説明

水道水取込用のスプリンクラーヘッド用分岐継手及びスプリンクラー設備

【課題】分岐管部内の停滞水の置き換え時間の迅速化、および圧力損失(等価管長)の低減を図る。
【解決手段】水平管部4と分岐管部5の交差部分の内部に設けられた隔壁7が分岐管部5の内部を上流側流路51と下流側流路52とに二分するとともに上流側流路51のスプリンクラーヘッド側端部51aと下流側流路52のスプリンクラーヘッド側端部52aとを連通する形に形成し、且つ、隔壁7の分岐管部5内から水平管部4内に向けて突出する突出量pは、水平管部4の内径d1の1/2以下かつ1/8以上に設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般住宅の上水道設備の配管を利用した住宅用のスプリンクラー設備において上水道設備から分岐した給水管とスプリンクラーヘッドとを接続する水道水取込用のスプリンクラーヘッド用分岐継手及びスプリンクラー設備に係り、より詳しくは、かかる分岐継手の分岐管部内に水が停滞するという死水発生の防止対策を講じた水道水取込用のスプリンクラーヘッド用分岐継手及びスプリンクラー設備に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅用のスプリンクラー設備は、上水道設備から分岐した給水管の途中にT型継手を接続し、このT型継手の分岐管部にスプリンクラーヘッドを接続している。
従来、かかる水道水取込用のスプリンクラーヘッド用分岐継手における死水防止対策としては種々のものが提案されており、枚挙にいとまがないが、就中、T型継手内に隔壁を設けて、平常時にT型継手の分岐管部やスプリンクラーヘッド内に強制的に水を流入させて死水の発生を防止するもの(特許文献1参照)、T型継手の分岐管部に接続されるスプリンクラーヘッドの導水口の内径を、放水口の内径よりも十分大きくすることで、前記導水口内で渦流を発生させて死水の発生を防止するもの(特許文献2参照)、あるいはT型継手の水平管部と分岐管部を有する垂直管路との交差部分に、垂直管路の内径よりも大きい径で円筒状にくり貫くことで段差を設けて、垂直管路に流入する水流の量を増やして死水の発生を防止するものがある(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭54−5399号公報
【特許文献2】特開平02−239878号公報
【特許文献3】特開2005−337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術のいずれにおいても、継手の分岐管部内の停滞水の置き換え(入れ替え)は可能であるが、停滞水の置き換え時間が長くかかり過ぎたり、置き換え時間が早い場合は圧力損失(等価管長)が大きくなるという問題がある。
とくに、上記特許文献1に記載のスプリンクラーヘッド接続金具のように、T型継手の水平管部内に隔壁が該水平管部の内径の半分以上を遮断する形で配設されたものでは、継手内の流水が隔壁にまともに衝突するので、流水抵抗はかなり大きくなって圧力損失が大きく、第2番目及びそれ以降のT型継手からのスプリンクラーヘッドへの水量が不十分となったり、あるいは給水管末端側の蛇口あるいはトイレタンク等への給水量はかなり小さくなる、という問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、上記のような、上水道設備から分岐した給水管の途中にスプリンクラーヘッドを接続する水道水取込用のスプリンクラーヘッド用分岐継手及びスプリンクラー設備において、分岐継手の内部形状を改良することにより分岐管部内の停滞水の置き換え時間の迅速化、および圧力損失(等価管長)の低減を図れる水道水取込用のスプリンクラーヘッド用分岐継手及びスプリンクラー設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスプリンクラーヘッド用分岐継手は、請求項1に記載のように、上水道設備から分岐した給水管とスプリンクラーヘッドとを接続する分岐継手であって、両端に前記給水管に接続される接続口を有する水平