説明

水質監視システム

【課題】 水処理装置における水処理状況を適正に監視するのに有効な技術を提供する。
【解決手段】 本発明に係る水処理装置100は、水処理領域の水に関する水質情報及び水量情報を検出し、これら水質情報及び水量情報の両方の情報に基づいて、水処理領域における水処理状況に関する情報を、水処理装置100から離間して配設された監視装置1170にて把握する構成とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置において処理される被処理水の水質を監視する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般家庭等から排出される生活排水や、産業廃水等の汚水などの被処理水を処理する水処理装置においては、水質検出センサを用いて処理水質を常時把握する構成が知られている。とりわけ、家庭の生活排水を受け入れて処理する家庭用の水処理装置にあっては、保守点検の頻度が工場などに比べて少なく、また人員比(実使用人数/人槽)によっては水処理装置に貯留させた汚泥を引く抜く清掃作業が必要となる頻度にばらつきがあることから、次回の保守点検時までの水質の変動を適正に監視する要請が高い。例えば下記特許文献1には、浄化槽において、消毒処理後の水に含まれる残留塩素を水質センサによって検出する技術が開示されている。このような技術を用いれば、水質センサによる検出情報を継続的に出力することによって、被処理水の水質変化を把握することができ、これにより水質処理が適正に遂行されているか否かを監視することが可能となる。しかしながら、水質センサによる水質情報のみを監視する本構成を採用した場合には、水質センサが設置された領域における水質低下と、浄化槽全体としての水質低下が必ずしも一致しない場合があり、例えば水質センサが水質の低下を検知しても、浄化槽内の水量によっては全体としての水質は実質的には問題ないような事態が起こり得る。従って、水質センサによる水質情報のみを監視する技術では、水処理装置における水処理状況をきめ細かく監視するのに限界がある。
【特許文献1】特開平4−235798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、水処理装置における水処理状況を適正に監視するのに有効な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために、本発明が構成される。なお、本発明は、一般家庭等から排出される生活排水や産業廃水等の被処理水の浄化処理を行う水処理装置に対し好適に用いられる。
【0005】
本発明にかかる水質監視システムは、水処理装置及び監視装置を少なくとも備えたシステムとして構成される。この水質監視システムにおいて、水処理装置は、被処理水の水処理領域を収容する処理槽本体を有し、検出部及び送信部を少なくとも含む構成とされる。
【0006】
検出部は、水処理領域の水に関する水質情報及び水量情報を検出する機能を有する。この検出部は、典型的には、水処理領域の水の水質及び水量を検出する単一或いは複数のセンサ類、水の移送や流量調整を行なう機器の稼動時間を検出する装置などを用いることによって構成される。なお、ここでいう「水処理領域の水に関する水質情報」とは、水処理領域の水の水質を示唆する情報を広く包含する主旨であり、当該情報として、典型的には水処理領域を流通する水の水質、水処理領域へと流入する水の水質、水処理領域から流出する水の水質、またこれらの各水質及び水量を示す他の情報などが挙げられる。また、ここでいう「水処理領域の水に関する水量情報」として、典型的には水処理領域内を流れる水の水量、水処理領域へと流入する水の水量、水処理領域から流出する水の水量、またこれらの各水質及び水量を示す他の情報などが挙げられる。送信部は、検出部によって検出された水質情報及び水量情報の両方の情報を処理槽本体外へと送信する機能を有する。
【0007】
監視装置は、水処理装置から離間して配設され、受信部及び情報処理部を少なくとも含む構成とされる。この監視装置は、典型的には前記構成の水処理装置を含む複数の水処理装置を監視する機能を有する。また、この監視装置は、水処理装置の施主(使用者)、水処理装置の維持管理業者(維持管理者)、水処理装置の清掃業者(清掃作業者)、これら施主、維持管理業者或いは清掃業者に対し情報を提供するべく複数の水処理装置に関する情報を集中的に管理するデータ管理センターのうちの少なくとも1つの箇所に設置される装置として構成される。ここでいう「維持管理業者」とは、水処理装置の維持管理を行なうための専門知識を有する作業者とされ、典型的には施主から管理委託を請けた管理業者とされる。施主自身が維持管理業者となる場合もある。また、ここでいう「清掃業者」とは、典型的には施主から管理委託を請けた維持管理業者を介して間接的に、或いは施主から直に請けた清掃依頼に基づいて、水処理装置に貯留させた汚泥を引く抜く作業を定期的ないし非定常で行う作業者とされる。
【0008】
受信部は、水処理装置側の送信部から送信された情報を受信する機能を有する。情報処理部は、受信部において受信された水質情報及び水量情報の両方の情報に基づいて、水処理領域における水処理状況に関する情報を出力する機能を有する。ここでいう「水処理領域における水処理状況に関する情報」とは、水処理領域において処理される水の処理状況或いは当該水処理状況を示唆する情報を広く包含する主旨であり、当該情報として、典型的には、所定区間(所定期間)における区間水質値や区間水量値、水処理領域における汚泥量の推移、当該汚泥量の累積値、水処理領域における水質の推移などが挙げられる。当該情報は、監視装置側の情報処理部において導出されて出力されてもよいし、或いは水処理装置側の送信部において予め導出された後に監視装置側の情報処理部において出力されてもよい。この情報処理部の出力態様に関しては、水処理領域における水処理状況に関する情報を出力する態様が広く包含されるものであり、情報の演算出力のほか、当該演算結果を表示器に表示出力する態様、音声、警報等をスピーカーに音出力する態様、当該演算結果をプリンタ等に印字出力する態様、またこれらの各態様の複数を組み合わせた態様などを適宜用いることが可能である。監視装置の受信部及び情報処理部の両方がデータ管理センターないし維持管理業者に設置される場合には、更に水処理装置の施主(使用者)や清掃業者に対し処理後の情報を送信可能に構成されるのが好ましい。これにより、水処理装置の施主や清掃業者は水処理領域における水処理状況に関する適正な情報、例えば次回の点検時期や清掃時期を知ることが可能となる。
【0009】
