ましい。
【0083】
重量センサ31の取り付け位置としては、反応容器1の重量が測定できるよう、その鉛直方向下方であれば、特に限定されない。さらに、反応容器1の重量を正確に測定するため、水供給管6および水素導出管9の反応容器1と接続される部分には、重量測定に影響しないように、ある程度の長さを有するチューブを接続することが好ましい。
【0084】
次に、本実施形態の水素製造装置の異なる例として、水素発生材料2と水との水素発生反応により生成される反応生成物の量を、重量センサで測定する別の方法である、水5を収容している水収容容器4の重量を測定する方法について説明する。
【0085】
一定レベルの範囲内で安定した、水素発生材料と水との水素発生のための反応が行われた場合には、水素発生材料2が水5と反応して生成される反応生成物は、反応に用いられる水の量と相関関係を有する。このため、水収容容器4の重量を重量センサで測定して、収容されている水の重量(残量)を測定することにより、水素発生材料2に供給された水の量が検出できる。その結果、生成された反応生成物量が検出でき、未反応な水素発生材料から発生させることができる水素量の残量を演算することが可能となる。
【0086】
なお、この場合において、水収容容器4の重量を測定する重量センサは、本実施形態において、反応容器1の重量を測定した重量センサ31と同じものを用いることができる。また、重量センサを設ける位置や、水供給管6の水供給装置との接続部分にチューブを用いることが好適なことも、反応容器1の重量を測定する場合と同様である。
【0087】
以上の通り、本発明の第3の実施形態の水素製造装置100も、簡便で効率よく水素を発生させる利便性の高い水素製造を行うことができ、かつ、水素源から発生させることができる水素量の残量を検出することが可能なものである。このため、コードレス機器等の電源である燃料電池の、燃料である水素を発生させることに適した水素製造装置を提供することができる。
【0088】
以上、本発明の水素製造装置100と、燃料電池システム200の構成について、図1〜図4を用いて具体的に説明したが、図1〜図4で示したものは、本発明の水素製造装置100と燃料電池システム200の一例を示すものに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0089】
(実施例)
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0090】
(実施例1)
実施例1として、図5に、反応容器1とこれを収容する容器収容部13の構成図を示した、水素製造装置100を作製した。
【0091】
水素発生物質として平均粒径6μmのアルミニウム粉末1.0gと、発熱材料として平均粒径3μmの酸化カルシウム粉末1.0gとを乳鉢で混合して、水素発生材料Aを作製した。また、水素発生物質として前記アルミニウム粉末71.7gと、発熱材料として前記酸化カルシウム粉末9.1gとを乳鉢で混合して、水素発生材料Bを作製した。
【0092】
次に、厚さが2mmのポリエチレン製の反応容器1として、外形寸法が縦48mm、横48mm、高さ62mm、内容積130cm3のものを用意し、内部に、前記水素発生材料Aを図5に示す水素発生材料2aとして、また、前記水素発生材料Bを水素発生材料2bとして充填した。さらに、前記水素発生材料Bの上方に、吸水材3aとして脱脂綿を0.3g、下方には、吸水材3bとして脱脂綿を0.1g入れた。
【0093】
次に、水を供給するためのアルミニウム製の水供給管6(内径2mm、外径3mm)を図5に示したようにその先端の水供給口7が水素発生材料2の下方に配置された吸水材3bに到達するように配置した。また、水素を導出させるアルミニウム製の水素導出管9(内径3mm、外径4mm)を有する図示しないシリコン栓で蓋をして、水素発生材料A、Bを内部に充填した反応容器1を得た。
【0094】
また、厚さ1mmのSUS板製で形成した容器収容部13の中に、反応容器1を収容し、反応容器1と容器収容部13との間に掛かる圧力を測定できるように、断面積100mm2の反加圧プレート14a、圧力センサ14b、ばね定数2N/mmの圧縮バネ14cを一体となるように配置した。
【0095】
次に、水供給管6から、図示しないポンプを用いて、純水を、最初は0.8ml/minの速度で送り出し、その後、反応容器1の温度が60℃を超えた以降は、水の供給速度を1.0ml/minとして、反応容器1内に水を供給した。室温25℃において、水素が発生しなくなるまで水を供給し、水素導出管9から水素を導出させた。なお、ポンプにより供給される水が、水供給管6の先端の水供給口7に到達した時点を試験開始時刻とした。
【0096】
試験開始から、150分経過した際における反応容器1と容器収容部13との間にかかる圧力を測定したところ、反応が開始する前の0MPaから0.06MPaに変化していた。その結果、予め求めておいた水素量の残量と反応容器1と容器収容部13との間にかかる圧力との関係を表す、図2に示したグラフFに基づき、発生させることができる水素の残量は65%と求まった。この結果は、マスフローメータ(一例として、株式会社コフロック製の「MODEL 8100SERIES(製品名)」)などの流量計によって計測した水素量の残量と一致したことから、精度良く発生させることのできる水素の残量を検出することができたことがわかった。
【0097】
(実施例2)
実施例1と同様にして、反応容器1を作成した。また、生成物量検出手段として、反応容器1の形状変化を反応容器の寸法の変化を測定するひずみセンサ21ガイドを、図3のように配置した。なお、これ以外は、実施例1と同様にして作製した反応容器1を用いて、実施例1と同様にして水素を発生させた。