管部と、この水平管部の中間部位から分岐され前記スプリンクラーヘッドに接続される分岐管部とを有するT型の継手本体と、前記水平管部と前記分岐管部の交差部分の内部に設けられた隔壁とを備えた水道水取込用のスプリンクラーヘッド用分岐継手継手において、前記隔壁は前記分岐管部の内部を上流側流路と下流側流路とに二分するとともに前記上流側流路のスプリンクラーヘッド側端部と前記下流側流路のスプリンクラーヘッド側端部とを連通する形に形成し、且つ、前記水平管部の内部に臨む前記隔壁の水平管部側端部の、前記分岐管部内から前記水平管部内に向けて突出する突出量は、前記水平管部の内径の1/2以下かつ1/8以上に設定していることに特徴を有するものである。
【0007】
上記構成の水道水取込用のスプリンクラーヘッド用分岐継手によると、給水管から水平管部内を流れる水流の一部は隔壁の水平管部側端部と水平管部の内壁との間の空隙(水平管部の内径の1/2を越える空隙)を通過すると同時に、前記水流の余の一部は隔壁に衝突して分岐管部内の上流側流路をスプリンクラーヘッドに向かって流入し、この水流はスプリンクラーヘッドに到達後に進行方向を下流側流路に変えて水平管部内へ向かって戻る。したがって、常に分岐管部内の水は置き換えられ、死水発生を防止できる。
【0008】
とくに、水平管部の内部に臨む隔壁の水平管部側端部の、分岐管部内から水平管部内に向けて突出する突出量は、水平管部の内径の1/2以下かつ1/8以上に設定しているので、分岐管部内の水を給水管から水平管部内を流れる新しい水に置き換えるに要する時間が早く、また、水平管部内の水流が隔壁に衝突するときの流水抵抗は、水平管部の内部に臨む隔壁の水平管部側端部の、分岐管部内から水平管部内に向けて突出する突出量が水平管部の内径の1/2を越える場合に比べて小さくなり、それだけ圧力損失を低減できる。
後述する実施例においても明らかにされるように、停滞水の置き換え時間については、一般住宅等の流量6L/分で0.5〜1分以内に停滞水が置き換えられ、これにより本分岐継手の下流側のトイレや洗面所で1回水が流されるたび(トイレで1分程度、洗面で30秒程度)に分岐管部内の停滞水が置き換えられることになる。
等価管長(圧力損失)については、水道の供給圧が0.3MPa(水頭で30m)で、スプリンクラーヘッドの放水圧力が0.05MPa(5m)である場合、最大でも圧力損失(設定水量30L/分の時)3m以内に低減することができ、したがって、第2番目及びそれ以降の分岐継手からのスプリンクラーヘッドへの水量が不十分となったり、給水管末端側の蛇口あるいはトイレタンク等への給水量が減少するなどの問題を解消できる。
【0009】
請求項1記載の水道水取込用のスプリンクラーヘッド用分岐継手は、請求項2に記載のように、前記突出量は、前記水平管部の内径の1/4〜1/3に設定することが停滞水の置き換えをより速くするとともに圧力損失をより小さくするうえで好ましい。
【0010】
本発明のスプリンクラー設備は、請求項3に記載のように、上水道設備を有すると共にこの上水道設備から分岐した給水管とスプリンクラーヘッドとを水道水取込用のスプリンクラーヘッド用分岐継手で接続し、該スプリンクラーヘッド用分岐継手は、両端に前記給水管に接続される接続口を有する水平管部と、この水平管部の中間部位から分岐され前記スプリンクラーヘッドに接続される分岐管部とを有するT型の継手本体と、前記水平管部と前記分岐管部の交差部分の内部に設けられた隔壁とを備えている、スプリンクラー設備において、前記隔壁は前記分岐管部の内部を上流側流路と下流側流路とに二分するとともに前記上流側流路のスプリンクラーヘッド側端部と前記下流側流路のスプリンクラーヘッド側端部とを連通する形に形成し、且つ、前記水平管部の内部に臨む前記隔壁の水平管部側端部の、前記分岐管部内から前記水平管部内に向けて突出する突出量は、前記水平管部の内径の1/2以下かつ1/8以上に設定していることに特徴を有するものである。
【0011】