本発明にかかる水質監視システムのこのような構成によれば、水処理領域の水に関する水質情報及び水量情報の両方の情報に基づいて、水処理領域における水処理状況に関する情報を導出することによって、水処理装置全体にわたる水処理状況を、水処理装置から離間した監視装置において適正に把握することが可能となる。これにより、例えば水処理領域における水質低下を検知しても水処理装置全体としての実質的な水質に問題のないような場合や、水処理領域における水質低下を検知していなくても水処理装置全体としての実質的な水質に問題があるような場合に、管理者が水処理装置側に常駐していなくとも適正に対処することができ、以って水処理装置の適切な維持・管理が可能となる。
【0010】
また、本発明にかかる更なる形態の水質監視システムでは、前記の検出部は、第1の検出センサ及び第2の検出センサを有する構成であるのが好ましく、また前記の情報処理部は、送信部から送信された第1及び第2の検出センサによる検出値に基づいて、水処理領域における所定区間での区間水質値を導出する構成であるのが好ましい。
第1の検出センサは、水質情報として水処理領域の水の水質を検出するセンサとして構成され、第2の検出センサは、水量情報として水処理領域に関する流入水量及び流出水量の少なくとも一方を検出するセンサとして構成される。これら第1及び第2の検出センサは、水質ないし水量を検出可能な単一の検出センサ或いは複数の検出センサによって構成され得る。
このような構成によれば、水処理領域の水の水質を検出する第1の検出センサと、水処理領域に関する流入水量及び流出水量の少なくとも一方を検出する第2の検出センサを用いることで、水処理領域における水処理状況に関する情報を監視装置にて適正に把握することが可能となる。
【0011】
また、本発明にかかる更なる形態の水質監視システムでは、前記の情報処理部は、更に導出した区間水質値に基づいて、処理槽本体の清掃時期に関する情報、水処理領域の水の水質低下に関する情報のうちの少なくとも一方を出力する構成であるのが好ましい。ここでいう「処理槽本体の清掃時期に関する情報」とは、処理槽本体の清掃時期や、その清掃時期を示唆する情報を広く包含する主旨であり、当該情報として、典型的には、清掃時期に達しているか否か、次回の清掃時期、次回の清掃時期までの猶予期間(清掃が必要とされる規定の汚泥量に対する汚泥量の積算の割合)などが挙げられる。また、ここでいう「水処理領域の水の水質低下に関する情報」とは、水処理領域の水の水質が低下したことを示す情報、当該水質低下に関連する情報を広く包含する主旨であり、当該情報として、典型的には、現在の水質が規定の水質管理基準内にある或いは水質管理基準を外れているという情報、水質低下により処理槽本体の点検が必要である或いは点検が必要でないという情報などが挙げられる。
このような構成によれば、処理槽本体の清掃時期に関する適正な情報や、水処理領域の水の水質低下に関する適正な情報が監視装置において得られることによって、定期的な巡回点検作業を無くすことができ、以って水処理装置の合理的な維持・管理が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、被処理水の水処理領域を収容する処理槽本体を有する水処理装置において、特に水処理領域の水に関する水質情報及び水量情報を検出し、これら水質情報及び水量情報の両方の情報に基づいて、水処理領域における水処理状況に関する情報を、水処理装置から離間して配設された監視装置にて把握する構成を採用することによって、水処理領域における水処理状況を適正に把握することができ、以って水処理装置において処理される水の水質監視の適正化を図ることが可能となった。
また、処理後の水を処理槽本体から放流していない時の水質のみを検出するような従来型の検出システムでは放流時の真の水質を監視することが難しいが、本発明によれば、処理後の水を処理槽本体から放流している放流時の水質情報を少なくとも検出することによって、放流時の真の水質を監視することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明における一実施の形態の水処理装置の構成等を図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態は、一般家庭等から排出される排水(被処理水)の処理を行う水処理装置について説明するものである。
【0014】
本実施の形態の水処理装置100及び集中監視装置170の概要が図1に示される。本実施の形態の水処理装置100は、槽状に成形された水処理槽101を有し、この水処理槽101は、複数の処理槽(「水処理部」或いは「水処理機構」ともいう)を収容する躯体構造を構成する。ここでいう水処理装置100が本発明における「水処理装置」に相当する。
【0015】
水処理槽101には、典型的には処理工程の順に対応して上流(図1中の左側)から夾雑物除去槽110、嫌気濾床槽120、接触ばっ気槽130、沈澱槽140、消毒槽150を含む水処理領域が収容される。この水処理槽101には、流入管102を通じて被処理水が流入し、また水処理領域において処理された処理後の水は、流出管103を通じて水処理槽101から流出する構成とされる。ここでいう水処理槽101が本発明における「処理槽本体」に相当し、またこの水処理槽101内の水処理領域が本発明における「被処理水の水処理領域」を構成する。なお、本実施の形態では、各槽において処理される排水および当該排水を処理する処理過程において流れる水を「被処理水」ないし「水」と記載する。
【0016】
夾雑物除去槽110は、水処理槽101の最上流部に配置されており、被処理水中に含まれる夾雑物を、流入バッフル(図示省略)などの固液分離手段を用いて被処理水から分離する処理を行う槽であり、被処理水の固液分離機能を果たす。この夾雑物除去槽110において夾雑物の除去処理がなされた後の水は、押し出し流れの原理によって、その下流に配置された嫌気濾床槽120へと移流する。
【0017】
嫌気濾床槽120は、被処理水中の有機汚濁物質を嫌気処理(還元)する機能を有する処理槽として構成される。典型的には、有機汚濁物質を嫌気処理する嫌気性微生物が付着する所定量の濾材が嫌気濾床121に充填された構成を有する。この嫌気処理によってBODの低減と汚泥物の減量化が図られる。この嫌気濾床槽120で処理された後の水は、押し出し流れの原理によって、その下流に配置された接触ばっ気槽130へと移流する。
【0018】
