説明

汚損判定装置、紙葉類処理装置、および、汚損判定方法

【課題】 印刷物の読取画像などの画像情報に含まれる汚損度の判定を高精度に行うことができる汚損判定装置、紙葉類処理装置および汚損判定方法を提供する。
【解決手段】 入力処理部71が汚損とは関係がない固有変動を含む画像情報を入力し、特徴抽出部72が入力処理部71により入力した画像情報から複数の特徴情報を抽出し、分離部73が特徴抽出部72により抽出した複数の特徴情報の組を固有変動の成分とそれ以外の残差成分とに分離し、判定部74が分離部73により分離した残差成分から入力処理部71により入力した画像情報における汚損の度合いを示す汚損変動の主成分を抽出し、前記抽出した汚損変動の主成分の大きさに基づいて前記画像情報における汚損度を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類などの印刷物における汚損度合いを判定する汚損判定装置、汚損判定方法、および、前記汚損判定装置を有する紙葉類処理装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷物における汚損度合いを判定する方法には、カメラあるいはスキャナによって読み取った印刷物の画像における汚損度合いを判定する方法が提案されている。例えば、印刷物から読み取った画像における濃度値の平均あるいは分散により汚損度を判定する方法がある。さらに、複数の画像間における変動を判断する手法には、カラー画像を構成している赤(R)、緑(G)および青(B)の各値を3次元のベクトルとみなして画像解析を行う手法がある(例えば、特許文献1)。この場合、R、G、Bの3色の各値からなる3次元のベクトル間の距離によって画像間の変動を判断することが可能である。このような手法を適用することにより、印刷物から読み取った画像における汚損度を判定する手法も考えられる。
【0003】
しかしながら、上述したような印刷物には、印刷などの製造工程において、一定のばらつきが生じることは避けられない。つまり、同一の図柄を印刷した印刷物であっても、それらの印刷物には汚損以外の要因によるばらつき(以下、固有の変動成分とも称する)が含まれてしまう。これは、同一の図柄を印刷した複数の印刷物が汚損なしの状態であっても、それらの印刷物の画像情報から算出される濃度平均値は、完全に一致しないことを意味している。すなわち、印刷物に固有な変動成分は、汚損度合いの判定精度に悪影響を及ぼす要因となっている。
【特許文献1】特開2002−117400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の一形態では、画像情報に含まれる汚損度の判定を高精度に行うことができる汚損判定装置、紙葉類処理装置および汚損判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の一形態としての汚損判定装置は、固有変動を含む画像情報から複数の特徴情報を抽出する特徴抽出部と、前記特徴抽出部により前記画像情報から抽出した複数の特徴情報を前記固有変動の成分とそれ以外の残差成分とに分離する分離部と、前記分離部により得られた前記残差成分から前記画像情報における汚損の度合いを示す汚損変動の成分を抽出し、前記抽出した汚損変動の成分の大きさに基づいて前記画像情報における汚損度を判定する判定部とを有する。
【0006】
この発明の一形態としての紙葉類処理装置は、特定の図柄が印刷されている紙葉類の画像を読取る読取部と、前記読取部により読取った紙葉類の画像情報から複数の特徴情報を抽出する特徴抽出部と、前記特徴抽出部により前記画像情報から抽出した複数の特徴情報を固有変動の成分とそれ以外の残差成分とに分離する分離部と、前記分離部により得られた前記残差成分から前記画像情報における汚損の度合いを示す汚損変動の成分を抽出し、前記抽出した汚損変動の成分の大きさに基づいて前記画像情報における汚損度を判定する判定部と、前記判定部による汚損度の判定結果に基づいて前記紙葉類を処理する処理部とを有する。
【0007】
この発明の一形態としての汚損判定方法は、固有変動を含む画像情報から複数の特徴情報を抽出し、前記画像情報から抽出した複数の特徴情報を前記固有変動の成分とそれ以外の残差成分とに分離し、前記分離により得られた前記残差成分から前記画像情報における汚損の度合いを示す汚損変動の成分を抽出し、前記抽出した汚損変動の成分の大きさに基づいて前記画像情報における汚損度を判定する。
【発明の効果】
【0008】
この発明の一形態によれば、画像情報に含まれる汚損度の判定を高精度に行うことができる汚損判定装置、紙葉類処理装置および汚損判定方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1は、本実施の形態に係る紙葉類処理システムの構成例を概略的に示す断面図である。
【0011】
図1に示すように、紙葉類処理システムは、区分装置1、施封装置2及び操作装置3を有している。上記区分装置1と上記施封装置2とは、紙葉類を搬送するための搬送路が接続されている。上記区分装置1と上記操作装置3とは、データ通信を行うための通信線4を介して接続されている。上記区分装置1は、紙葉類の検査処理、および、検査処理の結果に基づく紙葉類の区分処理などを行う装置である。上記施封装置2は、上記区分装置1により供給される紙葉類を所定数ごとに施封する装置である。上記操作装置3は、上記紙葉類処理装置1をオペレータが操作するための装置である。
【0012】
上記操作装置3は、たとえば、パーソナルコンピュータなどにより構成される。上記操作装置3は、本体3a、操作部3bおよび表示部3cを有している。上記本体3aは、操作装置3全体の制御を司るものである。上記本体3aは、図示しない制御部、メモリおよび各種のインターフェースなどを有している。上記本体3aでは、制御部がメモリに記憶されている制御プログラムにより種々の処理を行う。また、上記本体3aは、区分装置1とデータ通信を行うための入出力インターフェース、操作部3bにより入力された情報を取得するための操作部インターフェース、表示部3cの表示制御を行うための表示部インターフェースなどのインターフェースを有している。上記操作部3bは、オペレータが区分装置1に対する操作指示などを入力するためのデバイスである。たとえば、上記操作部3bは、キーボード、マウスあるいはタッチパネルなどにより構成される。上記表示部3cは、処理結果あるいは操作案内などを表示するためのデバイスである。たとえば、上記表示部3cは、液晶表示装置などのディスプレイ装置により構成される。
【0013】
上記のように構成される操作装置3では、オペレータによる操作部3bに対する操作指示に従って区分装置1に対して処理内容を設定したり、オペレータによる操作部3bに対する操作指示に従って区分装置1における処理を開始したり、区分装置1および施封装置2における処理結果を表示部3cに表示したりする。
【0014】
上記区分装置1は、主な構成として、供給部10、搬送補正部15、判別部16、リジェクト集積部17、反転部18、集積部19、主制御部20および搬送制御部21などを有している。以下、上記区分装置1における各構成について順に説明する。
上記主制御部20は、区分装置1全体の制御を司るものである。上記搬送制御部21は、上記主制御部20からの搬送指示に従って区分装置1内における紙葉類の搬送を制御するものである。
【0015】
上記供給部10は、検査対象となる紙葉類Pを供給するものである。上記供給部10は、ステージ11、バックアッププレート12、弾性体13、取り出しローラ14などを有している。上記ステージ11は、検査対象となる紙葉類Pがセットされるものである。上記ステージ11に載置される紙葉類は、搬送方向に対する向きが4種類混在した状態でセットされる。上記バックアッププレート12は、ステージ11上の紙葉類を整位する。上記弾性体13は、バネなどの弾性体で構成される。上記取出しローラ14は、紙葉類の取り出し口に設けられる。上記弾性体13は、一端が取り出し口の近傍に固定されており、他端がバックアッププレート12に接続されている。
【0016】
上記バックアッププレート12は、上記弾性体13の弾性力によりステージ11上の紙葉類Pを取り出しローラ14が設けられている取出し口の方向に押す。これにより、上記ステージ11上の紙葉類Pは、取り出しローラ14が設けられている取り出し口側に押し付けられる。上記取出しローラ14は、取り出し口側に押し付けられた紙葉類Pを1枚ずつ取り出す。上記取り出しローラ14により取り出された紙葉類Pは、搬送補正部15へ搬送される。
【0017】
上記搬送補正部15は、紙葉類Pの搬送状態を補正するものである。上記搬送補正部15は、たとえば、搬送中の紙葉類におけるスキュー(傾き)およびスライド(位置ずれ)などを補正する。上記搬送補正部15は、複数の搬送ローラおよびタイミングセンサなどにより構成される。上記搬送補正部15により搬送状態が補正された紙葉類Pは、判別部16へ搬送される。
【0018】
上記判別部16は、紙葉類の真偽あるいは状態などを判別するものである。上記判別部16による判別処理については、後で詳細に説明する。上記判別部16による判別結果は、区分装置1内における紙葉類の搬送を制御する主制御部20へ供給される。上記主制御部20は、上記判別部16による判別結果に基づいて、区分装置1内の各所に設けられている各ゲートG1〜G8の駆動を制御する。