上記構成のスプリンクラー設備によると、上水道設備から分岐の給水管から水平管部内を流れる水流の一部は隔壁の水平管部側端部と水平管部の内壁との間の空隙(水平管部の内径の1/2を越える空隙)を通過すると同時に、前記水流の余の一部は隔壁に衝突して分岐管部内の上流側流路をスプリンクラーヘッドに向かって流入し、この水流はスプリンクラーヘッドに到達後に進行方向を下流側流路に変えて水平管部内へ向かって戻る。したがって、常に分岐管部内の水は置き換えられ、死水発生を防止できる。
【0012】
とくに、水平管部の内部に臨む隔壁の水平管部側端部の、分岐管部内から水平管部内に向けて突出する突出量は、水平管部の内径の1/2以下かつ1/8以上に設定しているので、分岐管部内の水を給水管から水平管部内を流れる新しい水に置き換えるに要する時間が早く、また、水平管部内の水流が隔壁に衝突するときの流水抵抗は、水平管部の内部に臨む隔壁の水平管部側端部の、分岐管部内から水平管部内に向けて突出する突出量が水平管部の内径の1/2を越える場合に比べて小さくなり、それだけ圧力損失を低減できる。
既に段落[0008]で述べたように、停滞水の置き換え時間については、一般住宅等の流量6L/分で0.5〜1分以内に停滞水が置き換えられ、これにより本分岐継手の下流側のトイレや洗面所で1回水が流されるたび(トイレで1分程度、洗面で30秒程度)に分岐管部内の停滞水が置き換えられることになる。
また、等価管長(圧力損失)については、水道の供給圧が0.3MPa(水頭で30m)で、スプリンクラーヘッドの放水圧力が0.05MPa(5m)である場合、最大でも圧力損失(設定水量30L/分の時)3m以内に低減することができ、したがって、第2番目及びそれ以降の分岐継手からのスプリンクラーヘッドへの水量が不十分となったり、給水管末端側の蛇口あるいはトイレタンク等への給水量が減少するなどの問題を解消できる。
【0013】
請求項3記載のスプリンクラー設備は、請求項4に記載のように、前記突出量は、前記水平管部の内径の1/4〜1/3に設定することが停滞水の置き換えをより速くするとともに圧力損失をより小さくするうえで好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水道水取込用のスプリンクラーヘッド用分岐継手及びスプリンクラー設備によれば、分岐管部内の停滞水の置き換えが速く行なえ、すなわち給水管末端側のトイレや洗面所で1回水が流されるたびに分岐管部内の停滞水が置き換えられ、しかも圧力損失(等価管長)を低減できるため第2番目及びそれ以降の分岐継手からのスプリンクラーヘッドへの水量が不十分となったり、給水管末端側の蛇口あるいはトイレタンク等への給水量の減少、つまり給水管末端側の蛇口あるいはトイレタンク等の使用時の流量の減少を防止できて有利である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態例を示す水道水取込用のスプリンクラーヘッド用分岐継手の正面図である。
【図2】同分岐継手の側面図である。
【図3】図2におけるA−A線断面図をスプリンクラーヘッド装着状態で示す。
【図4】図1におけるB−B線断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態例を示す水道水取込用のスプリンクラーヘッド用分岐継手の正面図である。
【図6】同分岐継手の側面図である。
【図7】本発明の第3実施形態例を示す水道水取込用のスプリンクラーヘッド用分岐継手の正面図である。
【図8】同分岐継手の側面図である。
【図9】実施例1〜5、比較例1〜4の分岐継手についての停滞水の置き換え時間、等価管長の試験結果を示す図表である。
【図10】実施例6〜10、比較例5〜8の分岐継手についての停滞水の置き換え時間、等価管長の試験結果を示す図表である。
【図11】実施例11〜15、比較例9〜12の分岐継手についての停滞水の置き換え時間、等価管長の試験結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好適な実施形態を図面に基づき説明する。
【0017】
本発明の第1実施形態例に係る水道水取込用のスプリンクラーヘッド用分岐継手(以下、単に「分岐継手」ともいう。)およびスプリンクラー設備について図1〜図4を参照して説明する。この実施形態の分岐継手1は、上水道設備から分岐した給水管2の途中に閉鎖型のスプリンクラーヘッド3を接続するためのものである。
