説明

永久磁石機械におけるセンサレス制御のためのシステム

永久磁石モータの改善したセンサレス制御を提供する装置および方法が記載されている。少なくとも1つの巻線セットから誘導された電気は、ロータ位置を決定するために利用され、かつ第1の巻線セットから絶縁された少なくとも別の巻線セットを駆動する整流回路に帰還を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
永久磁石同期モータ(permanent magnet synchronous motor)(PMSM)を効率的に駆動するために、モータ制御システムは、ロータ位置に関する正確な情報を必要とする。ホールセンサのようなセンサは、ロータ位置を検出するために利用することができるが、このことは、コストおよび重量を増加させ、信頼性を低下させ、かつセンサの動作制限によって加えられる温度の制限をモータに受けさせる。
【背景技術】
【0002】
センサレス制御は周知であり、典型的には、付勢されない主または補助ステータ巻線内に生じる誘導されるEMFまたは逆EMFに基づくロータの速度および/または位置の推定を含んでいる。1つの周知の技術は、付勢されないモータ巻線の逆EMFにおけるゼロ電圧交差をモニタすることを含んでおり、これは、ロータの位置を確立するために利用することができ、それからステータ巻線に適当な整流順序を提供するために整流回路に逆に供給される。しかしながら駆動される巻線によって引き起こされる巻線内におけるEMF干渉のために困難に出合い、かつ干渉それ自体を減少させるために付け加えられたフィルタは、遅延とコストをもたらす。それ故にセンサレス制御における改善が望まれており、本発明の目的は、このような改善を提供することにある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
1つの態様において、本発明はモータシステムを提供し、システムは、少なくとも第1および第2の多相巻線を有するステータであって、第1および第2の巻線が互いに電気的に絶縁されておりかつ互いに交錯していないステータと、ステータに対して相対的に動くように取り付けられたロータであって、ロータ上に取り付けられた少なくとも1つの永久磁石を有するロータと、電源および整流回路を含む駆動回路であって、使用中に第1の巻線に電気を提供して軸線の回りにおいてロータを回転駆動するように少なくとも第1の巻線に電気的に接続された駆動回路と、第2の巻線に接続されたロータ位置認識回路であり、使用中にロータが第2の巻線を通過したときに、第2の巻線内に誘導される電気に基づいてロータの位置を決定するようになっているロータ位置認識回路であって、前記の決定されたロータ位置に関して駆動回路に帰還情報を提供するために駆動回路に接続されているロータ位置認識回路と、を備える。
【0004】
別の態様において、本発明は、電気モータシステムを提供し、システムは、軸線の回りにおいて回転するように取り付けられたロータであって、ロータ上に取り付けられた少なくとも1つの永久磁石を有するロータと、略円筒形のステータであり、ロータ回転軸線に対して相対的な少なくとも第1および第2のセクタを有し、第1および第2のセクタが互いに異なっているステータであって、少なくとも2つの多相巻線セットを有し、その際、この少なくとも2つの巻線セットが前記セクタのうち異なった1つに限定されているステータと、電源および一方の巻線セットに接続され、それによってこの巻線セットを選択的に付勢してロータの回転を電気的に駆動するモータドライブと、他方の巻線セットに接続され、それによってモータドライブにロータ位置情報を提供するためにこの他方の巻線から信号を取得するロータ位置デコーダと、を備える。
【0005】
別の態様において、本発明はモータシステムを提供し、システムは、永久磁石ロータと、少なくとも第1の多相巻線セットおよび第2の多相巻線セットを有するステータであって、第1および第2の巻線セットが互いに実質的に電気的および磁気的に絶縁されており、第1のセットがステータ内に配置されて、使用中に第1のセットを通って流れる電気によって誘導される磁気がロータの回転を引き起こすようになっており、第2のセットがステータ内に配置されて、使用中に回転するロータが第2のセットを通って流れる電気を誘導するようになっているステータと、ロータの回転を連続的に駆動するように第1の巻線セットに電気を提供するようになっている第1の制御システムと、第2の巻線内に誘導される電気を受け取りかつ第1の制御システムにロータ位置情報を提供するようになっている第2の制御システムと、を備える。
【0006】
