水耕栽培システムの廃液浄化装置
【課題】低コストで且つメンテナンス性に優れた、水耕栽培システムの廃液浄化装置を提供する。
【解決手段】植物を植え付ける栽培床(101)と、栽培床(101)に養液を導入するための導入管(52)と、栽培床(101)を通過後の養液を該システム(10)外に排出するための排出管(53)とを備え、排出管(53)には、該排出管(53)内の養液中でストリーマ放電を行う放電ユニット(62)を設けるようにする。
【解決手段】植物を植え付ける栽培床(101)と、栽培床(101)に養液を導入するための導入管(52)と、栽培床(101)を通過後の養液を該システム(10)外に排出するための排出管(53)とを備え、排出管(53)には、該排出管(53)内の養液中でストリーマ放電を行う放電ユニット(62)を設けるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
水耕栽培システムの廃液浄化装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、植物の水耕栽培に使用される養液の処理装置として、粒状活性炭を使用したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、栽培中の植物から分泌されるフェノール系物質や有機酸物質といった生育阻害物質を粒状活性炭により吸着除去するようにしている。粒状活性炭を使用した場合には、粒状活性炭が養液中に洩れるのを防止するためには濾過フィルタが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−266171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水耕栽培で使用される養液は、定期的に交換する必要があるが、その際、養液を一般河川等にそのまま排出してしまうと、養液に含まれる成長促進物質や,上述した生育阻害物質(化学物質)等が河川等に流出して植物の生態系に悪影響を及ぼすという問題がある。
【0005】
そこで、養液をシステム外に排出するための排出管に、上記特許文献1に示す処理装置を設けることで、養液を河川等に排出される前に浄化処理することが考えられる。
【0006】
しかしながら、この場合、フィルタを頻繁に交換する必要があるため、フィルタ交換のための手間とコストとが増加するという問題がある。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、低コストで且つメンテナンス性に優れた、水耕栽培システムの廃液浄化装置を提供しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、水耕栽培システム(10)の廃液浄化装置を対象とする。そして、上記水耕栽培システム(10)は、植物を植え付ける栽培床(101)と、栽培床(101)に養液を導入するための導入管(52)と、養液を該システム(10)外に排出するための排出管(53)とを有し、上記排出管(53)には、該排出管(53)内の養液中でストリーマ放電を行う放電ユニット(62)が設けられていることを特徴とする。
【0009】
第1の発明では、排出管(53)に設けられた放電ユニット(62)が養液中でストリーマ放電を行うことで、養液中には水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素が発生する。この活性種は、養液中に含まれる化学物質(植物の生育阻害物質等)を化学反応により分解し、過酸化水素は養液を殺菌・浄化する。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、上記排出管(53)には、該排出管(53)内の養液中に銅イオン又は鉄イオンを供給するイオン供給部(53,69)が設けられていることを特徴とする。
【0011】
第2の発明では、排出管(53)内の養液中にイオン供給部から銅イオン又は鉄イオンが供給される。過酸化水素と銅イオン(又は鉄イオン)の存在下では、フェントン反応により、銅イオン(又は鉄イオン)が触媒的に作用して水酸ラジカルの生成が促進される。これにより、水酸ラジカルによる水の浄化効率が向上する。加えて、銅イオンは菌の繁殖を抑制する効果があるため、水中での殺菌作用も高くなる。
【0012】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記排出管(53)に設けられ、内部に養液が貯留されるとともに上記放電ユニット(62)が収容される貯水部(61)と、上記排出管(53)における上記貯水部(61)の下流側に配設される開閉弁(63)と、上記放電ユニット(62)及び開閉弁(63)の作動を制御することで、上記貯水部(61)内に養液を貯留して上記ストリーマ放電を所定時間実行した後に、該貯留した養液を貯水部(61)外に排出する処理を繰り返し実行するバッチ処理手段(61,63,103)と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
第3の発明では、バッチ処理手段(61,63,103)が、貯水部(61)内に養液を貯留してストリーマ放電を所定時間実行した後、該貯留した養液を貯水部(61)外に排出する処理を繰り返し実行する。これにより、排出管(53)内の養液を、貯水部(61)に貯留しては殺菌・浄化してバッチ式に処理することができる。したがって、排出管(53)内を連続的に流れる養液を処理する場合に比べて養液の殺菌・浄化効果を高めることができる。
【0014】
第4の発明は、第1乃至第3のいずれか一つの発明において、上記排出管(53)における上記放電ユニット(62)の上流側近傍又は下流側近傍には、該排出管(53)内の養液中の化学物質を吸着する吸着部(80)が設けられていることを特徴とする。
【0015】
第4の発明では、排出管(53)内を流れる養液が吸着部(80)を通過する際に、養液中に含まれる化学物質が該吸着部(80)にて吸着保持される。これにより、ストリーマ放電により生じる活性種を養液中の化学物質と確実に反応させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、システム(10)外に廃液を排出する排出管(53)に放電ユニット(62)を設けて、排出管(53)内の養液中でストリーマ放電を行うようにしたことで、養液をシステム(10)外(一般河川等)に排出される前に殺菌・浄化すると共に養液中に含まれる化学物質を分解除去することができる。したがって、化学物質を含んだ養液が一般河川等に排出されることにより環境汚染が進むのを防止することができる。
【0017】
また、本発明では、直流電源(70)を用いてストリーマ放電を行っているので、例えば、パルス電源を使用する場合と比較して、電源部の簡素化、低コスト化、小型化を図ることができる。また、パルス電源を用いると、放電に伴って水中で発生する衝撃波や騒音が大きくなってしまう。これに対し、直流電源(70)を用いると、このような衝撃波や騒音も低減できる。
【0018】
第2の発明によれば、フェトン反応により水酸ラジカルの生成を促進することで、第1の発明と同様の作用効果を更に確実に得ることができる。
【0019】
第3の発明によれば、排出管(53)内を流れる養液をバッチ式に処理するようにしたことで、養液の殺菌・浄化効果を更に高めることができる。
【0020】
第4の発明によれば、養液中の化学物質を排出管(53)に設けられた吸着部(80)にて一旦吸着して、吸着した化学物質に対して活性種を作用させることで、養液中の化学物質をより一層確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の実施形態1に係る廃液浄化ユニットを備えた水耕栽培システムの構成を示す図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る廃液浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始する前の状態を示すものである。
【図3】図3は、実施形態1に係る絶縁ケーシングの斜視図である。
【図4】図4は、実施形態1に係る廃液浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作中に気泡が安定した状態を示すものである。
【図5】図5は、実施形態1の変形例に係る廃液浄化ユニットの全体構成図である。
【図6】図6は、実施形態1の変形例に係る絶縁ケーシングの斜視図である。
【図7】図7は、実施形態2に係る廃液浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始する前の状態を示すものである。
【図8】図8は、実施形態2に係る廃液浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作中に気泡が安定した状態を示すものである。
【図9】図9は、実施形態2の変形例に係る絶縁ケーシングの蓋部の平面図である。
【図10】図10は、実施形態3に係る廃液浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始する前の状態を示すものである。
【図11】図11は、他の実施形態を示す図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0023】
《発明の実施形態1》