分岐継手1は青銅や黄銅等金属製であって、図3、図4に示すように、水平管部4、及び水平管部4の中間部位から下向きに分岐させた比較的長い分岐管部5とを有するT型の継手本体6と、水平管部4と分岐管部5との交差部分の内部に後述する所定箇所に一体に設けられた隔壁7とを備える。水平管部4の両端には雌ねじを内周に有する接続口8,9を設け、一端の上流側の接続口8は上水道設備から分岐した給水管2aとねじ込み接続し、他端の下流側の接続口9は図外の第2番目及びそれ以降のT型継手やトイレタンクや蛇口等に続く給水管2bにねじ込み接続される。分岐管部5の端部には雌ねじ10を内周に有する接続口11を設け、この接続口11にスプリンクラーヘッド3をねじ込み接続する。
【0018】
図3において、上記隔壁7は、分岐管部5の管軸X上に配設して分岐管部5の内部を上流側流路51と下流側流路52とに二分するとともに上流側流路51のスプリンクラーヘッド側端部(出口側)51aと下流側流路52のスプリンクラーヘッド側端部(入口側)52aとをU字形状に連通する形に形成する。そして、水平管部4の内部に臨む隔壁7の水平管部側端部(突出端部)7aは分岐管部5内から水平管部4内へ向けて突出させるが、その突出量pは水平管部4の内径d1の1/2以下1/8以上の範囲に設定する。突出量pが水平管部4の内径d1の1/2を越えると給水管2内の上流側からの流水が隔壁7に衝突したときの流水抵抗が大きくなり、圧力損失が大きくなり、1/8未満では停滞水の置き換え時間が長くかかり過ぎる。停滞水の置き換えをより速くするとともに圧力損失をより小さくするうえで、より好ましい突出量pは水平管部4の内径d1の1/4〜1/3に設定することである。
【0019】
なお、隔壁7の突出端部7aの形状は、図2、図4のように円弧状に形成してあるが、水平管部4の水平管軸Yと平行、あるいは両角取り等に形成することもできる。
【0020】
図3において、閉鎖型のスプリンクラーヘッド3は、上端側に導水口12を、下端側に図外の感熱部やシール機構を持つ放水口13を有する周知のものである。このヘッド3は導水口12の外周に設けた雄ねじ12aを分岐継手1の分岐管部5の雌ねじ10にねじ込むことにより、ヘッド3の導水口12が分岐継手1内と連通するよう分岐管部5に接続される。
【0021】
次に、上記分岐継手1及びスプリンクラー設備の作動について説明する。
いま、給水管2bの末端に設置されている、例えば図外のトイレタンク等の水栓が開栓されると、給水管2(2a,2b)内にはトイレタンク等へ向かって水が流れる。このとき、給水管2aと給水管2bとの間に接続されている分岐継手1の水平管部4内を流れる水流W(図3参照)の一部は隔壁7の水平管部側端部(突出端部)7aと水平管部4の内壁との間の空隙(水平管部4の内径d1の1/2を越える空隙)を通過すると同時に、水流Wの余の一部は隔壁7に衝突して上流側流路51内に向かって流入し、この水流は分岐管部5内のスプリンクラーヘッド3に到達後に下流側流路52に向かう流れに変えて下流側流路52より水平管部4へ向かって戻り出る。したがって、常に分岐管部5内の水は給水管2aから水平管部4内を流れる新しい水に置き換えられ、分岐管部5内での水の停滞を防止できる。
分岐管部5内の隔壁7によりスプリンクラーヘッド3の接続位置近くにまで流水を送り込む形であるため、分岐管部5が少々長くても該分岐管部5内での水の滞留防止防止効果が十分に得られる。
【0022】
隔壁7の突出量pは水平管部4の内径d1の1/2以下かつ1/8以上に設定しているので、分岐管部5内の水を給水管2aから水平管部4内を流れる新しい水に置き換えるに要する時間が早い。すなわち、一般住宅等の流量6L/分で0.5〜1分以内に停滞水が置き換えられ、これにより本分岐継手1の下流側のトイレや洗面所で1回水が流されるたび(トイレで1分程度、洗面で30秒程度)に分岐管部5内の停滞水が置き換えられる。
