説明

水耕栽培装置

【課題】栽培槽の交換が容易な水耕栽培装置を提供する。
【解決手段】内部に植物を収納する栽培槽10と、栽培槽10に供給する養水を貯えるタンクと、タンクの養水を栽培槽10に供給するポンプとを備え、栽培槽10は、内部が中空の筒状部材11と、この筒状部材における筒状側面部の一部に形成され、植物が成長した際に植物の一部を露出させる開口10aと、筒状部材11の両側に栽培槽10の側面部となるキャップ部を取り付け、キャップ部に設けられ、栽培槽内に養水を流入又は流出させる孔部に、孔部に継ぎ手となる流入管14又は流出管15とを備え、隣り合う栽培槽10の流入管14と流出管15とを連結管16によって連結して、複数の栽培槽10において最上流側に設定された栽培槽10の流入管14にポンプを連結し、最下流側に設定された栽培槽10の流出管15タンクを連結し、タンクの養水を、複数の栽培槽を介して循環させる水耕栽培装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内あるいは室外の緑化を目的とした水耕栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物を土壌に直接植えるのではなく、主に養分を含めた水によって育てる水耕栽培が行われている。特に近年、水耕栽培が一般家庭にも普及し、観葉植物ばかりではなく、家庭菜園にも利用されている。
【0003】
また、従来、この種の技術としては、上面を植栽用の開口部とし側面部に植物の根茎部を自由に伸長させる連通孔を設けたプランターを、連通孔同士を突き合わせて水密的に接続することにより、室内の緑化に寄与するほか、ベンチ、椅子、物置台その他に多目的に利用できるようにする、といった技術が提案されている(特許文献1参照)。また、肥料等の育成用養分を内包した保水性マットを巻き付けた緑化用植物を水耕栽培用プランターに配置する。その水耕栽培用プランターに上水道と接続された給水パイプと下水道に接続された排水パイプとを接続して、給水パイプから供給される水によって保水性マットが緑化用植物に養分を供給する、といった技術が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】実開平5−68255号公報
【特許文献2】実開平7−28341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、屋内や、家庭における屋上やベランダといった場所で水耕栽培を行う場合には、持ち運びや組み立てが容易になるように、水耕栽培設備の小型化、軽量化及び構成の単純化が求められる。さらに、植物を成長させるために、確実な給水や肥料供給が容易であり、しかも、プランター内に安定して水が流れるようにするための管理が容易なことが求められる。
【0005】
しかしながら、従来、問題となりやすいのが装置の管理である。例えば、プランター内の植物が成長すればそれだけ重量が増加し、しかも根の量も増加するため、プランターの内側から外側へ押す力が経時ごとに強くなってくる。また、外部から衝撃が加わる場合もあり、しかもプランター自体の風化による強度の低下といったことを考慮すれば、プランターは欠損しやすい環境下におかれることになる。そして、プランターが欠損した場合、その欠損部分から水漏れが発生することによってプランター内の水量が減少し、植物に対して確実に給水できなくなる。この場合には、プランターを交換する必要があるが、例えば、特許文献1に記載された従来技術においては、連通孔同士を突き合わせて水密的に接続する構成であるため、プランターを簡単に交換できるものではなかった。
【0006】
さらに、植物によっては季節によって枯死するものもあり、水耕栽培において植物が枯死した場合には、枯死した植物を除去する必要がある。しかし、単に枯死した植物を除去したとしてもそのプランターに植物が無ければ、例えば、複数のプランターが連なっている場合において非常に目立つようになる。このような場合には、植物が無いプランターを予め植栽されているプランターに交換することが有効な対処方法となる。しかし、前述したように、従来においては、簡単に交換できるものではなく、また、水の供給を維持する必要があるため、そのままプランターを接続しておくことになる。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決し、栽培槽の交換が容易な水耕栽培装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のような目的を達成するために、本発明は、以下のようなものを提供する。
