説明

水素製造装置及び燃料電池システム

【課題】 バーナにおいて液体燃料を気化させるための電気ヒータの使用を抑制することができる水素製造装置、及びそのような水素製造装置を備える燃料電池システムを提供する。
【解決手段】 水素製造装置1では、燃焼筒11の上端部11aにフランジ24が一体的に設けられている。更に、燃焼筒11の下端部11bから排出された排ガスが燃焼筒11の外面11cに接触するように燃焼ガス流路L1が形成されている。これらにより、バーナ10の燃焼時には、燃焼筒11及びフランジ24を介してバーナ10の気化部38に、バーナ10の火炎Fや排ガスの熱が効率良く伝達される。そのため、気化部38の温度は、確実に気化温度(バーナ燃料が気化する温度)となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質触媒を用いて原燃料を改質し、水素を含有する改質ガスを生成する水素製造装置、及びそのような水素製造装置を備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野の水素製造装置において、アルコール類、ナフサ、バイオ燃料、軽油、灯油等の液体燃料を改質用の原燃料として用いるものでは、水素製造装置に充填されている改質触媒等の触媒をバーナで加熱するに際し、起動運転時には、燃焼用の燃料として前述の液体燃料がバーナに供給されて、燃焼させられる。また、定常運転時には、水素製造装置で生成された改質ガスがセルスタックに供給され、セルスタックでの発電に用いられなかった水素を含有する改質ガスが、燃焼用の燃料としてバーナに供給され、単独で、或いは前述の液体燃料と共に燃焼させられる。このような水素製造装置のバーナでは、液体燃料を気化して燃焼する必要があり、そのために電気ヒータが用いられる場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−281307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したようなバーナにあっては、液体燃料を気化させるために、常時、電気ヒータが使用されることになると、多くの電力が消費されてしまい、燃料電池システムで発電された電気が無駄に消費されてしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、バーナにおいて液体燃料を気化させるための電気ヒータの使用を抑制することができる水素製造装置、及びそのような水素製造装置を備える燃料電池システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る水素製造装置は、改質触媒を用いて原燃料を改質し、水素を含有する改質ガスを生成する水素製造装置であって、改質触媒を加熱するバーナと、バーナの火炎を囲む燃焼筒と、燃焼筒の一端部に一体的に設けられ、バーナを支持するバーナ支持部と、燃焼筒の他端部から排出された燃焼ガスが燃焼筒の外面に接触するように形成された燃焼ガス流路と、を備え、バーナには、燃焼用の液体燃料が供給される液体燃料供給部が設けられており、液体燃料供給部は、バーナの燃焼時に液体燃料が気化する温度となるようにバーナ支持部と熱的に接続されていることを特徴とする。
【0007】
この水素製造装置では、燃焼筒の一端部にバーナ支持部が一体的に設けられている。更に、燃焼筒の他端部から排出された燃焼ガスが燃焼筒の外面に接触するように燃焼ガス流路が形成されている。これらにより、バーナの燃焼時には、燃焼筒及びバーナ支持部を介してバーナの液体燃料供給部に効率良く熱が伝達される。従って、この水素製造装置によれば、バーナにおいて液体燃料を気化させるための電気ヒータの使用を抑制することができる。
【0008】
ここで、燃焼ガス流路は、燃焼筒のうち一端部側の第1の部分を除く他端部側の第2の部分の外面に燃焼ガスが接触するように形成されていることが好ましい。このように、燃焼筒のうち他端部側の第2の部分の外面に燃焼ガスを接触させることで、液体燃料供給部の温度を、液体燃料が気化する温度に調整し易くなる。更に、熱が効率良く伝達するので、液体燃料供給部の温度を高温とすることが可能となる。
【0009】
また、液体燃料供給部は、空気の導入によって霧状化された液体燃料が接触させられる気化部を有することが好ましい。上述したように、液体燃料供給部の温度が、確実に液体燃料が気化する温度となるため、気化部において液体燃料を確実に気化させることができる。
【0010】
