説明

汚染された繊維材料懸濁液に用いられる精選装置および該精選装置の使用

本発明による精選装置は、たとえば古紙の調成時に発生させられるような汚染された繊維材料懸濁液を加工するために働く。精選装置はハウジング(1)を有している。このハウジング(3)はスクリーン(3)を備えている。このスクリーン(3)はアクセプトチャンバ(2)をハウジング(1)から分割している。ロータ(4)は密にスクリーン(3)に沿って運動することができる。これによって、このスクリーン(3)が開放され、さらに、回転流れが発生させられる。ハウジング(1)は主部分(7)を有している。この主部分(7)は、特に円筒状である。この主部分(7)の中心はロータ(4)の軸線(12)に対して、1〜60゜の間、有利には5〜25゜の間にある傾角(α)を成している。この装置の一般的な使用位置は縦置きの配置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染された繊維材料懸濁液に用いられる精選装置であって、主に円形の横断面を有する閉鎖されたハウジングと、該ハウジングに側方で通じる流入管片と、スクリーンと、該スクリーンの近傍で該スクリーンに対して相対的に運動可能であり、これによって、該スクリーンの目詰まりを除去する駆動可能なロータと、ハウジングからスクリーンによって分割されていて、アクセプト出口を備えたアクセプトチャンバと、ハウジングに接続された、懸濁液内に存在するリジェクトに対する流出管路とが設けられている形式のものに関する。
【0002】
さらに、本発明は、リジェクト含有の古紙懸濁液を加工するための前述した形式の精選装置の使用に関する。
【0003】
このような形式の精選装置の目的は、たとえば古紙から得ることができる水性の繊維材料懸濁液から、望ましくない汚染物質を取り除くことにある。知られているように、古紙は、望ましい繊維材料のほかに、多かれ少なかれ大きな量のリジェクトも含んでいる。このリジェクトが紙に含まれてはならない。一般的には、種々異なるリジェクトを調成プロセスの種々異なる区分で取り除くために、複数回の分離過程が必要となる。多くの事例では、リジェクトによる調成システムの目詰まりの発生は、濯ぎサイクルが調整されることによってしか回避することができない。このことは、当然ながら、調成運転の負荷、量衝撃および繊維損失に繋がり得る。
【0004】
通常、原料は、紙料調成の開始時にパルパ内で水と混合され、懸濁液としてパルパから排出され得るまで粉砕される。多くの事例において、すでにパルパ内で前浄化が行われる場合でも、まだ相当な量のリジェクトが、排出された懸濁液内に残されていて、調成のために使用される装置内に達する。本発明の根底にある精選装置は、たとえばリジェクト由来の汚染された懸濁液を処理するために使用することができる。特に精選装置は、スクリーンを通過することなしにパルパから流出した繊維材料懸濁液のためにも適している。
【0005】
「DAS PAPIER」(第5号、1993年、第236〜239頁)に載った専門論文「Erfahrungen mit einem System zur Stoffloeserentsorgung」(Hans−Bernhard Winterstein著)には、上方に位置する精選プレートを備えた廃棄機械が記載されている。この機械への入口は下方に向けられていて、しかも、直接重量物ゲートに向けられている。軽量物、特にプラスチックシートも、廃棄装置のハウジング内に集められ、周期的に濯がれる。このためには、ほぼ洗浄水稠度が達成されるまで、内容物が洗浄水で希釈される。
【0006】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第19825669号明細書には、古紙を溶解しかつ選別するための精選装置が示されている。この精選装置も同じく、上方に位置する平らなスクリーンを有している。このスクリーンはロータから遠ざけられる。流入は接線方向でハウジング内に行われる。底部には、ゲートを備えた、斜め下向きに延びるリジェクト出口が位置している。
【0007】
本発明の課題は、リジェクトの選別を運転安全に実施することを成功させる精選装置を提供することである。この場合、可能な限り大きな範囲のリジェクトを捕捉することができることが望ましい。精選装置が、特に斑点および紙片をさらに溶解するために適していることが望ましい。
【0008】
この課題を解決するために本発明の精選装置では、ハウジングが、その内容積の少なくとも30%、有利には少なくとも50%を有する回転対称的な主部分を有しており、ロータの軸線に対する主部分の中心線が、1゜〜60°の間、有利には5゜〜25゜の間の傾角を成しているようにした。