【0009】
(1) 内部に植物を収納する栽培槽と、この栽培槽に供給する養水を貯えるタンクと、このタンクの養水を前記栽培槽に供給する供給装置とを備え、前記栽培槽は、開口を有しかつ内部が中空の筒状部材と、前記筒状部材の両側の側面部における一方の側面部に設けられ、前記栽培槽内に養水を流入させる流入手段と、他方の側面部に設けられ、前記栽培槽内の養水を外部に流出させる流出手段とを備え、前記開口は、前記筒状部材の両側方向が水平方向になるように前記筒状部材が設置された場合に、前記筒状部材の上部に配置されるように前記筒状部材における筒状側面部の一部に形成され、前記流入手段及び前記流出手段は、それぞれ内部に養水の流路を有する流入側継ぎ手及び流出側継ぎ手を有し、前記供給装置は、前記流入側継ぎ手に着脱自在に連結しかつ内部に養水の流路を有する供給側連結部材を備え、前記タンクは、前記流出側継ぎ手に着脱自在に連結しかつ内部に養水の流路を有する排出側連結部材を備え、前記タンクの養水を、前記栽培槽を介して循環させることを特徴とする水耕栽培装置。
【0010】
(1)によれば、栽培槽を交換する際に、栽培槽の流入側継ぎ手と供給側連結部材、及び流出側継ぎ手の排出側連結部材とを取り外すことによって、所定の栽培槽の取り出しが可能になる。同様に、新たな栽培槽の流入側継ぎ手及び流出側継ぎ手を供給側連結部材及び排出側連結部材にそれぞれ連結することにより、新たな栽培槽の取り付けが容易に可能になる。このように、メンテナンス性が高く、栽培槽の交換が容易な水耕栽培装置を提供することが可能になる。
【0011】
(2) 内部に植物を収納する栽培槽と、この栽培槽に供給する養水を貯えるタンクと、このタンクの養水を前記栽培槽に供給する供給装置とを備え、前記栽培槽は、開口を有しかつ内部が中空の筒状部材と、前記筒状部材の両側の側面部における一方の側面部に設けられ、前記栽培槽内に養水を流入させる流入手段と、他方の側面部に設けられ、前記栽培槽内の養水を外部に流出させる流出手段とを備え、前記開口は、前記筒状部材の両側方向が水平方向になるように前記筒状部材が設置された場合に、前記筒状部材の上部に配置されるように前記筒状部材における筒状側面部の一部に形成され、前記流入手段及び前記流出手段は、それぞれ内部に養水の流路を有する流入側継ぎ手及び流出側継ぎ手を有し、前記供給装置と前記タンクとの間に複数の前記栽培槽が連結されており、各栽培部は、前記流入側継ぎ手及び前記流出側継ぎ手にそれぞれ着脱自在に連結しかつ内部に養水の流路を有する連結部材によって、前記複数の栽培部における養水の流路が連続するように連結され、最上流側に設定された前記栽培槽の流入側継ぎ手に前記供給装置を連結しかつ最下流側に設定された前記栽培槽の流出側継ぎ手に前記タンクを連結して、前記タンクの養水を、前記複数の栽培部を介して循環させることを特徴とする水耕栽培装置。
【0012】
(2)によれば、複数の栽培槽が連なるように連結されている場合において、所望の栽培槽を交換する際に、所望の栽培槽の流入側継ぎ手の連結部材と、流出側継ぎ手の連結部材とを取り外すことによって、所定の栽培槽の取り出しが可能になる。同様に、新たな栽培槽の流入側継ぎ手及び流出側継ぎ手を他の栽培槽の継ぎ手に連結部材を介して連結することにより、新たな栽培槽の取り付けが容易に可能になる。このように、メンテナンス性が高く、栽培槽の交換が容易な水耕栽培装置を提供することが可能になる。
【0013】
(3) (2)において、前記連結部材は可撓性を有することを特徴とする水耕栽培装置。
【0014】
(3)によれば、複数の栽培槽を連結した場合、隣り合う栽培槽の配置の自由度を大きくすることができる。
【0015】
(4) (1)乃至(3)において、前記筒状部材は円筒部材であることを特徴とする水耕栽培装置。
【0016】
(4)によれば、栽培槽の底部が円弧状になるため、底部に集中して水が流れるようになり、少ない水の量でも安定して水を流すことが可能になる。
【0017】
(5) (1)乃至(4)のいずれかにおいて、前記流入手段及び前記流出手段は前記開口に対向する前記栽培槽の底部の近傍に設けられたことを特徴とする水耕栽培装置。
【0018】
(5)によれば、栽培槽の底部に水を安定して流すことが可能になる。
