説明

水銀放出の低減のためのシステムおよび方法

本明細書中に記載されるのは、水銀を含む煙道ガス中の水銀の量を分子ハロゲンの利用を通じて低減させる方法である。また、前記方法を実行するための化学的プロセスと、前記化学的プロセスを実行するためのシステムが記載される。本明細書中、煙道ガスからの水銀放出を低減する方法について記載する。一般的に、前記方法は、比較的不活性のハロゲン化物塩を提供するステップと、前記ハロゲン化物塩を酸ハロゲン化物に変換させるステップ、前記酸ハロゲン化物を分子ハロゲンに変換させるステップであって、前記分子ハロゲンは、プロセスストリーム中へ注入可能である、ステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮出願第61/176,564号(出願日:2009年5月8日)に対する優先権による恩恵を主張する。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
【背景技術】
【0002】
例えば工業燃焼プロセス時において水銀を含む材料が燃えた場合、前記水銀は蒸発し、大気中に放出されることが多い。最近の推計によれば、米国における発電所からだけでも、約50トンの水銀が毎年大気中に放出されている。燃焼プロセス時において、蒸発した多様な形態の水銀が形成され得る。水銀含有材料の燃焼に起因して、煙道中に蒸発した元素水銀(Hgo)および酸化水銀が発生することが多い。元素水銀煙の大気中における存続期間は数年間であり、元素水銀煙は、地球上を移動した後、最終的には大気中において酸化し、地面上および水中に堆積する。これとは対照的に、酸化水銀は大気中における存続期間が比較的短く、酸化水銀は、雨と共に凝結して水溶液となるか、または、植物上に堆積した後、水溶液中に洗い流される。
【0003】
一旦水銀が最終的に水中に堆積し、浅い湖および海の生物相内に沈降すると、硫黄還元微生物により、水銀は、極めて毒性の高い生物濃縮性の有機的形態の水銀であるメチル水銀へと変化し得る。メチル水銀は、魚の体内に蓄積する傾向があり、魚を食べるヒトの体内にも蓄積し得、そのため、多様な健康問題(例えば、学習障害、心疾患、自己免疫疾患)に繋がる可能性があり、また、生殖関連問題を悪化させる可能性もある。メチル水銀の毒性は、多様な要素(例えば、反応性が高い、生体内における半減期が長い)と関連しており、メチル水銀の半減期は、魚の体内中においては72日間にもおよび、ヒト体内では50日間である。今日までの水銀に対する規制の場合、煙突(形態は問わない)からの全体的な気相水銀放出と、排水中の水銀総濃度とに着目している。
【0004】
工業プロセスの煙道ガスからの水銀放出を軽減する方法としては、多様な方法がある。これらの方法の多くにおいては、煙道ガスからの元素水銀の捕捉は容易ではないため、先ず水銀を酸化させてHgClを形成する。従来の汚染防止装置(例えば、湿式スクラッバおよび選択接触還元(SCR)ユニット)は、SOを捕捉し、NOを破壊した後、煙道ガス煙突から放出させるように設計されており、水銀の酸化および捕捉も支援する。しかし、酸化水銀の場合、捕捉できたとしても、少なくとも部分的に汚染防止装置から再放出される可能性があり、その後煙道ガス中へと戻り、煙突から放出される。
【0005】
煙道ガスからの水銀放出を軽減するための他の方法においては、添加剤が利用される。例えば石炭燃焼発電所からの水銀放出を低減するための1つの方法においては、燃やす前の石炭上に臭化物塩を直接配置する。その後、前記臭化物塩は高温において蒸発して、炉内における石炭燃焼が進むにつれ、より強力な酸化剤を形成する。しかし、このように石炭上に直接臭化物塩を付加した場合、ボイラーチューブの消耗や、水銀の酸化を必要とする煙道ガス内の場所に到達する前の通り道である炉、対流経路および配管内の他の構成部品の腐食につながり得る。加えて、水銀酸化のために臭素ガスが必要となるポイントに到着する前に、望ましい臭素ガスのうち一部が、副反応において消費される可能性もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって、工業プロセスから発生する水銀放出を低減するための、向上した方法が必要とされている。この必要性および他の必要性は、本発明によって満たされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書中、煙道ガスからの水銀放出を低減する方法について記載する。一般的に、前記方法は、比較的不活性のハロゲン化物塩を提供するステップと、前記ハロゲン化物塩を酸ハロゲン化物に変換させるステップ、前記酸ハロゲン化物を分子ハロゲンに変換させるステップであって、前記分子ハロゲンは、プロセスストリーム中へ注入可能である、ステップとを含む。その後、前記煙道ガス中の水銀を前記分子ハロゲンによって酸化させ、前記プロセスストリームから除去することで、前記水銀が大気内へ放出されるのを回避する。また、前記開示の方法を実行するためのシステムについても記載する。また、臭素を作製するための、向上した方法についても記載する。前記方法において、臭化物塩から臭化水素酸を形成し、その後、前記臭化水素酸を臭素へと酸化させる。
【0008】
本発明の利点は、以下の説明において部分的に説明され、部分的には本記載から明かであり、あるいは、以下に記載する局面の実行により学習され得る。以下に説明する利点は、特に添付の特許請求の範囲中に記載されている要素および組み合わせにより、実現および達成される。上記の一般的記載および以下の詳細な説明はどちらともひとえに例示的かつ説明的なものであり、制限的なものではないことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】例1中に記載のプロセス条件下における、CaBrからBrへの変換(%)のグラフである。