【0009】
本発明の精選装置の有利な構成によれば、当該精選装置が、固定装置を有しており、ロータの軸線が、鉛直線に対して0゜〜30°の間、有利には10゜〜20゜の間の角度を成す使用位置に固定装置が通じており、スクリーンが、主部分の上方に配置されている。
【0010】
本発明の精選装置の有利な構成によれば、ハウジングが、主部分とスクリーンとの間に、主部分に向かって円錐形に拡幅された、ロータと同心的な接続部分を有している。
【0011】
本発明の精選装置の有利な構成によれば、接続部分が、主部分への移行部で主部分の中心線に対して直角に切断されている。
【0012】
本発明の精選装置の有利な構成によれば、流入管片が、主部分の下側の領域に開口している。
【0013】
本発明の精選装置の有利な構成によれば、主部分に、狭窄された円錐形の部分が続いている。
【0014】
本発明の精選装置の有利な構成によれば、リジェクトに対する流出管路が、円錐形の部分の下側の端部に続いている。
【0015】
本発明の精選装置の有利な構成によれば、主部分が、一方の端部に、ロータから、ロータ直径の最大50%に相当する最小の間隔を有している。
【0016】
本発明の精選装置の有利な構成によれば、ロータが、羽根を備えている。
【0017】
本発明の精選装置の有利な構成によれば、羽根の外部に、半径方向外向きに固定された衝突片が位置しており、該衝突片が、羽根と協働して、まだ溶解されていない紙ウェブ片を粉砕するために働くように配置されている。
【0018】
本発明の精選装置の有利な構成によれば、精選開口が、10〜20mmの間の最小の直径を備えて円形である。
【0019】
本発明の精選装置の有利な構成によれば、精選開口が、2〜5mmの間の最小の直径を備えて円形である。
【0020】
さらに、前記課題を解決するために本発明の使用では、リジェクト含有の古紙懸濁液を浄化し、さらに溶解するようにした。
【0021】
本発明の使用の有利な実施態様によれば、ロータの軸線が、鉛直線に対して0゜〜30゜の間の角度を成している。
【0022】
この形式の装置では、ロータ運動によって、ロータ軸線と同心的な回転軸線を有する回転流れが発生させられる。この回転流れは、本発明の対象では、ハウジング内に同心的に適合されておらず、所定の傾角を備えて適合されている。さらに、ロータとハウジングとの偏心的な配置が選択されると有利である。
【0023】
本発明による精選装置は、スクリーンによってリジェクトをハウジング内に引き止めかつ繊維材料懸濁液から取り除くことができる。しかし、公知先行技術に比べて、本発明による精選装置は、斑点と紙片との溶解、場合により、コーティング層および印刷カラーの剥離も改善する利点も有している。さらに、より僅かな摩耗が可能となる。なぜならば、もはや重量物が、ハウジングに設けられた円形に類似の周方向路内に長く滞留する危険が存在しないからである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による精選装置の破断側面図である。
【図2】本発明による精選装置を古紙調成時に使用するための概略図である。
【0025】
本発明およびその利点を図面につき説明する。
【0026】
図1には、精選装置が一般的な縦置きの使用位置で示してある。しかし、精選装置は横置きに配置されていてもよい。精選装置はハウジング1を有している。このハウジング1は、ここでは、主部分7と、この主部分7の上方に位置する円錐形の接続部分8と、主部分7の下方に位置する円錐形の部分9とから成っている。主部分7の内容積は、ここでは、全ハウジング内容積の半分よりも著しく大きく設定されている。主部分7は、中心線11を備えた円筒形状を有している。この中心線11はロータ4の軸線12に対して、1゜〜60°の間で選択されてよい傾角αを成して配置されている。この場合、この傾角αは、ここでは、約12゜に設定されている。接続部分8は、下向きに拡幅された、軸線12と同心的な円錐台形部から成っている。この円錐台形部は、上方でスクリーン3に続いていて、下方で移行部14によって主部分7に続いている。移行部14は主部分7の中心線11に対して直角に延びていて、これによって、円錐台形部から斜めに切断されている。これによって、主部分7と円錐台形部との間に偏心率が得られる。装置の使用位置では、軸線12が鉛直線13に対して、0゜〜30゜の間(ここでは15゜)にある角度βを成していてよい。ハウジング1の接続部分8内には、この接続部分8の中心線と同心的にロータ4が配置されている。