【0019】
(6) (1)乃至(5)のいずれかにおいて、前記流入側継ぎ手と前記流出側継ぎ手は同一部材であることを特徴とする水耕栽培装置。
【0020】
(6)によれば、流入手段の継ぎ手に連結する連結部材と、流出手段の継ぎ手に連結する連結部材とを共用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数の栽培槽が連なるように連結されている場合において、所望の栽培槽に接続されている連結部材の取り付け取り外しを行うことによって、所望の栽培槽の装着及び取り出しが可能になる。このように、メンテナンス性が高く、栽培槽の交換が容易な水耕栽培装置を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明の水耕栽培装置の概要を示す説明図である。水耕栽培装置1は、内部が中空の円筒部材からなり、内部に植物を収納する栽培槽10と、培養水を貯水するタンク20と、培養水を栽培槽10に送るポンプ30と、栽培槽10、タンク20及びポンプ30を連結する水路管40とから構成されている。すなわち、タンク20の培養水を栽培槽10に供給し、栽培槽10を通した培養水を再びタンク20に戻すことによって、タンク20の培養水を循環させながら、栽培槽10内の植物に水及び養分を供給するものである。
【0024】
栽培槽10は内部が中空の円筒部材11を備えている。円筒部材11の上面には、円筒部材11の長手方向に沿ってスリット状の開口10aが形成されており、栽培槽10内の植物が成長した際に、開口10aを介して栽培槽10内の植物の茎や葉等が外部に露出するようになる。また、栽培槽10の内部において開口10aに対向する底部には、粒状充填体50が敷き詰められており、この粒状充填体50の上部に植物の根が載置される。粒状充填体50は、敷き詰められた際に、粒状充填体50同士に隙間ができる程度の粒径でありかつ保水性を有するものが望ましい。例えば軽石のような多孔質部材が適している。このため、栽培槽10に培養水が供給された場合、培養水は栽培槽10の底部に集まるようになり、敷き詰められた粒状充填体50の隙間を通って流れるようになる。
【0025】
図2は本発明の水耕栽培装置の要部の外観を示す斜視図、図3は栽培槽の分解斜視図である。栽培槽10は、開放されている円筒部材11の両側部にそれぞれキャップ部12を取り付けることによって構成されている。キャップ部12は、円筒部材11の外径よりも若干大きな外径の円筒部を有しかつ有底の円筒部材からなり、キャップ部12の有底部分が栽培槽10の側面部となる。キャップ部12には培養水を栽培槽10に流入させる流入管14又は及び栽培槽10内の培養水を流出させる流出管15が設けられている。そして、タンク20に連結する水路管40は連結ソケット45によって流入管14に接続され、ポンプ30に連結する水路管40も図示しないが同様に連結ソケット45によって接続される。ここで、連結ソケット45は、内部にゴム部材を有しており、このゴム部材によって水路管40の端部と流入管14又は流出管15を密閉するものであり、流入管14又は流出管15に対して着脱自在に構成されている。
【0026】
図4はキャップ部12の内部構成を示す断面図である。一方のキャップ部12において有底部分を形成している円板の外周部には1つの孔部12aが形成されており、この孔部12aにリング状のゴム部材13が嵌合している。さらにこのゴム部材13の中央には流入管14が挿入されている。流入管14において、ゴム部材13が位置する中央部は滑らかな表面として形成されており、この中央部の両側部にはねじ山が形成されている。そして、流入管14をゴム部材13に挿入し、さらにキャップ部12の内側と外側からワッシャ19aを遊嵌させ、そしてナット19bを流入管14のねじ山に螺合及び締結することにより、キャップ部12の孔部12a及び流入管14がゴム部材13に密着した状態となり、孔部12a付近から培養水が漏れないようになる。キャップ部12の底部には、外周径が底部の内径に略等しいリング状のゴム部材18が設けられている。このゴム部材18の外周縁部には、キャップ部12の内径に略等しい外径の円筒状の突起部18aが形成されている。また、ゴム部材18の内周縁部には、円筒部材11の内径に略等しい外径の円筒状の突起部18bが形成されている。突起部18aはキャップ部12内部の側面部の幅に略等しい高さであり、突起部18bは突起部18aの高さよりも短く形成されている。そして、ゴム部材18がキャップ部12の内部に取り付けられた時に、ゴム部材18のリング部分がキャップ部12の底部に密着するとともに、突起部18aが内部側面全体に密着する。そして、円筒部材11にキャップ部12を取り付けた場合に、ゴム部材18の突起部18aが円筒部材11とキャップ部12との間に密着状態で介在するとともに、円筒部材11の内部側面に突起部18bが密着した状態となる。その結果、円筒部材11とキャップ部12との連結部分から培養水が漏れないようになる。