接触ばっ気槽130は、被処理水中の有機汚濁物質を好気処理(酸化)する機能を有する処理槽として構成される。典型的には、有機汚濁物質を好気処理する好気性微生物が付着する所定量の接触材が充填されるとともに、接触材131にブロワ(送風機)132から送り込まれる空気が供給される構成を有する。本構成において、接触材に付着した好気性微生物は、ブロワ132から送り込まれる空気中の酸素の助けによって、被処理水中の有機汚濁物質を好気処理する。また、特に図示しないものの、この接触ばっ気槽130で処理された水は、その一部が移送ポンプなどの移送手段によって夾雑物除去槽110に循環水として循環される一方、残りが下流に配置された沈殿槽140へと移流する構成であるのが好ましい。この場合、夾雑物除去槽110へと循環される循環水は、典型的には汚泥等の固形分を含む水とされる。
【0019】
沈殿槽140は、接触ばっ気槽130から移流した水を一時的に滞留させて、水中の浮遊物質を沈殿・除去する機能を有する処理槽として構成される。この沈殿槽140には、水質検出センサ141が設置されている。この水質検出センサ141は、槽内を流れる水の水質情報を連続的或いは一定時間毎に検出する機能を有し、典型的には、濁度、透視度、透明度、SS(浮遊懸濁物質量)、pH、ORP(酸化還元電位)、DO(溶存酸素)、BOD(生物化学的酸素要求量)、紫外線(UV)吸光度、MLSS(活性汚泥濃度)等のうちの1または複数を検出する水質検出センサとして構成される。この水質検出センサ141に接続された送信部142は、有線式或いは無線式の通信回線を介して集中監視装置170のサーバ(後述するサーバ171)に接続されており、水質検出センサ141によって検出された水質情報は、連続的或いは一定時間毎に集中監視装置170のサーバとの間での送信が可能とされる。なお、この水質検出センサ141の設置数は1個でも複数個でもよく、またセンサの種類も一つに限定されない。ここでいう水質検出センサ141が本発明における「第1の検出センサ」に相当する。この沈殿槽140で処理された後の水は、押し出し流れの原理によって、その下流に配置された消毒槽150へと移流する。
【0020】
集中監視装置170は、水処理装置100から離間した遠隔地に配設され、水処理装置100をはじめとする複数の水処理装置の水質管理(水質監視)を継続して集中的に行うデータ管理センターとしての機能を有する。従って、この集中監視装置170は、「監視装置」ないし「遠隔監視装置」とも称呼される。この集中監視装置170は、サーバ(データ受信器)171のほか、データ演算処理、データ記憶処理、データ表示処理、データ印字処理などの種々の処理機能を搭載している。集中監視装置170におけるこのような集中的な水質管理は、家庭用の水処理装置のように普及数が多い各水処理装置の処理情報を、集中して監視するのに特に有効である。この集中監視装置170は、水処理装置100の施主(使用者)、水処理装置100の維持管理業者(維持管理者)、水処理装置100の清掃業者(清掃作業者)、これら施主、維持管理業者或いは清掃業者に対し情報を提供するべく複数の水処理装置に関する情報を集中的に管理するデータ管理センターのうちの少なくとも1つの箇所に設置される装置として構成され得る。ここでいう「維持管理業者」とは、水処理装置100の維持管理を行なうための専門知識を有する作業者とされ、典型的には施主から管理委託を請けた管理業者とされる。施主自身が維持管理業者となる場合もある。また、ここでいう「清掃業者」とは、典型的には施主から管理委託を請けた維持管理業者を介して間接的に、或いは施主から直に請けた清掃依頼に基づいて、水処理装置100に貯留させた汚泥を引く抜く作業を定期的ないし非定常で行う作業者とされる。
【0021】
典型的には、この集中監視装置170が水処理装置100の施主(使用者)や清掃業者に対し処理後の情報を送信可能に構成された監視装置であるのが好ましい。これにより、水処理装置100の施主や清掃業者は水処理装置100における水処理状況に関する適正な情報、例えば次回の点検時期や清掃時期に関する情報を知ることが可能となる。ここでいう集中監視装置170が本発明における「監視装置」に相当し、またこの集中監視装置170と、前記の水処理装置100とによって構成される水質監視システムが本発明における「水質監視システム」に相当する。
【0022】
消毒槽150は、沈殿槽140から流入した水を消毒処理する機能を有する処理槽であり、典型的には、消毒処理を行うための消毒剤(固形塩素剤)が充填された薬剤筒151を備えている。この薬剤筒151から溶出した消毒剤によって消毒処理がなされた後の水は、流出管103を通じて水処理槽101から放流される。
【0023】
なお、上記構成の水処理装置100において、嫌気濾床槽120から接触ばっ気槽130へと水が移流する構造に関しては、図1に示すように、仕切り部材の上部に設けられた開口を通じて押し出し流れの原理によって上流槽から下流槽へと水が流れる構造、いわゆる「押し出し型」の構造であってもよいし、或いは移流ポンプ等の流量調整手段によって流量調整しつつ上流槽から下流槽へと水を移送する構造、いわゆる「流量調整型」の構造であってもよい。この流量調整型の構造に関しては、図2が参照される。
【0024】
図2には、別実施の形態の水処理装置200の概要が示されている。なお、この図2において水処理装置100の構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付している。図2に示すこの水処理装置200は、嫌気濾床槽120から接触ばっ気槽130へと水が移流する構造として、移流ポンプ122を用い、またこの移流ポンプ122の制御に関連する水位計111を設置する以外は、水処理装置100の基本構造と概ね同様とされる。この移流ポンプ122は、水中ポンプないし間欠定量ポンプ、エアリフトポンプ等からなり、水位計111によって検出された夾雑物除去槽110の水位情報に基づいて、嫌気濾床槽120から接触ばっ気槽130へと流れる水の流量を調整する機能を有する。
【0025】
具体的には、夾雑物除去槽110の水位が規定水位よりも高いことが水位計111によって検出された場合には、移流ポンプ122による移送水量を相対的に増加させる制御が行なわれ、また夾雑物除去槽110の水位が規定水位よりも低いことが水位計111によって検出された場合には、移流ポンプ122による移送水量を相対的に減少させ或いは停止させる制御が行なわれる。この水位計111の種類に関しては、フロート式水位計、圧力式水位計、超音波式水位計、電磁式水位計、光式水位計等を適宜用いることが可能である。
【0026】