また、水平管部4内の水流が隔壁7に衝突するときの流水抵抗は、隔壁7の突出量pが水平管部4の内径d1の1/2を越える場合に比べて小さくなり、それだけ圧力損失を低減できる。例えば、水道の供給圧が0.3MPa(水頭で30m)で、スプリンクラーヘッド3の放水圧力が0.05MPa(5m)である場合、最大でも圧力損失(設定水量30L/分の時)3m以内に低減することができ、したがって、図外の第2番目及びそれ以降の分岐継手からのスプリンクラーヘッドへの水量が不十分となったり、給水管2の末端側の図外の蛇口あるいはトイレタンク等への給水量が減少するのを防止できる。
【0023】
次に、本発明の第2実施形態例に係る水道水取込用のスプリンクラーヘッド用分岐継手およびスプリンクラー設備を図5、図6を参照にして説明する。
この実施形態の金属製の分岐継手1では、水平管部4の中間部位から下向きに分岐させた分岐管部5を第1実施形態の分岐継手1の分岐管部5の長さよりも短く形成したものである。死水発生を防ぐために停滞水の置き換えを速く行うとともに、圧力損失を低減するために、水平管部4と分岐管部5との交差部分の内部に隔壁7を一体に設け、この隔壁7は、分岐管部5の内部を上流側流路51と下流側流路52とに二分するとともに上流側流路51のスプリンクラーヘッド側端部(出口側)51aと下流側流路52のスプリンクラーヘッド側端部(入口側)52aとをU字形状に連通する形に形成する。そして、水平管部4の内部に臨む隔壁7の水平管部側端部(突出端部)7aの、分岐管部5内から水平管部4内に向けて突出する突出量pは、水平管部4の内径d1の1/2以下1/8以上の範囲、より好ましくは水平管部4の内径d1の1/3に設定することは第1実施形態例の場合と同様である。なお、この実施形態の場合における隔壁7の突出端部7aの形状は図6のように水平管部4の水平管軸Yと平行に形成している。
【0024】
次に、本発明の第3実施形態例に係る水道水取込用のスプリンクラーヘッド用分岐継手およびスプリンクラー設備を図7、図8を参照にして説明する。
この実施形態の分岐継手1は合成樹脂製であって、水平管部4の中間部位から下向きに分岐させた分岐管部5を、第2実施形態の場合と同様に第1実施形態の分岐継手1の分岐管部5の長さよりも短く形成したものである。また、水平管部4の両端には接続口8,9を設け、一端の上流側の接続口8には上水道設備から分岐した給水管2aが熱融着で接続され、他端の下流側の接続口9には図外のトイレタンクや蛇口等に続く給水管2bが熱融着で接続される。分岐管部5の端部に設けた接続口11にはアダプタ14を熱融着で接続し、このアダプタ14にスプリンクラーヘッド(図示せず)を取り付ける。
【0025】
この実施形態の分岐継手1においても、死水発生を防ぐために停滞水の置き換えを速く行うとともに、圧力損失を低減するために、水平管部4と分岐管部5との交差部分の内部に隔壁7を一体に設け、この隔壁7は、分岐管部5の内部を上流側流路51と下流側流路52とに二分するとともに上流側流路51のスプリンクラーヘッド側端部(出口側)51aと下流側流路52のスプリンクラーヘッド側端部(入口側)52aとをU字形状に連通する形に形成する。そして、水平管部4の内部に臨む隔壁7の水平管部側端部(突出端部)7aの、分岐管部5内から水平管部4内に向けて突出する突出量pは水平管部4の内径d1の1/2以下1/8以上の範囲、より好ましくは水平管部4の内径d1の1/4〜1/3に設定することは第1、2実施形態例の場合と同様である。なお、この実施形態の場合における隔壁7の突出端部7aの形状は図8のように水平管部4の水平管軸Yと平行に形成している。
【実施例1】
【0026】
図1〜図4に示す第1実施形態例の分岐継手1において、水平管部4の長さL1(図1参照)は64mm、水平管部4の内径d1(図3参照)を24.2mm、分岐管部5の長さL2(図1参照)は73.5mm、分岐管部5の内径d2(図3参照)を22mm、隔壁7の長さL3(図3参照)は63.4+p(隔壁7の突出量)mm、隔壁7の突出量pは内径d1の1/2(=12.1mm)とした。
【実施例2】
【0027】
隔壁7の突出量pを内径d1の1/3(=8.1mm)とした以外は実施例1の場合と同じである。
