説明

汚染物質の分解システム

【課題】 各場所に発生するハロゲン化有機化合物の効率的で、コストを削減した処理システムで処理することを目的とする。
【解決手段】 ハロゲン化有機化合物を分解可能な装置を移動手段を備えた車両に搭載し、各回収手段に移動させて分解処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化有機化合物で汚染された土壌や地下水を効率的に分解処理するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年までの産業技術の発展に伴い有機塩素化合物(例えば塩素化エチレン、塩素化メタン等)が膨大に使用され、その廃棄処理は深刻な問題となってきている。また、これらの廃棄物は自然環境を汚染するなどの環境問題がおこっており、その解決に多大な努力が払われている。
【0003】
このような汚染土、地下水などから回収される分解対象物、特にハロゲン化脂肪族炭化水素化合物等の具体的な処理方法を述べると、例として、塩素ガスを含む気体と分解されるべき気体状ハロゲン化脂肪族炭化水素化合物とを混合させ、該混合気体に対して光照射する気体状ハロゲン化脂肪族炭化水素化合物の分解装置が提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、同様の分解機構を用いた方法も提案されている(特許文献2)。この方法は汚染土壌から吸引によって汚染物質を抽出し、得られた汚染物質を含む気体と、塩素を含む気体とを混合し、これに光照射して汚染物質を分解するというものであり、吸着剤を利用した方法も提案されている(特許文献3)。これは、塩素の存在下での光照射で分解し得る分解対象物を含むガスを活性炭に接触させて、分解対象物を活性炭に吸着させることでガスの浄化を行い、活性炭の再生時に活性炭から分離される分解対象物を含む凝縮液を、次亜塩素酸を含む溶液と混合して混和溶液を調製し、得られた混和溶液に含まれる分解対象物を塩素の存在下での光照射によって分解するというものである。
【特許文献1】ヨーロッパ特許公開公報EP1010453A1
【特許文献2】特開2002−219450号公報
【特許文献3】特開2002−1062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に用いられている方法として、活性炭などの吸着剤を現場に据置き、その吸着剤を焼却廃棄する方法がある。この方法では、焼却によるダイオキシンの発生などのさらなる汚染を引き起こす可能性や、単に汚染物質を移動するのみという問題がある。
【0006】
また、こういった問題に対して、特許文献2に記載されるような土壌から抽出された分解対象物質である汚染ガスを現場で分解する方法や、特許文献3に記載されるような吸着剤に吸着させた分解対象物質を現場で脱離させ、分解する方法がある。これらの方法では、現場ごとに処理装置を導入する必要があり、特に処理量が少量の場合には装置コストが高くなってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は二次汚染を引き起こさない、低コストのハロゲン化有機化合物処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明による分解システムは、
汚染サイトに設けられたハロゲン化有機化合物回収手段と、車両に搭載された塩素の存在下で光を照射することによってハロゲン化有機化合物を分解する分解装置と、データ管理装置からなるハロゲン化有機化合物分解処理システムであって、前記回収手段はハロゲン化有機化合物の回収状況に関する情報取得手段を備え、前記情報取得手段により取得された回収状況に関する情報に基づいて、前記分解装置によって回収されたハロゲン化有機化合物の分解処理がなされる回収手段を前記データ管理装置が定め、前記車両に移動指令を行うことを特徴とするハロゲン化有機化合物分解処理システムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、分解可能な装置を移動手段を備えた車両に搭載し、現場あるいは保管場所に移動させて分解処理することで、コストを抑えた現場での処理をすることができる。また、複数箇所の現場やハロゲン化有機化合物保管場所に対しても、それぞれの汚染物質の回収状況に関する情報を用いることで、より効率的な分解処理が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の代表的な実施形態について図を用いて説明する。
【0011】
図1は本発明におけるハロゲン化有機化合物の分解処理をおこなうシステムの概念図である。1箇所または複数箇所のハロゲン化有機化合物の汚染サイト1、2、3にハロゲン化有機化合物の脱着、凝縮、気化、分解、分解生成物処理の各工程を実施可能な装置を搭載した移動手段を備えた車両77で移動し、回収、分解処理を行うことができる。