〈全体構成〉
図1は、本発明の実施形態に係る水耕栽培システム(10)の構成を示す図である。この水耕栽培システム(10)は、いわゆる施設園芸(例えばビニールハウス)や、閉鎖環境で人工光を用いて植物を栽培する植物工場等で使用される。図1に示すように、水耕栽培システム(10)は、栽培床(101)、配管(51,52,53)、ポンプ(102)、廃液浄化ユニット(60)、及び制御装置(103)を備えている。
【0024】
この水耕栽培システム(10)は、養液を栽培床(101)に供給する栽培運転モードと、養液をシステム(10)外に排出する廃液処理モードとを備えている。作業者は、不図示の入力装置から希望する運転モードを設定可能になっている。
【0025】
栽培床(101)及びポンプ(102)は、配管(51,52)で互いに接続されており、栽培運転モードでは、植物の栽培に必要な養分を含んだ養液が循環する(図1の実線参照)。配管(51)の途中には、排出管(53)が接続されており、廃液処理モードでは、使用済みの養液(以下、廃液という)が排出管(53)を通ってシステム(10)外へと排出される。排出管(53)と配管(51)との接続部には、栽培運転モードと廃液処理モードとで養液の流路を切り換えるための電気駆動式の三方弁(54)が設けられている。排出管(53)には、廃液を殺菌・浄化するための廃液浄化ユニット(60)が設けられている。廃液浄化ユニット(60)及び三方弁(54)は、制御装置(103)によって制御される。
【0026】
栽培床(101)は、養液を、所定の量だけ溜めるようになっている。栽培床(101)には、植物(200)が植え付けられる。植え付けられた植物(200)は、栽培床(101)に溜められた養液を吸収し、吸収した養液中の養分を利用する。この栽培床(101)には養液が流入する流入孔と、養液が流出する流出孔が設けられ、流出孔には配管(51)、流入孔には配管(52)がそれぞれ接続されている。
【0027】
廃液浄化ユニット(60)は、水中(具体的には養液)でのストリーマ放電によって水中に過酸化水素等の浄化成分を生成し、この浄化成分によって水の浄化を行う。廃液浄化ユニット(60)の構成は後に詳述する。この廃液浄化ユニット(60)には養液が流入する流入孔と、養液が流出する流出孔が設けられ、流入孔が排出管(53)の上流側排出部(53a)に接続されている。また、廃液浄化ユニット(60)の流出孔には、排出管(53)の下流側排出部(53b)が接続されており、該下流側排出部(53b)は、システム(10)外の一般河川まで延びている。
【0028】
ポンプ(102)は、養液を循環させるためのポンプである。このポンプ(102)の吸入孔は、栽培床(101)の流出孔と配管(51)で接続され、吐出孔は、栽培床(101)の流入孔と配管(52)で接続されている。このポンプ(102)の運転状態は、制御装置(103)が制御する。本実施形態では、配管(51,52)は樹脂の配管であり、排出管(53)は銅配管(イオン供給部)である。排出管(53)は、廃液を一時的に貯留するための貯水部(後述する水浄化タンク(61)で構成される)と、該貯水部よりも上流側の上流側排出部(53a)及び下流側の下流側排出部(53b)とで構成されている。
【0029】
制御装置(103)は、ポンプ(102)、廃液浄化ユニット(60)、及び三方弁(54)に所定の制御信号(SIG)を出力し、ポンプ(102)の運転状態(オンオフ)の制御と、廃液浄化ユニット(60)の運転状態(ストリーマ放電のオンオフ)の制御と、三方弁(54)の開閉とを行う。
【0030】
〈廃液浄化ユニット(60)の構成〉
図2は、廃液浄化ユニット(60)の構成例を示す図である。廃液浄化ユニット(60)は、水中でのストリーマ放電によって水中に過酸化水素等の浄化成分を生成し、この浄化成分によって使用済みの養液(以下、廃液という)の浄化を行うものである。廃液浄化ユニット(60)は、水浄化タンク(61)と放電ユニット(62)と電気駆動式の開閉弁(63)と銅板(69)とを有している(図2を参照)。
【0031】
水浄化タンク(61)は、上述の如く排出管(53)の上流側排出部(53a)と下流側排出部(53b)とが接続されている。水浄化タンク(61)内には、該タンク(61)内を上流側と下流側とに仕切る銅板(69)(イオン供給部)が配設されている。銅板(69)には、比較的大きめの貫通孔(69a)が複数形成されている。したがって、銅板(69)によって排出管(53)内の廃液の流通が妨げられることもない。
【0032】
開閉弁(63)は、排出管(53)における水浄化タンク(61)の下流側近傍に配設されている。なお、放電ユニット(62)及び開閉弁(63)は、制御装置(103)によって制御される。
【0033】
放電ユニット(62)は、放電電極(64)及び対向電極(65)とからなる電極対(64,65)と、この電極対(64,65)に電圧を印加する電源部(70)と、放電電極(64)を内部に収容する絶縁ケーシング(71)とを備えている。
【0034】
電極対(64,65)は、水中でストリーマ放電を生起するためのものである。放電電極(64)は、絶縁ケーシング(71)の内部に配置されている。放電電極(64)は、上下に扁平な板状に形成されている。放電電極(64)は、電源部(70)の正極側に接続されている。放電電極(64)は、例えばステンレス、銅等の導電性の金属材料で構成されている。
【0035】
対向電極(65)は、絶縁ケーシング(71)の外部に配置されている。対向電極(65)は、放電電極(64)の上方に設けられている。対向電極(65)は、上下に扁平な板状であって、且つ上下に複数の貫通孔(66)を有するメッシュ形状ないしパンチングメタル形状に構成されている。対向電極(65)は、放電電極(64)と略平行に配設されている。対向電極(65)は、電源部(70)の負極側に接続されている。対向電極(65)は、例えばステンレス、真鍮等の導電性の金属材料で構成されている。
【0036】
電源部(70)は、電極対(64,65)に所定の直流電圧を印加する直流電源で構成されている。すなわち、電源部(70)は、電極対(64,65)に対して瞬時的に高電圧を繰り返し印加するようなパルス電源ではなく、電極対(64,65)に対して常に数キロボルトの直流電圧を印加する。電源部(70)のうち、対向電極(65)が接続される負極側は、アースと接続されている。また、電源部(70)には、電極対(64,65)の放電電力を一定に制御する定電力制御部が設けられている(図示省略)。
【0037】
絶縁ケーシング(71)は、水浄化タンク(61)の底部に設置されている。絶縁ケーシング(71)は、例えばセラミックス等の絶縁材料で構成されている。絶縁ケーシング(71)は、一面(上面)が開放された容器状のケース本体(72)と、該ケース本体(72)の上方の開放部を閉塞する板状の蓋部(73)とを有している。
【0038】
ケース本体(72)は、角型筒状の側壁部(72a)と、該側壁部(72a)の底面を閉塞する底部(72b)とを有している。放電電極(64)は、底部(72b)の上側に敷設されている。絶縁ケーシング(71)では、蓋部(73)と底部(72b)との間の上下方向の距離が、放電電極(64)の厚さよりも長くなっている。つまり、放電電極(64)と蓋部(73)との間には、所定の間隔が確保されている。これにより、絶縁ケーシング(71)の内部では、放電電極(64)とケース本体(72)と蓋部(73)との間に空間(S)が形成される。
【0039】
図2及び図3に示すように、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)には、該蓋部(73)を厚さ方向に貫通する1つの開口(74)が形成されている。この開口(74)により、放電電極(64)と対向電極(65)との間の電界の形成が許容されている。蓋部(73)の開口(74)の内径は、0.02mm以上0.5mm以下であることが好ましい。以上のような開口(74)は、電極対(64,65)の間の電流経路の電流密度を上昇させる電流密度集中部を構成する。
【0040】
以上のように、絶縁ケーシング(71)は、電極対(64,65)のうちの一方の電極(放電電極(64))のみを内部に収容し、且つ電流密度集中部としての開口(74)を有する絶縁部材を構成している。
【0041】
加えて、絶縁ケーシング(71)の開口(74)内では、電流経路の電流密度が上昇することで、水がジュール熱によって気化して気泡(B)(図4参照)が形成される。つまり、絶縁ケーシング(71)の開口(74)は、該開口(74)に気相部としての気泡(B)を形成する気相形成部として機能する。
【0042】
〈水耕栽培システム(10)の動作〉
水耕栽培システム(10)は、栽培運転モードでは、制御装置(103)によって、ポンプ(102)を作動させるとともに三方弁(54)を制御することで、養液を図1の実線で示す経路で循環させる。これにより、養液が栽培床(101)に供給される。栽培床(101)では、それぞれの植物(200)が必要量の養液を吸収する。植物(200)に吸収されなかった養液は、栽培床(101)から配管(51)を通って流出する。流出した養液は、不足した成分や水が補われ、ポンプ(102)を通過後に再び栽培床(101)に流入する。養液の成分調整や量の調整を行う装置は、図1では図示を省略してある。なお、養液の循環は、常に連続的に行ってもよいし、適当な時間間隔をあけて行うようにしてもよい。
【0043】
〈廃液浄化ユニットの動作〉