ところで、図1に示す構成の水処理装置100や、図2に示す構成の水処理装置200においては、水処理槽101に貯留させた汚泥を引き抜く清掃作業や槽内の点検作業などを合理的に遂行するために、水質検出センサ141の検出情報に基づいて、そのときの水処理槽101内の水処理状況を適正に把握することが要請される。しかしながら、このような場合に、水質検出センサ141の検出情報のみを用いると、水質検出センサ141が設置された領域及びその周辺領域における局所的な水処理状況を把握することは可能であるものの、水処理装置全体としての水処理状況を把握するのに限界がある。例えば、水質検出センサ141の周辺領域の水質が一時的に低下しても、水処理装置から流出する流出水量が比較的少ないときには、水処理装置全体としての水質は実質的には問題ない場合があり得る。反対に、水質検出センサ141の周辺領域の水質が正常であっても、水処理装置から流出する流出水量が比較的多いときには、処理装置全体としての水質が問題となるような場合があり得る。とりわけ、家庭の生活排水を受け入れて処理する家庭用の水処理装置にあっては、保守点検の頻度が工場などに比べて少なく、また人員比(実使用人数/人槽)によっては水処理装置に貯留させた汚泥を引く抜く清掃作業が必要となる頻度にばらつきがあることから、次回の保守点検時までの水質の変動を適正に監視する要請が高い。従って、この種の水処理装置においては、水質検出センサ141のみによっては把握するのに限界がある水処理状況を適正に把握する新たな検出システムを構築する要請があった。
【0027】
そこで、本実施の形態では、上記構成の水処理装置100や水処理装置200において、水処理槽101内の水処理状況を適正に把握し、以って水処理槽101の清掃作業や点検作業などを合理的に遂行することを可能とする検出システムを採用している。この検出システムは、水質に関する情報を検出する水質情報検出機構である水質検出センサ141に加えて、更に水処理装置内の流通水量、水処理槽101へと流入する流入水量、水処理槽101から流出する流出水量等の水量情報検出機構を兼ね備えた検出システムとして構成される。以下、当該検出システムに関し詳細に説明する。
【0028】
本実施の形態では、図1に示すような押し出し型の水処理装置100においては、水質検出センサ141によって水質情報検出機構を構成するとともに、第1の流量計104及び第2の流量計105の少なくとも一方によって水量情報検出機構を構成するのが好ましい。ここでいう水質情報検出機構を構成する水質検出センサ141、及び水量情報検出機構を構成する第1の流量計104や第2の流量計105によって、本発明における「検出部」が構成され、また第1の流量計104や第2の流量計105が本発明における「第2の検出センサ」に相当する。
【0029】
第1の流量計104は、流入管102を通じて水処理槽101内へと流入する水の流入水量を検出する機能を有し、またこの第1の流量計104には、送信部104aが接続されている。一方、第2の流量計105は、流出管103を通じて水処理槽101外へと放流する水の流出水量を検出する機能を有し、またこの第2の流量計105には、送信部105aが接続されている。このような構成において、流量計104,105によって検出された情報は、送信部104a,105aを介して集中監視装置170のサーバ171へと送信される。同様に、水質検出センサ141によって検出された情報は、送信部141aを介して集中監視装置170のサーバ171へと送信される。これら送信部104a,105a,141aによって、本発明における「送信部」が構成される。なお、水質検出センサ141によって検出された情報に基づいて水質が導出される一方、流量計104,105によって検出された情報に基づいて流入水量或いは流出水量が導出される。これらの導出処理は、集中監視装置170のサーバ171への送信前に、流量計104,105側や水質検出センサ141側において遂行されてもよいし、或いは集中監視装置170のサーバ171への送信後に集中監視装置170側において遂行されてもよい。
【0030】
かくして、集中監視装置170側のデータ管理者や、集中監視装置170側からの情報を受信した、水処理装置100の施主(使用者)、維持管理業者、清掃業者は、水処理装置100の水処理槽101における水処理状況として、沈殿槽140の水質検出センサ141によって検出された水質情報や、水処理槽101内へと流入する水の流入水量、或いは水処理槽101外へと流出する水の流出水量としての水量情報、更にはこれら水質情報及び水量情報の両方の情報から導出される清掃時期に関する情報や水質低下に関する情報を少なくとも把握することが可能となる。なお、水処理槽101内へと流入する水の流入水量を検出する水量情報検出機構に関しては、流入管102に設置された流量計104に代えて或いは加えて、水道管に設置された出力付水道メータを採用することもできる。
【0031】
また、本実施の形態では、図2に示すような流量調整型の水処理装置200においては、夾雑物除去槽110の水位計111によって、前記の水量情報検出機構を構成するのが好ましい。水量情報検出機構を構成するこの水位計111、及び水質情報検出機構を構成する前記の水質検出センサ141によって、本発明における「検出部」が構成され、また水位計111が本発明における「第2の検出センサ」に相当する。
【0032】
水位計111は、夾雑物除去槽110の水位を連続的或いは一定時間毎に検出する機能を有し、またこの水位計111には、送信部111aが接続されている。このような構成において、水位計111によって検出された水位情報は、送信部111aを介して連続的或いは一定時間毎に集中監視装置170のサーバ171へと送信される。同様に、水質検出センサ141によって検出された情報は、送信部141aを介して集中監視装置170のサーバ171へと送信される。これら送信部111a,141aによって、本発明における「送信部」が構成される。なお、水質検出センサ141によって検出された情報に基づいて水質が導出される一方、水位計111によって検出された情報に基づいて流出水量が導出される。例えば、夾雑物除去槽110の水位が予め規定された規定水位を上回るときにオン信号が出力され、当該規定水位を下回るときにオフ信号が出力される構成の水位計111の場合、オン信号とオフ信号とが切り替わる時間から流出水量の導出が可能となる。これらの導出処理は、集中監視装置170のサーバ171へと送信される前に、水位計111側や水質検出センサ141側において遂行されてもよいし、或いは集中監視装置170のサーバ171へと送信された後に集中監視装置170側において遂行されてもよい。
【0033】
かくして、集中監視装置170側のデータ管理者や、集中監視装置170側からの情報を受信した、水処理装置200の施主(使用者)、維持管理業者、清掃業者は、水処理装置200の水処理槽101における水処理状況として、沈殿槽140の水質検出センサ141によって検出された水質情報や、夾雑物除去槽110の水位計111によって検出された水量情報、更にはこれら水質情報及び水量情報の両方の情報から導出される清掃時期に関する情報や水質低下に関する情報を少なくとも把握することが可能となる。