別の態様において、本発明はモータシステムを提供し、システムは、永久磁石ロータと、少なくとも第1の多相巻線セットおよび第2の多相巻線セットを有するステータであって、第1および第2の巻線セットが互いに実質的に電気的および磁気的に絶縁されているステータと、電源および第1の巻線セットに接続され、それによって第1の巻線セットを選択的に付勢してロータの回転を電気的に駆動するモータドライブと、第2の巻線セットとモータドライブとの間に接続され、それによってモータドライブにロータ位置情報を提供するために第2の巻線から信号を取得するロータ位置デコーダと、を備える。
【0007】
別の態様において、本発明はブラシレスモータシステムを提供し、システムは、軸上に回転するように取り付けられた少なくとも第1の永久磁石ロータ、第1のロータに隣接する第1のステータおよび第1のステータに関連する少なくとも1つの多相巻線セットを含む少なくとも第1の磁気回路と、軸上に回転するように取り付けられた少なくとも第2の永久磁石ロータ、第2のロータに隣接する第2のステータおよび第2のステータに関連する少なくとも1つの多相巻線セットを含む少なくとも第2の磁気回路であり、第2のステータ巻線セットが第1のステータ巻線セットから電気的に絶縁されている第2の磁気回路であって、第1の磁気回路から絶縁されている第2の磁気回路と、第1の巻線セットに第1のロータの回転を駆動させるように使用中に第1の巻線に整流信号を提供するようになっている整流装置と、使用中に第2の巻線セットから入力を受け取りかつ整流装置に出力ロータ位置情報を提供するようになっているロータ位置検出装置と、を備える。
【0008】
別の態様において、本発明は、少なくともモータ、整流装置、ロータ位置検出装置および電源を有するモータシステムであって、モータが少なくともロータおよびステータを有するモータシステムの動作方法を提供し、方法は、ステータ内に少なくとも2つの多相巻線セットを設け、少なくとも2つの多相巻線セットを互いに電気的に絶縁し、整流装置から前記の少なくとも2つの巻線セットのうちの少なくとも第1の巻線セットに電気を提供しそれによって前記の少なくとも第1の巻線セットによってロータの回転を連続的に駆動し、前記の少なくとも2つの巻線セットのうちの少なくとも第2の巻線セットを連続的に付勢しないままにして前記のロータの回転が第2の巻線セット内に電気を誘導するようにし、ロータ位置情報を発生するためにロータ位置検出装置に前記の誘導された電気を提供し、整流装置によって行われる整流プロセスの確認および調節の少なくとも一方のために整流装置に前記ロータ位置情報を提供する、各ステップを含む。
【0009】
別の態様において、本発明はモータの制御方法を提供し、方法は、永久磁石ロータを回転させるためにステータ内の少なくとも第1の多相巻線セットに整流信号を提供し、第1のセットから磁気的に絶縁された少なくとも第2の多相巻線セット内にロータによって誘導された電気を受け取り、ロータの位置に関する情報を決定するために前記の受け取られた電気を利用し、前記の位置情報をモータの制御における入力として利用する、各ステップを含む。
【0010】
別の態様において、本発明は、永久磁石ロータおよびステータを有するモータであって、ステータが少なくとも第1の多相巻線セットおよび第2の多相巻線セットを有し、第1および第2の巻線セットが互いに実質的に電気的および磁気的に絶縁されているモータの動作方法を提供し、方法は、永久磁石ロータを回転させるために第1の巻線セットに整流信号を提供し、第2の巻線セットに入力電気を提供せず、第2の多相巻線セットからロータによって誘導された電気を受け取り、ロータによって誘導された電気からロータ位置情報を決定し、整流信号を調節するために前記の情報を利用する、各ステップを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明をいっそう良好に理解するため、およびどのように実施するかをさらに明確に示すために、本発明の好適な実施例にしたがって製造された物品を示す添付の図面を例として参照する。
【0012】
本発明は、本出願人の同時係属中の出願である2003年5月27日に出願された出願番号第10/444,952号、および2003年6月3日に出願された第10/452,135号に記載された機械構成とともに利用するために適しており、これらの出願両方の内容は、引用によってこの明細書内に組み込まれる。
【0013】
