説明

汚染土壌浄化のための洗浄剤ならびに該洗浄剤を用いた洗浄浄化方法と浄化装置

【課題】ナフタレン、フェナントレン、ピレンなどの多環芳香属化合物(PAHs)や、ダイオキシン類、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、DDTといった残留性有機汚染物質(POPs)など、種々の疎水性の有機汚染物質の汚染土壌や汚染底質中での移動性を高める洗浄剤および該洗浄剤を用いた土壌や底質の洗浄方法、ならびに該洗浄剤を用いる洗浄装置を提供する。
【解決手段】プリン化合物を必須成分とする疎水性有機汚染物質で汚染された汚染土壌の洗浄剤。プリン化合物がカフェインである上記洗浄剤。カフェインをその成分として含有し、水と接触することにより水中に容易にカフェインを溶出する物質を必須成分とする上記洗浄剤。これらの洗浄剤を含む洗浄水で汚染土壌や汚染底質を洗浄することにより、土壌や底質に強く吸着した疎水性有機汚染物質が水へ移動して除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性有機汚染物質で汚染された汚染土壌や汚染底質(以下、単に、汚染土壌等ともいう)を洗浄浄化するための洗浄剤、および該洗浄剤を用いた汚染土壌等の洗浄浄化方法と浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多環芳香属化合物(PAHs)、ダイオキシン類、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、DDTといった通称POPs(ポップス)と呼ばれる残留性有機汚染物質などの有機汚染物質による土壌や底質の汚染が数多く報告され、その対策が世界的に重要な関心事になっている。
【0003】
多環芳香族炭化水素(PAHs)に関しては現在、我が国では環境規制がないが、オランダではPAHsに関する厳しい環境規制が設定されている。また、米国でも環境保全局(USEPA)がPAHs汚染の指標となる代表的な物質として、16種類のPAHsを指定している。今後わが国においても環境規制物質に指定されることは必須であると考えられる。
【0004】
PAHsは石油や石炭に含まれ、石油精製工場や石油製品工場、石炭ガス化工場、コールタールなどの石炭製品工場で発生し、主としてこれらの工場跡地などでみられる。また、タンカーの座礁より積荷の原油漏れ等によっても発生する。さらに、自動車排ガスや化石燃料などの不完全燃焼により、非意図的に発生する。
【0005】
工場跡地やタンカーの座礁によって起こる汚染の場合は、一般にPAHs単独というよりは、原油等の油汚染が主で、原油に含まれるPAHsが問題となる。したがって、この場合は油汚染土壌の浄化が求められ、油の成分である脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素と一緒に有害なPAHsも除去される必要がある。
【0006】
自動車排ガスや化石燃料などの不完全燃焼により、非意図的に発生するPAHsは、大気中や排ガスの粒子状物質に吸着するなどして、地上に降下し、土壌を汚染する。この場合は、PAHsは粒子状物質や土壌に吸着したかたちで存在し、PAHs自身が除去対象となる。この場合、工場跡地などの土壌汚染以上に、広範囲に汚染が拡散している場合がある。
【0007】
一方、環境中での残留性が高いPCB、DDT、ダイオキシン等のPOPs(残留性有機汚染物質)については、一部の国々の取組のみでは地球環境汚染の防止には不十分であるということで、国際的に協調してPOPsの廃絶、削減等を行う必要から、2001年5月、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」が採択されている。POPsの中でアルドリン、クロルデン、ディルドリン、エンドリン、ヘプタクロル、ヘキサクロロベンゼン、マイレックス、トキサフェン、PCBは製造、使用が原則禁止され、DDTは原則制限されている。しかし、これまでに使用されたことによる土壌汚染、非意図的生成物質の排出による土壌汚染が顕在化している。
【0008】
ダイオキシン類化合物は、ポリ塩化ジペンゾパラジオキシン(PCDD)とポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)の総称で、化学物質の合成過程、廃棄物の焼却処理、あるいは有機塩素系化学製品の製造工程での副産物として、非意図的に生成する毒性物質である。PCDDには75種類、PCDFには135種類の同族体、異性体が存在する。これらダイオキシン類の毒性は、急性毒性、発癌性、催奇形性、免疫毒性などの多岐にわたっており、人体に対する悪影響が深刻な社会問題となっている。また、社会生活において、塩素を含むいわゆるビニールやプラスチック類の製品が氾濫しており、その焼却処理において、かつてダイオキシン類が大気中に放出されて周辺の土壌を汚染した。さらに、ごみ焼却場の焼却灰中にも多量のダイオキシン類が含まれており、焼却灰が処分される廃棄物最終処分場周辺の土壌汚染がある。現在、このようなダイオキシン類汚染地域の発生を防止すべく、多くの努力がなされているが、既存の汚染土壌に対する取扱い、さらには汚染土壌の浄化については、効果的手法はないのが実情である。