水耕栽培システム(10)は、廃液処理モードでは、制御装置(103)によって、ポンプ(102)の作動を停止するとともに三方弁(54)を制御することで、養液を図1の二点鎖線で示す経路で流通させる。これにより、廃液が、廃液浄化ユニット(60)へと導かれて殺菌・浄化される。
【0044】
本実施形態では、廃液は廃液浄化ユニット(60)にてバッチ式に処理される。すなわち、制御装置(103)は、廃液の殺菌・浄化処理に際して、先ず、開閉弁(63)を閉じて排出管(53)内における廃液の流れを堰き止める。制御装置(103)は、開閉弁(63)を閉じてから第1設定時間T1が経過した後に、廃液の殺菌・浄化処理を所定時間実行して、該所定時間経過後に開閉弁(63)を開く。制御装置(103)は、開閉弁(63)を開いてから第2設定時間T2が経過したときに開閉弁を再び閉じる。制御装置(103)は、この一連の処理を繰り返し実行する。すなわち、制御装置(103)は、廃液を水浄化タンク(61)に貯めては殺菌・浄化する処理を繰り返し実行する。ここで、第1設定時間T1は、例えば、水浄化タンク(61)内が空の状態から廃液で満タンになるまでの時間とすることができる。また、第2設定時間T2は、例えば、水浄化タンク(61)内の満タンの廃液が開閉弁(63)からタンク外に全て排出されるまでの時間と同じか又はそれよりもやや短い時間とすることができる。
【0045】
廃液浄化ユニット(60)における殺菌・浄化処理の開始時には、図2に示すように、絶縁ケーシング(71)の内の空間(S)が浸水した状態となっている。電源部(70)から電極対(64,65)に所定の直流電圧(例えば1kV)が印加されると、電極対(64,65)の間に電界が形成される。この際、放電電極(64)の周囲は、絶縁ケーシング(71)で覆われている。このため、電極対(64,65)の間での漏れ電流が抑制されとともに、開口(74)内の電流経路の電流密度が上昇した状態となる。
【0046】
開口(74)内の電流密度が上昇すると、開口(74)内のジュール熱が大きくなる。その結果、絶縁ケーシング(71)では、開口(74)の近傍において、水(廃液)の気化が促進されて気泡(B)が形成される。この気泡(B)は、図4に示すように、開口(74)のほぼ全域を覆う状態となり、対向電極(65)に導通する負極側の水と、正極側の放電電極(64)との間に気泡(B)が介在する。したがって、この状態では、気泡(B)が、放電電極(64)と対向電極(65)との間での水を介した導電を阻止する抵抗として機能する。これにより、放電電極(64)と対向電極(65)との間の漏れ電流が抑制され、電極対(64,65)間では、所望とする電位差が保たれることになる。すると、気泡(B)内では、絶縁破壊に伴いストリーマ放電が発生する。
【0047】
以上のようにして、気泡(B)でストリーマ放電が行われると、水浄化タンク(61)内の水中では、水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素等が生成される。水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素は、ストリーマ放電に伴う熱によって水浄化タンク(61)内を対流する。これにより、水中での活性種や過酸化水素の拡散が促される。また、気泡(B)でストリーマ放電が行われると、このストリーマ放電に伴ってこの気泡(B)でイオン風を生成し易くなる。よって、水浄化タンク(61)内では、このイオン風を利用して、活性種や過酸化水素の拡散効果を更に向上できる。
【0048】
そして、ストリーマ放電によって生成した過酸化水素は、廃液中の雑菌を除菌する作用がある。そのため、水浄化タンク(61)内の廃液を殺菌・浄化することができる。なお、過酸化水素は、一般的には、植物には安全である。
【0049】
また、銅製の排出管(53)及び水浄化タンク(61)内の銅板(69)からは、銅イオンが廃液中に溶出する。過酸化水素と銅イオンの存在下では、フェントン反応により、銅イオンが触媒的に作用して水酸ラジカルの生成が促進される。これにより、水酸ラジカルによる廃液の浄化効率が向上する。加えて、銅イオンは菌の繁殖を抑制する効果があるため、水中での殺菌作用も高くなる。
【0050】
なお、廃液浄化ユニット(60)による除菌や汚れ分解は、常時行ってもよいが、適当な時間間隔をあけて行うようにしてもよい。廃液浄化ユニット(60)の運転の開始や休止の制御は制御装置(103)で行えばよい。
【0051】
〈本実施形態における効果〉
以上のように、本実施形態によれば、廃液浄化ユニット(60)において発生した水酸ラジカルや過酸化水素によって廃液中の汚れの原因物質の分解や雑菌の除菌ができるので、廃液を一般河川に流出する前に殺菌・浄化することができる。したがって、廃液による環境汚染を確実に防止することが可能となる。また、フィルタ等を使用しないため、メンテナンス面及びコスト面において有利である。
【0052】
また、本実施形態では、廃液浄化ユニット(60)にて廃液をバッチ式に処理するようにしているので、排出管(53)内を連続的に流れる廃液を処理する場合に比べて廃液の殺菌・浄化効果を高めることができる。
【0053】
また、水浄化タンク(61)内の銅板(69)及び銅製の排出管(53)から廃液中に銅イオンが供給されるので、フェントン反応により、銅イオン(又は鉄イオン)が触媒的に作用して水酸ラジカルの生成が促進される。これにより、水酸ラジカルによる水の浄化効率が向上する。加えて、銅イオンは菌の繁殖を抑制する効果があるため、水中での殺菌作用も高くなる。
【0054】
《実施形態1の変形例》
上記実施形態1では、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に1つの開口(74)が形成されている。しかしながら、例えば図5及び図6に示すように、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に複数の開口(74)を形成してもよい。この変形例では、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)が、略正方形板状に形成され、この蓋部(73)に複数の開口(74)が等間隔を置きながら碁盤目状に配列されている。一方、放電電極(64)及び対向電極(65)は、全ての開口(74)に跨るような正方形板状に形成されている。
【0055】
この変形例においても、各開口(74)が、電流密度集中部、及び気相形成部として機能する。これにより、電源部(70)から電極対(64,65)に直流電圧が印加されると、各開口(74)の電流密度が上昇し、各開口(74)で気泡(B)が形成される。その結果、各気泡(B)でそれぞれストリーマ放電が生起され、水酸ラジカル等の活性種や、過酸化水素が生成される。
【0056】
《発明の実施形態2》
実施形態2に係る水耕栽培システム(10)は、上述した実施形態1とは放電ユニット(62)の構成が異なるものである。以下には、上記実施形態1と異なる点を主として説明する。
【0057】
図7に示すように、実施形態2の放電ユニット(62)は、水浄化タンク(61)の外側から内部に向かって挿入されて固定される、いわゆるフランジユニット式に構成されている。また、実施形態2の放電ユニット(62)は、放電電極(64)と対向電極(65)と絶縁ケーシング(71)とが一体的に組立てられている。
【0058】
実施形態2の絶縁ケーシング(71)は、大略の外形が円筒状に形成されている。絶縁ケーシング(71)は、ケース本体(72)と蓋部(73)とを有している。
【0059】
実施形態2のケース本体(72)は、ガラス質又は樹脂製の絶縁材料で構成されている。ケース本体(72)は、円筒状の基部(76)と、該基部(76)から水浄化タンク(61)側に向かって突出する筒状壁部(77)と、該筒状壁部(77)の外縁部から更に水浄化タンク(61)側に向かって突出する環状凸部(78)とを有している。基部(76)の軸心部には、円柱状の挿入口(76a)が軸方向に延びて貫通形成されている。筒状壁部(77)の内側には、挿入口(76a)と同軸となり、且つ挿入口(76a)よりも大径となる円柱状の空間(S)が形成されている。
【0060】
実施形態2の蓋部(73)は、略円板状に形成されて環状凸部(78)の内側に嵌合している。蓋部(73)は、セラミックス材料で構成されている。蓋部(73)の軸心には、実施形態1と同様、蓋部(73)を上下に貫通する円形状の1つの開口(74)が形成されている。
【0061】
放電電極(64)は、軸直角断面が円形状となる縦長の棒状の電極で構成されている。放電電極(64)は、基部(76)の挿入口(76a)に嵌合している。これにより、放電電極(64)は、絶縁ケーシング(71)の内部に収容されている。実施形態2では、放電電極(64)のうち水浄化タンク(61)とは反対側の端部が、水浄化タンク(61)の外部に露出される状態となる。このため、水浄化タンク(61)の外部に配置される電源部(70)と、放電電極(64)とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0062】
放電電極(64)のうち水浄化タンク(61)側の端部(64a)は、絶縁ケーシング(71)の内部の空間(S)に臨んでいる。なお、図7に示す例では、放電電極(64)の端部(64a)が、挿入口(76a)の開口面よりも上側(水浄化タンク(61)側)に突出しているが、この端部(64a)の先端面を挿入口(76a)の開口面と略面一としてもよいし、端部(64a)を挿入口(76a)の開口面よりも下側に陥没させてもよい。また、放電電極(64)は、実施形態1と同様、開口(74)を有する蓋部(73)との間に所定の間隔が確保されている。