或いは、液体燃料供給部は、滴下された液体燃料が接触させられる気化部、及び気化部に対して上側に凸状となるように形成された凸部を有し、凸部には、気化部において気化させられた液体燃料が空気と共に流通する流路が形成されていることが好ましい。この場合にも、液体燃料供給部の温度が、確実に液体燃料が気化する温度となるため、気化部において液体燃料を確実に気化させることができる。
【0011】
このとき、気化部は、凸部を囲むように形成されており、凸部の上側には、滴下された液体燃料を受ける受け部材が配置されていることが好ましい。この場合、液体燃料が凸部の流路に直接的に流入することを防止し、凸部を囲む気化部に液体燃料を分散されることができる。
【0012】
また、バーナは、カーボン、炭素鋼、鉄合金、アルミニウム及び銅の少なくとも一つを含む材料からなるガスケットを介して、バーナ支持部に気密に固定されていることが好ましい。この場合、バーナとバーナ支持部との気密性を保持しつつ、燃焼筒及びバーナ支持部を介してバーナの液体燃料供給部に効率良く熱を伝達させることができる。
【0013】
また、バーナ支持部の少なくとも一部、燃焼筒の少なくとも一部、及び燃焼ガス流路の少なくとも一部は、断熱部材によって保温されていることが好ましい。この場合、燃焼筒及びバーナ支持部を介してバーナの液体燃料供給部に伝達する熱が外部に逃げるのを抑制し、液体燃料供給部の温度を、確実に液体燃料が気化する温度とすることができる。
【0014】
また、本発明に係る燃料電池システムは、本発明に係る水素製造装置と、水素製造装置によって生成された改質ガスを用いて発電を行う燃料電池スタックと、を備えることを特徴とする。この燃料電池システムは、上述した本発明に係る水素製造装置を備えているので、バーナにおいて液体燃料を気化させるための電気ヒータの使用を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、バーナにおいて液体燃料を気化させるための電気ヒータの使用を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態の燃料電池システムのブロック図である。
【図2】図1の水素製造装置の端面図である。
【図3】図1の水素製造装置のバーナ周辺部の断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の水素製造装置のバーナ周辺部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1の実施形態]
【0018】
図1に示されるように、燃料電池システム100は、原燃料として、アルコール類、ナフサ、バイオ燃料、軽油、灯油等の液体燃料を使用する水素製造装置(FPS:Fuel Processing System)1と、固体高分子形のセルスタック(燃料電池スタック)20と、を備えている。水素製造装置1は、原燃料として石油系炭化水素を改質触媒で改質し、水素を含有する改質ガスを生成する。セルスタック20は、水素製造装置1によって生成された改質ガスを用いて発電を行う。
【0019】
なお、原燃料としては、アルコール類、エーテル類、バイオ燃料、天然ガス、都市ガス等を用いてもよい。また、石油系炭化水素としては、灯油、LPガスの他、ナフサ、軽油等を原燃料として使用することができる。また、セルスタック20は、固体高分子形に限定されず、アルカリ電解質形、リン酸形、溶融炭酸塩形或いは固体酸化物形等であってもよい。
【0020】
図1及び図2に示されるように、水素製造装置1は、中心軸を軸Gとする円筒状の外形を有する脱硫部2と、中心軸を軸Gとする円柱状の外形を有する本体部3と、を備えている。脱硫部2及び本体部3は、筐体4内に収容されている。なお、筐体4内において脱硫部2及び本体部3の周囲には、粉状の断熱材が充填されている。
【0021】
脱硫部2は、外部から導入された原燃料を脱硫触媒によって脱硫し、原燃料から硫黄分を除去する。脱硫部2は、所定の隙間を隔てて本体部3の上部を囲んだ状態で、筐体4の側板4xにパイプ21によって固定されている。本体部3は、フィード部5、改質部6、シフト反応部7、選択酸化反応部8及び蒸発部9を有している。本体部3は、一体的に構成されており、筐体4の床板4yにステー22によって固定されている。
【0022】
フィード部5は、脱硫部2で硫黄分が除去された原燃料及び水蒸気を混合し、これらを改質部6に供給する。フィード部5は、原燃料の気化ガスと水蒸気とを混合して混合ガスを生成する混合部5x、及び混合ガスを改質部6へ流通させる混合ガス流通管5yと、を含んでいる。