【0019】
上記ゲートG1は、例えば、リジェクト券と処理券とに振り分けるゲートである。リジェクト券とは、上記判別部16により「判別が不能である券」と判別された紙葉類であるものとする。つまり、リジェクト券は、たとえば、上記判別部16により偽券であると判定された紙葉類、折れ、破れあるいはスキューがあると判定された紙葉類などである。上記主制御部20は、判別部16によりリジェクト券と判定された紙葉類がリジェクト集積部17へ搬送されるようにゲートG1を駆動させる。たとえば、図1に示す例では、上記主制御部20は、ゲートG1を右側(時計方向)にスイングさせることにより、紙葉類を該リジェクト券としてリジェクト集積部17へ搬送させる。
【0020】
また、処理券とは、上記判別部16により「処理が可能である券」と判別された紙葉類であるものとする。たとえば、処理券は、上記判別部16により真券であると判定された紙葉類Pである。ただし、真券として処理券と判定された紙葉類Pには、汚損度が低い正券と、汚損度が大きい損券とが含まれるものとする。たとえば、再流通が可能な紙葉類が正券と判定され、再流通が不能な紙葉類が損券と判定される。上記主制御部20は、上記判別部16により処理券と判定された紙葉類が区分処理されるようにゲートG1を駆動させる。たとえば、図1に示す例では、上記主制御部20は、ゲートG1を左側(反時計方向)にスイングさせることにより、紙葉類を処理券として区分処理を行うための後段の各部(反転部18、集積部19、あるいは、施封装置4)へ搬送させる。
【0021】
上記ゲートG1を処理券として通過した紙葉類は、ゲートG2に搬送される。上記ゲートG2は、反転部18の手前に設けられている。上記ゲートG2は、反転が必要な紙葉類と反転が不要な紙葉類とを振り分けるゲートである。すなわち、上記主制御部20は、上記判別部16による判別結果と集積部19あるいは施封装置2の設定状態とに基づいて、紙葉類の向きあるいは表裏を反転する必要があるか否かを判断する。
【0022】
上記主制御部20は、向きあるいは表裏の反転が必要であると判断した紙葉類を反転部18へ搬送するように、ゲートG2を駆動させる。たとえば、図1に示す例では、上記主制御部20は、ゲートG2を右側(時計方向)にスイングさせることにより、向きあるいは表裏反転が必要な紙葉類を反転部18へ搬送させる。また、上記主制御部20は、向きあるいは表裏の反転が不要であると判断した紙葉類を集積部19あるいは施封装置4へ搬送するように、ゲートG2を駆動させる。たとえば、図1に示す例では、上記主制御部20は、ゲートG2を左側(反時計方向)にスイングさせることにより、表裏反転が不要な紙葉類が反転部18を通過しないように搬送させる。
【0023】
上記反転部18は、スイッチバック反転部(図示しない)及び表裏反転部18aなどにより構成される。上記スイッチバック反転部は、紙葉類の向きを反転させる機構である。上記表裏反転部18aは、紙葉類の表裏を反転させる機構である。たとえば、紙葉類の向きのみを反転させる場合、上記反転部18では、上記スイッチバック反転部により紙葉類の向きを反転させる。紙葉類の表裏のみを反転させる場合、上記反転部18では、上記表裏反転部18aにより紙葉類の表裏を反転させる。また、紙葉類の向きと表裏とを反転させる場合、上記反転部18では、上記スイッチバック反転部と上記表裏反転部18aとにより紙葉類の向きおよび表裏を反転させる。
【0024】
上記反転部18を通過した紙葉類は、ゲートG3へ搬送される。また、上記ゲートG2により反転不要として搬送された紙葉類は、ゲートG3へ搬送される。上記ゲートG3は、紙葉類の搬送先を集積部19あるいは施封装置2の何れかに振り分けるゲートである。すなわち、上記主制御部20は、上記判別部16による判別結果と集積部19および施封装置2の設定状態とに基づいて、紙葉類を集積部19へ搬送するか、施封装置2へ搬送するかを判断する。
【0025】
上記主制御部20は、紙葉類を施封装置2へ搬送させると判断した場合、紙葉類が施封装置2へ搬送されるように、ゲートG3を駆動させる。たとえば、図1に示す例では、上記主制御部20は、ゲートG3を右側(時計方向)にスイングさせることにより、紙葉類を施封装置2へ搬送させる。また、上記主制御部20は、紙葉類を集積部19へ搬送させると判断した場合、当該紙葉類が集積部19へ搬送されるように、ゲートG3を駆動させる。たとえば、図1に示す例では、上記主制御部20は、ゲートG3を左側(反時計方向)にスイングさせることにより、当該紙葉類を集積部19へ搬送させる。
【0026】
上記集積部19は、ゲートG4〜G8と集積庫19a〜19fを有している。各ゲートG4〜G8は、紙葉類を各集積庫19a〜19fに振り分けるためのゲートである。上記各ゲートG4〜G8は、それぞれ集積庫19a〜19eに集積する紙葉類とそれ以外の紙葉類とを振り分ける。たとえば、紙葉類を集積庫19aに集積する場合、上記主制御部20は、当該紙葉類を集積庫19aへ振り分けるようにゲートG4を駆動させる。同様に、紙葉類を集積庫19b〜19eに集積する場合、上記主制御部20は、当該紙葉類を集積庫19b〜19eへ振り分けるようにゲートG5〜G8を駆動させる。また、紙葉類を集積庫19fに集積する場合、上記主制御部20は、当該紙葉類を集積庫19fへ振り分けるようにゲートG8を駆動させる。
【0027】
また、上記主制御部20は、上記判別部16による判別結果などに基づいて各紙葉類を集積すべき集積庫を決定する。たとえば、各集積庫19a〜19fに紙葉類の券種が割り当てられている場合、上記主制御部20は、上記判別部16による券種の判別結果に基づいて紙葉類を集積すべき集積庫を決定する。
【0028】
上記各集積庫は、羽根車、一時集積庫、シャッター、カセットおよびプッシャーなどにより構成されている。各集積庫では、搬送される紙葉類Pの運動エネルギーを羽根車により吸収しながら一時集積庫に紙葉類を集積する。一時集積庫に集積された紙葉類は、シャッターが開放させることにより、カセット内に落下する。カセット内に落下した紙葉類は、プッシャーによりカセットの奥へ押し込まれる。
【0029】
上記施封装置2は、施封制御部30、主搬送路31、第1集積部32、第2集積部33、施封機構34などにより構成される。上記施封制御部30は、施封装置2内の制御を司るものである。上記主搬送路31は、上記区分装置1から供給される紙葉類を搬送するものである。上記主搬送路31を搬送される紙葉類は、ゲートG11あるいはゲートG12により第1集積部32あるいは第2集積部33の何れかに振り分けられる。たとえば、ゲート11は、上記主搬送路31を搬送される紙葉類を第1集積部32へ搬送させるためのゲートである。つまり、上記施封制御部30は、ゲートG11を駆動させることにより、紙葉類を第1集積部32へ搬送させる。
【0030】
上記第1集積部32および第2集積部33は、羽根車、一時集積庫、バックアッププレートなどにより構成される。上記第1集積部32および第2集積部33において、羽根車は、紙葉類の運動エネルギーを吸収しつつ、当該紙葉類を一時集積庫へ集積する。一時集積庫に集積された所定数(たとえば、100枚)の紙葉類は、上昇及び下降が可能なバックアッププレートにより、施封機構34内の施封トレイ34aに渡される。
【0031】
上記施封機構34は、施封トレイ34a、印刷部34b、帯巻き部34cなどにより構成される。上記施封機構34において、施封トレイ34aには、上記バックアッププレートから所定数の紙葉類が積載される。印刷部34bは、印刷機構と帯送り機構とを有している。上記印刷機構は、施封トレイ34aに積載された所定数の紙葉類を施封するための紙帯に所定の事項を印刷する。印刷機構により印刷処理された紙帯は、帯送り機構により帯巻き部34cへ送り出される。上記帯巻き部34cは、上記印刷部34bから送り出された紙帯を施封トレイ34aに積載された所定数の紙葉類に巻き付ける。
【0032】
図2は、上記のように構成される紙葉類処理システムにおける制御系統の構成例を概略的に示すブロック図である。
図2に示すように、主制御部20には、判別部16、搬送制御部26、施封制御部400及び操作装置3などが接続されている。
【0033】
上記主制御部20は、操作装置3から動作指示が与えられる。また、上記主制御部20は、区分装置1あるいは施封装置2における上記判別部16による判別結果などを含む紙葉類の処理結果を示す情報を操作装置3へ送信する機能も有している。上記主制御部20は、上記判別部16から紙葉類Pに対する判別結果を受信する。また、上記主制御部20は、処理モードなどに応じた判定処理などのための設定値などを判別部16に送信する機能も有している。上記主制御部20は、搬送制御部21及び施封制御部30を制御する。上記主制御部20は、上記搬送制御部21に対して紙葉類に対する搬送処理の指示を送信する。また、上記主制御部20は、上記搬送制御部21から区分装置1内における紙葉類の搬送状況を示す情報などを受信する機能も有している。上記主制御部20は、施封制御部30に対して紙葉類に対する施封処理の指示を送信する。また、上記主制御部20は、上記施封制御部30から施封装置2における紙葉類の処理状況を示す情報などを受信する機能も有している。
【0034】
上記主制御部20は、図2に示すように、CPU41、記憶部42、I/F(インターフェース)部43、I/F(インターフェース)部44などを有している。