【0063】
対向電極(65)は、円筒状の電極本体(65a)と、該電極本体(65a)から径方向外方へ突出する鍔部(65b)とを有している。電極本体(65a)は、絶縁ケーシング(71)のケース本体(72)に外嵌している。鍔部(65b)は、水浄化タンク(61)の壁部に固定されて放電ユニット(62)を保持する固定部を構成している。放電ユニット(62)が水浄化タンク(61)に固定された状態では、対向電極(65)の電極本体(65a)の一部が浸水された状態となる。
【0064】
対向電極(65)は、電極本体(65a)よりも小径の内側筒部(65c)と、該内側筒部(65c)と電極本体(65a)との間に亘って形成される連接部(65d)とを有している。内側筒部(65c)及び連接部(65d)は、水浄化タンク(61)内の水中に浸漬している。内側筒部(65c)は、その内部に円柱空間(67)を形成している。内側筒部(65c)の軸方向の一端は、蓋部(73)と当接して該蓋部(73)を保持する保持部を構成している。内側筒部(65c)の軸方向の他端側には、円柱空間(67)を覆うようにメッシュ状の漏電防止材(68)が設けられている。この漏電防止材(68)は、対向電極(65)と接触することで、実質的にアースされている。これにより、漏電防止材(68)は、水浄化タンク(61)の内部の空間(水中)のうち、円柱空間(67)の内側から外側への漏電を防止している。
【0065】
対向電極(65)は、電極本体(65a)の一部が水浄化タンク(61)の外部に露出される状態となる。このため、電源部(70)と対向電極(65)とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0066】
〈廃液浄化ユニットの運転動作〉
実施形態2の水耕栽培システム(10)においても、廃液浄化ユニット(60)が運転されることで、廃液の浄化がなされる。
【0067】
廃液浄化ユニット(60)における殺菌・浄化処理の開始時には、図7に示すように、絶縁ケーシング(71)の内の空間(S)が浸水した状態となっている。電源部(70)から電極対(64,65)に所定の直流電圧(例えば1kV)が印加されると、開口(74)の内部の電流密度が上昇してく。
【0068】
図7に示す状態から、電極対(64,65)へ更に直流電圧が継続して印加されると、開口(74)内の水が気化されて気泡(B)が形成される(図8を参照)。この状態では、気泡(B)が開口(74)のほぼ全域を覆う状態となり、円柱空間(67)内の負極側の水と、放電電極(64)との間に気泡(B)による抵抗が付与される。これにより、放電電極(64)と対向電極(65)との間の電位差が保たれ、気泡(B)でストリーマ放電が発生する。その結果、水中では、水酸ラジカルや過酸化水素を生成され、これらの成分が水の浄化に利用される。
【0069】
《実施形態2の変形例》
実施形態2では、円板状の蓋部(73)の軸心に1つの開口(74)を形成しているが、この蓋部(73)に複数の開口(74)を形成してもよい。図9に示す例では、蓋部(73)の軸心を中心とする仮想ピッチ円上に、5つの開口(74)が等間隔置きに配列されている。このように蓋部(73)に複数の開口(74)を形成することで、各開口(74)の近傍でそれぞれストリーマ放電を生起させることができる。
【0070】
《発明の実施形態3》
実施形態3に係る水耕栽培システム(10)は、上述した実施形態1とは廃液浄化ユニット(60)の構成が異なるものである。以下には、上記実施形態1と異なる点を主として説明する。
【0071】
図10に示すように、実施形態3の廃液浄化ユニット(60)は、廃液をバッチ処理するための開閉弁(63)を有していないが、廃液中の化学物質を吸着するための吸着フィルタ(80)を有している。吸着フィルタ(80)は、放電ユニット(62)の下流側近傍に配設されている。なお、吸着フィルタ(80)は、放電ユニット(62)の上流側近傍に配設してもよい。
【0072】
〈廃液浄化ユニットの運転動作〉
本実施形態では、廃液を廃液浄化ユニット(60)にてバッチ式に処理するのではなく連続的に処理する。すなわち、廃液は、排出管(53)内を、上流側排出部(53a)、水浄化タンク(61)、及び下流側排出部(53b)の順で連続的に流れる。そして、廃液が水浄化タンク(61)内の吸着フィルタ(80)を通過する際に、廃液中の化学物質が吸着フィルタ(80)により吸着される。吸着フィルタ(80)の上流側近傍には、放電ユニット(62)が配設されているため、ストリーマ放電により生じる活性種を、吸着フィルタ(80)に吸着された化学物質と反応させることができる。また、吸着フィルタ(80)が放電ユニット(62)と至近距離に配置されるので、寿命の短い様々なラジカル類も利用することができる。したがって、廃液をバッチ処理することなく、廃液中の化学物質を確実に分解除去することができる。化学物質を吸着するフィルタは、活性種によって常に吸着機能が再生されるので交換する必要がない.よって、開閉弁(63)を廃止して低コスト化を図ることができるとともに、廃液の殺菌・浄化に要する時間を短縮することができる。
【0073】
《その他の実施形態》
〈水耕栽培システムの構成>
上述した各実施形態では、水耕栽培システム(10)は、栽培運転モードにおいて養液を循環させるようにしているが、これに限ったものではなく、例えば、図11に示すように、栽培床(101)を通過した養液を再利用せずにそのまま排出管(53)に流入させるようにしてもよい。
【0074】
〈放電ユニットの構成>
上述した各実施形態の電源部(70)には、ストリーマ放電の放電電力を一定に制御する定電力制御部を用いている。しかしながら、定電力制御部に代えて、ストリーマ放電時の放電電流を一定に制御する定電流制御部を設けることもできる。この定電流制御を行うと、洗浄水の導電率によらず放電が安定するため、スパークの発生も未然に回避できる。
【0075】
また、上述した各実施形態では、電源部(70)の正極に放電電極(64)を接続し、電源部(70)の負極に対向電極(65)を接続している。しかしながら、電源部(70)の負極に放電電極(64)を接続し、電源部(70)の正極に対向電極(65)を接続することで、電極対(64,65)の間で、いわゆるマイナス放電を行うようにしてもよい。
【0076】
〈イオン供給部の構成〉
上述した各実施形態では、排出管(53)を銅配管とすることで、排出管(53)を銅イオンのイオン供給部としている。しかしながら、イオン供給部としては、例えば鉄イオンを生成する鉄製の配管を用いることもできる。同様に、水浄化タンク(61)内の銅板(69)に代えて鉄板を使用することもできる。鉄イオンも銅イオンと同様、過酸化水素の存在下でフェントン反応を促進させるため、水酸ラジカルの生成量を増大できる。
【0077】
なお、廃液浄化ユニット(60)を設ける位置は例示である。例えば、上述の各実施形態では、廃液浄化ユニット(60)を排出管(53)の途中に設けるようにしているが、例えば、排出管(53)の上流側端部や下流側端部に設けるようにしてもよい。すなわち、廃液浄化ユニット(60)は、排出管(53)上にあればどこに設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、水耕栽培システムの廃液浄化装置に有用であり、特に、廃液を一般河川等に排出するための排出管を備えた廃液浄化装置に有用である。
【符号の説明】
【0079】
10 水耕栽培システム
52 導入管
53 排出管(イオン供給部)
61 貯水部(バッチ処理手段)
62 放電ユニット
63 開閉弁
69 銅板(イオン供給部)
80 吸着フィルタ(吸着部)
101 栽培床
103 制御装置(バッチ処理手段)
200 植物
【技術分野】
【0001】
水耕栽培システムの廃液浄化装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、植物の水耕栽培に使用される養液の処理装置として、粒状活性炭を使用したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、栽培中の植物から分泌されるフェノール系物質や有機酸物質といった生育阻害物質を粒状活性炭により吸着除去するようにしている。粒状活性炭を使用した場合には、粒状活性炭が養液中に洩れるのを防止するためには濾過フィルタが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−266171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水耕栽培で使用される養液は、定期的に交換する必要があるが、その際、養液を一般河川等にそのまま排出してしまうと、養液に含まれる成長促進物質や,上述した生育阻害物質(化学物質)等が河川等に流出して植物の生態系に悪影響を及ぼすという問題がある。
【0005】
そこで、養液をシステム外に排出するための排出管に、上記特許文献1に示す処理装置を設けることで、養液を河川等に排出される前に浄化処理することが考えられる。
【0006】
