説明

水質浄化装置

【課題】簡単な構造であり、かつ効率よく水を浄化できる水質浄化装置を提供する。
【解決手段】水質浄化装置10は、水面に太陽光が照射される貯水槽Wtに設置される。水質浄化装置10は、少なくとも周囲を流水性の高い網目で形成する複数の籠形容器212・22を備え、籠形容器21・22は、底面を遮光するように、光触媒機能を有する複数の塊状体3を堆積している。籠形容器21・22は、太陽光の紫外線が到達する範囲で、水面から水中に向かって多段に積層されている。上段の籠形容器21と下段の籠形容器22とは、それらに堆積された複数の塊状体3が平面視において重なり合って、水平方向に並設配置している。藻類Agは、複数の籠形容器212・22の周囲の網目を流通して分解又は不活化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質浄化装置に関する。特に、貯水槽などに貯えられた水を浄化する水質浄化装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所などでは、山水や河川水を貯水して工業用水として利用している。例えば、これらの貯水は、藻類又はプランクトンの繁殖を抑制するために、塩素系薬剤、オゾン、過酸化水素などを注入して、死滅又は減菌処理している。又、池や湖沼の水を浄化するために、紫外線を照射して死滅又は減菌処理する方法が実用化されている。
【0003】
前者の薬剤を使用して水を浄化する方法は、薬剤の費用が嵩む他に、使用した薬剤や薬剤の化合物が水中に残留するという不具合がある。後者の紫外線を照射する方法は、紫外線照射装置を必要する他に、この紫外線照射装置を稼働させる電力代などのランニングコスト、及び紫外線照射装置の保守費用が発生するという不具合がある。
【0004】
こうした不具合を解消するため、近年では、光触媒を利用して、水を浄化する方法が進展している。光触媒は、光が当たると殺菌、抗菌、分解、脱臭などの機能を示す物質である。光触媒の表面に光を照射すると、それによって生じる物質のその強い酸化力により、光触媒の表面に接している有機物を分解又は不活化できることが知られている。
【0005】
光触媒機能を有する物質としては、二酸化チタンが多く用いられている。二酸化チタンは、太陽光の紫外線を吸収して反応を起こすこと、大変安全で安価なこと、無色透明のコーティングができることなどの利点があるため、あらゆる産業分野で利用されている。
【0006】
光触媒を利用した水質浄化装置としては、修景池や親水公園の人工池、水路などに好適な、安全性が高く、簡単な構造であり、水処理効率が良好で、しかも、高いエネルギーの供給や煩雑な保守を必要としない水質浄化装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1による水質浄化装置は、高低差を有する水路と、低部の排水口から排出された水を水路の高部の水供給口へ送り、水を循環させるポンプと、を備えている。水路の底部には、表面に光触媒機能を有する酸化チタンを担持させた小石群を配置している。水路の近傍には、酸化チタンに太陽光を反射集光させる集光板を配置している。水路は、水位調整堰によって区画された多段水路を構成しており、水路の底部には、水路近傍に配置された太陽電池からエネルギーが供給され、酸化チタンを担持させた小石群へ紫外線を照射するブラックライトが埋込みで設置されている。
【0008】
又、光触媒を利用した水質改善方法としては、自然な景観又は清潔な景観を維持したまま、河川、湖、池、沼、海などの水質を改善及び維持できる水質改善方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
特許文献2による水質改善方法は、河川の土手から川底に至るまで、光触媒付き天然石を敷き詰めている。昼間は、太陽光が河川水を介して、水中の光触媒付き天然石に照射される。このため、光触媒付き天然石の表面に担持された光により汚染物質を分解する光触媒が作用して、水中の汚染物質を分解できる、としている。同時に、光触媒付き天然石に付着している微生物や藻を分解できる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−131587号公報
【特許文献2】特開平11−47742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1による水質浄化装置は、水路の底に光触媒機能を有する小石群を敷き詰めている。紫外線が水面から到達する距離には限界があるとされ、水位が高くなると、水底の小石群に照射される紫外線量が低減されて、光触媒による浄化作用を発揮できないという問題がある。
【0012】
又、特許文献1による水質浄化装置は、水路に敷設された強化ガラス板を介して、ブラックライトが光触媒機能を有する小石群を照射している。したがって、太陽光が供給されない夜間や雨天時でも水処理できる、としている。