【0027】
なお、他方のキャップ部12には流出管15が取り付けられており、この流出管15は流入管14と同一部材である。このため、一方のキャップ部12は他方のキャップ部12としても使用可能である。また、円筒部材11の長さについては適宜設定可能であり、長すぎる場合には、不要な部分を切断することにより、長さを調整することが可能である。また、ゴム部材18を円筒部材11の側部に取り付けてからキャップ部12を嵌合させても良い。また、流入管14又は流出管15に連結ソケット45(図2参照)を接続する場合には、外部のワッシャ19a及びナット19bの代わりに、連結ソケット45(図2参照)におけるキャップ部12に対向する面の中央に設けられているナットを螺合させることによって水路管40(図2参照)に連結される。
【0028】
図5(a)は複数の栽培槽10の連結部分を示す説明図である。所定の栽培槽10の流出管15に連結管16の一端部を接続し、隣接する栽培槽10の流入管14に連結管16の他端部を接続することによって2つの栽培槽10が連結される。連結管16は、流入管14または流出管15との連結部分において培養水が漏れないように密着できるものであれば使用可能である。このように、流入管14及び流出管15は、タンク20あるいはポンプ30に連結された水路管40(図1参照)や、栽培槽10同士を連結する連結管16に連結するための継ぎ手となる。本実施形態においては、連結管16としてゴムホースのような可撓性を有する部材が使用される。この場合には、ゴムホースの先端部分を流入管14または流出管15に差し込み、締結リング60によって連結部分を締め付けることによって作業が完了する。また、栽培槽10を交換する場合には締結リング60を緩め、栽培槽10の流入管14または流出管15に差し込まれている連結管16を取り外すことにより、栽培槽10が水耕栽培装置から切り離される。そして、古い栽培槽10を新たな栽培槽10に交換し、連結管16を接続することによって交換作業が完了する。なお、栽培槽10の交換作業を行う場合には、交換に先立ってまず、栽培槽10内部における流入管14の供給口14a及び流出管15の排出口15aにキャップを取り付け、予め閉じておくと良い。さらに、本実施形態においては、連結管16がゴムホースであるため、作業前にゴムホースをクリップ等で挟むことによって流路を閉じておくことによって交換作業中における水漏れが防止できる。
【0029】
なお、本実施形態においては、連結管16としてゴムホースが使用されているが、本発明はそれに限るものではなく、金属管やプラスチック管を用いても良い。また、使用位置に応じてゴムホース、金属管、プラスチック管等を併用しても良い。また、上述した実施形態においては、栽培槽10の流入管14または流出管15に連結管16を差し込むものであったが、それに限るものではなく、例えば、図5(b)に示すように、流入管14または流出管15に対して連結管16の一端を固定しておき、連結管16の中央部に、互いに着脱自在な凹部17aと凸部17bとからなるジョイント17を取り付け、通常はジョイント17の凹部17aと凸部17bを連結し、交換の際にジョイント17の凹部17aと凸部17bを離間させるように構成しても良い。
【0030】
図6は複数の栽培槽10の連結例を示す説明図であり、図6(a)は直列に接続した例を示すものであり、図6(b)は並列に接続した例を示すものである。直列に接続した場合には、隣り合う栽培槽10の流入管14と流出管15とを互いに連結するという単純な作業で隣り合う栽培槽10同士を連結することが可能になる。また、並列に接続した場合には、複数の栽培槽10に対してポンプ30からの培養水が直接供給されるために、複数の栽培槽10に安定して培養水を供給することが可能になる。
【0031】