【0012】
また、ハロゲン化有機化合物汚染サイト1、2、3にはハロゲン化有機化合物の回収状況に関する情報を取得できる手段5を用いる。
【0013】
回収状況に関する情報とは、例えば汚染サイト内の発生現場に吸着器などを設置した場合には、吸着器の出口のガス濃度を検知管、VOCセンサー、連続式のガスクロマトグラフィーなど気体中のVOC濃度の測定に使用される方法で測定し、回収状況を把握することや、吸着器入口のハロゲン化有機化合物の量をガス濃度、風量、水量、重量などから得られる回収状況、回収されたハロゲン化有機化合物の量などである。
【0014】
図2にはハロゲン化有機化合物の発生現場に吸着器を設置した形態を示す。
【0015】
まず1箇所または複数箇所のハロゲン化有機化合物の発生する汚染サイト1、2、3に吸着器4を設置し、ハロゲン化有機化合物の吸着回収を行う。この吸着器4にはハロゲン化有機化合物の回収状況を取得できる手段5が設置されている。それぞれの回収状況に関する情報により、ハロゲン化有機化合物の処理装置を搭載した車両77がそれぞれの回収手段へ移動する時期を決定することができる。分解処理の終了した吸着器は再びハロゲン化有機化合物の吸着回収を再開し、設置する。このように汚染サイト1にて分解処理を終えた車両77は引き続き汚染サイト2に移動し、同様にして吸着器内のハロゲン化有機化合物を分解処理する。このように各汚染サイトを巡回することもできる。
【0016】
このようなシステムによって現場において処理を終わらせることが可能であり、かつ、処理装置を搭載した車両1台で複数のサイトを処理することが可能となり、処理コストを大幅に削減することができる。
【0017】
なお、回収手段は、汚染サイト内の発生現場でハロゲン化有機化合物の回収を終えた後は、その場所で分解処理車両によって処理を行ってもよいし、または他の保管場所に移動させて処理を行ってもよい。
次に図3には複数台の分解処理車両を用いた形態を示す。
【0018】
図2と同様に各汚染サイトを分解処理装置を搭載した車両77、9を用いて、汚染サイト1,2,3,6,7,8に設置した吸着器4のハロゲン化有機化合物の吸着状況に関する情報5より各汚染現場を巡回する。また、車両77、9には現在位置を確認するために、GPSやPHS等の位置確認装置10を搭載し、稼動状況に関する情報を取得できる装置11を搭載している。
【0019】
稼動状況に関する情報とは、回収処理状況、薬品の使用量、故障状況等、処理装置が現在どのような状況にあるか把握できる情報である。
【0020】
そして、各汚染サイトの回収状況に関する情報と車両の現在位置、稼動状況に関する情報より、どの車両がどの汚染サイトにどの時期に移動して分解処理するか、といった巡回計画を立てることができる。
【0021】
図4には情報をネットワークを介して管理する場合の形態を示す。
【0022】
各汚染サイトに設置した吸着器の吸着状況に関する情報をネットワークによって送受信することのできる装置12によって、また、各車両の現在位置および稼動状況に関する情報をネットワークによって送受信することができる装置13によって、データ管理を行う装置14で管理することができる。この様にインターネットを介して情報を管理することにより、遠隔地であっても吸着器の回収状況や車両の現在位置、稼動状況を確認することができ、さらに車両への巡回の指令を出すことができる。この様に遠隔地や広範囲にわたった汚染サイトであっても効率的な巡回処理が可能となる。
【0023】
さらに、データ管理を行う装置14に管理されているデータより、各吸着器の回収状況に関する情報をWeb15にて開示することにより、分解処理を行っているものに対しては遠隔地でもリアルタイムで回収状況を把握することができる。さらに、分解処理を委託している依頼者に対しては、汚染の修復状況をリアルタイムで確認することが可能となる。
【0024】
また本実施形態では、分解対象物として、フッ素、塩素、臭素等のハロゲンを含有するハロゲン化有機化合物、例えば塩素化エチレンやフロンが挙げられる。塩素化エチレンとして具体的にはエチレンの1〜4塩素置換体、即ちクロロエチレン、ジクロロエチレン(DCE)、トリクロロエチレン(TCE)、テトラクロロエチレン(PCE)が挙げられる。