上記CPU41は、主制御部20における制御あるいはデータ処理などを司るものである。上記CPU41は、上記記憶部42に記憶されている各種のプログラムを実行することにより種々の処理を実現している。上記記憶部42は、種々のデータを記憶するメモリである。上記記憶部42は、RAM、ROM、NVRAM、あるいは、ハードディスク装置などのメモリによりれる。
【0035】
図2に示す例では、上記記憶部42には、上記CPU41により実行されるプログラムとして、アプリケーションプログラム46a、コマンドプログラム46b、保守プログラム46cなどがインストールされている。また、上記記憶部42には、主制御部における各種の処理に用いられるパラメータ47なども記憶されている。
上記インターフェース部43は、上記判別部16、上記搬送制御部21あるいは上記施封制御部30とのデータ通信を行うためのインターフェースである。上記インターフェース部44は、上記操作装置3とのデータ通信を行うためのインターフェースである。
【0036】
上記判別部16は、図2に示すように、CPU51、記憶部52、インターフェース(I/F)部53、画像読取部54a、信号処理部55a、センサ54b、54c、…、54n、信号処理部55b、55c、…、55nなどを有している。
上記CPU51は、紙葉類に対する種々の判定処理などを実行するものである。上記CPU51は、上記記憶部52に記憶されている各種のプログラムを実行することにより種々の処理を実現している。上記記憶部52は、種々のデータを記憶するメモリである。上記記憶部52は、RAM、ROM、NVRAM、あるいは、ハードディスク装置などのメモリにより構成される。たとえば、上記記憶部52には、上記CPU51により実行されるプログラム56a、56b、56c、…、56dおよびパラメータ58などが記憶される。上記インターフェース部53は、上記主制御部20とのデータ通信を行うためのインターフェースである。たとえば、上記判別部16による種々の判定結果は、上記インターフェース部53を介して上記主制御部20へ通知される。
【0037】
上記画像読取部54aは、判別対象とする紙葉類の画像を読取るものである。つまり、上記画像読取部54aは、図1に示すような構成によって搬送される紙葉類の画像を読取るものである。上記画像読取部54aは、たとえば、紙葉類の画像をカラー画像として光学的に読取るカラースキャナにより構成される。本実施例において、上記画像読取部54aは、各画素を赤(R)、緑(G)、ブルー(B)の各信号で表したカラー画像情報を読取るものとする。ただし、上記画像読取部54aは、複数の要素で表される画像情報を読取るものであれば良い。上記信号処理部55aは、上記画像読取部54aにより読取った画像情報を処理するものである。上記画像読取部54aにより読取った画像情報は、上記信号処理部55aにより所定の処理が施される。上記信号処理部55aにより処理された画像情報は、上記CPU51へ供給される。
【0038】
また、各センサ54b、54c、…、54nは、それぞれ、紙葉類から種々の情報を検知するためのセンサである。複数のセンサ54b、54c、…、54nには、紙葉類における磁気情報を示す信号を検知するセンサ、紙葉類の厚さを示す信号を検知するセンサ、紙葉類における蛍光情報を示す信号を検知するセンサなどが含まれている。各信号処理部55b、55c、…、55nは、それぞれ、各センサ54b、54c、…、54nにより検知した信号を処理するものである。たとえば、信号処理部55b、55c、…、55nは、信号を増幅する増幅回路、アナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換回路、あるいは、デジタル信号を論理演算する論理回路などにより構成される。
【0039】
図2に示す例では、上記記憶部52には、上記CPU51により実行されるプログラムとして、汚損判定プログラム56a、判別プログラム56b、56c、…、56nなどがインストールされている。また、上記記憶部52には、上記CPU51により実行される各種の処理に用いられるパラメータ58なども記憶されている。また、上記記憶部52には、辞書部59が記憶されている。
【0040】
上記CPU51は、上記記憶部52に記憶されている汚損判定プログラム56aを実行することにより汚損判定部として機能する。また、各判別プログラム56b、56c、…、56nは、それぞれセンサ54b、54c、…、54nに対応づけられるプログラムである。各判別プログラム56b、56c、…、56nは、センサ54b、54c、…、54nが検知した信号に基づいて紙葉類における種々の特徴を判別するためのプログラムである。すなわち、上記CPU51は、各判別プログラム56b、56c、…、56nを実行することにより種々の特徴を判定する判定部として機能する。
【0041】
上記記憶部52に記憶される辞書部59は、上記汚損判定プログラム56aにより実現される汚損判定処理において参照される情報が記憶される。例えば、上記辞書部59には、画像情報における複数の特徴量から固有変動の成分とそれ以外の残差成分を分離するための変換行列(第1の変換行列)AY、および、前記固有変動の成分を除いた残差成分から汚損の度合いを示す変動成分と抽出するための変換行列(第2の変換行列)ACが記憶される。
【0042】
上記搬送制御部21は、図2に示すように、CPU61、記憶部62、インターフェース(I/F)部63などを有している。
上記CPU61は、搬送制御部21における各種の制御あるいはデータ処理などを司るものである。上記CPU61は、上記記憶部62に記憶されている各種のプログラムを実行することにより種々の処理を実現している。上記記憶部62は、種々のデータを記憶するメモリである。上記記憶部62は、RAM、ROM、NVRAM、あるいは、ハードディスク装置などのメモリにより構成される。
【0043】
図2に示す例では、上記記憶部62には、上記CPU51により実行されるプログラムとして、搬送制御ファームウエア65などがインストールされている。また、上記記憶部62には、搬送制御部21における搬送制御に用いられる搬送制御パラメータ66なども記憶されている。
上記インターフェース部63は、上記主制御部20とのデータ通信を行うためのインターフェースである。たとえば、上記CPU61は、上記インターフェース部63を介して上記主制御部20から与えられる搬送指示に従って紙葉類の搬送制御を行う。
【0044】
上記操作装置3は、図2に示すように、本体3a、操作部3b、表示部3cなどを有している。
上記本体3aは、CPU、メモリ、各種インターフェースなどを有している。上記本体3aは、上記CPUが上記メモリに記憶されている各種のプログラムを実行することにより種々の処理を実現している。上記操作部3bは、キーボード、マウス、タッチパネルなどの入力装置により構成される。オペレータが上記操作部3bにより入力された情報は、図示しないインターフェースを介して本体3aに供給される。上記表示部3cは、液晶表示装置などの表示装置により構成される。上記表示部3cには、紙葉類の処理結果を表示したり、オペレータに対する操作案内などを表示したりする。
上記のように構成される操作装置3では、たとえば、上記本体3aは、オペレータが操作部3bにより入力した操作指示を上記主制御部20へ出力する。また、上記本体3aは、上記主制御部20から要求される紙葉類の処理結果を示す情報などを表示部3cに表示する機能を有する。
【0045】
次に、上記判別部16において汚損判定処理を行うための構成について説明する。
図3は、汚損判定処理を行う汚損判定部70の構成例を示すブロック図である。
上述したように、上記判別部16では、上記CPU51が上記記憶部52に記憶されている汚損判定プログラム56aを実行することにより汚損判定部70として機能する。図3に示す汚損判定部70における各構成要素は、上記CPU51が汚損判定プログラム56aを実行することにより実現される機能であるものとする。ただし、上記汚損判定部70における一部又は全部の構成要素は、ハードウエアにより構成しても良い。
【0046】
図3に示すように、上記汚損判定部70は、入力処理部71、特徴抽出部72、分離部73、判定部74、出力処理部75、変動学習部(第1の学習部)76、辞書処理部77、および、汚損学習部(第2の学習部)78などを有している。
上記入力処理部71は、画像情報を入力する処理を行う。上記入力処理部71は、上記画像読取部54aで読取った紙葉類の画像情報を上記信号処理部55aにより処理した画像情報を入力する。本実施例では、上記入力処理部71は、複数の色信号(R信号、G信号及びB信号)で表現されるカラー画像情報(つまり、紙葉類のカラー画像)を入力する。たとえば、上記入力処理部71は、後述する汚損判定処理において汚損判定の対象とする画像情報を入力する処理を行う。また、上記入力処理部71は、後述する変動成分の学習処理あるいは汚損成分の学習処理において、サンプルとなる画像情報を入力する処理を行う。
【0047】
上記特徴抽出部72は、上記入力処理部71により入力した画像情報における複数の特徴量を抽出する。たとえば、入力した画像情報が赤(R)、緑(G)、青(B)からなるカラー画像である場合、上記特徴抽出部72は、複数の特徴量として、当該画像情報における複数のプレーンな色情報(R、G、B)ごとの各濃度平均値を算出する。ただし、上記特徴抽出部72が抽出する特徴量は、R、G、Bの各濃度平均値に限定されるものではない。たとえば、上記特徴抽出部72は、赤外線センサにより読取った画像情報(IR)における濃度平均値を特徴量の1つとして抽出するようにしても良い。さらには、上記特徴抽出部72は、種々の信号における濃度平均値に限らず、濃度分散値、濃度微分値などを特徴量として抽出するようにしても良い。