【図2】開示のシステムの一例である。
【図3】開示のシステムの別の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による化合物、組成、複合体、物品、装置、方法または利用について開示および記載する前に、以下に説明する局面は、特定の化合物、組成、複合体、物品、装置、方法または利用に限定されない点が理解されるべきである。なぜならば、このような化合物、組成、複合体、物品、装置、方法または利用は変化するからである。また、本明細書中用いられる用語はひとえに特定の局面を説明する目的のためだけに用いられるものであり、限定的なものを意図していない点も理解されるべきである。
【0011】
本明細書および以下の特許請求の範囲において、複数の用語について言及するが、これらの用語は、以下の意味を持つものとして定義される。
【0012】
本明細書全体において、文脈から明らかに違う場合を除いて、「comprise」またはその変化形である「comprises」または「comprising」は、記載の整数またはステップあるいは整数またはステップの群を含むものを暗示しているものとして理解されるべきであるが、他の任意の整数またはステップあるいは整数またはステップの群を排除するものではない。
【0013】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる単数形である「a」、「an」および「the」は、文脈から明らかに違うと分かる場合を除いて、複数も言及しているものとする点に留意されたい。従って、例えば、「分子ハロゲン」について言及した場合、2つ以上の当該分子ハロゲンの混合物も含むものとするといった具合である。
【0014】
「任意選択の」または「必要に応じて」とは、後述する事象または状況が発生する場合も発生しない場合もあり得、また、当該事象または状況が発生する場合および当該事象または状況が発生しない場合が当該記載に含まれることを意味する。
【0015】
本明細書中、範囲を表す場合、「約」の後に続く特定の値からかつ/または「約」の後に続く別の特定の値までによって表す。このような範囲を表す場合、別の局面は、前記1つの特定の値からかつ/または他方の特定の値への範囲を含む。同様に、値を近似によって表す場合、「約」という先行詞を用いることにより、前記特定の値が別の局面を形成することが理解される。これらの範囲それぞれの終点は、他方の終点に相対しかつ他方の終点から独立している点において重要であることがさらに理解される。
【0016】
開示されるのは、化合物、組成および成分であり、これらの化合物、組成および成分は、前記開示の方法および組成のために利用可能であり、前記開示の方法および組成と共に利用可能であり前記開示の方法および組成の調製において利用可能であり、あるいは前記開示の方法および組成の生成物である。上記および他の材料が本明細書中において開示され、これらの材料の組み合わせ、サブセット相互作用、群などが開示されるが、これらの化合物の個々の組み合わせおよび集合的組み合わせならびにその置換物についてのそれぞれ言及は明示的に開示されない場合があり、それぞれについて本明細書中具体的に企図および記載されることが理解されるべきである。例えば、複数の異なるポリマーおよび薬剤が開示および議論される場合、前記ポリマーおよび薬剤の各それぞれの組み合わせおよび置換が具体的に企図される(ただし、そのような組み合わせおよび置換と逆の記載が具体的に述べられている場合は除く)。従って、ある種類の分子A、BおよびCが開示されかつある種類の分子D、EおよびFならびにA〜Dの分子組み合わせが開示される場合、各それぞれが個別に言及されていない場合であっても、各それぞれが個別かつ集合的に企図される。従って、本例において、組み合わせA−E、A−F、B−D、B−E、B−F、C−D、C−EおよびC−Fはそれぞれ具体的に企図され、A、BおよびC、D、E、およびFならびにA−Dの例示的組み合わせの開示内容から開示されているものとみなされるべきである。同様に、これらの任意のサブセットまたは組み合わせも具体的に企図および開示される。よって、例えば、A−E、B−FおよびC−Eのサブグループが具体的に企図され、A、B、およびC、D、E、およびFならびにA−Dの例示的組み合わせの開示内容から開示されているものとみなされるべきである。この考え方は、本開示の全局面(例を非限定的に挙げると、開示の組成の作製方法および利用方法におけるステップ)に適用される。従って、実行可能な多様なさらなるステップがある場合、これらのさらなるステップはそれぞれ、開示の方法の任意の特定の局面または局面の組み合わせと共に実行可能であり、このような組み合わせがそれぞれ具体的に企図され、開示されているものとみなされるべきであることが理解されるべきである。
【0017】
本明細書中用いられる「注入する」とは、分子ハロゲンを煙道ガスに付加するステップを指す。典型的には、前記分子ハロゲンを注入するステップは、前記煙道ガスそのものとは別個の(例えば、注入システムとは別個の)供給源から前記分子ハロゲンを前記煙道ガス内へと導入するステップを含む。
【0018】