図1を参照すると、永久磁石同期モータ(PMSM)システム10は、ブラシレス永久磁石機械12を含み、この機械は、それぞれ関連するステータ部分16aおよび16b内に磁気的および電気的に絶縁されたステータ巻線セット14aおよび14bを含むという点で「スプリット」構造を有する。巻線セット14aおよび14bは、独立に制御可能であり、機械12は、望ましくは1つのケーシング(図示せず)内にありかつ共通の部品として1つだけの回転可能な磁気ロータ18を有する基本的に2つの異なった機械12であるようになっている。ロータ18は、独立に励磁され、望ましくは当該の技術分野においてよく理解されるように、ロータ18に取り付けられた永久磁石(図示せず)を有する。巻線セット14aおよび14bは、望ましくはそれぞれ3相巻線セットであり、かつステータの回りに周方向に順に分配されているので、セット14aおよび14bは、交錯しておらず、かつ重畳しておらず、したがって互いに空間的に離れて異なった位置に配置されている。機械12は、負荷20(図2参照)、電源22、モータドライブ整流回路24およびロータ位置認識回路26に接続されている。
【0014】
図2aを参照すると、3相巻線セット14aは、整流回路24を介して電源22に電気的に接続されており、かつ3相巻線セット14bも、望ましくは整流回路24を介して電源22に選択的に接続されている(選択的な接続は、点線によって示されている)。巻線セット14bは、ロータ位置認識回路26にも電気的に接続されており、他方においてこのロータ位置認識回路は、整流回路24との帰還通信のために接続されている。
【0015】
利用中に、モータは、後にさらに詳細に説明するようにスタートする。モータが一度動き出した場合、電源22によって提供される電力は、整流回路24によって整流され、かつ巻線の1つのセット、たとえば巻線セット14aに供給され、それによってロータ18を駆動し、かつ機械12をモータとして動作させる。ロータ18が駆動されていない巻線のセット、この例において14bを通過したとき、巻線14bに対して相対的なロータ18における磁石の運動は、巻線14b内にEMFを誘導し(巻線14bは駆動されておらず、それ故に一種の発電機として作用する)、誘導されたEMFは、本発明によれば、さらに後に説明するように、ロータの位置を決定するためにロータ位置認識回路26によって利用される。それからロータ位置が決定され、かつそれからこの帰還は、整流回路24に提供され、巻線セット14aに提供される励磁電流は、必要な場合および必要なときに、機械12から所望の出力トルク等を発生するように巻線14aを駆動するために、適当にタイミングを合わされかつ調節されることができる。
【0016】
巻線14b内に誘導されたEMF信号は、誘導されたEMF信号に基づいてロータ位置を決定するための適当な回路26に供給される。誘導された信号からロータ位置を決定するあらゆる適当な方法を利用することができる。アナログの実施例において、正弦波誘導電圧における0°および180°の各位置を示すそれぞれのゼロ交差を決定するように0Vの基準入力に対して信号を比較するために、電圧比較器(図示せず)が利用される。デジタルの実施例(図示せず)において、誘導されたアナログ電圧は、デジタル信号に変換され、かつ適当な値を検出するために適当な回路に供給される。いずれの場合においても、3つのホールセンサから受け取られた信号に基づいてロータの位置を決定する際に利用するために適した回路は、一度ロータの回転がスタートした場合、ロータの位置を決定するために利用することができ、かつ巻線14bから望ましい条件にされた信号(以下参照)を適当に供給することができる。好ましい実施例において、モータドライブおよび整流回路24およびロータ位置検出回路26の機能動作は、図2bに示すモトローラ社のMC33035ブラシレスモータ制御装置のような市販で入手可能なブラシレスモータ制御装置の利用を介して達成される。専門家の読者は、ここにおけるこの開示に照らして、このような制御装置のための入力信号に対して何らかの信号条件付け(図示せず)が望ましくまたは必要であることを認識しているであろう(たとえば可変の電圧の正弦波をホールセンサによって典型的に発生されるタイプの固定の振幅の方形波に変換する)。
【0017】
EMFを巻線14内に誘導するように、かつロータ18の位置を決定することができるように、初めにステータ16に対して相対的にロータ18を動かすために、モータ12をスタートさせなければならない。初めにロータ18の位置は未知である。それ故にモータ12をスタートさせるために、システムは、スタートまたは「ジョギング」モードにおいて動作し、このモードは、開ループ(すなわち位置の帰還を含まない)において行われ、かつロータ18の回転をスタートさせるためにモータのトルク電流定数に関連した極性慣性モーメントに依拠する。本質的にロータの動きを開始するために十分なトルクを提供するために、ロータの位置は仮定され、かつ整流信号は、望ましくは両方の巻線14aおよび14bに適当なように提供される。したがって一度ロータ18が、「ジョギング」する(すなわち動く)と、この運動の結果、巻線14aおよび14b内に信号が誘導され、この信号は、それから前記のように位置信号として検出することができ(とくに付勢されない巻線において)、したがって整流回路24の動作は、モータの速度を上昇するように調節することができる。