また、図6(a)は2つの栽培槽10を支持脚70上に直線状に配置した例を示すものである。栽培槽10を配置する場合には、開口10aを鉛直上方に向け、粒状充填体50が敷き詰められた底部が鉛直下方に向くように配置される。なお、図6(a)においては、2つの栽培槽10が水平に配置されているが、栽培槽10内を培養水が安定して流れるように、流入管14側が流出管15側より若干高い位置になるように支持脚70の脚部の長さを設定してもよい。また、図7(a)は栽培槽10を階段状でかつ平面視した場合に複数の栽培槽10の開口10aが並列するように配列した例を示すものであり、図7(b)は、栽培槽10を段状でかつ平面視した場合に複数の栽培槽10の開口10aが直線的に並ぶように配列した例を示すものである。このような配置により、上段側の栽培槽10から下段側の栽培槽10に培養水が流れ易くなる。なお、図7(a)、図7(b)に示すように、段状に栽培槽10を配置する場合には、最上段の栽培槽10の流入管14に、ポンプ30に連結されている連結管16を接続し、最下段の栽培槽10の流出管15に、タンク20に連結されている連結管16を接続することが望ましい。
【0032】
なお、複数の栽培槽10の配置例については上述したものに限るものではなく、例えば、スパイラル状に配置したり、マトリクス状に配置しても良い。
【0033】
次に、図8を参照しながら栽培槽10を用いた植栽例について説明する。まず、図8(a)に示すように、粒径が大きい粒状充填体50を敷き詰める。この時、栽培槽10内部において流入管14の供給口14a及び流出管15の排出口15aが粒状充填体50によって覆い隠される。次に、図8(b)に示すように、粒状充填体50上に水分供給シート51を敷き、さらに、図8(c)に示すように、粒状充填体50よりも細かい粒径の粒状充填体52を所定量敷き詰める。次に、図8(d)に示すように、植物を所定間隔で粒状充填体52上に載置してから、図8(e)に示すように、植物の周囲に粒状充填体52を敷き詰めることによって、植栽作業が完了する。
【0034】
植栽作業が完了した栽培槽10を直接又は間接的にポンプ30(図1参照)に連結することにより、栽培槽10に培養水が供給される。供給された培養水は粒状充填体50の隙間を通り、排出口15aを介して次の栽培槽10あるいはタンク20に送られる。敷き詰められた粒状充填体50において保持される培養水によって水分供給シート51は濡れた状態になり、水分供給シート51における毛細管現象によって培養水が粒状充填体52に供給される。その結果、敷き詰められた粒状充填体52が培養水を含むようになり、植物に水分及び養分が供給されるようになる。
【0035】
植物が枯死した場合には、栽培槽10の取り外し作業を行う。この時、新たな栽培槽10をすぐに連結する場合には、培養水の循環を止めておくことが可能であるが、長期にわたって栽培槽10が連結できない場合には、隣り合う栽培槽10をゴムホース等によって連結しておくことによって培養水の循環移動は維持される。取り外した栽培槽10を清掃する場合には、まず、片方のキャップ部12を取り外して、栽培槽10内の枯死した植物や粒状充填体50、52を取り出す。そして、もう片方のキャップ部12を取り外してから円筒部材11及びキャップ部12を清掃し、乾燥させることによって、次の使用に備えられる。また、粒状充填体50、52は、ふるいにかけることによって粒状充填体50と粒状充填体52とに選別し、乾燥させることによって、次の使用に備えられる。
【0036】
なお、図8に示す例においては、水分供給シート51及び粒状充填体52を用いたが、植物によっては、水分供給シート51及び粒状充填体52を用いずに、粒状充填体50に直接植えても良い。
【0037】
図9は本実施形態の水耕栽培装置の使用例を示す説明図である。図9に示す例は、温泉旅館の廊下にインテリアとして本実施形態の水耕栽培装置を載置したものである。温泉旅館のように長い廊下があるところにおいて、プランターを複数おくことは、水やりや取り替え等の作業が面倒である。そこで、本実施形態の水耕栽培装置を載置することにより、植物を連続して載置することが可能になり、しかも水やりの必要がなくなる。さらに、個々の栽培槽10の単位で交換が可能になるため、仮に、水漏れが発生した栽培槽10があれば、その栽培槽10のみを交換することができることにより、メンテナンス性が向上する。また、別の施設で栽培槽10に植物を栽培し、必要に応じて廊下に載置した栽培槽10を別の施設の栽培槽10に交換することにより、容易に植物の種類を変えることが可能になり、水耕栽培装置全体の美観を維持することが可能になる。