本明細書中用いられる「煙道ガス」とは、工業プロセスから発生する排出ガスを指し、排出ガスの発生元となるプロセスまたはさらなる別の関連プロセス(例えば、熱生成のためのプロセス)と関連して用いられるガスも、排ガスであるガスも含む。このような排ガスは、工業プロセスからの不要な排出ガスを搬送するためのダクトを介して大気中に出ていく。前記煙道ガスは、任意の工業プロセスから発生し得、ここで任意の形態の水銀が前記煙道ガス中に存在する。このような工業プロセスの例を挙げると、発電プロセス(例えば、燃焼プロセス)、金属溶錬プロセス(例えば、金溶錬)、塩素アルカリ生成プロセスなどがある。
【0019】
本明細書中もちいられる「分子ハロゲン」とは、分子形態の任意のハロゲン(すなわち、2個以上の原子を含む種)またはそこから解離された生成物である。分子ハロゲンの例を非限定的に挙げると、Br、Cl、F、およびIがある。前記分子ハロゲンから解離された生成物は、前記分子ハロゲンが煙道ガスに注入された際に前記分子ハロゲンから形成される生成物(例えば、前記分子ハロゲンの解離から発生したイオンまたは他の生成物)を含む。例えば、Brは、特定の煙道ガス条件において、解離してBrラジカル、Brアニオン、Brカチオンまあはこれらの組み合わせを形成する。このような解離生成物は典型的には、反応性が極めて高い場合が多い。
【0020】
本明細書中用いられる「ハロゲン化物塩」とは、ハロゲン化物の任意の塩である(X−1、Xは、Br、Cl、FまたはIである)。前記ハロゲン化物塩のカチオン部は、任意の適切なカチオンであり得る(例を非限定的に挙げると、群IおよびIIの元素(例えば、Li、Na、K、Ca、またはMg)のカチオン、遷移金属元素(例えば、群VIIIの元素(例えば、Fen+、nは1、2または3である)の特定のカチオン)。
【0021】
本明細書中用いられる「水銀」とは、任意の形態の水銀(例を非限定的に挙げると、全ての酸化形態のHgおよび分子Hg)である。
【0022】
本発明が提供するシステムおよび方法においては、比較的不活性のハロゲン化物塩を分子ハロゲンに変換した後、工業プロセスにおいて必要な時点において直接注入して、水銀を酸化させ、その後、プロセスストリームからの水銀放出を低減する。本明細書中開示される方法によれば、低コストで発送および取り扱いが簡便なハロゲン化物塩を用いて、分子ハロゲンを形成し、プロセスストリームにおいて必要とされる特定の所望の場所に直接分子ハロゲンを注入することができる。
【0023】
本発明の実施において、一局面において、注入システムを通過してきた適切なハロゲン化物塩から酸ハロゲン化物をin situ形成する。例えば前記ハロゲン化物塩を蒸気に露出することで前記酸ハロゲン化物を形成することにより、多様なハロゲン化物塩を、適切な酸ハロゲン化物に変換させることができる。固形形態のハロゲン化物塩を用いた場合、固形形態のハロゲン化物塩は通常の大気条件下において比較的不活性であるため、特に有用である。固形ハロゲン化物塩は、工業プロセスの現場(例えば、工場)に安全に輸送および保存することが可能である。
【0024】
一局面において、前記分子ハロゲンとして臭素が望ましい場合、適切なハロゲン化物塩前駆物質は、NaBr、KBr、MgBr、CaBrおよびこれらの組み合わせを含む。水(好適には、蒸気形態の水)を用いて、これらの例示的なハロゲン化物塩のうち任意のものをBrに変換させることができる。このようなハロゲン化物塩は、広範に市販されている。一局面において、CaBrが前記ハロゲン化物塩として用いられる。CaBrは、多様な市販業者(例えば、Chemtura Corporation(199BensonRoad、Middlebury、コネティカット、06749USA)、Dead Sea Bromine Company Ltd.(12Kroitzerst、Beer Sheva84101イスラエル)、Morre−Tee Industries Inc.(One Gary Road、Union、ニュージャージー07083USA)、およびICL Industrial Proダクトs(ICL−IP)(622Emerson Road、St.Louis、ミズーリ、63141USA)から入手可能である。
【0025】
前記ハロゲン化物塩を工業プロセスの現場に輸送した後、保存することもできるし、あるいは送達後すぐに利用することもできる。前記ハロゲン化物塩から前記酸ハロゲン化物を形成するための多様な方法が存在する。一般的に、当該分野において公知の任意の方法を用いて、前記酸ハロゲン化物を形成することができる。一局面において、前記ハロゲン化物塩を蒸気と反応させて、前記酸ハロゲン化物を副生成物と共に得る。前記副生成物は、前記酸ハロゲン化物から分離してもよいし、あるいは、別の容量中において工業プロセスにおいて用いてもよいし、あるいは、単純に前記分子ハロゲンと共にプロセスストリーム中に注入してもよい(ただし、副生成物が前記プロセスに対して有害な影響を一切与えない場合)。一般的に、前記副生成物は無害な塩および水である。
【0026】
さらなる局面において、臭化水素酸(HBr)は、上述したように、以下の反応スキームに示すように前記ハロゲン化物塩を蒸気と反応させることにより、適切なハロゲン化物塩から形成される。
Br+HO→金属酸化物+HBr、
ここで、nは1または2であり、Mは、Na、K、MgまたはCaである。上記反応の一例として、以下の反応スキームによる、NaBrとHOとの反応がある。
2NaBr+HO→NaO+2HBr
【0027】
別の特定の局面において、以下の反応スキームにより、HBrはCaBrから形成される。
CaBr+HO→CaO+2HBr
【0028】
