説明

水質浄化装置

【課題】 温泉、大衆浴場、プールなどのお湯や水に含まれている細菌を死滅させる水質浄化装置の提供。
【解決手段】 円筒形の本体9内部には鋸歯形の螺旋形状光触媒網16,16・・を内周面との間に所定の空間15,15・・を残して配置し、そして複数本の紫外線ランプ13,14を互いにクロスして取付け、又、各紫外線ランプ13,14の間には上記鋸歯形の螺旋形状光触媒18を介在し、本体の底面には超音波振動子12を取付け、さらに本体9へ流入する供給口10を側面下部に設け、排出口11を上面に設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に温泉や公衆浴場、プールに設置され、細菌に汚染されている水質を浄化する為の装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プール、浴場、温泉を浄化する方法としては、貯水の一部を取り出し、取出された水に砂濾過、助剤濾過、凝集沈殿、加圧浮上などの物理的な分離操作あるいは生物的酸化処理を施した後に、貯水に戻す循環浄化方法が一般的である。近年、水源の水質汚染に伴って工業用水や地下水、水道水の水質が悪化していることに加え、水のリサイクル化や安全性の向上に対する意識が高まってきており、砂濾過、助剤濾過、凝集沈殿、加圧浮上などの従来の物理的な分離操作技術では、要求される浄化レベルが達成されない場合が生じてきている。
【0003】
また、砂濾過や凝集沈殿、加圧浮上などは分離精度が10μm以上であり、それ以下の大きさの懸濁微粒子を除去することが困難である。助剤濾過は濾布などの濾材表面に珪藻土などの濾過助剤のプリコート層を形成し、この層で濾過を行う方法であるが、濾過助剤のプリコートや原水中への投入、助剤の入れ替えなどに手間がかかる上、助剤そのものが廃棄物となるため環境に対して好ましくない。
【0004】
また、生物的酸化方法を用いて貯水の浄化を行おうとすると、浄化処理に時間がかかり、それを補うために設置スペースが大きくなる、メンテナンス・管理が煩雑である、処理後の懸濁物質の除去装置が必要とされるなど、多くの問題が生じる。しかし、特に本発明が対象とする温泉や公衆浴場での細菌に汚染されている水質を浄化する場合には上記方法では困難である。
【0005】
そして、水が汚れてくると循環用水系配管、水槽等が汚れ、ここに生物膜が出来、薬剤を投入しても殺菌効果が低減する。更にこの生物膜に有機性浮遊物が付着して、これを栄養源として微生物が増殖してスライムが形成され、配管の目詰まりや、大きく増殖したスライムが剥離するといった問題も起きる。
【0006】
特開2007−275842号に係る「流体の殺菌装置及び殺菌方法」は、流体の殺菌処理効果が高く、簡単な構造からなる殺菌装置及び殺菌方法である。
すなわち、流体が通過する流路体と超音波振動子と超音波反応拡散体とを備え、流路体中に超音波振動子を配設するとともに超音波が照射される途中に超音波反応拡散体を配設した構造としている。
【0007】
そこで、超音波が超音波反応拡散体の表面に照射された際にその表面にてキャビテーションが発生し、微小の気泡の圧壊により衝撃波と微局地的な高温域が発生することでヒドロキシルラジカル等のラジカルが発生し、大腸菌等の細菌、微生物が殺菌するとされる。
【特許文献1】特開2007−275842号に係る「流体の殺菌装置及び殺菌方法」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、従来の水質浄化装置には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこれら問題点であり、大きな場所を必要とせず、又短期間でのメンテナンスを不要とし、安定した殺菌浄化機能が低下することのない水質浄化装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、例えば温泉の浴槽から汚染された浴槽液を流出して含まれている細菌を死滅させて再び浴槽へ戻すように循環する流路を形成している。本発明の水質浄化装置はこの循環流路の一部を構成し、その他に循環ポンプや濾過器などを備えているが、その他の機器に関しては限定しないことにする。そして、水質浄化装置の用途は主に温泉、大衆浴場、プールなど、不特定多数の人が使う施設を対象とする。
【0010】
ところで、本発明の水質浄化装置は、筒形の本体内に鋸歯形の螺旋形状光触媒網、互いにクロスした状態で対を成して配置した紫外線ランプ、そして超音波振動子を底に備えている。上記鋸歯形の螺旋形状光触媒網は間に空間を残すと共に本体内面に沿って配置し、又対を成す紫外線ランプの間にも配置される。そして、本体の下部には供給口を有し、本体の上部には排出口を設けている。供給口から流体が流入し、排出口から流出する。
ここで、上記螺旋形状光触媒とは、チタン材を切削して出来る切削片を材料とし、これを不活性雰囲気内で加熱し、その後冷却することで表面に二酸化チタン被膜を形成したチタン材の切削片である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る水質浄化装置は、汚染された流体が供給口から流入するならば、紫外線ランプから照射される紫外線によって含まれている細菌は死滅する。本体に設けている供給口断面は該本体の横断面積に比較して小さく、その為に、本体内へ流入した流体は比較的長時間にわたって紫外線に曝される。ここで、本体を円筒形とするならば紫外線が届く範囲が均一化されて、細菌をより効果的に死滅させることが出来る。ただし、本体の形状は円筒形に限定するものではない。