アプローチは、反復するものであり(すなわちロータは、第1の「ジョギング」において所望のように回転をスタートさせないことがあり)、したがってロータ18の所望の回転をスタートさせるために複数回の連続する試みを行なうことが必要なことがある。1つの巻線セット14またはすべての巻線セット14を、初めに前記のように駆動することができる。さらにいずれかのセット14における付勢されない巻線は、スタートモードにおいて「センサ」として利用することができる。しかしながら望ましくは1つだけのセット(たとえば14a)が所定のスタートの際に駆動され、かつそれから他方のセット(たとえば14b)が次のスタートの際に駆動され、かつ以下同様に行なわれる。巻線セットのモータまたは検出機能のいずれかにおいて誤動作が存在した場合、このことは検出することができ、かつ対処することができる。図7に示しかつ後に説明するガスタービンの場合、望ましくはこの故障の検出は、エンジンのスタートが果たされる前に達成することができる。
【0018】
両方の巻線セット14aおよび14bがモータのスタートのために利用される場合、望ましくは巻線セット14b(この例において)の1つの相が付勢されないときに、一度回転が起こり始めると、誘導されるEMFは、ロータ18の位置を決定することを可能にするために、ロータ位置認識回路26に供給される。最後に巻線セット14a(この例において)によってもっぱら十分なトルクを提供することができる条件に一度モータ12が近付いた場合、巻線セット14bは、完全に付勢解除され、かつその後駆動されず、それから初めに前に述べたように、3相ロータ位置認識機能を提供する。
【0019】
それ故に本発明は、1つの態様において少なくとも1つの巻線および望ましくは3相巻線セットを設けかつ利用することを教示しており、この巻線セットは、PMSMモータにおけるロータ位置をデコードしかつ認識する際に利用するためにモータにおける能動巻線から電気的および磁気的に絶縁されている。したがって本発明は、解析のために提供される信号がフィルタに依拠することなく雑音を減少しているので、いっそう正確かつ簡単なロータ位置認識を可能にし、したがってゼロをさらに正確に計数することを可能にし、モータ制御の改善に通じる。
【0020】
追加的な実施例が可能である。この明細書を通して種々の実施例を説明する場合、それぞれの実施例は、連続する「100」のシリーズ(たとえば100、200、300等)における参照符号を備えている。前の実施例におけるものと同様の後者の実施例における特徴は、初めのシリーズにおけるものと同じ基本参照符号を連続シリーズにおいて与えられている(たとえばロータ18およびロータ118、218、318等)。このような実施例の特徴の構造および/または動作がそれ以上後に説明されていない場合、読者は、構造および動作が前記のように当該技術分野の専門家にとって明らかなこれらの変形に関連を有するものと仮定することができる。参照を容易にするためにも、それぞれの巻線セットおよびその関連する電磁システムは、ときには「チャネル」と称し、機械12は、2つの電磁的に絶縁された「チャネル」または巻線セットを有する「2重チャネル」モータと称されるかもしれない。
【0021】
図3aおよび図3bを参照すると、PMSM機械112が示されており、独立の3相巻線セット114a及び114b、円筒形のステータ116およびステータに対して相対的に回転運動するように取り付けられた円筒形のロータ118を有する。巻線セット114aおよび114bは、これらの対応するステータ部分とともに、巻線相互の電気的な絶縁のために、2つの分離した電磁システム130aおよび130bを提供する。ロータ118は、回転可能な軸144に保持リング142によって取り付けられた永久磁石140を有する。ステータ116は、隣接する巻線を分離する複数の歯146を有する。(図示を容易にするために、図3bにおける巻線114aおよび114bの隣接する要素は、接続せずに示されている。)図3cに示すように、前記のものと同様に、巻線セット114aは、整流回路124を介して電源122に電気的に接続されており、かつ巻線セット114bも、望ましくは整流回路124を介して電源122に選択的に接続されている。図3cを参照すると、望ましくはモータドライブおよび整流回路24およびロータ位置検出回路26は、それぞれの巻線セットごとに設けられており、回路24aおよび24bおよび26aおよび26bが設けられるようになっている。ロータ位置回路26は、交差接続されており(たとえば26bは24aにかつ26aは24bに)、したがっていずれか(または両方)のセットの巻線は駆動することができ、かつ非能動のセットから検出された信号は、被駆動セットを適切に整流するために供給される。PMSM112は、その他の点においては所望のようにその構造において通常のものである。PMSMは、本出願人の米国特許第6,313,560号の教示にしたがって製造することもでき、これも、引用によってこの明細書内に組み込まれる。