複数のプロトコル(例えば、SugieおよびKimuraに付与された米国特許第6,630,119号中に開示されている方法)に従って、CaBrを用いて、HBrを形成することができる。本明細書中、同文献全体のHBr生成方法についての教示内容を参考のため援用する。一般的に、前記CaBrは、反応室中において空気または別の適切な媒体中において分散状態または懸濁状態で存在する。水(例えば、蒸気)を反応炉中に導入すると、水はCaBrと反応してHBrを形成する。本例の実施において、前記反応は典型的には、(例えば、前記反応媒体または反応室を約650℃〜1000℃の温度に加熱することにより)高温において実施される。前記反応においては、約700℃〜約800℃の温度が好適である。好適には、水を反応室内に導入する際、CaBrと共にスラリーを形成する液体状で導入するのでははなく、蒸気が空気と混合した様態で導入するとよい。
【0029】
酸ハロゲン化物の形成後、前記酸ハロゲン化物を前記分子ハロゲンに変換させることができる。酸ハロゲン化物から分子ハロゲンを形成するための多様な方法が存在する。一般的に、当該分野において公知の任意の適切な方法が利用可能である。一局面において、前記分子ハロゲンは、酸ハロゲン化物からの化学的変換(例えば、酸素への酸ハロゲン化物の露出)により、形成される。触媒(例えば、酸化還元触媒)の利用により、酸ハロゲン化物から分子ハロゲンへの変換を向上させることができる。適切な触媒の一例として、金属酸化物触媒がある。いくつかの局面において、前記金属酸化物触媒は、an不活性の支持材料中に存在し得る。
【0030】
一局面において、酸ハロゲン化物がHBrである場合、多様な金属酸化物触媒(例えば、Louvarらに付与された米国特許第3,346,340号中に開示されている触媒のうち任意のもの)を用いて酸素の存在下において、前記HBrをBrに変換させることができる。本明細書中、同文献全体のHBrからのBrの形成についての教示内容を参考のため援用する。Brを得るために、Louvarらに付与された米国特許第3,346,340号中に開示されているプロセスを本発明と組み合わせて用いることができる。HBrからのBrの形成に適した多様な金属酸化物触媒のうち、特定の例を挙げると、銅、セリウム、ニッケル、コバルトおよびマンガンの酸化物がある。一局面において、本発明の実施時において、CuOを含む触媒床がHBrと反応して先ずCuBrを形成した後、CuBrが反応してBrを形成することができる。
【0031】
この局面において、HBrからのBrの形成は典型的には高温(例えば、約250℃〜約600℃)において実行されるが、約300℃〜約450℃の温度が好適である。本反応を実施するための例示的プロセスにおいて、臭化物塩(例えば、CaBr)と蒸気との反応から発生した排気(すなわち、HBrを含む排気)を先ず冷却した後、金属酸化物触媒(例えば、CuO)を含む触媒床へと誘導する。前記金属酸化物触媒は、前記HBrをBrへと変換させる。その後、前記Brを凝結させてもよいし、あるいは、現場に保存してもよいし、あるいは、形成後すぐに工業プロセスストリーム中に直接注入してもよい。特定の局面において、蒸気を用いてCaBrをHBrへと変換させるた後、、CuO触媒分散を用いるかまたは触媒床上において前記HBrをBrへと変換させる。このような例示的なプロセスは、Brを得るための有効な手段であり得、Br収率はプロセス条件に応じて約30%〜約90%以上である。図1を参照して、例えば、プロセス温度に応じてCaBrからBrを多様な収率で形成することができる(例えば、約1150°F(621℃)における収率は少なくとも35%、約1250°F(676℃)における収率は少なくとも65%、約1275°F(690.5℃)における収率は少なくとも65%、約1350°F(732℃)における収率は少なくとも85%)。上記のプロセス温度は、HBr生成プロセスにおいて用いられる反応炉の温度を主に指す。明かなように、反応条件に応じてBrを多様な収率で得ることができるため、形成されてプロセスストリーム内に注入されるBrの量は、必要に応じて調整可能である。
【0032】
1つの特定の局面において、臭素の生成方法は、臭化物塩から臭化水素酸を形成するステップと、前記臭化水素酸のうち少なくとも一部を臭素へと酸化させるのに十分な条件下において、前記臭化水素酸を酸素および金属酸化物触媒と接触させるステップとを含む。前記臭化水素酸を形成するステップは、前記臭化物塩を有効量の蒸気と接触させることで臭化水素酸を形成するステップを含み得る。前記臭化物塩は、NaBr、KBr、MgBrまたはCaBrのうち1つ以上を含み得る。前記金属酸化物触媒の金属は、銅、セリウム、ニッケルまたはマンガンを含み得る。
【0033】
一局面において、前記分子ハロゲンは、システムにおいて生成可能である。前記システムは、第1の反応室と、触媒床を含む第2の反応室とを含む。前記第2の反応室は、前記第1の反応室と流体連通し、前記第2の反応室は、煙道ガスを通過させることが可能なダクトと一定のまたは選択的な流体連通状態である。前記システムは、少なくとも前記第1の反応室、前記第2の反応室またはこれら両方を加熱するヒーターも含み得る。典型的には、前記ヒーターは、前記第1の反応室を加熱して、前記酸ハロゲン化物の形成を誘発させることができる。前記触媒床を含む前記第2の反応室は、ヒーターによって加熱してもよいし、かつ/または、断熱層によって断熱してもよく、この場合、熱が大気中に放散することがなくなる。前記第1の反応炉からのプロセスガスは、前記第2の反応炉中の触媒上の反応を(任意のさらなる熱の追加無しに)促進するのに十分な温度に維持することができる。