【0034】
図2に示す流量調整型の上記水処理装置200においては、夾雑物除去槽110に水位計111を設置する場合について記載したが、この水位計111の設置箇所に関しては、移流ポンプ122よりも上流側の処理領域、すなわち水位変動を伴う領域を適宜選択することができる。例えば、移流ポンプ122よりも上流側の処理領域に図2に示すような夾雑物除去槽110を含む構成の場合には、当該上流側の処理領域のうち夾雑物除去槽110或いは夾雑物除去槽110以外の領域に水位計111を設置することが可能であり、また移流ポンプ122よりも上流側の処理領域に夾雑物除去槽110のような処理槽が含まれない構成の場合には、当該上流側の処理領域のうちの任意の処理領域(例えば、嫌気濾床槽の第1室)に水位計111を設置することが可能である。
【0035】
なお、上記の水処理装置100及び水処理装置200における水質監視システムでは、水処理槽101における水の水質情報を検出する水質検出センサ141に加えて、更に水処理槽101に関する水量情報を検出する水量情報検出機構を搭載することによって、典型的には図3に示すようなデータ処理システムを構築することが可能である。図3には、本実施の形態のデータ処理システムの概要が示されている。
【0036】
図3に示すように、水処理槽101のセンサやメータ類にて検出され、各送信部から集中監視装置170のサーバ171へと送信された情報は、この集中監視装置170においてデータ処理部172及びデータ出力部173によって順次処理される。ここでいうサーバ171が本発明における「受信部」に相当し、またここでいうデータ処理部172及びデータ出力部173によって本発明における「情報処理部」が構成される。
【0037】
データ処理部172では、水処理槽101における水の水質情報及び水量情報の両方の情報に基づいて、所定時間内における区間水質値や区間水量値、水処理槽101における汚泥量の推移、当該汚泥量の累積値、水処理領域における水質の推移等、水処理槽101内の水処理状況に関する各種の情報が導出される。更に、このデータ処理部172では、水処理槽101の清掃時期に関する情報や、水処理槽101の水の水質低下に関する情報などが導出される。ここでいう「水処理槽101の清掃時期に関する情報」には、清掃時期に達しているか否か、次回の清掃時期、次回の清掃時期までの猶予期間(清掃が必要とされる規定の汚泥量に対する汚泥量の積算の割合)などが広く包含される。また、ここでいう「水処理槽101の水の水質低下に関する情報」には、現在の水質が規定の水質管理基準内にある或いは水質管理基準を外れているという情報、水質低下により水処理槽101の点検が必要である或いは点検が必要でないという情報などが広く包含される。
【0038】
データ出力部173では、データ処理部172において処理された後の処理結果がデータ管理者、施主、維持管理業者、清掃業者等に対し提示(出力)される。このデータ出力部173による情報の出力態様に関しては、文字、数字、図柄、色などを表示器に表示出力する態様、音声、警報等をスピーカーに音出力する態様などを適宜用いることが可能である。また、当該情報は、集中監視装置170側のデータ出力部173において出力される本態様の他に、例えば水処理槽101ないしその周辺において現場出力されてもよい。このような構成によれば、そのときの水処理槽101内の水処理状況を適正に把握することができ、これにより最適な清掃時期を施主、維持管理業者、清掃業者等に報知することが可能となる。特に、清掃時期に関する情報等を施主に報知することによって、施主の節水意識、水の使用方法や排水方法に対する意識を高めるのに効果的である。
【0039】
なお、上記水処理装置100や水処理装置200とは別の構成の水処理装置において、水質情報検出機構及び水量情報検出機構を兼ね備えた検出システムを構築することが可能である。当該検出システムに関しては、図4及び図5等が参照される。これら図4及び図5には、別実施の形態の水処理装置の概要が示される。なお、これら図4及び図5において図1中に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付している。
【0040】
図4に示す水処理装置300は、図1に示す押し出し型の水処理装置100において、消毒槽150の下流に更に放流ポンプ槽160を備える水処理装置として構成される。この水処理装置300に設けられた放流ポンプ槽160は、放流ポンプ161を収容する構成とされる。放流ポンプ161は、水中ポンプないし間欠定量ポンプ、エアリフトポンプ等からなり、消毒槽150において消毒処理がなされた後の水を放流する機能を有するポンプとして構成される。この放流ポンプ161は、送信部161aを介して前記の集中監視装置170に有線接続ないし無線接続されており、水量情報としての、放流ポンプ161のポンプ稼動時間を検出する水量情報検出機構を搭載している。水量情報検出機構を構成するこの放流ポンプ161、及び水質情報検出機構を構成する前記の水質検出センサ141によって、本発明における「検出部」が構成され、また放流ポンプ161ないしそのポンプ稼動時間の検出機構が本発明における「第2の検出センサ」に相当する。なお、放流ポンプ161のポンプ稼動時間を検出するこの水量情報検出機構は、図2に示すような流量調整型の水処理装置200においても同様に採用することも可能である。
【0041】
放流ポンプ161の水量情報検出機構により連続的或いは一定時間毎に検出されたポンプ稼動時間に関する情報は、送信部161aを介して連続的或いは一定時間毎に集中監視装置170のサーバ171へと送信される。同様に、水質検出センサ141によって検出された情報は、送信部141aを介して集中監視装置170のサーバ171へと送信される。これら送信部161a,141aによって、本発明における「送信部」が構成される。なお、水質検出センサ141によって検出された情報に基づいて水質が導出される一方、放流ポンプ161の水量情報検出機構によって検出された情報に基づいて流出水量が導出される。例えば、所定期間内の放流ポンプ161のポンプ稼動時間と放流ポンプ161の吐出流量との積によって所定期間内の流出水量の導出が可能となる。これらの導出処理は、集中監視装置170のサーバ171へと送信される前に、放流ポンプ161側において遂行されてもよいし、或いは集中監視装置170のサーバ171へと送信された後に集中監視装置170側において遂行されてもよい。