【0009】
ポリ塩化ビフェニル(以下、PCBという。)は、ビフェニルの塩素化物の総称であり、置換塩素数が1〜10の10種の同属体、209種の異性体が存在する。PCBは、物理的、化学的に安定であり、耐熱性及び電気絶縁性に優れているため、電気機器の絶縁油、熱媒体、潤滑油、複写紙のインキ原料など、工業用品に広く用いられてきた。しかし、PCBは、人体に有害であるばかりでなく、自然界での分解が困難な環境汚染物質であるため、生産が中止されている。しかし、PCBによる汚染が拡大し、河川の底質、汚泥や工場跡地などがPCBに汚染されていることが判明したために、PCBに汚染された底質や工場跡地などの汚染土壌を無害化することが求められている。底質や工場跡地などの汚染土壌に含まれているPCBは、量的に少ないため、安価に、かつ、効率的に除去することが難しい。また、PCBに汚染された汚染土壌をそのまま加熱分解することも可能であるが、その際、汚染土壌に含まれている水分、油分及びPCBなどが同時に分解することになるため、多くの副生成物が生じ、後処理が困難になるという問題がある。
【0010】
疎水性有機汚染物質によって汚染された土壌等の浄化方法は、一般に、(1)加熱処理法(揮発・脱離、熱分解法、溶融固化)、(2)化学分解法、(3)土壌洗浄法、(4)吸着法、(5)バイオレメディエーション、(6)ファイトレメディエーションなどに大別される。
【0011】
土壌洗浄法は、他の方法と比較して、異なる汚染種(油、重金属)も浄化出来るため汎用性が高く、バイオレメディエーション等の前処理工程としても利用でき、汚染土壌の処理量が大きく、総合的に浄化費用の低コスト化を実現できる。
【0012】
土壌洗浄法には水溶液を中心に行う場合と有機溶媒で洗浄する場合がある。水溶液で洗浄する場合は、洗浄効果を高めるため、錯形成剤や界面活性剤などの助剤を併用することが多い。水溶液による洗浄法は、土壌や底質中の重金属を溶解させて浄化する方法として広く用いられている方法である。
しかし、ナフタレン、フェナントレン、ピレンなどの多環芳香属化合物(PAHs)、ダイオキシン類、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、DDTといった通称POPs(ポップス)と呼ばれる残留性有機汚染物質などのような疎水性の有機汚染物質の浄化には有効な方法とは言えない。
このため、疎水性の有機汚染物質の移動性を高め、洗浄効率を高めるための薬剤(ここでは疎水性有機汚染物質移動促進剤という)が提案されている。例えば、特許文献1には、疎水性有機汚染物質移動促進剤としてシクロデキストリンを含んだ水溶液を用いた洗浄方法が、特許文献2には、疎水性有機汚染物質移動促進剤として界面活性剤とシクロデキストリンを含んだ水溶液を用いた洗浄方法、特許文献3にはシクロデキストリンや界面活性剤の代わりにDNAを利用する方法が開示されている。特許文献4には、非イオン性界面活性剤及びポリカルボン酸系重合体を含有する土壌洗浄剤が開示されている。
【0013】
さらに、土壌や底質を洗浄した洗浄水を微生物により浄化するバイオレメディエーションとして、シクロデキストリンおよび/または界面活性剤の水溶液を添加した洗浄水で洗浄したあと、洗浄水を微生物で処理する方法が公開されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平07−946号公報
【特許文献2】特開2003−126838号公報
【特許文献3】特開2008−731号公報
【特許文献4】特開2003−119495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記したように、疎水性有機汚染物質は、水に溶けにくく、しかも土壌に強く吸着しているため、水で洗浄してもほとんど移動し溶出してくることはなく、浄化することはできない。このため、有機溶媒による洗浄が行われるが、有機溶媒による洗浄では、使用した有機溶媒による環境汚染や、洗浄後、土壌の性質が変化してしまうなどの問題がある。しかし、疎水性有機汚染物質の移動性を高めることができれば、有機溶媒を使わずに土壌洗浄することも可能になる。このような疎水性の有機汚染物質の移動性を高める疎水性有機汚染物質移動促進剤として、前述したように、界面活性剤やシクロデキストリンなどを加えた水溶液を用いて洗浄したり、これらが存在する系で微生物分解したりする方法が提案されている。
【0016】
しかし、土壌や底質中の疎水性有機汚染物質の洗浄に、界面活性剤を含む水溶液を用いた場合、界面活性剤は微生物の阻害剤となる場合がある。このため、微生物分解性の良好な界面活性剤の利用に限定される。また、添加した界面活性剤が微生物や汚染物を吸着した土壌粒子の表面を覆うため、微生物と汚染物との接触を妨げるといった状態が発生し、結果として微生物分解性を低下させることもある。
【0017】
一方、シクロデキストリンは、D−グルコースが結合した環状構造をとり、種々の有機汚染物質と包接化合物を作ることができるが、シクロデキストリンの種類により包接できる疎水性有機汚染物質が限定されるなどの欠点があるし、洗浄効果が十分とはいえない。
【0018】