【0034】
前記酸ハロゲン化物を前記第1の反応室内において形成した後、前記触媒床を含む前記第2の反応室へと送ることができる。前記触媒床が前記酸ハロゲン化物からの前記分子ハロゲンの形成を触媒した後、前記分子ハロゲンは前記システムから出て、工業プロセスのダクト(例えば、煙道ガスダクト)内へと流入し得る。上述したような工業プロセスは石炭燃焼プロセスであり得、よって、前記ダクトは石炭燃焼工場内のダクトであり得る。
【0035】
前記システムは、前記ハロゲン化物塩を前記第1の反応室へと送達するための機構(例えば、入口ライン、排出装置、移動ベルトまたは他の機構)をさらに含み得る。前記システムは、前記第1の反応室内において行われた反応から副生成物を収集および除去する手段(例えば、前記システムの底部にある沈降室、または他の副生成物収集システム)も含み得る。前記システムは、前記第1の反応室から前記第2の反応室への粒子キャリーオーバーを回避することが可能なフィルタも含み得る。前記システムは、空気、蒸気またはこれらの組み合わせを前記第1の反応室内に導入するための機構も含み得る。
【0036】
前記分子ハロゲンを形成するための例示的システムを図2に示す。このシステム200において、ハロゲン化物塩210を先ずポイント205においてハロゲン化物塩ホッパ215内に導入する。ホッパ215は、ハロゲン化物塩210を移動格子220上に分配する。ホッパ215に接続された移動ブラシ225を用いて、ハロゲン化物塩210を移動格子220上に均等に分散させることができる。移動格子220がハロゲン化物塩を反応室230内へ搬送すると、ハロゲン化物塩210は酸ハロゲン化物に変換する。反応室230を断熱部235によって断熱することで、室230から大気中に熱が逃げる事態を回避することができる。反応室230内に入った後、ハロゲン化物塩210は、蒸気および空気入口ライン240を用いて室230の内部に導入された空気および蒸気に露出される。この例において、前記空気は空気ライン245を通じて大気から入口ライン240内へと導入され、蒸気は蒸気供給源から蒸気入口ライン250内へと導入される。1つの特定の例において、約800°F(426.6℃)の温度において蒸気を工業プロセスそのものから発生させることができ、その後、この蒸気を前記システムの入口ライン240へと注入することができる。
【0037】
前記酸ハロゲン化物の形成プロセス時において、反応室230は、ヒーター253(例えば、電気ヒーター)によって約650℃〜約1000℃に加熱される。ヒーター253は、反応室230の内部または反応室230の近隣に存在する。前記反応プロセスの実行において、ハロゲン化物塩210が前記酸ハロゲン化物へと変換した後、固形反応副生成物255(例えば、アルカリン酸化物または水酸化物)を移動格子220から副生成物ホッパ260内へと搬送する。副生成物ホッパ260は、副生成物ホッパ260から固形副生成物255を放出するためのタイマーホッパレベル作動型ダンパ265を備えることができる。場合によっては、前記反応副生成物は、前記工業プロセスのいずれかの箇所において有用であり得る。ハロゲン化物塩210から生成された酸ハロゲン化物の煙は、高温シンブルフィルタ270を通過する。高温シンブルフィルタ270は、前記触媒室への任意の粒子キャリーオーバーを回避する。
【0038】
その後、前記酸ハロゲン化物の煙を触媒室275に誘導する。触媒室275は、電気ヒーター280によって加熱可能である。触媒室275は、触媒床285を含む。触媒床285は、前記酸ハロゲン化物を前記分子ハロゲンに酸化させるための触媒(例えば、CuO)を含む。触媒床285をつうかすると、前記酸ハロゲン化物は前記分子ハロゲンへと変換し、前記分子ハロゲンは触媒室275の残り部分を通過し、出口ポイント290において前記システムから出て行く。
【0039】
前記分子ハロゲンを形成するための別の例示的システムを図3に示す。このシステム300において、ハロゲン化物塩310を先ず入口ポイント305においてハロゲン化物塩ホッパ315内に導入する。ホッパ315は、ハロゲン化物塩310を重量フィーダー320内に分配する。重量フィーダー320は、ハロゲン化物塩310を排出装置325に供給する。前記ハロゲン化物塩は懸濁状であり、気流335によって加熱反応ライン340内に押し込まれる。気流335も加熱反応ライン340内に流入し、反応プロセスにおいて用いられる。その後、反応生成物(酸ハロゲン化物および副生成物)はすぐに前記加熱反応ラインから沈降室330へと流れる。沈降室330は、室330の内部の熱が過分に大気中に逃げることのないよう、断熱部338によって断熱されている。反応ライン340を通じた形成時において、前記ハロゲン化物塩およびガスは、外部またはライン内ヒーター340(例えば、電気ヒーター)によって加熱される。蒸気も、蒸気入口ライン345を通じて反応ライン340内へと導入される。ハロゲン化物塩310は、沈降室330に到達する前および沈降室330に到着する若干後に、加熱反応ライン340内の蒸気と反応する。反応副生成物355は、沈降室330の底部内に蓄積し、タイマーまたはローディング作動型ダンパ360の作用により、前記沈降室から出て行く。沈降室330は、固形物の流れを沈降室330の底部へと転換するのを支援するノックアウトプレート365を含む。
【0040】
