説明

水質浄化材、及びそれを用いた水質浄化体とその構築方法

【課題】水質浄化性能、運搬性能、設置後の安定性に優れた水質浄化材を低コストで提供すること。
【解決手段】濾過材と、複数のポーラスコンクリートを夫々間隔を設けて略並列に連結してなる重量物と、を通水性を備えた袋材に内包してなる、水質浄化材を構成する。前記ポーラスコンクリートが中実の長手形状を呈し、前記濾過材を粒状の木炭とするように構成することができる。上記構成とすることで、設置後に水質浄化材が水流によって流されることなく、濾過材及びポーラスコンクリートの吸着性による浄化作用と、ポーラスコンクリート内の微生物による浄化作用を同時に達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川や農業用水路などの有水箇所に設置する水質浄化材、及びそれを用いた水質浄化体とその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
河川や農業用水路などの水質浄化の為に、炭などの濾過材を水底に敷き詰めることが知られている。
特許文献1は、無機質発泡体と炭とを混合してなる軽量コンクリートに係る発明であり、当該発明によれば、保水性、水質浄化能力、脱臭力を高め、緑化基盤材として利用できる点が記載されている。
特許文献2は、通水性を有する短管と濾材とが包装容器内で混在している水質浄化嚢に係る発明であり、当該発明によれば、水質浄化・水際の防護など、水質浄化資材と、工事資材とを兼ねることができる点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3227570号公報
【特許文献2】特開2005−60177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、各特許文献に記載の発明は、以下の様な欠点を有する。
(1)特許文献1に係る発明では、当該発明に係る軽量コンクリートを新たに製造する必要が有り、既存のコンクリートを流用できない。また、製造コストも高いことから、経済性が非常に悪い。
(2)特許文献2に係る発明では、短管と濾材とを包装容器内で不規則に混在させておくことが前提であるため、各水質浄化嚢によって濾過性能、重心位置、水流への干渉度合い、変形自由度等の特性が異なることとなり、品質が安定せず、また施工時の取り扱い性も悪い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべくなされた本願発明は、濾過材と、複数のポーラスコンクリートを夫々間隔を設けて略並列に連結してなる重量物とを通水性を備えた袋材に内包してなる、水質浄化材を提供することをその要旨とするものである。
前記発明では、ポーラスコンクリートを中実の長手部材とし、前記濾過材を粒状の木炭とすることができる。
【0006】
また、本願発明は、前記水質浄化材を有水箇所に単一又は複数配してなる水質浄化体を提供することをその要旨とするものである。
前記発明では、各水質浄化材におけるポーラスコンクリートを平面視して互いに交差するように積層しておくこともできる。
【0007】
また、本願発明は、濾過材と複数のポーラスコンクリートを夫々間隔を設けて略並列に連結してなる重量物とを通水性を備えた袋材に内包してなる水質浄化材を、有水箇所に少なくとも一つ以上設置してなる、水質浄化体の構築方法を提供することをその要旨とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本願発明によれば、下記の効果のうち、少なくとも一つを得ることができる。
(1)ポーラスコンクリートが敷設後の錘りとして機能するため、設置後の安定性が高く、杭などで別途固定する必要も生じないため、工期・工費の面で経済的である。
(2)ポーラスコンクリートが好気性微生物及び嫌気性微生物の混在環境を形成するため、濾過材による水質浄化機能に加え、更なる水質浄化機能を付与することができる。
(3)複数のポーラスコンクリートを略並列に間隔を設けて連結して内包することにより、各水質浄化材間における濾過材及びポーラスコンクリートの配置形態がほぼ同様となり、重心の偏りが生じにくく、運搬性並びに設置安定性が向上する。
(4)複数のポーラスコンクリートを略並列に間隔を設けて連結することにより、ポーラスコンクリートの長手方向に対して水流が誘導されやすく、水流制御が容易となる。
(5)濾過材に木炭を用いた場合、木炭表面に付着するバクテリアに水中の有機物を分解させ、さらに該バクテリアを原生動物の飼料とすることで食物連鎖を活性化し、更なる水質浄化を行うことができる。
(6)水質浄化材に係るポーラスコンクリートを交差するように積層敷設することで、構造体としての安定性が更に向上する。