【0038】
以上、説明したように構成された本実施形態によれば、栽培槽を交換する際に、連結ソケット45を外すことによって、栽培槽10の流入管14と流出管15から流出側と排出側の水路管40が取り外され、所定の栽培槽の取り出しが可能になる。同様に、新たな栽培槽10にそれぞれ水路管40に連結することにより、新たな栽培槽10の取り付けが容易に可能になる。このように、メンテナンス性が高く、栽培槽の交換が容易な水耕栽培装置を提供することが可能になる。
【0039】
また、複数の栽培槽10が連なるように連結されている場合において、個々の栽培槽10が容易に交換可能になる。このように、メンテナンス性が高く、栽培槽の交換が容易な水耕栽培装置を提供することが可能になる。また、栽培槽10が円筒部材からなるため、栽培槽10の底部が円弧状になる。このため、底部に集中して水が流れるようになり、少ない水の量でも安定して水を流すことが可能になる。また、栽培槽10の内部において、流入管14の供給口14aと流出管15の排出口15aが、栽培槽10の底部の近傍に設けられているため、栽培槽10の底部に水を安定して流すことが可能になる。また、隣り合う栽培槽10を連結管16によって連結する際の継ぎ手となる流入管14及び流出管15が同一部材であるため、流入管14と流出管15とを共用することができる。また、隣り合う栽培槽10を連結する連結管16が可撓性を有することにより、複数の栽培槽を連結した場合、隣り合う栽培槽の配置の自由度を大きくすることができる。
【0040】
なお、本発明は、上述した実施形態に限るものではない。例えば、上述した実施形態によれば、流入管14と流出管15を栽培槽10の側面部すなわちキャップ部12の底面部に設けられているが、それに限らず、円筒部材11の底部の両側端部に設けても良い。さらには、流入管14をキャップ部12の底面部に流出管15を円筒部材11の底部の側端部に設けても良い。特に、この場合には、流入管14が流出管15よりも上方にあるため、栽培槽10の底部に水を安定して流すことが可能になる。
【0041】
また、本実施形態によれば、栽培槽10として円筒部材11を用いているが、円筒部材に限るものではなく、例えば、断面が、正方形、長方形、等脚台形からなる角筒部材を用いても良い。さらには、断面が、正六角形、正八角形からなる角筒部材を用いても良い。特に、断面が、正六角形、正八角形からなる角筒部材を用いた場合には、円筒部材の場合と同様に栽培槽10の底部に粒状充填体50及び培養水が集まりやすくなり、水を安定して流すことが可能になる。しかも、栽培槽10を平面上に直接載置しても、外側から大きな外力が加わらない限り、転がることがことなく安定した載置状態を維持することができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、栽培槽10として直線状の円筒部材11を用いているが、円筒部材に限るものではなく、例えば、L字状、U字状、S字状、螺旋状に形成して良く、開口10aが鉛直上方を向くように形成された筒状部材であれば、特に、形状は問わない。また、本実施形態の円筒部材11は、開口10aを形成する際に両側の端部を残しているが、図10に示すように、円筒部材11の一方の側部から他方の側部に渡って開口10aを形成しても良い。これにより、キャップ部12の装着及び取り外し作業の際に、円筒部材11の側面に若干の力を加えることによって、円筒部材11の内径を小さくすることにより、円筒部材11をキャップ部12に挿入することが可能になる。その結果、円筒部材11の装着及び取り外し作業が容易になる。さらに、本実施形態における栽培槽10の開口10aはスリット状に形成したが、それに限るものではなく、例えば、複数の開口を一列に並べるように形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の水耕栽培装置の概要を示す説明図である。
【図2】本発明の水耕栽培装置の要部の外観を示す斜視図である。
【図3】栽培槽の分解斜視図である。
【図4】キャップ部の内部構成を示す断面図である。
【図5】複数の栽培槽の連結部分を示す説明図である。
【図6】複数の栽培槽の連結例を示す説明図である。
【図7】複数の栽培槽の配置例を示す説明図である。
【図8】栽培槽を用いた植栽例を示す説明図である。