本発明は、たとえば、ナフタレン、フェナントレン、ピレンなどの多環芳香属化合物(PAHs)や、ダイオキシン類、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、DDTといった残留性有機汚染物質(POPs)など、疎水性有機汚染物質で汚染された汚染土壌や汚染底質を浄化するための洗浄剤を提供するとともに、該洗浄剤を用いた汚染土壌等の洗浄浄化方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、種々の疎水性の有機汚染物質を含む汚染土壌等を、プリン化合物またはその誘導体の水溶液によって洗浄浄化することが可能になることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0020】
すなわち、この出願によれば、以下の発明が提供される。
〈1〉プリン化合物を必須成分とすることを特徴とする、疎水性有機汚染物質で汚染された汚染土壌及び/又は汚染底質を洗浄浄化するための洗浄剤。
〈2〉プリン化合物がカフェインであることを特徴とする〈1〉に記載の洗浄剤。
〈3〉カフェインをその成分として含有し、水と接触することにより水中に容易にカフェインを溶出する物質を必須成分とすることを特徴とする〈1〉または〈2〉に記載の洗浄剤。
〈4〉水に容易にカフェインを溶出する物質が、お茶、コーヒー、ココア、もしくはこれらからの抽出物であることを特徴とする〈3〉に記載の洗浄剤。
〈5〉疎水性有機汚染物質が多環芳香族化合物(PAHs)であることを特徴とする〈1〉〜〈4〉の何れかに記載の洗浄剤。
〈6〉疎水性有機汚染物質が残留性有機汚染物質(POPs)であることを特徴とする〈1〉〜〈4〉の何れかに記載の洗浄剤。
〈7〉疎水性有機汚染物質で汚染された汚染土壌及び/又は汚染底質を、〈1〉〜〈4〉の何れかに記載の洗浄剤を含有する洗浄水で、洗浄することを特徴とする汚染土壌及び/又は汚染底質の洗浄浄化方法。
〈8〉洗浄処理後、洗浄廃水に含まれる疎水性有機汚染物質を疎水性有機溶媒で抽出除去することにより、洗浄水を再生し、該再生洗浄水を疎水性有機汚染物質で汚染された汚染土壌及び/又は汚染底質の洗浄処理に再利用することを特徴とする〈7〉に記載の洗浄浄化方法。
〈9〉疎水性有機汚染物質を含む疎水性有機溶媒から、疎水性有機溶媒を回収し、この疎水性有機溶媒を前記洗浄廃水に含まれる疎水性有機汚染物質の抽出溶媒として再利用することを特徴とする〈7〉または〈8〉に記載の洗浄浄化方法。
〈10〉〈1〉〜〈4〉の何れかに記載の洗浄剤を含有する洗浄水で洗浄した後、洗浄廃水中の疎水性有機汚染物質を、微生物を用いて分解することを特徴とする汚染土壌及び/又は汚染底質の洗浄浄化方法。
〈11〉汚染土壌を洗浄する洗浄槽1と、汚染土壌を洗浄槽に供給する手段2、洗浄水を貯蔵し供給するユニット3と、洗浄廃水から汚染物質を抽出する抽出槽4と、洗浄廃水を抽出槽に導入する手段5と、抽出溶媒を貯蔵し供給するユニット6と、再生した洗浄水をユニット3に返送するユニット7と、抽出溶媒から汚染物質を分離する装置8、抽出した抽出溶媒を分離装置に移す手段9、汚染物質を除去して再生した溶媒をユニット6に返送するユニット10とを備えたことを特徴とする疎水性有機汚染物質で汚染された汚染土壌及び/又は汚染底質を洗浄する装置。
【発明の効果】
【0021】
ナフタレン、フェナントレン、ピレンなどの多環芳香属化合物(PAHs)や、ダイオキシン類、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、DDTといった残留性有機汚染物質(POPs)などの有機汚染物質は、疎水性のため土壌等に強く吸着している。このため、水によりこれらの汚染物質を土壌等から離脱・移動させることが困難で洗浄され難いとされてきたが、本発明によって、これらの疎水性有機汚染物質の土壌中や底質中での離脱・移動性が高められ、洗浄浄化することができる。
【0022】
すなわち、本発明で用いるプリン化合物の水溶液は、土壌中や底質中での前記有機汚染物質の離脱や移動性を高めることができるので、ナフタレン、フェナントレン、ピレンなどの多環芳香属化合物(PAHs)や、ダイオキシン類、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、DDTといった残留性有機汚染物質(POPs)などの疎水性の有機汚染物質で汚染された汚染土壌や汚染底質を、有機溶媒を使用することなしに水で洗浄することが可能となる。
【0023】
そして、本発明の浄化方法によれば、疎水性有機汚染物質で汚染された土壌や底質から疎水性有機汚染物質を効果的に洗浄浄化することができる。
更に、洗浄浄化後、該汚染物質を含有する洗浄廃水から、有機溶媒による抽出操作で該有機汚染物質を抽出除去し、疎水性有機汚染物質を含まない洗浄水を再生して再利用することができる。さらに、該抽出操作で使用した、有機汚染物質を含む有機溶媒は、蒸留等の分離操作で再生して再利用することができる。すなわち、本願発明の浄化方法では、土壌洗浄に用いられる洗浄水も、その洗浄水の再生に利用される有機溶媒も、繰り返し使用が可能である。
【0024】