(7)水質浄化材に係るポーラスコンクリートを交差するように積層敷設することで、平面方向及び上下方向に対して濾過材とポーラスコンクリートが均一分布することとなり、水の抜け(通り)がより向上することとなる。すなわち、水質浄化材内部の水の滞留を低減し、恒常的な水質浄化を行うことができる。
(8)簡易な構造であるため、専門的な技能が無くとも水質浄化材の自作や内包物の交換等の作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本願発明に係る水質浄化材の構成を示す概略斜視図
【図2】本願発明に係る水質浄化材の設置形態を示す断面図
【図3】本願発明に係る水質浄化材のその他の設置形態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本願発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0011】
<1>全体の構成
図1は、本願発明に係る水質浄化材の構成を示す概略斜視図である。
水質浄化材Aは、濾過材2と、複数のポーラスコンクリート11を夫々間隔を設けて略並列に連結してなる重量物1と、(以下、単に「内包物」という。)を袋材3に内包して形成する。
前記水質浄化材Aは、上記構成によって土嚢形状やマット形状を呈することとなる。
前記水質浄化材Aを河川や農業用水路、貯水池などの有水箇所に単一或いは複数敷設することにより、水質浄化体Bなる構造体を構築する(図2参照)。
【0012】
<2>袋材
袋材3は、ポーラスコンクリート11からなる重量物1と濾過材2とを内包するための材料である。
袋材3は、通水性(透水性)を備えた材料から構成してあることを要する。
袋材3の形状は、袋状、籠状、その他の形状、或いはそれらの組合せ等から適宜選択することができる。
袋材3の材質や厚さは、前記内包物との接触や該内包物の重量によって破断しない程度の強度を有するようにしてあることが望ましい。
本実施例においては、網目が4mm程度であって、400mm×600mmのポリエチレン製の袋を用いるものとする。
【0013】
<3>濾過材
濾過材2は、水を濾過するための材料である。
濾過材2は、天然の無機材料・天然の有機材料・合成系の無機材料・合成系の有機材料を用いることができる。具体的には、ゼオライト・砕石・鉱石・砂利・活性炭・シリカ・木炭・石炭・木屑(木片)・植物繊維・イオン交換樹 脂・その他公知や周知の材料、或いはそれらの組合せを任意に選択することができる。
濾過材2は、前記袋材3の網目を通過しない程度の大きさの塊状或いは粒状を呈するようにしておくことを要する。本実施例においては、直径5mm〜10mm程度の粒炭を用いるものとする。
濾過材2に木炭を用いる際には、間伐材の林地残材等から作った清浄な炭を用いることが望ましい。
濾過材2を軟質の木炭で構成すれば、設置後に農地の土壌改良にも使用できる点で有効である。
【0014】
<4>重量物
重量物1は、ある程度の重量を有することで、水質浄化材Aが水流等によって流れることを防止するための部材である。
重量物1は、複数のポーラスコンクリート11を夫々間隔を設けて配置し、前記ポーラスコンクリートを連結材12でもって略並列に連結して構成する。
【0015】
<4−1>ポーラスコンクリート
ポーラスコンクリート11は、内部に空隙を多く含む透水性の高い多孔質性のコンクリートである。
ポーラスコンクリート11の形状には、筒状、管状、中実の棒状、その他周知の形状を採用することができる。ポーラスコンクリート11を中実の棒状とすれば、筒状で構成する場合よりも同容積でより高重量とすることができることから、錘りとしての機能を達成し易い点で有効である。
ポーラスコンクリート11の外面は、前記袋材3を破断させないように鋭利な部分を設けないように構成しておくことが望ましい。
【0016】
<4−2>連結材
連結材12は、ポーラスコンクリート11同士を連結する部材である。
連結材12には、麻ロープなどの周知の紐部材或いは長尺部材を用いることができる。前記紐部材12同士を結んでポーラスコンクリート11同士を繋げることにより、重量物1を構成する。
連結材12を袋材3の内面にも連結すれば、ポーラスコンクリート11は水質浄化材Aの内部においてより確実に位置決めされる。
【0017】
<4−3>重量物の寸法
重量物1の寸法は、前記袋材3に内包できる程度の大きさであることを要する。
本実施例においては、ポーラスコンクリート11に直径60mm、長さ500mm程度の棒状の部材を用い、前記ポーラスコンクリート11を連結材12によって4本連結したものを重量物1とすることで、先に説明した袋材3からはみ出さずに内包することができる。