【0023】
改質部(SR:Steam Reforming)6は、フィード部5によって供給された混合ガスを改質触媒6xによって水蒸気改質して改質ガスを生成する。改質部6は、中心軸を軸Gとする円筒状の外形を有しており、脱硫部2の筒内に位置するように本体部3の上端側に設けられている。改質部6においては、水蒸気改質反応が吸熱反応であるため、改質部6の改質触媒6xを加熱するための熱源としてバーナ10が利用されている。バーナ10は、バーナ10の火炎を囲む燃焼筒11の上端部に設置されている。燃焼筒11は、中心軸を軸Gとし、改質部6の筒内に位置するように本体部3の上端側に設けられている。
【0024】
シフト反応部7は、改質部6から供給された改質ガスの一酸化炭素濃度(CO濃度)を低下させるためのものである。具体的には、シフト反応部7は、改質ガス中の一酸化炭素をシフト反応させて水素及び二酸化炭素に転換する。シフト反応部7は、シフト反応を2段階に分けて行うために、高温シフト反応部(HTS:High Temperature Shift)12及び低温シフト反応部(LTS:Low Temperature Shift)13を有している。なお、シフト反応部7は、シフト反応を高温シフト反応と低温シフト反応との2段階に分けて行うものに限定されず、例えば、低温シフト反応のみを行うものであってもよい。
【0025】
高温シフト反応部12は、改質部6から供給された改質ガス中の一酸化炭素を高温シフト触媒12xによって高温シフト反応させ、改質ガスのCO濃度を低下させる。高温シフト反応部12は、中心軸を軸Gとする円筒状の外形を有しており、高温シフト触媒12xが改質触媒6xの下端部を囲むように改質部6の径方向外側に配置されている。
【0026】
低温シフト反応部13は、高温シフト反応部12から供給された改質ガス中の一酸化炭素を低温シフト触媒13xによって低温シフト反応させ、改質ガスのCO濃度を更に低下させる。低温シフト反応部13は、中心軸を軸Gとする円筒状の外形を有しており、本体部3の下端側に配置されている。
【0027】
選択酸化反応部(PROX:Preferential Oxidation)8は、低温シフト反応部13から改質ガス流通管14xを介して供給された改質ガス中のCO濃度を更に低下させる。これは、セルスタック20に高濃度の一酸化炭素を供給すると、セルスタック20の触媒が被毒して、大きく性能低下するためである。選択酸化反応部8は、具体的には、空気流通管15を介して導入された空気を用いて改質ガス中の一酸化炭素を選択酸化触媒8xで選択的に酸化し、二酸化炭素に転換する。選択酸化反応部8は、中心軸を軸Gとする円筒状の外形を有しており、選択酸化触媒8xが低温シフト触媒13xの上端部を囲むように低温シフト反応部13の径方向外側に配置されている。
【0028】
選択酸化反応部8でCO濃度が更に低下させられた改質ガスは、熱交換部16が設けられた改質ガス流通管14yを介してセルスタック20に導出される。熱交換部16は、改質ガス流通管14y内を流通する改質ガスから、水流通管17xを介して外部から導入された水へ、熱を移動させる。熱交換部16で加熱された水は、水流通管17yを介して蒸発部9に供給される。
【0029】
蒸発部9は、熱交換部16から供給された水を内部に貯留し、シフト反応部7及び選択酸化反応部8を冷却する。蒸発部9は、ジャケット型のものであり、中心軸を軸Gとする円筒状の外径を有しており、高温シフト反応部12及び低温シフト反応部13の径方向外側且つ選択酸化反応部8の径方向内側(つまり、シフト反応部7と選択酸化反応部8との間)に位置するように配置されている。蒸発部9内に貯留された水は、シフト反応部7及び選択酸化反応部8からの熱の移動によって加熱されて徐々に気化する。蒸発部9内で発生した水蒸気は、水流通管17zを介してフィード部5の混合部5xに供給される。
【0030】
以上のように構成された水素製造装置1及び燃料電池システム100では、まず、外部から導入された原燃料がバーナ燃料としてバーナ10に供給され、バーナ燃料の気化ガスと空気との混合ガスが燃焼させられる。この燃焼により、改質触媒6xが加熱される。ここで、バーナ10の排ガス(燃焼ガス)は、燃焼ガス流路L1及びガス配管18を介して外部へ排気される。なお、外部から導入された原燃料を脱硫部2で脱硫した後に、バーナ燃料としてバーナ10に供給するようにしてもよい。
【0031】