ハロゲン化物塩310から得られた酸ハロゲン化物の煙は高温シンブルフィルタ370を通過する。フィルタ370は、前記触媒への粒子キャリーオーバーを回避する。その後、前記酸ハロゲン化物の煙は、触媒室375に方向付けられ得る。触媒室375は、必要または所望であれば、任意選択的に電気ヒーター380によって加熱してもよいし、かつ/または、断熱部によって断熱してもよく、その場合、前記システム内に既に存在する熱を(HBrの形成の促進に用いて)、Br形成のための触媒反応をさらに促進することができる。触媒室375は、触媒床385を含む。触媒床385は、前記酸ハロゲン化物を前記分子ハロゲンに酸化させるための触媒(例えば、CuO)を含む。触媒床385を通過すると、前記酸ハロゲン化物は前記分子ハロゲンへと変換し、前記分子ハロゲンへはその後前記触媒室375の残り部分を通過し、ポイント390において前記システムから出て行く。
【0041】
システム(285、385)の触媒床を通過した後、前記分子ハロゲンを煙道ガスに直接注入し(そして混合する)ことができる。一般的に、上述したように、本発明は、工業プロセスと組み合わせて利用することができる。多様な燃焼プロセスおよび生成物プロセスを含む煙道ガスが、水銀を含んで生成される。例示的燃焼プロセスを挙げると、化石燃料燃焼プロセス(例えば、石炭燃焼プロセス)、廃棄物燃焼プロセス(例えば、地方自治体における固形廃棄物、MSW、または有害な廃棄物燃焼)、バイオマス燃焼プロセスなどがある。他の工業プロセスを非限定的に挙げると、金属溶錬プロセス(例えば、金溶錬)および生成プロセス(例えば、化学生成プロセス(例えば、塩素アルカリ生成プロセス))がある。典型的には、前記分子ハロゲンは、工業プロセスのプロセスストリームの煙道ガス(排気)中に注入される。当該工業プロセスの内容に応じて、煙道ガスは多様なプロセスポイントを通過し得る。そのようなプロセスポイントのうち任意の1つとして、分子ハロゲンの適切な注入ポイントがあり得る。一局面において、前記分子ハロゲンは、工業プロセスストリームの記ガス状排出物(すなわち、プロセスにおいて熱回収の他には不要となり、廃棄対象となった煙道ガス)中に注入される。
【0042】
前記分子ハロゲンが燃焼ベースの発電所プロセスに注入される1つの特定の局面において、上流または選択接触還元(SCR)ユニットの層内にあるいは前記選択接触還元ユニットの直後のポイントに前記分子ハロゲンを注入すると望ましい場合がある。他の適切な注入ポイントを挙げると、空気ヒーター、電気集塵装置(ESP)、湿式スクラッバまたは乾式スクラッバ、または発電所プロセスと関連して用いられる別の既存の汚染制御装置の上流がある。
【0043】
いくつかの局面において、前記システムは、工業プロセスの煙道ガスまたは煙道ガスを通過させるダクトとインライであるかまたは流体連通状態であり、これにより、形成された分子ハロゲンをプロセスストリーム内のポイント(例えば、煙道ガスストリーム中のポイント)へ直接注入することが可能となる。分子ハロゲンの注入量は典型的にはガスストリーム組成および他の変数(例えば、滞留時間および制御戦略)によって異なるが、典型的には、煙道ガスに対する体積比が少なくとも100万分の2(ppmv)であり、プロセス、工場構成、注入場所、煙道ガス組成、および望まれる注入結果に応じて、約300ppmv以上まで上げることができる。石炭燃焼による発電所において、例えば、前記分子ハロゲンを約2ppmv〜約300ppmvの濃度で注入することができる。注入量は、システムプロセスを通じてまたは前記分子ハロゲンとプロセスストリームとの選択的な流体連通を通じて、上述したように調整可能である。
【0044】
水銀を含む煙道ガスと分子ハロゲンが接触すると、前記分子ハロゲンは、前記水銀を酸化形態に変換させ得る。この酸化形態は、既存の汚染防止装置による捕捉がより容易であるため、煙道ガスから大気中への水銀放出量が低減する。理論に縛られることは望まないが、前記分子ハロゲンが臭素である場合、Brが水銀と反応してHgBrを発生させると考えられる。HgBrは、典型的な汚染防止装置(例えば、湿式スクラッバ)により容易に捕捉することが可能である。湿式スクラッバによってHgBrが捕捉された後は、HgBrはHgCl中にではなくスクラッバ液体中に保持される可能性が高くなり、これは少なくとも部分的に煙道ガス中に再放出されることが理解されるべきである。Brによる水銀の酸化についてのさらなる詳細(例えば、Liuら、Environ.Sci.Technol.2007、41、1405−1412)を参照されたい。本明細書中、同文献全体のBrによる水銀酸化についての教示内容を参考のため援用する。いくつかの局面において、前記水銀は煙形態となった後、前記分子ハロゲンによって酸化され、その後前記煙道ガスから除去される。
【0045】
本発明は、煙道ガスからの水銀放出を低減することが必要な場所において直接分子ハロゲンを注入するための安全な方法を提供する。比較的不活性のハロゲン化物塩を工業プロセスの現場へと輸送し、使用時まで保管し、このハロゲン化物塩を利用して分子ハロゲンを形成する。前記分子ハロゲンは、現場において単一システム内において形成されるため、形成直後にプロセスストリーム中のポイント(例えば、煙道ガスストリーム中のポイント)に直接注入され、これにより、分子ハロゲン、酸ハロゲン化物あるいは蒸気圧が高くおよび有毒であることの多い他の酸または液体の取り扱いおよび輸送時の危険を回避することができる。よって、分子ハロゲン、酸ハロゲン化物、あるいは他の酸または液体の保存が不要となる。水銀酸化のための安全な方法の提供に加え、本発明によれば、工業プロセスの現場において実際に注入システムそのものにおいて前記分子ハロゲンを形成することにより、優秀な水銀酸化剤である分子ハロゲンの実用的利用も可能となる。