【0022】
図4を参照すると、別の実施例においてモータ212は、「外側ロータ」2重チャネル構成にして示されており、ここにおいてロータ218は、ステータ216を囲んでいる。ステータ216は、巻線セット214aおよび214bを有する。ステータ216は、ロータに面する表面216’を有する。図4には示されていないが、巻線セット214aは、整流回路224(図示せず)を介して電源314(図示せず)に電気的に接続されており、かつ巻線セット214bも、望ましくは整流回路224を介して電源222に選択的に接続されている。巻線セット214bは、同様にロータ位置認識回路226(図示せず)にも電気的に接続されており、他方においてこのロータ位置認識回路は、整流回路224に帰還通信のために接続されている。
【0023】
図5a〜図5cを参照すると、外側ロータ3相2重チャネルPMSMモータは、引用によってここに組み込まれる本出願人の同時係属中の出願である出願番号第10/444,952号に詳細に記載されたような「一次」および「二次」巻線構成および機械構成を備えている。この実施例の構成および動作の詳細は、組み込まれた引用文献に完全に記載されており、したがってここでは要約して説明するだけでよい。明確にするために、図5a〜図5cは、装置の構造を容易に示すように一方の巻線セットまたはチャネルを省略していることに注意されたい。
【0024】
PMSM312は、ロータ318(5c参照)によって囲まれたステータ316内に、一次巻線セット314aおよび314bを有する(314bは明確にするために示されていない)。2つの分離したチャネル330aおよび330bは、巻線セット314aおよび314bの電気的な絶縁のために設けられている。図からも明らかなように、2つのチャネルは、互いに空間的に離れており、磁気的な絶縁も提供する。
【0025】
図5aを参照すると、この実施例において、所望の3相構造を提供するために3つの一次巻線314a、すなわち一次巻線314a1,314a2および314a3が設けられている。それぞれの一次巻線314aは、電源322および整流回路324(どちらも図示せず)への接続を容易にするために、それ自体の一次端子356aを備えている。同様に一次巻線314b(図示せず)は、前記のものと同様に、整流回路324およびロータ位置認識回路326(図示せず)に接続するために端子を有する。一次巻線314aおよび314bは、ステータ歯360間においてスロット362内に設けられており、また、スロット360内に設けられたブリッジ部分364の回りに巻き付けられている。望ましくは絶縁のために、紙スペーサ366が設けられている。一次巻線セット314aおよび314bに加えて、ステータ316は、二次巻線セット350a及び350bも有し、これらは、それぞれリスかごタイプの配置を有する(すなわち脚352および端部リング354を備えている)。
【0026】
ブリッジ364は、望ましくはステータ316と一体に形成されておらず、したがって図5cに概略的に示すようにアッセンブリとして挿入されており、このアッセンブリは、有利なように設計者がブリッジ364とステータ316のために異なった材料を選択することを可能にする。たとえばブリッジ材料は、出願である出願番号第10/444,952号において議論されたように、モータ312の磁気特性または性能特性を変えるように選択することができる。一体形成でないブリッジ364は、後にさらに説明するように、モータアッセンブリを有利に容易にすることもできる。
【0027】
図6aおよび図6bを参照すると、種々の配置および多数のチャネルを、モータ内に設けることができる。図6aにおいて、チャネル430aは、機械の構成に支配的であるが、一方チャネル430bは、ステータの1つのセクタに限定されている。前記のように2つのチャネルは、互いに実質的に磁気的に絶縁されており、かつ空間的に離れている。図6bを参照すると、多重チャネル430a〜430fが設けられており、それぞれが、異なった数の位相を有する。いずれの場合にも、チャネルは、前記の教示に照らして望ましいように、整流回路および/またはロータ位置認識回路(どちらも図示されていない)に接続することができる。
【0028】
図7を参照すると、本発明は、図7における統合した実施例に示すように、とくにガスタービンエンジン500をスタートさせるために軸502を駆動するスタータ512として作用するためにとくに良好に適している。専門家の読者によって理解されるような非統合スタータ(図示せず)も利用することができる。
【0029】