その一方で、外部から導入された原燃料が脱硫部2によって脱硫され、混合部5xに供給される。混合部5xでは、脱硫された原燃料の気化ガスと、蒸発部9から導入された水蒸気とが混合され、この混合ガスが混合ガス流通管5yを介して改質部6に供給される。改質部6では、供給された混合ガスが改質触媒6xで水蒸気改質されて改質ガスが生成される。そして、生成された改質ガスの一酸化炭素濃度がシフト反応部7及び選択酸化反応部8で低下させられる。その後、改質ガスは、熱交換部16で冷却されて、セルスタック20に導出される。
【0032】
セルスタック20では、水素製造装置1から導入された改質ガスが用いられて、発電が行われる。ここで、セルスタック20のオフガス(セルスタック20で発電反応に使用されなかった残ガス)は、バーナ10に供給され、バーナ燃料と共に或いは単独で燃焼用の燃料として使用される。具体的には、水素製造装置1の起動時には、バーナ燃料が燃焼用の燃料として使用され、水素製造装置1の定常運転時には、オフガス及びバーナ燃料の両方、或いはオフガスのみが、燃焼用の燃料として使用される。
【0033】
なお、水素製造装置1においては、例えば各触媒6x,12x,13x,8xにて触媒反応を好適に行うため、次のように各部位の温度が設定されている。すなわち、改質部6に流入する混合ガスの温度が約300℃〜550℃とされ、改質部6から流出する改質ガスの温度が550℃〜800℃とされ、高温シフト反応部12に流入する改質ガスの温度が400℃〜600℃とされ、高温シフト反応部12から流出する改質ガスの温度が300℃〜500℃とされている。また、低温シフト反応部13に流入する改質ガスの温度が150℃〜350℃とされ、低温シフト反応部13から流出する改質ガスの温度が150℃〜250℃とされ、選択酸化反応部8に流入する改質ガスの温度が90℃〜210℃(120℃〜190℃)とされている。
【0034】
次に、水素製造装置1のバーナ10周辺部の構成について、より詳細に説明する。図3に示されるように、バーナ10は、中心軸を軸Gとする円柱状のバーナボディ31を有している。バーナボディ31の下端部には、フランジ32が一体的に形成されている。バーナボディ31には、中心軸を軸Gとする円筒状のバーナカップ33が、下方に向かって延在するように固定されている。なお、バーナボディ31及びフランジ32は、炭素鋼、銅、鉄合金(ステンレス鋼を含む)、アルミニウム合金の少なくとも一つを含む伝熱性の高い金属材料からなる。また、バーナカップ33は、ステンレス鋼等の金属材料からなる。
【0035】
バーナカップ33は、燃焼筒11内に配置されている。バーナボディ31のフランジ32は、カーボン、炭素鋼、鉄合金、アルミニウム及び銅の少なくとも一つを含む伝熱性の高い材料からなるガスケット23を介して、フランジ(バーナ支持部)24にボルト等で気密に固定されている。フランジ24は、燃焼筒11の上端部(一端部)11aに一体的に設けられ、バーナ10を支持している。なお、燃焼筒11及びフランジ24は、炭素鋼、鉄合金、ニッケル合金等の金属材料からなる。
【0036】
バーナボディ31内には、気化室34、バーナ燃料流路35及び空気流路36が形成されている。バーナ燃料流路35は、上方からバーナボディ31内に進入し、ノズル37を介して気化室34に至っている。空気流路36は、側方からバーナボディ31内に進入し、気化室34を経由する一次空気と、バーナカップ11内の空気流路46を流れる二次空気とに分配される。空気流路36の中心線は、ノズル37のバーナ燃料噴出口と略一致しており、空気によりバーナ燃料(アルコール類、ナフサ、バイオ燃料、軽油、灯油等の液体燃料液体、この一例では、原燃料)が霧状に噴霧される。
【0037】
バーナボディ31において気化室34を構成する壁部である気化部(液体燃料供給部)38には、電気ヒータ39が埋設されている。水素製造装置1の起動時には、電気ヒータ39が使用されて、バーナ燃料が気化する温度(以下、「気化温度」という)に、気化室34を構成する気化部38が加熱される。これにより、気化室34においては、空気の導入によって霧状化されたバーナ燃料が気化部38に接触させられて、気化させられる。なお、気化温度は、バーナ燃料が灯油の場合、例えば、130℃〜280℃である。
【0038】
バーナカップ33内には、気化室34と連通する混合室41が形成されている。気化室34から混合室41に導入されるバーナ燃料の気化ガス及び一次空気は、気化部38等によって予熱されつつ混合されて混合ガスとなる。その混合ガスは、混合室41の下端部に取り付けられた炎孔板42からその下側の燃焼部43に噴出する。なお、気化室34と混合室41とを連通する流路の方向は、気化部38によって転換させられている。これにより、バーナ燃料の気化ガスと一次空気との混合の均一化が図られる。また、混合室41の中間部は、その径が絞られてオリフィスを構成している。これにより、炎孔板42に至る混合ガスの整流化が図られる。