【0012】
そして、対を成す上記紫外線ランプは所定の間隔をおいて互いにクロスして配置されている為に、紫外線の透過率は水質の変化に対応でき、しかも広範囲にわたって均等に照射することが出来る。一方、本体内面に沿って鋸歯形の螺旋形状光触媒網を配置していることで、減少した紫外線照射は螺旋形状光触媒網によって励起されて、浄化装置本体の内面付近での細菌死滅効果が低下することはない。
【0013】
さらに、互いにクロスした上下紫外線ランプの間に螺旋形状光触媒を介在することであらゆる角度からの紫外線照射光、及び紫外線照射光の乱反射光の吸収が可能で、上記螺旋形状光触媒網の励起を促すことが出来る。一方、本体の底には超音波振動子を設置しているが、超音波振動子にて発生するキャビテーション及びナノバルブ現象によって、装置本体内の洗浄と汚れの付着防止が行われる。又、超音波の浸透性は処理液排出口から浴槽までの配管内の汚れ防止を図ることも出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】水質浄化装置を備えた温泉浴槽の洗浄工程。
【図2】本発明に係る水質浄化装置を示す実施例で、(a)は縦断面図、(b)横断面図。
【図3】図2(a)のA矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は温泉の浴槽液21を処理する為の一連の装置であり、同図の1は本発明に係る水質浄化装置、2は浴槽、3は循環ポンプ、4は濾過器、5は採毛機、6は次亜塩素酸ソーダタンクをそれぞれ表している。上記浴槽2の底には流出パイプ7が接続し、浴槽2の側面上部には流入パイプ8が接続しており、流出パイプ7から流出した浴槽液21は、汚れが除去されると共に含まれている細菌は死滅して流入パイプ8から浴槽2へ戻される。
【0016】
浴槽液21の循環は上記循環ポンプ3にて行われ、浴槽液21はパイプを流れて、次亜塩素酸ソーダタンク6に収容されている適量の次亜塩素酸ソーダがパイプへ添加される。次亜塩素酸ソーダは一般に水道水に含まれている各種細菌を死滅させる為に使用されているもので、大腸菌、サルモネラ菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌などを死滅させる効果がある。
【0017】
採毛機5は浴槽液21に混入している髪の毛を回収することが出来、濾過器4は髪の毛以外の不純物を濾過する。ここで、採毛機5及び濾過器4の具体的な構造は限定せず、色々なものが市販されている。そして、髪の毛及びその他の不純物が除去された浴槽液21は、本発明に係る水質浄化装置1へ流入して含まれている細菌を死滅させることが出来る。
【0018】
上記次亜塩素酸ソーダによっても各種細菌は死滅するが、本発明では該次亜塩素酸ソーダにて死滅しない細菌、又は次亜塩素酸ソーダを添加しないでも該水質浄化装置にて各種細菌を死滅させることが可能である。図2(a)、(b)は本発明の水質浄化装置1を示す実施例である。
【0019】
該水質浄化装置1は円筒状の本体9を有し、該本体9の下側側面には浴槽液21が流入する供給口10が設けられ、上面には浴槽液21が流出する排出口11が設けられている。そして、これら供給口10及び排出口11は上記パイプに接続していて、濾過器4から流れ出た浴槽液21は供給口10から本体9へ入り、排出口11から流れ出た浴槽液21は上記流入パイプ8を流れて浴槽2へ戻される。ここで、上記供給口10は本体9の下部であればよく、下側側面に限るものではない。又排出口11も本体9の上部であればよく上面に限るものではない。
【0020】
ところで、上記水質浄化装置1の本体9の下面には超音波振動子12が取付けられ、そして供給口10と同軸をなして紫外線ランプ13が水平に取付けられ、又該紫外線ランプ13の上方に位置すると共に、互いに垂直方向にクロスした別の紫外線ランプ14が備わっている。同図の紫外線ランプ13と紫外線ランプ14は互いに垂直を成してクロスしている。
【0021】
そして、本体9の内面との間に空間15を残して鋸歯形の螺旋形状光触媒網16,16・・を配置し、鋸歯形の螺旋形状光触媒網16,16・・にて概略四角形の筒を形成している。四角形筒の各角部17,17・・は本体9の内周面に当って位置決めされ、各鋸歯形の螺旋形状光触媒網16,16・・と内周面との間に空間15,15・・が設けられている。勿論、鋸歯形の螺旋形状光触媒網16の形状を本体9とは一回り小さい筒形として形成することも出来る。又、所定の距離をおいて互いにクロスして配置されている紫外線ランプ13と紫外線ランプ14との間には図3に示す鋸歯形の螺旋形状光触媒網18がほぼ水平に取付けられている。
【0022】