更にジクロロエチレンとしては、例えば1,1−ジクロロエチレン(塩化ビニリデン)、cis−1,2−ジクロロエチレン、trans−1,2−ジクロロエチレンが挙げられ、フロンとして具体的には、クロロジフルオロメタン(HCFC22)、1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタン(HCFC123)、1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン(HCFC124)、1,2−ジクロロ−1,1−ジフルオロエタン(HCFC132b)、1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエタン(HCFC133a)、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC141b)、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン(HCFC142b)、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC225ca)、1,3−ジクロロ−1,2,2,3,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC225cb)、トリフルオロメタン(HFC23)、ジフルオロメタン(HFC32)、1,2,2,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC143a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC152a)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC227ea)、1,1,1−トリフルオロ−3,3−ジフルオロプロパン(HFC245fa)、1,1,1−トリフルオロ−4,4−ジフルオロブタン(HFC365mfc)を挙げることができる。
【0025】
以上が車載された処理装置の分解処理に関するシステムであったが、次に車載されたハロゲン化有機化合物の処理装置についての詳細な模式図を図5に示す。
【0026】
図5には対象物質の分解方法として、水蒸気を用いて吸着器からハロゲン化有機化合物を脱着し、そのハロゲン化有機化合物を分解処理するシステムが示されている。
【0027】
このシステムでは、ハロゲン化有機化合物に対して吸着及び脱着可能な吸着剤16を充填した吸着器17、吸着器17にハロゲン化有機化合物を含有する媒体を供給する手段18、吸着器17に水蒸気を供給する水蒸気供給装置19、脱着したハロゲン化有機化合物を含む水蒸気を凝縮する凝縮器20、凝縮液35を貯留する受器21、凝縮液を曝気する散気管22、塩素発生装置23、ハロゲン化有機化合物ガスと塩素の混合ガスに光を照射する反応槽24、反応槽への光照射装置25、分解生成物処理槽26、を少なくとも備えて構成されている。
【0028】
このシステムによる処理は、例えば次のようにして行われる。
【0029】
まず、吸着器17に配管27及び28を接続する。このとき配管29、30はまだ接続されていない。ハロゲン化有機化合物を含有する媒体18をバルブ31を開放した配管27から吸着器17に導入する。媒体中のハロゲン化有機化合物は吸着剤16に吸着され、ハロゲン化有機化合物を除去された媒体はバルブ32を開放した配管28から外部に排出される。吸着剤16がハロゲン化有機化合物によって破過される前にバルブ31、32を閉じ、ハロゲン化有機化合物の吸着器17への回収を終了する。以上の工程を回収工程と呼ぶ。吸着及び脱着可能な吸着剤の種類としては、活性炭、ゼオライト、シリカゲル等を選択することが可能であるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0030】
次に必要に応じて配管27を吸着器17から切り離した後、配管29、30を接続した後、水蒸気供給装置19からバルブ33を開放した配管29を通じて吸着器17に水蒸気を供給し、吸着剤16に吸着されたハロゲン化有機化合物を水蒸気によって脱着する。以上の工程を脱着工程と呼ぶ。脱着工程においてハロゲン化有機化合物を回収した吸着器からハロゲン化有機化合物を脱着する方法としては、水蒸気供給装置を用いて吸着器外部から吸着器内に少なくとも水蒸気を含有する気体を導入する方法や、吸着器を加熱することによって吸着器内に存在する、もしくは外部から供給する水を水蒸気とする方法などを用いることができる。また、これらを組み合わせることもできる。
【0031】
次にハロゲン化有機化合物を含んだ水蒸気はバルブ34を開放した配管30、受器21を通じて凝縮器20に導入され、水蒸気は凝縮器20によって冷却・液化されてVOCを含有した凝縮液35となり、凝縮器20に接続された受器21に貯留される。以上の工程を凝縮工程と呼ぶ。凝縮工程における水蒸気の冷却方法としては、冷却によって生成する凝縮液の分離を可能とした冷媒に脱着気体を接触させ、生成する凝縮液を冷却後の気体と分離して別の容器に貯留することによって行う。
【0032】
次に一定量凝縮液35を貯留した後、ブロア36を用いて散気管22から凝縮液35に空気を曝気し、凝縮液中のハロゲン化有機化合物を気化させる。ハロゲン化有機化合物を含む曝気ガスは凝縮器20を通過して配管37を流通する。以上の工程を気化工程と呼ぶ。気化工程におけるハロゲン化有機化合物の気化方法としては、凝縮液を曝気することにより行うことができ、また曝気と共に凝縮液を加熱しても良い。