【0042】
かくして、集中監視装置170側のデータ管理者や、集中監視装置170側からの情報を受信した、水処理装置100の施主、維持管理業者、清掃業者は、水処理装置300の水処理槽101における水処理状況として、沈殿槽140の水質検出センサ141によって検出された水質情報や、放流ポンプ槽160の放流ポンプ161によって検出された水量情報、更にはこれら水質情報及び水量情報の両方の情報から導出される清掃時期に関する情報や水質低下に関する情報を少なくとも把握することが可能となる。
【0043】
また、図5に示す水処理装置400は、図4に示す押し出し型の水処理装置300において、放流ポンプ161の放流配管(吐出配管)に流量計162を備える。この流量計162は、送信部161aを介して前記の集中監視装置170に有線接続ないし無線接続されており、放流ポンプ161から放流される水の流量に基づいて、水処理槽101からの流出水量を検出する水量情報検出機構を搭載している。水量情報検出機構を構成するこの流量計162、及び水質情報検出機構を構成する前記の水質検出センサ141によって、本発明における「検出部」が構成され、また流量計162が本発明における「第2の検出センサ」が相当する。なお、水処理槽101からの流出水量を検出するこの流量計162は、図2に示すような流量調整型の水処理装置200においても同様に採用することも可能である。
【0044】
流量計162の水量情報検出機構により連続的或いは一定時間毎に検出された情報は、送信部162aを介して連続的或いは一定時間毎に集中監視装置170のサーバ171へと送信される。同様に、水質検出センサ141によって検出された情報は、送信部141aを介して集中監視装置170のサーバ171へと送信される。これら送信部162a,141aによって、本発明における「送信部」が構成される。なお、水質検出センサ141によって検出された情報に基づいて水質が導出される一方、流量計162によって検出された情報に基づいて流出水量が導出される。これらの導出処理は、集中監視装置170のサーバ171へと送信される前に、流量計162側において遂行されてもよいし、或いは集中監視装置170のサーバ171へと送信された後に集中監視装置170側において遂行されてもよい。
【0045】
かくして、集中監視装置170側のデータ管理者や、集中監視装置170側からの情報を受信した、水処理装置100の施主、維持管理業者、清掃業者は、水処理装置400の水処理槽101における水処理状況として、沈殿槽140の水質検出センサ141によって検出された水質情報や、放流ポンプ槽160の放流ポンプ161の放流配管に配設された流量計162によって検出された水量情報、更にはこれら水質情報及び水量情報の両方の情報から導出される清掃時期に関する情報や水質低下に関する情報を少なくとも把握することが可能となる。
【0046】
ここで、上記水処理装置100〜400に関連して設置される集中監視装置170のデータ処理部172において遂行されるデータ処理に関する具体例を、以下に第1〜第4のデータ処理態様として説明する。
【0047】
(第1のデータ処理態様)
第1のデータ処理態様は、濁度センサからなる前記の水質検出センサ141を水質情報検出機構として用い、また前記の流量計104,105、水位計111、放流ポンプ161、流量計162及び出力付水道メータのうちの少なくとも1つを水量情報検出機構として用いる際のデータ処理態様とされる。このとき、濁度センサによる検出値A(検出値が大きいほど水の濁りの度合いが大きいと規定する)の経時変化をA1,A2,A3…とし、水処理槽101に関する水量(流入水量ないし流出水量)の検出値B(検出値が大きいほど水量が多いと規定する)の経時変化をB1,B2,B3…とした場合には、検出値Aが大きくなるほどに沈殿槽140の濁度(水処理状況)が低下すると判定することができ、水処理槽101における所定区間(所定期間)における区間水質値Q1を、{(1/A1×B1)+(1/A2×B2)+(1/A3×B3)+…}/(B1+B2+B3…)として算出することが可能である。この場合の(1/A×B)は必要に応じて予め濃度換算されてもよい。典型的には、この区間水質値Q1として1日あたりの平均的な濁度を算出し、当該算出値を管理することが可能である。ここでいう区間水質値Q1が本発明における「水処理領域における所定区間での区間水質値」に相当する。
【0048】
この際、水処理槽101における区間水質値Q1に基づいて、当該区間水質値Q1が予め規定された水質基準値(しきい値)を所定区間にわたって定常的に上回る場合には、水質検出センサ141の検出値が管理値よりも高い場合であっても、沈殿槽140の濁度は実際には悪化しておらず現段階では点検作業は必要ないと判断することが可能である。一方、当該区間水質値Q1が予め規定された水質基準値を所定区間にわたって定常的に下回る場合には、水質検出センサ141の検出値が管理値よりも低い場合であっても、沈殿槽140の濁度は実際には悪化しており速やかな点検作業が必要であると判断することが可能である。
【0049】
(第2のデータ処理態様)
第2のデータ処理態様は、透視度センサまたは透明度センサからなる前記の水質検出センサ141を水質情報検出機構として用い、また前記の流量計104,105、水位計111、放流ポンプ161、流量計162及び出力付水道メータのうちの少なくとも1つを水量情報検出機構として用いる際のデータ処理態様とされる。このとき、透視度センサまたは透明度センサによる検出値A(検出値が大きいほど水の透視度または透明度が大きいと規定する)の経時変化をA1,A2,A3…とし、水処理槽101に関する水量(流入水量ないし流出水量)の検出値B(検出値が大きいほど水量が多いと規定する)の経時変化をB1,B2,B3…とした場合には、検出値Aが小さくなるほどに沈殿槽140の透視度或いは透明度(水処理状況)が低下すると判定することができ、水処理槽101における所定区間における区間水質値Q2を、(A1×B1+A2×B2+A3×B3+…)/(B1+B2+B3…)として算出することが可能である。この場合の(A×B)は必要に応じて予め濃度換算されてもよい。典型的には、この区間水質値Q2として1日あたりの平均的透視度或いは透明度を算出し、当該算出値を管理することが可能である。ここでいう区間水質値Q2が本発明における「水処理領域における所定区間での区間水質値」に相当する。
【0050】