【0048】
また、上記特徴抽出部72が抽出する特徴量の数は、3つに限定されるものではない。たとえば、上記特徴抽出部72は、R、G、B、IRの各濃度平均値を4つの特徴量として抽出するようにしても良い。さらには、上記特徴抽出部72は、入力された画像情報を複数の小領域に分割し、分割した各小領域における各信号の濃度平均値を複数の特徴量として抽出するようにしても良い。上記特徴抽出部72は、上記のような様々な特徴を単一あるいは組み合わせた複数の特徴量を抽出することが可能である。
【0049】
上記変動学習部76は、入力される画像情報における固有変動の成分を分離(除去)するための情報を生成(学習)するものである。たとえば、特定の図柄が印刷されている印刷物(紙葉類)の読取画像が入力される場合、上記変動学習部76は、たとえば、固有変動の成分として、当該紙葉類に対する図柄の印刷工程で発生する印刷変動成分を抽出するための情報を生成する。言い換えれば、上記変動学習部76は、処理対象とする印刷物における汚れに起因しない固有変動の成分(印刷変動成分)を抽出するための情報を生成する。本実施の形態では、上記変動学習部76は、固有変動成分を抽出するための変換行列を生成するものとする。
【0050】
すなわち、上記変動学習部76は、汚損がない状態の画像情報から抽出される複数の特徴量を複数次元の特徴ベクトルとしてKL展開する。KL展開は、主成分分析である。従って、上記特徴ベクトルに対するKL展開により、固有の変動成分としての主成分とそれ以外の成分(残差成分)とが分離された部分空間Yが生成される。上記変動学習部76は、処理対象とする印刷物の画像情報から主成分と残差成分とを分離するための変換行列AYを算出する。変換行列AYは、画像情報から抽出される複数の特徴量の組としての特徴ベクトルを、部分空間Yに射影した射影値(第1の部分ベクトル)を算出する。この射影値としては、特徴量の数(次元数)に応じた各成分が得られる。すなわち、上記射影値が、固有の変動成分とそれ以外の残差成分とを分離した値となる。
【0051】
上記分離部73は、入力された画像情報における種々の成分を分離する処理を行う。上記分離部73は、入力した画像情報における固有変動成分とそれ以外の残差成分とに分離するものである。たとえば、3つの特徴量が得られた場合、上記分離部73は、変換行列AYにより、3つの特徴量の組としての3次元の特徴ベクトルを、部分空間Yに射影した射影値としての部分空間(第1の部分ベクトル)を算出する。すなわち、上記分離部73は、上記変動学習部76により生成された3次元の部分空間Yに基づいて、画像情報における3つの特徴量の組を固有変動の主成分と残差成分とに分離する。これにより、上記分離部73では、画像情報における固有変動の主成分を除いて、残りの残差成分を抽出することが可能となっている。
【0052】
上記汚損学習部78は、入力される画像情報における汚損による変動の成分を分離(抽出)するための情報を生成(学習)するものである。原理的には、上記固有変動の成分が除去された画像情報では、変動成分が汚損の度合いを示す情報と考えらえる。すなわち、上記汚損学習部78は、固有変動の成分が除かれた残差成分から汚損度を示す変動成分を抽出するための情報を生成する。本実施の形態では、上記汚損学習部78は、汚損変動の成分を抽出するための変換行列ACを生成するものとする。
【0053】
すなわち、上記汚損学習部78は、汚損がある画像情報から得られる固有変動の成分を除去した残差成分の組を位置ベクトルとしてKL展開する。KL展開は、主成分分析である。従って、上記位置ベクトル(残差成分ベクトル)に対するKL展開では、変動の主成分としての汚損成分とそれ以外の成分(残差成分)とが分離された部分空間Cが生成される。上記汚損学習部78は、処理対象とする印刷物の画像情報から固有変動の成分を除いた残差成分からなるベクトルにおける変動の主成分(汚損成分)を抽出するための変換行列ACを算出する。変換行列ACは、画像情報から抽出される複数の特徴量の組から固有変動の成分を除去した残差成分の組からなる位置ベクトルを、部分空間Cに射影した射影値(第2の部分ベクトル)を算出する。この射影値では、主成分が汚損の度合いを示す変動量となる。
【0054】
上記判定部74は、汚損度の判定を行うものである。図3に示す構成例においては、上記判定部74は、上記分離部73により固有変動の成分が分離された残差成分に基づいて汚損度を判定する。たとえば、3つの特徴量の組(特徴ベクトル)から固有変動の成分と2つの残差成分とが得られた場合、上記判定部74は、2つの残差成分の組み(2次元の位置ベクトル)を変換行列ACにより2次元の部分空間Cに射影した射影値としての部分空間(第2の部分ベクトル)を算出する。部分空間Cへの射影値では、主成分としての汚損変動の成分が抽出される。これにより、上記判定部74は、汚損変動の成分の大きさに基づいて汚損度を判定する。
【0055】
上記出力処理部75は、上記判定部74による汚損度の判定結果を出力する処理を行うものである。上記出力処理部75は、たとえば、上記インターフェース部53を介して主制御20へ汚損度を示す情報を出力する。ここでは、紙葉類の汚損度を判定することを想定している。このため、上記出力処理部75は、上記画像読取部54aにより画像を読取った紙葉類に対する汚損度を示す情報を主制御部20へ出力する。
【0056】
上記辞書処理部77は、上記辞書部59に対する処理を行うものである。たとえば、上記辞書処理部77は、上記変換行列AYあるいは上記変換行列ACを辞書部59から読み出す処理を行う。また、上記辞書処理部77は、上記変動学習部76により生成した変換行列AY、あるいは、上記汚損学習部78により生成した変換行列ACを辞書部59に記憶する処理を行う。また、上記辞書処理部77は、上記辞書59に記憶されている変換行列AYあるいは変換行列ACの更新処理なども行う。たとえば、上記汚損学習部78により新たな変換行列ACが生成された場合、上記辞書処理部77は、上記辞書59に記憶されている変換行列ACの更新処理を行う。
【0057】
次に、上記のように構成される汚損判定部70の動作について説明する。
上記汚損判定部70は、大別すると、変動成分の学習処理、汚損成分の学習処理、および、汚損度の判定処理を行う。
上記変動成分の学習処理は、画像情報における固有の変動成分(つまり、汚損に起因しない変動成分)を抽出するための情報を生成する処理である。なお、たとえば、印刷物の画像情報における固有の変動成分としては、主として、印刷物への印刷工程で生じる印刷変動などが考えられる。上記変動成分の学習処理は、判別部16内のCPU51が変動成分の学習プログラム57aを実行することにより実現される。
上記汚損成分の学習処理は、画像情報に含まれる汚損成分(つまり、汚損に起因する変動成分)を抽出するための情報を生成する処理である。上記汚損成分の学習処理は、判別部16内のCPU51が汚損成分の学習プログラム57bを実行することにより実現される。
【0058】
上記汚損度の判定処理は、画像情報から固有の変動成分を除いた情報における汚損成分の大きさにより汚損度を判定する。すなわち、上記汚損度の判定処理では、上記変動成分の学習処理により得られた情報に基づいて、入力した画像情報から固有の変動成分が取り除かれる。さらに、上記汚損度の判定処理では、上記汚損成分の学習処理により得られた情報に基づいて、固有の変動成分を除いた情報から汚損成分の大きさ(つまり、汚損度)が判定される。上記汚損成分の学習処理は、判別部16内のCPU51が汚損度の判定プログラム57cを実行することにより実現される。
【0059】
以下、変動成分の学習処理、汚損成分の学習処理、および、汚損度の判定処理について、それぞれ詳細に説明する。なお、以下の説明では、紙葉類(印刷物)の一例として紙幣を処理対象として想定するものとする。
【0060】
まず、上記変動成分の学習処理について説明する。
紙幣などの紙葉類は、所定の図柄が媒体(券面)に印刷されることにより作成されるものである。所定の図柄が印刷された直後の紙葉類には、使用に伴う汚れがない状態(未使用状態)である。このような紙葉類は、流通段階で徐々に汚れていくものと考えられる。このため、上記変動成分の学習処理では、流通前の状態(つまり、未使用状態)の複数の紙葉類から読取った画像情報がサンプルとして入力される。上記変動成分の学習処理では、未使用状態の複数の紙葉類から読取った画像情報から固有の変動成分を示す情報を生成する。
【0061】
図4は、上記汚損判定部70における変動成分の学習処理の流れを説明するためのフローチャートである。
ここでは、変動成分の学習処理においてサンプルとして必要な画像情報(未使用状態の紙葉類の画像)の数がI(N)個であるものとする。ただし、I(N)は、2以上の自然数である。I(N)は、後述する部分空間Yを生成するためのサンプル数である。
【0062】
変動成分の学習処理を開始する場合、オペレータは、上記供給部10にI(N)枚以上の未使用状態の紙葉類をセットする。さらに、オペレータは、操作装置3の操作部3bに変動成分の学習処理を開始する旨の操作指示を入力する。すると、上記操作装置3の本体3aは、上記区分装置1の主制御部20に対して変動成分の学習処理の開始指示を供給する。