しかしながら、この場合、フィルタを頻繁に交換する必要があるため、フィルタ交換のための手間とコストとが増加するという問題がある。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、低コストで且つメンテナンス性に優れた、水耕栽培システムの廃液浄化装置を提供しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、水耕栽培システム(10)の廃液浄化装置を対象とする。そして、上記水耕栽培システム(10)は、植物を植え付ける栽培床(101)と、栽培床(101)に養液を導入するための導入管(52)と、養液を該システム(10)外に排出するための排出管(53)とを有し、上記排出管(53)には、該排出管(53)内の養液中でストリーマ放電を行う放電ユニット(62)が設けられていることを特徴とする。
【0009】
第1の発明では、排出管(53)に設けられた放電ユニット(62)が養液中でストリーマ放電を行うことで、養液中には水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素が発生する。この活性種は、養液中に含まれる化学物質(植物の生育阻害物質等)を化学反応により分解し、過酸化水素は養液を殺菌・浄化する。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、上記排出管(53)には、該排出管(53)内の養液中に銅イオン又は鉄イオンを供給するイオン供給部(53,69)が設けられていることを特徴とする。
【0011】
第2の発明では、排出管(53)内の養液中にイオン供給部から銅イオン又は鉄イオンが供給される。過酸化水素と銅イオン(又は鉄イオン)の存在下では、フェントン反応により、銅イオン(又は鉄イオン)が触媒的に作用して水酸ラジカルの生成が促進される。これにより、水酸ラジカルによる水の浄化効率が向上する。加えて、銅イオンは菌の繁殖を抑制する効果があるため、水中での殺菌作用も高くなる。
【0012】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記排出管(53)に設けられ、内部に養液が貯留されるとともに上記放電ユニット(62)が収容される貯水部(61)と、上記排出管(53)における上記貯水部(61)の下流側に配設される開閉弁(63)と、上記放電ユニット(62)及び開閉弁(63)の作動を制御することで、上記貯水部(61)内に養液を貯留して上記ストリーマ放電を所定時間実行した後に、該貯留した養液を貯水部(61)外に排出する処理を繰り返し実行するバッチ処理手段(61,63,103)と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
第3の発明では、バッチ処理手段(61,63,103)が、貯水部(61)内に養液を貯留してストリーマ放電を所定時間実行した後、該貯留した養液を貯水部(61)外に排出する処理を繰り返し実行する。これにより、排出管(53)内の養液を、貯水部(61)に貯留しては殺菌・浄化してバッチ式に処理することができる。したがって、排出管(53)内を連続的に流れる養液を処理する場合に比べて養液の殺菌・浄化効果を高めることができる。
【0014】
第4の発明は、第1乃至第3のいずれか一つの発明において、上記排出管(53)における上記放電ユニット(62)の上流側近傍又は下流側近傍には、該排出管(53)内の養液中の化学物質を吸着する吸着部(80)が設けられていることを特徴とする。
【0015】
第4の発明では、排出管(53)内を流れる養液が吸着部(80)を通過する際に、養液中に含まれる化学物質が該吸着部(80)にて吸着保持される。これにより、ストリーマ放電により生じる活性種を養液中の化学物質と確実に反応させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、システム(10)外に廃液を排出する排出管(53)に放電ユニット(62)を設けて、排出管(53)内の養液中でストリーマ放電を行うようにしたことで、養液をシステム(10)外(一般河川等)に排出される前に殺菌・浄化すると共に養液中に含まれる化学物質を分解除去することができる。したがって、化学物質を含んだ養液が一般河川等に排出されることにより環境汚染が進むのを防止することができる。
【0017】
また、本発明では、直流電源(70)を用いてストリーマ放電を行っているので、例えば、パルス電源を使用する場合と比較して、電源部の簡素化、低コスト化、小型化を図ることができる。また、パルス電源を用いると、放電に伴って水中で発生する衝撃波や騒音が大きくなってしまう。これに対し、直流電源(70)を用いると、このような衝撃波や騒音も低減できる。
【0018】
第2の発明によれば、フェトン反応により水酸ラジカルの生成を促進することで、第1の発明と同様の作用効果を更に確実に得ることができる。
【0019】
第3の発明によれば、排出管(53)内を流れる養液をバッチ式に処理するようにしたことで、養液の殺菌・浄化効果を更に高めることができる。
【0020】
第4の発明によれば、養液中の化学物質を排出管(53)に設けられた吸着部(80)にて一旦吸着して、吸着した化学物質に対して活性種を作用させることで、養液中の化学物質をより一層確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の実施形態1に係る廃液浄化ユニットを備えた水耕栽培システムの構成を示す図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る廃液浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始する前の状態を示すものである。
【図3】図3は、実施形態1に係る絶縁ケーシングの斜視図である。
【図4】図4は、実施形態1に係る廃液浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作中に気泡が安定した状態を示すものである。
【図5】図5は、実施形態1の変形例に係る廃液浄化ユニットの全体構成図である。
【図6】図6は、実施形態1の変形例に係る絶縁ケーシングの斜視図である。
【図7】図7は、実施形態2に係る廃液浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始する前の状態を示すものである。
【図8】図8は、実施形態2に係る廃液浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作中に気泡が安定した状態を示すものである。
【図9】図9は、実施形態2の変形例に係る絶縁ケーシングの蓋部の平面図である。
【図10】図10は、実施形態3に係る廃液浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始する前の状態を示すものである。
【図11】図11は、他の実施形態を示す図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0023】
《発明の実施形態1》
〈全体構成〉
図1は、本発明の実施形態に係る水耕栽培システム(10)の構成を示す図である。この水耕栽培システム(10)は、いわゆる施設園芸(例えばビニールハウス)や、閉鎖環境で人工光を用いて植物を栽培する植物工場等で使用される。図1に示すように、水耕栽培システム(10)は、栽培床(101)、配管(51,52,53)、ポンプ(102)、廃液浄化ユニット(60)、及び制御装置(103)を備えている。
【0024】
この水耕栽培システム(10)は、養液を栽培床(101)に供給する栽培運転モードと、養液をシステム(10)外に排出する廃液処理モードとを備えている。作業者は、不図示の入力装置から希望する運転モードを設定可能になっている。
【0025】
栽培床(101)及びポンプ(102)は、配管(51,52)で互いに接続されており、栽培運転モードでは、植物の栽培に必要な養分を含んだ養液が循環する(図1の実線参照)。配管(51)の途中には、排出管(53)が接続されており、廃液処理モードでは、使用済みの養液(以下、廃液という)が排出管(53)を通ってシステム(10)外へと排出される。排出管(53)と配管(51)との接続部には、栽培運転モードと廃液処理モードとで養液の流路を切り換えるための電気駆動式の三方弁(54)が設けられている。排出管(53)には、廃液を殺菌・浄化するための廃液浄化ユニット(60)が設けられている。廃液浄化ユニット(60)及び三方弁(54)は、制御装置(103)によって制御される。
【0026】
栽培床(101)は、養液を、所定の量だけ溜めるようになっている。栽培床(101)には、植物(200)が植え付けられる。植え付けられた植物(200)は、栽培床(101)に溜められた養液を吸収し、吸収した養液中の養分を利用する。この栽培床(101)には養液が流入する流入孔と、養液が流出する流出孔が設けられ、流出孔には配管(51)、流入孔には配管(52)がそれぞれ接続されている。
【0027】
廃液浄化ユニット(60)は、水中(具体的には養液)でのストリーマ放電によって水中に過酸化水素等の浄化成分を生成し、この浄化成分によって水の浄化を行う。廃液浄化ユニット(60)の構成は後に詳述する。この廃液浄化ユニット(60)には養液が流入する流入孔と、養液が流出する流出孔が設けられ、流入孔が排出管(53)の上流側排出部(53a)に接続されている。また、廃液浄化ユニット(60)の流出孔には、排出管(53)の下流側排出部(53b)が接続されており、該下流側排出部(53b)は、システム(10)外の一般河川まで延びている。