【0046】
さらに、本発明の実施時において、プロセスそのものの一部として分子ハロゲンを形成する場合(例えば、ハロゲン化物塩を燃料(例えば、石炭)上に配置し、燃焼プロセス時に分子ハロゲンを形成させる場合)とは反対に、工業プロセスストリームの外部において分子ハロゲンを形成した後、プロセスに注入する。分子ハロゲンをプロセスと別個に形成することにより、前記分子ハロゲンの形成が保証され、前記分子ハロゲンがプロセス中の他の反応物質によって消費される事態が回避されかつ/または他の一般的に用いられる汚染防止装置によって捕捉される事態が回避される。さらに、分子ハロゲンを燃焼プロセスと別個に形成することにより、分子ハロゲンが必要とされる上流の使用ポイントにおいて、プロセス成分を腐食性の分子ハロゲン煙から保護することが可能となる。
【実施例】
【0047】
以下の例は、本明細書中特許請求の範囲に記載される化合物、組成、物品、装置および/または方法の調製および評価方法についての完全な開示および記載を当業者に付与するために記載されるものであり、ひとえに本発明の例示を意図しており、本発明者らが自身の発明であるとみなしている内容を制限することを意図していない。数(例えば、量、温度など)については正確を期しているが、誤りおよび逸脱も考慮されたい。他に明記無き限り、部は重量部を表し、温度はCまたは雰囲気温度であり、圧力は大気圧またはその近隣である。
【0048】
実施例1
シミュレーションシステム環境における、CaBrからのBrの形成
【0049】
銅酸化物触媒を調製するため、150gの銅(II)硝酸三水和物を200mlの脱イオン水中に溶解させた後、200グラムを超える8−14メッシュ活性アルミナ上に注いだ。その結果得られた触媒複合体を乾燥し、1112°Fで2時間焼成した。
【0050】
粉末状臭化カルシウム(CaBr)を砂床内に配置し、前記砂床を1100°F〜1350°Fに加熱した。前記砂を用いて前記臭化カルシウムを分散させることで、前記粉末と、蒸気と、現物サイズの作動システム中に存在する空気との間の接触をよる良好にシミュレートした。前記臭化カルシウムは、前記蒸気および酸素と反応して、分散状かつ懸濁状の粉末となる。前記所望の温度に到達すると、20%蒸気および80%空気のストリームが、臭化カルシウム(CaBr)の砂床を通じて方向付けられた。その後、この反応からの排気を800°Fまで冷却した後、銅酸化物触媒床を通過させた。
【0051】
その後、前記銅酸化物触媒床を通じて排気を放出した。触媒反応を介して形成された臭素ガス(Br)および前記反応時に形成されたHOを、前記銅酸化物触媒床の出口において凝結させた。前記Brの濃度をクロマトグラフィーによって決定した。図1に示すように、Brに変換したCaBrのパーセントは、プロセスの第1のステップの反応温度の上昇と共に増加しており、CaBrはHBrに変換した。第2のステップの触媒温度は、約750°Fにおいて約800°Fを若干下回る温度に連続的に維持した。第1のステップの反応炉温度である1350°Fを用いたところ、前記CaBrのうち約85%がBrに変換した。真なる変換は、システム壁部上の臭素ガスの損失に起因して、測定値よりもさらに高かった可能性がある。本プロセスを商用化すれば、システム大型化によって流量を高くすることでこのような事態を無くせる可能性が高く、必要であれば、注入システムの内面上の不活性コーティングも利用可能である。
【0052】
実施例2
CaBr/HOスラリー
【0053】
CaBrおよび水の混合物を蒸気生成器に注入した後、システムに注入した。溶液からのCaOを乾燥させ、銅触媒床上に蓄積させが、測定可能なBrは形成されなかった。理論に縛られることは望まないが、前記CaBrが水溶液に入れられたときにCa(OH)およびBrの混合物が形成され、HBrは必要なものとして形成されなかったもの.と考えられる。
【0054】
本明細書中に記載の方法、化合物、システムおよび組成において、多様な改変および変更が可能である。本明細書中に記載の方法、化合物、システムおよび組成の他の局面は、本明細書の検討および本明細書中に記載の方法、化合物、システムおよび組成の実行により、明らかとなる。本明細書および例は例示的なものとしてみなされることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙道ガス中の水銀の量を低減する方法であって、
a)ハロゲン化物塩から分子ハロゲンを形成するステップと、
b)水銀を含む煙道ガス中に前記分子ハロゲンを注入するステップであって、前記分子ハロゲンは、前記煙道ガス中の前記水銀のうち少なくとも一部を酸化させるのに有効な量だけ注入される、ステップと、
c)前記酸化水銀のうち少なくとも一部を前記煙道ガスから除去することで、前記煙道ガス中の水銀量を低減するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記分子ハロゲンは、工業プロセスの現場またはその近隣において形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工業プロセスは石炭燃焼を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記分子ハロゲンは、工業プロセスの煙道ガスと流体連通または選択的な流体連通の状態にある注入システム内において形成される、請求項1〜3のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記ハロゲン化物塩から前記分子ハロゲンを形成するステップは、