上記操作装置3から変動成分の学習処理の開始指示を受けると、上記主制御部20は、上記判別部16に対して変動成分の学習処理の実行を指示する。上記判別部16において、上記CPU51は、上記インターフェース部53を介して上記主制御部20からの変動成分の学習処理の実行指示を受信する。変動成分の学習処理の実行指示を受信すると、上記CPU51は、汚損判定プログラム56aに含まれる変動成分の学習プログラム57aをロードする。これにより、上記CPU51は、変動成分の学習処理を実行するための上記汚損判定部70として機能する。
【0063】
また、上記操作装置3から変動成分の学習処理の開始指示を受けた上記主制御部20は、上記搬送制御部21により上記供給部10にセットされている未使用状態の紙葉類を1枚ずつ搬送させる。これにより、未使用状態の紙葉類は、1枚ずつ判別部16へ搬送される。上記判別部16では、上記画像読取部54aにより搬送されている未使用状態の紙葉類の画像を順次読取る。上記画像読取部54aにより読取った画像情報は、順次、上記信号処理部55aを介して上記汚損判定部70として機能する上記CPU51へ供給される。
【0064】
上記汚損判定部70として機能する上記CPU51は、まず、変数iの初期値として「i=1」を設定する(ステップS11)。なお、上記変数iは、たとえば、図示しないCPU51の内部メモリにセットされる。上記変数iがI(N)以下である場合(ステップS12、YES)、上記汚損判定部70の上記入力処理部71は、上記画像読取部54aにより読取ったi番目の紙葉類の画像情報X(N)iを入力する(ステップS13)。上記入力処理部71により入力した画像情報X(N)iは、上記特徴抽出部72へ供給される。ここで、上記画像読取部54aは、上述したように、R、GおよびB信号からなるカラー画像として紙葉類の画像を読取るものとする。
【0065】
上記入力処理部71から画像情報X(N)iが供給されると、上記特徴抽出部72は、当該画像情報X(N)iにおける複数の特徴量をそれぞれ算出する(ステップS14)。ここでは、上記特徴抽出部72は、当該画像情報X(N)iにおけるカラー画像情報としてのR、G、Bの各濃度平均値(μ(N)Ri、μ(N)Gi、μ(N)Bi)を複数の特徴量として算出する。なお、上記画像情報X(N)iにおける印刷領域(所定の図柄が印刷されている領域)が特定可能な場合、上記特徴抽出部72は、上記画像情報X(N)iの印刷領域において、R、G、Bの各濃度平均値を算出するようにしても良い。
【0066】
上記特徴抽出部72が上記画像情報Xiにおける各濃度平均値(μ(N)Ri、μ(N)Gi、μ(N)Bi)を算出すると、上記変数iは、インクリメントされ、「i=i+1」に更新される(ステップS15)。インクリメントされた変数iがI(N)以下である場合(ステップS12、NO)、上記入力処理部71および上記特徴抽出部72は、各画像情報X(N)iにおける複数の特徴量としてのR、G、Bの各濃度平均値(μ(N)Ri、μ(N)Gi、μ(N)Bi)を算出する処理を繰り返し実行する(ステップS12〜S15)。
【0067】
また、インクリメントされた変数iがI(N)以下でない場合(つまり、i>I(N)である場合)、上記変動学習部76は、入力したI(N)個の画像情報から固有の変動成分を抽出するための部分空間を生成する処理を行う(ステップS16)。すなわち、上記変動学習部76は、I(N)個の各画像情報から上記特徴抽出部72が抽出した複数の特徴量の組みをそれぞれ各画像情報の特徴ベクトルとみなす。上記変動学習部76は、I(N)個の画像情報の特徴ベクトルに対して主成分分析を行う。本実施の形態では、上記変動学習部76は、主成分分析として各画像情報の特徴ベクトルに対してKL展開を行う。上記KL展開は、I(N)個の画像情報の特徴ベクトルの分布を部分空間Y(Y=Y1、Y2、Y3)に変換する処理である。つまり、上記変動学習部76は、I(N)個の画像情報の特徴ベクトル(μ(N)Ri、μ(N)Gi、μ(N)Bi)を上記KL展開により部分空間Yに変換する(ステップS16)。
【0068】
たとえば、図5は、画像情報から得られる複数の特徴量の組としての特徴ベクトル(μ(N)Ri、μ(N)Gi、μ(N)Bi)と部分空間Y(Y1、Y2、Y3)との関係の模式的に示す図である。図5に示すように、上記部分空間Yを構成するY1、Y2、Y3は、互いに直交する3つの方向における成分である。上述したように、I(N)個の画像情報から得られる特徴ベクトルをKL展開することにより算出される上記部分空間Yは、I(N)個の特徴ベクトルの分布を最も良く近似するものである。このような部分空間YにおけるY1は、I(N)個の特徴ベクトルの変動を最も良く近似する主成分(変動成分)である。なお、ここでは、上記部分空間YにおけるY2成分およびY3成分は残差成分とも称するものとする。
【0069】
上記変動成分の学習処理において、入力するI(N)個の画像情報は、未使用状態のN個の紙葉類から読取った画像情報である。ここで、未使用状態のI(N)個の紙葉類には汚損がなく、かつ、同じ画像が印刷されていることを前提とすれば、入力するI(N)個の画像情報間における変動要素は、画像を紙葉類に印刷工程で発生するばらつき(つまり、固有の変動成分)とみなすことができる。つまり、I(N)個の未使用状態の紙葉類から読取ったI(N)個の画像情報における変動は、入力する画像情報における固有の変動成分であると考えられる。従って、上記部分空間YにおけるY1成分は、入力するI(N)個の画像情報における変動の主成分(未使用状態の紙葉類に印刷されている画像における固有の変動成分)であるとみなせる。なお、ここでは、Y1成分としての変動の主成分(固有の変動成分)が、印刷物における印刷変動の主成分であることを想定する。
【0070】
上記部分空間YにおけるY1成分が画像情報における印刷変動の主成分であれば、ある画像情報の特徴ベクトルを上記部分空間Yに射影することにより、当該画像情報における固有の変動成分(印刷変動成分)を容易に抽出(あるいは除去)できる。このため、上記変動学習部76は、画像情報の特徴ベクトルを部分空間Yに射影するための3次元の変換行列AYを生成する。上記変動学習部76により生成された変換行列AYは、上記辞書処理部77により辞書部59に保存される(ステップS17)。上記辞書部59に保存された変換行列AYが、紙葉類の画像情報から固有の変動成分としての印刷変動の主成分を抽出するための情報である。
【0071】
次に、上記汚損成分の学習処理について説明する。
上記汚損成分の学習処理は、紙葉類から読取った画像情報における汚損成分を抽出するための情報を生成する処理である。紙幣などの紙葉類には、流通段階(使用段階)において、汚れあるいは破損などが発生する。上記変動成分の学習処理では、流通後の状態(つまり、使用済みの状態)の複数の紙葉類から読取った画像情報がサンプルとして入力される。このようなサンプルに基づいて汚損成分を抽出するための情報が生成される。ただし、上述したように、各紙葉類に印刷されている画像には、汚損とは無関係の印刷変動成分が含まれる。従って、上記汚損成分の学習処理では、上記変換行列AYにより印刷変動成分を排除して、汚損成分を抽出するための情報を生成する。
【0072】
図6は、上記汚損判定部70における汚損成分の学習処理の流れを説明するためのフローチャートである。
ここでは、汚損成分の学習処理においてサンプルとして必要な画像情報(使用済み状態の紙葉類の画像)の数がI(U)個であるものとする。ただし、I(U)は、2以上の自然数であり、後述する部分空間Cを生成するためのサンプル数である。
【0073】
汚損成分の学習処理を開始する場合、オペレータは、上記供給部10にI(U)個以上の使用済み状態の紙葉類をセットする。さらに、オペレータは、操作装置3の操作部3bに汚損成分の学習処理を開始する旨の操作指示を入力する。すると、上記操作装置3の本体3aは、上記区分装置1の主制御部20に対して汚損成分の学習処理の開始指示を供給する。
【0074】
上記操作装置3から汚損成分の学習処理の開始指示を受けると、上記主制御部20は、上記判別部16に対して汚損成分の学習処理の実行を指示する。上記判別部16において、上記CPU51は、上記インターフェース部53を介して上記主制御部20からの変動成分の学習処理の実行指示を受信する。変動成分の学習処理の実行指示を受信すると、上記CPU51は、汚損判定プログラム56aに含まれる汚損成分の学習プログラム57bをロードする。これにより、上記CPU51は、汚損成分の学習処理を実行するための上記汚損判定部70として機能する。
【0075】
また、上記操作装置3から汚損成分の学習処理の開始指示を受けた上記主制御部20は、上記搬送制御部21により上記供給部10にセットされている使用済み状態の紙葉類を1枚ずつ搬送させる。これにより、使用済み状態の紙葉類は、1枚ずつ判別部16へ搬送される。上記判別部16では、上記画像読取部54aにより搬送されている使用済み状態の紙葉類の画像を順次読取る。上記画像読取部54aにより読取った画像情報は、順次、上記信号処理部55aを介して上記汚損判定部70として機能する上記CPU51へ供給される。
【0076】