このロータ4は、上方に位置する、暗示的にしか示していない駆動装置セットによって回転させることができる。ロータ4は、回転流れを発生させるために働くだけでなく、ハウジング1の上側の部分に装着されたスクリーン3の目詰まりを阻止するためにも働く。したがって、ロータ4は密にスクリーン3の流入面に沿って運動させられる。このスクリーン3はハウジング1の内室を、上方に位置するアクセプトチャンバ2から分割している。このアクセプトチャンバ2から、内部に集められた紙料をアクセプト出口5を通して導出することができる。スクリーン3は、有利には、精選開口17を備えた平らなディスクであるものの、フラットな円錐台形を有していてもよい。ハウジング1の下側の部分には、リジェクトに対する斜め下向きに延びる流出開口6が位置している。場合により下方に達した重量物が円錐形の部分9から流出開口6に滑ることができるように、ハウジング1を下方で流出開口9に向かって終わらせることが有利である。この領域の堆積を阻止するためには、濯ぎ水接続部27を通した濯ぎ水の添加が有利であり得る。
【0027】
一般的に精選装置は正圧で運転され、これによって、リジェクトが自然に流出する。この場合、正圧は、排出されるリジェクトの量を調整することができる。しかし、リジェクト出口が遮断機構(図示せず)を備えていて、たとえば周期的に開閉されることも可能である。更なる可能性は調量装置であってもよい。この調量装置は、目詰まりなしに、規定された量を連続的に内部から搬出する。
【0028】
すでに述べたように、流入管片10を介して供給された繊維材料懸濁液を、特に有利には同一の装置内で浄化するだけでなく、さらに溶解する可能性が存在する。したがって、たとえば、ここに記載した形式の精選装置では、懸濁液内に含まれた固形物質の後続粉砕を行い、これによって、たとえば紙料の選別可能性を改善することが有利である。この場合、リジェクトの粉砕によって生ぜしめられる損害と、リジェクトおよび繊維材料ウェブからのより高い個別化から獲得可能である利益とが熟考されなければならない。この考慮には、スクリーン3に設けられた精選開口17がどのくらい大きく選択されているのかも含めなければならない。懸濁液内に位置する紙料の更なる粉砕または離解が所望される事例では、これを実現するために、極めて簡単な可能性が得られる。つまり、この場合、羽根15を備えたロータ4の外部に衝突片16が設けられている。この衝突片16は羽根先端と協働して穏やかな粉砕を生ぜしめることができる。
【0029】
本発明による精選装置の使用可能性を、図2に示したような設備例につき説明する。この場合、パルパ18から出発する。このパルパ18内では、紙原料、たとえば古紙が水と混合され、懸濁液に変えられる。パルパ18はその底領域にスクリーン(図示せず)を装備している。このスクリーンを通して、懸濁液の一部が環状室21内に達し、繊維材料懸濁液22として後続処理され得る。図2には、パルパ18のスクリーンを通過しなかった汚染された繊維懸濁液を導出し、沈降タンク20を通して、その後、こうして粗い重量物24が除去された懸濁液を本発明による精選装置19に後続案内することも示してある。この精選装置19は、ここでは、主として、紙料をさらに溶解しならびにリジェクト流25を分離し、こうして、精選装置19のスクリーンを通過した浄化されたアクセプト懸濁液26を形成する役割を有している。リジェクト流25は後選別装置、たとえば選別ドラム23内に達する。この選別ドラム23内では、リジェクト28と繊維材料懸濁液30との間の分離が行われる。この場合、この繊維材料懸濁液30は、たとえばパルパ18内に戻し案内することができる。
【0030】
付言しておくと、図2は、本発明の対象の有利な使用に対する一例でしかなく、新規の装置の可能性を示している。概略図には、最も重要な方法ステップしか示していない。この場合、このために使用される装置は暗示的にしか図示しておらず、全ての搬送・調整装置は図示していない。
【符号の説明】
【0031】
1 ハウジング
2 アクセプトチャンバ
3 スクリーン
4 ロータ
5 アクセプト出口
6 流出開口
7 主部分
8 接続部分
9 円錐形の部分
10 流入管片
11 中心線
12 軸線
13 鉛直線
14 移行部
15 羽根
16 衝突片
17 精選開口
18 パルパ
19 精選装置
20 沈降タンク
21 環状室
22 繊維材料懸濁液
23 選別ドラム
24 重量物
25 リジェクト流
26 アクセプト懸濁液
27 濯ぎ水接続部
28 リジェクト
30 繊維材料懸濁液
α 傾角