【実施例3】
【0028】
隔壁7の突出量pを内径d1の1/4(=6mm)とした以外は実施例1の場合と同じである。
【実施例4】
【0029】
隔壁7の突出量pを内径d1の1/6(=4mm)とした以外は実施例1の場合と同じである。
【実施例5】
【0030】
隔壁7の突出量pを内径d1の1/8(=3mm)とした以外は実施例1の場合と同じである。
【比較例1】
【0031】
隔壁7の突出量pを内径d1の3/4(=18.2mm)とした以外は実施例1の場合と同じである。
【比較例2】
【0032】
隔壁7の突出量pを内径d1の3/5(=14.5mm)とした以外は実施例1の場合と同じである。
【比較例3】
【0033】
隔壁7の突出量pを内径d1の1/10(=2.4mm)とした以外は実施例1の場合と同じである。
【比較例4】
【0034】
隔壁7の突出量pを内径d1の1/12(=2mm)とした以外は実施例1の場合と同じである。
【0035】
実施例1〜5、比較例1〜4の各分岐継手についての流量を6L/分とした時の停滞水の置き換え時間、および等価管長(設定水量30L/分の時)を比較した。なお、実施例1〜5、比較例1〜4の各分岐継手についての流量を6L/分とした時の停滞水の置き換え時間の測定法は、実施例1〜5、比較例1〜4の各分岐継手と同じ分岐継手を内部透視可能なアクリル樹脂で作成し、所定の流量6L/分を流した時の各分岐継手内の停滞部に入れた色水(例えば、赤色水)の置き換え時間を測定した。
【0036】
この比較結果は図9の図表に示すとおりである。
停滞水の置き換え時間については、本分岐継手1の下流側のトイレや洗面所で1回水が流されるたびに分岐管部5内の停滞水が置き換わることが望ましい。一般住宅等において、トイレや洗面での標準流量は6L/分で水が流される時間はトイレで1分、洗面で30秒程度であることからすれば、前記流量で0.5〜1分以内に停滞水が置き換えられれば、本分岐継手1の機能として十分な性能を持っていると言うことができる。
等価管長(圧力損失)については、本分岐継手1は水道直結式のスプリンクラー設備に使われるが、水道の供給圧は高くて0.3MPa(水頭で30m)である。一方、スプリンクラーヘッド3は0.05MPa(5m)の放水圧力が必要である。すなわち、メーター以降の圧力損失(設定水量30L/分の時)は最大でも25mに抑えなくてはならないことになる。したがって、配管設計上、本分岐継手1の圧力損失は低ければ低いほど良いということになるが、本分岐継手1としては圧力損失(設定水量30L/分の時)は最大でも3m以内が望ましい。(但し、本分岐継手1を3個まで直列につなげる場合が考えられるが、この場合は3×3=9mとなる。)
図9の図表から、比較例1、2では停滞水の置き換え時間が1/4分で早いが、等価管長(圧力損失)が5m、6mであって非常に大きい。比較例3、4では等価管長が0.1mでかなり小さいが、停滞水の置き換え時間が2分、5分であってかなり遅い。
これに対し、実施例1、4、5は停滞水の置き換え時間が比較例3、4のそれよりも早く、かつ圧力損失が比較例1、2のそれよりも小さく、流量6L/分で1分以内に停滞水が置き換えられるとともに、圧力損失(設定水量30L/分の時)は3m以内に抑えられる。とくに、実施例2、3は流量6L/分で1/3分以内に停滞水が置き換えられるとともに、圧力損失(設定水量30L/分の時)は1.2m以内にまで抑えられて極めて有利である。
【実施例6】
【0037】
図5〜図6に示す第2実施形態例の分岐継手1において、水平管部4の長さL1(図5参照)は64mm、水平管部4の内径d1(図5参照)を24.2mm、分岐管部5の長さL2(図5参照)は22.5mm、分岐管部5の内径d2(図5参照)を22mm、隔壁7の長さL3(図5参照)は7+pmm、隔壁7の突出量p(図5参照)は内径d1の1/2(=12.1mm)とした。
【実施例7】
【0038】
隔壁7の突出量pを内径d1の1/3(=8.1mm)とした以外は実施例6の場合と同じである。
【実施例8】
【0039】
隔壁7の突出量pを内径d1の1/4(=6mm)とした以外は実施例6の場合と同じである。