【0039】
バーナボディ31及びバーナカップ33内には、オフガス流路44が形成されている。オフガス流路44は、空気流路36と対向するようにバーナボディ31の側方から進入し、下方に延在している。オフガス流路44の下端部は、燃焼部43を囲むように形成されている。オフガス流路44によってセルスタック20からバーナ10に導入されたオフガスは、燃焼部43の周囲から燃焼方向(すなわち、軸Gの延在方向)に対して略垂直に燃焼部43に噴出する。
【0040】
燃焼部43には、イグナイタ45の先端部が位置している。炎孔板42から噴出した混合ガス(場合によっては、オフガス流路44の下端部から噴出したオフガス)は、イグナイタ45によって着火され、燃焼筒11内において燃焼させられる。なお、バーナ10の火炎Fの周囲から燃焼方向に対して略垂直に火炎Fにオフガスが供給されるため、火炎Fの安定化が図られる。
【0041】
バーナボディ31及びバーナカップ33内には、空気流路36から分岐して下方に延在する空気流路46が形成されている。空気流路46は、気化室34及び混合室41を囲むように形成され、バーナカップ33の下端部に至っている。空気流路36から空気流路46に流入した空気は、オフガス流路44の下端部の下側において、燃焼部43の周囲から燃焼方向に対して略垂直に燃焼部43に噴出し、二次空気として、バーナ10の火炎Fに供給される。これにより、バーナ10の火炎Fの安定化及びバーナ燃料の完全燃焼化が図られる。
【0042】
水素製造装置1においては、中心軸を軸Gとする円筒25〜28が燃焼筒11を囲むように配置されている。円筒28の上端部は、燃焼筒11の側方に位置し、燃焼筒11の外面11cと円筒28の上端部との間には、円環板状の上板51が固定されている。円筒25の上端部及び円筒27の上端部は、上板51の下方に位置し、円筒25の上端部と円筒27の上端部との間には、円環板状の上板52が固定されている。円筒26の上端部は、円筒25の側方に位置し、円筒25の外面と円筒26の上端部との間には、円環板状の網状部材53が固定されている。
【0043】
これにより、燃焼筒11と円筒25との間、上板51と上板52との間、及び円筒27と円筒28との間が、燃焼ガス流路L1の一部となる。また、円筒25と円筒26との間に改質触媒6xが配置され、円筒25と円筒26との間が改質部6となる。なお、改質触媒6xの下端部も、網状部材53と同様の部材によって保持されている。更に、上板52と網状部材53との間、及び円筒26と円筒27との間が、改質ガス流路L2の一部となる。
【0044】
従って、燃焼ガス流路L1は、燃焼筒11の下端部(他端部)11bから排出された排ガスを燃焼筒11の外面11cに接触させる。具体的には、燃焼ガス流路L1は、燃焼筒11において上端部11aを含む第1の部分11と下端部11bを含む第2の部分11との境界位置において外側から下側へと折り返されおり、燃焼筒11のうち上端部11a側の第1の部分11を除く下端部11b側の第2の部分11の外面11cに排ガスを接触させる。
【0045】
このとき、第1の部分11と第2の部分11との比率は、バーナ10において電気ヒータ39が使用されていない状態で、バーナ10の燃焼時に気化室34の温度が気化温度となるように設定されている。換言すれば、気化室34は、バーナ10において電気ヒータ39が使用されていない状態で、バーナ10の燃焼時に気化室34の温度が気化温度となるように、バーナボディ31のフランジ32及びガスケット23を介して、燃焼筒11の上端部11aに一体的に設けられたフランジ24と熱的に接続されている。
【0046】
以上説明したように、第1の実施形態の燃料電池システム100の水素製造装置1では、燃焼筒11の上端部11aにフランジ24が一体的に設けられている。更に、燃焼筒11の下端部11bから排出された排ガスが燃焼筒11の外面11cに接触するように燃焼ガス流路L1が形成されている。これらにより、バーナ10の燃焼時には、燃焼筒11及びフランジ24を介してバーナ10の気化部38に、バーナ10の火炎Fや排ガスの熱が効率良く伝達される。そのため、気化部38の温度は、確実に気化温度(バーナ燃料が気化する温度)となる。従って、第1の実施形態の水素製造装置1によれば、バーナ10においてバーナ燃料を気化させるための電気ヒータ39の使用を、特にバーナ10の燃焼時に抑制することができる。
【0047】