β 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染された繊維材料懸濁液に用いられる精選装置であって、主に円形の横断面を有する閉鎖されたハウジング(1)と、該ハウジング(1)に側方で通じる流入管片(10)と、スクリーン(3)と、該スクリーン(3)の近傍で該スクリーン(3)に対して相対的に運動可能であり、これによって、該スクリーン(3)の目詰まりを除去する駆動可能なロータ(4)と、ハウジング(1)からスクリーン(3)によって分割されていて、アクセプト出口(5)を備えたアクセプトチャンバ(2)と、ハウジング(1)に接続された、懸濁液内に存在するリジェクトに対する流出管路(6)とが設けられている形式のものにおいて、
ハウジング(1)が、その内容積の少なくとも30%、有利には少なくとも50%を有する回転対称的な主部分(7)を有しており、ロータ(4)の軸線(12)に対する主部分(7)の中心線(11)が、1゜〜60°の間、有利には5゜〜25゜の間の傾角(α)を成していることを特徴とする、汚染された繊維材料懸濁液に用いられる精選装置。
【請求項2】
当該精選装置が、固定装置を有しており、ロータ(4)の軸線(12)が、鉛直線(13)に対して0゜〜30°の間、有利には10゜〜20゜の間の角度(β)を成す使用位置に固定装置が通じており、スクリーン(3)が、主部分(7)の上方に配置されている、請求項1記載の精選装置。
【請求項3】
ハウジング(1)が、主部分(7)とスクリーン(3)との間に、主部分(7)に向かって円錐形に拡幅された、ロータ(4)と同心的な接続部分(8)を有している、請求項1または2記載の精選装置。
【請求項4】
接続部分(8)が、主部分(7)への移行部(14)で主部分(7)の中心線(11)に対して直角に切断されている、請求項3記載の精選装置。
【請求項5】
流入管片(10)が、主部分(7)の下側の領域に開口している、請求項1から4までのいずれか1項記載の精選装置。
【請求項6】
主部分(7)に、狭窄された円錐形の部分(9)が続いている、請求項1から5までのいずれか1項記載の精選装置。
【請求項7】
リジェクトに対する流出管路(6)が、円錐形の部分(9)の下側の端部に続いている、請求項6記載の精選装置。
【請求項8】
主部分(7)が、一方の端部に、ロータ(4)から、ロータ直径の最大50%に相当する最小の間隔を有している、請求項1から7までのいずれか1項記載の精選装置。
【請求項9】
ロータ(4)が、羽根(15)を備えている、請求項1から8までのいずれか1項記載の精選装置。
【請求項10】
羽根(15)の外部に、半径方向外向きに固定された衝突片(16)が位置しており、該衝突片(16)が、羽根と協働して、まだ溶解されていない紙ウェブ片を粉砕するために働くように配置されている、請求項9記載の精選装置。
【請求項11】
精選開口(17)が、10〜20mmの間の最小の直径を備えて円形である、請求項1から10までのいずれか1項記載の精選装置。
【請求項12】
精選開口(17)が、2〜5mmの間の最小の直径を備えて円形である、請求項11記載の精選装置。
【請求項13】
リジェクト含有の古紙懸濁液を加工するための請求項1から12までのいずれか1項記載の精選装置の使用において、これによって、リジェクト含有の古紙懸濁液を浄化し、さらに溶解することを特徴とする、リジェクト含有の古紙懸濁液を加工するための精選装置の使用。
【請求項14】
ロータ(4)の軸線(12)が、鉛直線(13)に対して0゜〜30゜の間の角度(β)を成している、請求項13記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−510401(P2010−510401A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537492(P2009−537492)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/007964
【国際公開番号】WO2008/061582
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(506408818)フォイト パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (52)
【氏名又は名称原語表記】VOITH PATENT GmbH
【住所又は居所原語表記】St. Poeltener Str. 43, D−89522 Heidenheim, Germany
【Fターム(参考)】