【0028】
ポンプ(102)は、養液を循環させるためのポンプである。このポンプ(102)の吸入孔は、栽培床(101)の流出孔と配管(51)で接続され、吐出孔は、栽培床(101)の流入孔と配管(52)で接続されている。このポンプ(102)の運転状態は、制御装置(103)が制御する。本実施形態では、配管(51,52)は樹脂の配管であり、排出管(53)は銅配管(イオン供給部)である。排出管(53)は、廃液を一時的に貯留するための貯水部(後述する水浄化タンク(61)で構成される)と、該貯水部よりも上流側の上流側排出部(53a)及び下流側の下流側排出部(53b)とで構成されている。
【0029】
制御装置(103)は、ポンプ(102)、廃液浄化ユニット(60)、及び三方弁(54)に所定の制御信号(SIG)を出力し、ポンプ(102)の運転状態(オンオフ)の制御と、廃液浄化ユニット(60)の運転状態(ストリーマ放電のオンオフ)の制御と、三方弁(54)の開閉とを行う。
【0030】
〈廃液浄化ユニット(60)の構成〉
図2は、廃液浄化ユニット(60)の構成例を示す図である。廃液浄化ユニット(60)は、水中でのストリーマ放電によって水中に過酸化水素等の浄化成分を生成し、この浄化成分によって使用済みの養液(以下、廃液という)の浄化を行うものである。廃液浄化ユニット(60)は、水浄化タンク(61)と放電ユニット(62)と電気駆動式の開閉弁(63)と銅板(69)とを有している(図2を参照)。
【0031】
水浄化タンク(61)は、上述の如く排出管(53)の上流側排出部(53a)と下流側排出部(53b)とが接続されている。水浄化タンク(61)内には、該タンク(61)内を上流側と下流側とに仕切る銅板(69)(イオン供給部)が配設されている。銅板(69)には、比較的大きめの貫通孔(69a)が複数形成されている。したがって、銅板(69)によって排出管(53)内の廃液の流通が妨げられることもない。
【0032】
開閉弁(63)は、排出管(53)における水浄化タンク(61)の下流側近傍に配設されている。なお、放電ユニット(62)及び開閉弁(63)は、制御装置(103)によって制御される。
【0033】
放電ユニット(62)は、放電電極(64)及び対向電極(65)とからなる電極対(64,65)と、この電極対(64,65)に電圧を印加する電源部(70)と、放電電極(64)を内部に収容する絶縁ケーシング(71)とを備えている。
【0034】
電極対(64,65)は、水中でストリーマ放電を生起するためのものである。放電電極(64)は、絶縁ケーシング(71)の内部に配置されている。放電電極(64)は、上下に扁平な板状に形成されている。放電電極(64)は、電源部(70)の正極側に接続されている。放電電極(64)は、例えばステンレス、銅等の導電性の金属材料で構成されている。
【0035】
対向電極(65)は、絶縁ケーシング(71)の外部に配置されている。対向電極(65)は、放電電極(64)の上方に設けられている。対向電極(65)は、上下に扁平な板状であって、且つ上下に複数の貫通孔(66)を有するメッシュ形状ないしパンチングメタル形状に構成されている。対向電極(65)は、放電電極(64)と略平行に配設されている。対向電極(65)は、電源部(70)の負極側に接続されている。対向電極(65)は、例えばステンレス、真鍮等の導電性の金属材料で構成されている。
【0036】
電源部(70)は、電極対(64,65)に所定の直流電圧を印加する直流電源で構成されている。すなわち、電源部(70)は、電極対(64,65)に対して瞬時的に高電圧を繰り返し印加するようなパルス電源ではなく、電極対(64,65)に対して常に数キロボルトの直流電圧を印加する。電源部(70)のうち、対向電極(65)が接続される負極側は、アースと接続されている。また、電源部(70)には、電極対(64,65)の放電電力を一定に制御する定電力制御部が設けられている(図示省略)。
【0037】
絶縁ケーシング(71)は、水浄化タンク(61)の底部に設置されている。絶縁ケーシング(71)は、例えばセラミックス等の絶縁材料で構成されている。絶縁ケーシング(71)は、一面(上面)が開放された容器状のケース本体(72)と、該ケース本体(72)の上方の開放部を閉塞する板状の蓋部(73)とを有している。
【0038】
ケース本体(72)は、角型筒状の側壁部(72a)と、該側壁部(72a)の底面を閉塞する底部(72b)とを有している。放電電極(64)は、底部(72b)の上側に敷設されている。絶縁ケーシング(71)では、蓋部(73)と底部(72b)との間の上下方向の距離が、放電電極(64)の厚さよりも長くなっている。つまり、放電電極(64)と蓋部(73)との間には、所定の間隔が確保されている。これにより、絶縁ケーシング(71)の内部では、放電電極(64)とケース本体(72)と蓋部(73)との間に空間(S)が形成される。
【0039】
図2及び図3に示すように、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)には、該蓋部(73)を厚さ方向に貫通する1つの開口(74)が形成されている。この開口(74)により、放電電極(64)と対向電極(65)との間の電界の形成が許容されている。蓋部(73)の開口(74)の内径は、0.02mm以上0.5mm以下であることが好ましい。以上のような開口(74)は、電極対(64,65)の間の電流経路の電流密度を上昇させる電流密度集中部を構成する。
【0040】
以上のように、絶縁ケーシング(71)は、電極対(64,65)のうちの一方の電極(放電電極(64))のみを内部に収容し、且つ電流密度集中部としての開口(74)を有する絶縁部材を構成している。
【0041】
加えて、絶縁ケーシング(71)の開口(74)内では、電流経路の電流密度が上昇することで、水がジュール熱によって気化して気泡(B)(図4参照)が形成される。つまり、絶縁ケーシング(71)の開口(74)は、該開口(74)に気相部としての気泡(B)を形成する気相形成部として機能する。
【0042】
〈水耕栽培システム(10)の動作〉
水耕栽培システム(10)は、栽培運転モードでは、制御装置(103)によって、ポンプ(102)を作動させるとともに三方弁(54)を制御することで、養液を図1の実線で示す経路で循環させる。これにより、養液が栽培床(101)に供給される。栽培床(101)では、それぞれの植物(200)が必要量の養液を吸収する。植物(200)に吸収されなかった養液は、栽培床(101)から配管(51)を通って流出する。流出した養液は、不足した成分や水が補われ、ポンプ(102)を通過後に再び栽培床(101)に流入する。養液の成分調整や量の調整を行う装置は、図1では図示を省略してある。なお、養液の循環は、常に連続的に行ってもよいし、適当な時間間隔をあけて行うようにしてもよい。
【0043】
〈廃液浄化ユニットの動作〉
水耕栽培システム(10)は、廃液処理モードでは、制御装置(103)によって、ポンプ(102)の作動を停止するとともに三方弁(54)を制御することで、養液を図1の二点鎖線で示す経路で流通させる。これにより、廃液が、廃液浄化ユニット(60)へと導かれて殺菌・浄化される。
【0044】
本実施形態では、廃液は廃液浄化ユニット(60)にてバッチ式に処理される。すなわち、制御装置(103)は、廃液の殺菌・浄化処理に際して、先ず、開閉弁(63)を閉じて排出管(53)内における廃液の流れを堰き止める。制御装置(103)は、開閉弁(63)を閉じてから第1設定時間T1が経過した後に、廃液の殺菌・浄化処理を所定時間実行して、該所定時間経過後に開閉弁(63)を開く。制御装置(103)は、開閉弁(63)を開いてから第2設定時間T2が経過したときに開閉弁を再び閉じる。制御装置(103)は、この一連の処理を繰り返し実行する。すなわち、制御装置(103)は、廃液を水浄化タンク(61)に貯めては殺菌・浄化する処理を繰り返し実行する。ここで、第1設定時間T1は、例えば、水浄化タンク(61)内が空の状態から廃液で満タンになるまでの時間とすることができる。また、第2設定時間T2は、例えば、水浄化タンク(61)内の満タンの廃液が開閉弁(63)からタンク外に全て排出されるまでの時間と同じか又はそれよりもやや短い時間とすることができる。
【0045】
廃液浄化ユニット(60)における殺菌・浄化処理の開始時には、図2に示すように、絶縁ケーシング(71)の内の空間(S)が浸水した状態となっている。電源部(70)から電極対(64,65)に所定の直流電圧(例えば1kV)が印加されると、電極対(64,65)の間に電界が形成される。この際、放電電極(64)の周囲は、絶縁ケーシング(71)で覆われている。このため、電極対(64,65)の間での漏れ電流が抑制されとともに、開口(74)内の電流経路の電流密度が上昇した状態となる。
【0046】
開口(74)内の電流密度が上昇すると、開口(74)内のジュール熱が大きくなる。その結果、絶縁ケーシング(71)では、開口(74)の近傍において、水(廃液)の気化が促進されて気泡(B)が形成される。この気泡(B)は、図4に示すように、開口(74)のほぼ全域を覆う状態となり、対向電極(65)に導通する負極側の水と、正極側の放電電極(64)との間に気泡(B)が介在する。したがって、この状態では、気泡(B)が、放電電極(64)と対向電極(65)との間での水を介した導電を阻止する抵抗として機能する。これにより、放電電極(64)と対向電極(65)との間の漏れ電流が抑制され、電極対(64,65)間では、所望とする電位差が保たれることになる。すると、気泡(B)内では、絶縁破壊に伴いストリーマ放電が発生する。