【0013】
しかしながら、強化ガラス板及びブラックライトを既設の貯水槽などに敷設することは、容易ではなく、工事費用も発生するという問題がある。新たな敷設工事を要することなく、既設の貯水槽などに直ちに適用できる水質浄化装置が望ましい。
【0014】
特許文献2による水質改善方法も同様である。前述したように、紫外線が水面から到達する距離には限界があるとされ、水位が高くなると、川底に敷き詰めた光触媒付き天然石による水質改善効果は期待できないという問題がある。
【0015】
既設の貯水槽などに適用可能な水質浄化装置であって、簡単な構造であり、かつ効率よく水を浄化できる水質浄化装置が求められている。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0016】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、既設の貯水槽に適用可能な水質浄化装置であって、簡単な構造であり、かつ効率よく水を浄化できる水質浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、光触媒機能を有する塊状体又は網板を堆積する複数の籠形容器に段差を設けて水面下に配列することにより、これらの課題が解決可能なことを見出し、これに基づいて、以下のような新たな水質浄化装置を発明するに至った。
【0018】
(1)本発明による水質浄化装置は、水面に太陽光が照射される貯水槽に設置する水質浄化装置であって、少なくとも周囲を流水性の高い網目で形成する複数の籠形容器と、これらの籠形容器の底面を遮光するように堆積される光触媒機能を有する複数の塊状体と、を備え、太陽光の紫外線が到達する範囲で、前記複数の籠形容器を水面から水中に向かって多段に積層すると共に、上段の前記籠形容器と下段の前記籠形容器とは、それらの前記複数の塊状体が平面視において重なり合って水平方向に並設配置している。
【0019】
(2)本発明による水質浄化装置は、水面に太陽光が照射される貯水槽に設置する水質浄化装置であって、少なくとも周囲を流水性の高い網目で形成する複数の籠形容器と、これらの籠形容器の底面に堆積される光触媒機能を有する複数の網板と、を備え、太陽光の紫外線が到達する範囲で、前記複数の籠形容器を水面から水中に向かって多段に積層すると共に、上段の前記籠形容器と下段の前記籠形容器とは、平面視において部分的に重なり合って水平方向に並設配置している。
【0020】
(3)前記籠形容器は、光触媒機能を有することが好ましい。
【0021】
(4)前記複数の網板は、それらの板厚面が水平方向に延びて、上下方向に多段に整列配置していることが好ましい。
【0022】
(5)前記複数の網板は、それらの板厚面が鉛直方向に延びて、水平方向に多列に整列配置していることが好ましい。
【0023】
(6)前記複数の網板は、それらの平面が前記籠形容器の底面に対して所定の角度に傾斜して、上下方向に多段に整列配置していることが好ましい。
【0024】
(7)最上段の前記籠形容器は、浮力体を備えることが好ましい。
【0025】
(8)最上段の前記籠形容器は、水面から突出すると共に、太陽光を集光して水面に入射させる反射板を備えることが好ましい。
【0026】
(9)前記貯水槽の内壁は、その表面に光触媒機能を有する物質をコーティングしていることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明による水質浄化装置は、自然界にある太陽光を利用して稼働でき、動力又は薬剤などのランニングコストを必要としないという利点がある。本発明による水質浄化装置は、藻類などの発生において、光触媒の強力な酸化作用により、浄化作用を発揮できる。
【0028】
又、本発明による水質浄化装置は、有機物が発生し易い水面に近い水中に光触媒を配置しているので、これら有機物を効率よく死滅又は減菌処理できる。又、紫外線は、水中での到達距離が短くなるため、水面に近い水中に光触媒を配置することで、光触媒を効果的に作用させることができる。
【0029】
更に、本発明による水質浄化装置は、太陽光が貯水槽の底面に向かって入射しないように、複数の籠形容器が平面領域を略遮光している。その結果、複数の籠形容器の下方では、藻類は増殖が困難となり、光を求めて水面に移動する挙動を示す。そして、これらの藻類が光触媒の表面で炭酸ガスに分解されて、光触媒の周辺で循環する水流を発生させる。
【0030】
このように、本発明による水質浄化装置は、藻類の性質を利用して、効率よく藻類を分解又は不活化できる。又、複数の籠形容器の下方を遮光して、藻類の増殖を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態による水質浄化装置の構成を示す正面図であり、貯水槽を縦断面で示している。