上記汚損判定部70として機能する上記CPU51は、まず、変数iの初期値として「i=1」を設定する(ステップS21)。なお、上記変数iは、たとえば、図示しないCPU51の内部メモリにセットされる。上記変数iがI(U)以下である場合(ステップS22、YES)、上記汚損判定部70の上記入力処理部71は、上記画像読取部54aにより読取ったi番目の紙葉類の画像情報X(U)iを入力する(ステップS23)。上記入力処理部71により入力した画像情報X(U)iは、上記特徴抽出部72へ供給される。ここで、上記画像読取部54aは、上述したように、R、GおよびB信号からなるカラー画像として紙葉類の画像を読取るものとする。
【0077】
上記入力処理部71から画像情報X(U)iが供給されると、上記特徴抽出部72は、当該画像情報X(U)iにおける複数の特徴量をそれぞれ算出する(ステップS24)。ここでは、上記特徴抽出部72は、当該画像情報X(U)iにおけるカラー画像情報としてのR、G、Bの各濃度平均値(μ(U)Ri、μ(U)Gi、μ(U)Bi)を複数の特徴量として算出する。ただし、上記画像情報X(U)iにおける画像の印刷領域が特定可能な場合、上記特徴抽出部72は、上記印刷領域において、R、G、Bの各濃度平均値を複数の特徴量として算出するようにしても良い。
【0078】
上記特徴抽出部72により算出した上記画像情報X(U)iにおける濃度平均値(μ(U)Ri、μ(U)Gi、μ(U)Bi)は、上記分離部73へ供給される。ここで、各濃度平均値の組(μ(U)Ri、μ(U)Gi、μ(U)Bi)は、当該画像情報X(U)iの特徴ベクトルとみなされるものとする。上記画像情報X(U)iの特徴ベクトル(μ(U)Ri、μ(U)Gi、μ(U)Bi)が供給されると、上記分離部73は、上記辞書処理部77を介して上記辞書部59に記憶されている変換行列AYを読み込む(ステップS25)。上記変動成分の学習処理で説明したように、上記変換行列AYは、特徴ベクトルを部分空間Yに射影するものである。
【0079】
上記辞書部59から変換行列AYを読み込むと、上記分離部73は、当該画像情報X(U)iの特徴ベクトルμ(U)(μ(U)Ri、μ(U)Gi、μ(U)Bi)を変換行列AYにより3次元の値Y(U)(Y(U)1i、Y(U)2i、Y(U)3i)に変換する(ステップS26)。上記変換行列AYにより算出される3次元の値Y(U)は、特徴ベクトルμ(U)を部分空間Yに射影した射影値である。上述したように、上記部分空間YのY1成分は、汚損に無関係な固有の変動成分(印刷変動の主成分)である。従って、当該画像情報X(U)iの特徴ベクトルμ(U)を部分空間Yに射影した値におけるY(U)1成分は、固有の変動成分(印刷変動の主成分)であると考えられる。言い換えると、上記画像情報X(U)iの特徴ベクトルμ(U)を部分空間Yに射影した値における残差成分Y(U)2およびY(U)3には、当該画像情報X(U)iにおける汚損成分が含まれると考えられる。
【0080】
上記分離部73は、変換行列AYにより算出した射影値Y(U)を図示しないバッファメモリに蓄積する。上記射影値が算出されると、上記変数iは、インクリメントされ、「i=i+1」に更新される(ステップS27)。インクリメントされた変数iがI(U)以下である場合(ステップS22、NO)、上記入力処理部71は、次の画像情報X(U)iを入力する。これにより、上記汚損判定部70では、上記変数iがI(U)よりも大きくなるまで、上記ステップS22〜S27の処理が繰り返し実行される。
【0081】
また、インクリメントされた変数iがI(U)以下でない場合(つまり、i>I(U)である場合)、上記汚損学習部78は、上記分離部73により算出したI(U)個の射影値から汚損成分を抽出するための部分空間Cを生成する処理を行う(ステップS28)。
すなわち、上記汚損学習部78は、上記分離部73により算出した各射影値におけるY(U)2iおよびY(U)2iの組みを2次元の位置ベクトル(Y(U)2i、Y(U)3i)とみなす。上記汚損学習部78は、N個の2次元の位置ベクトル(Y(U)2i、Y(U)3i)に対して主成分分析を行う。
本実施の形態では、上記汚損学習部78は、主成分分析としてN個の2次元の位置ベクトル(Y(U)2i、Y(U)3i)に対してKL展開を行う。上記KL展開は、I(U)個の2次元の位置ベクトルの分布を部分空間C(C2、C3)に変換する処理である。つまり、上記汚損学習部78は、上記分離部73により分離された固有の変動成分(印刷変動の主成分)を除去したN個の2次元の位置ベクトル(Y(U)2i、Y(U)3i)を上記KL展開により部分空間Cに変換する。
【0082】
図7は、印刷変動成分を除去したN個の位置ベクトル(Y(U)2i、Y(U)3i)と部分空間Y(C1、C2)との関係の模式的に示す図である。
図7に示すように、上記部分空間Cを構成するC1およびC2は、互いに直交する2つの方向における成分である。上述したように、N個の画像情報から得られる特徴ベクトルをKL展開することにより算出される上記部分空間Cは、N個の位置ベクトルの分布を最も良く近似するものである。このような部分空間CにおけるC1は、N個の位置ベクトルの変動成分を最も良く近似する主成分である。
【0083】
ここで、2次元の位置ベクトルは、汚損に起因しない固有の変動成分(印刷変動の主成分)が除去されている。このような2次元の位置ベクトルをKL展開した部分空間Cは、主成分として現れる変動成分が汚損成分を示すものであると考えられる。従って、上記部分空間CにおけるC1成分は、紙葉類の画像情報における汚損の主成分(使用状態の紙葉類に印刷されている画像における印刷変動成分を除いた汚損成分)であるとみなせる。
【0084】
上記部分空間CにおけるC1成分が画像情報における汚損成分であれば、ある画像情報の特徴ベクトルを部分空間Yに射影し、さらに、固有の変動成分を除く位置ベクトルを上記部分空間Cに射影することにより、当該画像情報における汚損成分が抽出できる。このため、上記汚損学習部78は、2次元の位置ベクトルを部分空間Cに射影するための2次元の変換行列ACを生成する。上記汚損学習部78により生成された変換行列ACは、上記辞書処理部77により辞書部59に保存される(ステップS29)。上記辞書部59に保存された変換行列ACが、紙葉類の画像情報から汚損成分を抽出するための情報である。
【0085】
次に、上記汚損度の判定処理について説明する。
上記汚損度の判定処理は、汚損度の判定対象とする紙葉類から読取った画像情報における汚損度を判定する処理である。上述したように、使用済み状態の紙葉類から読取った画像情報には、汚損とは無関係の変動成分(たとえば、印刷変動成分)と、汚損に起因する汚損成分とが含まれる。従って、上記汚損度の判定処理には、紙葉類から読取った画像情報における固有の変動成分を排除する処理と、上記固有の変動成分を排除した情報から汚損成分を抽出する処理とが含まれる。また、汚損度の判定処理では、処理対象の紙葉類として実際に使用された紙葉類を想定している。さらに、汚損度の判定処理においては、汚損度の判定処理において得られる情報に基づいて汚損成分を抽出するための情報(変換行列AC)を更新する処理(オンライン学習処理)を行うようにしても良い。
【0086】
図8は、上記汚損判定部70における汚損度の判定処理の流れを説明するためのフローチャートである。
ここでは、上述した紙葉類処理システムにおいて、区分処理の対象とする紙葉類に対する汚損度の判定処理が実行されることを想定するものとする。また、ここでは、汚損度が判定される紙葉類の数(つまり、供給部10にセットされる紙葉類の数)がI(T)個であるものとする。
【0087】
汚損度の判定処理を含む区分処理を開始する場合、オペレータは、処理対象とするI(T)枚の紙葉類を上記供給部10にセットする。さらに、オペレータは、操作装置3の操作部3bに汚損度の判定処理を含む紙葉類に対する区分処理を開始する旨の操作指示を入力する。すると、上記操作装置3の本体3aは、上記区分装置1の主制御部20に対して紙葉類に対する処理の開始指示を通知する。区分処理などの紙葉類に対する処理では、上記判別部16は、汚損度以外の種々の判定処理も行う。このため、上記主制御部20は、上記判別部16に対して汚損度の判定処理を含む種々の判定処理を実行するように指示する。ただし、ここでは、上記判別部16における汚損度の判定処理について説明するものとする。
【0088】
すなわち、上記判別部16のCPU51は、上記インターフェース部53を介して上記主制御部20から汚損度の判定処理の実行指示を受信すると、汚損判定プログラム56aに含まれる汚損度判定プログラム57cをロードする。これにより、上記CPU51は、汚損度の判定処理を実行するための上記汚損判定部70として機能する。
【0089】
また、上記操作装置3から処理の開始指示を受けた上記主制御部20は、上記搬送制御部21により上記供給部10にセットされている処理対象の紙葉類を1枚ずつ搬送させる。これにより、処理対象の紙葉類は、1枚ずつ判別部16へ搬送される。上記判別部16では、上記画像読取部54aにより搬送されている処理対象の紙葉類の画像を順次読取る。上記画像読取部54aにより読取った画像情報は、順次、上記信号処理部55aを介して上記汚損判定部70として機能する上記CPU51へ供給される。
【0090】