また、燃焼ガス流路L1は、燃焼筒11のうち上端部11a側の第1の部分11を除く下端部11b側の第2の部分11の外面11cに排ガスが接触するように形成されている。このように、燃焼筒11のうち第2の部分11の外面11cに排ガスを接触させることで、バーナ10の気化部38の温度を気化温度に調整し易くなる。更に、熱が効率良く伝達するので、気化部38の温度を高温とすることが可能となる。
【0048】
また、バーナ10は、カーボン、炭素鋼、鉄合金、アルミニウム及び銅の少なくとも一つを含む材料からなるガスケット23を介して、フランジ24に気密に固定されている。これにより、バーナ10とフランジ24との気密性を保持しつつ、燃焼筒11及びフランジ24を介してバーナ10の気化部38に効率良く熱を伝達させることができる。
【0049】
また、バーナ10の気化室34においては、空気の導入によって霧状化されたバーナ燃料が気化部38に接触させられて、気化させられる。上述したように、気化部38の温度が確実に気化温度となるため、この構成によれば、気化室34においてバーナ燃料が確実に気化することになる。
【0050】
更に、フランジ24の少なくとも一部、燃焼筒11の少なくとも一部、及び燃焼ガス流路L1の少なくとも一部が、断熱部材によって保温されていてれば、燃焼筒11及びフランジ24を介してバーナ10の気化部38に伝達する熱が外部に逃げるのを抑制し、気化部38の温度を確実に気化温度とすることができる。
[第2の実施形態]
【0051】
第2の実施形態の燃料電池システム及び水素製造装置は、水素製造装置のバーナの構成において、第1の実施形態の燃料電池システム及び水素製造装置と主に相違している。以下、第2の実施形態の水素製造装置のバーナ周辺部の構成について、詳細に説明する。
【0052】
図4に示されるように、バーナ10は、中心軸を軸Gとする円柱状のバーナボディ31を有している。バーナボディ31の下端部には、フランジ32が一体的に形成されている。バーナボディ31には、中心軸を軸Gとする円筒状のバーナカップ33が、下方に向かって延在するように固定されている。
【0053】
バーナカップ33は、燃焼筒11内に配置されている。バーナボディ31のフランジ32は、カーボン、炭素鋼、鉄合金、アルミニウム及び銅の少なくとも一つを含む伝熱性の高い材料からなるガスケット23を介して、フランジ(バーナ支持部)24にボルト等で固定されている。フランジ24は、燃焼筒11の上端部(一端部)11aに一体的に設けられ、バーナ10を支持している。
【0054】
バーナボディ31内には、気化室34、バーナ燃料流路35及び空気流路36が形成されている。バーナ燃料流路35は、上方からバーナボディ31内に進入し、気化室34に至っている。バーナ燃料流路35は、中空ノズルとなっており、その先端部は、気化室34の上壁に形成された開口34aを介して、気化室34内に位置している。空気流路36は、上方からバーナボディ31内に進入し、気化室34を囲んでいる。バーナ燃料流路35によって気化室34に導入されたバーナ燃料(アルコール類、ナフサ、バイオ燃料、軽油、灯油等の液体燃料液体、この一例では、原燃料)は、気化室34内において滴下される。
【0055】
気化室34の底部は、滴下されたバーナ燃料が接触させられる気化部(液体燃料供給部)38となっている。気化部38では、滴下されるバーナ燃料の量によって、バーナ燃料が溜まって気化する場合や、バーナ燃料が溜まらずに直ちに気化する場合がある。気化部38の中央部には、気化部38に対して上側に凸状となるように凸部61が形成されている。凸部61には、上下方向に貫通するように流路61aが形成されている。凸部61の上側には、滴下されたバーナ燃料を受ける山型(上側に凸)の皿状部材(受け部材)62が配置されている。
【0056】
バーナボディ31には、気化室34を囲むように電気ヒータ39が埋設されている。水素製造装置1の起動時には、電気ヒータ39が使用されて、バーナ燃料が気化する温度(以下、「気化温度」という)に、気化室34を構成する気化部38が加熱される。これにより、皿状部材62上に滴下されたバーナ燃料は、皿状部材62の外周部に向かって流れ、その外周部に形成された複数の開口62aを介して気化部38に流れ込んで気化させられる。一方、空気流路36によって気化室34に導入された空気は、一次空気として、気化室34の開口34aを介して気化室34内に流入する。そして、気化部38において気化させられたバーナ燃料は、空気と混合され、凸部61に形成された流路61a内に流入する。
【0057】