(a)前記ハロゲン化物塩から酸ハロゲン化物を形成するステップと、
(b)前記酸ハロゲン化物を酸化させて、前記分子ハロゲンを形成するステップと、
を含む、請求項1〜4のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記分子ハロゲンは、少なくとも30%の収率パーセントで前記ハロゲン化物塩から形成される、請求項1〜5のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記分子ハロゲンは、少なくとも80%の収率パーセントで前記ハロゲン化物塩から形成される、請求項1〜6のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記分子ハロゲンは、バーナーから煙道ガス煙突までにおける任意のポイントにおいて、燃焼プロセスストリームに注入される、請求項1〜7のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記分子ハロゲンは、選択接触還元(SCR)ユニットの近隣またはその内部において、空気ヒーターの位置または上流において、電気集塵装置(ESP)の内部またはその上流において、あるいは湿式スクラッバまたは乾式スクラッバの位置またはその上流において、燃焼プロセスストリームに注入される、請求項1〜8のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記分子ハロゲンはBrである、請求項1〜9のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記ハロゲン化物塩は、NaBr、KBr、MgBrまたはCaBrのうち1つ以上を含む、請求項1〜10のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項12】
ESP、湿式ESPまたは湿式スクラッバが、前記煙道ガスから前記酸化水銀のうち少なくとも一部を除去するために用いられる、請求項1〜11のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項13】
分子ハロゲンを生成するためのシステムであって、
a)第1の反応室と、触媒床を含む第2の反応室とであって、前記第2の反応室は、前記第1の反応室と流体連通し、前記第2の反応室は、煙道ガスを通過させることが可能なダクトと一定のまたは選択的な流体連通状態にある、第1の反応室および第2の反応室と、
b)前記第1の反応室または前記第2の反応室のうち少なくとも1つを加熱するためのヒーターと、
を含む、システム。
【請求項14】
前記第2の反応室は、工業プロセス工場の煙道ガスダクトと一定のまたは選択的な流体連通状態にある、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記工業プロセス工場は石炭燃焼工場である、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
ハロゲン化物塩を前記第1の反応室に送達する手段をさらに含む、請求項13〜15のうちいずれかに記載のシステム。
【請求項17】
前記第1の反応室において行われる反応から副生成物を収集および除去する手段をさらに含む、請求項13〜16のうちいずれかに記載のシステム。
【請求項18】
前記第1の反応室から前記第2の反応室への粒子キャリーオーバーを回避することが可能なフィルタをさらに含む、請求項13〜17のうちいずれかに記載のシステム。
【請求項19】
空気、蒸気またはこれらの組み合わせを前記第1の反応室に導入する手段をさらに含む、請求項13〜18のうちいずれかに記載のシステム。
【請求項20】
臭素の作製方法であって、
a)臭化物塩から臭化水素酸を形成するステップと、
b)前記臭化水素酸のうち少なくとも一部を臭素および水に変換させるのに十分な条件下において、前記臭化水素酸と、酸素および金属酸化物触媒とを接触させるステップと、
を含む、方法。
【請求項21】
前記臭化水素酸を形成するステップは、前記臭化物塩を有効量の蒸気と接触させることで、臭化水素酸を形成するステップを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記臭化物塩は、NaBr、KBr、MgBrまたはCaBrのうち1つ以上を含む、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記金属酸化物触媒の前記金属は、銅、セリウム、ニッケルまたはマンガンを含む、請求項20〜22のうちのいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−525973(P2012−525973A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509964(P2012−509964)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/033830
【国際公開番号】WO2010/129743
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(506319259)サザン リサーチ インスティチュート (5)
【Fターム(参考)】