【0018】
<4−4>ポーラスコンクリート連結の効果
前記重量物1によれば、袋材3に内包された各ポーラスコンクリート11が略均等に配置することとなる。そのため、水質浄化材Aにおける重心位置が極端に偏心することがない。
また、各水質浄化材A同士においても重心が極端にずれることが無く、設置後の安定性がより高まることとなる。
また、各ポーラスコンクリート11の長手方向に水流が誘導され易くなるため、水流制御が容易となる。
【0019】
<5>水質浄化体
水質浄化体Bとは、水路等の有水箇所に水質浄化材Aを単一又は複数設置してなる構造体である。
<5−1>構築方法
図2は、本願発明に係る水質浄化材Aを、農業用水路に設置した場合の一形態を示す断面図である。
水路の水量が少ない箇所においては、前記水質浄化材Aを連続して底面に敷設するか、或いは互いにある程度間隔を設けて敷設(図2(a))したり、反対に水量が多い箇所においては、水路の側壁に沿って積層するように敷設(図2(b))することによって、水質浄化体Bを構築する。
なお、水質浄化材Aを人力によって設置する場合には、運搬性を確保すべく総重量の上限を15kg程度としておくことが望ましい。
【0020】
<5−2>水質浄化体の機能・作用
前記水質浄化体Bに流れ込んだ水は、濾過材2及びポーラスコンクリート11内部の空隙による吸着性によって浄化されることとなる。
前記ポーラスコンクリート11は、更に好気性・嫌気性微生物の生育環境として適しているため、先の重量物1としての錘り機能を発揮するだけでなく、当該微生物による水質浄化機能も発揮する。
そして、前記水質浄化体Bは十分な重量を有するため、杭などの固定具による水路底面への固定が不要であり、水路の異常出水等の水流によって水質浄化材Aが崩れたり、流れ出すことも無い。
【0021】
以上の通り、水質浄化材A及び水質浄化体Bは、濾過材2及びポーラスコンクリート11の吸着性による浄化作用と、ポーラスコンクリート内の微生物による浄化作用を同時に達成することができ、更に前記ポーラスコンクリート11からなる重量物1の重量によって水質浄化材Aが水流によって流されることも無い、という効果を得ることができる。
【実施例2】
【0022】
<1>水質浄化材の格子状配置
水質浄化材Aは、ポーラスコンクリート11を交差するように積層敷設して構成することもできる。
図3は、本願発明に係る水質浄化材Aを、農業用水路に設置した場合のその他の形態を示す断面図である。
上記の構成とすることで、水質浄化体Aがポーラスコンクリートによる格子構造を呈することとなるため、構造物としての設置安定性が向上する。
また、水が一部に滞留しにくい構造となり、信頼性の高い水質浄化機能が得られる。
【実施例3】
【0023】
<1>ポーラスコンクリートの内包例
水質浄化材Aは、ポーラスコンクリート11を上下に積層したものを重量物1として、一つの袋材3に内包して構成することもできる。
また、前記重量物1を構成するポーラスコンクリート11同士を交差するように上下に積層して一つの袋材3に内包することもできる。
【符号の説明】
【0024】
1 重量物
11 ポーラスコンクリート
12 連結材
2 濾過材
3 袋材
A 水質浄化材
B 水質浄化体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過材と、複数のポーラスコンクリートを夫々間隔を設けて略並列に連結してなる重量物と、を通水性を備えた袋材に内包してなる、水質浄化材。
【請求項2】
前記ポーラスコンクリートが中実の長手部材であり、前記濾過材が粒状の木炭であることを特徴とする、請求項1に記載の水質浄化材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水質浄化材を有水箇所に単一又は複数配してなる、水質浄化体。
【請求項4】
各水質浄化材におけるポーラスコンクリートを、平面視して互いに交差するように積層してある、請求項3に記載の水質浄化体。
【請求項5】
濾過材と複数のポーラスコンクリートを夫々間隔を設けて略並列に連結してなる重量物とを通水性を備えた袋材に内包してなる水質浄化材を、有水箇所に少なくとも一つ以上設置してなる、水質浄化体の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−50927(P2011−50927A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204695(P2009−204695)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】