該鋸歯形の螺旋形状光触媒は、チタン材を切削して出来る切削片が用いられる。そして、この切削片を不活性雰囲気内で加熱し、その後、冷却することで表面に二酸化チタン被膜が形成される。チタン材を切削して作られる切削片は一般に異形断面の螺旋状となり、その表面は細かい凹凸形状を成している。そして、切削片の稜線は鋭利な鋸歯形状突起と成っているが、表面の細かい凹凸化により、二酸化チタン被膜の表面積は大きく、水中における紫外線や超音波及び雑菌などを補足できる接触効率が向上する。
【0023】
ところで、本発明の水質浄化装置1は殺菌効果を上げる為に、図2に具体例を示すように構成している。殺菌効果を向上する為には紫外線露光量(mJ/cm)を多くすればよい。該紫外線露光量(mJ/cm)=紫外線照度(mw/cm)×時間(sec)の式で表されるが、同一紫外線量で露光量を増やすためには、同じ場所に浴槽液21がより長く滞留する必要がある。
【0024】
本体9を省スペースで内容積を大きくすることで流入した浴槽液21の滞留時間を長くし、紫外線露光量を増やす目的で該本体9の形状を円筒形にしている。そして、供給口10の口径より本体9の口径を大きくすることで、本体9へ流入した浴槽液21の流れは緩やかになり、紫外線の照射時間が長くなり、露光量を増やすことが出来る。
【0025】
口径(内径)と滞留時間の関係は、
流量S(cc/sec)=rπ×V=Rπ×Vの関係にある。
ここで、V:供給・排出口の流速 V:本体内の流速
r:供給・排出口の半径 R:本体の半径
この式から、流速は口径の2乗に反比例し、滞留時間は流速が速いと短時間となり、逆に流速が遅いと長くなる。
【0026】
そこで、本発明では供給口及び排出口の流速と本体内での平均流速を1:50〜60に設定している。勿論、供給口及び排出口と本体内での平均流速を上記比率に限定するものではないが、この数値を基にして使用流量・流速によって供給口及び排出口と本体の内径寸法を変えることが出来、又、処理される流体の種類や性質により、流速比を変更することも可能である。
【0027】
上記実施例の水質浄化装置では上記本体9は円筒形を成していることで、内周面に届く紫外線の範囲が均一化し、効果的な殺菌効果を得ることが出来る。又、紫外線ランプ13と紫外線ランプ14は所定の間隔をおいて互いに垂直にクロスしている。紫外線の透過率は、水質により変化が大きく、この変化に対応する為に紫外線ランプ13と紫外線ランプ14は互いにクロスし、紫外線の露光時間を長くすると共に、広範囲に照射する効果が得られる。水質浄化装置1の本体9において、上内面19、紫外線ランプ14、紫外線ランプ13、下内面20間の距離は、約1:1:1.2の比率と成っている。
【0028】
又、本発明の水質浄化装置1はその本体9の底面に超音波振動子12が取付けられている。超音波振動子12によるキャビテーション及びナノバルブ現象にて、本体9内部の洗浄及び汚れの付着防止が行われる。さらに、超音波の浸透性を用いて排出口から浴槽までの流入パイプ8の汚れ防止が図られる。
【0029】
そして、本発明の実施例では、本体9の内部に2本の紫外線ランプ13と紫外線ランプ14が互いにクロスして取付けられているが、該本体9の高さを大きくするならば、紫外線ランプを4本配置することもあり、紫外線ランプの本数は限定しない。
【符号の説明】
【0030】
1 水質洗浄装置
2 浴槽
3 循環ポンプ
4 濾過器
5 採毛機
6 次亜塩素酸ソーダタンク
7 流出パイプ
8 流入パイプ
9 本体
10 浴槽液供給口
11 浴槽液排出口
12 超音波振動子
13 紫外線ランプ
14 紫外線ランプ
15 空間
16 鋸歯形の螺旋形状光触媒網
17 角部
18 鋸歯形の螺旋形状光触媒
19 上内面
20 下内面
21 浴槽液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温泉、大衆浴場、プールなどのお湯や水に含まれている細菌を死滅させる水質浄化装置において、筒形の本体内部には鋸歯形の螺旋形状光触媒網を内面との間に所定の空間を残して配置し、そして複数本の紫外線ランプを互いにクロスして取付け、又、各紫外線ランプの間には上記鋸歯形の螺旋形状光触媒を介在し、本体の底には超音波振動子を取付け、さらに本体へ流入する供給口を下部に設け、排出口を上部に設けたことを特徴とする水質浄化装置。
【請求項2】
供給口及び排出口と本体内での平均流速を1:50〜60とした請求項1記載の水質浄化装置。
【請求項3】
互いにクロスした2本の紫外線ランプを備えた場合、本体の上内面、両紫外線ランプ、本体下内面間距離を1:1:1.2の比率とした請求項1、又は請求項2記載の水質浄化装置。
【請求項4】
上記本体を円筒形にすると共に上記鋸歯形の螺旋形状光触媒網を四角形の筒状に配置し、そして角部を本体内周面に当接して配置した請求項1、請求項2、又は請求項3記載の水質浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−227838(P2010−227838A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78587(P2009−78587)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(593196609)株式会社 オノモリ (3)
【Fターム(参考)】