【図2】前記第1実施形態による水質浄化装置の構成を示す平面図である。
【図3】本発明の第2実施形態による水質浄化装置の構成を示す正面図であり、貯水槽を縦断面で示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0033】
[第1実施形態]
最初に、本発明の第1実施形態による水質浄化装置の構成を説明する。図1は、本発明の第1実施形態による水質浄化装置の構成を示す正面図であり、貯水槽を縦断面で示している。図2は、前記第1実施形態による水質浄化装置の構成を示す平面図である。
【0034】
図1又は図2を参照すると、本発明の第1実施形態による水質浄化装置10は、水面Sfに太陽光Rが照射される貯水槽Wtに設置されている。図2に示された第1実施形態では、貯水槽Wtに水質浄化装置10を二列に設置しているが、水質浄化装置10は、水質浄化装置10の平面領域に対応して、単列であってもよく、三列以上であってもよく、いずれの配列も本発明の範囲に含まれる。
【0035】
図1又は図2を参照すると、水質浄化装置10は、上段に配列された複数の籠形容器21と下段に配列された複数の籠形容器22を備えている。これらの籠形容器21・22は、周囲(側面)と底面を流水性の高い網目で形成している。又、これらの籠形容器21・22は、全表面を微粉状の光触媒でコーティングしており、光触媒機能を有している。
【0036】
なお、流水性の高い網目とは、藻類やプランクトンなどは流通するが、後述する塊状体3の流通が阻止される程度の流通口を有していることを意味している。これらの籠形容器21・22の周囲(側面)と底面を流水性の高い網目で形成することで、藻類やプランクトンによる目詰まりを防止できる。
【0037】
図1又は図2を参照すると、籠形容器21・22には、光触媒機能を有する複数の塊状体3が収容されている。これらの塊状体3は、籠形容器21・22の底面を遮光するように堆積されている。なお、これらの塊状体3は、不規則なかたまりで構成してよく、丸くて小さな粒状体で構成してもよく、塊状体3の形態は、粒状体の形態を含んでいる。
【0038】
塊状体3に担持される光触媒としては、酸化チタンや酸化タングステンなどが用いられてよく、塊状体3の表面積を大きくすることにより、水の浄化作用を向上できる。塊状体3は、全てを光触媒成分からなる構成としてもよく、光触媒を担持させる担体としての塊状体3は、金属であってもよく、セラミックや合成樹脂であってもよい。又、これらのいずれかの基材からなる塊状体3の表面に光触媒をコーティングしてもよい。
【0039】
図1又は図2を参照すると、上段の複数の籠形容器21は、所定の間隔を設けて水平方向に並設配置している。同様に、下段の複数の籠形容器22は、所定の間隔を設けて水平方向に並設配置している。なお、並設配置とは、互いに離間させて一列に揃え、並べて配置することを意味している。
【0040】
図1又は図2を参照すると、上段の隣り合う籠形容器21・21は、隙間を形成しており、この隙間を塞ぐように、下段の籠形容器22が積層している。例えば、籠形容器21と籠形容器22とは、紐又はワイヤで相互に結合してもよい。そして、上段の籠形容器21と下段の籠形容器22とは、太陽光Rの紫外線が到達する範囲で、水面Sfから水中に向かって積層している。
【0041】
又、図1又は図2を参照すると、籠形容器21と籠形容器22とは、それらに堆積された複数の塊状体3が平面視において重なり合うように配置されている。したがって、これらの籠形容器21・22の下方を遮光している。
【0042】
図1又は図2を参照すると、上段の籠形容器21は、その両翼に一対の浮力体21f・21fを固定している。浮力体21fは、両端が密閉された中空の円筒状の浮きであってもよく、発泡樹脂で成形された棒状の筏部材であってもよく、水質浄化装置10に所定の浮力を付与できる。
【0043】
又、図1又は図2を参照すると、上段の籠形容器21は、側面の一部が突出する反射板21rを備えている。反射板21rは、水面Sfから突出すると共に、太陽光Rを集光して水面Sfに入射させている。
【0044】
次に、本発明の第1実施形態による水質浄化装置10の作用を説明する。
【0045】
本発明の第1実施形態による水質浄化装置10は、藻類などの水中での光合成による挙動(習性)と光触媒による分解機能とを組み合わせて利用している。
【0046】
図1を参照すると、水面Sfから籠形容器21の底面までの距離L1を5cmから10cm程度の範囲に設定している(L1=5〜10cm)。又、水面Sfから籠形容器22の底面までの距離L2を10cmから20cm程度の範囲に設定している(L1=10〜20cm)。
【0047】
一般に、藻類などは、太陽光が到達し易い水面近くで繁殖する習性がある。又、太陽光の紫外線は、水中での到達距離が短い。紫外線量が1/10になる水中での距離は、蒸留水で3m、水道水で10〜20cm、海水で5cm程度と、されている。