前記の説明は、例のための意味しか持たず、当該の技術分野の専門家は、開示された本発明の範囲から外れることなく、記載された実施例に変更を行うことができることを認識するであろう。たとえば望ましいとはいえ、本発明は、3相入力信号を必要とするわけではなく、あらゆる多相巻線に利用することができる。3相巻線セットは、ロータ位置を検出するために3ホールセンサとともに利用するように設計された市販で入手できる集積回路の利用を可能にすることによって、関連する電子装置を簡単化するので、望ましい。
【0030】
前記の説明において、定常状態のモータ動作において、1つのチャネルはモータを駆動するために利用されるが、他方のチャネルはロータ位置を認識するために利用される。好ましくはロータ位置のために前記のように付勢されない1つ(または複数)の位相がモニタされている限り、たとえば追加的なトルクが必要な場合、両方のチャネルがモータ動作のために利用できることは明らかである。3つ以上のチャネルをモータに設けることができ、チャネルは対称的である必要はなく、または同じ寸法である必要はない。2つ以上のロータ位置認識回路および/またはチャネルを設けることができ、いくつかのチャネルは、ここに説明されていない別の目的のために利用することができる。ステータをスロット付きとする必要はない。交流同期永久磁石モータを参照して説明したとはいえ、本発明は、あらゆるタイプのブラシレス永久磁石モータに適用することができる。共通のロータは、実際には共通の軸上における多重のロータとすることができ、1つのロータの位置検出が、軸上のすべてのロータの位置を決定することを可能にするようになっている。
【0031】
別の2重チャネル実施例(図8)において、第2のチャネルまたは巻線セットは、第1のチャネルまたは主巻線と同じスロットを共用することができるが、主巻線セットとは電気的に絶縁されている。ロータ磁石によって誘導される駆動されない巻線内における磁束は、典型的には隣接する巻線電流によって誘導される磁束よりも著しく大きく、また電流/電圧変換および信号処理は、入力ロータ位置信号を改善するために利用することができる。
【0032】
本発明の範囲内に入るさらに別の変形は、この開示内容を観察すれば、当該の技術分野の専門家にとって明らかであり、かつこのような変形は、添付の特許請求の範囲に一致する均等物に入るものとする。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明によるモータおよび制御システムの概略図。
【図2a】図1のモータおよび制御システムの一部の概略図。
【図2b】図1の制御システムの一部の概略図。
【図3a】図1のシステムのモータの断面図。
【図3b】図1のシステムのモータの分解斜視図。
【図3c】図3a〜図3bの実施例の制御システムの概略図。
【図4】図1のモータに対する代替の構成の分解斜視図。
【図5a】図1のモータに対するさらなる代替の構成のステータの前側斜視図。
【図5b】図1のモータに対するさらなる代替の構成のステータの後側斜視図。
【図5c】図1のモータに対するさらなる代替の構成の分解斜視図。
【図6a】図1のモータに対するさらなる代替の構成の断面図。
【図6b】図1のモータに対するさらなる代替の構成の断面図。
【図7】その横断面を表わすためにエンジンの一部を切り取って示す本発明を組み込んだガスタービンエンジンの側面図。
【図8】本システムのさらなる実施例の概略図。
【図1a】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1および第2の多相巻線を有するステータであって、第1および第2の巻線が互いに電気的に絶縁されておりかつ互いに交錯していないステータと、
ステータに対して相対的に動くように取り付けられたロータであって、ロータ上に取り付けられた少なくとも1つの永久磁石を有するロータと、
電源および整流回路を含む駆動回路であって、使用中に第1の巻線に電気を提供して軸線の回りにおいてロータを回転駆動するように少なくとも第1の巻線に電気的に接続された駆動回路と、
第2の巻線に接続されたロータ位置認識回路であり、使用中にロータが第2の巻線を通過したときに、第2の巻線内に誘導される電気に基づいてロータの位置を決定するようになっているロータ位置認識回路であって、前記の決定されたロータ位置に関して駆動回路に帰還情報を提供するために駆動回路に接続されているロータ位置認識回路と、
を備えることを特徴とするモータシステム。
【請求項2】
前記第1および第2の巻線が、少なくとも3つの相を有することを特徴とする請求項1記載のモータシステム。
【請求項3】
前記第1および第2の巻線が、互いに間隔を置いていることを特徴とする請求項1記載のモータシステム。
【請求項4】
前記第1および第2の巻線が、ステータの重ならないセクタセグメントを占めることを特徴とする請求項1記載のモータシステム。