また、疎水性有機汚染物質で汚染された土壌を洗浄した後、溶出した汚染物質物を含む洗浄廃水を微生物で処理する際にも、これまでに開示されている生分解性の界面活性剤と同様に、疎水性有機汚染物質の分解促進が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の洗浄剤を利用する洗浄装置の系統図の1例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る、疎水性有機汚染物質で汚染された汚染土壌及び/又は汚染底質(以下、汚染土壌ともいう)を洗浄浄化するための洗浄剤は、必須成分がプリン化合物であることを特徴としている。
【0027】
本発明でいう洗浄剤とは、汚染土壌や汚染底質に強く吸着し、水層に移動し難い疎水性有機汚染物質の溶解性を高め、洗浄水中に移動させる薬剤のことをいう。
【0028】
本発明でいう汚染土壌とは、後記する疎水性有機汚染物質で汚染された土壌を意味し、該有機汚染物質が単独で存在するものであっても良いし、複数の有機汚染物質で汚染されているものであっても良い。さらに、油や重金属などの他の汚染物質でも汚染されている、複合汚染された土壌も含まれる。また汚染底質とは、後記する有機汚染物質で汚染された河川、湖沼、海洋等水環境の水底の表層土を言い、有機汚染物質が単独で存在するものであっても良いし、複数の有機汚染物質で汚染されているものであっても良い。さらに、油や重金属などの他の汚染物質でも汚染されている、複合汚染された底質も含まれる。
【0029】
また、疎水性有機汚染物質とは、ナフタレン、フェナントレン、ピレンなどの多環芳香属化合物(PAHs)や、ダイオキシン類、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、DDTといった残留性有機汚染物質(POPs)などの他、これらに属さない農薬等の疎水性有機汚染物質も含み、疎水性の有機汚染物質全般を意味する。
【0030】
したがって、本発明で対象となる疎水性有機汚染物質には、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)で対象とされる12物質の他に多環芳香属化合物(PAHs)も含まれる他、プリン化合物によって水への溶解性が高められるものは、特に制限されることなく、どのような疎水性有機汚染物質でも対象になる。
【0031】
本発明の洗浄剤の必須成分である、プリン化合物とは、プリン環を骨格に持つ縮合複素環化合物のことをいう。プリンそのものは天然に存在しないが、各種の誘導体として、コーヒー豆、カカオ豆、茶葉などに含有される他、動物体にも尿酸、核酸を構成する塩基のアデニンやグアニンの形で存在する。特に生体物質の核酸やアルカロイドの塩基性物質はプリン塩基と呼ばれる。
【0032】
このようなプリン化合物としては、各種のプリン塩基、例えば、尿酸、アデニン、グアニン、イソグアニン、カフェイン、キサンチン、テオフィリン、テオブロミン、パラキサンチン、キサンチン、ヒポキサンチン、及びこれらの誘導体からなるもののいずれでもかまわないが、その中でもコーヒー豆、カカオ豆、茶葉等に大量に含まれ容易に抽出される成分が、好ましく用いられる。
【0033】
上記誘導体としては以下のような化合物が挙げられる。2-Methylhypoxanthine、2-Methyladenine、2,9-Dimethyladenine、2-Methylthioadenine、2-Methylthio-9-methyladenine、Adenosine、Yeast adenylic acid、Guanine sulphate、Guanosine、Yeast guanylic acid、3-Methylxanthine、7-Methylxanthine、9-Methylxanthine、1,3-dimethylxanthine、1,7-dimethylxanthine、3,7-dimethylxanthine、8-Chlorotheobromine、1,3,7-trimethylxanthine、8-Methoxycaffeine、8-Ethoxycaffeine、8-Chlorocaffeine、1,3-Dimethyluric acid、3,7-Dimethyluric acid、3,9-Dimethyluric acid、7,9-Dimethyluric acid、1,3,7-Trimethyluric acid、1,3,9-Trimethyluric acid、3,7,9-Trimethyluric acid、1,7,9-Trimethyl-8-thiouric acid、1,3,7,9-Tetramethyluric acid、1,3,7,9-Tetramethyl-8-thiouric acid、Caffeine methiodide、Caffeine methochloride
【0034】
上記プリン化合物のうち、特にカフェイン、1,3-dimethylxanthine、1,7-dimethylxanthine、3,7-Dimethyluric acid、1,3,7-Trimethyluric acid、1,3,7,9-Tetramethyluric acidは、それら自身の溶解度が高く、しかもPAHsの溶解性も高いので優れた洗浄剤の主要成分となりうる。