【実施例9】
【0040】
隔壁7の突出量pを内径d1の1/6(=4mm)とした以外は実施例6の場合と同じである。
【実施例10】
【0041】
隔壁7の突出量pを内径d1の1/8(=3mm)とした以外は実施例6の場合と同じである。
【比較例5】
【0042】
隔壁7の突出量pを内径d1の3/4(=18.2mm)とした以外は実施例6の場合と同じである。
【比較例6】
【0043】
隔壁7の突出量pを内径d1の3/5(=14.5mm)とした以外は実施例6の場合と同じである。
【比較例7】
【0044】
隔壁7の突出量pを内径d1の1/10(=2.4mm)とした以外は実施例6の場合と同じである。
【比較例8】
【0045】
隔壁7の突出量pを内径d1の1/12(=2mm)とした以外は実施例6の場合と同じである。
【0046】
実施例6〜10、比較例5〜8の分岐継手についての流量を6L/分とした時の停滞水の置き換え時間、および等価管長(設定水量30L/分の時)を比較した。なお、実施例6〜10、比較例5〜8の各分岐継手についての流量を6L/分とした時の停滞水の置き換え時間の測定法は、実施例6〜10、比較例5〜8の各分岐継手と同じ分岐継手を内部透視可能なアクリル樹脂で作成し、所定の流量6L/分を流した時の各分岐継手内の停滞部に入れた色水(例えば、赤色水)の置き換え時間を測定した。
この比較結果は図10の図表に示すとおりである。
比較例5、6では停滞水の置き換え時間が1/4分で早いが、等価管長(圧力損失)が6m、4mであって非常に大きい。比較例7、8では等価管長が0.1mでかなり小さいが、停滞水の置き換え時間が1分、5分であってかなり遅い。
これに対し、実施例6、9、10は停滞水の置き換え時間が比較例7、8のそれよりも早く、かつ圧力損失が比較例5、6のそれよりも小さく、流量6L/分で1/3分以内に停滞水が置き換えられるとともに、圧力損失(設定水量30L/分の時)は1m以内に抑えられる。とくに、実施例7、8は流量6L/分で1/4分以内に停滞水が置き換えられるとともに、圧力損失(設定水量30L/分の時)は0.5m以内に抑えられて極めて有利である。
【実施例11】
【0047】
図7〜図8に示す第3実施形態例の分岐継手1において、水平管部4の長さL1(図7参照)は33mm、水平管部4の内径d1(図7参照)を18mm、分岐管部5の長さL2(図7参照)は18mm、分岐管部5の内径d2(図7参照)を13mm、隔壁7の長さL3(図7参照)は5+pmm、隔壁7の突出量p(図7参照)は内径d1の1/2(=9mm)とした。
【実施例12】
【0048】
隔壁7の突出量pを内径d1の1/3(=6mm)とした以外は実施例11の場合と同じである。
【実施例13】
【0049】
隔壁7の突出量pを内径d1の1/4(=4.5mm)とした以外は実施例11の場合と同じである。
【実施例14】
【0050】
隔壁7の突出量pを内径d1の1/6(=3mm)とした以外は実施例11の場合と同じである。
【実施例15】
【0051】
隔壁7の突出量pを内径d1の1/8(=2.3mm)とした以外は実施例11の場合と同じである。
【比較例9】
【0052】
隔壁7の突出量pを内径d1の3/4(=13.5mm)とした以外は実施例11の場合と同じである。
【比較例10】
【0053】
隔壁7の突出量pを内径d1の3/5(=10.8mm)とした以外は実施例11の場合と同じである。
【比較例11】
【0054】
隔壁7の突出量pを内径d1の1/10(=1.8mm)とした以外は実施例11の場合と同じである。
【比較例12】
【0055】
隔壁7の突出量pを内径d1の1/12(=1.5mm)とした以外は実施例11の場合と同じである。
【0056】
実施例11〜15、比較例9〜12の分岐継手についての流量6L/分とした時の停滞水の置き換え時間、および等価管長(設定流量30L/分の時)を比較した。なお、実施例11〜15、比較例9〜12の各分岐継手についての流量を6L/分とした時の停滞水の置き換え時間の測定法は、実施例11〜15、比較例9〜12の各分岐継手と同じ分岐継手を内部透視可能なアクリル樹脂で作成し、所定の流量6L/分を流した時の各分岐継手内の停滞部に入れた色水(例えば、赤色水)の置き換え時間を測定した。