【0048】
本発明の第1実施形態による水質浄化装置10は、藻類などが増殖し易く、かつ太陽光の紫外線量が多い水面近くに光触媒を配置しているので、水位に係らず、藻類などの繁殖を抑制できるというメリットがある。
【0049】
図1を参照すると、本発明の第1実施形態による水質浄化装置10は、太陽光Rが複数の籠形容器21・22より下方に入射しないように、複数の籠形容器21・22を配置している。その結果、複数の籠形容器21・22の下方では、藻類は増殖が困難となり、光を求めて水面に移動する挙動を示す。図1に示された破線の矢印は、藻類Agの挙動となる移動経路を示している。
【0050】
又、図1を参照すると、これらの藻類Agは、籠形容器21・22の網目を流通して、光触媒の表面(塊状体3の表面)で分解される。そして、光触媒の周辺では、藻類Agの分解により発生した炭酸ガスが上昇した後に水平方向に移動する水流を発生させる。このように、本発明の第1実施形態による水質浄化装置10は、藻類の性質を利用して、効率よく藻類を分解又は不活化できるという効果がある。
【0051】
更に、図1又は図2を参照すると、本発明の第1実施形態による水質浄化装置10は、複数の籠形容器21が浮力体21fを備えているので、貯水槽Wtの水位が変化した場合にも、水面Sfから籠形容器21・22の底面までの設定値を維持することができる。
【0052】
又、図1又は図2を参照すると、本発明の第1実施形態による水質浄化装置10は、籠形容器21は、水面Sfから突出すると共に、太陽光Rを集光して水面に入射させる反射板21rを備えているので、太陽光Rを効率よく捕集できる。
【0053】
上述した本発明の第1実施形態による水質浄化装置10の効果を更に高めるため、貯水槽Wtの内壁の表面に光触媒機能を有する物質でコーティングしていることが好ましい。又、籠形容器21・22の表面に光触媒機能を有する物質をコーティングしてもよい。
【0054】
本発明による水質浄化装置は、自然界にある太陽光を利用して稼働でき、動力又は薬剤などのランニングコストを必要としないという利点がある。本発明による水質浄化装置は、藻類などの発生において、光触媒の強力な酸化作用により、浄化作用を発揮できる。
【0055】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態による水質浄化装置の構成を説明する。図3は、本発明の第2実施形態による水質浄化装置の構成を示す正面図であり、貯水槽を縦断面で示している。
【0056】
なお、以下の説明において、第1実施形態の説明で用いた符号と同じ符号の構成品は、その作用を同一とするので説明を割愛する場合がある。ここで、本発明の第2実施形態による水質浄化装置100は、籠形容器21・22に収容される塊状体3を網板4に置き換えている。又、本発明の第2実施形態による水質浄化装置100は、籠形容器21・22の底面を遮光している。
【0057】
図3を参照すると、水質浄化装置100は、上段に配列された複数の籠形容器21と下段に配列された複数の籠形容器22を備えている。これらの籠形容器21・22は、周囲(側面)を流水性の高い網目で形成している。
【0058】
図3を参照すると、籠形容器21・22には、光触媒機能を有する複数の網板4が収容されている。これらの網板4は、籠形容器21・22の底面を遮光するように堆積されている。
【0059】
図3において、網板4に形成される網目は、藻類やプランクトンなどが流通する程度に開口していることが好ましい。図3に示された複数の網板4は、ランダムに傾斜して配置している。しかし、複数の網板4は、それらの板厚面が水平方向に延びて、上下方向に多段に整列配置してもよい。又、複数の網板4は、それらの板厚面が鉛直方向に延びて、水平方向に多列に整列配置してもよい。更に、複数の網板4は、それらの平面が籠形容器21・22の底面に対して所定の角度に傾斜して、上下方向に多段に整列配置してもよい。そして、これらの配置は、藻類やプランクトンなどが流通することが好ましい。
【0060】
網板4に担持される光触媒としては、酸化チタンや酸化タングステンなどが用いられる。網板4は、全てを光触媒成分からなる構成としてもよく、光触媒を担持させる担体としての網板4は、金属であってもよく、セラミックや合成樹脂であってもよい。又、これらのいずれかの基材からなる網板4の表面に光触媒をコーティングしてもよい。
【0061】
図3を参照すると、上段の複数の籠形容器21は、所定の間隔を設けて水平方向に並設配置している。同様に、下段の複数の籠形容器22は、所定の間隔を設けて水平方向に並設配置している。
【0062】
図3を参照すると、上段の隣り合う籠形容器21・21は、隙間を形成しており、この隙間を塞ぐように、下段の籠形容器22が積層している。例えば、籠形容器21と籠形容器22とは、紐又はワイヤで相互に結合してもよい。そして、上段の籠形容器21と下段の籠形容器22とは、太陽光Rの紫外線が到達する範囲で、水面Sfから水中に向かって積層している。