【0098】
試験開始から、150分経過した際におけるひずみセンサ21の指標をもとに、予め求めておいた水素量の残量とひずみセンサ21の指標との関係を表すグラフに基づき、水素量の残量は65%と求まった。この結果は、マスフローメータなどの流量計によって計測した水素量の残量と一致したことから、精度良く発生させることのできる水素の残量を検出することができたことがわかった。
【0099】
(実施例3)
実施例1と同様にして、反応容器1を作成した。また、生成物量検出手段として、反応容器1の鉛直方向下部に、秤量器を配置した。なお、これ以外は、実施例1と同様にして作製した反応容器1を用いて、実施例1と同様にして水素を発生させた。
【0100】
試験開始から、150分経過した際における反応容器1の重量を測定したところ、反応前の135gから185gに変化していた。その結果をもとに、予め求めておいた水素量の残量と反応容器1の重量との関係を表すグラフに基づき、水素量の残量は65%と求まった。この結果は、マスフローメータなどの流量計によって計測した水素量の残量と一致したことから、精度良く発生させることのできる水素の残量を検出することができたことがわかった。
【0101】
(実施例4)
実施例1と同様の水素製造装置を用い、発生した水素を燃料電池に供給して発電を行った。実験には、電極面積22cm2の単位セルを6セル直列に接続して構成された固体高分子形燃料電池を用いた。負荷を接続して、3.9Vの定電圧で放電を行った結果、約14Wという高い出力が得られ、本発明の水素製造装置が、小型、可搬型燃料電池の燃料源として有効であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0102】
以上のように本発明の水素製造装置は、発生させることが可能な水素の残量を検出することができる水素製造装置として、産業上幅広く利用可能である。また、この水素製造装置と、水素を燃料とする燃料電池を備えた燃料電池システムは、小型携帯機器用の電源をはじめとして幅広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の実施形態1としての水素製造装置、および、燃料電池システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態1としての水素製造装置における、反応容器と容器収容部との間にかかる圧力と、発生させることができる水素の残量との関係を示す図である。
【図3】本発明の実施形態2としての水素製造装置、および、燃料電池システムの概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態3としての水素製造装置、および、燃料電池システムの概略構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施例1としての水素製造装置における、反応容器とその周辺部分を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0104】
1 反応容器
2 水素発生材料
3 吸水材
4 水収容容器
5 水
10 ポンプ(水供給手段)
11 制御部(演算手段)
12 表示部
13 容器収容部
14 圧力センサ(生成物量検出手段)
20 燃料電池
100 水素製造装置
200 燃料電池システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水との発熱反応により水素を発生する水素発生物質を含む水素発生材料を収容可能な反応容器と、
前記反応容器に水を供給する水供給手段と、
前記水素発生材料が前記反応容器内で水と反応して生成される反応生成物の量を検出する生成物量検出手段と、
前記生成物量検出手段での検出結果から、前記水素発生材料から発生させることができる水素の残量を算出する演算手段とを備えたことを特徴とする水素製造装置。
【請求項2】
前記生成物量検出手段が、前記反応容器の形状変化を検出するものである請求項1に記載の水素製造装置。
【請求項3】
前記反応容器の形状変化を、前記反応容器と、前記反応容器を収容する容器収容部との間の圧力の変化で検出する請求項2に記載の水素製造装置。
【請求項4】
前記反応容器の形状変化を、前記反応容器の大きさの変化で検出する請求項2に記載の水素製造装置。
【請求項5】
前記生成物量検出手段が、前記反応容器の重量変化を検出するものである請求項1に記載の水素製造装置。
【請求項6】
前記生成物量検出手段が、前記反応容器に供給される水の量を、前記水が収容される水収容容器の重量により検出するものである請求項1に記載の水素製造装置。
【請求項7】
前記水素発生材料に含まれる前記水素発生物質が、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウムおよびこれらの元素を主体とする合金からなる群より選択された少なくとも1種以上の金属材料である請求項1から6のいずれか1項に記載の水素製造装置。
【請求項8】
前記水素発生材料が、前記水素発生物質以外に水と反応して発熱する発熱材料をさらに含んでいる請求項1から7のいずれか1項に記載の水素製造装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の水素製造装置と、
前記水素製造装置で製造された水素を用いて発電を行う燃料電池とを備えたことを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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