この比較結果は図11の図表に示すとおりである。
比較例9、10では停滞水の置き換え時間が1/4分で早いが、等価管長(圧力損失)が8m、5mであって非常に大きい。比較例11、12等価管長が0.1mでかなり小さいが、停滞水の置き換え時間が3分であってかなり遅い。
これに対し、実施例11、14、15は停滞水の置き換え時間が比較例11、12のそれよりも早く、かつ圧力損失が比較例9、10のそれよりも小さく、流量6L/分で1/3分以内に停滞水が置き換えられるとともに、圧力損失(設定水量30L/分の時)は2m以内に抑えられる。とくに、実施例12、13は流量6L/分で1/4分以内に停滞水が置き換えられるとともに、圧力損失(設定水量30L/分の時)は1m以内に抑えられて有利である。
【符号の説明】
【0057】
1 分岐継手
2、2a、2b 給水管
3 スプリンクラーヘッド
4 水平管部
5 分岐管部
6 継手本体
7 隔壁
7a 隔壁の水平管部側端部(突出端部)
8,9 接続口
51 上流側流路
51a 上流側流路のスプリンクラーヘッド側端部
52 下流側流路
52a 下流側流路のスプリンクラーヘッド側端部
d1 水平管部の内径
p 突出量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上水道設備から分岐した給水管とスプリンクラーヘッドとを接続する分岐継手であって、両端に前記給水管に接続される接続口を有する水平管部と、この水平管部の中間部位から分岐され前記スプリンクラーヘッドに接続される分岐管部とを有するT型の継手本体と、前記水平管部と前記分岐管部の交差部分の内部に設けられた隔壁とを備えた水道水取込用のスプリンクラーヘッド用分岐継手において、
前記隔壁は前記分岐管部の内部を上流側流路と下流側流路とに二分するとともに前記上流側流路のスプリンクラーヘッド側端部と前記下流側流路のスプリンクラーヘッド側端部とを連通する形に形成し、且つ、前記水平管部の内部に臨む前記隔壁の水平管部側端部の、前記分岐管部内から前記水平管部内に向けて突出する突出量は、前記水平管部の内径の1/2以下かつ1/8以上に設定していることを特徴とする、水道水取込用のスプリンクラーヘッド用分岐継手。
【請求項2】
前記突出量は、前記水平管部の内径の1/4〜1/3に設定している、請求項1記載の水道水取込用のスプリンクラーヘッド用分岐継手。
【請求項3】
上水道設備を有し、この水道設備から分岐した給水管とスプリンクラーヘッドとを水道水取込用のスプリンクラーヘッド用分岐継手で接続し、該スプリンクラーヘッド用分岐継手は、両端に前記給水管に接続される接続口を有する水平管部と、この水平管部の中間部位から分岐され前記スプリンクラーヘッドに接続される分岐管部とを有するT型の継手本体と、前記水平管部と前記分岐管部の交差部分の内部に設けられた隔壁とを備えている、スプリンクラー設備において、
前記隔壁は前記分岐管部の内部を上流側流路と下流側流路とに二分するとともに前記上流側流路のスプリンクラーヘッド側端部と前記下流側流路のスプリンクラーヘッド側端部とを連通する形に形成し、且つ、前記水平管部の内部に臨む前記隔壁の水平管部側端部の、前記分岐管部内から前記水平管部内に向けて突出する突出量は、前記水平管部の内径の1/2以下かつ1/8以上に設定していることを特徴とする、スプリンクラー設備。
【請求項4】
前記突出量は、前記水平管部の内径の1/4〜1/3に設定している、請求項3記載のスプリンクラー設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−30865(P2011−30865A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181239(P2009−181239)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000231121)JFE継手株式会社 (140)
【Fターム(参考)】