【図9】本実施形態の水耕栽培装置の使用例を示す説明図である。
【図10】栽培槽の他構成を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
1 水耕栽培装置
10 栽培槽
10a 開口
11 円筒部材
12 キャップ部
13 ゴム部材
14 流入管
14a 供給口
15 流出管
15a 排出口
16 連結管
17 ジョイント
17a 凹部
17b 凸部
18 ゴム部材
18a、18b 突起部
20 タンク
30 ポンプ
40 水路管
45 連結ソケット
50 粒状充填体
51 水分供給シート
52 粒状充填体
70 支持脚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に植物を収納する栽培槽と、
この栽培槽に供給する養水を貯えるタンクと、
このタンクの養水を前記栽培槽に供給する供給装置とを備え、
前記栽培槽は、
開口を有しかつ内部が中空の筒状部材と、
前記筒状部材の両側の側面部における一方の側面部に設けられ、前記栽培槽内に養水を流入させる流入手段と、
他方の側面部に設けられ、前記栽培槽内の養水を外部に流出させる流出手段とを備え、
前記開口は、前記筒状部材の両側方向が水平方向になるように前記筒状部材が設置された場合に、前記筒状部材の上部に配置されるように前記筒状部材における筒状側面部の一部に形成され、
前記流入手段及び前記流出手段は、それぞれ内部に養水の流路を有する流入側継ぎ手及び流出側継ぎ手を有し、
前記供給装置は、前記流入側継ぎ手に着脱自在に連結しかつ内部に養水の流路を有する供給側連結部材を備え、
前記タンクは、前記流出側継ぎ手に着脱自在に連結しかつ内部に養水の流路を有する排出側連結部材を備え、
前記タンクの養水を、前記栽培槽を介して循環させることを特徴とする水耕栽培装置。
【請求項2】
内部に植物を収納する栽培槽と、
この栽培槽に供給する養水を貯えるタンクと、
このタンクの養水を前記栽培槽に供給する供給装置とを備え、
前記栽培槽は、
開口を有しかつ内部が中空の筒状部材と、
前記筒状部材の両側の側面部における一方の側面部に設けられ、前記栽培槽内に養水を流入させる流入手段と、
他方の側面部に設けられ、前記栽培槽内の養水を外部に流出させる流出手段とを備え、
前記開口は、前記筒状部材の両側方向が水平方向になるように前記筒状部材が設置された場合に、前記筒状部材の上部に配置されるように前記筒状部材における筒状側面部の一部に形成され、
前記流入手段及び前記流出手段は、それぞれ内部に養水の流路を有する流入側継ぎ手及び流出側継ぎ手を有し、
前記供給装置と前記タンクとの間に複数の前記栽培槽が連結されており、
各栽培部は、前記流入側継ぎ手及び前記流出側継ぎ手にそれぞれ着脱自在に連結しかつ内部に養水の流路を有する連結部材によって、前記複数の栽培部における養水の流路が連続するように連結され、
最上流側に設定された前記栽培槽の流入側継ぎ手に前記供給装置を連結しかつ最下流側に設定された前記栽培槽の流出側継ぎ手に前記タンクを連結して、前記タンクの養水を、前記複数の栽培部を介して循環させることを特徴とする水耕栽培装置。
【請求項3】
前記連結部材は可撓性を有することを特徴とする請求項2記載の水耕栽培装置。
【請求項4】
前記筒状部材は円筒部材であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の水耕栽培装置。
【請求項5】
前記流入手段及び前記流出手段は前記開口に対向する前記栽培槽の底部の近傍に設けられたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の水耕栽培装置。
【請求項6】
前記流入側継ぎ手と前記流出側継ぎ手は同一部材であることを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の水耕栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−259816(P2007−259816A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92284(P2006−92284)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(595095629)中電環境テクノス株式会社 (44)
【Fターム(参考)】