【0033】
次に塩素発生装置23から配管38を通じて配管37に塩素を供給し、配管37を流通してきた曝気ガスと合流・混合させ、反応槽24に導入する。反応槽24に入ったハロゲン化有機化合物と塩素の混合気体は光照射装置25によって特定波長・特定強度の光を照射され、それによってハロゲン化有機化合物が分解される。以上の工程を分解工程と呼ぶ。分解工程での供給する塩素の発生源としては例えば、塩素ボンベを用いる方法、電解質溶液の電気分解による方法、次亜塩素酸水溶液を用いる方法などを用いることができる。また、光照射手段として例えば、ガラスを透過することのできる波長300〜500nmの光、さらに波長350〜450nmの光を使用することができる。光の強度は0.1mW/cm以上の強度とすればよい。
【0034】
次に分解工程によって発生した分解生成物は配管48を通じて分解生成物処理槽26に導入され、そこで分解処理される。以上の工程を分解生成物処理工程と呼ぶ。前記ハロゲン化有機化合物分解工程において発生する分解生成物としては例えば、分解対象物が塩素化エチレンである場合、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、モノクロロ酢酸などのクロロ酢酸である。分解処理方法としては、アルカリ加熱、電気分解などの方法を用いることができる。
【0035】
以上の方法によって分解生成物はほとんど完全分解して二酸化炭素と塩素イオンとなり、溶液中の有機物としては分解条件に応じてギ酸、酢酸、シュウ酸などの脱塩素された有機酸が微量に残留するのみとなる。
【0036】
なお、各工程は必ずしも前工程が完了した後に次の工程を開始する必要はなく、各工程を同時に平行して行うこともできる。
【実施例】
【0037】
以下に、本発明の実施例を説明する。
【0038】
(実施例)
本実施例の装置およびシステムを図6、7に示す。
【0039】
テトラクロロエチレンを主要なハロゲン化有機化合物として土壌が汚染されたサイトAにおいて、井戸から一定の流量で揚水した汚染地下水を配管39から曝気槽40に流入し、排水管41から曝気処理水を排出するようにした。貯留した地下水に散気管42から空気を1m/minの割合で曝気し、発生した曝気ガスは吸着剤である活性炭45(日本エンバイロケミカル社製;粒状白鷺G2C4/8)の充填された円柱状の吸着器(直径60cm、高さ150cm)44の下部に配管29から導入し、上部配管43から大気中に排出した。吸着器44に導入された曝気ガス中のハロゲン化有機化合物は活性炭45に吸着され、ハロゲン化有機化合物は吸着器44内に回収された。
【0040】
また、回収中の入口と出口の濃度を連続モニタできるガス計測器(横河電機、連続VOCモニタ、VM500)46,47により測定し、連続監視を行った。この状態で曝気ガス中のテトラクロロエチレンの濃度は約4ppmで、回収後のテトラクロロエチレン濃度は0.1ppm以下であった。
【0041】
30日連続回収を続けた結果、出口ガス中のテトラクロロエチレン濃度が0.1ppmを超える濃度が確認されたので、脱着・処理装置を搭載した車両をサイトAまで移動させ、吸着器44の設置場所近傍に停車させた。次に吸着器44に接続された配管29、43をはずし、代わりに吸着器44に配管29、30によって蒸気発生器19、受器21をそれぞれ接続した。さらに吸着器44の周囲にヒーター75を巻きつけ、吸着器44全体を断熱材76で覆ったのち、ヒーター75を120℃に加熱した。次いで蒸気発生器19の水を収容する容器63をヒーター65で100℃に加熱し、発生する水蒸気を配管29から吸着器44に送り込んだ。このときの蒸気発生量は約5kg/hrとした。
【0042】
吸着器44に水蒸気を送り込むとともに吸着器44から配管30を通じて受器21内にハロゲン化有機化合物を含んだ水蒸気が流入し、さらに凝縮器20に移動した。水蒸気は冷却水循環器68から4℃の冷却水を供給された凝縮器20によって液化され、凝縮液35が受器21内に徐々に貯留された。
【0043】
1時間後、貯留した凝縮液35が5L程度となり、受器21の底部に水と分離したハロゲン化有機化合物の蓄積が確認された時点で散気管22からブロア36によって凝縮液35中に10L/minの風量で空気を曝気し、凝縮液35中のハロゲン化有機化合物の気化を開始した。
【0044】
ハロゲン化有機化合物と水蒸気を含んだ曝気ガスは凝縮器20を通り、その間に大部分の水蒸気を凝縮させた。ハロゲン化有機化合物もある割合で水蒸気とともに凝縮したが、凝縮されなかったVOCは曝気ガスとともに配管37に至り、塩素発生器23から配管28を通じて導入された塩素と混合された後、円筒形の反応槽24(直径20cm、長さ1m)に導入された。