【0035】
前記したように、本発明で用いられるプリン化合物は、コーヒー豆、カカオ豆、茶葉などに大量に含まれ容易に抽出される成分の内、カフェインが好ましく用いられるが、カフェインは、コーヒー豆、カカオ豆、茶葉等から抽出されたものであっても良いし、化学的に合成されたものであっても良い。また、コーヒー豆、カカオ豆、茶葉等の抽出液を精製せず、そのまま用いても良い。さらに、プリン化合物が水で容易に抽出されるコーヒー豆、カカオ豆、茶葉等を土壌に散布するなどしてそのまま用い、雨水や散布した水に抽出されたプリン化合物を利用することもできる。この場合、プリン化合物が抽出されやすいようにコーヒー豆、カカオ豆、茶葉等を粉末にして用いるのがより良い。
【0036】
プリン化合物が水で容易に抽出される物質としては、コーヒー豆、カカオ豆、茶葉等が一般に挙げられるが、これらに限定されるものではなく、水で容易に抽出されるものであればいかなるものも利用することができる。また、プリン化合物が水で容易に抽出される物質の状態は特に限定されるものではなく、抽出が可能であればいかなる状態であっても良い。すなわち、コーヒー豆、カカオ豆、茶葉等として加工されたものであっても良いし、加工前のものであっても良い、さらにはすでに利用されたこれらの廃棄物であっても良い。また、コーヒー豆、カカオ豆、茶葉等は単独で用いられても良いし、適宜混合して用いることもできる。
【0037】
上記において、プリン化合物として挙げられるカフェイン、1,3-dimethylxanthine、1,7-dimethylxanthine、3,7-Dimethyluric acid、1,3,7-Trimethyluric acid、1,3,7,9-Tetramethyluric acidのうち、カフェインはコーヒー豆、カカオ豆、茶葉に大量に含まれていることは周知の事実であるが、最近1,3,7,9-Tetramethyluric acidが中国茶に含まれていることが報告されており、中国茶も本発明では好ましく用いることができる。
【0038】
本発明で用いられるプリン化合物を含有する洗浄剤は、プリン化合物そのものからなるものでもよいし、プリン化合物の他にこれまでに洗浄効果が認められているシクロデキストリンや界面活性剤、DNA、さらには微生物の栄養素になる物質や、重金属など他の汚染物質の洗浄を促進する物質などのほか、環境汚染を引き起こすものでなければいかなるものを含むものであってもよく、プリン化合物以外の洗浄剤に含まれる物質については特に制限されるものではない。
【0039】
微生物の栄養素としては、バイオレメディエーションの際、微生物の活性化を促進させるために添加される窒素やリン等の栄養塩があげられる。
【0040】
また、洗浄剤中に含まれるシクロデキストリンや界面活性剤、DNA、微生物の栄養素になる物質は、単独で含まれていてもよいし、複数で含まれていてもよく、特に制限されない。
【0041】
次に、本発明を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明を実施する場合の装置系統図の1例を示すもので、洗浄水で汚染土壌を洗浄後、洗浄廃水から汚染物質を疎水性有機溶媒で抽出して洗浄水を再生し、再利用するものである。さらに、蒸留等の分離手段で該有機溶媒から汚染物質を除去して、有機溶媒を再生し、再利用するものである。
図1において、1は汚染土壌を洗浄する洗浄槽、2は汚染土壌を洗浄槽に供給する手段、3は洗浄水を貯蔵し供給するユニット、4は洗浄廃水から汚染物質を抽出する抽出槽、5は洗浄廃水を抽出槽に導入する手段、6は抽出溶媒を貯蔵し供給するユニット、7は再生した洗浄水をユニット3に返送するユニット、8は抽出溶媒から汚染物質を分離する装置、9は抽出した抽出溶媒を分離装置に移す手段、10は再生した溶媒をユニット6に返送するユニットを示す。
【0042】
1の汚染土壌を供給する手段には、特に制限はなく、いかなる方法により汚染土壌を洗浄槽2に供給しても良い。
【0043】
3の洗浄水の供給方法としては特に制限はなく、あらかじめ洗浄剤を含有する洗浄水を調整しておいても良いし、水と洗浄剤を別々に、所定濃度になるように洗浄槽2に添加するようにしてもよい。
【0044】
2の洗浄槽については特に制限されるものではなく、市販される装置も含めいかなるものであってもよい。
また、汚染土壌や汚染底質を洗浄槽にとり、そこにプリン化合物を含有する洗浄剤の水溶液を加えて洗浄する際、回転または振動を与えるなどして固液接触を高める方法をとることが好ましい。
【0045】
プリン化合物を含有する洗浄剤を含む洗浄水で土壌洗浄する際のプリン化合物の濃度は特に限定されない。プリン化合物の種類、土壌の種類、汚染物の種類及びレベル等に応じて適宜決められればよいが、例えば溶解度22mg・mL-1 (25℃)のカフェインの場合は、100〜22000mg/L、好ましくは1000〜20000mg/L、より好ましくは5000〜15000mg/Lの範囲内である。プリン化合物の濃度が低すぎれば、洗浄効果はあまり期待できないし、濃すぎて溶解度近傍では調整が大変であるし、析出する障害が生ずることがある。カフェインよりも溶解度の低いプリン化合物については、溶解度に応じて適宜決めれば良い。
【0046】