バーナカップ33内には、流路61aを介して気化室34と連通する混合室41が形成されている。気化室34から混合室41に導入されるバーナ燃料の気化ガス及び一次空気は、オリフィスとしても機能する凸部61の流路61a内において予熱されつつ混合されて混合ガスとなる。その混合ガスは、混合室41の下端部に取り付けられた炎孔板42からその下側の燃焼部43に噴出する。
【0058】
バーナボディ31及びバーナカップ33内には、オフガス流路44が形成されている。オフガス流路44は、バーナボディ31の上方から進入し、下方に延在している。オフガス流路44の下端部は、混合室41の下端部を囲むように形成されている。オフガス流路44によってセルスタック20からバーナ10に導入されたオフガスは、燃焼部43の周囲から燃焼方向(すなわち、軸Gの延在方向)に対して略垂直に燃焼部43に噴出する。
【0059】
燃焼部43には、イグナイタ45の先端部が位置している。炎孔板42から噴出した混合ガス(場合によっては、オフガス流路44の下端部から噴出したオフガス)は、イグナイタ45によって着火され、燃焼筒11内において燃焼させられる。
【0060】
バーナカップ33内には、空気流路36と連通する空気流路46が形成されている。空気流路46は、混合室41を囲むように形成され、バーナカップ33の下端部に至っている。空気流路36から空気流路46に流入した空気は、燃焼部43の周囲から燃焼方向に対して略垂直に燃焼部43に噴出し、二次空気として、バーナ10の火炎Fに供給される。
【0061】
なお、第2の実施形態の水素製造装置1における燃焼ガス流路L1、改質部6及び改質ガス流路L2の構成は、上述した第1の実施形態の水素製造装置1における燃焼ガス流路L1、改質部6及び改質ガス流路L2の構成と同様である。
【0062】
以上説明したように、第2の実施形態の燃料電池システム100の水素製造装置1では、燃焼筒11の上端部11aにフランジ24が一体的に設けられている。更に、燃焼筒11の下端部11bから排出された排ガスが燃焼筒11の外面11cに接触するように燃焼ガス流路L1が形成されている。これらにより、バーナ10の燃焼時には、燃焼筒11及びフランジ24を介してバーナ10の気化部38に、バーナ10の火炎Fや排ガスの熱が効率良く伝達される。そのため、気化部38の温度は、確実に気化温度(バーナ燃料が気化する温度)となる。従って、第2の実施形態の水素製造装置1によれば、バーナ10においてバーナ燃料を気化させるための電気ヒータ39の使用を、特にバーナ10の燃焼時に抑制することができる。
【0063】
また、燃焼ガス流路L1は、燃焼筒11のうち上端部11a側の第1の部分11を除く下端部11b側の第2の部分11の外面11cに排ガスが接触するように形成されている。このように、燃焼筒11のうち第2の部分11の外面11cに排ガスを接触させることで、バーナ10の気化部38の温度を気化温度に調整し易くなる。更に、熱が効率良く伝達するので、気化部38の温度を高温とすることが可能となる。
【0064】
また、バーナ10は、カーボン、炭素鋼、鉄合金、アルミニウム及び銅の少なくとも一つを含む材料からなるガスケット23を介して、フランジ24に気密に固定されている。これにより、バーナ10とフランジ24との気密性を保持しつつ、燃焼筒11及びフランジ24を介してバーナ10の気化部38に効率良く熱を伝達させることができる。
【0065】
また、バーナ10の気化室34には、滴下されたバーナ燃料が接触させられる気化部38、及び気化部38に対して上側に凸状となるように形成された凸部61が設けられており、凸部61には、気化部38において気化させられたバーナ燃料が空気と共に流通する流路61aが形成されている。上述したように、気化部38の温度が確実に気化温度となるため、この構成によれば、気化室34においてバーナ燃料が確実に気化することになる。
【0066】
このとき、気化部38は、凸部61を囲むように形成されており、凸部61の上側には、滴下されたバーナ燃料を受ける皿状部材62が配置されている。これにより、バーナ燃料が凸部61の流路61aに直接的に流入することを防止し、凸部61を囲む気化部38にバーナ燃料を分散されることができる。
【0067】
更に、フランジ24の少なくとも一部、燃焼筒11の少なくとも一部、及び燃焼ガス流路L1の少なくとも一部が、断熱部材によって保温されていてれば、燃焼筒11及びフランジ24を介してバーナ10の気化部38に伝達する熱が外部に逃げるのを抑制し、気化部38の温度を確実に気化温度とすることができる。
【0068】