上記汚損判定部70として機能する上記CPU51は、まず、変数iの初期値として「i=1」を設定する(ステップS31)。なお、上記変数iは、たとえば、上記CPU51の図示しない内部メモリにセットされる。上記変数iがI(T)以下である場合(ステップS32、YES)、上記汚損判定部70の上記入力処理部71は、上記画像読取部54aにより読取ったi番目の紙葉類の画像情報X(T)iを入力する(ステップS33)。上記入力処理部71により入力した画像情報X(T)iは、上記特徴抽出部72へ供給される。ここで、上記画像読取部54aは、上述したように、R、GおよびB信号からなるカラー画像として紙葉類の画像を読取るものとする。
【0091】
上記入力処理部71から画像情報X(T)iが供給されると、上記特徴抽出部72は、当該画像情報X(T)iにおける複数の特徴量をそれぞれ算出する(ステップS34)。ここでは、上記特徴抽出部72は、当該画像情報X(T)iにおけるカラー画像情報としてのR、G、Bの各濃度平均値(μ(T)Ri、μ(T)Gi、μ(T)Bi)を複数の特徴量として算出する。なお、上記画像情報X(T)iにおいて図柄が印刷されている領域(印刷領域)が特定可能な場合、上記特徴抽出部72は、上記印刷領域において、R、G、Bの各濃度平均値を複数の特徴量として算出するようにしても良い。
【0092】
上記特徴抽出部72により算出した上記画像情報X(T)iにおける濃度平均値(μ(T)Ri、μ(T)Gi、μ(T)Bi)は、上記分離部73へ供給される。ここで、各濃度平均値の組(μ(T)Ri、μ(T)Gi、μ(T)Bi)は、当該画像情報X(T)iの特徴ベクトルμ(T)とみなされるものとする。上記画像情報X(T)iの特徴ベクトルμ(T)が供給されると、上記分離部73は、上記辞書処理部77を介して上記辞書部59に記憶されている変換行列AYを読み込む(ステップS35)。上記変動成分の学習処理で説明したように、上記変換行列AYは、特徴ベクトルμ(T)を部分空間Yに射影するものである。
【0093】
上記辞書部59から変換行列AYを読み込むと、上記分離部73は、当該画像情報X(T)iの特徴ベクトルμ(T)(μ(T)Ri、μ(T)Gi、μ(T)Bi)を変換行列AYにより3次元の値Y(T)(Y(T)1i、Y(T)2i、Y(T)3i)に変換する(ステップS36)。上記変換行列AYにより算出される3次元の値(Y(T)1i、Y(T)2i、Y(T)3i)は、画像情報X(T)iの特徴ベクトルμ(T)を部分空間Yに射影した射影値である。上述したように、上記部分空間YのY1成分は、汚損に無関係な固有の変動成分(印刷変動の主成分)である。従って、当該画像情報X(T)iの特徴ベクトル画像情報X(T)iのを部分空間Yに射影した値Y(T)におけるY(T)1i成分は、固有の変動成分(印刷変動の主成分)であると考えられる。言い換えると、上記射影値Y(T)における残差成分Y(T)2iおよびY(T)3iには、当該画像情報X(T)iにおける汚損成分が含まれると考えられる。
【0094】
上記部分空間Yへの射影値が算出されると、上記分離部73は、さらに、上記辞書処理部77を介して上記辞書部59に記憶されている変換行列ACを読み込む(ステップS37)。上記汚損成分の学習処理で説明したように、上記変換行列ACは、特徴ベクトルから固有の変動成分Y1を除いた2次元の位置ベクトル(Y2、Y3)を部分空間Cに射影するものである。
【0095】
上記辞書部59から変換行列ACを読み込むと、上記分離部73は、上記射影値のうちY(T)2iおよびY(T)3iを2次元の位置ベクトル(Y(T)2i、Y(T)3i)とみなす。上記分離部73は、2次元の位置ベクトル(Y(T)2i、Y(T)3i)を変換行列ACにより2次元の値(C(T)1i、C(T)2i)に変換する(ステップS38)。上記変換行列ACにより算出される2次元の値(C(T)1i、C(T)2i)は、固有の変動成分が除去されている2次元の位置ベクトルを部分空間Cに射影した射影値である。上述したように、上記部分空間CのC1成分は、変動の主成分を最も良く近似する汚損の主成分である。従って、上記C(T)1iの大きさに基づいて、画像情報X(T)iにおける汚損度が判定できる。
【0096】
すなわち、上記判定部74は、上記分離部73により得られたC(T)1iの値に基づいて画像情報X(T)iにおける汚損度(つまり、i番目の紙葉類の汚損度)を判定する(ステップS39)。ここで、上記判定部74は、i番目の紙葉類に対する汚損度の判定結果として、綺麗であるか汚れているかを判定するものとする。つまり、上記判定部74は、上記C(T)1iの値と所定の閾値とを比較することにより、i番目の紙葉類が綺麗であるか汚れているかを判定する。ただし、当該紙葉類を正券として取り扱うか損券として取り扱うか(当該紙葉類が綺麗か汚れているか)は、上記主制御部20が決定するようにしても良い。この場合、上記判定部74は、数値化した汚損度を判定結果として上記主制御部20へ出力するようにすれば良い。
【0097】
図9は、汚損成分の値(C(T)1iの値)に対する汚損判定の例を示す図である。
図9に示す例では、C(T)1iの値に対する出現頻度を示している。さらに、図9に示す例では、C(T)1iの値に対して、汚損度(綺麗か汚れているか)を判定するための閾値(TH1およびTH2)の設定例も示している。上記閾値TH1およびTH2は、1つのペアで設定されている。つまり、図9に示す例では、C(T)1iの値がTH1〜TH2であれば、当該紙葉類が綺麗と判定され、C(T)1iの値がTH1以下又はTH2以上であれば、当該紙葉類が汚いと判定されるようになっている。上記閾値TH1およびTH2は、当該紙葉類処理システムの運用形態に応じて適宜設定される値である。上記閾値TH1及びTH2は、互いの間隔(TH1及びTH2間の距離)が小さくなればなるほど、当該紙葉類が綺麗と判定されにくくなる。
【0098】
なお、上記判定部74は、紙葉類の汚損レベルを所定の複数段階で示すようにしても良い。この場合、上記判定部74は、上記C(T)1iと所定の複数段階に分別するための複数の閾値とに基づいて当該紙葉類の汚損レベルを所定の複数段階に分別する。たとえば、図9に示すような閾値のペアを複数のペア設定することにより、複数の汚損レベルに紙葉類を分別するような運用形態が実現可能である。さらに、上記閾値TH1およびTH2は、C(T)1iの値に対する出現頻度に応じて設定するようにしても良い。この場合、たとえば、処理対象となる全紙葉類を、所定の割合で綺麗な紙葉類と汚れた紙葉類とに区分するような運用形態が実現可能である。
【0099】
上記のような上記判定部74による汚損度の判定結果は、上記出力処理部75により上記主制御部20へ出力される(ステップS40)。上記汚損度の判定結果が出力されると、上記変数iは、インクリメントされ、「i=i+1」に更新される(ステップS41)。インクリメントされた変数iがI(T)以下である場合(ステップS32、NO)、上記入力処理部71は、次の画像情報X(T)iを入力する。これにより、上記汚損判定部70では、上記変数iがI(T)よりも大きくなるまで、上記ステップS32〜S41の処理を繰り返し実行する。また、インクリメントされた変数iがI(U)以下でない場合(つまり、供給部10にセットされた紙葉類の画像が無くなった場合)、上記判定部74は、I(U)個の紙葉類に対する汚損度の判定処理を終了する。
【0100】
上記のように、汚損度の判定処理は、印刷物の画像情報を入力し、入力した画像情報から複数の特徴量を抽出し、抽出した複数の特徴量の組を特徴ベクトルとみなし、メモリに記憶されている第1の変換行列により前記特徴ベクトルを第1の部分ベクトル(第1の部分空間)に変換し、第1の部分ベクトルから第1の主成分(固有の変動成分、印刷変動成分)を除く第1の残差成分を抽出し、第1の残差成分の組を残差ベクトルとみなし、メモリに記憶されている第2の変換行列により残差ベクトルを第2の部分ベクトル(第2の部分空間)に変換し、第2の部分ベクトルから第2の主成分を抽出し、抽出した第2の主成分に基づいて前記印刷物における汚損度を判定する。
【0101】
次に、汚損度の判定処理におけるオンライン学習機能について説明する。
上記ステップS31〜S41の汚損度の判定処理においては、変換行列ACの更新処理を追加することが可能である。すなわち、上述した汚損成分の学習処理では、使用済み状態の紙葉類、つまり、汚損がある紙葉類をサンプルとして汚損成分を抽出するための変換行列ACを生成している。これに対して、汚損度の判定処理でも、処理対象とする紙葉類が使用済みの状態の紙葉類であることを想定している。つまり、汚損度の判定処理において処理対象とする紙葉類は、汚損成分の学習処理においてサンプルとして入力する紙葉類と根本的には相違がない。従って、汚損度の判定処理においては、汚損度の判定とともに、汚損成分の学習処理(変換行列ACの更新処理)を行うことが可能である。このように、汚損度の判定処理において、汚損度の判定とともに、汚損成分の学習処理を行うことをオンライン学習機能と称するものとする。
【0102】
上記オンライン学習機能では、実際に使用されている紙葉類の状態に応じて変換行列ACが更新されていく。このため、上記オンライン学習機能では、実際の運用状況に即した高精度な汚損度の判定処理が行える。ただし、特殊な汚損がある紙葉類あるいは極端に汚損状態が悪い紙葉類が処理対象となる場合、オンライン学習機能では、好ましい変換行列ACが得られないことも有りうる。従って、上記オンライン学習機能は、当該紙葉類処理システムのオペレータあるいは管理者の意図に応じて有効とするか無効とするかを切替えられるものが好ましい。以下、オンライン学習機能が有効に設定されている場合における汚損度の判定処理の例について説明する。