この際、水処理槽101における区間水質値Q2に基づいて、当該区間水質値Q2が予め規定された水質基準値を所定区間にわたって定常的に上回る場合には、水質検出センサ141の検出値が管理値よりも低い場合であっても、沈殿槽140の透視度或いは透明度は実際には低下しておらず現段階では点検作業は必要ないと判断することが可能である。一方、当該区間水質値Q2が予め規定された水質基準値を所定区間にわたって定常的に下回る場合には、水質検出センサ141の検出値が管理値よりも高い場合であっても、沈殿槽140の透視度或いは透明度は実際には低下しており速やかな点検作業が必要である判断することが可能である。当該判断に至る具体的な処理に関しては、図6が参照される。この図6には、水質に関する検出値Aと水量に関する検出値Bとから算出された区間水質値Q2に基づいて水処理状況を判断する過程を説明する図が示される。
【0051】
図6に示すように、水質に関する検出値Aと水量に関する検出値Bとから区間水質値Q2を算出し、この区間水質値Q2と水質基準値との比較によって、沈殿槽140の透視度或いは透明度が低下しているか否かを判断することができる。このようなデータ処理によれば、例えば時間t4において、水質検出センサ141によって検出された検出値が極端に上昇した場合であっても、区間水質値Q2が全区間において水質基準値を下回っていることから、この時間t4においても沈殿槽140の透視度或いは透明度は問題ないという適正な判断を行なうことが可能となる。かくして、水質検出センサ141による検出値のみによって、点検作業を行なうという事態が回避されるため合理的である。
【0052】
(第3のデータ処理態様)
第3のデータ処理態様は、pHセンサまたはORPセンサからなる前記の水質検出センサ141を水質情報検出機構として用い、また前記の流量計104,105、水位計111、放流ポンプ161、流量計162及び出力付水道メータのうちの少なくとも1つを水量情報検出機構として用いる際のデータ処理態様とされる。このとき、pHセンサまたはORPセンサによる検出値Aの経時変化をA1,A2,A3…とし、水処理槽101に関する水量(流入水量ないし流出水量)の検出値B(検出値が大きいほど水量が多いと規定する)の経時変化をB1,B2,B3…とした場合、検出値Aと規定値A’との差である|A−A’|が大きくなるほどに水処理状況が悪化すると判定することができ、水処理槽101における所定区間における区間水質値Q3を、{(1/|A1−A’|×B1)+(1/|A2−A’|×B2)+(1/|A3−A’|×B3)+…}/(B1+B2+B3…)として算出することが可能である。この場合の(1/|A−A’|×B)は必要に応じて予め濃度換算されてもよい。典型的には、この区間水質値Q3として1日あたりの平均的なpHまたはORPを算出し、当該算出値を管理することが可能である。ここでいう区間水質値Q3が本発明における「水処理領域における所定区間での区間水質値」に相当する。
【0053】
この際、水処理槽101における区間水質値Q3に基づいて、当該区間水質値Q3が予め規定された水質基準値を所定区間にわたって定常的に上回る場合には、水質検出センサ141の検出値が管理値よりも高い場合であっても、沈殿槽140のpH或いはORPは実際には悪化しておらず現段階での点検作業は必要ないと判断することが可能である。一方、当該区間水質値Q3が予め規定された水質基準値を所定区間にわたって定常的に下回る場合には、水質検出センサ141の検出値が管理値よりも低い場合であっても、沈殿槽140のpH或いはORPは実際には悪化しており速やかな点検作業が必要であると判断することが可能である。
【0054】
(第4のデータ処理態様)
第4のデータ処理態様は、前記の第1〜第3のデータ処理態様の各データ処理態様において算出した区間水質値に基づいて、清掃時期を判断するデータ処理態様とされる。この第4のデータ処理態様では、水処理槽101における水処理状況が定常的に悪化している場合には、汚泥貯留限界をこえて水質低下がみられるとして、区間水質値Q1〜Q3と予め設定された区間水質基準値(しきい値)との照合によって、水処理槽101内の清掃時期を判断することが可能である。
【0055】
具体的には、算出した前記の区間水質値Q1が清掃基準値Q1’を定常的に上回る場合には、水処理槽101内の清掃時期に達していると判定することができ、当該区間水質値Q1が清掃基準値Q1’を定常的に下回る場合には、水処理槽101内の清掃時期に達していないと判定することができる。また、算出した前記の区間水質値Q2が清掃基準値Q2’を定常的に上回る場合には、水処理槽101内の清掃時期に達していないと判定することができ、当該区間水質値Q2が清掃基準値Q2’を定常的に下回る場合には、水処理槽101内の清掃時期に達していると判定することができる。また、算出した前記の区間水質値Q3が清掃基準値Q3’を定常的に上回る場合には、水処理槽101内の清掃時期に達していると判定することができ、当該区間水質値Q3が清掃基準値Q3’を定常的に下回る場合には、水処理槽101内の清掃時期に達していないと判定することができる。
【0056】
(第5のデータ処理態様)
第5のデータ処理態様は、前記の第1〜第3のデータ処理態様の各データ処理態様において算出した区間水質値を加算して累積値を算出することによって、清掃時期を判断するデータ処理態様とされる。典型的には、当該累積値が予め設定された清掃時期基準値(しきい値)になったときを水処理槽101内の清掃時期とすることが可能である。また、前記の流量計104,105、水位計111、放流ポンプ161、流量計162及び出力付水道メータのうちの少なくとも1つの水量情報検出機構によって検出した水量値を加算した累積値に基づいて、水処理槽101内の清掃時期を判断することもできる。この第5のデータ処理態様の具体例に関しては、図7が参照される。この図7には、水質に関する検出値Aと水量に関する検出値Bとから算出された汚泥量の累積値に基づいて清掃時期を判断する過程を説明する図が示される。
【0057】
図7に示すように、水質に関する検出値Aと、水量に関する検出値Bに更に時間データを組み合わせることによって、例えば沈殿槽140における汚泥量の累積値が算出される。この累積値が予め設定された清掃時期基準値に達したとき、すなわち図7では時間t6のタイミングが清掃時期とされ、実際に清掃作業が実行される。清掃作業の実行後は、汚泥量の累積値がリセットされ、次回の清掃作業に向けて時間t7から新たな汚泥量が累積される。このようなデータ処理を採用することによって、清掃作業が実際に必要あるか否かに関わらず実施される定期的な清掃作業を、実際の水処理状況に見合った適正な清掃作業へと移行させることができるため、清掃作業の過不足を防止するのに効果的である。また、実態に即した清掃頻度となることから、水処理装置の施主の費用負担も適正なものとなる。
【0058】