【請求項5】
軸線の回りにおいて回転するように取り付けられたロータであって、ロータ上に取り付けられた少なくとも1つの永久磁石を有するロータと、
略円筒形のステータであり、ロータ回転軸線に対して相対的な少なくとも第1および第2のセクタを有し、第1および第2のセクタが互いに異なっているステータであって、少なくとも2つの多相巻線セットを有し、その際、この少なくとも2つの巻線セットが前記セクタのうち異なった1つに限定されているステータと、
電源および一方の巻線セットに接続され、それによってこの巻線セットを選択的に付勢してロータの回転を電気的に駆動するモータドライブと、
他方の巻線セットに接続され、それによってモータドライブにロータ位置情報を提供するためにこの他方の巻線セットから信号を取得するロータ位置デコーダと、
を備えることを特徴とする電気モータシステム。
【請求項6】
前記の他方の巻線セットが、モータドライブに接続されていないことを特徴とする請求項5記載のモータシステム。
【請求項7】
永久磁石ロータと、
少なくとも第1の多相巻線セットおよび第2の多相巻線セットを有するステータであって、第1および第2の巻線セットが互いに実質的に電気的および磁気的に絶縁されており、第1のセットがステータ内に配置されて、使用中に第1のセットを通って流れる電気によって誘導される磁気がロータの回転を引き起こすようになっており、第2のセットがステータ内に配置されて、使用中に回転するロータが第2のセットを通って流れる電気を誘導するようになっているステータと、
ロータの回転を連続的に駆動するように第1の巻線セットに電気を提供するようになっている第1の制御システムと、
第2の巻線内に誘導される電気を受け取りかつ第1の制御システムにロータ位置情報を提供するようになっている第2の制御システムと、
を備えることを特徴とするモータシステム。
【請求項8】
ロータの回転を連続的に駆動するために第2の巻線セットに電気を提供するようになっている第3の制御システムと、
第1の巻線内に誘導される電気を受け取りかつ第3の制御システムにロータ位置情報を提供するようになっている第4の制御システムと、
をさらに備えることを特徴とする請求項7記載のモータシステム。
【請求項9】
永久磁石ロータと、
少なくとも第1の多相巻線セットおよび第2の多相巻線セットを有するステータであって、第1および第2の巻線セットが互いに実質的に電気的および磁気的に絶縁されているステータと、
電源および第1の巻線セットに接続され、それによって第1の巻線セットを選択的に付勢してロータの回転を電気的に駆動するモータドライブと、
第2の巻線セットとモータドライブとの間に接続され、それによってモータドライブにロータ位置情報を提供するために第2の巻線セットから信号を取得するロータ位置デコーダと、
を備えることを特徴とするモータシステム。
【請求項10】
前記第1および第2の巻線が、ステータの異なったセクタ内に配置されていることを特徴とする請求項9記載のモータシステム。
【請求項11】
前記第1および第2の巻線の少なくとも一部が、ステータ内において互いに重ならないことを特徴とする請求項9記載のモータシステム。
【請求項12】
前記第1および第2の巻線セットが、ロータの永久磁石の回転経路に対して互いに直列に配置されていることを特徴とする請求項9記載のモータシステム。
【請求項13】
それぞれの巻線セットが、3相巻線セットであることを特徴とする請求項9記載のモータシステム。
【請求項14】
前記モータシステムは、第1の巻線セットに接続された整流装置と、第2の巻線セットに接続されたロータ位置検出装置とをさらに備えており、ロータ位置検出装置が、整流装置にロータ位置帰還情報を提供するために整流装置に接続されていることを特徴とする請求項9記載のモータシステム。
【請求項15】
軸上に回転するように取り付けられた少なくとも第1の永久磁石ロータ、第1のロータに隣接する第1のステータおよび第1のステータに関連する少なくとも1つの多相巻線セットを含む少なくとも第1の磁気回路と、
軸上に回転するように取り付けられた少なくとも第2の永久磁石ロータ、第2のロータに隣接する第2のステータおよび第2のステータに関連する少なくとも1つの多相巻線セットを含む少なくとも第2の磁気回路であり、第2のステータ巻線セットが第1のステータ巻線セットから電気的に絶縁されている第2の磁気回路であって、第1の磁気回路から絶縁されている第2の磁気回路と、
第1のステータ巻線セットに第1のロータの回転を駆動させるように使用中に第1のステータ巻線セットに整流信号を提供するようになっている整流装置と、
使用中に第2のステータ巻線セットから入力を受け取りかつ整流装置に出力ロータ位置情報を提供するようになっているロータ位置検出装置と、