【0103】
図10は、オンライン学習機能を行う汚損度の判定処理の流れを説明するためのフローチャートである。
すなわち、オンライン学習機能としては、汚損度の判定処理において、変換行列ACを更新する処理が追加される。図10に示すフローチャートでは、図8に示すフローチャートに、オンライン学習機能(変換行列ACの更新処理)としてのステップS51AあるいはステップS51Bが追加されている。ただし、オンライン学習機能としては、図10に示すステップS51AあるいはステップS51Bの何れかが実行されるものとする。なお、図10に示すステップS31〜S41の処理は、図8に示す各処理を同等な処理であるあるため、詳細な説明を省略するものとする。
【0104】
上述したように、変換行列ACは、汚損成分を抽出するための情報である。つまり、変換行列ACは、固有の変動成分を除く2次元の位置ベクトル(Y(T)2i、Y(T)3i)を部分空間Cに射影した値(C(T)1i、C(T)2i)を算出するための情報である。また、部分空間Cは、2次元の位置ベクトル(Y2、Y3)をKL展開することにより得られる情報である。
【0105】
従って、汚損度の判定処理において、上記汚損学習部78は、各紙葉類に対する汚損度としての「C(T)1i」を算出するごとに、変換行列ACを更新することが可能である(ステップS51A)。この場合、上記汚損学習部78は、i番目の紙葉類の画像情報から得られた2次元の位置ベクトル(Y(T)2i、Y(T)3i)が得られるごとに、上記ステップS28及びS29と同様な処理により変換行列AC(T)iを生成する。この場合、上記汚損学習部78は、新たに生成した変換行列AC(T)iと既存の変換行列ACとを統合することにより、i番目の紙葉類の画像情報に対する汚損度を判定するごとに、辞書部59に記憶されている変換行列ACを更新する。
【0106】
また、汚損度の判定処理において、汚損学習部78は、I(T)個の紙葉類に対する汚損度の判定が終了した後に、変換行列ACを更新することも可能である(ステップS51B)。この場合、上記汚損学習部78は、I(T)個の紙葉類の画像情報から得られた2次元の位置ベクトル(Y(T)2i、Y(T)3i)を全て保存しておく。これにより、上記汚損学習部78は、上記ステップS28及びS29と同様な処理により変換行列AC(T)を生成する。この場合、上記汚損学習部78は、新たに生成した変換行列AC(T)と既存の変換行列ACとを統合することにより、上記辞書部59に記憶されている変換行列ACを更新する。
【0107】
なお、本発明の一形態としての汚損判定装置、紙葉類処理装置、あるいは、汚損判定方法は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】図1は、紙葉類処理システムの構成例を概略的に示す断面図である。
【図2】図2は、紙葉類処理システムにおける制御系統の構成例を概略的に示すブロック図である。
【図3】図3は、汚損判定処理を行う汚損判定部の構成例を示すブロック図である。
【図4】図4は、汚損判定部における変動成分の学習処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図5】図5は、画像情報から得られる特徴ベクトルと部分空間との関係を模式的に示す図である。
【図6】図6は、汚損判定部における汚損成分の学習処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図7】図7は、固有変動の成分を除去した位置ベクトルと部分空間との関係を模式的に示す図である。
【図8】図8は、汚損判定部における汚損度の判定処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図9】図9は、汚損成分の値に対する汚損判定の例を示す図である。
【図10】図10は、オンライン学習機能を行う汚損度の判定処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0109】
P…紙葉類、1…紙葉類処理装置(区分装置)、2…施封装置、3…操作装置、10…供給部、16…判別部、18…反転部、19…集積部、20…主制御部、30…施封制御部、41…CPU、42…記憶部、43…インターフェース部、51…CPU、52…記憶部、53…インターフェース部、54a…画像読取部、55a…信号処理部、56a…汚損判定プログラム、57a…変動成分の学習プログラム、57b…汚損成分の学習プログラム、57c…汚損度の判定プログラム、59…辞書部、70…汚損判定部、71…入力処理部、72…特徴抽出部、73…分離部、74…判定部、75…出力処理部、76…変動学習部、77…辞書処理部、78…汚損学習部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有変動を含む画像情報から複数の特徴情報を抽出する特徴抽出部と、
前記特徴抽出部により前記画像情報から抽出した複数の特徴情報を前記固有変動の成分とそれ以外の残差成分とに分離する分離部と、
前記分離部により得られた前記残差成分から前記画像情報における汚損の度合いを示す汚損変動の成分を抽出し、前記抽出した汚損変動の成分の大きさに基づいて前記画像情報における汚損度を判定する判定部と、
を有することを特徴とする汚損判定装置。
【請求項2】
前記画像情報は、特定の図柄が印刷されている印刷物を読取った画像情報であり、
前記固有変動は、前記印刷物に対する印刷のばらつきに起因する印刷変動であり、
前記汚損変動は、前記印刷物に対して外的な要因で与えられる汚損による変動である、
ことを特徴とする前記請求項1に記載の汚損判定装置。
【請求項3】
前記分離部は、前記複数の特徴情報の組を前記固有変動の成分とそれ以外の複数の残差成分とからなる第1の部分ベクトルに変換し、
前記判定部は、前記複数の残差成分の組を汚損変動の成分とそれ以外の成分とからなる第2の部分ベクトルに変換し、前記第2の部分ベクトルにおける前記汚損変動の成分の大きさに基づいて前記画像情報における汚損度を判定する、
ことを特徴とする前記請求項2に記載の汚損判定装置。
【請求項4】
さらに、第1の変換行列と第2の変換行列とを記憶する辞書部を有し、
前記分離部は、第1の変換行列により、前記複数の特徴情報の組からなるベクトルを前記第1の部分ベクトルに変換し、
前記判定部は、第2の変換行列により、前記第1の部分ベクトルにおける前記固有変動の成分を除いた複数の残差成分の組を前記第2の部分ベクトルに変換する、
ことを特徴とする前記請求項3に記載の汚損判定装置。
【請求項5】
さらに、汚損を含まない画像情報における複数の特徴情報の組に対する主成分分析に基づいて、前記画像情報における複数の特徴情報の組を前記固有変動の成分とそれ以外の複数の残差成分とに変換するための第1の変換行列を生成する第1の学習部を有する、
ことを特徴とする前記請求項1乃至4の何れか1項に記載の汚損判定装置。
【請求項6】
さらに、汚損を含む画像情報における複数の特徴情報の組から前記固有変動の成分を除いた残差成分を汚損変動の成分とそれ以外の成分とに変換するための第2の変換行列を生成する第2の学習部を有する、
ことを特徴とする前記請求項1乃至5の何れか1項に記載の汚損判定装置。
【請求項7】
特定の図柄が印刷されている紙葉類の画像を読取る読取部と、
前記読取部により読取った紙葉類の画像情報から複数の特徴情報を抽出する特徴抽出部と、
前記特徴抽出部により前記画像情報から抽出した複数の特徴情報を固有変動の成分とそれ以外の残差成分とに分離する分離部と、
前記分離部により得られた前記残差成分から前記画像情報における汚損の度合いを示す汚損変動の成分を抽出し、前記抽出した汚損変動の成分の大きさに基づいて前記画像情報における汚損度を判定する判定部と、
前記判定部による汚損度の判定結果に基づいて前記紙葉類を処理する処理部と、
を有することを特徴とする紙葉類処理装置。
【請求項8】
さらに、前記読取部により汚損がない紙葉類から読取った画像情報における複数の特徴情報の組に対する主成分分析に基づいて、前記画像情報における複数の特徴情報の組を前記固有変動の成分とそれ以外の複数の残差成分とに変換するための第1の変換行列を生成する第1の学習部を有する、
ことを特徴とする前記請求項7に記載の紙葉類処理装置。
【請求項9】
さらに、前記読取部により汚損を含むことが想定される紙葉類から読取った画像情報における複数の特徴情報の組から前記固有変動の成分を除いた残差成分を汚損変動の成分とそれ以外の成分とに変換するための第2の変換行列を生成する第2の学習部を有する、
ことを特徴とする前記請求項7又は8の何れか1項に記載の紙葉類処理装置。
【請求項10】
固有変動を含む画像情報から複数の特徴情報を抽出し、
前記画像情報から抽出した複数の特徴情報を前記固有変動の成分とそれ以外の残差成分とに分離し、
前記分離により得られた前記残差成分から前記画像情報における汚損の度合いを示す汚損変動の成分を抽出し、前記抽出した汚損変動の成分の大きさに基づいて前記画像情報における汚損度を判定する、
ことを特徴とする汚損判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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