以上のように、本実施の形態によれば、水処理槽101内の水処理領域の水に関する水質情報及び水量情報の両方の情報に基づいて、当該水処理領域における水処理状況に関する情報を導出することによって、水処理装置全体にわたる水処理状況を、維持管理業者が水処理装置側に常駐していなくとも監視装置170において適正に把握することが可能となる。これにより、維持管理業者が不必要に巡回点検を行なう必要がなくなり、また維持管理業者が不必要に巡回点検に基づいて清掃時期を判断する必要がなくなるとともに、以って水処理装置の適切な維持管理が可能となる。
また、本実施の形態によれば、処理後の水を処理槽101から放流している放流時の水質情報を少なくとも検出するため、処理後の水を処理槽から放流していない時の水質のみを検出するような従来型の検出システムに比して、放流時の真の水質を監視することが可能となった。
【0059】
なお、上記各実施の形態や変更例の記載に鑑みた場合、本発明では以下のような構成を採り得る。すなわち、本発明では、「被処理水の水処理領域を収容する処理槽本体を有する水処理装置であって、前記水処理領域の水に関する水質情報及び水量情報を検出する検出部と、前記検出部によって検出された水質情報及び水量情報の両方の情報を処理槽本体外の監視装置へと送信する送信部を有することを特徴とする水処理装置。」という構成が想到される。このような構成によれば、水処理領域の水に関する水質情報及び水量情報の両方の情報に基づいて、水処理領域における水処理状況に関する情報を導出することによって、水処理装置全体にわたる水処理状況を処理槽本体外の監視装置において適正に把握することが可能となる。
【0060】
〔他の実施の形態〕
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0061】
上記実施の形態では、流量計による流量検出値、水位計による水位検出値、放流ポンプの稼動時間の検出値に基づいて、水量情報を導出する場合について記載したが、本発明では、水量情報を導出するに際し、各部位の流量や水位を検出する単一或いは複数のセンサ類をはじめ、水の移送や流量調整を行なう機器の稼動時間を検出する構成を適宜採用することが可能である。
【0062】
また、上記実施の形態の水質監視システムに関し、本発明では、施主から管理委託を請けた維持管理業者が集中監視装置170においてデータ管理(データ監視)を行い、その結果に基づいて清掃業者に清掃依頼を行なう第1の形態や、施主から直接的に管理委託を請けた清掃業者が集中監視装置170においてデータ管理(データ監視)を行い、その結果に基づいて清掃作業を行なう第2の形態を採用することが可能である。第2の形態を採用した場合には、実際に清掃作業に至るまでの時間を短縮するのに有効とされる。
【0063】
また、上記実施の形態では、家庭用の水処理装置について記載したが、本発明は、家庭用の水処理装置のみならず、工場などに設置される各種の水処理装置に対しても同様に適用可能な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本実施の形態の水処理装置100及び集中監視装置170の概要を示す図である。
【図2】別実施の形態の水処理装置200の概要を示す図である。
【図3】本実施の形態のデータ処理システムの概要を示す図である。
【図4】別実施の形態の水処理装置300の概要を示す図である。
【図5】別実施の形態の水処理装置400の概要を示す図である。
【図6】水質に関する検出値Aと水量に関する検出値Bとから算出された区間水質値Q2に基づいて水処理状況を判断する過程を説明する図である。
【図7】水質に関する検出値Aと水量に関する検出値Bとから算出された汚泥量の累積値に基づいて清掃時期を判断する過程を説明する図である。
【符号の説明】
【0065】
100,200,300,400…水処理装置
101…処理槽本体
102…流入管
103…流出管
104…第1の流量計
104a,105a,111a,161a,162a…送信部
105…第2の流量計
110…夾雑物除去槽
111…水位計
120…嫌気濾床槽
121…嫌気濾床
122…移流ポンプ
130…接触ばっ気槽
131…接触材
132…ブロワ
140…沈澱槽
141…水質検出センサ
150…消毒槽
151…薬剤筒
160…放流ポンプ槽
161…放流ポンプ
162…流量計
170…集中監視装置
171…サーバ(データ受信器)
172…データ処理部
173…データ出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水の水処理領域を収容する処理槽本体を有する水処理装置と、前記水処理装置から離間して配設された監視装置を備えた水質監視システムであって、
前記水処理装置は、前記水処理領域の水に関する水質情報及び水量情報を検出する検出部と、前記検出部によって検出された水質情報及び水量情報の両方の情報を処理槽本体外へと送信する送信部を有し、
前記監視装置は、前記送信部から送信された情報を受信する受信部と、前記受信部において受信された前記水質情報及び水量情報の両方の情報に基づいて、前記水処理領域における水処理状況に関する情報を出力する情報処理部を有する構成であることを特徴とする水質監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水質監視システムであって、
前記検出部は、前記水質情報として前記水処理領域の水の水質を検出する第1の検出センサと、前記水量情報として前記水処理領域に関する流入水量及び流出水量の少なくとも一方を検出する第2の検出センサを有し、
前記情報処理部は、前記送信部から送信された前記第1及び第2の検出センサによる検出値に基づいて、前記水処理領域における所定区間での区間水質値を導出する構成であることを特徴とする水質監視システム。
【請求項3】
請求項2に記載の水質監視システムであって、
前記情報処理部は、導出した前記区間水質値に基づいて、前記処理槽本体の清掃時期に関する情報、前記水処理領域の水の水質低下に関する情報のうちの少なくとも一方を出力する構成であることを特徴とする水質監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−154060(P2009−154060A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333009(P2007−333009)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(390021348)フジクリーン工業株式会社 (71)
【Fターム(参考)】