洗浄水の温度、もしくは洗浄槽の温度は、通常、常温であるが、必要に応じて加温(例えば25〜100℃)することもできる。加温すればプリン化合物の溶解度は増加する。例えば、カフェインの溶解度は、180mg・mL-1 (80℃)と増加するので、より高濃度のカフェイン溶液が利用できる。それ故、加温下で洗浄するときは、そのときの溶解度に応じてプリン化合物の濃度を適宜決めればよい。
【0047】
汚染土壌や汚染底質の洗浄処理後に生じる洗浄廃水には、多環芳香属化合物(PAHs)や、残留性有機汚染物質(POPs)などの有機汚染物質が、プリン化合物と吸着等の相互作用した状態で含まれている。
これらの有機汚染物質は疎水性の有機溶媒で抽出することができ、抽出後、有機層を分離することにより、該有機汚染物質を含まない洗浄水が再生される。この再生洗浄水は、汚染土壌や汚染底質の洗浄に再利用することでき、洗浄水の繰り返し使用が可能となる。
【0048】
洗浄後の廃水は5の抽出槽に導入する手段により抽出槽4に移され、6の抽出溶媒供給ユニットから抽出槽に注入された有機溶媒で、洗浄廃水から汚染物質の抽出除去が行われる。汚染物質が除去され再生された洗浄水は7の返送ユニットで3の洗浄水供給ユニットに送られ再利用される。
【0049】
5の洗浄廃水を抽出層4に導入する手段には、特に制限はなく、いかなる方法により洗浄廃水を抽出槽4に供給しても良い。
【0050】
6の抽出溶媒供給ユニット、7の返送ユニットについては、特に制限はなく、いかなる方法、あるいは装置であってもよいが、流量が制御できるものであればなお好ましい。
【0051】
4の抽出槽については、特に制限がなく、市販の抽出装置を含め、液・液抽出が可能であるならばいかなる装置であってもよい。
【0052】
本発明で使用される疎水性有機溶媒としては、水に溶けず、ナフタレン、フェナントレン、ピレンなどの多環芳香属化合物(PAHs)や、ダイオキシン類、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、DDTといった残留性有機汚染物質(POPs)などの有機汚染物質を抽出できるものであれば特に限定されない。
このような疎水性の有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ドデセン、セタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、フェニルシクロヘキサン、ビシクロヘキシル、ベンゼン、トルエン、キシレン、アミルベンゼン、アミルトルエン、ジフェニルエタン、テトラリン、デカリン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼン、クメン、第2−ブチルベンゼン、ベンジン、ミネラルスピリット、石油エーテル等の炭化水素系溶剤、クロロホルム、四塩化炭素、ブロモホルム、塩化メチレン、塩化エチレン、塩化エチリデン、トリクロルエタン、トリクロルエチレン、テトラクロルエタン、パークロルエチレン、ペンタクロルエタン、ヘキサクロルエタン、塩化プロピレン、トリクロルプロパン、塩化ブチル、ジクロルブタン、ヘキサクロルプロピレン、ヘキサクロルブタジエン、塩化アミル、ジクロルペンタン、塩化2−エチルヘキシル、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼン、クロルトルエン、ジクロルトルエン、トリクロルモノフルオルメタン、1,1,2−トリフルオル−1,2,2−トリクロルエタン、テトラクロルジフルオルエタン、ジブロモジフルオルエタン、パーフルオロトリブチルアミン、クロルニトロエタン、クロルニトロプロパン、ジクロルイソプロピルエーテル等のハロゲン化炭化水素、イソブタノール、n−ブタノール、n−ヘキシルアルコール、エチルブチルアルコール、ヘプチルアルコール、メチルアミルカルビノール、3−ヘプタノール、ジメチルペンタノール、オクチルアルコール、エチルヘキシルアルコール、イソオクチルアルコール、ジイソブチルカルビノール、n−デシルアルコールなどのアルコール類、イソプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、ヘキシルエーテル、ブチルフェニルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテルなどのエーテル類、ブチロン、メチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、バレロン、アセトフェノンなどのケトン類、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸メチルアミル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸アミル、酪酸ブチル、シュウ酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ベンジルなどのエステル類や二硫化炭素、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジオクチル、リン酸トルクレジル塩素化パラフィン、ヒマシ油などが挙げられ、これらを単独で、又は2種以上を併用して用いられる。