を備えることを特徴とするブラシレスモータシステム。
【請求項16】
前記第1および第2のロータが、同じロータであることを特徴とする請求項15記載のモータシステム。
【請求項17】
前記第1および第2のステータが、同じステータ本体の一部であることを特徴とする請求項16記載のモータシステム。
【請求項18】
第1および第2のステータが、同じステータ本体の異なったセクタであることを特徴とする請求項16記載のモータシステム。
【請求項19】
前記の2つの磁気回路および前記の2つの多相巻線セットだけが設けられており、かつその際、第1および第2のステータのそれぞれが、ステータ部材の異なった半分を占有することを特徴とする請求項18記載のモータシステム。
【請求項20】
少なくともモータ、整流装置、ロータ位置検出装置および電源を有するモータシステムであって、モータが少なくともロータおよびステータを有するモータシステムの動作方法において、方法は、
ステータ内に少なくとも2つの多相巻線セットを設け、
少なくとも2つの多相巻線セットを互いに電気的に絶縁し、
整流装置から前記の少なくとも2つの巻線セットのうちの少なくとも第1の巻線セットに電気を提供しそれによって前記の少なくとも第1の巻線セットによってロータの回転を連続的に駆動し、
前記の少なくとも2つの巻線セットのうちの少なくとも第2の巻線セットを連続的に付勢しないままにして前記のロータの回転が第2の巻線セット内に電気を誘導するようにし、
ロータ位置情報を発生するためにロータ位置検出装置に前記の誘導された電気を提供し、
整流装置によって行われる整流プロセスの確認および調節の少なくとも一方のために整流装置に前記ロータ位置情報を提供する、
各ステップを含むことを特徴とするモータシステムの動作方法。
【請求項21】
前記の少なくとも2つの多相巻線セットを互いに磁気的に絶縁するステップをさらに含むことを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項22】
永久磁石ロータを回転させるためにステータ内の少なくとも第1の多相巻線セットに整流信号を提供し、
第1のセットから磁気的に絶縁された少なくとも第2の多相巻線セット内にロータによって誘導された電気を受け取り、
ロータの位置に関する情報を決定するために前記の受け取られた電気を利用し、
前記の位置情報をモータの制御における入力として利用する、
各ステップを含むことを特徴とするモータの制御方法。
【請求項23】
永久磁石ロータおよびステータを有するモータであって、ステータが少なくとも第1の多相巻線セットおよび第2の多相巻線セットを有し、第1および第2の巻線セットが互いに実質的に電気的および磁気的に絶縁されているモータの動作方法において、方法は、
永久磁石ロータを回転させるために第1の巻線セットに整流信号を提供し、
第2の巻線セットに入力電気を提供せず、
第2の多相巻線セットからロータによって誘導された電気を受け取り、
ロータによって誘導された電気からロータ位置情報を決定し、
整流信号を調節するために前記の情報を利用する、
各ステップを含むことを特徴とするモータの動作方法。

【図2a】
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【図2b】
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【図3c】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図3a】
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【図3b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6a】
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【図6b】
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【公表番号】特表2007−512800(P2007−512800A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541764(P2006−541764)
【出願日】平成16年7月19日(2004.7.19)
【国際出願番号】PCT/CA2004/001019
【国際公開番号】WO2005/055401
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(592228505)プラット アンド ホイットニー カナダ コーポレイション (99)
【氏名又は名称原語表記】Pratt & Whitney Canada, Inc.
【Fターム(参考)】