【0047】
以上のようにして、気泡(B)でストリーマ放電が行われると、水浄化タンク(61)内の水中では、水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素等が生成される。水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素は、ストリーマ放電に伴う熱によって水浄化タンク(61)内を対流する。これにより、水中での活性種や過酸化水素の拡散が促される。また、気泡(B)でストリーマ放電が行われると、このストリーマ放電に伴ってこの気泡(B)でイオン風を生成し易くなる。よって、水浄化タンク(61)内では、このイオン風を利用して、活性種や過酸化水素の拡散効果を更に向上できる。
【0048】
そして、ストリーマ放電によって生成した過酸化水素は、廃液中の雑菌を除菌する作用がある。そのため、水浄化タンク(61)内の廃液を殺菌・浄化することができる。なお、過酸化水素は、一般的には、植物には安全である。
【0049】
また、銅製の排出管(53)及び水浄化タンク(61)内の銅板(69)からは、銅イオンが廃液中に溶出する。過酸化水素と銅イオンの存在下では、フェントン反応により、銅イオンが触媒的に作用して水酸ラジカルの生成が促進される。これにより、水酸ラジカルによる廃液の浄化効率が向上する。加えて、銅イオンは菌の繁殖を抑制する効果があるため、水中での殺菌作用も高くなる。
【0050】
なお、廃液浄化ユニット(60)による除菌や汚れ分解は、常時行ってもよいが、適当な時間間隔をあけて行うようにしてもよい。廃液浄化ユニット(60)の運転の開始や休止の制御は制御装置(103)で行えばよい。
【0051】
〈本実施形態における効果〉
以上のように、本実施形態によれば、廃液浄化ユニット(60)において発生した水酸ラジカルや過酸化水素によって廃液中の汚れの原因物質の分解や雑菌の除菌ができるので、廃液を一般河川に流出する前に殺菌・浄化することができる。したがって、廃液による環境汚染を確実に防止することが可能となる。また、フィルタ等を使用しないため、メンテナンス面及びコスト面において有利である。
【0052】
また、本実施形態では、廃液浄化ユニット(60)にて廃液をバッチ式に処理するようにしているので、排出管(53)内を連続的に流れる廃液を処理する場合に比べて廃液の殺菌・浄化効果を高めることができる。
【0053】
また、水浄化タンク(61)内の銅板(69)及び銅製の排出管(53)から廃液中に銅イオンが供給されるので、フェントン反応により、銅イオン(又は鉄イオン)が触媒的に作用して水酸ラジカルの生成が促進される。これにより、水酸ラジカルによる水の浄化効率が向上する。加えて、銅イオンは菌の繁殖を抑制する効果があるため、水中での殺菌作用も高くなる。
【0054】
《実施形態1の変形例》
上記実施形態1では、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に1つの開口(74)が形成されている。しかしながら、例えば図5及び図6に示すように、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に複数の開口(74)を形成してもよい。この変形例では、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)が、略正方形板状に形成され、この蓋部(73)に複数の開口(74)が等間隔を置きながら碁盤目状に配列されている。一方、放電電極(64)及び対向電極(65)は、全ての開口(74)に跨るような正方形板状に形成されている。
【0055】
この変形例においても、各開口(74)が、電流密度集中部、及び気相形成部として機能する。これにより、電源部(70)から電極対(64,65)に直流電圧が印加されると、各開口(74)の電流密度が上昇し、各開口(74)で気泡(B)が形成される。その結果、各気泡(B)でそれぞれストリーマ放電が生起され、水酸ラジカル等の活性種や、過酸化水素が生成される。
【0056】
《発明の実施形態2》
実施形態2に係る水耕栽培システム(10)は、上述した実施形態1とは放電ユニット(62)の構成が異なるものである。以下には、上記実施形態1と異なる点を主として説明する。
【0057】
図7に示すように、実施形態2の放電ユニット(62)は、水浄化タンク(61)の外側から内部に向かって挿入されて固定される、いわゆるフランジユニット式に構成されている。また、実施形態2の放電ユニット(62)は、放電電極(64)と対向電極(65)と絶縁ケーシング(71)とが一体的に組立てられている。
【0058】
実施形態2の絶縁ケーシング(71)は、大略の外形が円筒状に形成されている。絶縁ケーシング(71)は、ケース本体(72)と蓋部(73)とを有している。
【0059】
実施形態2のケース本体(72)は、ガラス質又は樹脂製の絶縁材料で構成されている。ケース本体(72)は、円筒状の基部(76)と、該基部(76)から水浄化タンク(61)側に向かって突出する筒状壁部(77)と、該筒状壁部(77)の外縁部から更に水浄化タンク(61)側に向かって突出する環状凸部(78)とを有している。基部(76)の軸心部には、円柱状の挿入口(76a)が軸方向に延びて貫通形成されている。筒状壁部(77)の内側には、挿入口(76a)と同軸となり、且つ挿入口(76a)よりも大径となる円柱状の空間(S)が形成されている。
【0060】
実施形態2の蓋部(73)は、略円板状に形成されて環状凸部(78)の内側に嵌合している。蓋部(73)は、セラミックス材料で構成されている。蓋部(73)の軸心には、実施形態1と同様、蓋部(73)を上下に貫通する円形状の1つの開口(74)が形成されている。
【0061】
放電電極(64)は、軸直角断面が円形状となる縦長の棒状の電極で構成されている。放電電極(64)は、基部(76)の挿入口(76a)に嵌合している。これにより、放電電極(64)は、絶縁ケーシング(71)の内部に収容されている。実施形態2では、放電電極(64)のうち水浄化タンク(61)とは反対側の端部が、水浄化タンク(61)の外部に露出される状態となる。このため、水浄化タンク(61)の外部に配置される電源部(70)と、放電電極(64)とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0062】
放電電極(64)のうち水浄化タンク(61)側の端部(64a)は、絶縁ケーシング(71)の内部の空間(S)に臨んでいる。なお、図7に示す例では、放電電極(64)の端部(64a)が、挿入口(76a)の開口面よりも上側(水浄化タンク(61)側)に突出しているが、この端部(64a)の先端面を挿入口(76a)の開口面と略面一としてもよいし、端部(64a)を挿入口(76a)の開口面よりも下側に陥没させてもよい。また、放電電極(64)は、実施形態1と同様、開口(74)を有する蓋部(73)との間に所定の間隔が確保されている。
【0063】
対向電極(65)は、円筒状の電極本体(65a)と、該電極本体(65a)から径方向外方へ突出する鍔部(65b)とを有している。電極本体(65a)は、絶縁ケーシング(71)のケース本体(72)に外嵌している。鍔部(65b)は、水浄化タンク(61)の壁部に固定されて放電ユニット(62)を保持する固定部を構成している。放電ユニット(62)が水浄化タンク(61)に固定された状態では、対向電極(65)の電極本体(65a)の一部が浸水された状態となる。
【0064】
対向電極(65)は、電極本体(65a)よりも小径の内側筒部(65c)と、該内側筒部(65c)と電極本体(65a)との間に亘って形成される連接部(65d)とを有している。内側筒部(65c)及び連接部(65d)は、水浄化タンク(61)内の水中に浸漬している。内側筒部(65c)は、その内部に円柱空間(67)を形成している。内側筒部(65c)の軸方向の一端は、蓋部(73)と当接して該蓋部(73)を保持する保持部を構成している。内側筒部(65c)の軸方向の他端側には、円柱空間(67)を覆うようにメッシュ状の漏電防止材(68)が設けられている。この漏電防止材(68)は、対向電極(65)と接触することで、実質的にアースされている。これにより、漏電防止材(68)は、水浄化タンク(61)の内部の空間(水中)のうち、円柱空間(67)の内側から外側への漏電を防止している。
【0065】
対向電極(65)は、電極本体(65a)の一部が水浄化タンク(61)の外部に露出される状態となる。このため、電源部(70)と対向電極(65)とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0066】
〈廃液浄化ユニットの運転動作〉
実施形態2の水耕栽培システム(10)においても、廃液浄化ユニット(60)が運転されることで、廃液の浄化がなされる。
【0067】
廃液浄化ユニット(60)における殺菌・浄化処理の開始時には、図7に示すように、絶縁ケーシング(71)の内の空間(S)が浸水した状態となっている。電源部(70)から電極対(64,65)に所定の直流電圧(例えば1kV)が印加されると、開口(74)の内部の電流密度が上昇してく。
【0068】