なかでも、クロロホルム、エーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、ジクロロメタン、石油エーテル、酢酸エチルおよびベンゼン等の一般的有機溶媒のいずれか、もしくはこれらの2種以上からなる混合物から適宜選択して用いるとよい。
【0053】
有機汚染物質を含む有機溶媒層からは、蒸留等の分離操作を行うことで疎水性の有機溶媒を回収することができる。回収された疎水性の有機溶媒は、前記有機汚染物質を含む洗浄廃水から有機汚染物質を抽出する溶媒として再利用される。
【0054】
すなわち、汚染物質を含む有機溶媒は、9によって抽出溶媒から汚染物質を分離する装置8に移され、汚染物質が分離されて、再生される。再生された有機溶媒は、返送ユニット10により抽出溶媒ユニット6に返送され再利用される。
【0055】
抽出溶媒から汚染物質を分離する方法としては、いかなる方法でも良いが、蒸留のような簡単な方法によることが望ましく、その装置についても特に制約されるものでない。それ故、8の分離装置としては、特に制限がなく、市販の蒸留装置などを適用することができる。
【0056】
すなわち、本発明における装置は、必ずしも専用の装置として開発されたものである必要はなく、既存の洗浄装置、抽出装置、及び蒸留装置から構成されるものであってもよく、必要に応じて改良が施されたものであればなおよい。
【0057】
微生物による浄化、バイオレメディエーションには、微生物分解と洗浄法を併用法する方法がある。
【0058】
本発明において、洗浄剤を含有する洗浄水で汚染土壌を浄化することによって発生する洗浄廃水を、微生物で処理し、洗浄水を再生することができる。
【0059】
適用する微生物は、処理対象土壌に生息するものであっても良いし、処理対象化合物の分解菌として知られているものであってもよく、適宜選択することができる。
【0060】
分解菌としては、これまでに個々の汚染物質に対し、それぞれ分解菌が開示されており、それらを適宜用いると良い。
【実施例】
【0061】
次に本発明の実施例に基づきさらに詳細に説明する。なお、以下の例においては、%は重量%を意味する。
【0062】
(実施例1)
カフェインがPAHsの水溶解性に与える効果を明らかにするため、カフェイン溶液に対するベンゾピレン、ベンゾペリレン、ピレン、アントラセン、およびフェナントレンの溶解度を測定した。すなわち1%カフェイン溶液に、各PAHの粉末を加え、1日間振とうし、平衡に達したあと、溶解せずに残ったPAHを遠心分離し除去した。得られた上澄み5mlを同体積のヘキサンで抽出し、このヘキサン層をGCMSで分析し、各PAHの濃度を求めた。その結果、ベンゾピレン、ベンゾペリレン、ピレン、アントラセン、およびフェナントレンの溶解度は、カフェインを含まない水に比べ、それぞれ7025倍、5800倍、468倍、176倍、および48倍に増加した。汚染土壌中に存在するPAHs等の疎水性有機汚染物質は、通常腐植物質等の土壌有機物に吸着し、水には溶出してこないが、カフェイン溶液における溶解度の増加は、PAHsが水に容易に移動することを示すものである。
【0063】
(実施例2)
フラスコにピレンをスパイクして調整した汚染土壌(ピレン濃度180ppm)と1.5%のカフェインを含む水溶液を液比1:5(土壌:洗浄液)で混合し、4時間振とう抽出をおこなった。抽出後、抽出液を遠心分離(3000rpm)し、その5mlを同体積のヘキサンで抽出した。このヘキサン層をGCMSで分析し、ピレンの濃度を求め、洗浄による土壌からピレンの除去率を求めた。その結果、純水による洗浄で除去できたピレンは1%程度に留まったが、カフェイン溶液では、土壌中の97.8%のピレンが除去された。
【0064】
(実施例3)
実施例2の土壌洗浄後の洗浄廃水から同体積のヘキサンでピレンを抽出し、洗浄水の再生及びピレンの回収を検討した。その結果、ヘキサンでピレンはほぼ100%回収された。ピレンが除去された洗浄水を用い再び実施例2と同様の洗浄実験を行った結果、2度目の洗浄でも土壌中のピレンの除去率は90%であった。次に、この洗浄廃水から再び同体積のヘキサンでピレンを回収し、洗浄水の再生及びピレンの回収を繰り返し検討した。その結果、2度目のヘキサン抽出でもピレンはほぼ100%回収された。また、ピレンが除去された洗浄水を用い再び実施例2と同様の洗浄実験を行った結果、3度目の洗浄でも土壌中のピレンの除去率は89%であった。土壌洗浄によりカフェインの損出が若干あるため、洗浄水を再利用することにより、ピレンの除去率は若干低下するが十分に再利用できることがわかる。
【0065】
(実施例4)
カフェインがPCBの水溶解性に与える効果を明らかにするため、カフェイン溶液に対する4−クロロビフェニルの溶解度を測定した。すなわち0、1000ppm、5000ppm、10000ppmのカフェイン溶液に、4−クロロビフェニルの粉末を加え、1日間振とうし、平衡に達したあと、溶解せずに残った4−クロロビフェニルを遠心分離し除去した。得られた上澄み5mlを同体積のヘキサンで抽出し、このヘキサン層をGCMSで分析し、各PAHの濃度を求めた。その結果、0、1000ppm、5000ppm、10000ppmのカフェイン溶液に対する4−クロロビフェニルの溶解度は、それぞれ0.17ppm、0.39ppm、1.14ppm、2.94ppmであり、カフェインの存在によってPCBの溶解度がPAHsと同様に増加することが分かった。このことから、植物の根からの吸収もカフェインが存在することにより、増加することは容易に推測される。