【0045】
塩素発生器23には30%の塩酸水溶液が収容されており、設置された2枚のチタン製電極板に2.5Vの電圧をかけ、さらに散気管66から0.5L/minの風量で空気を曝気することで、塩酸の電気分解によって発生した塩素ガスを配管28を通じて配管37に供給するようにした。
【0046】
このときの配管37内の混合ガスをサンプリング口72から採取し、空気で希釈したのち検知管によってハロゲン化有機化合物濃度及び塩素濃度を測定したところ、混合ガス中のテトラクロロエチレンは約15,000ppm、塩素は5,000ppmであった。
【0047】
反応槽24では内部に設置されたブラックライト25((株)東芝製FL10BLB、10W、ピーク波長360nm)によって導入された混合ガスに近紫外光を照射し、混合ガス中のハロゲン化有機化合物の分解を行った。
【0048】
反応槽24を通過した処理済ガス中のハロゲン化有機化合物濃度及び塩素濃度をサンプリング口73から検知管によって測定したところ、テトラクロロエチレンは0.1ppm以下、塩素は4200ppmであった。
【0049】
処理済ガスは配管48を通って散気管49からアルカリ加熱槽26に貯留されたアルカリ溶液(20%水酸化ナトリウム水溶液)50中に曝気され、ガス中の分解生成物及び残留塩素をアルカリ溶液50に吸収させた後に配管55、凝縮器56、配管57を通じて外部に排出した。
【0050】
次に受器21内の凝縮液35が約10Lに達した時点で凝縮液35のタンク63への移送を開始した。配管61の先端は凝縮液35が約10Lとなる時の液面に接するように受器21内に垂直に設置されており、凝縮液35が10Lを越えたときに液を吸引する。また、水と分離して曝気によって溶液中に浮遊する粒状のハロゲン化有機化合物を凝縮液35の水溶液とともに吸引した場合でも、配管61の垂直部分を吸引する間に水より比重の重いVOCのみが配管61から受器21内に戻るように設定されている。タンク63へ移送された凝縮液はヒーター65で加熱されて水蒸気となり、吸着器44の脱着に同様に使用された。また、凝縮液に含有されていたハロゲン化有機化合物も加熱によって気化して水蒸気とともに吸着器44に導入された。
【0051】
以上の工程を連続で行い、経時的にサンプリング口72から混合ガス中のハロゲン化有機化合物濃度を検知管によって測定し、ハロゲン化有機化合物濃度の約30%の濃度となるように塩素発生器23から発生する塩素濃度を電極69に印加する電圧を変えて調整した。混合ガス中のテトラクロロエチレン濃度は時間の経過とともに減少し、16時間目に1ppm以下となった。その時点で、水蒸気発生器19からの水蒸気の発生を停止し、配管29を水蒸気発生器19から切り離し、代わりに温風機74に接続した。次いで温風器74から120℃の熱風を吸着器44に送風し、活性炭45を乾燥させた。このとき発生したVOCを含む水蒸気は凝縮器20によって液化し、凝縮液35として貯留された。この凝縮液35も前述と同様に曝気によってハロゲン化有機化合物を気化し、そのハロゲン化有機化合物を反応槽24において分解した。再び混合ガス中のテトラクロロエチレン濃度が1ppm以下となった時点で全ての運転を停止した。
【0052】
受器21に残された凝縮液35をサンプリングしてヘキサン抽出を行い、ECDガスクロマトグラフィーによってテトラクロロエチレン濃度を測定したところ、0.01mg/L以下であったため、凝縮液35を受器21から排出し、廃棄を行った。
【0053】
また、バルブ51を閉鎖した後、アルカリ加熱槽26のヒーター52によってアルカリ溶液50を95℃に加熱し、溶解した分解生成物をアルカリ加熱処理した。加熱によってアルカリ溶液44から発生した水蒸気は冷却水循環器(図には不記載)から4℃の冷却水を供給された凝縮器56によって液化し、槽内に再び戻した。2時間の加熱処理によって槽内の分解生成物(クロロ酢酸)は0.05mg/L(検出限界)以下となり、代わりに数mg/Lのギ酸及びシュウ酸が生成した。処理後の水溶液はポリタンクに移し、通常のアルカリ廃液として最終処理を行った。
【0054】
以上で吸着器44に回収されたハロゲン化有機化合物の処理を終了したが、吸着器44に回収されたハロゲン化有機化合物量とサンプリング口72から測定した脱着ハロゲン化有機化合物量から吸着器からのハロゲン化有機化合物脱着率を計算したところ、およそ54%となった。
【0055】
また、今回の処理で塩素の発生に使用された30%濃度の塩酸溶液は5Lであった。
【0056】
次に同様の吸着器44を設置しているサイトBにおいて、出口のガス計測器47の濃度が0.1ppmを超える値となったので、引き続きサイトBに車両を移動させ、分解処理を行った。
【0057】
同様に他のサイトについても吸着状況の情報により移動し、分解処理を行った。
【0058】