図7に示す状態から、電極対(64,65)へ更に直流電圧が継続して印加されると、開口(74)内の水が気化されて気泡(B)が形成される(図8を参照)。この状態では、気泡(B)が開口(74)のほぼ全域を覆う状態となり、円柱空間(67)内の負極側の水と、放電電極(64)との間に気泡(B)による抵抗が付与される。これにより、放電電極(64)と対向電極(65)との間の電位差が保たれ、気泡(B)でストリーマ放電が発生する。その結果、水中では、水酸ラジカルや過酸化水素を生成され、これらの成分が水の浄化に利用される。
【0069】
《実施形態2の変形例》
実施形態2では、円板状の蓋部(73)の軸心に1つの開口(74)を形成しているが、この蓋部(73)に複数の開口(74)を形成してもよい。図9に示す例では、蓋部(73)の軸心を中心とする仮想ピッチ円上に、5つの開口(74)が等間隔置きに配列されている。このように蓋部(73)に複数の開口(74)を形成することで、各開口(74)の近傍でそれぞれストリーマ放電を生起させることができる。
【0070】
《発明の実施形態3》
実施形態3に係る水耕栽培システム(10)は、上述した実施形態1とは廃液浄化ユニット(60)の構成が異なるものである。以下には、上記実施形態1と異なる点を主として説明する。
【0071】
図10に示すように、実施形態3の廃液浄化ユニット(60)は、廃液をバッチ処理するための開閉弁(63)を有していないが、廃液中の化学物質を吸着するための吸着フィルタ(80)を有している。吸着フィルタ(80)は、放電ユニット(62)の下流側近傍に配設されている。なお、吸着フィルタ(80)は、放電ユニット(62)の上流側近傍に配設してもよい。
【0072】
〈廃液浄化ユニットの運転動作〉
本実施形態では、廃液を廃液浄化ユニット(60)にてバッチ式に処理するのではなく連続的に処理する。すなわち、廃液は、排出管(53)内を、上流側排出部(53a)、水浄化タンク(61)、及び下流側排出部(53b)の順で連続的に流れる。そして、廃液が水浄化タンク(61)内の吸着フィルタ(80)を通過する際に、廃液中の化学物質が吸着フィルタ(80)により吸着される。吸着フィルタ(80)の上流側近傍には、放電ユニット(62)が配設されているため、ストリーマ放電により生じる活性種を、吸着フィルタ(80)に吸着された化学物質と反応させることができる。また、吸着フィルタ(80)が放電ユニット(62)と至近距離に配置されるので、寿命の短い様々なラジカル類も利用することができる。したがって、廃液をバッチ処理することなく、廃液中の化学物質を確実に分解除去することができる。化学物質を吸着するフィルタは、活性種によって常に吸着機能が再生されるので交換する必要がない.よって、開閉弁(63)を廃止して低コスト化を図ることができるとともに、廃液の殺菌・浄化に要する時間を短縮することができる。
【0073】
《その他の実施形態》
〈水耕栽培システムの構成>
上述した各実施形態では、水耕栽培システム(10)は、栽培運転モードにおいて養液を循環させるようにしているが、これに限ったものではなく、例えば、図11に示すように、栽培床(101)を通過した養液を再利用せずにそのまま排出管(53)に流入させるようにしてもよい。
【0074】
〈放電ユニットの構成>
上述した各実施形態の電源部(70)には、ストリーマ放電の放電電力を一定に制御する定電力制御部を用いている。しかしながら、定電力制御部に代えて、ストリーマ放電時の放電電流を一定に制御する定電流制御部を設けることもできる。この定電流制御を行うと、洗浄水の導電率によらず放電が安定するため、スパークの発生も未然に回避できる。
【0075】
また、上述した各実施形態では、電源部(70)の正極に放電電極(64)を接続し、電源部(70)の負極に対向電極(65)を接続している。しかしながら、電源部(70)の負極に放電電極(64)を接続し、電源部(70)の正極に対向電極(65)を接続することで、電極対(64,65)の間で、いわゆるマイナス放電を行うようにしてもよい。
【0076】
〈イオン供給部の構成〉
上述した各実施形態では、排出管(53)を銅配管とすることで、排出管(53)を銅イオンのイオン供給部としている。しかしながら、イオン供給部としては、例えば鉄イオンを生成する鉄製の配管を用いることもできる。同様に、水浄化タンク(61)内の銅板(69)に代えて鉄板を使用することもできる。鉄イオンも銅イオンと同様、過酸化水素の存在下でフェントン反応を促進させるため、水酸ラジカルの生成量を増大できる。
【0077】
なお、廃液浄化ユニット(60)を設ける位置は例示である。例えば、上述の各実施形態では、廃液浄化ユニット(60)を排出管(53)の途中に設けるようにしているが、例えば、排出管(53)の上流側端部や下流側端部に設けるようにしてもよい。すなわち、廃液浄化ユニット(60)は、排出管(53)上にあればどこに設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、水耕栽培システムの廃液浄化装置に有用であり、特に、廃液を一般河川等に排出するための排出管を備えた廃液浄化装置に有用である。
【符号の説明】
【0079】
10 水耕栽培システム
52 導入管
53 排出管(イオン供給部)
61 貯水部(バッチ処理手段)
62 放電ユニット
63 開閉弁
69 銅板(イオン供給部)
80 吸着フィルタ(吸着部)
101 栽培床
103 制御装置(バッチ処理手段)
200 植物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水耕栽培システム(10)の廃液浄化装置であって、
上記水耕栽培システム(10)は、植物を植え付ける栽培床(101)と、栽培床(101)に養液を導入するための導入管(52)と、養液を該システム(10)外に排出するための排出管(53)とを有し、
上記排出管(53)には、該排出管(53)内の養液中でストリーマ放電を行う放電ユニット(62)が設けられていることを特徴とする廃液浄化装置。
【請求項2】
請求項1記載の廃液浄化装置において、
上記排出管(53)には、該排出管(53)内の養液中に銅イオン又は鉄イオンを供給するイオン供給部(53,69)が設けられていることを特徴とする廃液浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の廃液浄化装置において、
上記排出管(53)に設けられ、内部に養液が貯留されるとともに上記放電ユニット(62)が収容される貯水部(61)と、
上記排出管(53)における上記貯水部(61)の下流側に配設される開閉弁(63)と、
上記放電ユニット(62)及び開閉弁(63)の作動を制御することで、上記貯水部(61)内に養液を貯留して上記ストリーマ放電を所定時間実行した後に、該貯留した養液を貯水部(61)外に排出する処理を繰り返し実行するバッチ処理手段(61,63,103)と、を備えていることを特徴とする廃液浄化装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の廃液浄化装置において、
上記排出管(53)における上記放電ユニット(62)の上流側近傍又は下流側近傍には、該排出管(53)内の養液中の化学物質を吸着する吸着部(80)が設けられていることを特徴とする廃液浄化装置。
【請求項1】
水耕栽培システム(10)の廃液浄化装置であって、
上記水耕栽培システム(10)は、植物を植え付ける栽培床(101)と、栽培床(101)に養液を導入するための導入管(52)と、養液を該システム(10)外に排出するための排出管(53)とを有し、
上記排出管(53)には、該排出管(53)内の養液中でストリーマ放電を行う放電ユニット(62)が設けられていることを特徴とする廃液浄化装置。
【請求項2】
請求項1記載の廃液浄化装置において、
上記排出管(53)には、該排出管(53)内の養液中に銅イオン又は鉄イオンを供給するイオン供給部(53,69)が設けられていることを特徴とする廃液浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の廃液浄化装置において、
上記排出管(53)に設けられ、内部に養液が貯留されるとともに上記放電ユニット(62)が収容される貯水部(61)と、
上記排出管(53)における上記貯水部(61)の下流側に配設される開閉弁(63)と、
上記放電ユニット(62)及び開閉弁(63)の作動を制御することで、上記貯水部(61)内に養液を貯留して上記ストリーマ放電を所定時間実行した後に、該貯留した養液を貯水部(61)外に排出する処理を繰り返し実行するバッチ処理手段(61,63,103)と、を備えていることを特徴とする廃液浄化装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の廃液浄化装置において、
上記排出管(53)における上記放電ユニット(62)の上流側近傍又は下流側近傍には、該排出管(53)内の養液中の化学物質を吸着する吸着部(80)が設けられていることを特徴とする廃液浄化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−75327(P2012−75327A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220379(P2010−220379)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]