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0069】
例えば、水素製造装置の改質部は、水蒸気改質するものに限定されず、他の反応で改質するものであってもよい。また、水素製造装置の配置構成については、一例として、第1の実施形態の水素製造装置のバーナの構成であれば、上下反転したような配置構成(例えば、バーナが下部に設置されて構成された水素製造装置)としてもよい。
【0070】
ちなみに、上記の「筒状」とは、略円筒状だけでなく、略多角筒状を含むものである。また、略円筒状及び略多角筒状とは、円筒状及び多角筒状に概略等しいものや、円筒状及び多角筒状の部分を少なくとも含むもの等の広義の円筒状及び多角筒状を意味している。また、上記実施形態は、好ましいとして、中心軸を軸Gとする同軸構成とされているが、本発明は、略同軸又は軸Gに沿った構成とされていてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…水素製造装置、6x…改質触媒、10…バーナ、11…燃焼筒、11a…上端部(一端部)、11b…下端部(他端部)、11c…外面、11…第1の部分、11…第2の部分、20…セルスタック(燃料電池スタック)、24…フランジ(バーナ支持部材)、38…気化部(液体燃料供給部)、61…凸部、61a…流路、62…皿状部材(受け部材)、100…燃料電池システム、L1…燃焼ガス流路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質触媒を用いて原燃料を改質し、水素を含有する改質ガスを生成する水素製造装置であって、
前記改質触媒を加熱するバーナと、
前記バーナの火炎を囲む燃焼筒と、
前記燃焼筒の一端部に一体的に設けられ、前記バーナを支持するバーナ支持部と、
前記燃焼筒の他端部から排出された燃焼ガスが前記燃焼筒の外面に接触するように形成された燃焼ガス流路と、を備え、
前記バーナには、燃焼用の液体燃料が供給される液体燃料供給部が設けられており、
前記液体燃料供給部は、前記バーナの燃焼時に前記液体燃料が気化する温度となるように前記バーナ支持部と熱的に接続されていることを特徴とする水素製造装置。
【請求項2】
前記燃焼ガス流路は、前記燃焼筒のうち前記一端部側の第1の部分を除く前記他端部側の第2の部分の外面に前記燃焼ガスが接触するように形成されていることを特徴とする請求項1記載の水素製造装置。
【請求項3】
前記液体燃料供給部は、空気の導入によって霧状化された前記液体燃料が接触させられる気化部を有することを特徴とする請求項1又は2記載の水素製造装置。
【請求項4】
前記液体燃料供給部は、滴下された前記液体燃料が接触させられる気化部、及び前記気化部に対して上側に凸状となるように形成された凸部を有し、
前記凸部には、前記気化部において気化させられた前記液体燃料が空気と共に流通する流路が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の水素製造装置。
【請求項5】
前記気化部は、前記凸部を囲むように形成されており、
前記凸部の上側には、滴下された前記液体燃料を受ける受け部材が配置されていることを特徴とする請求項4記載の水素製造装置。
【請求項6】
前記バーナは、カーボン、炭素鋼、鉄合金、アルミニウム及び銅の少なくとも一つを含む材料からなるガスケットを介して、前記バーナ支持部に気密に固定されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の水素製造装置。
【請求項7】
前記バーナ支持部の少なくとも一部、前記燃焼筒の少なくとも一部、及び前記燃焼ガス流路の少なくとも一部は、断熱部材によって保温されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の水素製造装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項記載の水素製造装置と、
前記水素製造装置によって生成された前記改質ガスを用いて発電を行う燃料電池スタックと、を備えることを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−207717(P2011−207717A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78872(P2010−78872)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】