以上により、本発明のシステムによって、1つの移動可能な処理装置によって複数の汚染サイトを巡回して浄化することが実証でき、処理装置をサイトごとに導入するよりコスト削減、また効率的な分解処理を行うことができた。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施態様にかかる分解処理システムの概略図である。
【図2】本発明の一実施態様にかかる分解処理システムの概略図である。
【図3】本発明の一実施態様にかかる分解処理システムの概略図である。
【図4】本発明の一実施態様にかかる分解処理システムの概略図である。
【図5】本発明の一実施態様にかかる分解処理システムの概略図である。
【図6】実施例の分解処理システムの一部概略図である。
【図7】実施例の分解処理システムの一部概略図である。
【符号の説明】
【0060】
1、2、3、6、7、8 ハロゲン化有機化合物の汚染サイト
4 吸着器
5 回収状況に関する情報取得手段
9 車両
10 位置確認装置
11 稼働状況に関する情報取得手段
12、13 ネットワーク送受信装置
14 データ管理装置
15 Web
16 吸着剤
17、44 吸着器
18 ハロゲン化有機化合物含有媒体供給手段
19 水蒸気供給装置
20、56 凝縮器
21 受器
22、42、49、66 散気管
23 塩素発生装置
24 反応槽
25 ブラックライト
26 アルカリ加熱槽
27、28、29、30、37、38、39、41、43、48、55、57、58、59、61 配管
31、32、33、34、51、53、54、60 バルブ
35、64 凝縮液
36 ブロア
40 曝気槽
45 活性炭
46、47 ガス計測器
50 アルカリ溶液
52、65、75 ヒーター
62 ポンプ
63 容器
67 次亜塩素酸塩溶液
68 冷却水循環器
69 電極
70 電源
71 ブロア
72、73 サンプリング口
74 温風機
76 断熱材
77 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染サイトに設けられたハロゲン化有機化合物回収手段と、車両に搭載された塩素の存在下で光を照射することによってハロゲン化有機化合物を分解する分解装置と、データ管理装置からなるハロゲン化有機化合物分解処理システムであって、前記回収手段はハロゲン化有機化合物の回収状況に関する情報取得手段を備え、前記情報取得手段により取得された回収状況に関する情報に基づいて、前記分解装置によって回収されたハロゲン化有機化合物の分解処理がなされる回収手段を前記データ管理装置が定め、前記車両に移動指令を行うことを特徴とするハロゲン化有機化合物分解処理システム。
【請求項2】
前記ハロゲン化有機化合物回収手段は吸着剤を充填した吸着器であることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化有機化合物分解処理システム。
【請求項3】
前記情報取得手段により取得された回収状況に関する情報に基づいて、前記車両の移動時期を前記データ管理装置が定め、前記車両に指令を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のハロゲン化有機化合物分解処理システム。
【請求項4】
前記車両は車両の稼動状況に関する情報に関する情報取得手段を備え、
前記情報取得手段により取得された回収状況に関する情報と、
前記情報取得手段により取得された稼動状況に関する情報と、
前記車両の現在位置の情報に基づいて、前記データ管理装置が
分解処理がなされる回収手段と前記車両の移動時期を定め、
前記車両に指令を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のハロゲン化有機化合物分解処理システム。
【請求項5】
前記ハロゲン化有機化合物の回収状況に関する情報はネットワークを介して前記データ管理装置によって管理される請求項1乃至4のいずれかに記載のハロゲン化有機化合物分解処理システム。
【請求項6】
前記車両の現在位置と前記車両の稼動状況に関する情報はネットワークを介して前記データ管理装置によって管理される請求項4または5に記載のハロゲン化有機化合物分解処理システム。
【請求項7】
前記各情報はネットワークを介してホームページに掲載されることを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載のハロゲン化有機化合物分解処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−272242(P2006−272242A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98175(P2005−98175)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】