【0063】
又、図3を参照すると、籠形容器21と籠形容器22とは、平面視において部分的に重なり合うように、水平方向に並設配置されている。したがって、これらの籠形容器21・22の下方を遮光している。
【0064】
次に、本発明の第2実施形態による水質浄化装置100の作用を説明する。
【0065】
図3を参照すると、本発明の第2実施形態による水質浄化装置100は、太陽光Rが複数の籠形容器21・22より下方に入射しないように、複数の籠形容器21・22を配置している。その結果、複数の籠形容器21・22の下方では、藻類は増殖が困難となり、光を求めて水面に移動する挙動を示す。図3に示された破線の矢印は、藻類Agの挙動となる移動経路を示している。
【0066】
又、図3を参照すると、これらの藻類Agは、籠形容器21・22の網目を流通して、光触媒の表面(網板4の表面)で分解される。そして、光触媒の周辺では、藻類Agの分解により発生した炭酸ガスが上昇した後に水平方向に移動する水流を発生させる。このように、本発明の第2実施形態による水質浄化装置100は、藻類の性質を利用して、効率よく藻類を分解又は不活化できるという効果がある。
【0067】
本発明の実施形態による水質浄化装置は、既設の貯水槽などに直ちに設置できるという利点がある。本発明の実施形態による水質浄化装置は、光触媒と太陽光を利用すると共に、藻類の習性をも利用して水を浄化している。特に、本発明の実施形態による水質浄化装置は、藻類の増殖初期の水処理に適している。
【0068】
又、本発明の実施形態による水質浄化装置は、光触媒の表面に藻類が固着することなく、常に初期状態を維持できる。したがって、本発明の実施形態による水質浄化装置は、年間を通して、殆ど保守を必要とすることなく、初期投資のみで済むことができる。
【0069】
本発明の実施形態による水質浄化装置は、光触媒として二酸化チタンを用いれば、低コストで提供できるので、貯水槽の浄化のみならず、あらゆる環境に普及が期待される。
【符号の説明】
【0070】
3 塊状体
10 水質浄化装置
21 籠形容器(上段の籠形容器)
22 籠形容器(下段の籠形容器)
Wt 貯水槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面に太陽光が照射される貯水槽に設置する水質浄化装置であって、
少なくとも周囲を流水性の高い網目で形成する複数の籠形容器と、
これらの籠形容器の底面を遮光するように堆積される光触媒機能を有する複数の塊状体と、を備え、
太陽光の紫外線が到達する範囲で、前記複数の籠形容器を水面から水中に向かって多段に積層すると共に、上段の前記籠形容器と下段の前記籠形容器とは、それらの前記複数の塊状体が平面視において重なり合って水平方向に並設配置している水質浄化装置。
【請求項2】
水面に太陽光が照射される貯水槽に設置する水質浄化装置であって、
少なくとも周囲を流水性の高い網目で形成する複数の籠形容器と、
これらの籠形容器の底面に堆積される光触媒機能を有する複数の網板と、を備え、
太陽光の紫外線が到達する範囲で、前記複数の籠形容器を水面から水中に向かって多段に積層すると共に、上段の前記籠形容器と下段の前記籠形容器とは、平面視において部分的に重なり合って水平方向に並設配置している水質浄化装置。
【請求項3】
前記籠形容器は、光触媒機能を有する請求項1又は2記載の水質浄化装置。
【請求項4】
前記複数の網板は、それらの板厚面が水平方向に延びて、上下方向に多段に整列配置している請求項2記載の水質浄化装置。
【請求項5】
前記複数の網板は、それらの板厚面が鉛直方向に延びて、水平方向に多列に整列配置している請求項2記載の水質浄化装置。
【請求項6】
前記複数の網板は、それらの平面が前記籠形容器の底面に対して所定の角度に傾斜して、上下方向に多段に整列配置している請求項2記載の水質浄化装置。
【請求項7】
最上段の前記籠形容器は、浮力体を備える請求項1から6のいずれかに記載の水質浄化装置。
【請求項8】
最上段の前記籠形容器は、水面から突出すると共に、太陽光を集光して水面に入射させる反射板を備える請求項1から7のいずれかに記載の水質浄化装置。
【請求項9】
前記貯水槽の内壁は、その表面に光触媒機能を有する物質をコーティングしている請求項1から8のいずれかに記載の水質浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−194424(P2010−194424A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40121(P2009−40121)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】