【0066】
(実施例5)
カフェイン1375ppm含む培養液2.5mLに、フェナントレンを10.2mg/Lになるよう溶解し、反応液を調整した。この反応液にPAHs分解菌Sphingomonas sp.を接種し、25℃で培養した。比較としてカフェインを含まない培養液にも同様に菌を接種した。培養時間15分で、カフェインを含まない系ではフェナントレンの分解率は約30%であったが、カフェインが存在すると分解率は約70%に増加した。なお、このときカフェインは、分解されずほぼ100%回収された。
【0067】
(実施例6)
カフェイン1375ppm含む培養液2.5mLに、ピレンを10.44mg/Lになるよう溶解し、反応液を調整した。この反応液にPAHs分解菌Sphingomonas sp.を接種し、25℃で培養した。比較としてカフェインを含まない培養液にも同様に菌を接種した。培養時間6時間で、カフェインを含まない系ではピレンの分解率は約40%であったが、カフェインが存在すると分解率は約70%に増加した。なお、このときカフェインは、分解されずほぼ100%回収された。
【符号の説明】
【0068】
1 汚染土壌を洗浄する洗浄槽
2 汚染土壌を洗浄槽に供給する手段
3 洗浄剤を貯蔵し供給するユニット
4 洗浄廃水から汚染物質を抽出する抽出槽
5 洗浄廃水を抽出槽に導入する手段
6 抽出溶媒を貯蔵し供給するユニット
7 再生した洗浄水を返送するユニット
8 抽出溶媒から汚染物質を分離する装置
9 抽出した抽出溶媒を分離装置に移す手段
10 再生した溶媒を返送するユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリン化合物を必須成分とすることを特徴とする、疎水性有機汚染物質で汚染された汚染土壌及び/又は汚染底質を洗浄浄化するための洗浄剤。
【請求項2】
プリン化合物がカフェインであることを特徴とする請求項1に記載の洗浄剤。
【請求項3】
カフェインをその成分として含有し、水と接触することにより水中に容易にカフェインを溶出する物質を必須成分とすることを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄剤。
【請求項4】
水に容易にカフェインを溶出する物質が、お茶、コーヒー、ココア、もしくはこれらからの抽出物であることを特徴とする請求項3に記載の洗浄剤。
【請求項5】
疎水性有機汚染物質が多環芳香族化合物(PAHs)であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の洗浄剤。
【請求項6】
疎水性有機汚染物質が残留性有機汚染物質(POPs)であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の洗浄剤。
【請求項7】
疎水性有機汚染物質で汚染された汚染土壌及び/又は汚染底質を、請求項1〜4の何れかに記載の洗浄剤を含有する洗浄水で、洗浄することを特徴とする汚染土壌及び/又は汚染底質の洗浄浄化方法。
【請求項8】
洗浄処理後、洗浄廃水に含まれる疎水性有機汚染物質を疎水性有機溶媒で抽出除去することにより、洗浄水を再生し、該再生洗浄水を疎水性有機汚染物質で汚染された汚染土壌及び/又は汚染底質の洗浄処理に再利用することを特徴とする請求項7に記載の洗浄浄化方法。
【請求項9】
疎水性有機汚染物質を含む疎水性有機溶媒から、疎水性有機溶媒を回収し、この疎水性有機溶媒を前記洗浄廃水に含まれる疎水性有機汚染物質の抽出溶媒として再利用することを特徴とする請求項7または8に記載の洗浄浄化方法。
【請求項10】
請求項1〜4の何れかに記載の洗浄剤を含有する洗浄水で洗浄した後、洗浄廃水中の疎水性有機汚染物質を、微生物を用いて分解することを特徴とする汚染土壌及び/又は汚染底質の洗浄浄化方法。
【請求項11】
汚染土壌を洗浄する洗浄槽1と、汚染土壌を洗浄槽に供給する手段2、洗浄水を貯蔵し供給するユニット3と、洗浄廃水から汚染物質を抽出する抽出槽4と、洗浄廃水を抽出槽に導入する手段5と、抽出溶媒を貯蔵し供給するユニット6と、再生した洗浄水をユニット3に返送するユニット7と、抽出溶媒から汚染物質を分離する装置8、抽出した抽出溶媒を分離装置に移す手段9、汚染物質を除去して再生した溶媒をユニット6に返送するユニット10とを備えたことを特徴とする疎水性有機汚染物質で汚染された汚染土壌及び/又は汚染底質を洗浄する装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−214323(P2010−214323A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65881(P2009−65881)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】